ノウンファクト

和名:ノウンファクト

英名:Known Fact

1977年生

鹿毛

父:インリアリティ

母:タメレット

母父:ティムタム

繰り上がりながら英2000ギニーを制しクイーンエリザベスⅡ世Sでクリスを撃破したマンノウォー直系の名マイラーは種牡馬としても活躍する

競走成績:2~4歳時に英仏で走り通算成績11戦6勝2着1回3着1回

誕生からデビュー前まで

米国ケンタッキー州メアヘイヴンファームにおいて、同牧場の所有者ウィリアム・O・リード博士(後にゴーンウエストグッバイヘイローなどを生産する事で知られる)により生産され、サウジアラビアの王族ハーリド・ビン・アブドゥッラー殿下に購入され、アブドゥッラー殿下のジュドモントファーム名義となった。

既に近親からはダート競走で活躍した馬が複数出ており、血統的にも完全なダート向きに思えたのだが、英国ジェレミー・ツリー調教師に預けられ、欧州で競走生活を送ることになった。成長しても体高は15.3ハンド強だったというから、それほど大きな馬ではなく、現役時代の写真を見ても比較的スマートな体型であるから、パワーを要するダート競走ではなく芝向きであると判断されたのであろうか。主戦はウィリー・カーソン騎手が務めた。

競走生活(3歳前半まで)

2歳時にニューベリー競馬場で行われた未勝利ステークスで勝ち上がると、グッドウッド競馬場で出走した次走のニューハムSでは2馬身半差の2着。3戦目のミルリーフS(英GⅡ・T6F)では、勝ったジュライS2着馬ロードシーモアから2馬身半差、2着タウファンから1馬身差の3着だった。次走のミドルパークS(英GⅠ・T6F)では単勝オッズ11倍といった程度の評価だったが、2着となったジムクラックSの勝ち馬ゾンネンゴールドに半馬身差、3着ロードシーモアにはさらに1馬身半差をつけて勝利を収めた。2歳時の成績は4戦2勝だった。

3歳時は4月のグリーナムS(英GⅢ・T7F)から始動した。ここでは、デューハーストS・愛ナショナルSを勝っていたモンテヴェルディ、ウィリアムヒルフューチュリティS・ロイヤルロッジSの勝ち馬ハローゴージャス、ジュライS・シートンデラヴァルS・英シャンペンSの勝ち馬ファイナルストロー、ホーソーンS2着馬ポッセなどとの対戦となった。結果はファイナルストローが勝利を収め、モンテヴェルディが2着、ポッセが3着で、本馬はファイナルストローから1馬身3/4差の4着に敗北した(ハローゴージャスは5着だった)。

続いて出走した英2000ギニー(英GⅠ・T8F)では、トーマブリョン賞・ジェベル賞と2戦2勝の仏国調教馬ヌレイエフ、ファイナルストロー、グラッドネスSの勝ち馬ナイトアラート、ポッセなどが対戦相手となった。キャリア2戦のみだがいずれも圧勝だったヌレイエフが単勝オッズ2.625倍の1番人気に支持される一方で、本馬は単勝オッズ15倍の穴馬扱いだった。レースは出走馬15頭が集団となって進行し、残り2ハロン地点で馬群の中団後方につけていたヌレイエフが外側から満を持して抜け出した。さらに内埒沿いから本馬、そのすぐ外側からポッセも伸びてきた。最初は外側にいたヌレイエフだったが、だんだん内側によってきて、残り1ハロン地点でポッセの進路を塞ぐ形となった。そしてヌレイエフと最内の本馬、それに進路を塞がれたためにヌレイエフと本馬の間を突こうとしたポッセの3頭が一団となってゴールインした。1位入線はヌレイエフで、首差の2位入線が本馬、さらに首差の3位入線がポッセだった。しかしヌレイエフが内側に大きく斜行した際に、ポッセの進路に覆いかぶさった場面が問題となり、非常に長い審議の末に、ヌレイエフは失格処分を受け、繰り上がって本馬が優勝馬となった。

競走生活(3歳後半以降)

ヌレイエフはそのまま競走馬を引退したが、本馬は短期休養を経て渡仏し、ジャックルマロワ賞(仏GⅠ・T1600m)に出走した。しかしここでは、イスパーン賞・リゾランジ賞の勝ち馬でサラマンドル賞・仏2000ギニー3着の4歳馬ナジャール、英2000ギニー着外後に愛2000ギニー3着・セントジェームズパレスSとサセックスSでいずれもポッセの2着だったファイナルストローなど4頭に後れを取り、勝ったナジャールから3馬身差の5着に終わった。

その後は英国にとんぼ返りして、前走から6日後のクリスタルマイル(英GⅡ・T8F)に出走。英2000ギニーで4位入線3着繰り上がり後にジャンプラ賞を勝っていたナイトアラート、ジャージーSの勝ち馬で後にプリンスオブウェールズS・ゴードンリチャーズS・アールオブセフトンSも勝利するハードフォートなどが対戦相手となったが、単勝オッズ3.5倍の1番人気に応えて、5ポンドのハンデを与えた2着ハードフォートに首差で勝利した。

翌9月にはドンカスター競馬場でキヴトンパークS(T7F)に出走。サセックスSでポッセから1馬身半差の3着だったチェシャムSの勝ち馬スターウェイなどが出走してきたが、本馬が2着キャプテンニックに3馬身差をつけて勝利を収めた。

そして英国マイル王決定戦のクイーンエリザベスⅡ世S(英GⅡ・T8F)に駒を進めた。最大の強敵は、前年の同競走の他にサセックスS・セントジェームズパレスS・クリスタルマイル・ロッキンジS・ホーリスヒルS・グリーナムS・チャレンジSを勝っていた目下9連勝中の4歳馬クリスだった。レースではクリスが先行して、本馬はそれをマークするように中団につけた。直線に入ると残り2ハロン地点でクリスが堂々と抜け出し、さらに本馬もクリスの外側に持ち出して追撃を開始した。クリスは本馬から逃げるように内埒沿いによっていったが、本馬は真っ直ぐに走り続けた。そして本馬がゴース直前で僅かに前に出て、首差で勝利を収め、クリスに生涯2度目の黒星(1度目は英2000ギニーでタップオンウッドに敗れたもの)をつけた。最強マイラーとして君臨していたクリスをガチンコ勝負で破ったため、繰り上がりで英2000ギニーを勝った幸運な馬という、あまり良からぬ呼称を払拭する事に成功。

3歳時は6戦4勝の成績で、国際クラシフィケーションではヌレイエフと同じ129ポンドの評価を得た。また、英タイムフォーム社のレーティングではヌレイエフより4ポンド、クリスより1ポンド高い135ポンドの評価が与えられた。これは英2000ギニー馬としてはかなり高い数値である(本馬以前にこれより高い数値を得た英2000ギニー馬は、1971年のブリガディアジェラードまで遡らないと見つからない)。英2000ギニーで繰り上がり2着だったポッセも前述したように後にセントジェームズパレスS・サセックスSを勝っており(いずれもファイナルストローが2着)、この年の英国3歳マイル路線はレベルが高かったと評価されているようである。英レーシングポスト紙により本馬は英最優秀3歳牡馬に選出されている。

翌4歳時も現役を続けたが、ヘイドックパーク競馬場で出走したウィンドウズトロフィーなるレースで、ダルサーン(英2000ギニー馬ドユーンの半兄)の4着最下位に敗れた1戦のみで競走馬を引退した。

血統

In Reality Intentionally Intent War Relic Man o'War
Friar's Carse
Liz F. Bubbling Over
Weno 
My Recipe Discovery Display
Ariadne
Perlette Percentage
Escarpolette
My Dear Girl Rough'n Tumble Free for All Questionnaire
Panay
Roused Bull Dog
Rude Awakening
Iltis War Relic Man o'War
Friar's Carse
We Hail Balladier
Clonaslee
Tamerett Tim Tam Tom Fool Menow Pharamond
Alcibiades
Gaga Bull Dog
Alpoise
Two Lea Bull Lea Bull Dog
Rose Leaves
Two Bob The Porter
Blessings
Mixed Marriage Tudor Minstrel Owen Tudor Hyperion
Mary Tudor
Sansonnet Sansovino
Lady Juror
Persian Maid Tehran Bois Roussel
Stafaralla
Aroma Fairway
Aloe

インリアリティは当馬の項を参照。

母タメレットは現役成績35戦4勝。メアヘイヴンファームで繁殖生活を送り、本馬の半兄テンタム(父インテンショナリー)【メトロポリタンH(米GⅠ)・ガヴァナーズS(米GⅠ)・ユナイテッドネーションズH(米GⅠ)・ジムダンディS・トボガンH(米GⅢ)・バーナードバルークH(米GⅢ)】、半兄テリート(父ボールドネシアン)【シネマH(米GⅡ)】を産むなど、優秀な成績を収めた。繁殖牝馬引退後もメアヘイヴンファームで余生を送ったタメレットは非常に長生きした馬でもあり、1995年に33歳で自然死している。

タメレットの牝系子孫の発展ぶりもかなりのものであり、本馬の全姉タミネッテの子にはタピアノ【スピナウェイS(米GⅠ)・メイトロンS(米GⅠ)・デモワゼルS(米GⅠ)・シャーリージョーンズH(米GⅢ)・サラブレッドクラブオブアメリカS(米GⅢ)・ガーデンステートパークBCH(米GⅢ)・ジェニュインリスクH(米GⅢ)・バーバラフリッチーH(米GⅢ)】と日本で走ったエーピージェット【京成杯(GⅢ)】の姉弟、玄孫にはレディジョンヌ【アラバマS(米GⅠ)】とシャックルフォード【プリークネスS(米GⅠ)・メトロポリタンH(米GⅠ)・クラークH(米GⅠ)】の姉弟がいる。本馬の半妹セクレテーム(父セクレタリアト)の子には名種牡馬ゴーンウエスト【ドワイヤーS(米GⅠ)・ゴーサムS(米GⅡ)・ウィザーズS(米GⅡ)】とライオンキャヴァーン【トゥルーノースH(米GⅡ)・ホーリスヒルS(英GⅢ)・グリーナムS(英GⅢ)】の兄弟、孫には日本で走ったサクラハーン【星雲賞・赤レンガ記念】とサクラオリオン【中京記念(GⅢ)・函館記念(GⅢ)】の兄弟がいるし、本馬の半妹バッジオブカーレッジ(父ウェルデコレイテッド)の子にはトゥルーヒーロー【サンダウンクラシックトライアル(英GⅢ)】、孫にはいずれも日本で走ったタイキフォーチュン【NHKマイルC(GⅠ)・毎日杯(GⅢ)】、タイキダイヤ【クリスタルC(GⅢ)】、タイキリオン【ニュージーランドトロフィー(GⅡ)】の3兄弟、玄孫にはクラリティスカイ【NHKマイルC(GⅠ)】がいる。

タメレットの牝系自体も比較的優秀であり、タメレットの1歳年上の半兄には、本馬と激戦を演じたクリスの父シャーペンアップの父となったエタン(父ネイティヴダンサー)がいるし、タメレットの従姉妹オベア【デラウェアH2回】の子には、悲劇の名牝ゴーフォーワンド【BCジュヴェナイルフィリーズ(米GⅠ)・アッシュランドS(米GⅠ)・マザーグースS(米GⅠ)・テストS(米GⅠ)・アラバマS(米GⅠ)・マスケットS(米GⅠ)・ベルデイムS(米GⅠ)】がいる。→牝系:F2号族②

母父ティムタムは当馬の項を参照。

競走馬引退後

競走馬を引退した本馬は米国ケンタッキー州ジュドモントファームで種牡馬となった。種牡馬としては欧州マイル王者ウォーニングを筆頭に46頭のステークスウイナーを輩出して成功を収め、後継種牡馬として活躍したウォーニングと共に、現代では稀少となったマンノウォー直系を後世に伝える立役者となった。23歳となった2000年になっても種付け料1万ドル、20頭の繁殖牝馬を集める現役種牡馬だったが、同年7月に高齢のために病気になり衰弱が進んだために安楽死の措置が執られた。

主な産駒一覧

生年

産駒名

勝ち鞍

1985

Warning

サセックスS(英GⅠ)・クイーンエリザベスⅡ世S(英GⅠ)・リッチモンドS(英GⅡ)・英シャンペンS(英GⅡ)・クイーンアンS(英GⅡ)

1986

Markofdistinction

クイーンエリザベスⅡ世S(英GⅠ)・トラストハウスフォルテマイル(英GⅡ)・クイーンアンS(英GⅡ)

1986

Teamster

サガロS(英GⅢ)2回・ヘンリーⅡ世S(英GⅢ)

1989

Modernise

アスコットH(米GⅢ)

1990

Nidd

ポルトマイヨ賞(仏GⅢ)

1990

So Factual

ナンソープS(英GⅠ)・コーク&オラリーS(英GⅢ)

1991

Night Fax

デラウェアH(米GⅡ)

1993

Surprising Fact

サラブレッドクラブオブアメリカS(米GⅢ)

1994

Fancy Freda

ハニービーH(米GⅢ)

1994

Oath

スピナウェイS(米GⅠ)

1995

Bold Fact

ジュライS(英GⅢ)

1997

キングザファクト

ダイヤモンドS(GⅢ)

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