ゲームオンデュード

和名:ゲームオンデュード

英名:Game On Dude

2007年生

黒鹿

父:オーサムアゲイン

母:ワールドリープレジャー

母父:デヴィルヒズデュー

史上唯一のサンタアニタH3勝を挙げるなど主に米国西海岸で活躍し、ケルソ、フォアゴー、ジョンヘンリーといった歴史的名騙馬に比肩するとの評価を受ける

競走成績:3~7歳時に米首で走り通算成績34戦16勝2着7回3着1回

20世紀米国競馬史上における最も偉大な騙馬としては、エクスターミネーターケルソフォアゴージョンヘンリーの4頭が候補に挙がるとされており、これらの4頭に関しては日本でも取り上げられる事が少なくない。

しかしこの4頭に比肩すると評される騙馬が、21世紀に入ってから既に2頭も米国競馬界に登場している事はあまり日本では取り上げられていないような気がする。1頭は2年連続でエクリプス賞年度代表馬に選ばれたワイズダン。そしてもう1頭がサンタアニタHを3勝した史上唯一の馬である本馬である。

誕生からデビュー前まで

現在米国有数の馬産団体であるアデナスプリングスによりケンタッキー州において生産された。1歳9月のキーンランドセールに出品されたが、最低落札価格21万ドルに到達しなかったために主取りとなった。その後にアーニー・キューネ氏という人物によって個人的に24万ドルで購入され、米国マイケル・マイレナ調教師に預けられた。

競走生活(3歳時)

3歳1月にガルフストリームパーク競馬場で行われたダート7ハロンの未勝利戦で、ジェレミー・ローズ騎手を鞍上にデビュー。単勝オッズ18.7倍で8頭立て6番人気という低評価だった。スタートもあまり良くなかったが、すぐに先行して2番手につけると、逃げる単勝オッズ3.2倍の1番人気馬マインエヌジェムズに最後まで食い下がって、3/4馬身差の2着に入った。

翌月に出走したガルフストリームパーク競馬場ダート8ハロンの未勝利戦では、単勝オッズ2.2倍の1番人気に支持された。今回もローズ騎手とコンビを組んだ本馬は、やはりスタートがいまひとつだったが、すぐに馬群の中団好位につけると三角で先頭に並びかけ、直線では馬なりのまま走り、2着アワーダークナイトに3馬身差をつけて勝利した。

次走は翌月のフロリダダービー(米GⅠ・D9F)となった。デルタジャックポットS・サムFデーヴィスSのGⅢ競走2勝を含む4連勝中のルール(単勝オッズ2.9倍)、英国でノーフォークSを勝ちミドルパークSで2着した後に米国に移籍してきたラジオヘッド(単勝オッズ3.9倍)の2頭が人気を集めており、ローズ騎手騎乗の本馬は単勝オッズ10.5倍の4番人気だった。今回は3~4番手を進む先行策を採ったが、直線に入ると失速。最後方から追い込んで勝ったのは単勝オッズ21.7倍の9番人気馬アイスボックスで、本馬は10馬身3/4差をつけられた7着に敗れた。

しかしこのレース後に本馬は、ラスベガスでカジノを運営しているアーネスト・W・ムーディーズ氏が設立した馬主団体メルセデスステーブルの構成員であるドン・ブラウアー氏、バーニー・スキャッパ氏、デビー・ラニー氏、ジョー・トッレ氏達によって購入され、メルセデスステーブルの所有馬となり、ボブ・バファート厩舎に転厩した。スキャッパ氏は、本馬が勝った未勝利戦の様子を見てぴんときたために購入を決意したのだという。ちなみにフロリダダービーの敗因は、呼吸器疾患に罹っていたためである事が後に判明しており、それはしばらくして完治した。

その後はケンタッキーダービーを目標としてケンタッキー州に向かい、ダービートライアルS(米GⅢ・D8F)に参戦。ベイショアSを勝ってきたエイティファイヴインアフィフティが単勝オッズ2.5倍の1番人気、ロビー・アルバラード騎手に乗り代わった本馬が単勝オッズ5.8倍の2番人気、フロリダダービーで10番人気ながら2着に突っ込んでいたプレザントプリンスが単勝オッズ5.9倍の3番人気、ベイショアSの2着馬ハリケーンアイクが単勝オッズ6.9倍の4番人気となった。本馬は馬群の中団につけると、向こう正面では3番手まで押し上げていった。しかし四角から徐々に後退し、2番手から抜け出して勝ったハリケーンアイクから19馬身半差をつけられた5着と大敗。これでケンタッキーダービー出走は霧散し、ケンタッキー州を後にした。

次走はケンタッキーダービーの1週間後にテキサス州ローンスターパーク競馬場で行われたローンスターダービー(米GⅢ・D8.5F)となった。時期が時期だけに同世代の一線級は出走してこないレースであり、本馬が単勝オッズ2.2倍の1番人気に支持された。スタートが切られると、単勝オッズ2.6倍の2番人気に推されていたステークス競走初出走のヘンシンヒーローが先頭に立ち、マーティン・ガルシア騎手が騎乗する本馬は3番手を追走した。そして四角でヘンシンヒーローをかわして先頭に立つと、2着クライダーに4馬身半差をつけて快勝した。

グレード競走勝ち馬となった本馬の次走はベルモントS(米GⅠ・D12F)となった。主な対戦相手は、フロリダダービー勝利後に出たケンタッキーダービーで2着に入っていたアイスボックス、ドワイヤーSを勝ってきたフライダウン、フロリダダービーで5着した後にブルーグラスS3着・プリークネスS2着としていたファーストデュードなどであり、ケンタッキーダービーに比べると(毎年のことではあるが)出走馬の質量ともに低かった。しかしアイスボックスがフロリダダービーと打って変わって単勝オッズ2.85倍の1番人気に支持されたのに対して、ガルシア騎手騎乗の本馬は単勝オッズ18倍の9番人気という低評価だった。レースでは逃げるファーストデュードを見るように3~4番手を先行。直線に入ると、残り1ハロン地点でいったん先頭に立とうかという場面もあったが、ゴール前の一踏ん張りが効かずに後続馬に差されて、勝った単勝オッズ14倍の6番人気馬ドロッセルマイヤーから2馬身半差の4着に敗れた。

このレース後に後脚の脚首に故障を起こしたため、3歳後半シーズンは全休となり、この年の成績は6戦2勝となった。

競走生活(4歳時)

4歳時は1月にサンタアニタパーク競馬場で行われたダート8.5ハロンのオプショナルクレーミング競走から始動した(本馬は売却の対象外)。ラファエル・ベハラーノ騎手が騎乗する本馬が単勝オッズ1.5倍という断然の1番人気に支持された。レースでは馬群の中団を追走し、直線に入ってもまだ7頭立ての5番手という位置取りだった。しかしここから鮮やかに差し切り、2着ウェンウィーメットに1馬身1/4差をつけて勝利した。

次走はサンタアニタH(米GⅠ・D10F)となった。主な対戦相手は、マリブS・デルマーダービー・ストラブSの勝ち馬トゥワーリングキャンディ、ベルモントS3着後にハスケル招待S・トラヴァーズSでも3着していたファーストデュード、サンアントニオSを勝ってきたグラッディング、ネイティヴダイヴァーH・サンパスカルSの勝ち馬アギーエンジニアなどだった。122ポンドのトゥワーリングキャンディが単勝オッズ1.5倍の1番人気、116ポンドのファーストデュードが単勝オッズ5.8倍の2番人気、117ポンドのグラッディングが単勝オッズ12.8倍の3番人気、115ポンドの本馬が単勝オッズ15.8倍の4番人気となっていた。本馬の鞍上は、加国出身の女性騎手シャンタル・サザーランド騎手だった。彼女はその美貌だけでなく、人気薄の馬を上位に持ってくる手腕にも長けており、当時の米国競馬界において最も優れた女性騎手だった。

スタートが切られると、アギーエンジニアとファーストデュードが先頭争いを開始し、本馬はそれを見るように3番手を追走、トゥワーリングキャンディは4~5番手につけた。逃げた2頭の脚色が三角で衰え始めると、代わりに本馬が先頭を奪った。さらに外側からはトゥワーリングキャンディや単勝オッズ26.9倍の8番人気馬セツコも上がってきて、この3頭がほぼ横一線で直線を向いた。しかし直線に入ってすぐに本馬が外側のトゥワーリングキャンディに接触して体勢を崩し、さらに外側のセツコと本馬に挟まれる形となったトゥワーリングキャンディが大きく体勢を崩す場面が見られた。トゥワーリングキャンディはそれで失速し、レースは体勢を崩しながらも立て直して内側を逃げる本馬と、外側から並びかけてきたセツコの一騎打ちとなった。いったんはセツコが前に出る場面もあったが、本馬が差し返し、2着セツコに鼻差、後方から追い込んで3着に入った単勝オッズ70倍の10番人気馬3着クインディチマンにはさらに半馬身差をつけて勝利を収め、GⅠ競走初勝利を挙げた。

しかしトゥワーリングキャンディに対する進路妨害は審議の末にお咎め無しとなり、トゥワーリングキャンディが1番人気だったためその馬券を買っていた人が多かった事もあり、レース後には壮絶なブーイングがサンタアニタパーク競馬場を包んだ。しかし筆者がこのレースのパトロールビデオを見ると、本馬が接触したからトゥワーリングキャンディが体勢を崩したというよりも、トゥワーリングキャンディが一瞬だけ内側によれた(大きな斜行ではなく微々たるものである)ときに本馬に接触してしまい、それで体勢を崩した本馬が立て直そうとした際に外側によれて再びトゥワーリングキャンディに接触し、それでセツコと本馬の間に挟まれる形となったトゥワーリングキャンディが何度も他2頭に接触して失速したように見受けられる。直線入り口で3頭の馬体が接近しすぎていたから起きた不幸な事故であり、3頭のうち誰かが悪いとは言えないと思われる。しかしトゥワーリングキャンディの馬券を買っていた人にとっては納得がいかないのも無理からぬ事であり、現在でもこのレースの結果に関して疑問を呈する人は少なくないようである。

本馬の次走は、ケンタッキー州チャールズタウン競馬場(ケンタッキーダービーが行われるチャーチルダウンズ競馬場とよく似ている名前だが別の競馬場である)で行われたチャールズタウンクラシックS(米GⅢ・D9F)となった。なぜケンタッキー州まで出向いてこんなGⅢ競走に出たのかというと、実はこのチャールズタウンクラシックSの1着賞金は57万6千ドルという非常な高額だった(前走サンタアニタHの1着賞金45万ドルより高い)からである。この高額賞金を狙って、前年のフロリダダービー3着後に長期休養入りして3か月前に復帰してドンHで3着していたルール、サンシャインミリオンクラシックS・ガルフストリームパークスプリントCS・ガルフストリームパークHと3連勝中のタックルベリー、ケルソHの勝ち馬でジョッキークラブ金杯・メトロポリタンH3着のティズウェイ、オークローンH・フィリップHアイズリンSなどの勝ち馬デュークオブミスチーフ、エクセルシオールSなど5連勝中のインヘリットザゴールド、ハリウッド金杯・サンフェルナンドS・ホーソーン金杯Hの勝ち馬オーサムジェムなども参戦してきた。114ポンドのルールが単勝オッズ4.6倍の1番人気、120ポンドのタックルベリーが単勝オッズ5.2倍の2番人気、117ポンドのティズウェイが単勝オッズ5.6倍の3番人気、114ポンドのデュークオブミスチーフが単勝オッズ5.7倍の4番人気、120ポンドのインヘリットザゴールドが単勝オッズ5.9倍の5番人気、123ポンドの本馬が単勝オッズ6.8倍の6番人気、123ポンドのオーサムジェムが単勝オッズ18.7倍の7番人気となった。

スタートが切られるとタックルベリーが逃げを打ち、デヴィッド・フローレス騎手が騎乗する本馬は2番手を進んだ。そして三角でタックルベリーに並びかけたが、四角に入るとさらに後方から追い込んできたデュークオブミスチーフに並びかけられた。そして直線でデュークオブミスチーフに突き放され、2馬身1/4差の2着に敗れた。しかし本馬とデュークオブミスチーフの斤量差9ポンドを考慮すると、本馬にとって悪い内容ではなかった。

その後は翌月のローンスターパークH(米GⅢ・D8.5F)に向かった。対戦相手は、イロコイS・テキサスマイルSの勝ち馬ジスキーハズノーリミット、チャールズタウンクラシックS6着後にアリシーバSで4着していたオーサムジェム、この段階ではグレード競走の入着歴が無かったスマーティジョーンズSの勝ち馬フラットアウトなど4頭だった。123ポンドの本馬が単勝オッズ1.5倍の1番人気、119ポンドのジスキーハズノーリミットが単勝オッズ3.6倍の2番人気、118ポンドのオーサムジェムが単勝オッズ6.2倍の3番人気、115ポンドのフラットアウトが単勝オッズ11.7倍の4番人気となった。レースは単勝オッズ20.3倍の最低人気馬リディアズラストステップが逃げを打ち、ガルシア騎手騎乗の本馬が2番手を進む展開となった。しかし直線に入ると斤量差が響いたようで伸びず、オーサムジェムとフラットアウトの2頭にかわされ、勝ったオーサムジェムから2馬身1/4差の3着に敗れた。

カリフォルニア州に戻ってきた本馬は7月のハリウッド金杯(米GⅠ・AW10F)に向かった。対戦相手は、サンタアニタH5着後にカリフォルニアンSを勝っていたトゥワーリングキャンディ、同6着後にアリシーバSなど2連勝していたファーストデュード、サンタアニタH2着後にカリフォルニアンSでも2着していたセツコ、オーサムジェムなどだった。122ポンドのトゥワーリングキャンディが単勝オッズ2.1倍の1番人気、116ポンドのファーストデュードが単勝オッズ5.1倍の2番人気、118ポンドの本馬が単勝オッズ5.8倍の3番人気となった。このレースから主戦として固定されることになったサザーランド騎手鞍上の本馬がスタートから逃げを打ち、トゥワーリングキャンディが2番手を追いかけてきた。そして直線に入ったところでトゥワーリングキャンディが外側から本馬に並びかけ、2頭の一騎打ちが始まった。しかしゴール前で後方外側から追い込んできたファーストデュードに2頭まとめてかわされてしまい、本馬は鼻差の2着、トゥワーリングキャンディはさらに首差の3着に敗れた。

次走は翌月のパシフィッククラシックS(米GⅠ・AW10F)となった。屈腱炎のため引退に追い込まれていたファーストデュードの姿は無く、トゥワーリングキャンディ、前走4着のセツコ、チャールズウィッテンガム記念H2回・エディリードS・ジムマーレーH2回の勝ち馬アクラメーション、スワップスS・サンディエゴHの勝ち馬で一昨年のハリウッド金杯2着のトレスボラコスなどが主な対戦相手となった。トゥワーリングキャンディが単勝オッズ3.4倍の1番人気、本馬が単勝オッズ3.8倍の2番人気、アクラメーションが単勝オッズ5.4倍の3番人気となった。スタートが切られるとアクラメーションが逃げを打ち、本馬が2番手、トゥワーリングキャンディが3番手でそれを追いかけた。そのままの態勢で直線に入ってきたが、本馬が真っ先に脱落し、勝ったアクラメーションから4馬身1/4差の4着に敗れた。このレースで頭差の2着だったトゥワーリングキャンディはこの後に故障を起こしたために引退となっている。

次走は10月のグッドウッドS(米GⅠ・D9F)となった。ハスケル招待S・アファームドHを勝ってきた3歳馬コイル、ハリウッド金杯5着後にロングエイカーズマイルHを勝っていたオーサムジェム、パシフィッククラシックSで6着だったトレスボラコスなどが主な対戦相手となった。本馬が単勝オッズ2.1倍の1番人気、コイルが単勝オッズ3.4倍の2番人気、オーサムジェムが単勝オッズ6.6倍の3番人気となった。レースは本馬とトレスボラコスが激しく先頭を争い、この2頭が後続を最大で6~7馬身ほど引き離す展開となった。三角でトレスボラコスを振り切った本馬が単独で直線に入ってきたが、最後方で脚を溜めていたオーサムジェムが襲い掛かってきた。しかしなんとか凌いで半馬身差で勝利した。

その後はチャーチルダウンズ競馬場に向かい、BCクラシック(米GⅠ・D10F)に挑戦した。対戦相手は、ローンスターパークH2着後に急激に出世してサバーバンH・ジョッキークラブ金杯を勝ちホイットニー招待H・ウッドワードSで2着していたフラットアウト、ウッドワードS・アップルブロッサムH・ベルデイム招待S・コティリオンSなどを勝っていた現役米国最強牝馬ハヴァードグレイス、コックスプレート2回・アンダーウッドS・ヤルンバS・マッキノンS・タタソールズ金杯・エクリプスS・愛チャンピオンSとGⅠ競走8勝を挙げていた新国出身の名馬ソーユーシンク、BCジュヴェナイル・シャンペンS・ケルソHを勝っていた前年のエクリプス賞最優秀2歳牡馬アンクルモー、ナシュアS・レムセンS・ペンシルヴァニアダービーの勝ち馬トゥオナーアンドサーヴ、トラヴァーズS・ジムダンディSの勝ち馬でベルモントS2着のステイサースティ、前走ジョッキークラブ金杯で2着してきた前年のベルモントS勝ち馬ドロッセルマイヤー、この年のベルモントSの勝ち馬ルーラーオンアイス、前年のベルモントS8着後は全く振るわなかったアイスボックスなど11頭だった。フラットアウトが単勝オッズ4.6倍の1番人気に支持される一方で、本馬は単勝オッズ15.2倍の7番人気とあまり評価されていなかった。

スタートが切られると本馬は即座に先頭に立ち、アンクルモー、ステイサースティ、ソーユーシンクなどを引き連れて逃げ続けた。本馬を追いかけて先行した馬達は直線に入ると次々に失速。しかし本馬は直線に入っても先頭を維持し続けており、そのまま逃げ切るかと思われた。しかしゴール前で単勝オッズ15.8倍の8番人気馬ドロッセルマイヤーが大外から襲い掛かってきた。一瞬にしてかわされた本馬は1馬身半差の2着に敗退した。ドロッセルマイヤー鞍上のマイク・スミス騎手は、実は本馬鞍上のサザーランド騎手の元婚約者だったが、前年に喧嘩別れしていた。女性騎手として初のBCクラシック制覇という快挙をこともあろうに元婚約者に阻止されたサザーランド騎手の心中はいかばかりだっただろうか。4歳時はこれが最後のレースで、この年の成績は8戦3勝だった。

競走生活(5歳時)

5歳時は2月のサンアントニオS(米GⅡ・D9F)から始動した。本馬が単勝オッズ1.3倍の1番人気で、サンパスカルSを勝ってきたウーオーバンゴが単勝オッズ5.3倍の2番人気となった。ここではスタートがあまり良くなかったが、すぐに先頭争いに参加すると、向こう正面で単独先頭に立って後続を引き離し、2着ウーオーバンゴに5馬身1/4差をつけて圧勝した。

その後はサンタアニタHを回避して、ドバイワールドC(首GⅠ・AW2000m)に向かった。BCクラシックで6着に終わっていたソーユーシンク、前年のBCレディーズクラシック・アラバマS・ブラックアイドスーザンSを勝利してエクリプス賞最優秀3歳牝馬に選ばれたロイヤルデルタ、マクトゥームチャレンジR3を勝ってきたカッポーニ、ローマ賞・ウニオンレネンなどの勝ち馬ザズー、ガネー賞・ノアイユ賞・アルクール賞の勝ち馬で仏ダービー・パリ大賞2着のプラントゥール、前年の同競走で3着だったキングエドワードⅦ世S・ドバイシティオブゴールドの勝ち馬モンテロッソ、ジェベルハッタを勝ってきたマスターオブハウンズ、コンセイユドパリ賞の勝ち馬プリンスビショップ、マクトゥームチャレンジR2を勝ってきたメンディップ、日本から参戦したJBCクラシック2回・東京大賞典2回・帝王賞・川崎記念など9連勝中のスマートファルコン、一昨年の東京優駿の勝ち馬エイシンフラッシュ、前年のドバイワールドCで2着していたジャパンCダート2回・フェブラリーS・マイルCS南部杯などの勝ち馬トランセンドの12頭が対戦相手となった。ソーユーシンクが単勝オッズ2.25倍の1番人気、スマートファルコンが単勝オッズ7.5倍の2番人気、本馬が単勝オッズ9倍の3番人気となった。スタートが切られるとトランセンドが逃げを打ち、本馬は馬群の中団につけた。そして直線入り口手前で加速して先行馬群に迫ろうとしたが、直線に入ると全く伸びず、勝った単勝オッズ21倍の9番人気馬モンテロッソから21馬身差をつけられた12着と大敗を喫した。

帰国した本馬は6月のカリフォルニアンS(米GⅡ・AW9F)に向かった。対戦相手は、カーターH・ペンシルヴァニアダービー・マーヴィンルロイHの勝ち馬でBCダートマイル・ドンH2着のモーニングライン、ネイティヴダイヴァーHの勝ち馬ケトルコーン、ウエストヴァージニアダービー・スーパーダービー・アイオワダービーの勝ち馬プレイヤーフォーリリーフの3頭だった。本馬が単勝オッズ2倍の1番人気、モーニングラインが単勝オッズ3.5倍の2番人気、ケトルコーンが単勝オッズ4.4倍の3番人気、プレイヤーフォーリリーフが単勝オッズ5.2倍の4番人気となった。スタートが切られると即座に本馬が先頭に立ち、2番手のモーニングラインに1馬身ほどの差をつけながら逃げ続けた。三角に入ってモーニングラインが失速すると後は完全な独走となり、2着ケトルコーンに7馬身1/4差をつけて圧勝した。

次走のハリウッド金杯(米GⅠ・AW10F)では、パシフィッククラシックS2回・グッドウッドS・サンアントニオHを勝っていた2歳年上のリチャーズキッドとの対戦となった。リチャーズキッドは前年のドバイワールドCに出走して惨敗した後に長期休養入りしており、この年のドバイミーティングにも参加していたがドバイワールドCではなくゴドルフィンマイルのほうに参戦したために本馬とは初顔合わせとなった。124ポンドの本馬が単勝オッズ1.4倍の1番人気に支持され、120ポンドのリチャーズキッドが単勝オッズ3.9倍の2番人気、117ポンドのケトルコーンが単勝オッズ8.4倍の3番人気となった。スタートが切られると、単勝オッズ20.9倍の4番人気馬スパッドスパイヴェンスが本馬に絡んで先頭争いを展開し、この2頭が3番手以下を5馬身ほど引き離して逃げる展開となった。三角でスパッドスパイヴェンスを振り切った本馬はそのまま先頭で直線に入ると、馬群の中団から差してきたリチャーズキッドの追撃を1馬身半差で完封して勝利した。

次走のパシフィッククラシックS(米GⅠ・AW10F)では、ハリウッド金杯2着後にクーガーHを勝ってきたリチャーズキッド、ブリーダーズフューチュリティ・ブルーグラスSの勝ち馬でケンタッキーダービー3着の3歳馬デュラハン、ラウル&ラウルEチェバリエル大賞・エストレージャス大賞ジュヴェナイル・ドスミルギネアス大賞・亜ジョッキークラブ大賞と亜国のGⅠ競走を4勝した後に米国に移籍してシューメーカーマイルSで2着していたサジェスティヴボーイ、タンテオデポトランカス賞・ミルギネアス賞・アルベルトソラリマグナスコ賞・セントレジャークリスタルとチリのGⅠ競走を4勝した後に米国に移籍してクレメントLハーシュSで3着していたアマニ、3年前のハリウッド金杯とマーヴィンルロイH・カリフォルニアンS・サンディエゴHを勝っていたレイルトリップなどが主な対戦相手だった。本馬が単勝オッズ2.3倍の1番人気に支持され、リチャーズキッドが単勝オッズ5.8倍の2番人気、デュラハンが単勝オッズ6.3倍の3番人気となった。スタートが切られると単勝オッズ77.9倍の最低人気馬リヴェティングリーズンが強引に逃げを打ち、サジェスティヴボーイなども前方に行ったために、スタートがあまり良くなかった本馬は4番手を進んだ。向こう正面で先頭に立つと、そのまま直線に入り、逃げ込む構えを見せたが、後方待機策から四角でまくってきたデュラハンにゴール直前でかわされて、半馬身差の2着に敗れた。

次走は、前年までの名称グッドウッドSから本馬の父の名を冠した競走名に改名されたオーサムアゲインS(米GⅠ・D9F)となった。前走3着だったリチャーズキッド、同4着だったレイルトリップ、同5着だったサジェスティヴボーイ、アファームドHの勝ち馬でハスケル招待S2着のノニオスなどが主な対戦相手だった。本馬が単勝オッズ1.3倍の1番人気に支持され、リチャーズキッドが単勝オッズ7倍の2番人気、ノニオスが単勝オッズ11倍の3番人気となった。この時期にサザーランド騎手がいったん騎手引退を決めた(翌年に復帰)ため、本馬には4歳初戦のオプショナルクレーミング競走以来となるベハラーノ騎手が騎乗した。スタートが切られると単勝オッズ48.4倍の6番人気馬ウイニングマシーンが先頭を奪い、本馬は2番手を進んだ。そして四角でウイニングマシーンをかわして先頭に立つと、そのまま押し切って、2着ノニオスに3馬身1/4差で快勝した。

次走は地元サンタアニタパーク競馬場で行われるBCクラシック(米GⅠ・D10F)となった。対戦相手は、前走ジョッキークラブ金杯を勝ってきた前年の同競走5着馬フラットアウト、リズンスターS・ガルフストリームパークH・サバーバンHの勝ち馬で前走ウッドワードS2着のムーチョマッチョマン、本馬不在のサンタアニタHとスティーヴンフォスターHを勝ちホイットニーHで2着していたロンザグリーク、ホイットニーHを勝ちジョッキークラブ金杯で3着してきたフォートラーンド、ノニオス、オーサムアゲインSで3着だったリチャーズキッド、前年のBCクラシック7着後にシガーマイルH・ウッドワードSを勝っていたトゥオナーアンドサーヴ、トラヴァーズS・ジムダンディSの勝ち馬でシャンペンS・ウッドメモリアルS2着のアルファ、ペンシルヴァニアダービーの勝ち馬ハンサムマイク、スティーヴンフォスターH・ホーソーン金杯の勝ち馬プールプレイ、ブルーグラスSの勝ち馬でベルモントS3着のブリリアントスピードの計11頭だった。前走に続いてベハラーノ騎手が騎乗する本馬が単勝オッズ2.3倍の1番人気、フラットアウトが単勝オッズ7.2倍の2番人気、ムーチョマッチョマンが単勝オッズ7.3倍の3番人気、ロンザグリークが単勝オッズ9.8倍の4番人気、フォートラーンドが単勝オッズ10.4倍の5番人気となった。スタートが切られるとフォートラーンドが先頭に立ち、ムーチョマッチョマンが2番手につけた。一方の本馬はスタート後の行き脚が付かずに先手を取ることが出来ず、仕方がなく馬群の中団好位につけた。三角ではいったん3番手に上がったものの、直線に入ると失速。逃げ切って勝ったフォートラーンドから15馬身差をつけられた7着と大敗した。

さすがにこのままではこの年を終われないと判断されたのか、翌12月にネイティヴダイヴァーS(米GⅢ・AW9F)に出走した。BCクラシックで5着だったリチャーズキッド、同6着だったノニオス、ハリウッド金杯で3着だったケトルコーンが主な対戦相手だった。本馬には他馬勢より5ポンド以上重い124ポンドのトップハンデが課されたが、それでも単勝オッズ1.3倍の1番人気に支持された。なお、このレースから本馬の主戦は前年のBCクラシックで本馬の勝利を阻んだスミス騎手が務めることになった。新コンビの初戦は、スタートから快調に先頭を飛ばし、直線入り口でいったんノニオスに並ばれたものの突き放し、最後は1馬身1/4差をつけて勝つというものだった。5歳時の成績は8戦5勝だった。

競走生活(6歳時)

6歳時は前年と同様にサンアントニオS(米GⅡ・D9F)から始動した。対戦相手は3頭いたが、これといった馬はいなかったため、本馬が単勝オッズ1.05倍という圧倒的な1番人気に支持された。レースでは単勝オッズ13倍の3番人気馬バスマティが本馬に絡んできて、なかなか単独で先頭に立つことが出来なかったが、四角でバスマティを振り払うと直線を独走し、2着になった単勝オッズ11.2倍の2番人気馬クラブハウスライドに6馬身半差をつけて圧勝した。

前年はドバイワールドCに向かったが、そのあまりの内容の悪さから、陣営の中にはもはやドバイ遠征という選択肢は無かったようで、次走は2年ぶりの出走となるサンタアニタH(米GⅠ・D10F)となった。前年のBCクラシック4着後にサンシャインミリオンズクラシックを勝っていたロンザグリーク、ディスカヴァリーHなど2連勝してきたコールドトゥサーヴ、ストラブSを勝ってきたギルトトリップ、ストラブSで2着してきたステファノアットシー、ネイティヴダイヴァーSで4着だったリチャーズキッド、BCクラシックで9着だったハンサムマイク、クラブハウスライドなどが対戦相手となった。125ポンドの本馬が単勝オッズ2.3倍の1番人気に支持され、2連覇を狙う122ポンドのロンザグリークが単勝オッズ3.7倍の2番人気、118ポンドのコールドトゥサーヴが単勝オッズ5.1倍の3番人気となった。スタートが切られると本馬はすぐに先頭に立ち、2番手のハンサムマイク以下に2~3馬身ほどの差をつけて逃げを打った。そして直線に入るとさらに後続を引き離し、10ポンドのハンデを与えた2着クラブハウスライドに7馬身3/4差をつけて圧勝。同じコースで行われた前年のBCクラシックは何だったのかと思わせるほどの完勝だった。

その後は2年ぶりの参戦となるチャールズタウンクラシックS(米GⅡ・D9F)に向かった。1着賞金はさらに増えており、サンタアニタH(45万ドル)の2倍以上である100万ドルだった。主な対戦相手は、クラブハウスライド、前走4着のロンザグリーク、前年の同競走とウエストチェスターS・トゥルーノースH・フォールハイウェイトHを勝っていたカイザエレトロニカなどだった。123ポンドの本馬が単勝オッズ1.3倍の1番人気に支持され、118ポンドのロンザグリークが単勝オッズ4.9倍の2番人気、118ポンドのカイザエレトロニカが単勝オッズ7倍の3番人気、116ポンドのクラブハウスライドが単勝オッズ13.8倍の4番人気だった。スタートが切られると、単勝オッズ39.5倍の最低人気馬パーカッションが先頭を奪い、本馬は2番手を進んだ。そして直線入り口で先頭に立ったところに、後方からの追い込みに賭けたクラブハウスライドとロンザグリークの2頭が襲い掛かってきた。しかし本馬が2頭の追撃を抑えて、2着クラブハウスライドに半馬身差、3着ロンザグリークにはさらに鼻差をつけて勝利した。

地元に戻ってきた本馬は一息入れて、7月のハリウッド金杯(米GⅠ・AW10F)に出走した。対戦相手は、3戦連続で本馬の2着だった後にカリフォルニアンSを勝っていたクラブハウスライド、東京シティカップSの勝ち馬スカイキングダム、前年のネイティヴダイヴァーSで3着だったケトルコーンなどだった。127ポンドの本馬が単勝オッズ1.3倍の1番人気に支持され、119ポンドのクラブハウスライドが単勝オッズ4.4倍の2番人気、116ポンドのスカイキングダムが単勝オッズ10倍の3番人気、116ポンドのケトルコーンが単勝オッズ11.4倍の4番人気となった。スタートが切られるとすぐに本馬が先頭に立ち、11ポンド斤量が軽いスカイキングダムが2番手で追いかけてきた。しかし最初の2ハロンを25秒、半マイルを49秒31というスローペースに落として逃げた本馬には余裕があり、直線入り口2番手から追いかけてきたケトルコーンを楽々と抑えて1馬身差で勝利した。

次走はパシフィッククラシックS(米GⅠ・AW10F)となった。対戦相手は、ケトルコーン、前年のパシフィッククラシックS勝利以降は不振に陥っていたデュラハン、加国のGⅢ競走ダーラムカップS・ドミニオンデイSの勝ち馬で前年のBCダートマイル3着のデレゲーション、英国のGⅢ競走ウインターダービーの勝ち馬で一昨年のBCジュヴェナイルターフ3着のファラージ、サンタアニタH6着後にクーガーSを勝っていたリチャーズキッドなどだった。スミス騎手が同日にサラトガ競馬場で行われたパーソナルエンスンHでロイヤルデルタに騎乗したために、本馬には一昨年のローンスターパークH以来となるガルシア騎手が騎乗した。それが影響したのか、本馬は1番人気ながら単勝オッズ2.7倍だった。前年の覇者デュラハンが単勝オッズ4.8倍の2番人気、ケトルコーンが単勝オッズ7.4倍の3番人気と続いた。しかし鞍上が代わっても本馬の走りに変わりはなく、スタートから順調に先頭を飛ばした。そして四角から一気に後続馬を引き離して、直線入り口では既に勝負を決定づけてしまった。後は直線で独り旅を満喫するだけで、2着ケトルコーンに8馬身半差をつけて圧勝。2着争いは非常に白熱しており、むしろそちらのほうが盛り上がっていた。

これで本馬はサンタアニタH・ハリウッド金杯・パシフィッククラシックSを同一年に全て勝利する“California triple crown”を達成した。これは2006年のラヴァマン以来7年ぶり史上2頭目の快挙だった。ちなみにこのレースにおける本馬の公式な勝ちタイムは2分00秒69だが、実際には1分59秒26だったとする意見も根強く、それが正しかった場合には前年の同競走でデュラハンが計時した1分59秒54のコースレコードを更新する事になる。

その後は、前年に引き続きサンタアニタパーク競馬場で行われたBCクラシック(米GⅠ・D10F)に直行した。対戦相手は、前走オーサムアゲインSを勝ってきた前年の同競走2着馬ムーチョマッチョマン、クイーンアンS・英国際Sの勝ち馬でエクリプスS2着のデクレレーションオブウォー、この年のベルモントS・ジムダンディSの勝ち馬でブルーグラスS・ジョッキークラブ金杯2着のパレスマリス、トラヴァーズS・レベルS・ペンシルヴァニアダービーの勝ち馬ウィルテイクチャージ、この年のスティーヴンフォスターHを勝っていた前年の同競走優勝馬フォートラーンド、この年のサバーバンH・ウエストチェスターSを勝ちウッドワードSで2着していた前年の同競走3着馬フラットアウト、前年のハスケル招待Sの勝ち馬でベルモントS・オーサムアゲインS2着のペインター、ドワイヤーSの勝ち馬でトラヴァーズS2着のモレノ、エクセルシオールS・ピムリコスペシャルS・フィリップHアイズリンSの勝ち馬ラストガンファイター、本馬が惨敗した前年のドバイワールドCで3着していたプラントゥールの計10頭だった。スミス騎手が鞍上に戻ってきた本馬が単勝オッズ2.7倍の1番人気、ムーチョマッチョマンが単勝オッズ5倍の2番人気、デクレレーションオブウォーが単勝オッズ7.7倍の3番人気となった。スタートが切られるとすぐに本馬が先頭に立とうとしたが、他馬勢も本馬をすんなりと逃がすまいと進出してきた。そして最初のコーナーでフォートラーンドとモレノの2頭が内側の経済コースを利して先頭を奪い、本馬はいったん3番手に下がった。それでも先頭集団に入った状態で四角を回って直線へと入ってきたが、ここで失速。勝ったムーチョマッチョマンから11馬身差の9着と惨敗した。前年に引き続く不可解な惨敗だった。

その後はケンタッキー州に向かい、11月末のクラークH(米GⅠ・D9F)に出走した。BCクラシックで2着と健闘していたウィルテイクチャージ、前年の同競走で3着していたスーパーダービーの勝ち馬バーボンカーリッジ、前年のトラヴァーズSの勝ち馬で前走BCダートマイル2着のゴールデンチケット、スマーティジョーンズSの勝ち馬イースターギフトなどが対戦相手となった。126ポンドの本馬が単勝オッズ2.2倍の1番人気、123ポンドのウィルテイクチャージが単勝オッズ3.4倍の2番人気、117ポンドのバーボンカーリッジが単勝オッズ7.8倍の3番人気となった。スタートが切られると、単勝オッズ15.1倍の6番人気馬アワーダブルプレイが先頭に立ち、先手を取れなかった本馬は3番手を進んだ。しかし四角で先頭に立ってそのまま直線に入り、押し切るかに見えた。しかしゴール直前でゴール板の影か何かに驚いてジャンプしてしまい、本馬をマークするように走っていたウィルテイクチャージに僅かにかわされて頭差の2着に敗れた。

6歳時の成績は7戦5勝で、BCクラシックの前まではかなり有力視されていたエクリプス賞年度代表馬や最優秀古馬牡馬騙馬といったタイトルはいずれもワイズダンに奪われてしまった(ちなみにカリフォルニア州年度代表馬はカリフォルニア州産馬が対象であるため、ケンタッキー州産馬である本馬は対象外である)。

競走生活(7歳時)

7歳時は3年連続でサンアントニオS(米GⅠ・D9F)から始動した。目立つ対戦相手はスワップスS・ネイティヴダイヴァーS・サンパスカルSを勝ってきたブルースキーズンレインボウズくらいであり、本馬が単勝オッズ1.3倍の1番人気に支持され、ブルースキーズンレインボウズが単勝オッズ4.8倍の2番人気となった。スタートが切られると本馬とブルースキーズンレインボウズの2頭が同時に飛び出して先頭争いを展開した。瞬く間に後続馬との差を広げて2頭のマッチレースになるかと思われたが、最初の2ハロンが22秒75というハイペースで競り合ったためか、2頭とも直線でスタミナが切れて失速。レースは単勝オッズ16.9倍の4番人気馬ブリンゴが勝利を収め、本馬は6馬身半差の5着、ブルースキーズンレインボウズはさらに3馬身3/4差の6着に終わった。

次走はサンタアニタH(米GⅠ・D10F)となった。前走のサンシャインミリオンズクラシックを勝ってきたムーチョマッチョマン、ドンHで2着してきた前年のエクリプス賞最優秀3歳牡馬ウィルテイクチャージ、前年のサンフェリペSの勝ち馬ヒヤーザゴースト、ブリンゴ、サンアントニオSで2着してきたインペラティヴなどが主な対戦相手となった。124ポンドのムーチョマッチョマンが単勝オッズ2.2倍の1番人気、123ポンドのウィルテイクチャージが単勝オッズ2.5倍の2番人気、122ポンドの本馬が単勝オッズ4.8倍の3番人気、117ポンドのヒヤーザゴーストが単勝オッズ21.2倍の4番人気となった。

スタートが切られると本馬が先頭を伺ったが、ヒヤーザゴーストが絡んできて、2頭が先頭争いを展開した。しかし最初のコーナーを回るところで、本馬が内側の経済コースを利してヒヤーザゴーストを振り払い、単独で先頭に立った。最初の2ハロン通過が22秒91、半マイル通過は45秒39というハイペースだったが、レース中盤では単騎で逃げることが出来ていた。三角では後方からウィルテイクチャージとムーチョマッチョマンが迫ってきたが、前年のBCクラシックや前走のサンアントニオSとは異なり手応え十分だった本馬は2頭に抜かさせなかった。そのままの態勢で直線に入ると、ムーチョマッチョマンは失速し、直線で本馬を追いかけてきたのはウィルテイクチャージのみだった。しかし本馬が押し切り、2着ウィルテイクチャージに1馬身3/4差、3着ブリンゴにはさらに8馬身差をつけて勝利を収めた。

サンタアニタHを2連覇したのは、1982年のジョンヘンリー、2003年のミルウォーキーブルー、2007年のラヴァマンに次いで史上4頭目。そして同競走を3勝したのは史上初となった。勝ちタイムの1分58秒17は、1979年にアファームドが計時した1分58秒6のレースレコードを35年ぶりに更新するものだった。

次走は前年に続いてチャールズタウンクラシックS(米GⅡ・D9F)となった。1着賞金は前年と同じく100万ドルだった。本馬が他の出走全馬より5ポンド重い123ポンドでも単勝オッズ1.6倍の1番人気に支持され、エクセルシオールSで2着してきたロングリヴァーが単勝オッズ3.4倍の2番人気、前年のハリウッド金杯4着後は振るわなかったクラブハウスライドが単勝オッズ9.6倍の3番人気、前年のBCクラシック10着から直行してきたモレノが単勝オッズ10.1倍の4番人気となった。スタートが切られるとまずはモレノが先頭に立ったが、しばらくして本馬がそれをかわして先頭に立った。そのまま先頭を維持し続けて直線に入ってきたが、ここで意外な馬にかわされた。前走のサンタアニタHで本馬から17馬身3/4差の7着に終わっていた単勝オッズ27.5倍の6番人気馬インペラティヴだった。前走で6ポンドのハンデを与えながら相手にもしなかった馬に脚を掬われた本馬は、1馬身半差の2着に敗れた。

その後は、ハリウッドパーク競馬場が閉鎖されたためにサンタアニタパーク競馬場に開催場所を移したハリウッド金杯改めサンタアニタ金杯(米GⅠ・D10F)に出走した。対戦相手は、プレシジョニストSを勝ちカリフォルニアンSで2着してきたフューリーカプコリ、インペラティヴ、チャールズタウンクラシックS4着後にカリフォルニアンSの2連覇を果たしてきたクラブハウスライド、東京シティカップSの勝ち馬でカリフォルニアンS3着のマジェスティックハーバーなどだった。本馬が単勝オッズ1.8倍の1番人気に支持され、フューリーカプコリが単勝オッズ4.8倍の2番人気、クラブハウスライドが単勝オッズ6.1倍の3番人気、インペラティヴが単勝オッズ7.6倍の4番人気となった。スタートが切られるとやはり本馬が先頭に立ったが、フューリーカプコリが強引に本馬をかわして逃げを打ったため、仕方なく本馬は3馬身ほど後方の2番手につけた。しかしフューリーカプコリが刻んだペースは最初の2ハロンが22秒38、半マイルが45秒39というハイペースとなった。そのためにフューリーカプコリだけでなく本馬も、かなり離れた3番手以降の馬達の格好の餌食となってしまった。結局は3番手から三角途中で先頭に立ったマジェスティックハーバーが直線独走で圧勝し、6馬身1/4差の2着がクラブハウスライド、さらに1馬身3/4差の3着がインペラティヴで、本馬はさらに4馬身半差、マジェスティックハーバーからは12馬身半差の4着に敗れた。

次走のパシフィッククラシックS(米GⅠ・AW10F)では、圧勝に次ぐ圧勝でキャッシュコールフューチュリティ・ロスアラミトスダービーなど5戦無敗の成績を誇っていた前年のエクリプス賞最優秀2歳牡馬シェアードビリーフ、マジェスティックハーバー、クラブハウスライド、インペラティヴ、UAEダービーの勝ち馬トーストオブニューヨーク、クーガーHを勝ってきたアイリッシュサーフなどが対戦相手となった。スミス騎手がシェアードビリーフに騎乗したために、本馬には前年と同じくガルシア騎手が騎乗した。シェアードビリーフが単勝オッズ2.2倍の1番人気に支持され、本馬が単勝オッズ3.5倍の2番人気、マジェスティックハーバーが単勝オッズ7.7倍の3番人気となった。スタートが切られると本馬はすぐに先頭に立ったが、単勝オッズ26倍の7番人気馬ミステリートレインが競りかけてきたため、最初の2ハロンを22秒49、半マイルを45秒75という速いペースで逃げることになった。向こう正面でミステリートレインが早々に失速したために途中から単騎逃げにはなったが、四角に入ると失速。勝ったシェアードビリーフから5馬身1/4差の4着に敗退してしまった。

バファート師はレース後に「ゲームオンデュードのようなタイプの競走馬にとっては、玉砕覚悟で競りかけてくる人気薄の馬が最大の強敵です。私はそういった馬の事を憎みます」と述べた。彼の気持ちはもっともだが、競りかけられると弱いというのは競走馬としての重大な欠点であり、精神的に強い本物の強豪馬は競りかけられても動じずに勝つものである。結局は本馬にそういった精神的な強さを教えられなかったバファート師の責任でもあると思うのだが。

いずれにしても、このパシフィッククラシックSの敗戦により、本馬の競走能力が減退してきている事が明白になったため、翌9月に競走馬引退が発表された。7歳時の成績は5戦1勝だった。

競走馬としての評価

国外遠征であるドバイワールドCの惨敗はまだ理解できるが、地元で出走したBCクラシックの2度に渡る大敗は実に不可解(チャーチルダウンズ競馬場で出たBCクラシックでは惜しい2着だったにも関わらず)であり、米ブラッドホース誌も「彼は数多くの歴史的成功を収めましたが、同時に最も理解しがたい馬でもありました」と本馬の競走馬引退時に書いている。

しかし米ブラッドホース誌は同時に「ケルソ、フォアゴー、ジョンヘンリーの3頭は間違いなく私達の時代における騙馬3強でしたが、ゲームオンデュードが勝ったレースに目を向けると、その3頭にも引けを取らない功績を挙げています」と評し、本馬は米国競馬史上有数の騙馬であるという評価を下している。

本馬は結局エクリプス賞には縁が無かったが、エクリプス賞に縁が無かった馬としては近年最高の馬という、別の意味における名誉を獲得したとされている。獲得賞金総額は649万8893ドルで、騙馬としては当時まだ現役競走馬だったワイズダンの最終賞金総額755万2920ドル、ジョンヘンリーの659万7947ドルに次ぐ史上3位となった。

血統

Awesome Again Deputy Minister Vice Regent Northern Dancer Nearctic
Natalma
Victoria Regina Menetrier
Victoriana
Mint Copy Bunty's Flight Bunty Lawless
Broomflight
Shakney Jabneh
Grass Shack
Primal Force Blushing Groom Red God Nasrullah
Spring Run
Runaway Bride Wild Risk
Aimee
Prime Prospect Mr. Prospector Raise a Native
Gold Digger
Square Generation Olden Times
Chavalon
ワールドリープレジャー Devil His Due Devil's Bag Halo Hail to Reason
Cosmah
Ballade Herbager
Miss Swapsco
Plenty O'toole Raise a Cup Raise a Native
Spring Sunshine
Li'l Puss Noble Jay
Li'l Sis
Fast Pleasure Fast Play Seattle Slew Bold Reasoning
My Charmer
Con Game Buckpasser
Broadway
Sis Pleasure Fager What a Pleasure Bold Ruler
Grey Flight
Princess Fager Dr. Fager
Princess Roycraft

オーサムアゲインは当馬の項を参照。

母ワールドリープレジャーは米国で走り現役成績31戦8勝。ローレルパーク競馬場で行われたポライトリーSというステークス競走を勝っている。競走馬引退後は米国で繁殖入りして本馬を含む3頭の子を産んだ後、9歳時の2009年に韓国に輸出された。その後になって本馬が活躍したために注目され、本馬が最初のサンタアニタHを勝った2011年に社台グループによって購入されて、現在は日本で繁殖入りしている。ワールドリープレジャーの母ファストプレジャーの従兄弟には、日本で走った悲運の名短距離馬ケイエスミラクル【スワンS(GⅡ)】がいる。ファストプレジャーの曾祖母プリンセスロイクラフトはテストSの勝ち馬。アグネスデジタルの父として知られるクラフティプロスペクターも近親(ファストプレジャーの母の従兄弟に当たる)。→牝系:F1号族④

母父デヴィルヒズデューはロージズインメイの項を参照。

競走馬引退後

競走馬を引退した本馬は、引退発表の翌10月には功労馬保護団体オールドフレンズがケンタッキー州に所有する牧場に移り住み、ここで余生を送ることになった。

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