ディヴァインプロポーションズ

和名:ディヴァインプロポーションズ

英名:Divine Proportions

2002年生

鹿毛

父:キングマンボ

母:ミストゥリアリティ

母父:サドラーズウェルズ

距離や馬場状態不問の走りでデビューから仏1000ギニー・仏オークスを含む無傷の9連勝を達成しカルティエ賞最優秀2歳牝馬と3歳牝馬を連続受賞

競走成績:2・3歳時に仏で走り通算成績10戦9勝

誕生からデビュー前まで

ニアルコスファミリーの米国名義フラックスマンホールディングスが米国ケンタッキー州において生産した馬で、ニアルコスファミリーの所有馬として仏国パスカル・バリー調教師に預けられた。主戦はクリストフ・ルメール騎手で、本馬の全レースに騎乗した。

競走生活(2歳時)

2歳5月にメゾンラフィット競馬場で行われたシャトーブスカ賞(T1000m)でデビューして、2着ピヴォックに3/4馬身差で勝ち上がった。

それから1か月後にはシャンティ競馬場でボワ賞(GⅢ・T1000m)に出走。ここでは3連勝中のグレートブラッドが単勝オッズ1.8倍の1番人気に支持されており、リステッド競走ラフレッチェ賞を勝ってきたサリュトーマが単勝オッズ4.9倍の2番人気で、本馬は単勝オッズ5.6倍の3番人気だった。しかし逃げるグレートブラッドとサリュトーマの2頭を3番手で追いかけると、残り300m地点で仕掛けて残り200m地点で楽々と抜け出し、2着グレートブラッドに4馬身差、3着サリュトーマにはさらに2馬身半差をつけて完勝した。

さらに1か月後にはメゾンラフィット競馬場でロベールパパン賞(GⅡ・T1100m)に出走した。グレートブラッド、サリュトーマ、伊国のGⅢ競走プリミパッシ賞を勝ってきたシフティングプレイスなどが出走してきたが、前走の勝ち方が評価された本馬が単勝オッズ1.53倍の1番人気に支持された。レースでは単勝オッズ15倍の4番人気馬シフティングプレイスが逃げを打ち、グレートブラッドが2番手、本馬は3番手を追走した。そして今回も残り200m地点で先頭に立ち、2着シフティングプレイスに1馬身差で勝利した。

それからさらに4週間後のモルニ賞(GⅠ・T1200m)でGⅠ競走に初出走。対戦相手は、前走のカブール賞を5馬身差で勝ってきた米国産馬レイマン(愛オークス馬アリダレスの孫で、日本の大種牡馬サンデーサイレンスを父に持つ)、レイルウェイS2着・愛フェニックスS3着のロシアンブルー、ジュライSを勝ってきたキャプテンハリケーン、リッチモンドS・ノーフォークS2着・ジュライS3着のミスティカルランド、モールコームSを勝ってきたトゥルヌド、シフティングプレイス、ロベールパパン賞5着後にカブール賞で3着してきたサリュトーマなどだった。レイマンが単勝オッズ2.5倍の1番人気、本馬が単勝オッズ2.875倍の2番人気、ロシアンブルーが単勝オッズ6倍の3番人気、キャプテンハリケーンが単勝オッズ9倍の4番人気となった。不良馬場で行われたレースでは本馬とレイマンの2頭が先行して、直線でもこの2頭の勝負になった。しかし残り200m地点から鋭い脚を使った本馬が2着レイマンに1馬身半差をつけて快勝した。

前年には本馬の半兄ウィッパーもこのレースを勝っており、兄妹制覇となった。この勝利により、翌年の英1000ギニーの前売りオッズで11倍の1番人気となった(ただし結局は英1000ギニーには参戦しなかった)。

続いて10月のマルセルブサック賞(GⅠ・T1600m)に出走した。目立つ対戦相手はメイヒルSで2着してきたクイーンオブポーランド、カルヴァドス賞3着馬ゴレラくらいであり、本馬が単勝オッズ1.73倍の1番人気に支持され、クイーンオブポーランドが単勝オッズ6倍の2番人気となった。ここでも道中は逃げる単勝オッズ26倍の8番人気馬ティティアンタイムを見るように2番手を追走。そして残り300m地点で仕掛けて残り200m地点で抜け出すという勝ちパターンに持ち込み、2着に粘ったティティアンタイムに2馬身差をつけて完勝した。

2歳時は5戦全勝の成績で、この年のカルティエ賞最優秀2歳牝馬を受賞した。

競走生活(3歳時)

3歳時は4月にロンシャン競馬場で行われた、仏1000ギニーの前哨戦グロット賞(GⅢ・T1600m)から始動した。インプルーデンス賞を勝ってきたヴァリマ、デビュータントSの勝ち馬シルクアンドスカーレット、マルセルブサック賞で7着だったゴレラ、レゼルヴォワ賞3着馬イソルディナなどが対戦相手となった。本馬が単勝オッズ1.67倍の1番人気、ヴァリマが単勝オッズ6.5倍の2番人気、シルクアンドスカーレットが単勝オッズ8倍の3番人気となった。レースは不良馬場で行われたが、本馬にはやはり関係なかった。前を行くヴァリマ、イソルディナ、フレーミングクリフズを見るように4番手を追走すると、残り300m地点で仕掛けて残り150m地点で難なく抜け出し、2着イソルディナに2馬身差で勝利した。

続いて本番の仏1000ギニー(GⅠ・T1600m)に参戦した。前走2着のイソルディナ、前走グロット賞で4着ながらもゴール前で豪脚を見せたドバイミレニアム産駒のアンティーク、前走6着のシルクアンドスカーレット、チェヴァリーパークSの勝ち馬マジカルロマンス、アランベール賞の勝ち馬トゥーピー、ラウンドタワーSの勝ち馬チェロキー、本馬と同厩のペースメーカー役ラトゥキドゥルの計7頭が対戦相手となった。本馬が単勝オッズ1.29倍という圧倒的な1番人気に支持され、イソルディナが単勝オッズ11倍の2番人気、アンティークが単勝オッズ12倍の3番人気という、完全な本馬の1強独裁状態だった。

レースが重馬場で行われたためか、ペースメーカー役としての出走だったはずのラトゥキドゥルは先頭に立つ事が出来ず、前走では後方からレースを進めたアンティークが押し出されて先頭に立った。一方の本馬はアンティークを見るように2番手を追走した。他馬勢は重馬場に苦戦していたが、本馬のみは楽々と走っていた。そして残り400m地点で早くも先頭に立つと、そのまま1頭だけで悠々とゴールまで走り抜け、2着に追い上げてきたトゥーピーに5馬身差をつけて圧勝。無敗の仏1000ギニー馬となった。

そのままマイル路線を進むかとも思われたが、次走は仏オークス(GⅠ・T2100m)となった。クレオパトル賞・サンタラリ賞を連勝してきたヴァダウィナ、ヴァントー賞を勝ってきたサトワクイーン、ペネロープ賞とサンタラリ賞で連続2着してきたアルゼンチナ、ペネロープ賞の勝ち馬でサンタラリ賞3着のパーフェクトヘッジ、社台グループの所有馬で横山典弘騎手が手綱を取るクリテリウムドサンクルーの勝ち馬パイタなどなどが対戦相手となった。本馬が単勝オッズ1.53倍の1番人気に支持され、ヴァダウィナが単勝オッズ2.75倍の2番人気、サトワクイーンが単勝オッズ15倍の3番人気となり、今回は本馬とヴァダウィナの2強ムードだった。それは本馬に関しては今までのマイル以下の距離における圧倒的な強さから距離不安を指摘する声があったが、距離2100mのクレオパトル賞と距離2000mのサンタラリ賞を勝ってきたヴァダウィナには距離不安が無かったからだった。

スタートが切られると、ヴァダウィナ陣営が用意したペースメーカー役のアルハーマニアと本馬陣営が用意したペースメーカー役のサパが先頭に立ち、本馬は3番手、ヴァダウィナは5番手を追走した。そのままの態勢で直線に入ると、本馬は外側に持ち出して残り500m地点で先頭に立った。2頭のペースメーカーが失速したために先頭に立ったものであり、本馬鞍上のルメール騎手はまだ仕掛けていなかった。仕掛けたのは残り300m地点からで、残り200m地点から事前の不安を吹き飛ばす素晴らしい伸びを見せて、最後方待機策から2着に追い込んできたアルゼンチナに3馬身差をつけて楽勝。1994年のイーストオブザムーン以来11年ぶりとなる仏1000ギニー・仏オークスのダブル制覇を無敗で達成した。

続いて出走したのは古馬牝馬相手のアスタルテ賞(GⅠ・T1600m)だった。グロット賞で本馬の3着に敗れた後に仏1000ギニーを回避してサンドランガン賞を勝ってきたゴレラ、仏1000ギニー2着後に出走したサンドランガン賞で2着だったトゥーピー、クロエ賞を勝ってきたニードルクラフト、クロエ賞で2着してきたライブライフ、ポルトマイヨ賞の勝ち馬クープドシャンプ、前年の独1000ギニー馬シャピラなどが対戦相手となった。しかし古馬勢を含めてとても本馬に敵いそうな馬はいなかった。そのため本馬が単勝オッズ1.22倍という断然の1番人気に支持され、ゴレラが単勝オッズ11倍の2番人気、トゥーピーとニードルクラフトが並んで単勝オッズ13倍の3番人気となった。

今までは先行策ばかり採ってきた本馬だが、ここでは10頭立ての9番手を追走するという意外な展開となった。一瞬だけ進路が塞がる場面もあったが、すぐさま進路を確保して進出すると、残り200m地点で先頭に立ち、追い上げて2着となった単勝オッズ41倍の9番人気馬シャピラに2馬身差をつけて勝利した。

もはや牝馬相手では敵なしとなった本馬は、次走ジャックルマロワ賞(GⅠ・T1600m)で古馬牡馬に挑戦状を叩きつけた。挑戦を受けたのは、愛2000ギニー・愛ナショナルS・スーパーレイティヴSの勝ち馬で英ダービー3着の同世代馬ドバウィ、イスパーン賞・クイーンアンS・ユジェーヌアダム賞・ニエル賞・メシドール賞の勝ち馬で前年の仏ダービー・リュパン賞3着のヴァリクシール、そして前年のジャックルマロワ賞・前走のモーリスドギース賞・一昨年のモルニ賞・クリテリウムドメゾンラフィットを勝っていた本馬の1歳年上の半兄ウィッパーの3頭の牡馬だった(レースは6頭立てだったが、そのうち2頭は本馬陣営とドバウィ陣営が用意したペースメーカー)。底知れぬ強さが期待された本馬が単勝オッズ1.83倍の1番人気に支持され、イスパーン賞・クイーンアンS・メシドール賞と3連勝中のヴァリクシールが単勝オッズ4倍の2番人気、ドバウィが単勝オッズ4.33倍の3番人気、ウィッパーが単勝オッズ11倍の4番人気となった。

スタートが切られるとドバウィ陣営が用意したカウンシルメンバーと本馬陣営が用意したスマランの2頭のペースメーカーがレースを引っ張り、ドバウィが3番手、本馬が4番手、ウィッパーが5番手、ヴァリクシールが最後方を追走した。ペースメーカー2頭が失速すると、ドバウィが代わりに先頭に立った。本馬はドバウィを追いかけようとしたが、差を縮めることが出来ず、逆に後方から来たウィッパーとヴァリクシールの2頭に差されてしまった。結局はドバウィが勝ち、1馬身半差の2着にウィッパー、さらに3/4馬身差の3着にヴァリクシールが入り、本馬はヴァリクシールから2馬身半差の4着に終わり、デビューからの連勝は9で止まった。

本馬に先着した3頭はいずれもGⅠ競走勝ちがある強豪牡馬ではあったとは言え、本馬は牝馬相手には強くても牡馬相手には通用しないという残念な結果になってしまった。そしてその後すぐに、右前脚に屈腱炎を発症したために、3歳時5戦4勝の成績で競走馬を引退することが発表された。シーズン後半は走らなかった本馬だが、前半のパフォーマンスが評価されて、この年のカルティエ賞最優秀3歳牝馬を受賞している。

競走馬としての特徴

本馬は距離も馬場状態も関係なく走った馬であり、「米国に連れて行っても、新国に連れて行っても、日本に連れて行っても、どんな相手でも勝つことが出来ただろう」と言われたほどだった。

馬体はやや小柄ながら、気性が良くて扱いやすい馬で、スタート直後に加速して好位につけ、ゴール前で再加速して抜け出すという、2段加速の戦法を得意とした。

血統

Kingmambo Mr. Prospector Raise a Native Native Dancer Polynesian
Geisha
Raise You Case Ace
Lady Glory
Gold Digger Nashua Nasrullah
Segula
Sequence Count Fleet
Miss Dogwood
Miesque Nureyev Northern Dancer Nearctic
Natalma
Special Forli
Thong
Pasadoble Prove Out Graustark
Equal Venture
Santa Quilla Sanctus
Neriad
Myth to Reality Sadler's Wells Northern Dancer Nearctic Nearco
Lady Angela
Natalma Native Dancer
Almahmoud
Fairy Bridge Bold Reason Hail to Reason
Lalun
Special Forli
Thong
Millieme Mill Reef Never Bend Nasrullah
Lalun
Milan Mill Princequillo
Virginia Water
Hardiemma ハーディカヌート ハードリドン
Harvest Maid
Grand Cross Grandmaster
Blue Cross

キングマンボは当馬の項を参照。

母ミストゥリアリティは現役成績14戦4勝。その産駒には、本馬の半兄ウィッパー(父ミエスクズサン)【モルニ賞(仏GⅠ)・ジャックルマロワ賞(仏GⅠ)・モーリスドギース賞(仏GⅠ)・クリテリウムドメゾンラフィット(仏GⅡ)】がいる。キングマンボとミエスクズサンは全兄弟なので、本馬とウィッパーは半兄妹と言っても血統構成は殆ど変わらない(父の名前と生年が違うだけ)。ミストゥリアリティの母ミリームは4戦未勝利だが、近親には活躍馬の名前が複数見られる。例えば、ミリームの全兄にはシャーリーハイツ【英ダービー(英GⅠ)・愛ダービー(愛GⅠ)・ロイヤルロッジS(英GⅡ)・ダンテS(英GⅢ)】が、ミリームの半姉ペンプトンの子にはガルヌーク【リブルスデールS(英GⅡ)】、ミスターピンティップス【オーモンドS(英GⅢ)】、バンケット【プリンセスロイヤルS(英GⅢ)】、孫にはペンタイア【キングジョージⅥ世&クイーンエリザベスS(英GⅠ)・愛チャンピオンS(愛GⅠ)】、曾孫にはケーニヒスティーガー【伊グランクリテリウム(伊GⅠ)】が、ミリームの半妹ハーディホステスの曾孫にはサイドグランス【マッキノンS(豪GⅠ)】がいる。→牝系:F1号族④

母父サドラーズウェルズは当馬の項を参照。

ちなみに父キングマンボ、母父サドラーズウェルズという組み合わせはエルコンドルパサーと同じである。

競走馬引退後

競走馬を引退した本馬は、フラックスマンホールディングスが米国ケンタッキー州に所有する牧場で繁殖入りした。初年度・5年目はジャイアンツコーズウェイ、2年目・3年目はエーピーインディ、4年目はダイナフォーマー、7年目はガリレオと交配されている。ジャイアンツコーズウェイとの間に産まれた初子の牡駒エイトフォールドパスがエクリプス賞(仏GⅢ)を勝つなど13戦4勝の成績を残し、2013年から南アフリカで種牡馬入りしている。

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