ポリッシュプレシデント

和名:ポリッシュプレシデント

英名:Polish Precedent

1986年生

鹿毛

父:ダンチヒ

母:パストイグザンプル

母父:バックパサー

従兄弟のジルザルには競走馬として敵わなかったが種牡馬としては確実に上回ったピルサドスキーの父

競走成績:2・3歳時に仏英で走り通算成績9戦7勝2着1回

誕生からデビュー前まで

米国ケンタッキー州において馬産団体プラセ・ジェネラル・パートナーシップにより生産され、ドバイのシェイク・モハメド殿下に購入され、仏国アンドレ・ファーブル調教師に預けられた。主戦はキャッシュ・アスムッセン騎手が務めた。

競走生活

デビュー前から期待馬だったが、2歳9月にメゾンラフィット競馬場で出走したデビュー戦はレース中に負傷して9着に惨敗。7か月間かけて調整された後の3歳4月に復帰し、メゾンラフィット競馬場で出走したレースを鼻差で勝利した。

5月にロンシャン競馬場で出走したポンヌフ賞(T1400m)では首差で勝利。ポンヌフ賞の4日前に既に仏2000ギニーは終わっていたため、その後はポンヌフ賞から13日後のパレロワイヤル賞(仏GⅢ・T1400m)に出走。2着アリオシャに2馬身半差をつけて勝利した。

6月に出走したジョンシェール賞(仏GⅢ・T1600m)では、ヨーロピアンフリーHでデインヒルの2着だったフォリーフットなどの姿があったが、直線入り口4番手から残り200m地点で先頭に立った本馬が押し切り、2着シティダンサーに3/4馬身差で勝利した。7月に出走したメシドール賞(仏GⅢ・T1600m)も、2着スイートシネに3/4馬身差で勝利した。

そして機は熟したとばかりに、8月のジャックルマロワ賞(仏GⅠ・T1600m)に出走。今まで本馬が勝ってきたレースの対戦相手にはこれといった馬がいなかったのだが、ここではさすがにかなりの有力馬が顔を揃えていた。具体的には、英1000ギニー・ロックフェルSの勝ち馬ミュージカルブリス、モルニ賞・ボワ賞の勝ち馬テルサ、アスタルテ賞・ミュゲ賞・ポルトマイヨ賞の勝ち馬でフォレ賞・イスパーン賞2着・ジャックルマロワ賞・ムーランドロンシャン賞3着のガビナ(次走のフォレ賞を勝利)、ロッキンジS・セレクトSの勝ち馬で英ダービー・英チャンピオンS2着・サセックスS3着のモストウェルカム、パース賞・エドモンブラン賞・シュマンドフェルデュノール賞の勝ち馬で仏2000ギニー2着・イスパーン賞3着のフレンチストレス、チャイルドSの勝ち馬でコロネーションS2着のマジックグリーム、アスタルテ賞の勝ち馬ナヴラティロヴナ、ドラール賞・ジョンシェール賞・エミリオトゥラティ賞の勝ち馬でワシントンDC国際S3着のスクィルなどが出走していた。しかし先行抜け出しの優等生的な競馬を見せた本馬が、2着フレンチストレスに2馬身差をつけて完勝を収めた。

次走のムーランドロンシャン賞(仏GⅠ・T1600m)では、フレンチストレス、前走4着のナヴラティロヴナ、同6着のスクィルに加えて、ジュライC・スプリントCSを連勝してきた欧州短距離王カドゥージェネルー、前走サセックスSで単勝オッズ101倍の超人気薄ながら2着してきたグリーンラインエクスプレス、レゼルヴォワ賞の勝ち馬グッドイグザンプル(本馬の母パストイグザンプルと名前が似ているが全く違う牝系である)、ギシュ賞・フォルス賞の勝ち馬ヴァルデボワ、クリテリウムドメゾンラフィットの勝ち馬コルヴィリア、メシドール賞で本馬の2着だったスイートシネなどが出走してきた。しかし本馬がペースメーカー役のナーサリースロープとのカップリングで単勝オッズ1.4倍という断然の1番人気に支持され、グリーンラインエクスプレスとグッドイグザンプルのカップリングが単勝オッズ4.2倍の2番人気、フレンチストレスとスイートシネのカップリングが単勝オッズ10.2倍の3番人気、カドージェネルーが単勝オッズ10.3倍の4番人気となった。レースではナーサリースロープを先に行かせて4番手を追走。そして直線に入ると外側から伸び、残り200m地点で先頭に立つと、後は流して、2着スクィルに2馬身差をつけて快勝。瞬く間に仏国マイル路線のトップに躍り出た。

その後は仏国内だけでなく全欧のマイル王の座をも戴冠するべく、渡英してクイーンエリザベスⅡ世S(英GⅠ・T8F)に出走した。対戦相手は僅か4頭だったが、サセックスS・ジャージーS・クリテリオンSなど4戦無敗のジルザル、愛国際S・ハンガーフォードS・セレブレーションマイルと3連勝中の愛2000ギニー3着馬ディスタントリラティヴ、前走4着のグリーンラインエクスプレスなどが出走しており、レベル自体は過去2戦に引けを取らなかった。特に4戦全て圧勝してきたジルザルの前評判は非常に高く、本馬との完全な一騎打ちムードとなった。本馬とジルザルの両方と対戦経験があるグリーンラインエクスプレスを物差しにすると、ジルザルはサセックスSで2着グリーンラインエクスプレスに3馬身の先着、本馬はムーランドロンシャン賞で4着グリーンラインエクスプレスに2馬身1/4差の先着だった。また、地元英国調教馬である分だけジルザルが有利と思われたのか、ジルザルが単勝オッズ2倍の1番人気、本馬が単勝オッズ2.375倍の2番人気で、翌年にサセックスS・ムーランドロンシャン賞を勝利する実力馬ディスタントリラティヴが単勝オッズ11倍の3番人気だった。

レースはジルザルが先手を取り、本馬が2番手を追走。他の出走馬3頭は全てこの2頭より後方であり、お互いに相手しか眼中に無いような走りだった。そのままの態勢で直線に入ると、残り2ハロン地点で本馬が先に仕掛けてジルザルに迫っていった。しかし残り1ハロン地点でスパートを開始したジルザルに逆に引き離されてしまい、3馬身差をつけられた2着に完敗。このレースを最後に、3歳時8戦7勝の成績で現役を退いた。

ジルザルはこの年における国際クラシフィケーション及び英タイムフォーム社のレーティングにおいて、いずれも同年最高の評価(前者が134ポンド、後者が137ポンド)を獲得することになるが、それは仏国チャンピオンマイラーに選ばれた本馬(前者が129ポンド、後者が131ポンド)相手に完勝した事も大きい。

馬名を直訳すると「ポーランドの先例(慣例・判例)」という意味で、ポーランドの軍港の名前を持つ父と、「過去の例」を意味する母の名前からの連想であると思われる。

血統

Danzig Northern Dancer Nearctic Nearco Pharos
Nogara
Lady Angela Hyperion
Sister Sarah
Natalma Native Dancer Polynesian
Geisha
Almahmoud Mahmoud
Arbitrator
Pas de Nom Admiral's Voyage Crafty Admiral Fighting Fox
Admiral's Lady
Olympia Lou Olympia
Louisiana Lou
Petitioner Petition Fair Trial
Art Paper
Steady Aim Felstead
Quick Arrow
Past Example Buckpasser Tom Fool Menow Pharamond
Alcibiades
Gaga Bull Dog
Alpoise
Busanda War Admiral Man o'War
Brushup
Businesslike Blue Larkspur
La Troienne
Bold Example ボールドラッド Bold Ruler Nasrullah
Miss Disco
Misty Morn Princequillo
Grey Flight
Lady Be Good Better Self Bimelech
Bee Mac
Past Eight Eight Thirty
Helvetia

ダンチヒは当馬の項を参照。

母パストイグザンプルは不出走馬だが、近親には数多くの活躍馬が名を連ねており、かなりの名門牝系である。その筆頭格は、パストイグザンプルの半妹フレンチチャーマー(父ルファビュリュー)【デルマーオークス(米GⅡ)】の子であるジルザル【サセックスS(英GⅠ)・クイーンエリザベスⅡ世S(英GⅠ)・ジャージーS(英GⅢ)・クリテリオンS(英GⅢ)】で、クイーンエリザベスⅡ世Sで欧州マイル王の座を争ったジルザルと本馬は従兄弟同士である。また、パストイグザンプルの半妹ハイエストリガード(父ギャラントロメオ)の子にはオウインスパイアリング【フラミンゴS(米GⅠ)・アメリカンダービー(米GⅠ)・エヴァーグレイズS(米GⅡ)・ジャージーダービー(米GⅡ)】もいるが、オウインスパイアリングと本馬及びジルザルは全て1986年産まれで、しかもこの3頭のグレード競走及びグループ競走勝ちは3歳時に集中しているから、1989年は本馬の牝系が猛威を振るった年だった。

また、パストイグザンプルの半妹パーフェクトイグザンプル(父ファーノース)は、この1989年にカルチャーヴァルチャー【仏1000ギニー(仏GⅠ)・フィリーズマイル(英GⅠ)・マルセルブサック賞(仏GⅠ)・ロウザーS(英GⅡ)・エミリオトゥラティ賞(伊GⅡ)】を産んでおり、やはりこの年は本馬の牝系の当たり年だったと言えそうである。本馬の全姉ジエネルの孫にはGⅠ競走未勝利ながらも欧州マイル王の地位に君臨したインティカブ【クイーンアンS(英GⅡ)】が、本馬の半妹ジアリ(父デイジュール)の子にはマハリブ【カラーC(愛GⅢ)】がいる。

上記以外の主な近親馬を列挙すると、パストイグザンプルの母ボールドイグザンプルの半姉であるディシプリン【デモワゼルS・テストS・モリーピッチャーH】と、その子であるスクウォンダー【ソロリティS(米GⅠ)】、さらにその孫であるグッバイヘイロー【デモワゼルS(米GⅠ)・ハリウッドスターレットS(米GⅠ)・ラスヴァージネスS(米GⅠ)・ケンタッキーオークス(米GⅠ)・マザーグースS(米GⅠ)・CCAオークス(米GⅠ)・ラカナダS(米GⅠ)】、さらにその子である日本で走ったキングヘイロー【高松宮記念(GⅠ)】、スクウォンダーの曾孫であるヴァルズプリンス【ターフクラシック招待S(米GⅠ)2回・マンノウォーS(米GⅠ)・香港国際C(香GⅡ)】、日本で走ったマジェスティバイオ【中山大障害(JGⅠ)・中山グランドジャンプ(JGⅠ)】、それにディシプリンの曾孫であるバーニングローマ【ベルモントフューチュリティS(米GⅠ)】。ボールドイグザンプルの半兄ディシプリナリアン【スワップスS】、ボールドイグザンプルの半妹インホットパースート【ファッションS(米GⅢ)】の子であるポッセ【サセックスS(英GⅠ)・セントジェームズパレスS(英GⅡ)】、ボールドイグザンプルの半妹インピッシュの孫であるマイニング【ヴォスバーグS(米GⅠ)】とミスショップ【パーソナルエンスンS(米GⅠ)】、ボールドイグザンプルの半妹アンコミッテドの子であるウェイヴァリングモナーク【ハスケル招待H(米GⅠ)・サンフェルナンドS(米GⅠ)】と曾孫であるモティヴェイター【英ダービー(英GⅠ)・レーシングポストトロフィー(英GⅠ)】といったところだろうか。中には例外もいるが、全体的にマイル前後の距離を得意とする馬が多い牝系である。→牝系:F8号族③

母父バックパサーは当馬の項を参照。

競走馬引退後

競走馬を引退した本馬はモハメド殿下が所有する英国ダルハムホールスタッドで種牡馬入りした。種牡馬としては従兄弟ジルザルを一枚上回る好成績を挙げている。産駒のステークスウイナー数自体には決定的な差は無い(本馬は27頭以上、ジルザルは18頭)が、産駒のGⅠ競走勝利数には大きな差がある(本馬産駒は18勝、ジルザル産駒は2勝)。本馬自身はマイラーだったが、産駒は10ハロン以上の距離で活躍する子が目立つ。これはスピードを伝えながらも母系のスタミナも活かすため、代を経るに従い距離適性が伸びるというダンチヒ直系の特徴がよく現れていると言える。2005年6月に疝痛を発症したために手術が行われたが上手くいかず、同月に合併症のためダルハムホールスタッドにおいて19歳で他界した。ジルザルも同じだが、後継種牡馬には恵まれていないのが現状である。母の父としては高松宮記念を勝ったファイングレインなどを出している。

主な産駒一覧

生年

産駒名

勝ち鞍

1991

Red Route

ジェフリーフリアS(英GⅡ)

1992

Pilsudski

ジャパンC(日GⅠ)・BCターフ(米GⅠ)・バーデン大賞(独GⅠ)・エクリプスS(英GⅠ)・愛チャンピオンS(愛GⅠ)・英チャンピオンS(英GⅠ)・ブリガディアジェラードS(英GⅢ)・ロイヤルホイップS(愛GⅢ)

1992

Pure Grain

愛オークス(愛GⅠ)・ヨークシャーオークス(英GⅠ)・プレステージS(英GⅢ)・ムシドラS(英GⅢ)

1992

Riyadian

ジョッキークラブS(英GⅡ)・カンバーランドロッジS(英GⅢ)

1993

Predappio

ブランドフォードS(愛GⅡ)・ハードウィックS(英GⅡ)

1994

Social Harmony

マクドナボーランドS(愛GⅢ)

1996

Noushkey

ランカシャーオークス(英GⅢ)

1997

Polish Summer

ドバイシーマクラシック(首GⅠ)・ドーヴィル大賞(仏GⅡ)・エクスビュリ賞(仏GⅢ)

1997

Sobieski

ユジェーヌアダム賞(仏GⅡ)

1999

First Charter

ロンズデールS(英GⅡ)

1999

Rakti

伊ダービー(伊GⅠ)・伊共和国大統領賞(伊GⅠ)・英チャンピオンS(英GⅠ)・プリンスオブウェールズS(英GⅠ)・クイーンエリザベスⅡ世S(英GⅠ)・ロッキンジS(英GⅠ)

2000

Court Masterpiece

フォレ賞(仏GⅠ)・サセックスS(英GⅠ)・レノックスS(英GⅡ)

2003

Darsi

仏ダービー(仏GⅠ)

2004

Avanti Polonia

ポモーヌ賞(仏GⅡ)・フェールホファー牝馬賞(独GⅢ)

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