シャーリーハイツ

和名:シャーリーハイツ

英名:Shirley Heights

1975年生

鹿毛

父:ミルリーフ

母:ハーディエマ

母父:ハーディカヌート

名馬ミルリーフの後継種牡馬として活躍し、英ダービー父子3代制覇の中継ぎを担った英ダービー・愛ダービーのダブル覇者

競走成績:2・3歳時に英愛で走り通算成績11戦6勝2着3回3着1回

誕生からデビュー前まで

英国保守党の政治家だった第2代ハリファックス伯爵チャールズ・ウッド卿と、息子アーウィン氏の親子により生産・所有された英国産馬で、英国ジョン・ダンロップ調教師に預けられた。

競走生活(3歳初期まで)

2歳6月にヨーク競馬場で行われたキャラヴァンS(T6F)でデビューしたが5着に敗退。続いて出走したドンカスター競馬場芝6ハロンの未勝利ステークスも5馬身差の2着に敗退。ニューマーケット競馬場で出走したライムキルンS(T7F)では、2着セクストンブレイクに短頭差をつけて初勝利を挙げた。しかし次走のデラヴァルS(英GⅢ・T7F)では、前走で負かしたセクストンブレイクの3馬身1/4差3着に敗戦。続くソラリオS(T7F)もボラクの2馬身差2着に敗れた。次走のロイヤルロッジS(英GⅡ・T8F)では、ダンロップ厩舎の新たな主戦騎手となっていたグレヴィル・スターキー騎手と初コンビを組んだ。レースでは、単勝オッズ11倍の人気薄を覆して、2着ボラクに3/4馬身、3着ハワイアンサウンドにさらに1馬身半差をつけて勝利した。2歳時はこれが最後のレースとなり、この年の成績は6戦2勝と、特に目立つ存在ではなかった。

3歳時は4月のサンダウンクラシックトライアルS(英GⅢ・T10F)から始動したが、勝ったホイットステッドから10馬身も離された2着に完敗。しかし翌月にニューマーケット競馬場で出たヒートホーンS(T10F)では、同年のキングジョージⅥ世&クイーンエリザベスSを勝つイルドブルボンを短頭差で破って勝利。さらに単勝オッズ11倍で迎えたダンテS(英GⅢ・T10F85Y)では、ウィリアムフューチュリティS2着馬ジュリオマリナーを1馬身半差の2着に、デラヴァルSで本馬を破った後に英シャンペンSを勝ちデューハーストSで2着していたセクストンブレイクをさらに1馬身半差の3着に下して勝利。その流暢なレースぶりが評価されて、遅まきながら英ダービーの有力候補に名乗りを挙げた。

競走生活(3歳中期以降)

そして迎えた英ダービー(英GⅠ・T12F)では、ガリニュールSを6馬身差で圧勝してきたインカーマン、サンダウンクラシックトライアルSで本馬を10馬身ちぎった後にリングフィールドダービートライアルSも4馬身差で快勝してきたホイットステッド、ジュリオマリナー、セクストンブレイク、クレイヴンSの勝ち馬アドミラルズローンチ、バリモスSの勝ち馬でニジンスキーS2着のイクスディレクトリー、ミドルパークS・ミルリーフSの勝ち馬フォーミダブル、英2000ギニー・ブルーリバンドトライアルSを連勝してきたローランドガーデンズ、ニューマーケットフリーHの勝ち馬で英2000ギニー2着のリマインダーマン、ノアイユ賞を勝ってきたグラシアス、仏グランクリテリウム・リュパン賞2着・仏2000ギニー3着のピジャマハント、サラマンドル賞2着馬ビラル、クリテリウムドサンクルー2着馬オレンジマーマレード、リングフィールドダービートライアルS2着馬サンフィルス、チェスターヴァーズ2着馬ハワイアンサウンドなど24頭との対戦となった。インカーマンが単勝オッズ5倍の1番人気に支持され、本馬は単勝オッズ9倍でホイットステッドと並ぶ2番人気だった。

スタートが切られると、米国の名手ウィリー・シューメーカー騎手が手綱を取る単勝オッズ26倍の11番人気馬ハワイアンサウンドが逃げを打ち、本馬は中団好位を追走。タッテナムコーナーに向かう下り坂でややもたついたが、スターキー騎手は特に心配しなかったという。そして直線を向くと一気に加速していった。しかし直線に入っても先頭のハワイアンサウンドの手応えは抜群で、食い下がるリマインダーマンを抑えてそのまま逃げ切るかに思えた。本馬は2頭の真後ろから追い上げてきたため、一瞬だけ進路に迷う場面があったが、すぐに内埒沿いに移動すると、内側からハワイアンサウンドに並びかけた。そして叩き合いを頭差で制して優勝した。このレースは2着ハワイアンサウンドだけでなく、3着リマインダーマン(14番人気)、4着ピジャマハント(10番人気)、5着オブラツォヴィ(20番人気)も人気薄であり、本馬を除く上位人気勢は軒並み惨敗した。

続く愛ダービー(愛GⅠ・T12F)では単勝オッズ2.25倍の1番人気に支持された。レースでは、単勝オッズ7倍の2番人気馬ハワイアンサウンド、単勝オッズ9倍の3番人気馬イクスディレクトリーが先行して直線に入ってもまだ粘り続けていたが、今回もゴール直前で追い上げてきた本馬が前2頭を際どくかわし、イクスディレクトリーを短頭差の2着に退けて優勝。前年のザミンストレルに続く史上6頭目の英ダービー・愛ダービーのダブル制覇を達成した。

その後は秋の英セントレジャーを目標として調整されていたが、8月の調教中に前脚を故障したために回避。そのまま3歳時5戦4勝の成績で競走馬を引退した。本馬が出走できなかった英セントレジャーは、英ダービー6着のジュリオマリナーが制している。また、英ダービー2着・愛ダービー3着のハワイアンサウンドは同年のベンソン&ヘッジズ金杯を勝ち、英ダービー5着のオブラツォヴィは後に米国のGⅠ競走サンフアンカピストラーノ招待Hを勝利。英ダービーで着外に終わったインカーマンも同年のジョーマクグラス記念S(現愛チャンピオンS)を勝ち、米国移籍後もサンセットHでGⅠ勝利を収めるなど活躍しており、イルドブルボンがキングジョージⅥ世&クイーンエリザベスSを勝った事も考え合わせると、同世代の実力は確かだったようである。しかし英ダービーと愛ダービーの勝利が共に僅差だったため、後世における本馬に対する評価は今ひとつのようである。

馬名は父ミルリーフの名前の由来となったミル珊瑚礁があるアンティグア島の軍事監視所シャーリー高台に由来する。

血統

Mill Reef Never Bend Nasrullah Nearco Pharos
Nogara
Mumtaz Begum Blenheim
Mumtaz Mahal
Lalun Djeddah Djebel
Djezima
Be Faithful Bimelech
Bloodroot
Milan Mill Princequillo Prince Rose Rose Prince
Indolence
Cosquilla Papyrus
Quick Thought
Virginia Water Count Fleet Reigh Count
Quickly
Red Ray Hyperion
Infra Red
Hardiemma ハーディカヌート ハードリドン Hard Sauce Ardan
Saucy Bella
Toute Belle Admiral Drake
Chatelaine
Harvest Maid Umidwar Blandford
Uganda
Hay Fell Felstead
Hay Fever
Grand Cross Grandmaster Atout Maitre Vatout
Royal Mistress
Honorarium Colorado Kid
Emolument
Blue Cross Blue Peter Fairway
Fancy Free
King's Cross King Salmon
Doublure

ミルリーフは当馬の項を参照。1978年に最初の英愛首位種牡馬に輝いているが、それは本馬の貢献による部分が大きい。

母ハーディエマは英国で走り14戦2勝。本馬以外の産駒成績は、本馬の半弟インヴァイティング(父ビーマイゲスト)がエアポートランドSを勝ち、半妹ハーディホステス(父ビーマイゲスト)がリングフィールドオークストライアルS(英GⅢ)で3着した程度であるが、その牝系子孫はかなり発展している。本馬の半妹ベンプトン(父ブレイクニー)の子にはガルヌーク【リブルスデールS(英GⅡ)】、ミスターピンティップス【オーモンドS(英GⅢ)】、バンケット【プリンセスロイヤルステークスS(英GⅢ)】がおり、ガルヌークの子にはペンタイア【キングジョージⅥ世&クイーンエリザベスDS(英GⅠ)・愛チャンピオンS(愛GⅠ)・キングエドワードⅦ世S(英GⅡ)・グレートヴォルティジュールS(英GⅡ)】、孫にはケーニヒスティーガー【伊グランクリテリウム(伊GⅠ)】がいる。本馬の全妹ミリームの孫にはウィッパー【モルニ賞(仏GⅠ)・ジャックルマロワ賞(仏GⅠ)・モーリスドギース賞(仏GⅠ)・クリテリウムドメゾンラフィット(仏GⅡ)】と、ディヴァインプロポーションズ【モルニ賞(仏GⅠ)・マルセルブサック賞(仏GⅠ)・仏1000ギニー(仏GⅠ)・仏オークス(仏GⅠ)・アスタルテ賞(仏GⅠ)・ロベールパパン賞(仏GⅡ)】の兄妹がいる。他にも、ハーディホステスの曾孫であるサイドグランス【マッキノンS(豪GⅠ)】、本馬の半妹インパーペチュイティ(父グレートネフュー)の子であるラヴエヴァーラスティング【プリンセスロイヤルS(英GⅢ)】、本馬の全妹アムラーダフの孫であるマイルトライアン【リブルスデールS(英GⅡ)】、ミスターコンバスティブル【ジェフリーフリアS(英GⅡ)】など、ハーディエマの子孫からは多くの活躍馬が出ている。→牝系:F1号族④

母父ハーディカヌートはハードリドンの項を参照。

競走馬引退後

競走馬を引退した本馬は英国サンドリンガム国立牧場で種牡馬入りした。本馬は種牡馬としても成功し、ミルリーフの後継種牡馬としてはトップクラスの活躍を示した。2年目産駒から仏ダービー馬ダルシャーンが出たのに続いて、3年目産駒から英ダービー馬スリップアンカーが登場した。スリップアンカーの英ダービー優勝は、現時点における最後の同レース親子3代制覇である。この1985年に英愛種牡馬ランキングで2位に入った。1997年に腎不全のため22歳で他界した。産駒は10~12ハロンの距離で強さを発揮した。

後継種牡馬としてダルシャーンが成功し、サイアーラインを堅持している。繁殖牝馬の父としても活躍し、インザウイングス、英オークス馬レディカーラ、凱旋門賞馬ソレミアなどを出している。日本で活躍したロゼカラーの娘であるローズバドも競走馬及び繁殖牝馬として活躍した。

主な産駒一覧

生年

産駒名

勝ち鞍

1980

Acclimatise

ナッソーS(英GⅡ)・フィリーズマイル(英GⅢ)

1980

High Hawk

ローマ賞(伊GⅠ)・リブルスデールS(英GⅡ)・パークヒルS(英GⅡ)・ロワイヤリュー賞(仏GⅢ)

1981

Darshaan

仏ダービー(仏GⅠ)・クリテリウムドサンクルー(仏GⅡ)・グレフュール賞(仏GⅡ)・オカール賞(仏GⅡ)

1981

Elegant Air

ロジャーズ金杯(愛GⅡ)・ホーリスヒルS(英GⅢ)・ゴードンリチャーズS(英GⅢ)

1981

Head for Heights

キングエドワードⅦ世S(英GⅡ)・プリンセスオブウェールズS(英GⅡ)

1981

Satinette

メイヒルS(英GⅢ)

1982

Iades

ドラール賞(仏GⅡ)・リス賞(仏GⅢ)・ルイジアナダウンズH(米GⅢ)

1982

Slip Anchor

英ダービー(英GⅠ)・リングフィールドダービートライアルS(英GⅢ)

1983

Verd-Antique

ヨークシャーC(英GⅡ)

1984

Infamy

ロスマンズ国際S(加GⅠ)・サンチャリオットS(英GⅡ)・ゴードンリチャーズS(英GⅢ)

1984

Shady Heights

英国際S(英GⅠ)・ロジャーズ金杯(愛GⅡ)・ダルマイヤー大賞(独GⅡ)

1984

Tabayaan

エスペランス賞(仏GⅡ)・ベルトゥー賞(仏GⅢ)・ラクープドメゾンラフィット(仏GⅢ)

1985

Hi Lass

グラディアトゥール賞(仏GⅢ)

1985

Light the Lights

ポモーヌ賞(仏GⅡ)

1985

Sailor's Mate

メルドS(愛GⅢ)

1986

High Estate

ロイヤルロッジS(英GⅡ)・コヴェントリーS(英GⅢ)・ヴィンテージS(英GⅢ)・ソラリオS(英GⅢ)

1987

Free at Last

カウンテスファーガーH(米GⅢ)

1987

Private Tender

キングエドワードⅦ世S(英GⅡ)

1988

Arcadian Heights

アスコット金杯(英GⅠ)・ドンカスターC(英GⅢ)

1988

Brooklyn's Dance

クレオパトル賞(仏GⅢ)

1988

Perpendicular

プリンスオブウェールズS(英GⅡ)・ドイツ統一賞(独GⅢ)

1989

Dajraan

ショードネイ賞(仏GⅡ)

1989

Know Heights

カールトンFバークH(米GⅡ)

1989

Zinaad

ジョッキークラブS(英GⅡ)

1990

Apogee

ロワイヨモン賞(仏GⅢ)

1990

Perfect Vintage

クインシー賞(仏GⅢ)

1990

Top Cees

シザレウィッチH

1991

Party Season

ルイジアナダウンズH(米GⅢ)

1991

Sacrament

グレートヴォルティジュールS(英GⅡ)・ジャンドショードネイ賞(仏GⅡ)・セプテンバーS(英GⅢ)

1992

Stelvio

クイーンズヴァーズ(英GⅢ)

1992

Valley of Gold

伊オークス(伊GⅠ)・クレオパトル賞(仏GⅢ)

1993

Rumpipumpy

ダイアナH(米GⅡ)

1993

Shemozzle

ザベリワンH(米GⅢ)

1993

ロゼカラー

デイリー杯三歳S(GⅡ)

1995

Sadian

ジョンポーターS(英GⅢ)・オーモンドS(英GⅢ)

1996

Zindabad

ヨークシャーC(英GⅡ)・ハードウィックS(英GⅡ)・ウインターヒルS(英GⅢ)・ジョンポーターS(英GⅢ)

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