ロイヤルデルタ

和名:ロイヤルデルタ

英名:Royal Delta

2008年生

黒鹿

父:エンパイアメーカー

母:デルタプリンセス

母父:エーピーインディ

BCレディーズクラシックを2連覇するなどして、エクリプス賞最優秀3歳牝馬として史上初めて2度のエクリプス賞最優秀古馬牝馬を受賞する

競走成績:2~5歳時に米首で走り通算成績22戦12勝2着5回3着1回

誕生からデビュー前まで

サウジアラビアのサウド・ビン・カーリド王子の馬産団体パリデス・インヴェストメント社により米国ケンタッキー州において生産・所有され、かつて名馬シガーなどを手掛けた米国ウィリアム・モット調教師に預けられた。

競走生活(2・3歳時)

2歳10月にベルモントパーク競馬場で行われたダート8ハロンの未勝利戦で、ホセ・レスカーノ騎手を鞍上にデビューした。単勝オッズ8.2倍で9頭立ての4番人気という評価だった。レースは人気薄の逃げ馬が引っ張る縦長の展開となり、本馬は後方3番手を追走した。そして三角手前で仕掛けると、四角で一気に先頭を奪い、あとは直線で完全な独走態勢を築き、2着ステータスペンディングに12馬身差をつけて大圧勝した。

2歳時はこの1戦のみで終え、3歳時は3月にタンパベイダウンズ競馬場で行われたサンコーストS(D8F40Y)から始動した。なお、この少し前にカーリド王子が死去したが、しばらく本馬はパリデス・インヴェストメント社名義のまま走ることになる。このレースではアレックス・ソリス騎手とコンビを組み、単勝オッズ2.6倍の1番人気に支持された。しかしスタートが悪かった上に道中で大外を走らされるロスが大きく、最初から最後まで後方のままで、マザリーンSを勝っていた加国調教馬ワイオミアの14馬身3/4差9着と惨敗を喫した。

その後はケンタッキー州に向かい、キーンランド競馬場オールウェザー8.5ハロンの一般競走に出走。未勝利戦を快勝してきたばかりのソーマッチラヴという馬が123ポンドのトップハンデでも単勝オッズ2.5倍の1番人気に支持され、このレースから主戦として固定される事になったレスカーノ騎手鞍上の本馬は118ポンドで単勝オッズ2.8倍の2番人気だった。レースではソーマッチラヴが先行して、本馬はその少し後方を追走。三角入り口でソーマッチラヴに並びかけると、そのまま2頭が争いながら直線へと突入。直線では本馬がソーマッチラヴを引き離し、3馬身差をつけて勝利した。

3週間後のケンタッキーオークスには出走せず、ケンタッキーオークスからさらに2週間後のブラックアイドスーザンS(米GⅡ・D9F)に向かった。このレースは5頭立てだったが、サンコーストS勝利後にアッシュランドSで2着していたワイオミア、カムリーSを勝ってきたホットサマー、それに本馬の3強対決と目された。116ポンドの本馬と122ポンドのワイオミアが並んで単勝オッズ2.8倍の1番人気で、122ポンドのホットサマーが単勝オッズ3.3倍の3番人気となった。

レースではホットサマーが逃げて、ワイオミアが2番手、本馬はワイオミアから4馬身ほど後方の4番手を進んだ。三角まではこの態勢だったが、ここからワイオミアが馬群に沈み、代わりに本馬が進出。一気にホットサマーまでかわして四角途中で先頭に立つと、そのまま2着バスターズレディに2馬身半差をつけて勝利した。

その後はCCAオークス(米GⅠ・D9F)に出走した。前走と同じく5頭立てだったが、対戦相手4頭は、ケンタッキーオークスを勝ちハリウッドオークスで2着してきたプラムプリティ、エイコーンSを勝ってきたイッツトリッキー、ブラックアイドスーザンS2着後にマザーグースSを勝ってきたバスターズレディ、ファンタジーS・ハニービーS勝ち馬でマザーグースS2着のジョイフルヴィクトリーと強敵揃いだった。プラムプリティが単勝オッズ2.8倍の1番人気、本馬が単勝オッズ3倍の2番人気となった。

レースではプラムプリティが逃げて、イッツトリッキーとバスターズレディが2~3番手、本馬は最後方を進んだ。そして三角に入ってから仕掛けて3番手で直線に入ってきたのだが、既に先頭のプラムプリティと2番手のイッツトリッキーの姿は遥か彼方にあった。そして直線でも全く差を縮められず、プラムプリティをかわして3/4馬身差で勝ったイッツトリッキーから7馬身1/4差の3着に敗れた。

続いて出たアラバマS(米GⅠ・D10F)では、イッツトリッキーとプラムプリティに加えて、加国最大の競走クイーンズプレートで牡馬勢を蹴散らして完勝してきたばかりのイングロリアス、デラウェアオークスを勝ってきたケンタッキーオークス2着馬セントジョンズリヴァーなども出走してきた。イッツトリッキーが単勝オッズ3.2倍の1番人気、イングロリアスが単勝オッズ3.35倍の2番人気、セントジョンズリヴァーが単勝オッズ5倍の3番人気、プラムプリティが単勝オッズ5.4倍の4番人気で、本馬は単勝オッズ6.5倍の5番人気だった。

このレースでレスカーノ騎手は今まで本馬が採ってきた後方待機策を捨てて、逃げるプラムプリティから1馬身ほど後方の2番手につける作戦に出た。いったんはイッツトリッキーに2番手を譲って3番手に下がり、三角では少し差を広げられた。しかし直線に入って外側に持ち出すと、残り1ハロン地点で一瞬にして前の2頭を抜き去った。そして後続を引き離し、2着イッツトリッキーに5馬身半差をつけて圧勝した。

その後は10月のベルデイムS(米GⅠ・D9F)に向かった。このレースにおける強敵は2頭だった。1頭は前年のベルデイムSに加えてオグデンフィップスH・デラウェアHも勝っていたライフアットテン。もう1頭は前走ウッドワードSで古馬牝馬として史上初の同競走優勝を果たしていたアップルブロッサムH・コティリオンS勝ち馬ハヴァードグレイスだった。ハヴァードグレイスが単勝オッズ1.45倍の1番人気に支持され、本馬が単勝オッズ3.15倍の2番人気、ライフアットテンが単勝オッズ7.2倍の3番人気となった。

スタートが切られるとライフアットテンが一気に先頭を奪って後続を引き離し、ハヴァードグレイスは少し離れた3番手、本馬はハヴァードグレイスをマークするように一緒に走った。三角に入るとライフアットテンが失速し、入れ代わるようにハヴァードグレイスが先頭に立った。本馬もハヴァードグレイスを追いかけてスパートしたのだが、ハヴァードグレイスに追いつくどころか差を広げられてしまい、直線入り口では既に勝負はついていた。この年のエクリプス賞年度代表馬に選ばれるハヴァードグレイスが圧勝を収め、本馬は8馬身1/4差をつけられて2着に敗れた。

その後はチャーチルダウンズ競馬場で行われるBCレディーズクラシック(米GⅠ・D9F)に向かった。BCクラシックに回ったハヴァードグレイスの姿は無く、アラバマS4着後にコティリオンSを勝ってきたプラムプリティ、アラバマS2着後にコティリオンSで2着してきたイッツトリッキー、クレメントLハーシュS・ミレイディHの勝ち馬でレディーズシークレットS2着のウルトラブレンド、亜国のGⅠ競走セレクシオン大賞を勝った後に米国に移籍してサンタマルガリータ招待Hを勝っていたミスマッチ、アーリントンメイトロンS勝ち馬でパーソナルエンスンS・スピンスターS連続2着のパチアタック、ラフィアンH・パーソナルエンスンSの勝ち馬アスクザムーン、ラフィアンH2着馬スーパーエスプレッソ、レイヴンランSの勝ち馬サタンズクイックチックの計8頭が対戦相手となった。本馬とプラムプリティが並んで単勝オッズ3.2倍の1番人気に支持され、イッツトリッキーが単勝オッズ5.6倍の3番人気となった。

スタートが切られるとプラムプリティが先頭に立ち、アスクザムーンが2番手、イッツトリッキーが3番手、本馬が4番手につけた。そしてプラムプリティが先頭を維持し、イッツトリッキーが2番手、本馬が4番手で直線へと入ってきた。プラムプリティは残り1ハロン地点までは逃げ切りそうな雰囲気を見せていたが、ここで脱落。代わりにイッツトリッキーが先頭に立ったところに、大外から本馬が豪快に伸びてきた。残り100ヤード地点でイッツトリッキーを抜き去るとそのまま突き抜け、2着イッツトリッキーに2馬身半差をつけて勝利した。

このレースの数日後に本馬は亡きカーリド王子の所有馬を売却するために開催されたキーンランドセールに出品され、ベシルステーブルスのベンジャミン・レオン氏とアデナスプリングスのフランク・ストロナック氏が競り合った末に、レオン氏によって牝馬としては史上3位の高額となる850万ドル(1位はベターザンオナーの1400万ドルで、2位はアシャドの900万ドル)で落札された。そのために馬主名義がベシルステーブルスに変わった本馬はレオン氏の判断により現役を続行する事になり、管理調教師もモット師のまま変更されなかった。

3歳時の成績は7戦4勝で、この年のエクリプス賞最優秀3歳牝馬を受賞した。

競走生活(4歳時)

4歳時は2月にガルフストリームパーク競馬場で行われたセイビンS(米GⅢ・D8.5F)から始動した。ここでは、オグデンフィップスH・メイトロンS・シュヴィーHなどグレード競走5勝を挙げていたフリゼットS・ガゼルS2着馬オーサムマリア、後にBCフィリー&メアスプリントを2連覇して2年連続でエクリプス賞最優秀短距離牝馬に選ばれるガーデニアS勝ち馬グルーピードールの2頭が強敵だった。123ポンドのオーサムマリアが単勝オッズ1.9倍の1番人気、同斤量の本馬が単勝オッズ2.1倍の2番人気、121ポンドのグルーピードールが単勝オッズ5.2倍の3番人気となった。

レースは出走馬5頭がほぼ固まって進み、スタートで躓いた本馬はその中で後方2番手につけた。四角で馬群の中からオーサムマリアが抜け出して先頭に立ち、それを本馬とグルーピードールの2頭が追いかけようとしたが、直線でオーサムマリアとの差はどんどん開いていった。結局オーサムマリアが8馬身差で圧勝し、本馬は辛うじてグルーピードールを頭差抑えて2着を確保したのみだった。

その後はドバイに遠征して、ドバイワールドC(首GⅠ・AW2000m)に参戦。モット師にとっては創設1年目の同競走をシガーで制覇して以来の2勝目を狙うことになった。コックスプレート2回・アンダーウッドS・ヤルンバS・マッキノンS・タタソールズ金杯・エクリプスS・愛チャンピオンSとGⅠ競走8勝を挙げていた新国出身の名馬ソーユーシンク、サンタアニタH・グッドウッドS・サンアントニオSなどの勝ち馬で前年のBCクラシック2着のゲームオンデュード、マクトゥームチャレンジR3を勝ってきたカッポーニ、ローマ賞・ウニオンレネンなどの勝ち馬ザズー、ガネー賞・ノアイユ賞・アルクール賞勝ち馬で仏ダービー・パリ大賞2着のプラントゥール、前年の同競走で3着だったキングエドワードⅦ世S・ドバイシティオブゴールド勝ち馬モンテロッソ、ジェベルハッタを勝ってきたマスターオブハウンズ、コンセイユドパリ賞勝ち馬プリンスビショップ、マクトゥームチャレンジR2を勝ってきたメンディップ、日本から参戦したJBCクラシック2回・東京大賞典2回・帝王賞・川崎記念など9連勝中のスマートファルコン、一昨年の東京優駿勝ち馬エイシンフラッシュ、前年のドバイワールドCで2着していたジャパンCダート2回・フェブラリーS・マイルCS南部杯などの勝ち馬トランセンドの計12頭が対戦相手となった。ソーユーシンクが単勝オッズ2.25倍の1番人気、スマートファルコンが単勝オッズ7.5倍の2番人気、ゲームオンデュードが単勝オッズ9倍の3番人気、本馬が単勝オッズ11倍の4番人気となった。

スタートが切られると前年と同じくトランセンドが逃げを打ち、ソーユーシンクや本馬もそれを追って先行した。しかし直線手前で失速したトランセンドに進路を塞がれた本馬は仕掛ける事が出来ず、一緒にずるずると後退。最後まで盛り返すことは出来ず、モンテロッソの8馬身3/4差9着に敗れるという、実に消化不良な内容となってしまった。

帰国した本馬は6月にチャーチルダウンズ競馬場で行われたフルールドリスH(米GⅡ・D9F)に向かった。前年のアラバマSで5着に終わっていたセントジョンズリヴァー、フォールズシティH2着馬アフリーティングレディくらいしか目立つ対戦相手がおらず、本馬が他馬勢より5~8ポンド重い123ポンドの斤量でも単勝オッズ1.6倍の1番人気に支持された。なお、ドバイワールドCのレース内容が悪かったためか、このレースから本馬の主戦はレスカーノ騎手からマイク・スミス騎手に交代となっている。レースでは道中無難に3番手を追走し、四角に入ってから先頭に立つとそのまま後続をちぎり捨て、2着アフリーティングレディに8馬身差をつけて圧勝した。

次走のデラウェアH(米GⅡ・D10F)では、前走オグデンフィップスHでイッツトリッキーの3着に終わっていたオーサムマリアとの完全な一騎打ちムードだった。124ポンドの本馬が単勝オッズ1.5倍の1番人気、121ポンドのオーサムマリアが単勝オッズ2.8倍の2番人気、前走オグデンフィップスHで2着してきた114ポンドのキャッシュフォークランカーズが単勝オッズ11.9倍の3番人気だった。

スタートが切られると単勝オッズ30.5倍の6番人気だったオービアS勝ち馬ラヴアンドプライドが逃げを打ち、オーサムマリアと本馬は揃って好位につけた。本馬が三角手前で仕掛けると、オーサムマリアはそれに付いてくる事が出来なかった。そのまま先頭に立って直線を押し切ろうとした本馬に食い下がってきたのは、単勝オッズ29.3倍の5番人気馬ティズミズスーだった。斤量差が9ポンドもあったために本馬はなかなかティズミズスーを突き放せなかったが、最後まで前に出させる事は無く、首差凌いで勝利した。

次走のパーソナルエンスンH(米GⅠ・D9F)では、この年にトップフライトH・ディスタフH・オグデンフィップスHと3戦全勝だったイッツトリッキーと前年のBCレディーズクラシック以来の顔合わせとなった。124ポンドの本馬が単勝オッズ1.75倍の1番人気、123ポンドのイッツトリッキーが単勝オッズ3.25倍の2番人気、115ポンドのティズミズスーが単勝オッズ7.6倍の3番人気となった。

スタートが切られると単勝オッズ17.8倍のモリーピッチャーS勝ち馬ブラッシュドバイアスターが逃げを打ち、前走で4着だった単勝オッズ11倍のラヴアンドプライドが2番手、本馬が3番手、イッツトリッキーが4番手につけた。先に仕掛けたのはイッツトリッキーで、四角では本馬を追い抜いて2番手に上がった。すると本馬も仕掛けて直線でイッツトリッキーに追いつき、そして追い越した。ところが本馬の前では2番手から抜け出したラヴアンドプライドがまだ粘っていた。2頭の斤量差は10ポンドあり、軽量を利して逃げるラヴアンドプライドを遂に捕らえられなかった本馬は半馬身差の2着に敗れた。

その後は前年2着の雪辱を期してベルデイムS(米GⅠ・D9F)に向かい、前走3着のイッツトリッキーと2戦連続であいまみえた。今回は定量戦のため斤量差に悩まされることは無く、本馬が単勝オッズ1.85倍の1番人気、イッツトリッキーが単勝オッズ2.2倍の2番人気、デラウェアHで7着最下位に終わっていたキャッシュフォークランカーズが単勝オッズ8.3倍の3番人気となった。

スタートが切られるとイッツトリッキーが逃げて、本馬が2番手でそれを追走。3番手以降は次第に離されていき、2頭のマッチレースの様相を呈した。しかしそれが続いたのは向こう正面までで、三角からは本馬がイッツトリッキーをどんどん引き離していき、直線入り口では既に8馬身程度の差をつけて勝負あり。直線で一人旅を満喫した本馬が2着イッツトリッキーに9馬身半差をつけて圧勝した。

その後は2連覇を目指してBCレディーズクラシック(米GⅠ・D9F)に出走した。しかしこの年のブリーダーズカップはサンタアニタパーク競馬場で行われたため、米国東海岸を本拠地としていた本馬は初めて米国西海岸に向かう必要があり、それが不安材料だった。対戦相手は、本馬と同世代ながら過去に1度も対戦する機会が無かったBCジュヴェナイルフィリーズ・ガゼルSなど10戦無敗のエクリプス賞最優秀2歳牝馬オーサムフェザー、BCジュヴェナイルフィリーズ・フリゼットS・コティリオンS・アディロンダックSなど6戦無敗の成績だった1歳年下のエクリプス賞最優秀2歳牝馬マイミスオレーリア、CCAオークス・アラバマS勝ち馬でコティリオンS2着のクエスティング、パーソナルエンスンHの次走ゼニヤッタSでGⅠ競走2勝目を挙げて本馬を破ったのが必ずしもフロックでは無かった事を立証していたラヴアンドプライド、サンタマルガリータ招待H・クレメントLハーシュS・ラカナダS・マージョリーLエヴェレットHの勝ち馬でヴァニティH2着のインクルードミーアウト、スピナウェイS・ガルフストリームオークス・デラウェアオークス・インディアナオークスの勝ち馬でBCジュヴェナイルフィリーズ2着のグレースホール、バレリーナSを勝ってきたクラスインクルーディドの計7頭だった。本馬が単勝オッズ2.7倍の1番人気、オーサムフェザーが単勝オッズ3.1倍の2番人気、マイミスオレーリアが単勝オッズ7.2倍の3番人気となり、無敗の魅力よりも本馬の実績のほうが評価されていた。

スタートが切られると本馬が押して先頭に立ち、ラヴアンドプライドやインクルードミーアウトを引き連れて逃げを打った。過去に逃げた経験が1度も無かった本馬だが、速すぎず遅すぎずの的確なペース配分でレースを支配した。そして後続馬との差を確実に維持しながら直線に入ると、2番手で叩き合うマイミスオレーリアとインクルードミーアウトの2頭を尻目に脚を伸ばし、2着マイミスオレーリアに1馬身半差をつけて勝利。1990年のバヤコア以来22年ぶり史上2頭目の同競走2連覇を達成した。

4歳時の成績は7戦4勝で、エクリプス賞最優秀古馬牝馬を受賞した。

競走生活(5歳時)

5歳時も現役を続け、前年と同じくセイビンS(米GⅢ・D8.5F)から始動した。目立つ対戦相手は、前年のBCレディーズクラシックで本馬に9馬身差をつけられて4着に終わっていたグレースホールくらいだった。123ポンドの本馬が単勝オッズ1.4倍の1番人気に支持され、121ポンドのグレースホールが単勝オッズ3.2倍の2番人気となった。

スタートが切られると、本馬と単勝オッズ11倍の3番人気馬オールフォージーの2頭が先頭争いを展開。3番手以降は5馬身以上離された。向こう正面で本馬がオールフォージーを振り切って単独先頭に立ち、そのまま直線へと突入。後方から追いかけてくる馬はおらず、2着に粘ったオールフォージーに5馬身差をつけて完勝した。

そして再びドバイへ飛び、ドバイワールドC(首GⅠ・AW2000m)に挑戦した。対戦相手は、マクトゥームチャレンジR2・マクトゥームチャレンジR3を連勝してきたローマ賞勝ち馬ハンターズライト、本馬と同世代のケンタッキーダービー馬でプリークネスS・BCマイル2着のアニマルキングダム、ゴドルフィンマイル・バージナハール2回などの勝ち馬アフリカンストーリー、前年の同競走で3着だったプラントゥール、ブリーダーズフューチュリティ・ブルーグラスS・パシフィッククラシックSの勝ち馬デュラハン、マクトゥームチャレンジR3で2着してきたカシアーノ、パリ大賞・サンクルー大賞・ベルリン大賞の勝ち馬メオンドル、前年の同競走2着以来の実戦となるカッポーニ、愛ダービー・セクレタリアトSの勝ち馬トレジャービーチ、前年の香港ヴァーズ・ヨークシャーC勝ち馬レッドカドー、ソヴリンS・ダイオメドSの勝ち馬サイドグランスの計11頭だった。ハンターズライトが単勝オッズ3.5倍の1番人気に支持され、本馬が単勝オッズ4倍の2番人気、アニマルキングダムが単勝オッズ6.5倍の3番人気となった。

スタートが切られると本馬は即座に先頭に立ち、アニマルキングダムやハンターズライトを引き連れて逃げ続けた。しかし直線に入る手前でアニマルキングダムにかわされると、そのままずるずると失速。勝ったアニマルキングダムから20馬身差をつけられた10着と、不利を受けた前年より悪い結果に終わった。

帰国した本馬は、この後も前年と全く同じレースに出走を続けた。まずは6月のフルールドリスH(米GⅡ・D9F)に出走。ここにはモンマスオークス勝ち馬ワインプリンセスの姿があった。ワインプリンセスの父は2004年のエクリプス賞年度代表馬ゴーストザッパー、母は2002年のエクリプス賞年度代表馬アゼリであり、両親共にエクリプス賞年度代表馬という極めて稀な存在だった。それでも競走実績的には本馬に遠く及ばず、125ポンドの本馬が単勝オッズ1.3倍という圧倒的な1番人気に支持され、115ポンドのワインプリンセスは単勝オッズ4.8倍の2番人気だった。

スタートが切られるとステークス競走入着歴が無かったのに斤量2位の117ポンドで単勝オッズ6.7倍の3番人気だったファニープロポジションが逃げを打ち、ワインプリンセスは2番手、本馬が3番手を追走した。そのままの体勢で直線に入るとワインプリンセスは失速したが、ファニープロポジションは失速するどころか逆に本馬との差を広げていった。本馬は後続の追撃を辛うじて凌いで2着は確保したが、ファニープロポジションに5馬身差をつけられて敗れた。

次走のデラウェアH(米GⅠ・D10F)では、トップフライトH・レイチェルアレクサンドラS・アレールデュポンディスタフSの勝ち馬サマーアプローズ、オグデンフィップスHで3着してきたセントリングの2頭が比較的手強い相手だった。123ポンドの本馬が単勝オッズ1.4倍の1番人気、115ポンドのセントリングが単勝オッズ4.4倍の2番人気、118ポンドのサマーアプローズが単勝オッズ5倍の3番人気となった。

スタートが切られると本馬はすぐに先頭に立った。そしてどんどん後続馬を引き離していった。道中では既に後続馬に7~8馬身もの差をつける大逃げであり、さすがにこれはどうかと思われたが、実は最初の2ハロン通過が24秒19というスローペースであり、後続馬の騎手達は本馬鞍上スミス騎手の手腕に惑わされていた。こうなれば貰ったのも同然で、直線に入っても本馬はまるで失速する気配を見せず、112ポンドの軽量を利して2着に突っ込んだ単勝オッズ27.5倍の最低人気馬シーズオールインに10馬身3/4差をつけて圧勝した。

次走のパーソナルエンスンH(米GⅠ・D9F)では、ラトロワンヌS・シュヴィーHの勝ち馬でオグデンフィップスH2着のオーセンティシティ、アップルブロッサムH・ポカホンタスS・ゴールデンロッドSなどの勝ち馬オンファイアベイビー、前走4着のセントリングなどが対戦相手となった。スミス騎手は同日カリフォルニア州で行われたパシフィッククラシックSに出走する当時GⅠ競走6勝のゲームオンデュードの主戦でもあったのだが、本馬への騎乗を優先した。124ポンドの本馬が単勝オッズ1.55倍の1番人気、118ポンドのオーセンティシティが単勝オッズ3倍の2番人気、118ポンドのオンファイアベイビーが単勝オッズ8倍の3番人気となった。

スタートが切られると本馬が先頭を伺ったが、オンファイアベイビーが競りかけてきて2頭が先頭を争う展開となった。しかし本馬に喧嘩を売ったオンファイアベイビーは向こう正面で早々に失速。そのまま単独で先頭に立った本馬が後続との差を維持しながら直線に入り、2着オーセンティシティに4馬身半差をつけて圧勝した。

次走のベルデイムS(米GⅠ・D9F)では、ケンタッキーオークス・CCAオークス・アラバマSと3連勝中の3歳馬プリンセスオブシルマーが唯一の強敵だった。本馬が単勝オッズ1.3倍の1番人気、プリンセスオブシルマーが単勝オッズ3.1倍の2番人気、前走3着のセントリングが単勝オッズ16倍の3番人気だった。

スタートが切られると、単勝オッズ36.25倍の4番人気馬ローマンインベーダーが先頭を奪い、本馬は1~2馬身ほど後方の2番手を進んだ。三角手前でローマンインベーダーをかわして先頭に立ち、そのまま直線へと入ってきた。しかしこの段階では既に、道中4番手を進んでいたプリンセスオブシルマーが直後まで迫ってきていた。そして直線で差し切られた本馬は2馬身差の2着に敗退した。

その後は前年に続いてサンタアニタパーク競馬場で行われたBCディスタフ(米GⅠ・D9F)に向かった。ちなみに同競走は2008年から前年までBCレディーズクラシックの名称で施行されていたが、この年から旧名のBCディスタフに戻っていた。対戦相手は、プリンセスオブシルマー、BCジュヴェナイルフィリーズ・ラスヴァージネスS・サンタアニタオークス・ゼニヤッタSを勝っていた前年のエクリプス賞最優秀2歳牝馬ビホルダー、マザーグースS・コティリオンS・ガゼルSの勝ち馬でエイコーンS2着のクローズハッチズ、パーソナルエンスンH2着後にゼニヤッタSでも2着していたオーセンティシティ、コティリオンS3着馬ストリートガールの計5頭であり、本馬とオーセンティシティ以外は全て3歳馬だった。史上初の3連覇を目指す本馬が単勝オッズ2.4倍の1番人気、プリンセスオブシルマーが単勝オッズ3.6倍の2番人気、ビホルダーが単勝オッズ3.8倍の3番人気で、この3頭に人気が集まった。

スタートが切られるとオーセンティシティが先頭に立ち、本馬は直後の2番手を追走した。しかしオーセンティシティよりも先に本馬のほうが遅れ始め、三角入り口では4番手まで下がってしまった。そして直線でも伸びず、勝ったビホルダーから8馬身1/4差の4着と完敗。パーソナルエンスンHで圧倒したはずのオーセンティシティ(3着)にも先着されてしまった。

このレースを最後に5歳時7戦3勝の成績で現役引退となった。しかしこの年のエクリプス賞最優秀古馬牝馬を受賞した。エクリプス賞最優秀古馬を2度受賞したのは、バヤコア、パセアナ、アゼリ(3度)、ゼニヤッタ(3度)に次いで史上5頭目だが、過去の4頭はエクリプス賞最優秀3歳牝馬を受賞しておらず、エクリプス賞最優秀3歳牝馬がエクリプス賞最優秀古馬を2度受賞した例は本馬が史上初となった。過去の4頭のうちゼニヤッタを除く3頭は全て米国競馬の殿堂入りを果たしており(ゼニヤッタも殿堂入りの資格を得る2016年にほぼ確実に殿堂入りするだろう)、本馬も将来的には米国競馬の殿堂入りを果たす可能性が高そうである。

血統

エンパイアメーカー Unbridled Fappiano Mr. Prospector Raise a Native
Gold Digger
Killaloe Dr. Fager
Grand Splendor
Gana Facil Le Fabuleux Wild Risk
Anguar
Charedi In Reality
Magic
Toussaud El Gran Senor Northern Dancer Nearctic
Natalma
Sex Appeal Buckpasser
Best in Show
Image of Reality In Reality Intentionally
My Dear Girl
Edee's Image Cornish Prince
Ortalan
Delta Princess A. P. Indy Seattle Slew Bold Reasoning Boldnesian
Reason to Earn
My Charmer Poker
Fair Charmer
Weekend Surprise Secretariat Bold Ruler
Somethingroyal
Lassie Dear Buckpasser
Gay Missile
Lyphard's Delta Lyphard Northern Dancer Nearctic
Natalma
Goofed Court Martial
Barra
Proud Delta Delta Judge Traffic Judge
Beautillion
Loving Sister Olympia
Nimble Doll

エンパイアメーカーは当馬の項を参照。

母デルタプリンセスは現役成績30戦11勝。ボーゲイH(米GⅢ)・ミントジュレップH(米GⅢ)・ローカストグローヴH(米GⅢ)とグレード競走3勝を挙げた活躍馬だった。繁殖牝馬としてはさらなる成功を収め、本馬の半妹クラウンクイーン(父スマートストライク)【クイーンエリザベスⅡ世CCS(米GⅠ)・レイクプラシッドS(米GⅡ)】も産んだが、クラウンクイーンが活躍する最中の2014年8月に病気のため15歳で他界している。

デルタプリンセスの母リファーズデルタはナッソーS(英GⅡ)の勝ち馬。やはり優秀な繁殖牝馬であり、デルタプリンセスの全妹インディファイヴハンドレッド【ガーデンシティBCH(米GⅠ)】、半弟ビオンデッティ(父バーナーディニ)【伊グランクリテリウム(伊GⅠ)】も産んでいる。リファーズデルタの母プラウドデルタは、トップフライトH(米GⅠ)・ベルデイムS(米GⅠ)・ヘンプステッドH(米GⅡ)を勝った名牝。プラウドデルタの従姉妹の孫にはキャプテンスティーヴ【ドバイワールドC(首GⅠ)・ハリウッドフューチュリティ(米GⅠ)・スワップスS(米GⅠ)・ドンH(米GⅠ)】がおり、日本で走ったフサイチエアデールとフサイチリシャール母子も近親。→牝系:F20号族①

母父エーピーインディは当馬の項を参照。

競走馬引退後

競走馬を引退した本馬は、レオン氏の意向により愛国クールモアスタッドで繁殖入りした。その目的はクールモアが所有する大種牡馬ガリレオと交配する事だという。

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