バイエルン

和名:バイエルン

英名:Bayern

2011年生

黒鹿

父:オフリーワイルド

母:アリトルビットアーリー

母父:サンダーガルチ

当時から現在まで色々と物議を醸している2014年のBCクラシックの優勝馬

競走成績:3・4歳時に米で走り通算成績15戦6勝2着1回3着3回

※最初に筆者から注意:もし本馬の熱狂的なファンや関係者という人がいたら、その人は本項を読まない方が良いかもしれないです。

BCクラシックは毎年の米国競馬の総決算となる大競走中の大競走であり、そのレースの勝ち馬は1頭も余すところなくこの名馬列伝集に掲載する方針でいる。しかし本馬に限っては掲載するべきか正直迷った。本馬が勝ったBCクラシックのレース内容を知っている人であれば、筆者の迷いが理解できるのではないだろうか。掲載する以上は、その馬が主役であり、なるべくその馬を貶める内容にはしたくないというのが筆者の考え方なのだが、本馬に関してはそれが難しいと思ったからだった。この名馬列伝集には、評価が定まらない現役競走馬の掲載は一部例外を除いて後回しにするという方針もあり、その点でも本馬の掲載は見送っていた。

しかし本馬の競走馬引退が正式に発表された後になっても迷いは無くならなかった。迷いに迷った末に掲載する事を決めたのは、実は2015年12月、本馬とは別のとある馬の訃報を耳にしたからだった。その馬に関しては訃報を耳にした瞬間に名馬列伝集に掲載する事を決めたが、その馬の記事を書いた後に本馬の記事を書くことになると、余計に本馬を悪しざまに書きかねないため、その前に本馬の記事を書かなければと判断したのである。事情を知らない人のために予め断っておくが、その馬の死と本馬のBCクラシックには直接なんの関係もない。それでも、あのBCクラシックで本馬がその馬に対して・・・と思わずにはいられないのも偽らざる筆者の本心なのである。

誕生からデビュー前まで

ヘレン・アレクサンダー女史により生産された米国ケンタッキー州産馬である。1歳時に競走馬育成業者により購入され、2歳時のトレーニングセールにおいて買い手がついた。

本馬を32万ドルで購入したのはインド出身の米国のコンピューター関連会社社長カリーム・シャー氏だった。彼の父親マジード・シャー氏はインドで調教師をしており、2頭のインド三冠馬を育て上げた同国有数の名調教師だった。幼少期から馬に囲まれて育ったカリーム・シャー氏は父と同じく調教師を志したらしいが、彼にはその方面の才能は無かったようで、調教師にはなれなかった。落胆する彼に父マジード・シャー氏は「馬主になりなさい。そのためには努力と幸運が必要です」と諭した。そこで彼は地元の大学でコンピューター技術を学んだ後に米国に留学してさらに知識を増やした。そして36歳時の1989年に米国でカルネット社という電気通信会社を創設した。カルネット社は資本金3千ドル足らずという小規模会社だったが、あのゼネラル・エレクトリック社に通信技術診断ソフトウェアを提供するなどして、どんどん規模を拡大していった。彼はインド出身であるが、米国に対する愛着が深く、カルネット社創設の数年後には米国籍を取得。後の2001年9月に米国同時多発テロ事件が起きると、米国政府の依頼を受けて米軍の通信業を担当するようになり、一気に会社の業績を伸ばし、実業家として成功を収めた。そして念願かなって馬主となり、既に何頭かの有力馬を所有していた。

カリーム・シャー氏に購入された時点で既に本馬には“タハリールスクエア(Tahrir Square)”という名前がつけられていた。しかし本馬を気に入って父に購入するように要望したカリーム・シャー氏の息子アルマン・シャー氏が、独国のサッカーチームであるバイエルン・ミュンヘンのファンだったために改名された。カリーム・シャー氏は所有する馬の多くをボブ・バファート調教師に預けており、本馬もバファート師の管理馬となった。

競走生活(3歳時)

3歳1月にサンタアニタパーク競馬場で行われたダート7.5ハロンの未勝利戦で、ゲイリー・スティーヴンス騎手を鞍上にデビューした。単勝オッズ1.8倍で8頭立ての1番人気に支持された。レースでは2番手を追走し、三角で先頭に立ってそのまま直線に入ってきた。そして後方から追い込んできた単勝オッズ22.7倍の7番人気馬アールプリティボーイフロイドの追撃を完封し、3馬身1/4差をつけて勝利した。

次走は翌2月にサンタアニタパーク競馬場で行われたダート8ハロンの一般競走となった。ここでもスティーヴンス騎手とコンビを組み、単勝オッズ1.6倍で5頭立ての1番人気に支持された。このレースには、2歳時のデビュー戦を4馬身1/4差で圧勝してBCジュヴェナイルでも5着していたタップイットリッチという実績馬が出走しており、本馬との2強ムードとなった。斤量が2ポンド軽かった分だけ本馬の評価が僅かに高く単勝オッズ1.6倍の1番人気。タップイットリッチは単勝オッズ2.3倍の2番人気だった。

しかしレースは全然2強対決にはならなかった。スタートしてすぐに先頭に立った本馬は、しばらくは後続を引き付けて逃げていたが、向こう正面から徐々に後続との差を広げ始めた。3番手を進んでいたタップイットリッチも追撃を開始したが、本馬との差はどんどん広がる一方だった。直線入り口で既に10馬身差はついており、ゴールではさらにその差を広げて、2着タップイットリッチに15馬身差をつけて大圧勝した。この鮮烈な勝利により、本馬は3歳デビューながらケンタッキーダービーの候補として認知されるようになった。

陣営も当然そのつもりであり、本馬を東上させてアーカンソーダービー(GⅠ・D9F)に参戦させた。ケンタッキーダービーを目指す有力馬が集う重要な前哨戦だけに、ケンタッキージョッキークラブS・サウスウエストSの勝ち馬で前走レベルS2着のタピチャー、サンランドダービー3着馬コミッショナー、ホープフルSの勝ち馬でサウスウエストS2着・BCジュヴェナイル3着のストロングマンデート、シャンペンS・サウスウエストS・レベルS3着のライドオンカーリン、スウィンフォードSの勝ち馬でホーリーブルS2着のコンクエストタイタンといった、あわよくばケンタッキーダービーを目指そうかという馬達が複数出走してきた。スティーヴンス騎手騎乗の本馬が単勝オッズ2.6倍の1番人気、タピチャーが単勝オッズ3.1倍の2番人気、コミッショナーが単勝オッズ7.6倍の3番人気、ストロングマンデートが単勝オッズ7.8倍の4番人気、ライドオンカーリンが単勝オッズ8.2倍の5番人気となった。

今回も本馬はスタートしてすぐに先頭に立った。そしてやはり後続を引き付けながら逃げ続けた。しかし前走と異なり、後続との差を広げることは出来なかった。特に本馬をマークするように3番手を追走してきた単勝オッズ42.3倍の7番人気馬ダンザの脚色が良く、四角で本馬に並びかけると、直線でそのまま突き抜けていった。本馬はさらにゴール前でライドオンカーリンにかわされて1つ順位を落とし、勝ったダンザから5馬身1/4差の3着に敗れた。

それでも陣営はケンタッキーダービー出走を諦めず、本馬を2週間後のダービートライアルS(GⅢ・D8F)に向かわせた。対戦相手のレベルは前走より低く、本馬が単勝オッズ1.8倍の1番人気、未勝利戦を4馬身差で勝ち上がってきたばかりのエンベリッシングボブが単勝オッズ5.8倍の2番人気、スウェイルSの勝ち馬だが前走フロリダダービーでは7着に終わっていたスポットが単勝オッズ6.9倍の3番人気、一般競走を勝ってきたマイオシティスダンが単勝オッズ8.1倍の4番人気となった。

今回の本馬は当時北米有数の女性騎手だったロージー・ナプラヴニク騎手とコンビを組んだ。鞍上が変わっても本馬の戦法に変化は無く、スタートが切られると同時に先頭に立ち、やはり後続を引き付けながら逃げを打った。しかし今回も道中で後続との差を広げられなかった本馬は、本馬を徹底マークして2番手を追走してきたエンベリッシングボブに直線入り口で並びかけられ、叩き合いとなった。さらに後方からはマイオシティスダンも追い上げてきて、ゴール前では3頭三つ巴の勝負となった。そして本馬がトップゴールを果たし、エンベリッシングボブが鼻差の2位入線、マイオシティスダンがさらに鼻差の3位入線だった。しかしレース後の審議において、直線の攻防で本馬がエンベリッシングボブの進路を妨害したと裁定が下り、本馬は2着降着となった。

筆者はこのレースの映像を見たが、確かに直線入り口で本馬が外側に少しよれてエンベリッシングボブに接触し、エンベリッシングボブが少し体勢を崩す場面があった。しかしこの斜行は、後にBCクラシックで本馬が仕出かすのと比べると余程穏健であり、着差が小さかったから進路妨害が無ければ着順が変わっていた可能性が高いという判断だったように見受けられた。

いずれにしてもダービートライアルSを勝つことが出来なかった本馬はケンタッキーダービーに出走できず、プリークネスS(GⅠ・D9.5F)に向かった。対戦相手は、ケンタッキーダービー・サンタアニタダービー・サンフェリペSなど5連勝中のカリフォルニアクローム、ケンタッキーダービー不参戦のウッドメモリアルS3着馬ソーシャルインクルージョン、アーカンソーダービー2着後にケンタッキーダービーに出走したが7着だったライドオンカーリン、プライヴェートタームズS・フェデリコテシオSを連勝してきたキッドクルツ、BCジュヴェナイルフィリーズの勝ち馬でサンタアニタオークス2着のリアアントニア、ケンタッキーダービーでは11着だったファウンテンオブユースS2着・フロリダダービー3着のジェネラルアロッド、前走イリノイダービーを勝ってきたダイナミックインパクトなどだった。カリフォルニアクロームが単勝オッズ1.5倍の1番人気、ソーシャルインクルージョンが単勝オッズ6.3倍の2番人気、ライドオンカーリンが単勝オッズ11.3倍の3番人気、キッドクルツが単勝オッズ13.3倍の4番人気、前走に引き続きナプラヴニク騎手が騎乗する本馬が単勝オッズ13.9倍の5番人気だった。

ところがスタートした直後にアクシデントが発生。本馬の外側隣枠から発走したリアアントニアがいきなり内側に斜行し、本馬に衝突したのである。リアアントニアはお構いなしにそのまま先頭を目掛けて走り出したが、本馬のほうは体勢を崩してスタートダッシュに失敗。道中は馬群の中団後方を進むことになった。そして最後まで挽回することは出来ず、勝ったカリフォルニアクロームから21馬身差をつけられた9着に敗退。当然スタート後のリアアントニアの斜行に関しては審議対象になったが、四角で既に最後尾まで落ちていたリアアントニアは本馬から10馬身差の10着最下位であり、進路妨害と裁定されても結果は変わらなかった。

ベルモントSには出走せず、同日にベルモントパーク競馬場で行われたウッディスティーヴンスS(GⅡ・D7F)に出走した。プリークネスSで3着だったソーシャルインクルージョン、ホープフルSの勝ち馬でBCジュヴェナイル2着の米国三冠競走不参戦のハバナ、前走ベイショアSの勝ち馬クードグレイス、サンヴィンセントSの勝ち馬コーベズバック、ダービートライアルSで本馬の降着により繰り上がって勝利馬となるもケンタッキーダービーに出走せずにここに直行してきたエンベリッシングボブ、前走ラザロバレラSを勝ってきたトップフォーティチュードなどが対戦相手となった。ソーシャルインクルージョンが単勝オッズ2倍の1番人気、ハバナが単勝オッズ6.1倍の2番人気、本馬が単勝オッズ10.2倍の3番人気、クードグレイスが単勝オッズ10.6倍の4番人気となった。

今回はスティーヴンス騎手が本馬に騎乗した。スタートが切られると本馬が先頭に立とうとしたが、単勝オッズ47.65倍の11番人気馬ピュアセンセーションが競りかけてきて、2頭が先頭争いを展開した。しかし三角でピュアセンセーションを振り払った本馬は、後続との差を広げながら直線へと入ってきた。そして直線ではさらに後続との差を広げ、2着に追い上げてきた単勝オッズ24.6倍の7番人気馬トップフォーティチュードに7馬身半差をつけて圧勝した。

次走は翌7月のハスケル招待S(GⅠ・D9F)となった。ケンタッキーオークス・マザーグースS・ポカホンタスS・フェアグラウンズオークス・レイチェルアレクサンドラSの勝ち馬でハリウッドスターレットS3着のアンタパブル(暮れのBCディスタフをナプラヴニク騎手と共に制してこの年のエクリプス賞最優秀3歳牝馬に選出)、トランシルバニアSの勝ち馬でブルーグラスS2着・ベルモントS3着のメダルカウント、前走3着のソーシャルインクルージョン、スペクタキュラービッドSの勝ち馬ジャストコールケニー、ファウンテンオブユースS・ハッチソンSの勝ち馬でフロリダダービー2着のワイルドキャットレッド、前走ペガサスSの勝ち馬でルコントS・リズンスターS2着のアルバノなどが対戦相手となった。米国三冠競走の勝ち馬はいなかったため、牡馬は全て同斤量だった。4連勝中のアンタパブルが単勝オッズ2.4倍の1番人気、主戦となるマルティン・ガルシア騎手と初コンビを組んだ本馬が単勝オッズ5.7倍の2番人気、メダルカウントが単勝オッズ5.8倍の3番人気、ソーシャルインクルージョンが単勝オッズ7.8倍の4番人気となった。

スタートが切られると本馬が即座に先頭に立ち、ワイルドキャットレッドやソーシャルインクルージョンが2~3番手を追走してきた。本馬は三角で加速を開始すると直線入り口では完全に単独先頭に立った。そしてその後も後続との差を広げ続け、4番手追走から2着に入った単勝オッズ12.6倍の7番人気馬アルバノに7馬身1/4差をつける圧勝で、GⅠ競走初勝利を挙げた。

その後はトラヴァーズS(GⅠ・D10F)に向かった。ベルモントSでカリフォルニアクロームを4着に破って優勝していたピーターパンSの勝ち馬トゥーナリスト、ウッドメモリアルS・ジムダンディSの勝ち馬ウィックドストロング、ベルモントダービー・デイニアビーチS・レキシントンSの勝ち馬ミスタースピーカー、プリークネスS8着後にイージーゴアS・ドワイヤーSを勝っていたキッドクルツ、カーリンSなど3連勝中のヴィーイーデイ、ケンタッキーダービー2着馬コマンディングカーブなどが対戦相手となった。本馬が単勝オッズ3.45倍の1番人気、トゥーナリストとウィックドストロングが並んで単勝オッズ3.65倍の2番人気、ミスタースピーカーが単勝オッズ8.6倍の4番人気となった。

スタートが切られるとやはり本馬が先頭に立ち、トゥーナリストやウィックドストロングを引き連れて馬群を牽引した。ところが特に競りかけられたわけでもないし、ペースが速かったわけでもなかったのだが、向こう正面から徐々に後退。直線入り口では既に最後方まで転落していた。勝利を諦めたガルシア騎手は本馬を馬なりのまま走らせたために前方馬との差はさらに広がり、中団から差して勝利した単勝オッズ20.5倍の6番人気馬ヴィーイーデイから20馬身差をつけられた10着最下位に惨敗した。

次走は翌9月のペンシルヴァニアダービー(GⅡ・D9F)となった。対戦相手は、米国三冠馬の夢を絶たれたベルモントS4着以来の出走となるカリフォルニアクローム、ロバートBルイスSの勝ち馬でキャッシュコールフューチュリティ2着・サンタアニタダービー3着のキャンディボーイ、アーカンソーダービー4着後にケンタッキーダービーに出走して15着だった後はウエストヴァージニアダービー・マットウィンSを連勝していたタピチャー、19日前のスマーティジョーンズSを勝ってきたプロトニコなどだった。カリフォルニアクロームが単勝オッズ1.9倍の1番人気、本馬が単勝オッズ4.5倍の2番人気、キャンディボーイが単勝オッズ6.8倍の3番人気、タピチャーが単勝オッズ7.8倍の4番人気となった。

スタートが切られるとやはり本馬が先頭に立ち、そのまま逃げを打った。大本命のカリフォルニアクロームは本馬から少し後方の3番手を追走してきた。そのままの態勢で直線に入ってきたが、カリフォルニアクロームには伸びが無く馬群に飲み込まれていった。一方の本馬は前走の惨敗は何だったのかというほどの伸び伸びとした走りを直線で披露し、激しい2着争いを制したタピチャーに5馬身3/4差をつけて完勝した。カリフォルニアクロームは本馬から7馬身1/4差の6着であり、2頭は同斤量だったため、本馬はカリフォルニアクローム、トゥーナリスト、そして冒頭で触れた「とある馬」に比肩する3歳世代トップクラスの馬としての地位を確立した。

BCクラシック

その後は久々に米国西海岸に戻り、サンタアニタパーク競馬場で行われたBCクラシック(GⅠ・D10F)に参戦した。対戦相手は、カリフォルニアクローム、トラヴァーズS3着後にジョッキークラブ金杯を勝ってきたトゥーナリスト、6連勝でサバーバンHを勝ち前走ジョッキークラブ金杯2着だったジーヴォ、1990年代米国最強馬シガーの甥に当たるスキップアウェイSの勝ち馬シガーストリート、UAEダービーの勝ち馬でパシフィッククラシックS2着のトーストオブニューヨーク、前走3着のキャンディボーイ、トラヴァーズS勝利後に出走したジョッキークラブ金杯では5着だったヴィーイーデイ、ホイットニーH・ドワイヤーSの勝ち馬でトラヴァーズS・ウッドワードS2着のモレノ、サンタアニタ金杯・東京シティカップSの勝ち馬マジェスティックハーバー、ウエストヴァージニアダービー・スーパーダービー・アイオワダービー・コーンハスカーHの勝ち馬で前走ウッドワードS3着のプレイヤーフォーリリーフ、チャールズタウンクラシックSの勝ち馬でサンタアニタ金杯・パシフィッククラシックS3着のインペラティヴ、前走オーサムアゲインSで3着してきたフットブリッジ、そして冒頭で触れた「とある馬」であるキャッシュコールフューチュリティ・パシフィッククラシックS・オーサムアゲインS・ロスアラミトスダービー・ハリウッドプレビューSなど7戦無敗の前年のエクリプス賞最優秀2歳牡馬騙馬シェアードビリーフの計13頭だった。

このシェアードビリーフは右前脚の負傷のため米国三冠路線には不参加だったが、その圧勝に次ぐ圧勝から、同世代の中では一番強いのではないかと言われていた。そのシェアードビリーフが単勝オッズ3.5倍の1番人気に支持され、カリフォルニアクロームとトゥーナリストが並んで単勝オッズ5.4倍の2番人気、本馬が単勝オッズ7.1倍の4番人気、ジーヴォが単勝オッズ12.4倍の5番人気と、上位人気4頭を3歳馬が占めた。

このレースはスタートでアクシデントが発生した。ゲートが開いた瞬間に本馬が内側に斜行して、隣枠から発走したシェアードビリーフに体当たりをした上に、さらに斜行してシェアードビリーフから2つ内側の枠から発走したモレノにも体当たりをしたのである(シェアードビリーフとモレノの間の枠から発走したヴィーイーデイは少しゆっくりスタートしたので他2頭のような直接被害は受けなかった)。シェアードビリーフとモレノは体勢を崩したぶんだけ加速が遅れたが、2頭を押しのけてスタートダッシュをした本馬は体勢を崩すことなく即座に先頭に立った。そして2番手のトーストオブニューヨークに1~2馬身ほどの差をつけて逃げ続けた。トーストオブニューヨークから少し離れた3番手がカリフォルニアクロームで、トゥーナリストは最後方からの競馬を選択。そして本馬から進路妨害を受けたシェアードビリーフやモレノは5~6番手の好位を追走した。シェアードビリーフは先行馬であり、先頭に拘るタイプの馬ではなかったため、無理に位置取りを上げるような事はしなかったようである。モレノは逃げ馬だったために先頭を狙おうとしたが、他馬が前にいたためにそれ以上は進出できなかった。レースは最初の2ハロンを23秒12、半マイルを46秒44という平均的ラップで逃げた本馬のペースだった。そのために三角に入って後続馬が一斉に加速しても、余力があった本馬も再加速したために、各馬の順位は殆ど変わらないまま直線に入ってきた。直線では内埒沿いを逃げる本馬と、2~3番手から徐々に差を詰めてきたトーストオブニューヨークとカリフォルニアクロームの3頭による勝負に持ち込まれた。しかし本馬が凌ぎ切り、2位入線のトーストオブニューヨークに鼻差、3位入線のカリフォルニアクロームにはさらに首差をつけてトップゴールを果たした。シェアードビリーフはカリフォルニアクロームからさらに3馬身半差の4位入線、モレノは最下位入線だった。

しかし当然スタート時に本馬がシェアードビリーフとモレノに体当たりをかました件は審議対象となり、ガルシア騎手はサンタアニタパーク競馬場の運営側から呼び出しを受けて聞き取りを受けた。筆者はかなり前の話になるが1992年のスピナウェイSでスカイビューティがスタート直後に斜行して隣の馬の進路を妨害したために1位入線降着になったレースを思い起こしていた。これはそのとき以上に悪質な斜行だったために、本馬は降着か失格になると思った。

しかしサンタアニタパーク競馬場が出した裁定は、着順に変更なしという筆者の予想外のものだった。この裁定に納得がいかなかったのは筆者だけではなかったようで、試しに筆者が滅多に閲覧しない海外の競馬掲示板を覗いてみると、「この裁定は間違いだ」という意見が溢れかえっていた。もちろん、本馬を擁護する多く意見もあった。シェアードビリーフは先頭に拘る馬では無かったため、仮に本馬の妨害を受けなくても位置取りはあまり変わらなかっただろうとする意見や、着差などを考慮すると妨害が無くてもシェアードビリーフは前に届かなかっただろうという意見などが見受けられた。

しかし本馬の斜行によって不利を受けたのはシェアードビリーフだけではなくモレノも含まれていた。モレノは逃げれば強いが逃げられなければ駄目という完全な逃げ馬だったのだが、このレースでは本馬の斜行の影響によりスタートダッシュに失敗して馬群に包まれたために逃げることが出来ずに5番手を進み、結果として最下位に敗れ去っていた。本馬を擁護する意見はシェアードビリーフだけに注目しているものばかりであり、斜行が無ければモレノが先頭を目指して本馬に競りかけてきて、展開や結果がまるで変わっていた可能性が高い点には目を向けていない。

それを考慮すると、あくまでも筆者の個人的な見解ではあるが、このBCクラシックで本馬は最下位降着か失格になるべきだった。よって、歴代のBCクラシックの勝ち馬一覧に本馬がその名を連ねるのは、あまり妥当ではないと現在でも思っている。

海外の降着基準は「妨害がなければ被害馬が加害馬に確実に先着していた」と認められる場合に限っており、「妨害がなければ被害馬が加害馬に先着していたかもしれない」では降着にはならない。ところが筆者が過去に数多く見てきた海外のレースの中には、「これで降着?」という程度のものも少なからずあり、基準がさっぱり理解できない。本馬が先にダービートライアルSで降着になったレースを映像で見たのは、このBCクラシックの後だったのだが、あれは「確実に着順が変わっていた」とは思えないものだったため、それでますます基準が分からなくなった。判断する人間は国や競馬場ごとに異なるからある程度の揺れが生じるのは避けられないだろうが、それを考慮しても二重基準になっているとしか思えない。翌2015年には欧州でも愛チャンピオンSでゴールデンホーンが最後の直線走路でとんでもない進路妨害を仕出かしたのに降着にも失格にもならない事件が起きるなど、海外の降着の基準は誤っていると筆者は断言せざるを得ない。日本では2013年から降着基準を海外に合わせているのだが、こんな馬鹿な基準に合わせるのは不適当である。

もちろん万人が納得する裁定は不可能だろうが、このレースの馬券を買っていない筆者ですらも違和感が消えないのであるから、シェアードビリーフやモレノの馬券を買っていた人や2頭の関係者はもっと納得がいかないだろう。これで初黒星を喫してしまったシェアードビリーフはその後もめげずに勝ち星を積み重ねたが、翌2015年のチャールズタウンクラシックSで脚を痛めて競走を中止。その後は二度とレースに出ることなく、同年12月に疝痛のためこの世を去った。本馬の進路妨害とシェアードビリーフの死には全く何の因果関係もない。しかしシェアードビリーフの名前を聞くと筆者は条件反射的に本馬の名前も思い出してしまうのである。

もっとも、本馬陣営や競馬場側も各方面で叩かれている事は認識しているだろう(サンタアニタパーク競馬場にはレース後に苦情が殺到したという)から、本項でこれ以上この件をとやかく言うのは止めることにする。

3歳時はこれが最後のレースで、この年の成績は10戦6勝だった。エクリプス賞年度代表馬及び最優秀3歳牡馬の候補にも挙がったが、いずれもカリフォルニアクロームの次点だった。

競走生活(4歳時)

4歳時は脚の膿瘍のために復帰が遅れて、5月のチャーチルダウンズS(GⅡ・D7F)から始動した。対戦相手は、パナマから米国に移籍してきてヴォスバーグS2回・シガーマイルHを勝ちマリブS・シガーマイルHで2着・BCスプリントで3着していたプライヴェートゾーン、ルイジアナダービー・モンマスカップS・ペガサスS・アクアクHの勝ち馬で前年のBCダートマイル3着のパンツオンファイア(一昨年のジャパンCダートにも参戦したがベルシャザールの16着最下位に終わっていた)、ガルフストリームパークスプリントSの勝ち馬シーズィー、一昨年のBCスプリント・アルフレッドGヴァンダービルトH3着のジェントルメンズベットなどだった。本馬が単勝オッズ1.8倍の1番人気、プライヴェートゾーンが単勝オッズ3.7倍の2番人気、パンツオンファイアが単勝オッズ4.5倍の3番人気、シーズィーが単勝オッズ12.7倍の4番人気となった。

スタートが切られるとプライヴェートゾーンが先頭に立ち、ハナを奪えなかった本馬は6頭立ての3~4番手を進んだ。そして他馬のスピードに付いていけずに徐々に後退。逃げ切って圧勝したプライヴェートゾーンから11馬身3/4差の6着最下位と惨敗した。

次走はメトロポリタンH(GⅠ・D8F)となった。対戦相手は、プライヴェートゾーン、前走3着のパンツオンファイア、前年のBCクラシックで5着に終わるもシーズン初戦のウエストチェスターSを快勝してきたトゥーナリスト、本馬が最下位に終わった前年のトラヴァーズS2着後に出走したジョッキークラブ金杯で他馬に進路を妨害されて負傷して競走中止となっていたウィックドストロング(ちなみにその他馬というのは他でもないモレノであり、モレノはこのレースで最下位に降着となっている)、レムセンS・ガルフストリームパークHの勝ち馬でシャンペンS2着のオナーコード、ゴドルフィンマイル・ファイアブレイクS・バージナハールとドバイでグレード競走を3連勝してきたタマークズ、前年のウッディスティーヴンスSで本馬の4着に敗れた後にコモンウェルスSを勝っていたコーベズバックなどだった。123ポンドのトゥーナリストが単勝オッズ2.7倍の1番人気、同じく123ポンドの本馬が単勝オッズ4.6倍の2番人気、120ポンドのウィックドストロングが単勝オッズ6.9倍の3番人気、123ポンドのプライヴェートゾーンが単勝オッズ7.7倍の4番人気、118ポンドのオナーコードが単勝オッズ8.1倍の5番人気となった。

スタートが切られると今回もプライヴェートゾーンが先頭に立ち、本馬はすぐ直後の2番手につけた。2頭が競り合ったために3番手以降は少し離され、ペースもやや速くなった。そして向こう正面で先に失速したのは本馬だった。レースは最後方からの鮮やかなまくりでオナーコードが快勝し、後方から差したトゥーナリストが2着、3着が粘ったプライヴェートゾーンで、本馬はオナーコードから28馬身半差をつけられた10着最下位と、2戦連続で大敗を喫した。

バファート師は、本馬はむしろ10ハロンよりもマイル以下の距離に適性があると思っていたそうだが、この2戦を見る限りでは本馬にとってはマイルを超える距離のほうが良かったような感じである。

その後は西海岸に戻り、サンディエゴH(GⅡ・D8.5F)に出走した。対戦相手は、クラークH・レベルS・サンパスカルSの勝ち馬でサンタアニタダービー・サンタアニタ金杯2着・スティーヴンフォスターH3着の同厩馬ホッパチュニティ、カリフォルニアンS・プレシジョニストSの勝ち馬でサンタアニタH・サンタアニタ金杯3着のキャッチアフライト、前走トリプルベンドS2着のアピーリングテイルなどだった。123ポンドの本馬が単勝オッズ2.4倍の1番人気、121ポンドのホッパチュニティが単勝オッズ3.6倍の2番人気、120ポンドのキャッチアフライトが単勝オッズ4.2倍の3番人気、116ポンドのアピーリングテイルが単勝オッズ10.6倍の4番人気となった。

過去2戦ではハナを奪えなかった本馬だが、距離が伸びたここでは好スタートから先頭に立つ事に成功。アピーリングテイルが競りかけてきて、2頭が先頭を争う展開となったが、過去2戦に比べると比較的緩いペースだった。そのまま2頭が並走した状態で直線に突入。しばらくは2頭が叩き合っていたが、7ポンドの斤量差が響いたようで本馬は徐々に後退。そこへ後方からキャッチアフライトが追い上げてきて、ゴール直前でアピーリングテイルを捕らえて頭差で勝利。本馬はアピーリングテイルから1馬身1/4差の3着に敗れたが、斤量差を考慮すると十分な走りだった。

その後はパシフィッククラシックS(GⅠ・D10F)に向かった。対戦相手は、キャッチアフライト、前走4着のホッパチュニティ、3連勝後に出走したサルヴェイターマイルSで2着してきた上がり馬レッドヴァイン、前走サンタアニタ金杯を勝ってきたハードエーシズ、前年のBCクラシック9着後に来日してチャンピオンズCに出走したがホッコータルマエの15着と惨敗していたインペラティヴ、デルマーダービーの勝ち馬でシューメーカーマイルS2着のミッドナイトストームなどだったが、もう1頭、もしかしたら一番の強敵になるかも知れない馬がいた。それは、史上初めてBCジュヴェナイルフィリーズとBCディスタフのダブル制覇を達成しただけでなく、ラスヴァージネスS・サンタアニタオークス・ゼニヤッタS2回・クレメントLハーシュS・アドレーションSも勝ち、米国競馬史上初めて2歳から5歳まで4年連続でGⅠ競走を勝っていた現役米国最強牝馬ビホルダーだった。牡馬と戦うのが初めてだったビホルダーが単勝オッズ3倍の1番人気、本馬が単勝オッズ4.7倍の2番人気、レッドヴァインが単勝オッズ5.6倍の3番人気、ホッパチュニティが単勝オッズ5.9倍の4番人気、キャッチアフライトが単勝オッズ8.8倍の5番人気となった。ガルシア騎手がここでは同厩馬ホッパチュニティに騎乗する事になったため、本馬にはラファエル・ベハラーノ騎手が騎乗した。

スタートが切られると本馬はすぐに先頭に立ったが、ミッドナイトストームが競りかけてきた。前走と比べると競り合いはかなり激しいものとなり、3番手のビホルダーと前2頭の差は最大で5馬身ほどまで開いた。そして通過ラップは最初の2ハロンが22秒36、半マイルが45秒45だった。三角手前でミッドナイトストームはスタミナが切れて一気に沈んでいったが、本馬のスタミナももはや残っていなかった。三角半ばでビホルダーにかわされると抵抗する事は出来ずに一気に失速。同競走初の牝馬制覇を果たしたビホルダーから22馬身半差の9着と壊滅的大敗を喫した。

次走は翌9月のオーサムアゲインS(GⅠ・D9F)となった。対戦相手は、前走4着のホッパチュニティ、同5着のインペラティヴ、同6着のハードエーシズ、この3か月前にデビューしたばかりで3戦2勝という短い経歴で参戦してきた4歳馬スムーズローラーなどだった。ガルシア騎手が鞍上に戻ってきた本馬が単勝オッズ2.2倍の1番人気、ホッパチュニティが単勝オッズ3.9倍の2番人気、スムーズローラーが単勝オッズ6.5倍の3番人気、インペラティヴが単勝オッズ8.9倍の4番人気となった。

スタートが切られると当然本馬が先頭に立った。そして2番手のスムーズローラーに1馬身ほどの差をつけて淡々と逃げを打った。最初の2ハロン通過は24秒3であり、前走パシフィッククラシックSに比べると遥かに楽な逃げだった。しかし四角でスムーズローラーに並びかけられると、堪えることが出来ずに直線で失速。3番手を進んできたホッパチュニティにも差されてしまい、勝ったスムーズローラーから6馬身3/4差の3着に敗れた。

そしてこのレースの2日後の9月28日に正式に競走馬引退が発表された。4歳時の成績は5戦未勝利だった。

血統

Offlee Wild Wild Again Icecapade Nearctic Nearco
Lady Angela
Shenanigans Native Dancer
Bold Irish
Bushel-n-Peck Khaled Hyperion
Eclair
Dama Dante
Clovelly
Alvear Seattle Slew Bold Reasoning Boldnesian
Reason to Earn
My Charmer Poker
Fair Charmer
Andover Way His Majesty Ribot
Flower Bowl
On the Trail Olympia
Golden Trail
Alittlebitearly サンダーガルチ Gulch Mr. Prospector Raise a Native
Gold Digger
Jameela Rambunctious
Asbury Mary
Line of Thunder Storm Bird Northern Dancer
South Ocean
Shoot a Line High Line
Death Ray
Aquilegia Alydar Raise a Native Native Dancer
Raise You
Sweet Tooth On-and-On
Plum Cake
Courtly Dee Never Bend Nasrullah
Lalun
Tulle War Admiral
Judy-Rae

父オフリーワイルドはワイルドアゲイン産駒で、現役成績は19戦6勝。ホーリーブルS(米GⅢ)を勝ちブルーグラスS(米GⅠ)3着の成績を持って、ケンタッキーダービー(米GⅠ)に挑戦したが、ファニーサイドの12着と惨敗。その後は不振が続いたが、4歳時にマサチューセッツH(米GⅡ)を勝つと、5歳時にはサバーバンH(米GⅠ)・エクセルシオールBCH(米GⅢ)を勝利した。繋養先がケンタッキー州ではなくペンシルヴァニア州だったという点で種牡馬としての環境はあまり恵まれているとは言えず、種牡馬としてはもう一声欲しいという成績だった。本馬がBCクラシックを勝つ前月にトルコに輸出されることが決定しており、2015年からはトルコで供用されている。

母アリトルビットアーリーは、競走馬としては不出走に終わった。アリトルビットアーリーがそうなった理由は予定日より数か月も早く生まれたためである。なにしろ本当は2003年が生年になるはずだったのが、2002年12月14日に産まれてしまい、2002年産馬になってしまった。そのために「少し早過ぎた」という意味で“Alittlebitearly”と命名された。早生まれだったために非常に小柄な馬だった上に、本当は1歳年上になるはずだった馬達と同年齢として走らなければならない状況となったために、競走馬として活躍するのは無理と判断されて不出走のまま繁殖入りしたのだった。それでも無事に成長して母親になっただけでも良しとしなければならなかっただろう。

アリトルビットアーリーの半兄にはベルトリーニ(父ダンチヒ)【ジュライS(英GⅢ)】がいる他、アリトルビットアーリーの半姉アメリア(父ディキシーランドバンド)の子にはキンダーガーデンキッド【シカモーS(米GⅢ)】、アサティーグ【ドクタージェームスペニー記念H(米GⅢ)】、レイナダバテリア【ジェサミンS(米GⅢ)】がいる。

アリトルビットアーリーの母アクイレギアはニューヨークH(米GⅡ)・ブラックヘレンH(米GⅢ)を勝つなど30戦8勝。アクイレギアの母コートリーディーは33戦4勝ながら卓越した繁殖成績を挙げており、アクイレギアの半兄アリウープ【サプリングS(米GⅠ)】、半兄ネイティヴクーリエ【セネカH(米GⅢ)・ブライトンビーチH(米GⅢ)・バーナードバルークH(米GⅢ)】、全姉アルセア【ハリウッドスターレットS(米GⅠ)・サンタスサナS(米GⅠ)・アーカンソーダービー(米GⅠ)・ハリウッドジュヴェナイルCSS(米GⅡ)・デルマーデビュータントS(米GⅡ)・デルマーフューチュリティ(米GⅡ)】、半兄ケトー【カウディンS(米GⅠ)】、全姉アイシャ【レアパフュームS(米GⅡ)】、半弟トワイニング【ウィザーズS(米GⅡ)・ピーターパンS(米GⅡ)】と次々に活躍馬を産んだだけでなく、アクイレギアの半姉プリンセスウーラの子にアザーム【シドニーC(豪GⅠ)】、アクイレギアの半姉フォーリンクーリアの子にグリーンデザート【ジュライC(英GⅠ)】、アルセアの子に日本で走ったヤマニンパラダイス【阪神三歳牝馬S(GⅠ)】、孫にアーチ【スーパーダービー(米GⅠ)】、バレット【フリゼットS(米GⅠ)】、アコマ【スピンスターS(米GⅠ)】、アクイレギアの半姉バラダの孫に日本で走ったノーリーズン【皐月賞(GⅠ)】、玄孫にワンアンドオンリー【東京優駿(GⅠ)】、アイシャの子にアルディサ【ゴーフォーワンドH(米GⅠ)】がいるなど、かなり優れた牝系を構築している。本馬と対戦経験があるカリフォルニアクロームは、コートリーディーの従姉妹プリンセスリボーの子孫であり、本馬とは遠縁にあたる。→牝系:F21号族②

母父サンダーガルチは当馬の項を参照。

競走馬引退後

競走馬を引退した本馬は、2016年からケンタッキー州ヒルンデイルファームで種牡馬入りする事になった。種牡馬としては好成績を収めて、BCクラシックの勝ち馬としては相応しくないと批評した筆者を恥じ入らせてほしい。それは栄光あるBCクラシック覇者としての責任でもある。

TOP