ヘニーヒューズ

和名:ヘニーヒューズ

英名:Henny Hughes

2003年生

栗毛

父:ヘネシー

母:メドウフライヤー

母父:メドウレイク

米国の2歳戦と短距離路線で活躍した快速馬は種牡馬として米国と日本でいずれも大物を出して注目され、日本に輸入されて人気種牡馬となる

競走成績:2・3歳時に米で走り通算成績10戦6勝2着3回

誕生からデビュー前まで

米国ケンタッキー州トラックサイドファーム及びリベレーションファームの生産馬で、ドバイのシェイク・モハメド殿下が代表を務める馬主団体ザビール・レーシング国際の所有馬となり、かつて欧州でオールアロングトリプティクを手掛けた後に米国に拠点を移していたパトリック・ルイス・ビアンコーヌ調教師に預けられた。

競走生活(2歳時)

2歳6月にモンマスパーク競馬場で行われたダート5ハロンの未勝利戦で、ジョー・ブラボ騎手を鞍上にデビュー。単勝オッズ2.6倍で6頭立ての1番人気に支持された。スタートで少し出負けしてしまったが、速やかに3番手の好位につけると、三角で仕掛けて四角で先頭に立った。直線ではブラボ騎手が手と足だけで追い続け、2着ミッドタウンに6馬身差をつけて圧勝した。

次走は翌月にベルモントパーク競馬場で行われたトレモントS(D5.5F)だった。ここではゲイリー・スティーヴンス騎手とコンビを組み、単勝オッズ1.7倍の1番人気に支持された。前走に続いて今回もスタートで後手を踏んでしまったが、すぐに加速して先頭争いに加わった。そして三角からゴールまで延々と後続馬を引き離し続け、最後は2着ショートサーキットに15馬身差をつけて大圧勝した。

次走のサラトガスペシャルS(GⅡ・D6F)では、未勝利戦を13馬身1/4差で勝ち上がってきたマスターオブディザスターとの2強対決となった。スティーヴンス騎手騎乗の本馬が単勝オッズ1.9倍の1番人気、マスターオブディザスターが単勝オッズ2.35倍の2番人気で、GⅢ競走フラッシュSで2着してきたユニオンコースが単勝オッズ9倍の3番人気だった。

レースでは、今回は普通にスタートを切った本馬がそのまま先頭をひた走り、対抗馬のマスターオブディザスターが好位につけた。三角手前でマスターオブディザスターが2番手に上がったが、ここから加速した本馬がマスターオブディザスターとの差をどんどん広げ、直線入り口では7~8馬身ほどの差をつけて既に勝負を決定付けてしまった。後は追い抜かれない程度に走るだけでよく、マスターオブディザスターを3馬身3/4差の2着に破って勝利した。

次走のホープフルS(GⅠ・D7F)では、未勝利戦を5馬身半差で、一般競走を6馬身差で連続圧勝してきたファーストサムライ、未勝利戦を19馬身半差で大楽勝してきたトゥーマッチブリングとの対戦となった。スティーヴンス騎手騎乗の本馬が単勝オッズ1.6倍の1番人気、ファーストサムライが単勝オッズ3.05倍の2番人気、トゥーマッチブリングが単勝オッズ7倍の3番人気だった。

スタートが切られると、出負けしたトゥーマッチブリングが加速して先頭に立ち、やはり出負けしたファーストサムライも加速して2番手につけた。一方、普通にスタートを切った本馬は前2頭を見るように3番手を追走した。四角でファーストサムライがトゥーマッチブリングをかわして先頭に立つと、本馬もそれを追ってスパート。ところがファーストサムライとの差を縮めるどころか、逆にじりじりと引き離されていった。結局はトゥーマッチブリングを1馬身差の3着に抑えるのが精一杯で、勝ったファーストサムライからは4馬身1/4差をつけられて2着に敗れた。

次走は10月のシャンペンS(GⅠ・D8F)となった。ここでもファーストサムライ、トゥーマッチブリングとの顔合わせとなったが、前走の結果を受けて人気は逆転しており、ファーストサムライが単勝オッズ1.75倍の1番人気、スティーヴンス騎手騎乗の本馬が単勝オッズ3.4倍の2番人気、トゥーマッチブリングが単勝オッズ9.5倍の3番人気となった。

スタートが切られると、ゲートに身体をぶつけながらもトゥーマッチブリングが先頭に立ち、本馬が2番手、ファーストサムライが3~4番手につけた。三角手前でトゥーマッチブリングが早くも失速すると本馬が代わりに先頭に立ち、さらに後方からファーストサムライが並びかけてきた。直線入り口ではこの2頭と後続馬との差は10馬身程度まで開き、完全にこの2頭のいずれかに勝ち馬が絞られた。しかしファーストサムライが着実に本馬との差を広げていき、そのまま勝利。本馬は2馬身3/4差をつけられて2着に敗れた。

このレース直後に本馬はキアラン・マクローリン厩舎に転厩した。そしてベルモントパーク競馬場で行われたBCジュヴェナイル(GⅠ・D8.5F)に向かった。対戦相手は、ファーストサムライ、デルマーフューチュリティを5馬身差で圧勝してきたスティヴィーワンダーボーイ、アーリントンワシントンフューチュリティなど3戦無敗のソーサラーズストーン、ベルモントフューチュリティSなど3連勝中のプライヴェートヴァウ、欧州から遠征してきたジュライS勝ち馬でモルニ賞2着のイワンデニソヴィッチ、ケンタッキーカップジュヴェナイルS勝ち馬でブリーダーズフューチュリティ3着のストリームキャット、ブリーダーズフューチュリティSを勝ってきたドーンオブウォーなどだった。スティーヴンス騎手はビアンコーヌ厩舎の所属馬ストリームキャットに騎乗したため、本馬にはエドガー・プラード騎手が騎乗した。ファーストサムライが単勝オッズ2.3倍の1番人気、スティヴィーワンダーボーイが単勝オッズ5.5倍の2番人気、ソーサラーズストーンが単勝オッズ8.7倍の3番人気で、本馬は単勝オッズ10.3倍の4番人気に留まった。

スタートが切られるとドーンオブウォーが先頭に立ち、それに本馬やプライヴェートヴァウが競りかけて先頭争いを展開。人気のファーストサムライやスティヴィーワンダーボーイは後方からレースを進めた。三角手前でドーンオブウォーとプライヴェートヴァウが先頭争いから脱落し、産駒に入ったところで本馬が単独で先頭に立った。そしてそのまま直線に入ってきたが、直線入り口3番手から伸びてきたスティヴィーワンダーボーイにゴールまであと少しのところでかわされた。本馬は3着ファーストサムライには2馬身差をつけて一矢を報いたものの、スティヴィーワンダーボーイに1馬身1/4差をつけられて2着に敗れた。

2歳時の成績は6戦3勝で、GⅠ競走は勝てなかったが、翌年のケンタッキーダービーの有力候補の1頭に挙げられた。

競走生活(3歳時)

しかし3歳時は体調が整わず、3月になってケンタッキーダービーを始めとする米国三冠競走は全て回避することが発表された。

復帰したのは3歳7月にモンマスパーク競馬場で行われたジャージーショアBCS(GⅢ・D6F)だった。対戦相手は、サプリングS勝ち馬ヒーズゴットグリット、ベルモントフューチュリティS2着馬チェンジングウェザーなど3頭だけだった。ブラボ騎手騎乗の本馬が単勝オッズ1.4倍の1番人気、ヒーズゴットグリットが単勝オッズ3.3倍の2番人気、チェンジングウェザーが単勝オッズ7.9倍の3番人気となった。

スタートが切られるとヒーズゴットグリットが先頭を奪い、本馬がそれを追って2番手、3番手に単勝オッズ10.9倍の最低人気馬セントダイモンがつけ、チェンジングウェザーは大きく離れた最後方を走った。本馬とヒーズゴットグリットの先頭争いは四角で終わり、その後は本馬がヒーズゴットグリットを引き離していった。直線に入っても後方からは何も追ってこず、ブラボ騎手が手と足だけで追い続けた本馬が、2着セントダイモンに10馬身差をつけて圧勝。実況が思わず「ワオ!」と叫ぶほどの強さだった。短距離のグレード競走で10馬身差をつけたわけだから、本馬のスピード能力が卓越しているのは疑いようが無かった。

そんなわけでその後も短距離路線を進むことになり、次走はキングズビショップS(GⅠ・D7F)となった。主な対戦相手は、ウッディスティーヴンスBCS・ハーシュジェイコブズSの勝ち馬ソングスター、アムステルダムSを勝ってきたコートフォリー、キャリーバックSで2着してきた5戦4勝馬マッハライドだった。このレースから主戦を務めることになったジョン・ヴェラスケス騎手騎乗の本馬が単勝オッズ1.75倍の1番人気に支持され、ソングスターが単勝オッズ3.95倍の2番人気、コートフォリーが単勝オッズ7.6倍の3番人気、マッハライドが単勝オッズ9.3倍の4番人気となった。

スタートが切られると人気薄のクワイエットリーゴーが先頭に立ち、本馬やソングスターも先頭争いに参加。コートフォリーやマッハライドは後方からレースを進めた。三角に入ったところで本馬が先頭争いを制して単独先頭に立ち、そのまま後続との差を広げながら直線に入ってきた。そして直線では独走態勢を築き、2着に追い上げてきた単勝オッズ25倍の5番人気馬スターダブラーに5馬身1/4差をつけて圧勝した。

次走のヴォスバーグS(GⅠ・D6F)では、前年のBCスプリントを筆頭にメトロポリタンH・ジェロームH・トムフールHを勝っていたシルヴァートレイン、フォアゴーS・トムフールHなどで2着していたアルフレッドGヴァンダービルトBCH勝ち馬ウォーフロント、モンマスパーク競馬場でステークス競走を4連勝してきたフーズザカウボーイ、マリブS2着馬アッティラズストームの4頭が対戦相手となった。本馬が単勝オッズ1.95倍の1番人気、シルヴァートレインが単勝オッズ2.4倍の2番人気、ウォーフロントが単勝オッズ7.6倍の3番人気で、本馬とシルヴァートレインの一騎打ちムードが強かった。

スタートが切られるとアッティラズストームと本馬が先頭に立ち、ウォーフロントがほぼ差の無い3番手、シルヴァートレインが少し離れた4番手につけた。アッティラズストーム、本馬、ウォーフロントの先頭争いは直線入り口まで続いたが、ここから本馬が他2頭を着実に引き離していった。対抗馬だったはずのシルヴァートレインは全く伸びてこず、直線を悠々と先頭で走り抜けた本馬が2着ウォーフロントに2馬身3/4差をつけて勝利した。

次走はチャーチルダウンズ競馬場で行われたBCスプリント(GⅠ・D6F)となった。ビングクロスビーHで2着してきたエインシェントタイトルBCS勝ち馬ボードナロ、ロサンゼルスH・トリプルベンド招待H・パットオブライエンHを3連勝してきたサイレンルアー、本馬が2着だった前年のシャンペンSで5着に終わるも、その後はサンヴィンセントS・ベイショアS・キャリーバックSを勝っていたトゥーマッチブリング、キングズビショップS・フォアゴーS・アルフレッドGヴァンダービルトHなどの勝ち馬ポメロイ、ウォーフロント、ドバイゴールデンシャヒーン・エインシェントタイトルBCHで2着していたソーズエコー、フェニックスBCSを勝ってきたケリーズランディング、スマイルスプリントH勝ち馬ナイトメアアフェアー、アッティラズストーム、プリンセスルーニーHの勝ち馬マリブミント、メリーランドBCスプリントH勝ち馬フレンドリーアイランドといった米国を代表する快速馬達が大挙して参戦してきたが、本馬が単勝オッズ2.6倍の1番人気に支持された。そしてボードナロが単勝オッズ5.1倍の2番人気、サイレンルアーが単勝オッズ7.2倍の3番人気、トゥーマッチブリングが単勝オッズ8.4倍の4番人気と続いた。

スタートが切られるとアッティラズストームが真っ先にゲートを飛び出してそのまま先頭に立ち、ボードナロ、ソーズエコー、ポメロイなどもそれを追って先行。一方の本馬はスタート時に躓いて行き脚が付かず、先頭争いに加わることは出来ずにそのまま馬群の中団後方を追走した。さらには道中で馬群の中に閉じ込められて揉まれてしまい、直線入り口では既に完全に走る気を無くしていた。レースは中盤で先頭に立った単勝オッズ16.6倍の7番人気馬ソーズエコーが、2着フレンドリーアイランドに4馬身差をつけて圧勝し、本馬はソーズエコーから16馬身半差をつけられた14着最下位と壊滅的大敗を喫した。これが現役最後のレースとなった。

3歳時の成績は4戦3勝で、GⅠ競走では2勝を挙げたが、BCスプリントの惨敗が致命傷となり、BCスプリントの3週間後に出たFJドフランシス記念ダッシュSでGⅠ競走2勝目を挙げたソーズエコーにエクリプス賞最優秀短距離馬の座を取られてしまった。

血統

ヘネシー Storm Cat Storm Bird Northern Dancer Nearctic
Natalma
South Ocean New Providence
Shining Sun
Terlingua Secretariat Bold Ruler
Somethingroyal
Crimson Saint Crimson Satan
Bolero Rose
Island Kitty Hawaii Utrillo Toulouse Lautrec
Urbinella
Ethane Mehrali
Ethyl
T. C. Kitten Tom Cat Tom Fool
Jazz Baby
Needlebug Needles
Flynet
Meadow Flyer Meadowlake Hold Your Peace Speak John Prince John
Nuit de Folies
Blue Moon Eight Thirty
Blue Grail
Suspicious Native Raise a Native Native Dancer
Raise You
Be Suspicious Porterhouse
Nothirdchance
Shortley Hagley Olden Times Relic
Djenne
Teo Pepi Jet Action
Sherry L.
Short Winded Harvest Singing Nasrullah
Meadow
Wind Cloud Alquest
Psychic Cloud

ヘネシーは当馬の項を参照。

母メドウフライヤーは現役成績2戦1勝、パサデナSという2歳戦のステークス競走で2着している。メドウフライヤーの母ショートレイはファーストフライトH(米GⅢ)の勝ち馬。メドウフライヤーの従兄弟にはロマノグッチ【ゴーサムS(米GⅡ)】が、ショートレイの母の従兄弟にはグレートミステリー【ジェロームH】がいるが、近親には大物競走馬の名前は見当たらない。→牝系:F25号族

母父メドウレイクはメドウスターの項を参照。

競走馬引退後

競走馬を引退した本馬は米国ケンタッキー州ダーレースタッドで種牡馬入りした。初年度の種付け料は4万ドルに設定され、豪州にもシャトルされた。しかし当初はあまり活躍馬が出ず、種牡馬入り6年目の2012年6月に豪州レインジビュースタッドに売却された。レインジビュースタッドは豪州における馬産の中心地ニューサウスウェールズ州ではなく西オーストラリア州にある牧場であり、はっきり言ってしまえば都落ちだった。

ところが本馬が米国を去ったその年の12月に牝駒ビホルダーがBCジュヴェナイルフィリーズを制して同年のエクリプス賞最優秀2歳牝馬に選ばれた。既に所有権はレインジビュースタッドに移っていたために米国の馬産家達は慌てた。そしてレインジビュースタッドと交渉して2013年は米国ケンタッキー州ウォルマット国際ファームでリース供用されることになった。この2013年もビホルダーの快進撃は続き、BCディスタフなどGⅠ競走を4勝してエクリプス賞最優秀3歳牝馬に選出された。

さて一方、本馬の産駒は何頭か日本にも輸入されており、既にヘニーハウンドやケイアイレオーネといった活躍馬が出ていた。同じヘネシー産駒のヨハネスブルグが日本で種牡馬として活躍を開始していた事もあり、本馬に対する注目度は日本でも上昇していた。そこで優駿スタリオンステーション(株式会社優駿)はレインジビュースタッドと交渉し、2013年10月に取引が成立して、同年の豪州繁殖シーズン終了後に本馬は日本で種牡馬入りする事が決定した。

いったん米国から豪州に戻った本馬が種牡馬生活を送っている頃、産駒のアジアエクスプレスが朝日杯フューチュリティSを制覇。それもあって、2014年1月に来日した本馬の種付け申し込みは瞬く間に満口となり、この年の交配数は191頭に達した。これは同年の日本繋養種牡馬では7番目(トップはディープインパクトの255頭)に多く、輸入種牡馬ではトップの数値だった。この初年度産駒の中から大物が出てくるかどうかが今後の鍵を握りそうである。

主な産駒一覧

生年

産駒名

勝ち鞍

2008

ヘニーハウンド

ファルコンS(GⅢ)

2009

Honey Hues

ミントジュレップH(米GⅢ)

2009

She Digs Me

サプリングS(米GⅢ)

2010

Beholder

BCジュヴェナイルフィリーズ(米GⅠ)・BCディスタフ(米GⅠ)・パシフィッククラシックS(米GⅠ)・ラスヴァージネスS(米GⅠ)・サンタアニタオークス(米GⅠ)・ゼニヤッタS(米GⅠ)3回・クレメントLハーシュS(米GⅠ)・アドレーションS(米GⅢ)

2010

Merry Meadow

プリンセスルーニーH(米GⅡ)・ヴェイグランシーH(米GⅢ)・シュガースワールS(米GⅢ)・ハリケーンバーティーS(米GⅢ)

2010

ケイアイレオーネ

兵庫ジュニアグランプリ(GⅡ)・シリウスS(GⅢ)

2011

Chitu

サンランドダービー(米GⅢ)

2011

アジアエクスプレス

朝日杯フューチュリティS(GⅠ)・レパードS(GⅢ)

2012

Academic

加オークス・カナディアンダービー(加GⅢ)・ブリティッシュコロンビアダービー(加GⅢ)

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