ヘヴンリープライズ

和名:ヘヴンリープライズ

英名:Heavenly Prize

1991年生

鹿毛

父:シーキングザゴールド

母:オーホワットアダンス

母父:ニジンスキー

ブリーダーズカップ制覇には手が届かなかったが数々の強豪牝馬と戦いながらGⅠ競走を8勝して生涯着外無しの安定感を誇った良血馬は繁殖牝馬としても優秀

競走成績:2~5歳時に米で走り通算成績18戦9勝2着6回3着3回

誕生からデビュー前まで

米国の名馬産家・馬主であるオグデン・フィップス氏によりケンタッキー州クレイボーンファームにおいて生産・所有された馬で、クロード・R・“シャグ”・マゴーヒーⅢ世調教師に預けられた。

競走生活(2歳時)

2歳9月にベルモントパーク競馬場で行われたダート6ハロンの未勝利戦で、主戦となるマイク・スミス騎手を鞍上にデビューして、単勝オッズ2.4倍の1番人気に支持された。スタート後しばらくは馬群の中団やや後方辺りにいたが、向こう正面で早くも仕掛けると三角では先頭に立った。そしてその後は後続馬を引き離す一方で、2着に追い込んできた単勝オッズ9.7倍の4番人気馬エイミービーハッピーに9馬身差をつけて圧勝した。

次走のフリゼットS(GⅠ・D8F)では、スカイラヴィルS・スピナウェイS・メイトロンSなど4戦全勝のストラテジックマヌーヴァー、アディロンダックS2着馬フッティング、メイトロンS3着馬ソヴリンキティなどが出走してきた。単勝オッズ1.4倍の1番人気には当然ストラテジックマヌーヴァーが支持されたが、1戦1勝の本馬も前走の勝ち方が評価されて単勝オッズ3.4倍の2番人気と対抗馬としての評価を受けた。

スタートが切られると、先頭を伺ったストラテジックマヌーヴァーを抑えて、単勝オッズ7.9倍の3番人気だったフッティングが逃げを打ち、本馬は後方2番手の位置取りながらも先行馬勢をすぐに捕らえられる位置でレースを進めた。そして三角でまくって四角途中では先頭に立つと、直線では後続馬をどんどん引き離し、2着に突っ込んだ単勝オッズ46.7倍の最低人気馬ファクツオブラヴに7馬身差をつけて圧勝。1番人気のストラテジックマヌーヴァーは本馬から30馬身近くも離された7着最下位に沈んだ。

続いて米国西海岸に向かい、サンタアニタパーク競馬場で行われたBCジュヴェナイルフィリーズ(GⅠ・D8.5F)に参戦した。対戦相手は、デルマーデビュータントSの勝ち馬でオークリーフS2着のサーデュラ、オークリーフS・ソレントSの勝ち馬でデルマーデビュータントS2着のフォーンチャッター、仏国から遠征してきたモルニ賞・サラマンドル賞・カブール賞の勝ち馬クードジェニ、アルキビアデスSを勝ってきたステラーキャット、ランダルースSの勝ち馬ラプソディック、オークリーフS3着馬トリッキーコード(マイルCSと香港マイルを勝ったハットトリックの母)など7頭だった。本馬と仏国調教馬のクードジェニを除くと、地元西海岸を主戦場としていた馬が多かったのだが、東海岸から来た本馬が単勝オッズ2.9倍の1番人気に支持され、サーデュラとラプソディックのカップリングが単勝オッズ3.2倍の2番人気、フォーンチャッターが単勝オッズ3.3倍の3番人気、クードジェニが単勝オッズ8.3倍の4番人気となった。

スタートが切られるとサーデュラが先頭に立ち、ステラーキャットが2番手を先行。本馬は4番手前後の好位につけた。そして四角で仕掛けて内側を突いて上がっていき、直線入り口で先頭のサーデュラに並びかけようとした。しかしここで後方からフォーンチャッターがやってきて、粘り腰を披露したサーデュラと叩き合いながら伸びていった。置き去りにされた本馬は、サーデュラを頭差抑えて勝ったフォーンチャッターから3馬身差をつけられて3着に敗退。

2歳時の成績は3戦2勝で、エクリプス賞最優秀2歳牝馬のタイトルにはさすがに手が届かなかった(フォーンチャッターが受賞)。

競走生活(3歳前半)

3歳時は3月にガルフストリームパーク競馬場で行われたワットアサマーS(D6F)から始動した。実績は本馬が頭一つ抜けており、単勝オッズ2倍の1番人気に支持されたが、前走の一般競走を9馬身差で圧勝してきたスウィフトアンドクラッシーという馬も単勝オッズ2.8倍の2番人気と評価されていた。レースでは好スタートから先行したスウィフトアンドクラッシーとは対照的に、スタートで後手を踏んだ本馬は馬群の中団後方を追走した。そして直線入り口8番手から追い上げていったが、四角先頭から押し切ったスウィフトアンドクラッシーには2馬身半届かずに2着に敗れた。

その後調整のために3か月間の間隔を空け、6月に復帰した。既にケンタッキーオークス(サーデュラが勝っている)もエイコーンSもマザーグースSも終わっていた。CCAオークスはこれからだったが、陣営は本馬をまずは短距離戦で走らせる事にしたようで、復帰戦はプライオレスS(GⅡ・D6F)となった。カムリーS2着馬ペニーズリシュート、アスタリタSの勝ち馬シェイプリースクラッパーなどが主な対戦相手だった。本馬が単勝オッズ1.7倍の1番人気、ペニーズリシュートが単勝オッズ4.2倍の2番人気、シェイプリースクラッパーが単勝オッズ5.7倍の3番人気となった。しかし今回も本馬はスタートがあまり良くなく、後方からの競馬になってしまった。なんとか直線入り口では2番手まで押し上げてきたが、本馬より5ポンド軽い斤量を利して逃げるペニーズリシュートを捕まえる事は出来ず、2馬身1/4差の2着に敗退した。

次走のテストS(GⅠ・D7F)では、ペニーズリシュート、フリゼットS惨敗後にデモワゼルSを勝ったがその後は3連敗中だったストラテジックマヌーヴァー、ステークス競走初出走ながらも過去3戦全て圧勝してきたツイストアフリートなどが主な対戦相手となった。本馬が単勝オッズ2.5倍の1番人気、ペニーズリシュートが単勝オッズ4.1倍の2番人気、ストラテジックマヌーヴァーが単勝オッズ4.6倍の3番人気、ツイストアフリートが単勝オッズ6.1倍の3番人気となった。しかし本馬はまたしてもスタートで後手を踏んで後方からの競馬となってしまった。直線入り口では4~5番手まで押し上げてきたものの、既に先頭のツイストアフリートや2番手のペニーズリシュートの背中はかなり遠くにあった。ここから他馬勢を置き去りにして前の2頭を追撃した本馬だったが、結局届かずに、勝ったツイストアフリートから3馬身差の3着に敗れた。

競走生活(3歳後半)

3歳時は短距離路線を進んできた本馬だが、勝ち切れないレースが続いたためか、次走は距離が伸びたアラバマS(GⅠ・D10F)となった。ここには、ラスヴァージネスS・サンタアニタオークス・マザーグースS・ハリウッドオークスとGⅠ競走4勝を挙げていたレイクウェイという強敵が出走していた。レイクウェイの敗戦はケンタッキーオークスでサーデュラの頭差2着に敗れたのみであり、前走ハリウッドオークスではサーデュラを4馬身半差の2着に下して雪辱していた。他にも、CCAオークス・ファンタジーS・モンマスオークス・フェアグラウンズオークスを勝っていたトゥーアルタツァノ、CCAオークスで2着してきた加オークス馬プレンティオブシュガー、フリゼットSで本馬の4着に敗れた後にテンプテッドSを勝ちエイコーンS・CCAオークスで3着と活躍していたソヴリンキティ、後のレアパフュームSの勝ち馬ジェイドフラッシュなども出走してきた。レイクウェイが単勝オッズ1.3倍の1番人気に支持され、トゥーアルタツァノが単勝オッズ6.1倍の2番人気、本馬が単勝オッズ6.2倍の3番人気、プレンティオブシュガーが単勝オッズ16.5倍の4番人気と続いた。

スタートが切られるとトゥーアルタツァノが先手を取り、レイクウェイやソヴリンキティがそれを追って先行。本馬も前方馬群からそれほど離されていない4~5番手の好位につけた。向こう正面で早くもトゥーアルタツァノが失速してレイクウェイが先頭に立ったが、そこへ後方から本馬がやってきて、三角ではレイクウェイに並びかけ、そして抜き去っていった。直線では本馬に迫ってくる馬は皆無であり、2着レイクウェイに7馬身差、3着ソヴリンキティにはさらに11馬身差をつけて圧勝した。

次走のガゼルH(GⅠ・D9F)では、テストSから直行してきたペニーズリシュート、エイコーンSとマザーグースSで共に2着だったシナモンシュガー、ソヴリンキティ、前走5着のジェイドフラッシュの4頭が対戦相手となった。本馬は123ポンドのトップハンデながらも単勝オッズ1.7倍の1番人気に支持されたが、117ポンドのペニーズリシュートも、本馬との対戦成績2戦2勝が評価されて単勝オッズ2.7倍の2番人気に推されていた。いずれも118ポンドのシナモンシュガーとソヴリンキティが並んで単勝オッズ11.4倍の3番人気、115ポンドのジェイドフラッシュが単勝オッズ12.1倍の最低人気であり、本馬とペニーズリシュートの一騎打ちムードだった。レースはペニーズリシュートが逃げを打ち、本馬は最後方から進むという展開となった。やがて本馬が直線入り口でペニーズリシュートをかわして先頭に立つと、直線だけで後続馬をちぎり捨て、最後は2着シナモンシュガーに6馬身半差をつけて圧勝。対抗馬のペニーズリシュートはシナモンシュガーからさらに2馬身3/4差の4着に沈んだ。

次走のベルデイムS(GⅠ・D9F)からは、来るべきBCディスタフにおいて有力馬スカイビューティに騎乗することが確実となっていたスミス騎手に代わって、パット・デイ騎手が本馬の主戦となった。ここでは、フリゼットSの勝ち馬でメイトロンS・BCジュヴェナイルフィリーズ・エイコーンS2着のエデュケイティドリスク、プライオレスS・ディスタフH・ベッドオローゼズHの勝ち馬でバレリーナH2着のクラッシーミラージュ、マーサワシントンSの勝ち馬テニスレディという3頭の4歳馬のみが対戦相手となった。本馬とエデュケイティドリスクは同馬主同厩だったためにカップリングされたが、あまりにも人気が集中してしまう事が予想されたために、馬券が発売されないエキシビションとなった。レースはエデュケイティドリスクが先頭を走り、本馬は最後方を走った。そして直線入り口で本馬がエデュケイティドリスクに並びかけると瞬く間に突き放し、最後は2着エデュケイティドリスクに6馬身差をつけて圧勝。3戦連続で他馬を圧倒した。

続いて、チャーチルダウンズ競馬場で行われたBCディスタフ(GⅠ・D9F)に参戦した。前年のBCディスタフを筆頭にハリウッドオークス・ゲイムリーH・デルマーオークス・ソロリティSを勝ちビヴァリーヒルズH・ラモナH2着のハリウッドワイルドキャット、エイコーンS・マザーグースS・CCAオークス・メイトロンS・アラバマS・シュヴィーH・ヘンプステッドH・ゴーフォーワンドS・ラフィアンH・アディロンダックS・レアパフュームS・ヴェイグランシーHを勝っていた前年のニューヨーク牝馬三冠馬スカイビューティ、サンタアナH・サンタバーバラH・エルエンシノS・ラカナダS・チュラヴィスタHの勝ち馬でヴァニティ招待H2着のエクスチェンジ、英国から遠征してきた伊1000ギニーの勝ち馬エリンバード(優駿牝馬の勝ち馬エリンコートの母)、ジョンAモリスHの勝ち馬でゴーフォーワンドS2着のリンクリヴァー、仏国から遠征してきて前走EPテイラーSを勝ってきたロワイヨモン賞の勝ち馬トゥルーリーアドリーム、ルイビルBCHの勝ち馬ワンドリーマー、前走スピンスターSで3着してきたミスドミニクの計8頭が対戦相手となった。連覇を目指すハリウッドワイルドキャットが単勝オッズ2.8倍の1番人気、この年はGⅠ競走4勝を含む5戦全勝の成績を誇っていたスカイビューティが単勝オッズ2.9倍の2番人気、本馬が単勝オッズ3.1倍の3番人気となった。4番人気のエクスチェンジは単勝オッズ16倍だったから、完全な3強対決ムードだった。

スタートが切られると、単勝オッズ48.1倍の8番人気だったワンドリーマーが芦毛の目立つ馬体を光らせながら単騎逃げを打ち、その少し後方をハリウッドワイルドキャット、本馬、スカイビューティを含む馬達が固まって進んだ。三角の勝負どころに差し掛かってもハリウッドワイルドキャットやスカイビューティの手応えは悪く、徐々に位置取りが下がっていった。一方の本馬は向こう正面で2番手に進出すると、敵は先頭を走る芦毛のダークホースであると見定めて三角から追撃を開始した。しかし単騎で楽に逃げていたワンドリーマーの手応えは抜群で、直線に入ってもなかなか失速しなかった。ゴール直前でようやく本馬との差が一気に縮まったが、しかし後一歩遅かった。ワンドリーマーがあっと驚く逃げ切り勝ちを収め、本馬は首差の2着に惜敗。ハリウッドワイルドキャットは6着、スカイビューティは9着最下位と惨敗してしまい、まったく3強対決にはならなかった。

本馬の3歳時の成績は7戦3勝(うちGⅠ競走3勝)だった。エクリプス賞最優秀3歳牝馬の座は、本馬と7戦5勝(うちGⅠ競走4勝)のレイクウェイの争いになった。GⅠ競走勝利数ではレイクウェイが本馬より1つ上回ったが、アラバマSで本馬に敗れて以降出走が無かったレイクウェイよりも本馬の方が活躍したと判断され、本馬がタイトルを受賞した。

競走生活(4歳前半)

翌4歳時は4月のオークローンパークBCS(D8.5F)から始動した。本馬には他馬勢より6~10ポンド重い121ポンドが課せられたが、単勝オッズ1.2倍という断然の1番人気に支持された。スタートが切られると、本馬より6ポンド斤量が軽い単勝オッズ4.8倍の2番人気馬ヘイローアメリカが単騎で逃げを打ち、本馬は馬群の好位を追走した。そして直線では2番手まで上がったのだが、単騎で逃げていたヘイローアメリカがまったく失速してくれず、3馬身半届かずに2着に敗れた。

続くアップルブロッサムH(GⅠ・D8.5F)では、ヘイローアメリカ、ガゼルHで本馬の2着に敗れた後にロングルックHを勝っていたシナモンシュガーに加えて、1頭の超強敵が出走してきた。それは、亜国のGⅠ競走エンリケアセバル大賞を勝った後に米国に移籍して、BCディスタフ・サンタマリアH・サンタマルガリータH2回・アップルブロッサムH2回・ミレイディH2回・ヴァニティH・スピンスターSとGⅠ競走を10勝していたパセアナだった。しかし前年は調子が悪くて僅か3戦しか消化できていなかったパセアナよりも本馬のほうが上位と判断され、120ポンドの本馬が単勝オッズ2倍の1番人気、122ポンドのパセアナが単勝オッズ3倍の2番人気、116ポンドのヘイローアメリカが単勝オッズ4.6倍の3番人気、114ポンドのシナモンシュガーが単勝オッズ13.6倍の4番人気となった。

スタートが切られるとヘイローアメリカがやはり先頭に立ち、パセアナは3番手、本馬は最後方に陣取った。そして四角で位置取りを上げるとパセアナをかわして2番手に上がり、ヘイローアメリカに詰め寄っていった。そして直線でヘイローアメリカを競り落として1馬身差で勝利した(パセアナはさらに4馬身差の3着)。負けたヘイローアメリカは翌年のアップルブロッサムHでも2着だったが、さらに翌年のアップルブロッサムHを勝利して3度目の正直を果たすことになる。

6月のヘンプステッドH(GⅠ・D8.5F)では、2度目の顔合わせとなるスカイビューティなど3頭だけが対戦相手となった。前年のBCディスタフで最下位に終わり、前走シュヴィーHでは5馬身半差の2着に完敗していたスカイビューティだが、それでも地元ニューヨーク州では3位以下で入線した事が無い(1位入線3着降着が1度ある)という事もあって単勝オッズ1.75倍の1番人気に支持され、本馬が単勝オッズ2倍の2番人気となった。スタートが切られると単勝オッズ27倍の最低人気馬リトルバックルズが単騎で逃げを打ち、スカイビューティが2番手、本馬は4頭立ての最後方を追走した。しかしリトルバックルズの逃げが快調なのを見たデイ騎手は、向こう正面で仕掛けてリトルバックルズの追撃を開始した。直線に入ってもリトルバックルズの手応えは良かったが、それを直線半ばでかわした本馬が1馬身1/4差で勝利。リトルバックルズから10馬身半差の3着に敗れたスカイビューティはそのまま現役を引退した。

競走生活(4歳後半)

次走のゴーフォーワンドH(GⅠ・D9F)では、リトルバックルズ、ターフウェイBCS・ピムリコディスタフHの勝ち馬ペニーヒルパーク、前年のガゼルH5着後にレアパフュームSを勝っていたジェイドフラッシュ、ブッシャーBCSの勝ち馬フォーシングビッドの4頭が対戦相手となった。実績的に本馬に敵いそうな馬はおらず、本馬の敵は他馬勢より9~15ポンド重い123ポンドのトップハンデだった。本馬が単勝オッズ1.35倍の1番人気に支持され、111ポンドのリトルバックルズと108ポンドのフォーシングビッドのカップリングが単勝オッズ3.95倍の2番人気、114ポンドのペニーヒルパークが単勝オッズ7.6倍の3番人気、113ポンドのジェイドフラッシュが単勝オッズ15.7倍の最低人気となった。スタートが切られるとリトルバックルズが先頭に立ち、本馬は後方2番手を追走。そして三角で仕掛けると、四角では既にリトルバックルズをかわして先頭に立っていた。後は後続を引き離す一方で、最後方から追い上げて2着に入ったフォーシングビッドに実に11馬身という大差をつけて圧勝した。

次走のジョンAモリスH(GⅠ・D10F)では、フォーシングビッド、前走4着のジェイドフラッシュ、アップルブロッサムHで6着最下位だったシナモンシュガーなどが対戦相手となった。本馬と他馬勢の間には圧倒的過ぎる実力差があると判断されており、本馬には127ポンドが課せられ、斤量2位のシナモンシュガーは114ポンド、最軽量のフォーシングビッドは108ポンドで、その差は13~19ポンドもあった。それでも本馬が単勝オッズ1.15倍の1番人気に支持され、アップルブロッサムHの後に一般競走を3回走って全て好走していたシナモンシュガーが単勝オッズ7.6倍の2番人気、112ポンドのジェイドフラッシュが単勝オッズ18.7倍の3番人気となった。スタートが切られるとジェイドフラッシュが先頭に立ち、単勝オッズ36.75倍の6番人気だったフォーシングビッドが2番手を追走。本馬は例によって馬群の中団後方を追走すると、向こう正面から進出を開始。逃げるジェイドフラッシュやフォーシングビッドを四角途中でかわすと後は独走。2着フォーシングビッドに8馬身半差をつけて圧勝した。

その後は前年同様BCディスタフを目指して、この年のブリーダーズカップが施行されるベルモントパーク競馬場のベルデイムS(GⅠ・D9F)に出走した。このレースには、前年のアラバマSで本馬の2着に敗れた後に1年間休養して2か月前に復帰したばかりのレイクウェイに加えて、牡馬相手のハスケル招待Hを筆頭にオークリーフS・ハリウッドスターレットS・ラスヴァージネスS・サンタアニタオークス・マザーグースS・ガゼルH・ランダルースS・ジムビームS・ブラックアイドスーザンS・サンタイネスBCSとGⅠ競走7勝を含むグレード競走11勝を挙げていた現役最強3歳牝馬セレナズソングも出走してきた。定量戦のため厳しいハンデから開放された本馬が単勝オッズ1.65倍の1番人気、セレナズソングが単勝オッズ3.05倍の2番人気、前走チュラヴィスタHで2着だったレイクウェイが単勝オッズ4.4倍の3番人気となった。スタートが切られるとセレナズソングが先頭に立ち、レイクウェイが少し離れた2番手、本馬がその直後4番手につけた。そして四角で2番手に上がった本馬は、直線で逃げるセレナズソングを追撃。着実にセレナズソングとの差を縮めていったが、さすがにセレナズソングは手強く、3/4馬身届かずに2着に敗れた(3着レイクウェイは本馬から6馬身3/4差)。

本番のBCディスタフ(GⅠ・D9F)では、セレナズソング、レイクウェイ、ワシントンラッシーS・ターフウェイパークBCS・アクサーベンオークス・アーリントンハイツオークス・アーリントンメイトロンHの勝ち馬でスピンスターS3着のマライアズストーム(名馬ジャイアンツコーズウェイの母)、仏国でポルトマイヨ賞を勝った後に米国に移籍してチュラヴィスタH・レディーズシークレットHを連勝してきたボロディスルーなどに加えて、アッシュランドS・エイコーンS・シュヴィーH・ラフィアンH・スピンスターS・ボニーミスS・モリーピッチャーH・バドワイザーBCHとGⅠ競走5勝を含むグレード競走8勝を挙げていたインサイドインフォメーションも出走してきた。

本馬と同様に勝つときは圧勝が多かったインサイドインフォメーションは、本馬と同じくフィップス氏の生産・所有馬で、しかも年齢や厩舎、デビューした日付と場所まで全て同じだった。陣営の方針により本馬とインサイドインフォメーションは使い分けられており、同じレースに出たことは過去に無かったのだが、ここで最初かつ最後の対戦となった。本馬とインサイドインフォメーションがカップリングされて単勝オッズ1.8倍の1番人気で、セレナズソングが単勝オッズ3.5倍の2番人気、マライアズストームが単勝オッズ9倍の3番人気、ボロディスルーが単勝オッズ13.2倍の4番人気となった。

雨で馬場が湿った状態下でスタートが切られると、まずはレイクウェイが先頭に立ち、マライアズストームやセレナズソングが先行。インサイドインフォメーションは先行集団の後ろに付け、本馬は後方待機策を採った。インサイドインフォメーションは徐々に位置取りを上げて直線に入る前に先頭に立ち、本馬も三角から四角にかけて上がっていった。しかし直線では先頭のインサイドインフォメーションと他馬の差は広がるばかりで、本馬は何とか他馬をかわして2着に上がるのが精一杯だった。勝ったインサイドインフォメーションと本馬との差は、最後は13馬身半もあった。

この年7戦4勝(うちGⅠ競走4勝)の成績を挙げた本馬だが、BCディスタフで本馬を圧倒するなど、この年8戦7勝(うちGⅠ競走4勝)の成績を挙げたインサイドインフォメーションの前では影が薄くなり、エクリプス賞最優秀古馬牝馬の座は獲得できなかった。

競走生活(5歳時)

BCディスタフを最後に引退したインサイドインフォメーションと違い、本馬は5歳当初も走り、2月のドンH(GⅠ・D9F)のみに出走した。このレースは本馬にとって最初で最後の牡馬相手のレースだった。

対戦相手の牡馬勢の中でも最大最強の敵は、BCクラシック・NYRAマイルH・ドンH・ガルフストリームパークH・オークローンH・ピムリコスペシャルH・ハリウッド金杯・ウッドワードS・ジョッキークラブ金杯など破竹の12連勝中だったシガーだった。いかに本馬でもシガー相手にまともに敵うはずは無かったが、シガーの斤量128ポンドに対して本馬は115ポンド(出走馬中3位。性差を考慮すると実質2位)であり、このハンデ差が唯一つけこむ隙だった。シガー以外にも、サンフェルナンドSの勝ち馬でNYRAマイルH2着のワカイヴァスプリングス、レキシントンSの勝ち馬でベルモントS・ウッドワードS2着のスタースタンダード、NYRAマイルH・ペガサスHの勝ち馬フライングシェヴロンなどが出走していた。シガーが単勝オッズ1.2倍の1番人気に支持され、デビューから1度も着外が無い本馬が単勝オッズ7.5倍の2番人気、117ポンドのワカイヴァスプリングスが単勝オッズ9.2倍の3番人気となった。

スタートが切られるとフライングシェヴロンが先頭に立ち、シガーは3番手、本馬は後方2番手につけた。そして四角で仕掛けて上がっていったが、先に抜け出したシガーと、好位から抜け出したワカイヴァスプリングスの2頭には届かず、勝ったシガーから6馬身差、2着ワカイヴァスプリングスから4馬身差の3着に敗れた。それでも、牡馬相手のレースで8頭中3着であり、良く頑張ったと言える。シガーは言うまでもないが、ワカイヴァスプリングスはこの年にガルフストリームパークH・ブルックリンH・サバーバンHを勝っているし、本馬から8馬身半差の6着だったスタースタンダードもこの年のピムリコスペシャルHを勝っており、本馬の実力は並のGⅠ競走勝ちの牡馬に対抗し得るものであることは立証された。これが現役最後のレースとなった。

競走馬としての評価

本馬は結局ブリーダーズカップで勝つ事は出来なかったが、現役時代を通じて4着以下になった事は一度も無かった。敗れたレースでも最後の2戦を除けば全て勝ち馬から3馬身差以内に入っており、安定感は抜群だった。

4歳時のBCディスタフではインサイドインフォメーションに13馬身半差をつけられたが、同馬主同厩である2頭のうちインサイドインフォメーションは積極的に先行、本馬はかなり後方からレースを進めたところから推測すると、共倒れになる事を恐れた陣営の作戦であった可能性も十分あり、この着差が単純に2頭の実力差そのままであるとは言い切れない。しかもこのBCディスタフは重馬場で行われたのだが、本馬は重馬場のテストSで3着に敗れており、インサイドインフォメーションは重馬場のエイコーンSを11馬身差で圧勝している事実も見逃せない。重馬場の巧拙が影響した可能性も十分にあるという事である。

血統

Seeking the Gold Mr. Prospector Raise a Native Native Dancer Polynesian
Geisha
Raise You Case Ace
Lady Glory
Gold Digger Nashua Nasrullah
Segula
Sequence Count Fleet
Miss Dogwood
Con Game Buckpasser Tom Fool Menow
Gaga
Busanda War Admiral
Businesslike
Broadway Hasty Road Roman
Traffic Court
Flitabout Challedon
Bird Flower
Oh What a Dance Nijinsky Northern Dancer Nearctic Nearco
Lady Angela
Natalma Native Dancer
Almahmoud
Flaming Page Bull Page Bull Lea
Our Page
Flaring Top Menow
Flaming Top
Blitey Riva Ridge First Landing Turn-to
Hildene
Iberia Heliopolis
War East
Lady Pitt Sword Dancer Sunglow
Highland Fling
Rock Drill Whirlaway
Flyaway Home

シーキングザゴールドは当馬の項を参照。本馬は父の初年度産駒であり、父が名種牡馬への道を歩み始める第一歩となった。

母オーホワットアダンスは不出走馬だが、繁殖牝馬としては、本馬の全妹オーホワットアウインドフォール【メイトロンS(米GⅠ)・テンプテッドS(米GⅢ)・ナッソーカウンティS(米GⅢ)】、全妹ダンシングインマイドリームス【2着メイトロンS(米GⅠ)】なども産んで、かなりの成功を収めている。ダンシングインマイドリームスの子には、ダンシングフォーエヴァー【マンハッタンH(米GⅠ)・エルクホーンS(米GⅡ)】がいる。

オーホワットアダンスの母ブライティは、現役時代にテストS(米GⅡ)・マスケットS(米GⅡ)を勝った活躍馬であるだけでなく、オーホワットアダンスの全姉ダンシングオールナイト【ロングアイランドH(米GⅡ)】、全兄ダンシングスプレー【BCスプリント(米GⅠ)・サバーバンH(米GⅠ)・カーターH(米GⅠ)・トゥルーノースH(米GⅡ)】、半姉ファンタスティックファインド(父ミスタープロスペクター)【ヘンプステッドH(米GⅠ)】、半妹ファーラフ(父イージーゴア)【バレリーナH(米GⅠ)・ディスタフBCH(米GⅡ)・オナラブルミスH(米GⅢ)】と活躍馬を続々と送り出した名繁殖牝馬である。オーホワットアダンスの半姉ホームリーブ(父アリダー)の孫にはウィーキャンシーク【ポージャデポトリジョス賞(智GⅠ)・ナシオナルリカルドリヨン賞(智GⅠ)・チリ競馬場大賞(智GⅠ)】、ウォーニングゾーン【サンセットH(米GⅡ)】が、ファンタスティックファインドの子にはファインダーズフィー【メイトロンS(米GⅠ)・エイコーンS(米GⅠ)・ギャラントブルームH(米GⅡ)・シケーダS(米GⅢ)】、孫にはティーディーヴァンス【米国競馬名誉の殿堂博物館S(米GⅡ)】が、オーホワットアダンスの半妹ローピングアロング(父イージーゴア)の孫にはクワイエットテンパー【フェアグラウンズオークス(米GⅡ)】が、ファーラフの子にはハッピーハンティング【アケダクトH(米GⅢ)】、孫にはアニュアルレポート【ベルモントフューチュリティS(米GⅡ)】がいる。

ブライティの母レディピットはCCAオークス・マザーグースS・アスタリタSなどを勝ち、1966年の米最優秀3歳牝馬に選ばれた名牝。レディピットの牝系子孫からは、キングオブクラブス【エミリオトゥラティ賞(伊GⅠ)】やドラマティックゴールド【メドウランズCH(米GⅠ)】が出ているなど、本馬の牝系からは活躍馬が続出している。→牝系:F20号族②

母父ニジンスキーは当馬の項を参照。

競走馬引退後

競走馬を引退した本馬は、クレイボーンファームで繁殖入りした。本馬は繁殖入り後も活躍し、曾祖母・祖母・母に続く優秀な繁殖牝馬となった。

7歳時に産んだ初子の牡駒ピュアプライズ(父ストームキャット)は、ケンタッキーカップクラシックH(米GⅡ)に勝つなど17戦5勝の成績を挙げ、後に米国や亜国で種牡馬入りした。

8歳時に産んだ2番子の牝駒ジャストリワード(父デピュティミニスター)は3戦1勝だったが、2010年のパーソナルエンスンS(米GⅠ)でレイチェルアレクサンドラを破って世間を驚かせたパーシステントリーの母となった。

10歳時に産んだ3番子の牡駒グッドリワード(父ストームキャット)は、ハリウッドダービー(米GⅠ)・マンハッタンH(米GⅠ)を勝ち、パシフィッククラシックS(米GⅠ)で2着するなど26戦5勝の成績を挙げ、後に米国や伯国で種牡馬入りした。

12歳時に産んだ4番子の牝駒フラッシュバイ(父フォレストワイルドキャット)は2戦未勝利。13歳時に産んだ5番子の牡駒エレクトリシティ(父ストームキャット)は10戦4勝。

14歳時に産んだ6番子の牡駒コズミック(父エルプラド)は、キングコットンSに勝つなど23戦6勝の成績を挙げ、後に亜国で種牡馬入りした。

15歳時に産んだ7番子の牝駒ディスティンクティヴリー(父オーサムアゲイン)は7戦1勝。16歳時に産んだ8番子の牡駒ファビュラスプライズ(父エルプラド)は不出走。17歳時に産んだ9番子の牝駒エンハンシング(父フォレストリー)は7戦1勝。18歳時に産んだ10番子の牝駒グレイシャスギフト(父ジャイアンツコーズウェイ)は不出走だった。

後半になると産駒の競走成績が下がっているが、それでも7頭の勝ち上がり馬の母となったのだから、かなりのものである。2013年5月に心臓発作のためクレイボーンファームにおいて22歳で他界した。

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