シルヴァノ

和名:シルヴァノ

英名:Silvano

1996年生

鹿毛

父:ロミタス

母:スピリットオブイーグルス

母父:ボーズイーグル

独国調教馬として史上初めて米国GⅠ競走を制したアーリントンミリオン優勝馬は種牡馬としても南アフリカを中心に活躍中

競走成績:2~5歳時に独中星首米豪で走り通算成績18戦7勝2着2回3着2回

誕生からデビュー前まで

アカテナンゴなど多くの名馬を送り出した独国の名門フェアホフ牧場の生産・所有馬で、独国アンドレアス・ヴェーラー調教師に預けられた。

競走生活(2・3歳時)

2歳9月にブレーメン競馬場で行われた芝1400mの未勝利戦でデビューして、2着ランポルディに1馬身3/4差で勝利。2歳時はこの1戦のみで終え、3歳時は4月のフランクフルト賞(独GⅢ・T2050m)から始動した。しかし先行するも直線で失速して、勝ったインペリオ-ゾから5馬身半差の6着に終わった。しかし1か月後のドイツ銀行ブレーメン賞(T2200m)では単勝オッズ1.8倍の1番人気に応えて、2着ドラプロイに5馬身差をつけて圧勝した。

次走のウニオンレネン(独GⅡ・T2200m)では、独2000ギニーなど5戦無敗のスミタスが断然の1番人気に支持されており、本馬は単勝オッズ6.4倍の5番人気止まりだった。しかし最後方待機策から直線で怒涛の追い込みを決めて、2着カラカルに1馬身差で勝利を収め、独国クラシック路線に乗った。

そして迎えた独ダービー(独GⅠ・T2400m)では、スミタス、伊ダービーを勝ってきたムハリフ、独オークスを勝ってきたフラミンゴロード、フランクフルト賞で本馬に先着する2着だった後にファステンバーグレネンを勝っていたハイビスカスなどが対戦相手となった。前走で6着に沈んでいたスミタスがそれでも単勝オッズ4.33倍の1番人気に支持され、本馬は単勝オッズ9.7倍の5番人気だった。ここでも本馬は最後方からレースを進め、直線の末脚に賭けた。しかし今回は前が止まってくれず、2番手から抜け出して勝利した単勝オッズ14.5倍の8番人気馬ベレヌスから7馬身1/4差の4着に終わった。

3週間後のドイツ賞(独GⅠ・T2400m)では古馬との対戦となった。前年のドイツ賞・ミラノ大賞や一昨年の独セントレジャー勝ち馬ウンガロ、独ダービーで5着だったスミタス、英国のリステッド競走アストンパークSを7馬身差で勝ってきたダークシェルといった実力馬が参戦してきた。ミラノ大賞で2着してきたウンガロが単勝オッズ2.7倍の1番人気、スミタスが単勝オッズ2.8倍の2番人気、本馬が単勝オッズ3.2倍の3番人気と、かなり支持は割れていた。レースではウンガロが逃げて、スミタスが2番手、本馬はやはり最後方につけた。しかし前残りの競馬になってしまい、勝ったウンガロから4馬身差の4着と振るわない結果に終わった。さらに悪いことには、その後に故障を起こして長期休養入りし、3歳後半は棒に振ってしまった。3歳時の成績は5戦2勝だった。

競走生活(4歳時)

4歳4月に復帰した本馬は、オーストリア出身の名手アンドレアス・スボリッチ騎手を主戦に迎えた。まずはゲルリング賞(独GⅡ・T2400m)に出走した。スボリッチ騎手は今までのような最後方待機策ではなく、本馬を馬群の中団につけた。そして4番手で直線に入ると、残り400m地点からスパートを開始。しかし3番手から早めに抜け出していたヘニンガートロフィの勝ち馬カテラに届かずに4馬身差の2着に敗れた。

次走のメルセデスベンツ大賞(独GⅡ・T2200m)でも、そのカテラとの顔合わせとなった。他にも、前年の独ダービーで本馬に4馬身半先着する3着に入り、バーデン大賞で2着していたフラミンゴロードの姿もあった。カテラが単勝オッズ1.8倍の1番人気、本馬が単勝オッズ3.6倍の2番人気、フラミンゴロードが単勝オッズ4.2倍の3番人気となった。今回もカテラは2番手につける先行策を採ったが、本馬はそれをマークするように3番手につけた。そして直線に入ると先頭に立ったカテラを残り200m地点で一気に抜き去り、最後は3馬身半差をつけて勝利した。

続くハンザ賞(独GⅡ・T2200m)では、前走で本馬から8馬身半差の3着だったフラミンゴロード、スウェーデンの国際グループ競走ストックホルムカップ国際の勝ち馬アルバラン、リンドネルトロフィの勝ち馬サンバケーニッヒ、前年のフランクフルト賞で屈した相手であるインペリオ-ゾなどを抑えて、単勝オッズ1.6倍の1番人気に支持された。今回は最後方待機策に戻したのだが、直線入り口で外側に大きく膨れてしまい、追い込み届かずに、勝ったフラミンゴロードから5馬身半差の3着に敗れた。これが本馬の独国内における最後のレースとなった。

半年の休養を経て、12月に復帰。復帰初戦はいきなり母国から遠く離れた香港で行われた香港ヴァーズ(香GⅠ・T2400m)となった。コロネーションCの勝ち馬で英ダービー・愛ダービー2着・キングジョージⅥ世&クイーンエリザベスDS・加国際S3着のダリアプールを筆頭に、ランカシャーオークスの勝ち馬でヨークシャーオークス・ナッソーS・マンノウォーS2着のエラアシーナ、新ダービー馬ヘレンヴァイタリティー、香港金杯2回・香港チャンピオンズ&チャターC2回・香港国際ヴァーズなどの勝ち馬で前年のジャパンC2着のインディジェナス、ターフクラシック招待S2回・マンノウォーS・香港国際Cの勝ち馬ヴァルズプリンス、クイーンエリザベスⅡ世C・香港チャンピオンズ&チャターCの勝ち馬で一昨年の安田記念2着のオリエンタルエクスプレスといった強豪馬達が参戦。同じ独国からも、メルセデスベンツ大賞で本馬の2着に敗れた後に独国のGⅠ競走エールトガス大賞を勝ちミラノ大賞・バーデン大賞2着・ドイツ賞・オイロパ賞・BCフィリー&メアターフ3着と活躍してこの年の独最優秀古馬牝馬に選ばれる事になるカテラ、アラルポカル・伊ジョッキークラブ大賞・ウニオンレネン・バーデンエアパック大賞・ハンザ賞・ボスフォラスCなどを勝っていた2歳年上のカイタノが参戦してきた。このメンバー構成の中で本馬が注目されるわけは無く、単勝オッズ60倍で、13頭立ての12番人気とまるで評価されていなかった。

スタートが切られるとナチュラルウイナーが先頭に立ち、ダリアプールやエラアシーナが先行。海外でも本馬の手綱を取り続けるスボリッチ騎手が騎乗する本馬は、カテラやインディジェナスなどと共に馬群の中団につけた。スボリッチ騎手は直線に入る前に仕掛けて、3番手で直線に入ってきた。直線では1番人気のダリアプールが抜け出したが、2番手争いは大混戦となり、本馬、エラアシーナ、インディジェナス、カイタノの4頭の勝負となった。しかし結果論ではあるが微妙に本馬の仕掛けは早かったようで、最後に力尽きて5着に敗れた。それでも、勝ったダリアプールとの着差は2馬身1/4差であり、海外初戦としては十分な成果だった。4歳時の成績は4戦1勝だった。

競走生活(5歳時)

5歳時は3月にシンガポールのクランジ競馬場で行われたリステッド競走シンガポールC(T2000m)から始動した。ここでは、香港ヴァーズで3着だったカイタノ、レーシングポストトロフィーの勝ち馬アリストートル、豪州のGⅠ競走WATCダービーの勝ち馬キムエンジェルなどとの対戦となった。アリストートルが単勝オッズ2.4倍の1番人気、カイタノが単勝オッズ6.4倍と評価される一方で、本馬は単勝オッズ13.4倍の低評価だった。レースでは8頭立ての5番手を追走。前走で仕掛けが早かった反省を活かしたスボリッチ騎手が残り400m地点で満を持して仕掛けると、瞬く間に突き抜けて、2着カイタノに5馬身半差をつけて圧勝した。

この3週間後にはドバイシーマクラシック(首GⅡ・T2400m)に参戦。対戦相手は、前年のマンノウォーS・香港C・ドバイシーマクラシックの勝ち馬でこの年のカルティエ賞年度代表馬に選ばれるファンタスティックライト、ダリアプール、前年の同競走2着馬でもあったカイタノ、英セントレジャー・ドイツ賞・加国際S・キングエドワードⅦ世Sの勝ち馬ムタファーウエク、ミラノ大賞の勝ち馬エンドレスホール、ドバイシティオブゴールドを勝ってきたギヴザスリップ、ノアイユ賞の勝ち馬クツブ、香港ヴァーズで4着だったインディジェナス、香港ヴァーズで7着だったカテラ、そして日本から遠征してきたステイゴールドなどだった。

この年のドバイシーマクラシックは、ステイゴールドがそれまでの善戦馬の殻を破る激走を見せてファンタスティックライトに鼻差で勝利した事で知られるが、このレースで殻を破ったのは本馬も同様であった。英国のブックメーカーがつけたオッズで単勝10倍の4番人気に推された本馬は、馬群の中団好位をステイゴールドと共に追走。そして直線を向くとステイゴールドと叩き合いながら、前を行くファンタスティックライトに迫ってきた。残り100m地点から強烈な伸びを見せたステイゴールドには置かれてしまい、ファンタスティックライトにも届かなかったが、勝ったステイゴールドから2馬身差の3着に入り、香港ヴァーズで敵わなかったダリアプールなど世界各国の実力馬達に先着したのである。

その1か月後には再び香港に姿を現し、クイーンエリザベスⅡ世C(香GⅠ・T2000m)に参戦。前走6着のカイタノ、同7着のダリアプール、同13着のインディジェナス、前年の香港ヴァーズ10着のオリエンタルエクスプレス、同11着のヘレンヴァイタリティー、同13着最下位だったがこの年に香港金杯を勝っていたアイドルといった既対戦組に加えて、香港C・香港国際ボウル・クイーンエリザベスⅡ世C・ドバイデューティーフリーなどの勝ち馬で3年前のモーリスドギース賞ではシーキングザパールの2着だったジムアンドトニック、香港ダービーを勝ってきたソブリエティ、香港チャンピオンズ&チャターCの勝ち馬ハウスマスター、後の香港スチュワーズC2回・チャンピオンズマイルの勝ち馬エレクトロニックユニコーン、ユジェーヌアダム賞の勝ち馬ソビエスキーなどとの対戦となった。前走ドバイデューティーフリーを勝ってきたジムアンドトニックが単勝オッズ2.3倍の1番人気、ソブリエティが単勝オッズ2.8倍の2番人気、本馬は単勝オッズ7.2倍の3番人気となった。

レースが始まるとまずはダリアプールが先頭に立ち、好スタートを切った本馬は馬群の中団6番手を追走した。三角から四角にかけて外側から上がって行き、4番手で直線を向くと、残り300m地点でダリアプールやインディジェナスをかわして先頭に立った。そして追い込んできたジムアンドトニックを1馬身3/4差の2着に完封して、GⅠ競走勝ち馬の座に上り詰めた。

次走のシンガポール航空国際C(T2000m)では、ジムアンドトニック、ハリウッドターフカップS2連覇のレイジーロード、ドバイシーマクラシックで4着だったエンドレスホール、シンガポールCで3着だったアリストートル、同5着だったキムエンジェル、豪州のGⅠ競走アンセットオーストラリアSの勝ち馬ヒルオブグレースなどが対戦相手となった。ジムアンドトニックが単勝オッズ3.4倍の1番人気、本馬が単勝オッズ3.6倍の2番人気、レイジーロードが単勝オッズ6.4倍の3番人気、エンドレスホールが単勝オッズ9.4倍の4番人気となった。今回は10頭立ての9番手を追走した本馬は、残り500m地点で仕掛けたが、今回は追い込みが不発に終わり、エンドレスホール、ジムアンドトニックなどに届かず、勝ったエンドレスホールから3馬身差の5着に終わった。

その後は一間隔を空け、8月に米国に遠征してアーリントンミリオン(米GⅠ・T10F)に参戦した。ハリウッドターフカップS・サンフアンカピストラーノ招待H・チャールズウィッテンガムH・サンセットH・サンマルコスSの勝ち馬ビエナマド、バーナードバルークH2回・フォースターデイヴH・ディキシーSなどの勝ち馬ハップ、ユナイテッドネーションズHの勝ち馬でチャールズウィッテンガムH2着のセニュア、チャールズウィッテンガムH・ターフクラシックSの勝ち馬ホワイトハート、伯国のGⅠ競走ブラジル共和国大統領大賞の勝ち馬で米国に移籍してエディリードH・サンフランシスコBCマイルHを勝ってきたリダットーレ、アットマイルS・ディキシーSなどの勝ち馬で前年のBCターフ2着のクワイエットリゾルヴ、ロイヤルホイップS・メルドS・アーリントンHを勝ってきたメイクノーミステイク、アメリカンHを隔年で2勝してアーリントンHで2着してきたメルドSの勝ち馬タカリアン、メルドSの勝ち馬で愛国際S2着のムアカード、クイーンエリザベスⅡ世C8着後にいったん独国に戻って出直してきたカイタノなどとの対戦となった。ビエナマドが単勝オッズ2.5倍の1番人気、ハップが単勝オッズ4.6倍の2番人気、本馬が単勝オッズ7.3倍の3番人気、セニュアが単勝オッズ9倍の4番人気、ホワイトハートが単勝オッズ9.7倍の5番人気となった。

スタートが切られると、まずは単勝オッズ12.7倍の6番人気馬リダットーレが先頭に立ち、タカリアンやクワイエットリゾルヴも先行。本馬も内枠とスタート直後のカーブを利して、無理なく先団好位につけた。そのまま経済コースを走り続けると、四角で仕掛けて、逃げるリダットーレに並びかけていった。そしてリダットーレと並んで先頭で直線を向くと、素晴らしい伸び脚を見せて瞬く間にリダットーレを突き放した。後方からハップが追撃してきたが、その差は縮まることはなく、2着ハップに3馬身差、3着に粘ったリダットーレにはさらに6馬身差をつけて完勝した。この勝利は独国調教馬の米国におけるGⅠ競走初勝利という歴史的快挙でもあった。

次走は3週間後のマンノウォーS(米GⅠ・T11F)となった。前年のマンノウォーS・ソードダンサー招待Hの勝ち馬でこの年もユナイテッドネーションズH・ソードダンサー招待Hを連勝して臨んできたウィズアンティシペーション、ドバイシーマクラシック8着後にコロネーションCでGⅠ競走4勝目を挙げていたムタファーウエク、前年の香港ヴァーズで2着だったエラアシーナ、日本から参戦してきた前年の弥生賞の勝ち馬フサイチゼノンなどが対戦相手となった。2連覇がかかるウィズアンティシペーションは単勝オッズ3.4倍の2番人気であり、本馬が単勝オッズ2.35倍の1番人気に支持された。スタートが切られると、まずはウィズアンティシペーションが先頭に立ち、エラアシーナ、フサイチゼノンなどが先行。本馬は馬群の中団につけたが、非常にスムーズに走れた前走と異なり、今回は馬群に包まれて抜け出すのに苦労する場面が見られた。それでも直線入り口では4番手まで押し上げてきたが、スローペースで逃げたウィズアンティシペーションには届かず、2馬身1/4差の2着に敗れた(首差の3着がエラアシーナで、フサイチゼノンはさらに2馬身1/4差の4着だった)。

米国を後にした本馬は南半球に向かい、コックスプレート(豪GⅠ・T2040m)に出走。コックスプレート2連覇・香港マイル・フライトS・ドンカスターH・クールモアクラシック・オールエイジドS・マニカトS・ワイカトドラフトスプリントとGⅠ競走で既に9勝を挙げていた新国出身の歴史的名牝サンライン、レイルウェイS・オーストラリアンC・アンダーウッドS・ヤルンバSと豪州GⅠ競走4勝のノーザリー、AJCスプリングチャンピオンS・カンタベリーギニー・AJCダービーの勝ち馬ユニバーサルプリンス、サイアーズプロデュースS・豪シャンペンS・ジョージメインSを勝ってきたヴォイカウント、ドゥーンベンCの勝ち馬キングカイテル、ジョージライダーSの勝ち馬リファーラル、アーリントンミリオン4着から直行してきたカイタノなどが対戦相手となった。サンラインが単勝オッズ2.8倍の1番人気、ノーザリーが単勝オッズ3.5倍の2番人気で、本馬は単勝オッズ5倍の3番人気となった。しかし逃げたサンラインと、それを追撃したノーザリー、ヴォイカウントの3頭による大激戦に絡むことが出来ず、勝ったノーザリーから5馬身差の4着に終わった。

その後は3度目の香港遠征を敢行し、香港C(香GⅠ・T2000m)に参戦。サラマンドル賞・デューハーストSの勝ち馬で前走英チャンピオンS2着だった前年のカルティエ賞最優秀2歳牡馬トゥブーグ、シンガポール航空国際C2着後もラクープドメゾンラフィットを勝つなど活躍を続けていた2年前の同競走覇者ジムアンドトニック、ロイヤルホイップSの勝ち馬で前走のBCマイル3着のバッハ、デズモンドSの勝ち馬でムーランドロンシャン賞・クイーンエリザベスⅡ世S3着のホークアイ、オペラ賞など3連勝で挑んできたテルアテル、そして日本テレビ盃・マイルCS南部杯・天皇賞秋を3連勝して臨んできた日本調教馬アグネスデジタルなどの強豪馬が名を連ねた。トゥブーグが単勝オッズ2.4倍の1番人気に支持され、直前の香港ヴァーズでステイゴールド、香港マイルでエイシンプレストンと日本調教馬が続けて勝利を収めていたため、ややプレッシャーを感じていたらしい四位洋文騎手騎乗のアグネスデジタルが単勝オッズ3.95倍の2番人気、ジムアンドトニックが単勝オッズ7.2倍の3番人気、バッハが単勝オッズ8.1倍の4番人気で、疲労が懸念される本馬は単勝オッズ9.7倍の5番人気止まりだった。スタートが切られるとトゥブーグが先頭に立ち、好位につけた内側のアグネスデジタルをマークするように本馬はその後方を追走。三角から四角にかけてアグネスデジタルが上がっていくと、それを追って本馬も上がっていった。しかし直線に入ると失速して馬群に飲み込まれ、勝ったアグネスデジタルから8馬身1/4差をつけられた11着と大敗してしまった。これが現役最後のレースとなった。

5歳時の成績は8戦3勝だった。この年は地元独国で一度も走らなかったが、国外における活躍が評価されて、独年度代表馬に選出された。

本馬は地元の独国においてはGⅡ競走止まりの馬であったが、独国所属のまま世界各国を走り回り、アーリントンミリオン・クイーンエリザベスⅡ世CとGⅠ競走で2勝を挙げた。日本にも、アグネスワールド、ステイゴールド、エイシンプレストンなど、日本国内よりも海外における活躍のほうが顕著だった馬がいたが、本馬はその独国版と言えるだろう。

血統

Lomitas Niniski Nijinsky Northern Dancer Nearctic
Natalma
Flaming Page Bull Page
Flaring Top
Virginia Hills Tom Rolfe Ribot
Pocahontas
Ridin' Easy Ridan
Easy Eight
La Colorada Surumu Literat Birkhahn
Lis
Surama Reliance
Suncourt
La Dorada Kronzeuge Neckar
Kaiserkrone
Love In Crepello
Tudor Love
Spirit of Eagles Beau's Eagle Golden Eagle Fairway Phalaris
Scapa Flow
Golden Silence Swynford
Molly Desmond
Beaufield Maribeau Ribot
Cosmah
Bushfield Jet Pilot
Miss Busher
Big Spirit Big Spruce Herbager Vandale
Flagette
Silver Sari Prince John
Golden Sari
Beautiful Spirit Bold Bidder Bold Ruler
High Bid
Baby La Sisters Prince
Juliette T.

父ロミタスは、ニジンスキー直子の愛セントレジャー・ロワイヤルオーク賞の勝ち馬ニニスキ産駒で、現役成績は19戦10勝。ベルリン銀行大賞(独GⅠ)・バーデン大賞(独GⅠ)・オイロパ賞(独GⅠ)と独国のGⅠ競走で3勝をマークし、他にもゲルリング賞(独GⅡ)・ハンザ賞(独GⅡ)などを勝った名馬。競走馬引退後はフェアホフ牧場で種牡馬入り。初年度産駒から本馬の他にも、本馬を独ダービーで破ったベレヌス、本馬と何度か対戦しプリンスオブウェールズSでドバイミレニアムの2着に入った独2000ギニー馬スミタスなどを登場させて種牡馬としての評価を劇的に向上させた。一時期は英国ダルハムホールスタッドで種牡馬供用されたこともある。その後独国に戻り、2010年に病死したが、残された産駒の1頭デインドリームが牝馬として史上初めて凱旋門賞・キングジョージⅥ世&クイーンエリザベスSを両方優勝する快挙を成し遂げている。デインドリームが凱旋門賞を勝った2011年には仏首位種牡馬に輝いている。ロミタスに関してはいくつかの逸話があるのだが、それに関してはデインドリームの項に記載した。

母スピリットオブイーグルスは米国で頑健に走って59戦11勝の成績を残し、競走馬引退後に独国に輸入されていた。繁殖牝馬としては、本馬の半弟ザビアンゴ(父アカテナンゴ)【アラルポカル(独GⅠ)・ドイツ賞(独GⅠ)・チャールズウィッテンガム記念H(米GⅠ)・ウニオンレネン(独GⅡ)・ケンタッキーカップターフH(米GⅢ)】も産んでいる。2001年には本馬とザビアンゴの活躍により独年度代表繁殖牝馬に選ばれた。本馬の半妹ソロラ(父ブラックサムベラミー)の子にはスマイー【ホーリスヒルS(英GⅢ)】が、スピリットオブイーグルスの全弟にはビッグパル【カリフォルニアジュヴェナイルS(米GⅢ)】がいる。スピリットオブイーグルスの母ビッグスピリットの半姉にはビューティフルグラス【エルエンシノS(米GⅢ)】、半妹にはビューティフルメロディ【ビヴァリーヒルズH(米GⅠ)】がおり、ビューティフルグラスの子にジャンヌジョーンズ【ファンタジーS(米GⅠ)】、曾孫にテジアーノ【フィリーズマイル(英GⅠ)】が、ビューティフルメロディの曾孫に日本で走ったコスモヘレノス【ステイヤーズS(GⅡ)】がいる。→牝系:F1号族⑦

母父ボーズイーグルは、現役時代は米国で走り19戦9勝。サンアントニオH(米GⅠ)・カリフォルニアダービー(米GⅡ)・シネマH(米GⅡ)・ロサンゼルスH(米GⅢ)などを勝利している。ボーズイーグルの父ゴールデンイーグルはライトロイヤル産駒で、頑健に走って57戦12勝、主な勝ち鞍は、サンバーナーディノH・コングレッショナルHという中級競走馬だった。

競走馬引退後

競走馬を引退した本馬は、生まれ故郷のフェアホフ牧場で種牡馬入りした。南アフリカでもシャトル供用されている。独国でも2005年の新種牡馬ランキングで1位になり、2013年の独ダービー馬ラッキースピードを出すなど活躍しているが、それ以上に南アフリカにおける活躍が顕著であり、産駒のGⅠ競走勝ち馬は14頭以上、ステークスウイナーは優に50頭を超えている。

主な産駒一覧

生年

産駒名

勝ち鞍

2003

Fair Breeze

コリーダ賞(仏GⅡ)・ヘッセンポカル(独GⅢ)・アレフランス賞(仏GⅢ)

2003

Proudinsky

マーヴィンHムニスジュニア記念H(米GⅡ)2回・サンガブリエルH(米GⅡ)2回・ベイメドウズダービー(米GⅢ)

2004

Kings Gambit

サウスアフリカンクラシック(南GⅠ)・サウスアフリカンダービー(南GⅠ)・ゴードンリチャーズS(英GⅢ)

2004

Mi Emma

独1000ギニー(独GⅡ)・エッティンゲンレネン(独GⅡ)

2005

Aslan

サマーC(南GⅠ)・キャノンサウスアフリカン金杯(南GⅠ)

2005

Martial Eagle

J&Bメトロポリタン(南GⅠ)

2006

Bold Silvano

ダーバンジュライ(南GⅠ)・マクトゥームチャレンジR2(首GⅢ)

2006

Bravura

ケープダービー(南GⅠ)

2006

Field Flower

ケープフィリーズギニー(南GⅠ)

2006

Flirtation

サマーC(南GⅠ)・イエローウッドH(南GⅢ)

2007

Seal

サウスアフリカンダービー(南GⅠ)・カラドックサウスアフリカン金杯(南GⅢ)

2008

Astro News

カップトライアル(南GⅢ)

2008

Heavy Metal

ダーバンジュライ(南GⅠ)・チャンピオンズチャレンジ(南GⅠ)

2008

Ice Machine

グリーンポイントS(南GⅡ)・ドリルホールS(南GⅡ)

2008

Punta Arenas

カップトライアル(南GⅢ)

2008

Silver Flyer

ザディンガーンズ(南GⅡ)

2009

Do You Remember

ウーラヴィントン2000(南GⅠ)

2009

Gifted for Glory

ウインターダービー(南GⅢ)

2009

Hot Ticket

ベッティングワールドS(南GⅡ)・ゴールドヴァーズ(南GⅡ)

2009

Silvano's Jet

ベッティングワールドダービー(南GⅡ)

2009

Tellina

ハウテンギニー(南GⅡ)・ロンドンニュースS(南GⅢ)

2009

Vercingetorix

デイリーニューズ2000(南GⅠ)・ジェベルハッタ(首GⅠ)・KRAギニー(南GⅡ)・アルラシディヤ(首GⅡ)

2009

Wavin' Flag

サウスアフリカン金杯(南GⅠ)

2010

Arion

ペニンシュラH(南GⅡ)

2010

Gallica Rose

ゴールドブレスレット(南GⅡ)

2010

Happy Valentine

アランロバートソンフィリーズCS(南GⅠ)

2010

Lucky Speed

独ダービー(独GⅠ)・バーヴァリアンクラシック(独GⅢ)・米セントレジャー(米GⅢ)

2010

Power King

ダーバンジュライ(南GⅠ)・ウインターギニー(南GⅢ)・ウインタークラシック(南GⅢ)

2010

Whistle Stop

グラハムベックS(南GⅢ)

2012

Silver Mountain

ケープフィリーズギニー(南GⅠ)・フィリーズチャンピオンシップ(南GⅡ)

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