チーフベアハート

和名:チーフベアハート

英名:Chief Bearhart

1993年生

栗毛

父:チーフズクラウン

母:アメリアベアハート

母父:ボールドアワー

鋭い末脚を武器にBCターフを制した加国出身の実力馬で、日本で種牡馬入りすると距離適性万能の名種牡馬として活躍する

競走成績:2~5歳時に加米日で走り通算成績26戦12勝2着2回3着3回

誕生からデビュー前まで

加国の名門牧場サムソンファームにおいて、リチャード・D・メイナード氏により生産された。サムソンファームの所有馬として、加国マーク・フロスタッド調教師に預けられた。フロスタッド師は開業5年目の1995年にサムソンファームの専属調教師として雇われたばかりの人物だった。

競走生活(2・3歳時)

2歳6月にウッドバイン競馬場で行われたダート5ハロンの未勝利戦で、エミール・ラムザミー騎手を鞍上にデビュー。しかし単勝オッズ11.75倍の5番人気止まりで、結果も後方から少し差を詰めただけで、勝った単勝オッズ2.5倍の2番人気馬フローズンアイスから10馬身差の4着に終わった。そしてその後に脚部不安を発症したため、2歳時は以降レースに出る事はなかった。

3歳3月に米国ルイジアナ州フェアグラウンズ競馬場で行われた芝8ハロンの未勝利戦で復帰。ランディ・ロメロ騎手が騎乗する本馬は単勝オッズ7.5倍で12頭立ての4番人気だった。しかし馬群の中団追走からから四角でまくって直線入り口で先頭に立ち、2着に追い上げてきた単勝オッズ43.5倍の10番人気馬ミスターアイに4馬身差をつける圧勝で勝ち上がった。

翌月にはキーンランド競馬場で芝8.5ハロンの一般競走に出走。ここでは後のアーリントンクラシックSの勝ち馬トレイルシティが単勝オッズ1.6倍の1番人気に支持されており、ロメロ騎手が騎乗する本馬は単勝オッズ9.7倍で10頭立ての4番人気だった。レースではやはり馬群の中団を追走したが、やはり中団から四角で位置取りを上げて先頭に立ったトレイルシティにまったく追いつけず、6馬身差をつけられた3着に敗退。

その後は加国に帰国して、5月にウッドバイン競馬場で行われたダート8.5ハロンの一般競走に出走した。ここでも単勝オッズ4.85倍で10頭立ての3番人気止まりだった。しかし主戦となるサンディ・ホウリー騎手を鞍上に、最後方追走から三角で一気に位置取りを上げて瞬く間に先頭を奪い、2着となった単勝オッズ22.4倍の5番人気馬ボールドデシジョンに6馬身半差をつけて圧勝した。

その後は加国三冠競走を目指した。まずは加国三冠競走第1戦クイーンズプレートの前哨戦プレートトライアル(D9F)に出走した。ここではコロネーションフューチュリティSの勝ち馬でカップ&ソーサーS・サーバートンS・マリーンS2着のファームダンサーが単勝オッズ2.55倍の1番人気に支持されており、本馬は単勝オッズ2.7倍の2番人気での出走となった。ここでも最後方を追走した本馬は三角でまくる競馬を見せたが、今回は逃げた単勝オッズ9.45倍の4番人気馬ノースフェイスと、好位を追走したファームダンサーの2頭に届かず、勝ったノースフェイスから2馬身差の3着に敗退した。

それでも本番のクイーンズプレート(D10F)では、上昇度と素質が買われて、クイーンストンS・マリーンSを連勝してきた同厩馬ヴィクタークーリー(ただし馬主は異なる)と並んで単勝オッズ3.55倍の1番人気に支持され、ファームダンサーが単勝オッズ4.45倍の3番人気、ノースフェイスとコロネーションフューチュリティ2着馬ハンサムハンセルのカップリングが単勝オッズ6.2倍の4番人気となった。ここでも13頭立ての最後方追走という大胆な追い込み戦法に出たが、四角で位置取りを上げきれずに、先頭から10馬身も離された5番手で直線を向くことになった。そして直線でも追い込みきれずに、勝ったヴィクタークーリーから3馬身3/4差の4着に敗れた。ヴィクタークーリーは後のヴォスバーグSの勝ち馬であり、ダート戦では本馬より明らかに実力上位であった。

加国三冠競走第2戦のプリンスオブウェールズSは回避し、代わりにウッドバイン競馬場芝11ハロンの一般競走に出走。単勝オッズ1.5倍の1番人気に支持された。ここでは今までとは一転してスタート直後は先頭、道中は3番手の好位を追走する戦法を採った。そして直線で楽に抜け出して、2着に追い込んできた単勝オッズ5.45倍の2番人気馬セットアブレイズに2馬身半差をつけて快勝した。

引き続き加国三冠競走最終戦のブリーダーズS(T12F)に参戦した。プリンスオブウェールズSで5着に敗れたヴィクタークーリーは不参戦であり、本馬が同馬主同厩のサマーS・トロントカップH2着馬シーローンチとのカップリングで単勝オッズ2.35倍の1番人気に支持され、米国でトロピカルパークダービー・レキシントンSを勝ちトロントカップHも勝ってきたオーケーバイミーが単勝オッズ2.95倍の2番人気、クイーンズプレート5着後にプリンスオブウェールズSで2着してきたファームダンサーが単勝オッズ3.9倍の3番人気となった。このレースに限り、本馬の鞍上はホウリー騎手ではなくミッキー・ウォールズ騎手だった。今回の本馬はスタート直後こそ後方につけていたが、いつもより早めに上がっていき、レース中盤では早くも先頭に立った。そしてその後は独走態勢に入り、2着ファームダンサーに9馬身半差をつけて圧勝した。この勝ち方から本馬は芝向きと判断され、以降は全て芝コースのみを走る事になる。

ブリーダーズSの5週間後には加国際S(加GⅠ・T12F)に出走した。ゴードンリチャーズS・セレクトSの勝ち馬でパリ大賞・エクリプスS・コロネーションC2着のシングスピール、スーパーダービー・ETターフクラシックS・アーリントンミリオンとGⅠ競走3勝を挙げ前走マンノウォーSでも2着していた前年2着馬メッキー、サンルイレイS・サンルイオビスポHの勝ち馬でサンフアンカピストラーノ招待H2着のウインドシャープ、ギョームドルナノ賞なども勝っていた前年優勝馬ラシーニー、英チャンピオンS・ギョームドルナノ賞・デルマー招待H・ラクープドメゾンラフィットの勝ち馬デルニエアンプルールなど、世界各国から強豪馬が集まっていた。シングスピールが単勝オッズ2.9倍の1番人気、メッキーが単勝オッズ3.5倍の2番人気、ウインドシャープが単勝オッズ5.1倍の3番人気、ラシーニーが単勝オッズ6.6倍の4番人気で、本馬は単勝オッズ8.8倍の5番人気止まりだった。レースではウインドシャープが逃げを打ち、シングスピールが3番手で、本馬はそれを見るように4番手の好位を追走した。そしてシングスピールが仕掛けるとそれを追撃したが、最後まで捕らえることが出来ずに2馬身差の2着に敗れた。しかし3着メッキーには3馬身半差をつけており、前評判からすれば好走を見せた。

次走は地元のウッドバイン競馬場で行われたBCターフ(加GⅠ・T12F)となった。対戦相手は前走よりさらに層が厚く、シングスピール、コロネーションC・ドーヴィル大賞・フォワ賞などの勝ち馬でサンクルー大賞2着・凱旋門賞3着のスウェイン、英セントレジャー・伊ジョッキークラブ大賞を連勝してきた英ダービー3着馬シャントゥ、前年のアーリントンミリオンを筆頭にセクレタリアトS・ETマンハッタンS・パンアメリカンHなどを勝ちこの年のアーリントンミリオンや前走のターフクラシック招待Sで2着していたアワッド、サンセットHの勝ち馬でハリウッドターフカップS2着のタロワール、マンハッタンH・マンノウォーS・ターフクラシック招待Sなどの勝ち馬でシーザーズ国際H2着のディプロマティックジェット、グレートヴォルティジュールSの勝ち馬で英ダービー・英セントレジャー2着のダシャンター、バーデン大賞・ブリガディアジェラードS・ロイヤルホイップSの勝ち馬で前走凱旋門賞2着のピルサドスキー、サンタラリ賞・ヴァントー賞・ノネット賞の勝ち馬ルナウェルズ、前走4着のウインドシャープ、セクレタリアトSの勝ち馬でマンノウォーS・ターフクラシック招待S3着のマーリンなどだった。メンバーが非常に揃った上に大外枠発走だった本馬は、単勝オッズ21.1倍の7番人気だった。レースでは道中で中団を追走するも、大外を走らされた影響もあったのか、三角に入って他馬勢が仕掛けると付いていけずに徐々に後退していった。最後は勝った単勝オッズ14.7倍の6番人気馬ピルサドスキーから11馬身差をつけられた11着と大敗した。それでも3歳時は8戦4勝の成績で、ソヴリン賞最優秀芝牡馬に選出された。

競走生活(4歳時)

4歳時以降は主戦にホセ・サントス騎手を迎え、米国のレースにも積極的に参戦するようになった。

まずは4月にキーンランド競馬場で行われたメイカーズマークマイルS(米GⅢ・T8F)から始動した。対戦相手は、アメリカンダービー・ホーソーンダービーの勝ち馬ジョーナトクソ、ケルソHの勝ち馬セイムオールドウィッシュ、クインシー賞の勝ち馬ライジングカラーズなど、実績的には本馬と同程度か格下の馬ばかりだった。しかも本馬の斤量はトップハンデのジョーナトクソやセイムオールドウィッシュより8ポンドも軽い114ポンドだった。しかしBCターフの惨敗などが印象を悪くしたのか、本馬は単勝オッズ7.7倍の4番人気止まりであり、セイムオールドウィッシュが単勝オッズ3.4倍の1番人気、116ポンドのライジングカラーズが単勝オッズ3.9倍の2番人気となっていた。サントス騎手とのコンビ初戦だったのだが、今回も過去と同様に極端な最後方待機策を選択。そして直線で追い込んできたが、スタートから終始レースを支配した単勝オッズ8.3倍の5番人気馬インフルエントに半馬身届かず2着に敗れた。インフルエントは本馬と同じく加国産馬だったが、この年のシーザーズ国際H・ボーリンググリーンH・マンノウォーSに勝利する実力馬だった。

それから2週間後のエルクホーンS(米GⅢ・T10F)では、前年の加国際Sで6着に終わるも前々走のガルフストリームパークBCターフSを勝ち前走パンアメリカンHで2着してきたラシーニー、ラウンドテーブルS・ホーソーンダービー・スターズ&ストライプスHの勝ち馬スネークアイズ、ロワイヤルオーク賞・加国際S・サンフアンカピストラーノ招待H・ケルゴルレイ賞などを勝っていたレイントラップ、前年のベルモントS・スーパーダービーの勝ち馬でフロリダダービー2着・BCジュヴェナイル・プリークネスS3着のエディターズノートなどが対戦相手となった。122ポンドのラシーニーが単勝オッズ2.4倍の1番人気、斤量2位ながら114ポンドの本馬が単勝オッズ2.9倍の2番人気、113ポンドのスネークアイズが単勝オッズ7.3倍の3番人気となった。スタートが切られると単勝オッズ16.2倍の6番人気馬ライスが逃げを打った。本馬は今回後方3番手につけ、最後方のラシーニーよりも前でレースを進めた。そしてラシーニーよりも先に上がっていくと、2番手から抜け出していたスネークアイズをゴール前で捕らえて半馬身差で勝利した(ラシーニーはスネークアイズから3馬身差の3着だった)。

その後はいったん地元に戻って、6月にウッドバイン競馬場で行われたキングエドワードBCH(加GⅢ・T9F)に出走した。このレースは、一昨年のプリンスオブウェールズSの勝ち馬で、前年の同競走やコノートCも勝ち、前年のBCマイルでは4着と健闘していたキリダシとの2強対決となった。119ポンドの本馬がペースメーカー役2頭とのカップリングで単勝オッズ1.85倍の1番人気、124ポンドのキリダシが単勝オッズ2.05倍の2番人気となった。レースはペースメーカー役の2頭が先頭を引っ張り、キリダシが3番手、本馬は最後方を追走した。そして直線入り口でキリダシを捕らえて先頭に立つとそのまま突き抜け、2着に突っ込んできた単勝オッズ25.35倍の5番人気馬クラウンアトーニーに3馬身1/4差をつけて完勝した(キリダシはさらに首差の3着だった)。

その後は再度米国に向かい、7月にアーリントンパーク競馬場で行われたスターズ&ストライプスBCH(米GⅢ・T10F)に出走した。前年のBCターフでは9着に終わっていたアワッド、前々走のETターフクラシックSで3着していたダウンジアイル、ユジェーヌアダム賞・フォルス賞の勝ち馬ラドヴォール、スネークアイズなどが対戦相手となった。119ポンドの本馬が単勝オッズ2.4倍の1番人気、111ポンドのダウンジアイルが単勝オッズ4.1倍の2番人気、119ポンドのアワッドが単勝オッズ5.6倍の3番人気となった。今回の本馬は馬群の最後方ではなく中団やや後方を追走した。そして向こう正面で早くも先頭に並びかけていった。そのまま先頭を維持して直線に入ってきたが、本馬をマークするように直後を追ってきた単勝オッズ11.8倍の6番人気馬レイクショアロードに並びかけられると、5ポンドの斤量差が響いて競り負け、頭差の2着に敗れた。

夏場は短期休養に充て、秋はウッドバイン競馬場で行われたスカイクラシックH(T11F)から始動した。ここでは、アーリントンクラシックS・アメリカンダービー・セクレタリアトSの中部米国三冠競走“Mid-America Triple”を全勝してきたオナーグライドという強敵が出現し、123ポンドのトップハンデだった本馬と、119ポンドのオナーグライドの2頭が単勝オッズ2.05倍の1番人気で並ぶ2強ムードとなった。レース序盤は2頭とも後方を追走していたが、レース中盤でオナーグライドが先に仕掛けて先頭に立った。しかしオナーグライドを追いかけるように仕掛けた本馬が四角でオナーグライドを置き去りにして抜け出し、最後は2着オナーグライドに6馬身差をつけ、2分13秒4のコースレコードで勝利した。

続いて出走した加国際S(加GⅠ・T12F)では、愛セントレジャー・ミラノ大賞・ドーヴィル大賞・ジョンポーターSの勝ち馬でキングジョージⅥ世&クイーンエリザベスDS・ジャパンC3着のストラテジックチョイス、スターズ&ストライプスBCH4着後にナイアガラBCHで2着してきたダウンジアイル、ローズオブランカスターSの勝ち馬で愛2000ギニー・英ダービー3着のロマノフ、ナイアガラBCS2連覇のデザートウェイヴズなど5頭が対戦相手となった。本馬と同馬主同厩のデザートウェイヴズのカップリングが単勝オッズ1.65倍に支持され、ダウンジアイルが単勝オッズ4.95倍の2番人気、ロマノフが単勝オッズ6.05倍の3番人気、ストラテジックチョイスが単勝オッズ6.9倍の4番人気となった。スタートが切られると、本馬のペースメーカー役としての出走だったデザートウェイヴズが逃げを打ち、本馬は例によって最後方を追走した。そして三角から四角にかけて、失速したデザートウェイヴズと入れ代わるように先頭に立つと、そのまま押し切って2着ダウンジアイルに2馬身1/4差で快勝し、前年2着の雪辱を果たした。

そして米国に向かい、ハリウッドパーク競馬場で行われたBCターフ(米GⅠ・T12F)に参戦した。独ダービー・バーデン大賞を勝ち前走凱旋門賞で3着してきた独国の女傑ボルジア、ギョームドルナノ賞・ニエル賞の勝ち馬ラジプート、スターズ&ストライプスBCH3着後に出走したソードダンサー招待Hを勝っていたアワッド、前走ターフクラシック招待Sを勝ってきたマンノウォーS2着馬ヴァルズプリンス、コンセイユドパリ賞の勝ち馬で仏グランクリテリム2着のマジョリアン、レッドスミスH・WLマックナイトH・ボーリンググリーンH・パンアメリカンH・エドモンブラン賞・ラクープを勝っていた加国産馬フラッグダウン、マンハッタンH・ディキシーS・ロングフェローHの勝ち馬で前走ターフクラシック招待S3着のオプススマイル、愛オークス・プリティポリーS2回・タタソールズ金杯の勝ち馬で愛1000ギニー・愛チャンピオンS2着のダンスデザインなどが参戦していた。しかし直前調教で脚を骨折したシングスピールや、英チャンピオンSを経てジャパンCに向かったピルサドスキーが回避するなど、前年よりもメンバーがやや手薄だった。それもあって本馬が単勝オッズ2.9倍の1番人気に支持され、ボルジアが単勝オッズ5.4倍の2番人気、ラジプートが単勝オッズ7.7倍の3番人気、アワッドが単勝オッズ8.3倍の4番人気、ヴァルズプリンスが単勝オッズ8.8倍の5番人気と続いた。

スタートが切られると単勝オッズ36.4倍の最低人気馬バックスボーイが逃げを打ち、ラジプートやヴァルズプリンスなどがそれを追撃。本馬は最大で先頭から10馬身ほど離れた後方4番手を追走した。そして三角手前で仕掛けて、外側を通って徐々に位置取りを上げると、バックスボーイ、ラジプート、フラッグダウンに続く4番手で直線に入ってきた。ここからフラッグダウンが抜け出したが、大外から猛追してきた本馬と、内側を突いたボルジアの2頭が残り半ハロン地点でそれをかわした。最後は本馬とボルジアの2頭による争いとなったが、本馬がボルジアを3/4馬身差の2着に抑えて優勝。勝ちタイム2分23秒92はBCターフ史上最速だった(それまでの最速は1992年にフレイズがガルフストリームパーク競馬場で計時した2分24秒08。本馬以降に本馬より速いタイムで決着したBCターフは4回あるが、全て速いタイムが出やすいサンタアニタパーク競馬場におけるものである)。

4歳時は7戦5勝2着2回の好成績で、ソヴリン賞年度代表馬・最優秀古馬牡馬・最優秀芝牡馬に加えて、エクリプス賞最優秀芝牡馬のタイトルも獲得した。

競走生活(5歳時)

5歳時も現役を続け、前年に勝利した4月のエルクホーンS(米GⅢ・T12F)から始動した。他の出走全馬より8ポンド重い122ポンドのトップハンデを課せられたが、単勝オッズ1.7倍の1番人気に支持された。レースでは5頭立ての最後方を追走したが、前が止まらずに直線入り口でもまだ最後方だった。ここから末脚を伸ばしてきたが、前年のサンフアンカピストラーノ招待Hと前走のパンアメリカンHで2着していた単勝オッズ2.6倍の2番人気馬アフリカンダンサーを捕らえきれずに、3/4馬身差の2着に敗れた。

次走のマンハッタンH(米GⅠ・T10F)では、前年のBCターフで本馬の4着に粘り込んだのを契機に頭角を現してパンアメリカンHを勝ちガルフストリームパークBCHで2着していたバックスボーイ、ユジェーヌアダム賞・ギシュ賞の勝ち馬でジャンプラ賞3着のカークウォール、コールダーダービーの勝ち馬でスーパーダービー・ハリウッドダービー3着のブレイジングソードなどが対戦相手となった。122ポンドの本馬がペースメーカー役のスカイバウンドとのカップリングで単勝オッズ1.65倍の1番人気、117ポンドのバックスボーイが単勝オッズ5.7倍の2番人気、カークウォールが単勝オッズ6.1倍の3番人気となった。今回はペースメーカー役のスカイバウンドにバックスボーイのハナを叩いて逃げを打ってもらったため、安心して最後方待機策を採った。そして三角から四角にかけて勢いよく上がっていくと、直線で前を行くバックスボーイと単勝オッズ20.5倍の5番人気馬ディーヴォンウッドの2頭を差し切り、最後は2着ディーヴォンウッドに1馬身3/4差をつけて、1分58秒25のコースレコード勝ちを収めた。

次走のボーリンググリーンH(米GⅡ・T11F)では、アーリントンH・エルクホーンS3着馬チョーウォンくらいしか目立つ対戦相手がおらず、124ポンドのトップハンデながら単勝オッズ1.3倍の1番人気に支持された。ここではペースメーカー役の馬がいなかったが、それでも6頭立ての最後方を追走した。しかし直線入り口でもまだ最後方。ここから末脚が不発に終わり、12ポンドのハンデを与えた単勝オッズ10.6倍の4番人気馬セテワヨと、11ポンドのハンデを与えた単勝オッズ17.8倍の5番人気馬オフィシャスの2頭を捕らえられず、勝ったセテワヨから4馬身1/4差の3着に敗れた。

次走のソードダンサーH(米GⅠ・T12F)では、前走で本馬を破ったセテワヨ、前年のBCターフ8着後に香港国際Cを勝っていたヴァルズプリンス、一昨年のBCターフ7着後にジェフリーフリアS・ゴールデンゲートHを勝ちコロネーションCで2着していたダシャンター、チェスターヴァーズ・WLマックナイトHの勝ち馬で伊グランクリテリム2着のパナマシティなどが対戦相手となった(当初はバックスボーイも参戦予定だったが風邪のため回避)。123ポンドの本馬が単勝オッズ2.2倍の1番人気、119ポンドのダシャンターが単勝オッズ3.4倍の2番人気、115ポンドのセテワヨが単勝オッズ5.1倍の3番人気、113ポンドのヴァルズプリンスが単勝オッズ8.8倍の4番人気となった。このレースにもペースメーカー役の馬がいなかったため、本馬は逃げるヴァルズプリンスをマークするように3番手の好位を追走した。しかしこの作戦が裏目に出たのか、直線で伸びずに、上述した4頭全てに敗れて、勝ったセテワヨから3馬身半差の5着に終わった。

その後はいったん地元に戻ってきて、ナイアガラBCH(T12F)に出走した。本馬に勝利の味を思い出させるための出走だったようで、陣営はデザートウェイヴズをペースメーカー役として配する万全の体制をとった。123ポンドの本馬がデザートウェイヴズとのカップリングで単勝オッズ1.3倍の1番人気に支持され、前年のキングエドワードBCHで本馬の2着に敗れるもこの年の同競走は勝っていたクラウンアトーニーが117ポンドで単勝オッズ5.55倍の2番人気となった。レースはデザートウェイヴズが先頭を引っ張り、本馬は馬群の後方を追走。そして三角で仕掛けて直線入り口で先頭に立つという、いつもの勝ちパターンに持ち込み、2着となった単勝オッズ9.85倍の4番人気馬グリーンミーンズゴー(ヒルプリンスS・レキシントンSの勝ち馬)に2馬身3/4差をつけて勝利した。

続いて出走したスカイクラシックH(T11F)では、125ポンドの本馬がデザートウェイヴズとのカップリングで単勝オッズ1.25倍の1番人気に支持され、114ポンドのグリーンミーンズゴーが単勝オッズ4.85倍の2番人気、前走で3着だった117ポンドのクラウンアトーニーが単勝オッズ8倍の3番人気となった。レースはデザートウェイヴズが逃げて、最後方追走の本馬が直線入り口で先頭に立つという、前走とほとんど同じ展開となり、本馬が2着グリーンミーンズゴーに3馬身1/4差をつけて勝利した。

その後は3年連続で加国際S(加GⅠ・T12F)に参戦した。キングエドワードⅦ世Sの勝ち馬でキングジョージⅥ世&クイーンエリザベスDS3着のロイヤルアンセム、レキシントンS・米国競馬名誉の殿堂博物館S・ローレンスリアライゼーションHの勝ち馬パレードグラウンド、ガネー賞・アルクール賞の勝ち馬でイスパーン賞2着のアスタラバド、前走ハリウッドパークターフHを勝っていたストームトルーパー、デュッセルドルフ大賞・リボー賞・セプテンバーSの勝ち馬クリムゾンタイド、前々走のブリーダーズSで牡馬勢を蹴散らして勝っていたピナフォアパークなどが対戦相手となった。本馬とデザートウェイヴズのカップリングが単勝オッズ2.5倍の1番人気に支持され、ロイヤルアンセムが単勝オッズ2.75倍の2番人気、パレードグラウンドが単勝オッズ6.75倍の3番人気となった。スタートが切られるとデザートウェイヴズを抑えてロイヤルアンセムが先手を取り、本馬は馬群の中団を追走した。しかし逃げるロイヤルアンセムの勢いは直線に入っても衰えず、そのまま逃げ切って勝利。本馬は2馬身差の2着まで差を詰めるのが精一杯だった。

続いて米国に向かい、チャーチルダウンズ競馬場で行われたBCターフ(米GⅠ・T12F)に参戦した。対戦相手は、ロイヤルアンセム、マンハッタンH3着後にターフクラシック招待Sを勝ちマンノウォーSで2着するなど米国芝路線のトップホースに上り詰めていたバックスボーイ、ヴェルメイユ賞・ポモーヌ賞の勝ち馬で前走凱旋門賞2着のレッジェーラ、ハリウッドターフカップS・アルクール賞・サンセットHの勝ち馬リヴァーベイ、デルマーHの勝ち馬でエディリードH・オークツリーターフCSS2着のボナパルティステ、ボーリンググリーンH・ソードダンサーHで本馬を連破した後に前走ターフクラシック招待Sで2着してきたセテワヨ、ドラール賞・ブリガディアジェラードSの勝ち馬で英チャンピオンS2着のインサティエイブル、ディキシーH・バーナードバルークH・ハイアリアターフカップHの勝ち馬ヤグリ、アラルポカル・伊ジョッキークラブ大賞の勝ち馬カイタノ、本馬が5着に敗れたソードダンサーHで3着だったダシャンターなどだった。ロイヤルアンセムが単勝オッズ3.7倍の1番人気、バックスボーイが単勝オッズ4.6倍の2番人気、本馬が単勝オッズ7.5倍の3番人気となった。スタートが切られるとバックスボーイが先頭に立ち、ロイヤルアンセムは好位、本馬は最後方を追走した。バックスボーイが刻むペースは、最初の2ハロン通過が24秒43、半マイル通過は49秒31という遅い流れとなった。この展開では末脚勝負の馬には厳しく、直線入り口で8番手だった本馬は大外から追い上げてはきたものの届かなかった。結局はバックスボーイが逃げ切って優勝し、本馬はロイヤルアンセム(7着)には先着したものの、バックスボーイから3馬身差の4着に敗れた。

その後は来日してジャパンC(日GⅠ・T2400m)に参戦した。海外からの参戦馬は本馬以外に、前走BCターフで8着だったカイタノ、プリンスオブウェールズSの勝ち馬でエクリプスS・英国際S2着のフェイスフルサン、シープスヘッドベイH2回・ミセスリヴィアS・ニューヨークH・ジェニーワイリーS・ビウィッチSの勝ち馬でビヴァリーDS・フラワーボウル招待H・メイトリアークS2着のマックスジーン、伊ダービー・アラルポカル・ドイツ賞・バイエルン大賞・エリントン賞2回・香港国際ヴァーズ2回などの勝ち馬ルソー、ミラノ大賞・ドイツ賞・独セントレジャーの勝ち馬で伊ダービー・バイエルン大賞2着のウンガロだった。一方の日本馬勢は、東京優駿・弥生賞・京都新聞杯・きさらぎ賞の勝ち馬で菊花賞2着・皐月賞3着のスペシャルウィーク、優駿牝馬・天皇賞秋・札幌記念2回・産経大阪杯・チューリップ賞・マーメイドSの勝ち馬で阪神三歳牝馬S・ジャパンC2着・有馬記念・宝塚記念・エリザベス女王杯3着のエアグルーヴ、NHKマイルC・ニュージーランドトロフィー四歳S・共同通信杯四歳Sの勝ち馬で毎日王冠2着のエルコンドルパサー、有馬記念・京都大賞典・京都四歳特別の勝ち馬で東京優駿2着のシルクジャスティス、天皇賞春・宝塚記念・天皇賞秋とGⅠ競走2着3回のステイゴールド、アルゼンチン共和国杯・ダイヤモンドSの勝ち馬ユーセイトップラン、新潟大賞典の勝ち馬サイレントハンター、青葉賞の勝ち馬トキオエクセレント、目黒記念の勝ち馬ゴーイングスズカだった。

この年は日本調教馬優勢という前評判であり、海外馬は全体的に評価が低かった。スペシャルウィークが単勝オッズ3.3倍の1番人気、前年2着の雪辱を期するエアグルーヴが単勝オッズ4.6倍の2番人気、当時は距離不安が囁かれていたエルコンドルパサーが単勝オッズ6倍の3番人気で、本馬が海外馬最上位となる単勝オッズ8.6倍の4番人気となった。

スタートが切られるとサイレントハンターが逃げを打ち、エルコンドルパサー、エアグルーヴ、スペシャルウィークの人気馬3頭は、3~6番手の好位を追走。一方の本馬は、後ろにいるのはユーセイトップランの1頭だけという後方待機策を選択した。そして直線に入ると外側に持ち出して豪快に追い込んできた。しかし好位から先に抜け出したエルコンドルパサー、エアグルーヴ、スペシャルウィークの3頭には届かず、勝ったエルコンドルパサーから5馬身差の4着に敗れた。海外馬勢では最先着したものの、ジャパンC史上初めて日本調教馬による上位3頭独占を許す結果となった。これが現役最後のレースとなった。5歳時の成績は9戦3勝だったが、この年もソヴリン賞年度代表馬・最優秀芝牡馬に選出された。

血統

Chief's Crown Danzig Northern Dancer Nearctic Nearco
Lady Angela
Natalma Native Dancer
Almahmoud
Pas de Nom Admiral's Voyage Crafty Admiral
Olympia Lou
Petitioner Petition
Steady Aim
Six Crowns Secretariat Bold Ruler Nasrullah
Miss Disco
Somethingroyal Princequillo
Imperatrice
Chris Evert Swoon's Son The Doge
Swoon
Miss Carmie T. V. Lark
Twice Over
Amelia Bearhart Bold Hour Bold Ruler Nasrullah Nearco
Mumtaz Begum
Miss Disco Discovery
Outdone
Seven Thirty Mr. Music Balladier
Mata Hari
Time to Dine Jamestown
Dinner Time
Myrtlewood Lass Ribot Tenerani Bellini
Tofanella
Romanella El Greco
Barbara Burrini
Gold Digger Nashua Nasrullah
Segula
Sequence Count Fleet
Miss Dogwood

チーフズクラウンは当馬の項を参照。

母アメリアベアハートは米国ケンタッキー州スペンドスリフトファームの生産馬で、後にサムソンファームに導入された。競走馬としては13戦して1勝止まりだったが、繁殖牝馬としては、本馬の半兄エクスプローシヴレッド(父エクスプローデント)【ハリウッドダービー(米GⅠ)・アメリカンダービー(米GⅡ)・フォアランナーS(米GⅢ)・カップ&ソーサーS】、半姉ルビーランサム(父レッドランサム)【コリーンS】なども産み、1996年のソヴリン賞最優秀繁殖牝馬に選ばれた。ルビーランサムの子にはセイクリッドソング【プリンセスロイヤルS(英GⅢ)・ランカシャーオークス(英GⅢ)】、ストラットザステージ【ディキシーS(米GⅡ)・スカイクラシックH(加GⅡ)・チャイニーズカルチュアルセンターS(加GⅡ)・ナイアガラBCS(加GⅡ)2回】が、本馬の半妹サンダウンセレナーデ(父デピュティミニスター)の孫にはプライヴェートゾーン【ヴォスバーグS(米GⅠ)2回・シガーマイルH(米GⅠ)・フォアゴーS(米GⅠ)】がいる。アメリアベアハートの半妹ジョイオブマートルウッド(父ノーザンジョヴ)の孫には日本で走ったオウケンブルースリ【菊花賞(GⅠ)・京都大賞典(GⅡ)・2着ジャパンC(GⅠ)】、曾孫にはハイパーフォルテ【兵庫ダービー・楠賞2回】、カツゲキドラマ【園田プリンセスC・プリンセス特別】がいる。

アメリアベアハートの母マートルウッドラスはミスタープロスペクターの半妹であり、近親には多くの活躍馬がいるが、その詳細はフリゼットマートルウッド、ミスタープロスペクター、シアトルスルーなどの項を参照してほしい。→牝系:F13号族①

母父ボールドアワーはウイニングカラーズの項を参照。

競走馬引退後

競走馬を引退した本馬はいったん加国に帰国したが、翌1999年に日本中央競馬会により420万ドル(当時の為替レートで約5億円)で購入されたため、再来日して同年から日本軽種馬協会静内種馬場で種牡馬生活を開始した。初年度は65頭の繁殖牝馬を集め、2年目は91頭、3年目の2001年には95頭が集まる人気種牡馬となった。この2001年には新国にもシャトルされた。翌2002年には加国競馬の殿堂入りを果たしている。

新国からの帰国後は日本軽種馬協会胆振種馬場を経て静内種馬場に戻った。帰国後も人気は衰えず、4年目の2002年は78頭、マーブルチーフが京都新聞杯を勝った5年目の2003年は94頭、マイネルレコルトが暮れの朝日杯フューチュリティSを制した6年目の2004年は73頭、マイネルレコルト効果が出た翌7年目は121頭、8年目は57頭、ナムラマース、トーホウレーサー、メルシーエイタイムが活躍した9年目の2007年は130頭の繁殖牝馬を集めた。

その後の交配数は減少に転じ、10年目は69頭、11年目は34頭、12年目の2010年は前年にマイネルキッツやビービーガルダンが活躍したため少し持ち直して54頭、13年目は16頭、14年目の2012年は6頭の交配数だった。この2012年の4月頃に体調を崩し、この年の種付けを中断して療養生活に入った。しかし同年9月に急性心不全のため19歳で他界した。

種牡馬としての本馬は、古馬になってから活躍した自身の成績から2歳戦での苦戦が予想されたが、予想に反して産駒には2歳王者マイネルレコルトなど仕上がり早い馬も少なくない。基本的に中距離馬が多いようだが、2009年にはマイネルキッツが3200mの天皇賞春を制し、同年にはビービーガルダンが1200mのキーンランドCを勝ち同距離のスプリンターズSで2着するなど、産駒の距離適性は非常に幅広い。スピードがあり体が柔らかい子が多く、ダートもこなし、障害競走も走った。全日本種牡馬ランキングは2007年の25位が最高だった。

主な産駒一覧

生年

産駒名

勝ち鞍

2000

エアセレソン

新潟大賞典(GⅢ)

2000

マーブルチーフ

京都新聞杯(GⅡ)

2002

マイネルレコルト

朝日杯フューチュリティS(GⅠ)・新潟2歳S(GⅢ)

2002

メルシーエイタイム

中山大障害(JGⅠ)・東京ハイジャンプ(JGⅡ)

2003

コウエイノホシ

大井記念(SⅡ)

2003

マイネルキッツ

天皇賞春(GⅠ)・日経賞(GⅡ)・ステイヤーズS(GⅡ)

2003

マキノチーフ

ロジータ記念(南関GⅡ)

2004

トーホウレーサー

ニュージーランドトロフィー(GⅡ)

2004

トミノダンディ

イヌワシ賞(金沢)・オータムC(SPⅡ)

2004

ナムラマース

札幌2歳S(GⅢ)・毎日杯(GⅢ)

2004

ビービーガルダン

阪急杯(GⅢ)・キーンランドC(GⅢ)

2004

マツリダワルツ

ひまわり賞(水沢)

2007

レッドエンゼル

門松賞(荒尾)

2008

ディアフロイデ

九州オールカマー(S2)・由布岳賞(S2)・尾鈴山賞(S2)

2008

マイネルラクリマ

オールカマー(GⅡ)・京都金杯(GⅢ)・七夕賞(GⅢ)

2008

リジョウクラウン

園田プリンセスC(園田)・若草賞(福山)

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