フレンチデピュティ

和名:フレンチデピュティ

英名:French Deputy

1992年生

栗毛

父:デピュティミニスター

母:ミッテラン

母父:ホールドユアピース

現役時代はGⅡ競走1勝の身ながら種牡馬としてはクロフネなどの活躍で注目され輸出先の日本でブレイクする

競走成績:2・3歳時に米で走り通算成績6戦4勝2着1回

誕生からデビュー前まで

米国のオーナーブリーダーであるアーヴィング・コーワン氏と妻のマージョリー・コーワン夫人により生産・所有されたケンタッキー州産馬で、ニール・ドライスデイル調教師に預けられた。

競走生活

2歳11月にハリウッドパーク競馬場で行われたダート6ハロンの未勝利戦で、エディ・デラフーセイ騎手を鞍上にデビュー。単勝オッズ6倍の3番人気という評価だったが、スタートから最初の2ハロンを21秒63というかなり速いペースで逃げると、直線で二の脚を使って後続を引き離し、2着となった単勝オッズ2.8倍の1番人気馬フリッツィーズウィッシュに5馬身差をつける圧勝で初戦を飾った。

2歳時はこの1戦のみで終え、3歳時はまず2月にサンタアニタパーク競馬場で行われたダート6.5ハロンの一般競走に出走。ここでもデラフーセイ騎手とコンビを組んだ本馬は、今度は単勝オッズ1.4倍の1番人気に支持された。今回はスタート後の加速が悪く、逃げることが出来ずに馬群の中団を進むことになった。しかし四角で仕掛けると直線に入って間もなく先頭に立ち、2着となった単勝オッズ8倍の3番人気馬スコアクイックに2馬身3/4差をつけて勝利した。

次走はそれから19日後にサンタアニタパーク競馬場で行われたダート8ハロンの一般競走だった。ここでもデラフーセイ騎手とコンビを組んだ本馬は、単勝オッズ1.3倍という圧倒的な1番人気に支持された。今回は道中で4頭立ての3番手を追走。三角手前で仕掛けて三角途中で先頭に立つと、後は完全な独り舞台となり、2着となった単勝オッズ8.2倍の3番人気馬オーサムソートに11馬身差をつけて圧勝した。

しかしその後に脚を負傷して長期休養に入ってしまったため、米国三冠路線には縁が無かった。

ようやく戦線に復帰したのは3歳秋になってからだった。ステークス競走未出走の身でありながら、陣営はBCクラシックを見据えていたようで、本拠地の米国西海岸ではなく、この年のブリーダーズカップが行われるベルモントパーク競馬場で施行されるジェロームH(GⅡ・D8F)から本馬を始動させた。さすがに対戦相手は有力馬ばかりであり、3連勝で前走キングズビショップSを勝ってきたトップアカウント、スペクタキュラービッドBCS・スウェイルS・ファイエットSの勝ち馬ミスターグリーリー、ワットアプレジャーS・プレヴューSの勝ち馬でフロリダダービー・ファウンテンオブユースS・ブルーグラスS2着のスワーヴプロスペクト、ドワイヤーS2着馬リアリティロード、前走キングズビショップSで3着だったエクセレレートの5頭が出走していた。しかし過去3戦で騎乗したデラフーセイ騎手に代わってゲイリー・スティーヴンス騎手とコンビを組んだ本馬は、113ポンドの軽量に恵まれた事もあり、実績上位の馬達を抑えて単勝オッズ2.55倍の1番人気に支持された。115ポンドのトップアカウントが単勝オッズ2.7倍の2番人気、119ポンドのスワーヴプロスペクトと117ポンドのミスターグリーリーのカップリングが単勝オッズ3.05倍の3番人気、111ポンドのリアリティロードが単勝オッズ18倍の4番人気、113ポンドのエクセレレートが単勝オッズ20.5倍の最低人気となった。

スタートが切られるとリアリティロードが先頭に立ち、それにミスターグリーリーが絡んで2頭がハイペースで逃げを打った。一方の本馬は馬群のちょうど中間につけた。そして三角で仕掛けると、直線入り口では先頭のミスターグリーリーに並びかけた。そして一気にミスターグリーリーを突き放し、最後は4馬身差をつけて完勝した。勝ちタイムは1分33秒53で、これはこの年のベルモントパーク競馬場ダート1マイル戦における最速タイムだった。

続いてベルモントパーク競馬場で行われたダート8ハロンの一般競走に出走した。ただの一般競走ではあったが、前走3着のトップアカウント、前走最下位のリアリティロードに加えて、ドンH2回・フラミンゴS・ブルーグラスS・ベンアリSの勝ち馬でフロリダダービー・ガルフストリームパークH・ピムリコスペシャルH3着のピストルズアンドローゼズという強豪馬も参戦してきた。再びデラフーセイ騎手とコンビを組んだ本馬が単勝オッズ1.25倍という圧倒的な1番人気に支持され、トップアカウントが単勝オッズ6.6倍の2番人気、ピストルズアンドローゼズが単勝オッズ9.1倍の3番人気となった。ここでは好スタートを切ったために無理に抑えずにそのまま2番手につけた。本馬の少し前を、ステークス競走勝ちが後にも先にも無い単勝オッズ25.5倍の5番人気馬サザンクレームが走っていたが、サザンクレームが刻んだペースは最初の2ハロン通過が22秒34というかなり速いものであり、後方の馬に有利な展開となった。四角でサザンクレームが失速すると本馬が代わりに先頭に立ったが、そこへトップアカウントやリアリティロードといった後方待機馬勢が押し寄せてきた。道中で鞭を落としてしまったデラフーセイ騎手は本馬を直線で十分に追うことが出来ず、直線半ばでトップアカウントに差されて、2馬身差の2着に終わり、デビュー以降初めて黒星を喫した。

それでも次走はBCクラシック(GⅠ・D10F)となった。スティーヴンス騎手とコンビを組んだ本馬は単勝オッズ15.8倍で11頭立ての5番人気だった。そう聞くと穴人気評価だったように思うかもしれないが、この年のBCクラシックには単勝オッズ1.7倍という断然の1番人気に支持されていた一頭の超大物がいて、ホイットニーH・ジムダンディSの勝ち馬でジョッキークラブ金杯2着のアナカウンティドフォー、エクリプスS・英国際Sなど8連勝中のホーリング、スーパーダービー・サンフェリペS・ベルエアH・グッドウッドHの勝ち馬でパシフィッククラシックS2着のソウルオブザマター、モルソンエクスポートミリオン・メドウランズCH・イリノイダービー・ダービートライアルSの勝ち馬ピークスアンドヴァレーズ、パシフィッククラシックSを2連覇してハリウッド金杯で2着していたティナーズウェイ、前年のBCクラシックを筆頭にカリフォルニアンS・アーカンソーダービー・ニューオーリンズHを勝ちトラヴァーズS・スーパーダービーで2着していたコンサーン、ホイットニーH2着馬エルカリエレ、レキシントンSの勝ち馬でベルモントS・トラヴァーズS2着のスタースタンダードといった他馬は揃ってその他大勢扱いだったため、2番人気でも11番人気でも大差が無いと言っても過言ではない状態だった(結果的に2着になるエルカリエレは単勝オッズ52倍の9番人気だった)。その超大物とは、NYRAマイルH・ドンH・ガルフストリームパークH・オークローンH・ピムリコスペシャルH・ハリウッド金杯・ウッドワードS・ジョッキークラブ金杯など破竹の11連勝中のシガーであった。

スタートが切られるとスタースタンダードが先頭に立ち、エルカリエレが2番手、シガーが3番手につけた。そして絶好のスタートを切った本馬は、徐々に位置取りを下げていき、道中は先行馬群を見るように好位につけた。しかし直線に入る前に既にスタミナが切れて失速してしまい、勝ったシガーから18馬身3/4差をつけられた9着に終わった。

ジェロームHで本馬に完敗を喫したミスターグリーリーはこの年のBCスプリントで首差2着しており、本馬もBCスプリントに向かえば好勝負になったかもしれないが、それは結果論なので仕方が無いだろう。本馬はこのレースを最後に、3歳時5戦3勝の成績で競走馬を引退した。

血統

Deputy Minister Vice Regent Northern Dancer Nearctic Nearco
Lady Angela
Natalma Native Dancer
Almahmoud
Victoria Regina Menetrier Fair Copy
La Melodie
Victoriana Windfields
Iribelle
Mint Copy Bunty's Flight Bunty Lawless Ladder
Mintwina
Broomflight Deil
Air Post
Shakney Jabneh Bimelech
Bellesoeur
Grass Shack Polynesian
Good Example
Mitterand Hold Your Peace Speak John Prince John Princequillo
Not Afraid
Nuit de Folies Tornado
Folle Nuit
Blue Moon Eight Thirty Pilate
Dinner Time
Blue Grail Blue Larkspur
Ample
Laredo Lass Bold Ruler Nasrullah Nearco
Mumtaz Begum
Miss Disco Discovery
Outdone
Fortunate Isle Ambiorix Tourbillon
Lavendula
Slippy Haltal
Hot Slippers

デピュティミニスターは当馬の項を参照。

母ミッテランは現役成績17戦6勝。ラカナダS(米GⅠ)・レイルバードS(米GⅢ)・エルエンシノS(米GⅢ)・ラブレアS(米GⅢ)に勝利した活躍馬だった。ミッテランの祖母フォーチュネイトアイルはミレイディHの勝ち馬で、フォーチュネイトアイルの半妹スリップオーサティンの孫にはアナザーリーフ【ヴォスバーグS(米GⅠ)】がいるが、ミッテランの近親でGⅠ競走を勝ったのはアナザーリーフのみであり、牝系としてはいまいちである。フォーチュネイトアイルの7代母イントレピッドは、ベルモントS・ウィザーズ・トラヴァーズSを勝ち種牡馬としても成功したサーディクソンの半妹だが、この2頭は19世紀の馬である。→牝系:F4号族③

母父ホールドユアピースは現役成績39戦11勝。アーリントンワシントンフューチュリティS・フラミンゴSなどを勝っている。種牡馬としてはBCジュヴェナイルの勝ち馬サクセスエクスプレスやアーリントンワシントンフューチュリティSの勝ち馬メドウレイクなど仕上がり早いスピード馬を多く出した。メドウレイクが後継種牡馬として成功している。ホールドユアピースの父スピークジョンはスペンドアバックの項を参照。

競走馬引退後

競走馬を引退した本馬は米国ケンタッキー州スリーチムニーズファームで種牡馬入りした。本馬の名が高まったのは米国よりもむしろ日本であった。外国産馬として輸入された初年度産駒のノボジャックや2年目産駒のクロフネが2歳戦で活躍したため、クロフネがまだ2歳時の2000年暮れに、早くも社台グループにより購入された。クロフネやノボジャックがGⅠ競走を含めて重賞を何勝もしたのは翌年の事であり(つまり本馬の購入決定時期にはまだ2頭とも重賞未勝利馬であった)、さすがに社台グループの目は高かったという事になるだろう。

本馬は2001年から社台スタリオンステーションで種牡馬生活を開始した。2001年の繁殖シーズン開始時点では既にクロフネやノボジャックが本領を発揮し始めており、この年は192頭もの繁殖牝馬を集めた。この年の繁殖シーズン終了後にクロフネがNHKマイルCやジャパンCダートを、ノボジャックがJBCスプリントなどを制したため、本馬の種牡馬人気は不動のものとなった。2年目の2002年は184頭の繁殖牝馬を集めた。この年には米国に残してきた初年度産駒のレフトバンクがエクリプス賞最優秀古馬牡馬に輝いている(ただしレフトバンクは同年中に疝痛のため他界してしまっている)。

日本における初年度産駒は2004年にデビューしたが、これらの馬達も活躍し、同年の新種牡馬ランキングで1位、2歳種牡馬ランキングでもサンデーサイレンスに次ぐ2位となった。翌2005年には豪州にシャトルされたが結果はあまり出なかった。

本馬の産駒は芝とダートとを問わず活躍し、仕上がりは早く勝ち上がり率も悪くない。しかもエイシンデピュティのように古馬になって成長した子や、アドマイヤジュピタのように長距離を克服した子もおり、まさに万能種牡馬である。しかし全日本種牡馬ランキングでベストテン入りしたのは、2007年の6位、2006・08年の8位と3度のみであり、その産駒数と実績からすると少ないような気がする。産駒の獲得賞金上位3頭のうち1位のノボジャックと3位のクロフネが初期の産駒であるため、その当時は日本で走っている産駒がまだ少なかった本馬の全日本種牡馬ランキングベストテン入りには貢献していないのがその理由である(クロフネやノボジャックが最も活躍した2001年の全日本種牡馬ランキングは24位。2位のエイシンデピュティが最も活躍した2008年はベストテン入りしている)。

サンデーサイレンスが2002年に他界したため、一時期は本馬がポストサンデーサイレンスの最有力候補と目されていた。日本における種牡馬生活3年目に当たる2003年は130頭、4年目は122頭、5年目は152頭、6年目は168頭、7年目は83頭、8年目は133頭、9年目は101頭、10年目は104頭、11年目は102頭、12年目の2013年は71頭の交配数であり、ある程度の波はあるが人気種牡馬としての地位を保ち続けていた。しかし最近数年はサンデーサイレンス直子種牡馬や、キングカメハメハ、自身の子クロフネに押されて、産駒成績はどんどん降下してしまっている。2014年の交配数は過去最低の42頭まで減少してしまった。年齢の影響もあるのだろうが、サンデーサイレンスの血の氾濫を少しでも防ぐためにも、もう一頑張りしてほしい。

最近は母の父としてもしばしば名を見かけるようになり、NHKマイルCを勝ったマイネルホウオウや、秋華賞やジャパンCを勝ったショウナンパンドラの母父は本馬である。

主な産駒一覧

生年

産駒名

勝ち鞍

1997

Left Bank

ヴォスバーグS(米GⅠ)・シガーマイルH(米GⅠ)・ホイットニーH(米GⅠ)・トムフールH(米GⅡ)・ディスカヴァリーH(米GⅢ)・ボールドルーラーH(米GⅢ)

1997

Queue

ロングアイランドH(米GⅡ)

1997

ノボジャック

JBCスプリント(GⅠ)・東京盃(GⅡ)・黒船賞(GⅢ)2回・群馬記念(GⅢ)2回・北海道スプリントC(GⅢ)・クラスターC(GⅢ)

1998

Freefourracing

プレステージS(英GⅢ)

1998

Latour

ダヴォナデイルS(米GⅡ)

1998

クロフネ

NHKマイルC(GⅠ)・ジャパンCダート(GⅠ)・毎日杯(GⅢ)・武蔵野S(GⅢ)

1999

Bella Bellucci

アスタリタS(米GⅡ)・カムリーS(米GⅢ)

1999

French Riviera

サラブレッドクラブオブアメリカS(米GⅢ)

1999

French Satin

フロリダオークス(米GⅢ)

1999

Genereux

5月25日大賞(亜GⅠ)

1999

Mayo on the Side

ヒューマナディスタフH(米GⅠ)

1999

True Direction

フォールハイウェイトH(米GⅢ)

2000

First Blush

スペクタキュラービッドS(米GⅢ)

2000

House Party

プライオレスS(米GⅠ)・ナッソーカウンティBCS(米GⅡ)・エンディンH(米GⅢ)

2002

アンブロワーズ

函館2歳S(GⅢ)

2002

エイシンデピュティ

宝塚記念(GⅠ)・金鯱賞(GⅡ)・エプソムC(GⅢ)・京都金杯(GⅢ)

2002

サンアディユ

セントウルS(GⅡ)・アイビスサマーダッシュ(GⅢ)・京阪杯(GⅢ)

2002

ブライトトゥモロー

新潟大賞典(GⅢ)

2002

ライラプス

クイーンC(GⅢ)

2003

アドマイヤジュピタ

天皇賞春(GⅠ)・アルゼンチン共和国杯(GⅡ)・阪神大賞典(GⅡ)

2003

アルーリングボイス

小倉2歳S(GⅢ)・ファンタジーS(GⅢ)

2003

サイレントプライド

ダービー卿チャレンジトロフィー(GⅢ)・富士S(GⅢ)

2003

ファストシャラポワ

秋桜賞(SPⅠ)

2003

フレンドシップ

ジャパンダートダービー(GⅠ)

2004

アドマイヤダンク

吉野ヶ里記念(KJ2)

2004

ピンクカメオ

NHKマイルC(GⅠ)

2005

エイシンフレンチ

東海菊花賞(SPⅠ)・東海金杯(SPⅠ)

2005

メイショウベルーガ

日経新春杯(GⅡ)・京都大賞典(GⅡ)

2005

レジネッタ

桜花賞(GⅠ)・福島牝馬S(GⅢ)

2006

Better than Ever

アワプニ金杯(新GⅡ)

2007

メイショウツチヤマ

黒潮マイルCS(高知)

2008

トミケンヒーロー

赤レンガ記念(H2)

2010

サウンドトゥルー

東京大賞典(GⅠ)・日本テレビ盃(GⅡ)

2010

ノボリディアーナ

府中牝馬S(GⅡ)

2010

ハカタドンタク

やまびこ賞(水沢)・はまなす賞(盛岡)・オパールC(盛岡)

2011

カラダレジェンド

京王杯2歳S(GⅡ)

2012

ルージュロワイヤル

ヒダカソウC(H3)

2012

ロールボヌール

若駒賞(盛岡)・南部駒賞(水沢)・岩手ダービーダイヤモンドC(盛岡)

2013

リンダリンダ

サッポロクラシックC(H2)・イノセントC(H3)

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