プライズド

和名:プライズド

英名:Prized

1986年生

黒鹿

父:クリスエス

母:マイタービュレントミス

母父:マイダッドジョージ

BCターフを芝競走初出走で制した史上唯一の馬としてだけでなく、スワップスSでサンデーサイレンスに黒星をつけた事でも知られる

競走成績:2~5歳時に米加で走り通算成績17戦9勝2着2回3着3回

誕生からデビュー前まで

米国フロリダ州メドウブルックファームの生産馬で、クローバーレーシングステーブルとメドウブルックファームの共同名義で競走馬となり、カリフォルニア州の新進気鋭の調教師ニール・ドライスデール師に預けられた。主戦はエディ・デラフーセイ騎手が務めた。

競走生活(2・3歳時)

2歳10月にフロリダ州コールダー競馬場で行われたダート7ハロンの未勝利戦でデビューして3/4馬身差の2着。この2週間後に出走した同コースの未勝利戦では首差の2着。なかなか勝ち切れなかったが、距離が8.5ハロンに伸びた未勝利戦を8馬身半差で圧勝して勝ち上がった。さらに暮れのダート9ハロンの一般競走も8馬身差で圧勝して、2歳時の成績を4戦2勝とした。

3歳時は正月明けのトロピカルパークダービー(米GⅡ・D9F)に出走したが、ラフンタンブルSの勝ち馬ビッグスタンリー、タイロSの勝ち馬アピーリングプレジャーの2頭に敗れて、ビッグスタンリーの7馬身3/4差3着に敗退。

この後フロリダ州からドライスデール師の本拠地カリフォルニア州に移動して、3月にサンタアニタパーク競馬場で行われたブラッドベリ―S(D9F)に出走した。このレースでは2着カロラヴァーに1馬身3/4差で勝利して、ステークス競走勝ち馬となった。

その後はしばらくレースに出ず、7月のシルヴァースクリーンH(米GⅡ・D9F)で復帰した。しかし前走のシネマHを勝ってきたレイズアスタンザの2馬身1/4差3着に敗退した。

次走のスワップスS(米GⅡ・D10F)では、レイズアスタンザ、前走シルヴァースクリーンHで2着だったブロークザモールド、カリフォルニアダービーの勝ち馬エンドウに加えて、ケンタッキーダービー・プリークネスS・サンタアニタダービー・サンフェリペHの勝ち馬サンデーサイレンスも参戦してきた。サンデーサイレンスは1か月前のベルモントSで宿敵イージーゴアに8馬身差をつけられて米国三冠馬の大魚を逃していたが、このレースでは当然のように単勝オッズ1.2倍の1番人気に支持されていた。本馬は単勝オッズ6倍の2番人気で、前走で先着を許したレイズアスタンザやブロークザモールドより人気を集めた。

出走頭数が少なかったためにレースは出走全馬が一団となって進んだ。最初のコーナーを回ったところでサンデーサイレンスが先頭に立つと、徐々に馬群が縦長になっていった。その中で本馬は5頭立ての4番手につけていた。三角に入ったところでサンデーサイレンスが加速して後続を引き離しにかかると、本馬も加速して2番手に上がり、サンデーサイレンスの追撃を開始。しかし直線に入った時点ではサンデーサイレンスとの差は4馬身程度あり、しかもその差はなかなか縮まらなかったため、サンデーサイレンスが押し切って勝つと誰もが思った。しかし残り1ハロンを切ったところからサンデーサイレンスが急にもたもたし始め、逆に本馬はエンジンに火が点いたかのようにラストスパートを開始。一瞬にしてサンデーサイレンスとの差を逆転すると、3/4馬身差をつけて勝利した。斤量はサンデーサイレンスより本馬のほうが6ポンド軽かったが、サンデーサイレンスと3着エンドウの差は10馬身あり、本馬が他馬を凌駕する走りを見せたのは間違いなかった。

その後は加国ウッドバイン競馬場に向かい、モルソンエクスポートミリオン(D10F)に参戦。2着チャーリーバーリーに半馬身差をつけて勝利した。さらに米国東海岸に向かい、ジョッキークラブ金杯(米GⅠ・D12F)に出走した。このレースには、ベルモントS・カウディンS・シャンペンS・ウッドメモリアルS・ホイットニーH・トラヴァーズS・ウッドワードSを勝っていたサンデーサイレンスの宿敵イージーゴア、フロリダダービー・ペガサスH・ドンH・ワイドナーH・エヴァーグレーズS・ホーソーン金杯2回・パターソンHを勝っていたクリプトクリアランス、ブルックリンH・エクセルシオールH・ナッソーカウンティHを勝っていたフォーエヴァーシルヴァーなどが出走していた。サンデーサイレンスに勝った経験がある本馬なのだから、そのサンデーサイレンスの好敵手イージーゴアに勝っても不思議ではなかったのだが、全く相手にならず、勝ったイージーゴアから24馬身1/4差をつけられた4着と大敗してしまった。

BCターフ

その後はデビューの地フロリダ州にあるガルフストリームパーク競馬場に赴き、ブリーダーズカップに参戦した。しかしイージーゴアとサンデーサイレンスが出走を表明していたBCクラシックではなく、BCターフ(米GⅠ・T12F)の方にエントリーした。対戦相手は、ハイアリアターフカップH・ボーリンググリーンH・ソードダンサーHとこの年にGⅠ競走3勝を挙げて前走ターフクラシックで2着してきたエルセニョール、前走の凱旋門賞でキャロルハウスの2着してきたサンタラリ賞の勝ち馬ベヘーラ、バドワイザー国際S・ローレンスリアライゼーションSなど4連勝で臨んできたカルテック、アーリントンミリオンでステインレンの2着していた仏オークス馬レディインシルヴァー、英国際S・ロジャーズ金杯の勝ち馬でコロネーションC2着・英チャンピオンS3着のイルドシプル、前年にマンノウォーS・ターフクラシックS・バドワイザー国際SとGⅠ競走を3連勝してエクリプス賞最優秀芝牡馬に選ばれた前年の同競走2着馬サンシャインフォーエヴァー、ロスマンズ国際S・セネカHを勝ってきたホッジズベイ、ノネット賞の勝ち馬でヴェルメイユ賞2着のシエラロベルタ、デューハーストSの勝ち馬シーニック、ルイジアナダウンズHの勝ち馬でサンフアンカピストラーノ招待H2着のプレザントヴァラエティ、ローレンスアーマーHの勝ち馬グリーンバーブ、マンハッタンH2回・レキシントンS・ニュージャージーターフクラシックの勝ち馬ミレシアス、ロワイヤルオーク賞・アルクール賞・エヴリ大賞・フォワ賞の勝ち馬でガネー賞2着のスターリフトの計13頭だった。エルセニョールが単勝オッズ4.4倍の1番人気、ベヘーラが単勝オッズ4.8倍の2番人気、カルテックが単勝オッズ5.2倍の3番人気、レディインシルヴァーが単勝オッズ7倍の4番人気、イルドシプルが単勝オッズ7.4倍の5番人気と続き、芝競走を走るのはこれが初めてだった本馬は単勝オッズ9.8倍の6番人気だった。

スタートが切られるとイルドシプルが先頭に立ち、カルテックが2番手、グリーンバーブが3番手で、本馬は前3頭を見るように4~5番手につけた。半マイルの通過は48秒6、6ハロンの通過が1分13秒4であり、かなりのスローペースとなった。そのために向こう正面の段階で後方待機馬勢が加速してきて、それを察知した前の馬達も追いつかれまいと加速して、典型的な上がりの競馬となった。直線に入ったところでカルテックがイルドシプルをかわして先頭に立ったが、そこへ直後から本馬とシエラロベルタの2頭が叩き合いながら伸びてきた。残り半ハロン地点でカルテックを抜き去ると、最後はシエラロベルタを頭差の2着に抑えて優勝。

初芝の馬がBCターフを勝ったのは2015年現在、これが唯一の例である(BCターフが芝の初勝利だったというのもこれが唯一の例である)。なお、BCターフだけでなくスワップスSも賞金総額100万ドル以上の競走だったが、同一年に芝とダートの両方で100万ドル競走を勝ったのは本馬が史上初だった。3歳時の成績は7戦4勝だった。

競走生活(4歳時)

4歳時は3月のアーケイディアH(米GⅢ・T8F)から始動した。過去にマイル以下の距離で勝った事が無かった本馬だが、2着ハッピートスに1馬身差で勝利した。

次走のサンルイレイS(米GⅠ・T12F)では、前年のBCターフ7着から直行してきたエルセニョール、ノーフォークS・セクレタリアトS・オークツリー招待H・デルマーダービーの勝ち馬で前年のジャパンCにも参戦した芝12ハロンの世界レコードホルダー・ホークスター、サンルイレイS・ハリウッドターフカップS・ゴールデンゲートH・サンルイオビスポHの勝ち馬でバドワイザー国際S・サンアントニオH・サンセットH・カールトンFバークHと4度のGⅠ競走2着があったフランクリーパーフェクトとの対戦となった。スタートが切られるとホークスターが先頭に立ち、徐々に後続を引き離して、最大で7~8馬身差をつける大逃げを打った。フランクリーパーフェクトが2番手で、本馬はさらに4馬身ほど後方の3~4番手につけた。三角に入ったところで各馬の差が縮まってきたが、それでもホークスターが先頭を維持したまま直線に入ってきた。直線では逃げるホークスターと、叩き合いながら追撃する本馬とフランクリーパーフェクトによる三つ巴の戦いとなったが、フランクリーパーフェクトを競り落とした本馬がゴール前でホークスターをかわして3/4馬身差で勝利した。

その後は5か月間レースに出ず、9月のアーリントンミリオン(米GⅠ・T10F)に出走した。対戦相手は、前年のBCマイル・アーリントンミリオンを筆頭にバーナードバルークH・ハリウッドパークターフH・イングルウッドH2回・エルリンコンH・シーザーズ国際Hなどを勝っていた前年のエクリプス賞最優秀芝牡馬ステインレン、ボーリンググリーンH・タイダルHを勝っていた前年の加国三冠馬ウィズアプルーヴァル、ニエル賞・ジョンヘンリーHの勝ち馬でサンクルー大賞2着のゴールデンフェザント、サンルイレイS4着後にソードダンサーHの2連覇を果たしてきたエルセニョール、伊共和国大統領賞・ミラノ大賞・カールトンFバークHとGⅠ競走3勝を挙げていたアルワウーシュ、アーリントンHを勝ってきたプレザントヴァラエティ、ベイメドウズH・エルクホーンS・ETターフクラシックS・ニューハンプシャースウィープSなどの勝ち馬テンキーズ、ロングフェローHの勝ち馬ダブルブックド、ノーフォークS・エディリードHの勝ち馬サラトガパッセージ、アメリカンHの勝ち馬クラシックフェイムだった。本馬が単勝オッズ3倍の1番人気に支持され、ステインレンが単勝オッズ5倍の2番人気、ウィズアプルーヴァルが単勝オッズ5.5倍の3番人気、ゴールデンフェザントが単勝オッズ6倍の4番人気となった。本馬は馬群の中団を追走したが、三角から四角にかけて全く反応が無く、直線入り口10番手から1つも順位を上げられずに、勝ったゴールデンフェザントから11馬身3/4差をつけられた10着と惨敗した。この後に再び長期休養に入り、4歳時の成績は3戦2勝となった。

競走生活(5歳時)

5歳時は4月にハリウッドパーク競馬場で行われた芝9ハロンの一般競走で復帰した。ここでは単勝オッズ1.6倍の1番人気に支持されると、2番手追走から、逃げるショティシェをゴール直前で差し切って鼻差で勝利した。

次走のハリウッドターフH(米GⅠ・T10F)では、前年のBCマイル2着後にハリウッドダービー・ハリウッドターフCを勝ってエクリプス賞最優秀芝牡馬に選ばれたイッツオールグリークトゥミー、シューメーカーHを勝ってきたエクスボーンとの対戦となった。イッツオールグリークトゥミーが単勝オッズ2.6倍の1番人気、本馬が単勝オッズ2.9倍の2番人気、エクスボーンが単勝オッズ5.3倍の3番人気だった。本馬は6頭立ての3番手を追走したが、後方から来たエクスボーンとイッツオールグリークトゥミーの2頭に差されて、エクスボーンの1馬身1/4差3着に敗れた。

その後は久々のダート戦となるハリウッド金杯(米GⅠ・D10F)に出走した。サンタアニタH・ピムリコスペシャルH・サンカルロスH・サンパスカルH・サンアントニオHの勝ち馬ファーマウェイ、プリークネスS・ホープフルS・サラトガスペシャルS・ジムビームS・ブルーグラスS・ペンシルヴァニアダービーの勝ち馬でケンタッキーダービー・ピムリコスペシャルH2着のサマースコール、ハリウッドターフH2着から直行してきたイッツオールグリークトゥミーなどが主な対戦相手だった。ファーマウェイが単勝オッズ2.4倍の1番人気、サマースコールが単勝オッズ3.1倍の2番人気、本馬が単勝オッズ6.6倍の3番人気となった。しかしレースは単勝オッズ28.4倍の7番人気馬マーケトリーが逃げ切って勝ち、馬群の中団から伸びなかった本馬は9馬身差の6着に敗退。このレースを最後に、5歳時3戦1勝の成績で競走馬を引退した。

血統

Kris S. Roberto Hail to Reason Turn-to Royal Charger
Source Sucree
Nothirdchance Blue Swords
Galla Colors
Bramalea Nashua Nasrullah
Segula
Rarelea Bull Lea
Bleebok
Sharp Queen Princequillo Prince Rose Rose Prince
Indolence
Cosquilla Papyrus
Quick Thought
Bridgework Occupy Bull Dog
Miss Bunting
Feale Bridge Gold Bridge
Tolerate
My Turbulent Miss My Dad George Dark Star Royal Gem Dhoti
French Gem
Isolde Bull Dog
Fiji
Mabekky Skytracer Flares
Borgia
Modest Queen Burgoo King
Belittin
Turbulent Miss Petare Moslem Rustom Pasha
Merrose
Collette Diadoque
Colombine
Behaving Deby Ambehaving Ambiorix
Dentifrice
Dashing Deby Hasteville
Deby

クリスエスは当馬の項を参照。

母マイタービュレントミスは不出走馬で、しかもそれほど活躍馬が出ていない牝系の出身だが、繁殖牝馬としては優秀で、15頭の産駒のうち14頭が競走馬となり、うち13頭が勝ち上がっている。その中には、日本で走った本馬の全弟マチカネアレグロ【アルゼンチン共和国杯(GⅡ)】、半弟エクスプロイト(父ストームキャット)【ケンタッキージョッキークラブS(米GⅡ)・サンヴィンセントS(米GⅡ)・イロコイS(米GⅢ)】などがいる。また、本馬の半妹スコーリング(父ボーズイーグル)の子にはオーヴィルエンウィルバース【サンラファエルS(米GⅡ)】がいる。マイタービュレントミスの半妹アンテイムドスピリット(父グロスホーク)の子にはホーンティング【レアトリートH(米GⅢ)】、孫には日本で走ったエイシンドーバー【京王杯スプリングC(GⅡ)・阪急杯(GⅢ)】がいる。→牝系:F8号族③

母父マイダッドジョージは現役成績24戦8勝。フラミンゴS・フロリダダービーを勝ったが、1番人気に推されたケンタッキーダービーとプリークネスSではいずれも2着だった。マイダッドジョージの父ダークスターは現役成績13戦6勝。ケンタッキーダービーでネイティヴダンサーを破った馬として有名。遡ると51戦23勝を挙げた豪州の名馬ロイヤルジェム、ドーティ、愛ダービー馬ダスター、ソラリオに行きつくかなりマイナーな血統である。

競走馬引退後

競走馬を引退した本馬は、カリフォルニア州カーディフスタッド、ケンタッキー州ディキシアーナファーム、ケンタッキー州スペンドスリフトファームなどで種牡馬生活を送った後に、豪州ウエストヴァージニア州オサリバンファームに移動した。米国ではあまり活躍馬を出せなかったが、豪州では複数のGⅠ勝ち馬を出して活躍した。産駒のステークスウイナーは39頭となっている。2011年頃に種牡馬を引退し、米国の功労馬保護団体オールドフレンズが所有するケンタッキー州のサラブレッド引退馬牧場で余生を過ごしていたが、2014年7月に老衰のため28歳で安楽死の措置が執られた。繁殖牝馬の父としては、BCディスタフやケンタッキーオークスなどを勝っている2014年のエクリプス賞最優秀3歳牝馬アンタパブルと、その半兄であるセクレタリアトSの勝ち馬パディオプラードなど、39頭以上のステークスウイナーを出している。

主な産駒一覧

生年

産駒名

勝ち鞍

1997

Pisces

アップルトンH(米GⅡ)・ルイビルH(米GⅢ)

1997

Prized Gem

ブリスベンC(豪GⅠ)・ケルトキャピトルS(新GⅠ)・プライムミニスターズC(豪GⅡ)

1997

Prized Stamp

バーバラフリッチーH(米GⅡ)

1997

Sale of Century

ローズヒルギニー(豪GⅠ)

1997

Surprize Surprize

新ブリーダーズS(新GⅠ)

1999

Fun House

ブエナビスタH(米GⅡ)

2001

Brass Hat

ドンH(米GⅠ)・オハイオダービー(米GⅡ)・インディアナダービー(米GⅡ)・ニューオーリンズH(米GⅡ)・ルイビルH(米GⅢ)・シカモーS(米GⅢ)

2001

Prize Lady

オークランドC(新GⅠ)2回

2004

Premio Loco

エッティンゲンレネン(独GⅡ)・オイロパマイレ(独GⅡ)・サマーマイルS(英GⅡ)・キヴトンパークS(英GⅡ)・セレブレーションマイル(英GⅡ)・クリテリオンS(英GⅢ)・ウインターダービー(英GⅢ)・プラムスメモリアル(蘇GⅢ)

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