ストリートセンス

和名:ストリートセンス

英名:Street Sense

2004年生

鹿毛

父:ストリートクライ

母:ビダズル

母父:ディキシーランドバンド

BCジュヴェナイル優勝馬として史上初めてケンタッキーダービーも制覇したエクリプス賞最優秀2歳牡馬は種牡馬としても好調なスタートを切る

競走成績:2・3歳時に米で走り通算成績13戦6勝2着4回3着2回

誕生からデビュー前まで

米国ケンタッキー州チェサピークファームにおいて、既に80歳を過ぎていた老馬産家ジェームズ・B・ターフェル氏により生産・所有された。ドバイワールドCの優勝馬ストリートクライの初年度産駒で、母ビダズルにとっても初子だった。管理調教師はかつてアンブライドルドでケンタッキーダービー・BCクラシックを制したカール・ナフツガー師。主戦はカルヴィン・ボレル騎手で、本馬の全競走に騎乗した。

競走生活(2歳時)

2歳7月にチャーチルダウンズ競馬場で行われたダート6ハロンの未勝利戦でデビュー。単勝オッズ8倍の3番人気での出走だった。スタートから馬群の中団後方を追走し、四角で位置取りを上げて追い込むも、単勝オッズ2.5倍の1番人気馬アンブライドルドエクスプレスに4馬身及ばず2着だった。

翌月に出たアーリントンパーク競馬場ダート6.5ハロンの未勝利戦では、単勝オッズ1.7倍の1番人気に支持された。そして2番手追走から直線で抜け出して、2着となった単勝オッズ5.2倍の3番人気馬イジーズヘイローに1馬身1/4差をつけて勝ち上がった。

翌9月のアーリントンワシントンBCフューチュリティ(GⅢ・D8F)では、前走スペクタキュラービッドSを13馬身差で勝ってきたオフィサーロケットが単勝オッズ1.9倍の1番人気に支持されており、本馬は単勝オッズ4.4倍の2番人気となった。レースでは前走と同じく先行策を採り、単勝オッズ6.2倍の3番人気馬ゴットザラストラフに次ぐ2番手で直線を向いた。しかしゴットザラストラフに追いつけず、後方から来たオフィサーロケットに差されて、同着で勝利した前2頭から1馬身3/4差の3着に終わった。このレースは不良馬場で行われており、それに手こずったのが敗因ではとも考えられている。

翌10月に出たブリーダーズフューチュリティ(GⅠ・AW8.5F)では、ホープフルS・バッシュフォードマナーSなど3戦無敗のサーキュラーキー、ハリウッドジュヴェナイルCSS・ベストパルS・デルマーフューチュリティとグレード競走3戦連続2着中のグレートハンター、サンフォードS2着馬トイフルズバーグなどが主な対戦相手となった。サーキュラーキーが単勝オッズ1.4倍の1番人気、グレートハンターが単勝オッズ6.8倍の2番人気で、本馬は単勝オッズ12.9倍の5番人気まで評価を下げていた。今回は後方待機策を採り、四角で位置取りを上げて直線入り口で先頭に立った。しかし直線半ばでグレートハンターに差され、さらにゴール直前でサーキュラーキーにも鼻差かわされて、勝ったグレートハンターから1馬身3/4差の3着に敗れた。

次走はチャーチルダウンズ競馬場で行われたBCジュヴェナイル(GⅠ・D8.5F)となった。対戦相手は、グレートハンター、サーキュラーキー、サンフォードS・シャンペンSの勝ち馬でホープフルS2着のスキャットダディ、ベストパルSの勝ち馬でノーフォークBCS2着のプリンシプルシークレット、ノーフォークBCSの勝ち馬でベストパルS・デルマーフューチュリティ3着のストーメロ、ベルモントフューチュリティS2着馬シーピーウエスト、シャンペンS3着馬ペガサスウインド、ベルモントフューチュリティSの勝ち馬でサラトガスペシャルBCS2着のキングオブザロキシー、ケンタッキーカップジュヴェナイルSを勝ってきたユーディーゲットー、グレイBCSを勝ってきたスキップコード、アーリントンワシントンBCフューチュリティ勝利後に出走したシャンペンSでは5着だったゴットザラストラフ、ブリーダーズフューチュリティで7着だったトイフルズバーグなど13頭だった。サーキュラーキーが単勝オッズ4倍の1番人気に支持され、以下、単勝オッズ4.7倍のスキャットダディ、単勝オッズ7.5倍のプリンシプルシークレット、単勝オッズ8倍のグレートハンター、単勝オッズ10.9倍のストーメロ、単勝オッズ11.2倍のシーピーウエスト、単勝オッズ11.3倍のペガサスウインドと続き、本馬は1番人気のサーキュラーキーと前走で接戦を演じたにも関わらず単勝オッズ16.2倍の8番人気に留まった。

スタートが切られると、最内枠発走の本馬はすぐさま後方に下げて、後方2番手からの追い込み策を選択した。レースはストーメロ、プリンシプルシークレット、スキャットダディなど多くの馬が先陣争いを演じ、それについていけない馬は次々に脱落するサバイバル合戦の様相を呈した。しかし本馬鞍上のボレル騎手は慌てず騒がずに三角に入るまで我慢を続けた。そして三角に入ってからようやく仕掛けると、四角では内側を通って瞬く間に位置取りを上げ、直線に入るところで先頭に並びかけた。そしてそのまま内埒沿いを一気に加速して後続を突き離していった。直線半ばからはボレル騎手が何度も後方を振り返る余裕を見せながら先頭でゴールイン。2着に入ったサーキュラーキーとの着差は同競走史上最大の10馬身差となった(それまでの最大着差は1997年にフェイヴァリットトリックが記録した5馬身半差)。

2歳時の成績は5戦2勝だったが、BCジュヴェナイルの衝撃的な勝利が決め手となり、エクリプス賞最優秀2歳牡馬のタイトルを獲得した。

競走生活(3歳初期)

フロリダ州で冬場を過ごした本馬は、3歳時は3月にフロリダ州タンパベイダウンズ競馬場で行われたタンパベイダービー(GⅢ・D8.5F)から始動した。BCジュヴェナイルの勝ち馬でありながら、122ポンドのトップハンデに加えて、まだファンの信用を完全に得るには至っていなかった事もあったのか、単勝オッズ2.2倍の2番人気での出走となった。単勝オッズ1.7倍の1番人気に支持されていたのは、サムFデーヴィスSの勝ち馬でケンタッキージョッキークラブS2着の実績があった120ポンドのエニーギヴンサタデーだった。

レースでは馬群の中団好位の4番手を追走し、四角で位置取りを上げて直線入り口でエニーギヴンサタデーをかわして先頭に立った。そしてエニーギヴンサタデーとの一騎打ちを鼻差で制して、1分43秒11のコースレコードで勝利した。

その後はケンタッキー州に移動して、ブルーグラスS(GⅠ・AW9F)に出走した。3歳初戦のロバートBルイスSを勝ってきたBCジュヴェナイル3着馬グレートハンター、レムセンS2着・リズンスターS・ルイジアナダービー3着のザンジェロ、ケンタッキージョッキークラブS3着馬ドミニカン、BCジュヴェナイル10着後にシュガーボウルS・サウスウエストSを勝ちルコントS・レベルSで3着していたトイフルズバーグなどが主な対戦相手だった。本馬が単勝オッズ2.1倍の1番人気、グレートハンターが単勝オッズ2.8倍の2番人気、ザンジェロが単勝オッズ8.6倍の3番人気、ドミニカンが単勝オッズ9倍の4番人気となった。

本馬は今回も馬群の中団4番手を追走したが、スローパースの罠に嵌ってしまい、四角で位置取りを上げ切れなかった。それでも直線入り口4番手から末脚を伸ばしたが、本馬をマークするように5番手を走っていたドミニカンに競り負けて鼻差の2着に敗れた。それでも、負けてなお強い内容であるとは評価された。

ケンタッキーダービー

本番のケンタッキーダービー(GⅠ・D10F)では、レベルS・アーカンソーダービーなど3戦無敗のカーリン、前年のBCジュヴェナイルでは4着に終わるもファウンテンオブユースS・フロリダダービーを連勝してきたスキャットダディ、レーンズエンドS・ルコントSの勝ち馬ハードスパン、ウッドメモリアルS・レムセンS・ホーリーブルSの勝ち馬でシャンペンS2着のノービズライクショービズ、ルイジアナダービーを勝ってきたBCジュヴェナイル2着馬サーキュラーキー、タンパベイダービー2着後にウッドメモリアルSで3着してきたエニーギヴンサタデー、サンタアニタダービーを勝ってきたティアゴ、ゴーサムS・イリノイダービーを連勝してきたカウタウンキャット、ドミニカン、前走3着のザンジェロ、同4着のトイフルズバーグ、同5着のグレートハンター、アーカンソーダービーで2着してきたストームインメイ、リズンスターS2着馬アイムアワイルドアンドクレイジーガイ、ハリウッドフューチュリティ2着馬リクイディティ、ロバートBルイスS2着・サンタアニタダービー3着のサムピー、BCジュヴェナイル5着後にハリウッドフューチュリティを勝ちファウンテンオブユースSで2着していたストーメロ、エルカミノリアルダービーの勝ち馬ブワナブル、トロピカルパークダービー・レーンズエンドS2着のセッジフィールドの合計19頭との対戦となった。

1984年にブリーダーズカップが創設されて以降、前年までにBCジュヴェナイル勝ち馬は本馬を除いて22頭誕生していたが、その中でケンタッキーダービーを勝利した馬は1頭も存在しなかった。過去22頭のうちケンタッキーダービーに出走したのは13頭で、最高成績はチーフズクラウンティンバーカントリーの3着。1番人気に支持されたのはこの2頭の他にアラジアンブライドルズソングの合計4頭いたが、アラジは8着、アンブライドルズソングは5着に終わっていた。あまりにもBCジュヴェナイル勝ち馬のケンタッキーダービーにおける成績が悪いため、近年は出走してきても人気にならない場合がほとんどだった。

この嫌なジンクス(ジンクスという言葉は経験則に基づくことが多く、科学的根拠は無いことが多い。しかし今になって振り返ってみれば、過去にケンタッキーダービーに出走したBCジュヴェナイル勝ち馬は、チーフズクラウンやティンバーカントリーなど一部の馬を除けば、ケンタッキーダービー時点で既にピークを過ぎていたと思われるような競走成績に終わった馬ばかりであり、厳密な科学的検証は不可能にしても、ある程度は納得できる結果のような気がする)の存在にも関わらず、本馬は単勝オッズ5.9倍の1番人気に支持された。カーリンが単勝オッズ6倍の2番人気、スキャットダディが単勝オッズ8.2倍の3番人気、ハードスパンが単勝オッズ11倍の4番人気、ノービズライクショービズが単勝オッズ11.4倍の5番人気と続いていた。

このレースは訪米中の英国エリザベスⅡ世女王陛下夫妻も観戦していた。スタートが切られると、ハードスパンが人気薄の馬達に絡まれながらも逃げを打ち、本馬は例によって馬群の最後方に近い位置取りとなった。最初の2ハロン通過が22秒9、半マイル通過が46秒26というやや厳しい流れになったが、向こう正面で単騎逃げに持ち込んだハードスパンは快調に逃げ脚を伸ばした。それでも本馬鞍上のボレル騎手はじっと後方で我慢していた。人気薄だったBCジュヴェナイルのときと異なり、今回は1番人気で、しかも米国競馬の祭典ケンタッキーダービーであるから、ボレル騎手はかなりの勇気を持って我慢していたと思われる。そして今回も三角から四角にかけて内側を通って位置取りを上げていった。2番手集団は非常にごちゃついていたのだが、巧みに馬群の間をすり抜けると、ハードスパンに次ぐ2番手で直線を向いた。そして直線半ばでハードスパンを抜き去ると、後方から追い上げてくる馬もおらず、後はゴールまで走りきるだけだった。2着に粘ったハードスパンに2馬身1/4差、3着に入ったカーリンにはさらに5馬身3/4差をつけて完勝し、BCジュヴェナイル勝ち馬として史上初めてケンタッキーダービー馬となった。また、エクリプス賞最優秀2歳牡馬がケンタッキーダービーを勝ったのも、1979年のスペクタキュラービッド以来28年ぶりのことであった。

アンブライドルド以来17年ぶり2度目のケンタッキーダービー制覇を果たしたナフツガー師は、興奮してアンブライドルドの所有者フランシス・A・ジェンター夫人に抱きついた17年前と同様に、ターフェル氏の老いた身体を腕で包みこんで堅い握手をかわした。

競走生活(3歳後半)

次走のプリークネスS(GⅠ・D9.5F)では、例年と同じくケンタッキーダービーと比べて出走馬の数が激減し、引き続き参戦してきた馬は、本馬、ハードスパン、カーリン、前走6着のサーキュラーキーだけだった。他の出走馬は、BCジュヴェナイル8着後にハッチソンSを勝ちサンタアニタダービーで2着していたキングオブザロキシー、ダービートライアルSの勝ち馬フライングファーストクラス、サプリングS・フェデリコテシオSの勝ち馬エクスチェンジャー、ウィザーズSで2着してきたBCジュヴェナイル6着馬シーピーウエストなどだった。本馬が単勝オッズ2.3倍の1番人気、カーリンが単勝オッズ4.4倍の2番人気、ハードスパンが単勝オッズ5.1倍の3番人気、サーキュラーキーが単勝オッズ7倍の4番人気と、ケンタッキーダービー参戦組が上位人気を占めた。

スタートが切られると、ハードスパンを抑えて単勝オッズ24倍の7番人気馬エクスチェンジャーと単勝オッズ17.6倍の5番人気馬フライングファーストクラスの人気薄2頭が逃げを打ち、カーリンが馬群の中団後方を追走。本馬はカーリンを見るように後方2~3番手を追走した。前走と異なり逃げを打てなかったハードスパンだが、向こう正面で仕掛けて先頭を奪い、そのまま三角へと入っていった。しかしそこに後方からカーリンが追い上げてきて、さらに本馬もカーリンを追うように上がってきた。カーリンより本馬のほうが内側を通ったために、四角途中で本馬がカーリンの前に出て、3番手で直線を向いた。そして前を行くハードスパンをかわしてゴールへと突き進んだが、そこへ後方からカーリンがやって来て叩き合いに持ち込まれた。そして最後は頭差屈して2着に敗れた(3着ハードスパンは4馬身後方)。

これで米国三冠馬の可能性が消えたこともあり、ベルモントSは回避して一時休養に入った。この休養中の6月2日に、ターフェル氏は本馬の種牡馬権利をドバイのシェイク・モハメド殿下に売却したが、本馬が競走馬を引退するまではターフェル氏の名義で走るという契約になっており、ナフツガー師やボレル騎手などの陣営構成も変わる事は無かった。

復帰戦は前走から10週間後のジムダンディS(GⅡ・D9F)となった。2歳時にイロコイS・ケンタッキージョッキークラブSなど3戦全勝の成績を誇るも故障のためこれが3歳初戦だったティズワンダフル、ピーターパンSの勝ち馬でウッドメモリアルS2着のサイトシーイング、プリークネスS4着・ベルモントS5着だったシーピーウエスト、ケンタッキーダービーで20着最下位だったカウタウンキャットなどが対戦相手となった。123ポンドの本馬が単勝オッズ1.35倍の1番人気、119ポンドのティズワンダフルが単勝オッズ5.7倍の2番人気、121ポンドのサイトシーイングが単勝オッズ9.4倍の3番人気、115ポンドのシーピーウエストが単勝オッズ11.5倍の4番人気となった。スタートが切られると単勝オッズ36.75倍の最低人気馬フラッシュストームが先頭に立ち、シーピーウエストが2番手で、本馬は6頭立ての5番手を進んだ。そして後方一捲りで直線入り口に2番手で入ってくると、前を行くシーピーウエストを楽々と差し切り、2着シーピーウエストに1馬身半差、3着サイトシーイングにはさらに3/4馬身差をつけて勝利した。

次走のトラヴァーズS(GⅠ・D10F)では、シーピーウエスト、サイトシーイングくらいしか目立つ対戦相手がいなかった。本馬が前走と同じ単勝オッズ1.35倍の1番人気、サイトシーイングが単勝オッズ5.6倍の2番人気、シーピーウエストが単勝オッズ9.5倍の3番人気となった。スタートが切られると、前走のオプショナルクレーミング競走を6馬身差で圧勝してきた単勝オッズ10.6倍の4番人気馬グラスホッパーが逃げを打ち、本馬は馬群の中団を追走した。そして徐々に位置取りを上げていき、直線入り口で先頭に並びかけた。しかし逃げていたグラスホッパーがここから驚異的な粘り腰を見せたため、2頭の壮絶な叩き合いとなった。後続を10馬身以上引き離す一騎打ちを演じた末に、本馬が半馬身差で競り勝った。ケンタッキーダービーとトラヴァーズSの両競走を制したのは、1995年のサンダーガルチ以来12年ぶりのことだった。

秋はモンマスパーク競馬場で行われるBCクラシックを目指して、ケンタッキーCクラシックS(GⅡ・AW9F)から始動した。対戦相手は、プリークネスS3着後にベルモントS4着・ハスケル招待H2着を挟んでキングズビショップSを勝っていたハードスパン、ケンタッキーカップジュヴェナイルS・アメリカンターフSの勝ち馬でブリーダーズフューチュリティ3着の4歳馬ストリームキャットなど3頭だけだった。120ポンドの本馬が単勝オッズ1.8倍の1番人気、118ポンドのハードスパンが単勝オッズ1.9倍の2番人気、118ポンドのストリームキャットが単勝オッズ7.1倍の3番人気となった。スタートが切られるとハードスパンが逃げを打ち、本馬はハードスパンをマークするように2番手を追走。しかし最後までハードスパンを捕らえきることが出来ず、1馬身1/4差の2着に敗れた。

これでオールウェザーでは3戦全敗となった本馬だが、本番のBCクラシック(GⅠ・D10F)はダート競走であり問題は無かった。対戦相手は、ホイットニーH・ウッドワードS・アーカンソーダービー・オークローンH・リズンスターS・レベルSの勝ち馬でジョッキークラブ金杯2着のローヤーロン、ケンタッキーダービー8着後にドワイヤーS・ハスケル招待H・ブルックリンHと3連勝してきたエニーギヴンサタデー、ベルモントSで牝馬ラグストゥリッチズの2着・ハスケル招待Hでエニーギヴンサタデーの3着に終わるも前走ジョッキークラブ金杯でローヤーロンを破って立て直してきたカーリン、ハードスパン、英2000ギニー・クイーンエリザベスⅡ世S・愛フェニックスS・愛ナショナルS・レイルウェイSの勝ち馬でいったんは種牡馬入りしたが受精率の低さから競走馬に復帰させられていた前年のカルティエ賞最優秀3歳牡馬ジョージワシントン、ケンタッキーダービー7着・ベルモントS3着後に米国西海岸でスワップスBCS・グッドウッドSを連勝してきたティアゴ、サンディエゴH・パシフィッククラシックS・グッドウッドSと連続2着してきたサンフェルナンドSの勝ち馬オーサムジェム、ペガサスH・メドウランズCHの勝ち馬でスティーヴンフォスターH・ホイットニーH・ウッドワードS3着のダイアモンドストライプスの8頭だった。本馬が単勝オッズ3.5倍の1番人気、ローヤーロンとエニーギヴンサタデーが並んで単勝オッズ4.9倍の2番人気、カーリンが単勝オッズ5.4倍の4番人気、ハードスパンが単勝オッズ9.1倍の5番人気となった。

レースはまるで田圃かと思えるような泥だらけの不良馬場で行われた。本馬は好スタートから徐々に下げて後方4番手を追走。馬群を先導したのは例によってハードスパンで、それにジョージワシントン、エニーギヴンサタデー、ローヤーロンなどが絡んで先頭集団を形成。カーリンは本馬をマークするように後方3番手を追走した。向こう正面でカーリンが先に仕掛けて上がっていくと、本馬も遅れまいと仕掛けて上がっていった。そして四角では2頭揃って先頭のハードスパンに詰め寄っていったが、直線に入るとカーリンとハードスパンの2頭が叩き合いながら伸びるのとは対照的に、本馬にはいつもの加速が見られず、前2頭との差はどんどん開いていった。レースは直線半ばでハードスパンを振り切ったカーリンがそのまま完勝し、本馬はゴール前で猛然と追い上げてきた単勝オッズ29.3倍の8番人気馬オーサムジェムにかわされて、カーリンから10馬身1/4差の4着と完敗を喫してしまった。敗因については、重馬場の巧拙が影響したと考えるのが妥当だと思われる。

このレースを最後に3歳時8戦4勝の成績で競走馬を引退。エクリプス賞最優秀3歳牡馬のタイトルは、年度代表馬共々カーリンに奪われてしまった。

血統

Street Cry Machiavellian Mr. Prospector Raise a Native Native Dancer
Raise You
Gold Digger Nashua
Sequence
Coup de Folie Halo Hail to Reason
Cosmah
Raise the Standard Hoist the Flag
Natalma
Helen Street Troy Petingo Petition
Alcazar
La Milo Hornbeam
Pin Prick
Waterway Riverman Never Bend
River Lady
Boulevard Pall Mall
Costa Sola
Bedazzle Dixieland Band Northern Dancer Nearctic Nearco
Lady Angela
Natalma Native Dancer
Almahmoud
Mississippi Mud Delta Judge Traffic Judge
Beautillion
Sand Buggy Warfare
Egyptian
Majestic Legend His Majesty Ribot Tenerani
Romanella
Flower Bowl Alibhai
Flower Bed
Long Legend Reviewer Bold Ruler
Broadway
Lianga ダンサーズイメージ
Leven Ones

ストリートクライは当馬の項を参照。

母ビダズルは現役成績22戦4勝。ビダズルの母マジェスティックレジェンドの半妹ソサエティギャルの子にはモナデモンマ【ヒューマナディスタフS(米GⅠ)】が、マジェスティックレジェンドの半弟には種牡馬として活躍したミスターグリーリー【スペクタキュラービッドBCS(米GⅢ)・スウェイルS(米GⅢ)・ラファイエットS(米GⅢ)・2着BCスプリント(米GⅠ)】がいる他、マジェスティックレジェンドの従姉妹の子には2009年の英愛首位種牡馬デインヒルダンサー【愛フェニックスS(愛GⅠ)・愛ナショナルS(愛GⅠ)】がいる。

マジェスティックレジェンドの祖母リアンガは、ロベールパパン賞(仏GⅠ)・ジュライC(英GⅠ)・ジャックルマロワ賞(仏GⅠ)・アベイドロンシャン賞(仏GⅠ)・スプリントC(英GⅡ)・モーリスドギース賞(仏GⅢ)など英仏の短距離競走を勝ちまくった名牝。リアンガの姪の子には1998年のエクリプス賞最優秀短距離馬リレイズ【BCスプリント(米GⅠ)】もおり、やや短距離色の強い母系である。→牝系:F22号族②

母父ディキシーランドバンドは当馬の項を参照。

競走馬引退後

競走馬を引退した本馬は、父ストリートクライも繋養されていた米国ケンタッキー州ジョナベルファーム(ダーレー・アメリカ)で種牡馬入りした。初年度の種付け料は7万5千ドルに設定された。また、豪州ダーレー・オーストラリアにもシャトルされ、米国と豪州のいずれでも人気種牡馬となった。初年度産駒からオービーケイを含む7頭のステークスウイナーが出て、種牡馬としてまずまずのスタートを切った。2年目産駒からも5頭のステークスウイナーが登場した。

2013年には日本のダーレージャパンで供用された。ダーレージャパン株式会社の代表取締役社長である三嶋健一郎氏によると、BCジュヴェナイルやケンタッキーダービーの勝ち馬を日本の馬産家達は好むだろうという見込みもあったようで、競走馬として日本に輸入された産駒の成績が良好だったこともあって、日本では144頭もの繁殖牝馬を集めた。

この2013年に米国で複数のGⅠ競走の勝ち馬が登場した事もあり、翌2014年に再びジョナベルファームに戻った。2015年現在の種付け料は3万5千ドルと、当初よりかなり下がっているが、2015年にも複数のGⅠ競走の勝ち馬が出ており、種牡馬成績は決して悪くは無い。父ストリートクライが2014年に他界した事もあり、本馬にかかる期待は一層大きくなっている。

主な産駒一覧

生年

産駒名

勝ち鞍

2009

Aubby K

ヒューマナディスタフH(米GⅠ)・インサイドインフォメーションS(米GⅡ)

2009

Castaway

サウスウエストS(米GⅢ)

2009

Cigar Street

スキップアウェイS(米GⅢ)

2009

Ice Cream Silence

ダブルドッグデアS(米GⅢ)

2009

フリートストリート

エルムS(GⅢ)

2010

La Passe

ブレイザーS(豪GⅡ)・トリスタークS(豪GⅡ)

2010

Politeness

マイヤークラシック(豪GⅠ)・PJベルS(豪GⅢ)・サモンドS(豪GⅢ)・ウイリアムヒルスプリントシリーズヒート2S(豪GⅢ)・ケープグリムビーフS(豪GⅢ)

2010

Unlimited Budget

デモワゼルS(米GⅡ)・フェアグラウンズオークス(米GⅡ)・レイチェルアレクサンドラS(米GⅢ)

2010

Wedding Toast

オグデンフィップスS(米GⅠ)・ベルデイムS(米GⅠ)・ラフィアンS(米GⅡ)・カムリーS(米GⅢ)

2011

Hallowed Crown

ゴールデンローズS(豪GⅠ)・AJCランドウィックギニー(豪GⅠ)・ホバートヴィルS(豪GⅡ)・キンダーガーデンS(豪GⅢ)・ラントゥザローズS(豪GⅢ)

2011

Street Babe

マインシャフトH(米GⅢ)

2011

Sweet Reason

スピナウェイS(米GⅠ)・エイコーンS(米GⅠ)・テストS(米GⅡ)

2011

Tower of Texas

キングエドワードS(加GⅡ)

2012

Callback

ラスヴァージネスS(米GⅠ)

2012

Ocho Ocho Ocho

デルタダウンズジャックポットS(米GⅢ)

2013

Street Fancy

スターレットS(米GⅠ)

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