セイントリアム

和名:セイントリアム

英名:Saint Liam

2000年生

鹿毛

父:セイントバラード

母:クワイエットダンス

母父:クワイエットアメリカン

古馬になって開花しウッドワードS・BCクラシックを連勝してエクリプス賞年度代表馬に輝くも種牡馬入り1年足らずで夭折する

競走成績:3~5歳時に米で走り通算成績20戦9勝2着6回3着1回

誕生からデビュー前まで

米国ケンタッキー州の馬産家エドワード・P・エヴァンズ氏の生産馬である。1歳時にファシグティプトン社が実施したサラトガセールにおいてウィリアム・K・ウォーレン・ジュニア氏と妻のスーザン夫人の代理人マイク・ライアン氏によって購入された。取引額は13万ドル(当時の為替レートで約1510万円)という安値だった。ウォーレン・ジュニア夫妻は本馬をアンソニー・レインステドラー調教師に預けた。

競走生活(3歳時)

デビューはやや遅めで、3歳2月にガルフストリームパーク競馬場で行われたダート7ハロンの未勝利戦だった。名手パット・デイ騎手を鞍上に迎えながらも、単勝オッズ25.8倍で11頭立ての8番人気という低評価だったが、直線入り口6番手から追い上げ、単勝オッズ4.1倍の2番人気だった後のカーターHの勝ち馬ビショップコートヒルに7馬身半差をつけられながらも2着を確保した。

翌月に出たガルフストリームパーク競馬場ダート8.5ハロンの未勝利戦では、単勝オッズ2.6倍の1番人気に支持された。このレースではホセ・サントス騎手を鞍上に、好位追走から直線で抜け出し、後方から追い上げてきた単勝オッズ5.9倍の3番人気馬ベストミニスターを半馬身差の2着に抑えて勝利した。

3戦目は4月のアーカンソーダービー(GⅡ・D9F)となった。ここでは同年暮れのジャパンCダートをフリートストリートダンサーで制覇することになるジョン・コート騎手とコンビを組んだ。対戦相手は、シャムSの勝ち馬マンアマングメン、ギルデットタイムS・スポーツマンズパラダイスSの勝ち馬キャットジーニアス、タンパベイダービーを勝ってきたリージョンオブメリットなどだった。マンアマングメンが単勝オッズ3.6倍の1番人気、キャットジーニアスが単勝オッズ5.1倍の2番人気、リージョンオブメリットが単勝オッズ6.5倍の3番人気となっていた。一方の本馬は単勝オッズ83倍で12頭立て11番人気という低評価だった。そして結果も後方のまま見せ場なく、勝った単勝オッズ56.6倍の10番人気馬サーチェロキーに14馬身3/4差をつけられた7着と大敗した。

5月に出走したチャーチルダウンズ競馬場ダート8.5ハロンの一般競走では、しばらく主戦を務めることになるデイ騎手とコンビを組んだ。レースは単勝オッズ1.5倍という断然の1番人気に支持されていた後のオハイオダービーの勝ち馬ワイルドアンドウィックドが快調に逃げを打ち、単勝オッズ6倍の3番人気だった本馬はそれを追って2~3番手につけた。しかし斤量面に目を向けると、本馬が他馬勢より4~7ポンド重い122ポンドのトップハンデだったのに対して、ワイルドアンドウィックドは最軽量の115ポンドだった。これではさすがに厳しく、最後までワイルドアンドウィックドに追いつけずに2馬身3/4差の2着に終わった。

翌6月に同コースで出走した一般競走では、単勝オッズ1.6倍という断然の1番人気に支持された。そして単勝オッズ4.2倍の2番人気に推されていた4歳馬トラディショナルを9馬身1/4差の2着に切り捨てて逃げ切り、2勝目をマークした。

7月のアイオワダービー(D8.5F)では、イロコイSの勝ち馬シャンパリが単勝オッズ1.5倍の1番人気に支持されており、テン乗りのクレイグ・ペレット騎手が騎乗する本馬は単勝オッズ4.3倍の2番人気となった。しかしレースでは逃げた単勝オッズ6.8倍の3番人気馬エクセシヴプレジャーに追いつけずに、2馬身3/4差の2着に敗退した。斤量はエクセシヴプレジャーのほうが本馬より5ポンド重かったから、言い訳ができない敗戦だった。

生涯最初で最後の芝競走となった8月の米国競馬名誉の殿堂博物館S(GⅡ・T9F)では、ランプライターSを勝ってきた後のターフクラシックS勝ち馬ストロールが単勝オッズ3.65倍の1番人気に支持される一方で、デイ騎手が鞍上に戻ってきた本馬は単勝オッズ12.9倍で11頭立ての6番人気となった。ここでは先行策を採ったものの、直線に入る前に失速して、勝ったストロールから12馬身1/4差をつけられた10着と大敗した。

同月に出走したサラトガ競馬場ダート9ハロンの一般競走では、単勝オッズ6.2倍で9頭立ての3番人気となった。今回は後方からのレースを試みたが、最後まで伸びずに、勝った単勝オッズ9.1倍の4番人気馬イナモラートから7馬身3/4差をつけられた6着と大敗した。

その後、レインステドラー厩舎からリチャード・E・デュトロー・ジュニア厩舎に転厩した。

3か月間の調整期間を経て、12月のアケダクト競馬場ダート8.5ハロンの一般競走で復帰した。ここではマイケル・ルッチ騎手とコンビを組み、単勝オッズ2.45倍の1番人気に支持された。レースでは2~3番手を先行して、四角で先頭に立って押し切るという優等生的な競馬で、2着となった単勝オッズ6.3倍の4番人気馬パリスサンライズに4馬身差をつけて勝利した。しかし3歳時は9戦3勝の成績で、ステークス競走ではほとんど勝負にならなかった。

競走生活(4歳時)

4歳時はまず1月にガルフストリームパーク競馬場で行われたダート8.5ハロンのオプショナルクレーミング競走から始動した(本馬は売却の対象外)。ここでは初騎乗となるエドガー・プラード騎手とコンビを組み、単勝オッズ1.9倍の1番人気に支持された。レースでは序盤は馬群の中団を進み、三角で2番手に上がると直線入り口で先頭に立ち、2着に逃げ粘った単勝オッズ3.8倍の2番人気馬ザレディーズグルームに4馬身差をつけて快勝した。

プラード騎手を主戦に迎えて出走した次走のニューオーリンズH(GⅡ・D9F)では、今まで出走してきたレースとは対戦相手のレベルが段違いだった。前年のケンタッキーダービー・プリークネスSの勝ち馬でウッドメモリアルS2着・ベルモントS・ハスケル招待H・ドンH3着のファニーサイド、ブルーグラスS・ハスケル招待H・ルイジアナダービー・ジェネラスSの勝ち馬でトラヴァーズS2着・ケンタッキーダービー3着のピースルールズ、トラヴァーズS・イリノイダービー・スーパーダービーの勝ち馬でベルモントS2着のテンモストウォンテッド、アケダクトHの勝ち馬で前走ドンH2着のシアトルフィッツ、前年のアーカンソーダービーで本馬を破った後に2戦2勝だったサーチェロキーといったGⅠ競走級の実力馬達が顔を揃えた。120ポンドのテンモストウォンテッドと115ポンドのシアトルフィッツが並んで単勝オッズ3.6倍の1番人気、119ポンドのピースルールズが単勝オッズ4.6倍の3番人気、118ポンドのファニーサイドが単勝オッズ6.4倍の4番人気だった。本馬は8頭立て5番人気ではあったが、114ポンドの最軽量だった影響もあってか、単勝オッズは6.6倍とそれなりに評価されていた。レースはピースルールズがスタートから逃げを打ち、本馬が2番手、ファニーサイドが3番手を追走する展開となった。本馬は直線入り口で先頭のピースルールズに並びかけて叩き合いに持ち込んだが、競り負けて頭差2着に敗れた。それでも3着ファニーサイドには2馬身3/4差をつけており、一線級相手でも戦えることを証明する結果となった。

次走のオークローンH(GⅡ・D9F)では、ピースルールズ、前走6着のサーチェロキー、ジョンBキャンベルBCHを勝ってきたオーレファウンティー、前走エセックスHを勝ってきた一昨年のアーカンソーダービーの勝ち馬プライヴェートエンブレムなど5頭が対戦相手となった。120ポンドのピースルールズが単勝オッズ1.8倍の1番人気、114ポンドの本馬が単勝オッズ2.9倍の2番人気、113ポンドのサーチェロキーが単勝オッズ8.8倍の3番人気、116ポンドのオーレファウンティーが単勝オッズ9.9倍の4番人気となった。今回の本馬はピースルールズのハナを叩いて逃げを打った。本馬とピースルールズの2頭が一時期は後続を10馬身も引き離して先頭争いを演じたが、先に本馬が失速して、ゴール前でオーレファウンティーに首差かわされてしまい、勝ったピースルールズから2馬身1/4差の3着に敗れた。

その後は5か月間の休養を経て9月のウッドワードS(GⅠ・D9F)で復帰した。対戦相手は、圧勝に次ぐ圧勝でヴォスバーグS・トムフールH・フィリップHアイズリンBCHと3連勝中のゴーストザッパー、カナディアンターフH・スキップアウェイHの勝ち馬でサバーバンH2着のニューファンドランド、ベンアリSの勝ち馬で前年のプリークネスSとこの年のピムリコスペシャルH2着のミッドウェイロード、メドウランズカップBCSの勝ち馬でオークローンH・メトロポリタンH2着・ピムリコスペシャルH・ホイットニーH3着のボウマンズバンド、スタイヴァサントH・サルヴェイターマイルHの勝ち馬で前走フィリップHアイズリンBCH2着のプレジデンシャルアフェアー、後のスティーヴンフォスターHの勝ち馬シークゴールドの計6頭だった。ゴーストザッパーが単勝オッズ1.4倍の1番人気、ニューファンドランドが単勝オッズ7.1倍の2番人気、ミッドウェイロードが単勝オッズ9.9倍の3番人気、ボウマンズバンドが単勝オッズ10.1倍の4番人気で、ステークス競走未勝利の上に休み明けでGⅠ競走初挑戦の本馬が単勝オッズ12.7倍の5番人気となった。

スタートが切られると本馬はゴーストザッパーのハナを叩いて先頭を奪った。そこへプレジデンシャルアフェアーやミッドウェイロードも競りかけてきたが、本馬が先頭を死守した。プレジデンシャルアフェアーやミッドウェイロードは徐々に後方に去り、先頭の本馬と2番手のゴーストザッパーのマッチレースの様相を呈した。三角でゴーストザッパーが外側から並びかけてきたが、本馬の手応えも良く、ゴーストザッパーに抜け出させないまま直線に入ってきた。直線では本馬とゴーストザッパーの激しい叩き合いとなったが、ゴール直前でゴーストザッパーが僅かに前に出て勝利した。本馬は首差2着だったが、3着ボウマンズバンドには9馬身1/4差をつけていたし、ゴーストザッパーが次走のBCクラシックを圧勝して21世紀初頭における米国競馬最強馬とまで評価される事を考慮すると、大健闘と言える内容だった。

次走のクラークH(GⅡ・D9F)では、スティーヴンフォスターH・レーンズエンドスパイラルS・ワシントンパークH・ケンタッキーカップクラシックH・ホーソーン金杯H・インディアナダービーの勝ち馬でホイットニーH・パシフィッククラシックS2着・ケンタッキーダービー3着のパーフェクトドリフト、UAEダービー・グッドウッドBCHの勝ち馬ランディーズライアビリティ、ブリーダーズフューチュリティSの勝ち馬ユーロシルヴァー、オークローンH5着後にアクアクHを勝っていたサーチェロキー、この年のスティーヴンフォスターHの勝ち馬コロニアルコロニー、前走4着のシークゴールドなどが対戦相手となった。117ポンドの本馬が単勝オッズ2.2倍の1番人気に支持され、118ポンドのパーフェクトドリフトが単勝オッズ4倍の2番人気、120ポンドのランディーズライアビリティが単勝オッズ5.1倍の3番人気、113ポンドのユーロシルヴァーが単勝オッズ9.8倍の4番人気、116ポンドのサーチェロキーが単勝オッズ11.2倍の5番人気となった。

スタートからランディーズライアビリティが逃げを打ち、本馬は2番手を追走した。そして四角で先頭を奪うと、111ポンドという軽量を利して追い上げてきた単勝オッズ43.2倍の8番人気馬シークゴールドを1馬身1/4差の2着に抑えて勝利を収め、ステークス競走及びグレード競走の初勝利を挙げた。

4歳時の成績は5戦2勝だったが、4回出走したグレード競走で全て3着以内に入っており、その素質を徐々に開花させつつあった。

競走生活(5歳時)

5歳時もやはりガルフストリームパーク競馬場から始動した。しかし始動戦は過去2年とは格が違い、ドンH(GⅠ・D9F)だった。対戦相手は、ホイットニーH・ケンタッキーCクラシックH・コーンハスカーBCHなど5連勝で挑んだ前年のBCクラシックでゴーストザッパーの2着だったロージズインメイ、コールダーダービーの勝ち馬でプリークネスS・ウッドメモリアルS・トラヴァーズS3着のエディントン、本馬と同じく前年のクラークHから直行してきたシークゴールド、ペガサスH・フレッドWフーパーHの勝ち馬でハスケル招待H3着のパイズプロスペクトなど5頭だった。121ポンドのロージズインメイが単勝オッズ2.3倍の1番人気、119ポンドの本馬が単勝オッズ2.8倍の2番人気、114ポンドのエディントンが単勝オッズ4.2倍の3番人気、いずれも114ポンドのシークゴールドとパイズプロスペクトのカップリングが単勝オッズ6.9倍の4番人気となった。

スタートが切られるとロージズインメイが先頭に立ったが、本馬がすぐに競りかけて、この2頭がスタートから先頭争いを演じる展開となった。2頭の先頭争いは四角途中まで続いたが、直線入り口でリードを奪った本馬が2着ロージズインメイに3馬身3/4差をつけてGⅠ競走初勝利を挙げた。なお、ロージズインメイは次に出走したドバイワールドCを制覇することになる。

続いて本馬は米国西海岸に向かい、ドンHから1か月後のサンタアニタH(GⅠ・D10F)に出走した。マリブS・スワップスBCS・ストラブSの勝ち馬でプリークネスS2着のロックハードテン、サンヴィンセントS・サンラファエルSの勝ち馬でサンタアニタダービー2着・ケンタッキーダービー・ハリウッドダービー3着のインペリアリズム、クラークH6着後にサンアントニオHを勝ってきたランディーズライアビリティ、サンパスカルHの勝ち馬コングラッツ、アラバマS・ラブレアS・サンタモニカH・レディーズシークレットBCH・デラウェアオークスの勝ち馬で前年の同競走2着のアイランドファッション、ルイジアナダービー・アーカンソーダービー・スーパーダービーとGⅡ競走2着3回のボレゴ、ネイティヴダイヴァーH・サンガブリエルHの勝ち馬トゥルーリーアジャッジ、デルマーBCHの勝ち馬スーパーブリッツ、名牝セレナズソングの息子グランドリワードなどが対戦相手となった。122ポンドのトップハンデを課せられた本馬が単勝オッズ2.1倍の1番人気、119ポンドのロックハードテンが単勝オッズ4.8倍の2番人気、117ポンドのインペリアリズムが単勝オッズ5.8倍の3番人気、120ポンドのランディーズライアビリティが単勝オッズ8.6倍の4番人気となった。

スタートが切られると、単勝オッズ29.9倍の8番人気馬トゥルーリーアジャッジと、単勝オッズ55.5倍の10番人気馬グランドリワードの人気薄2頭が先手を取り、本馬は3番手を追走した。そして三角で外側を通って上がっていこうとしたが、ここから伸びを欠き、勝ったロックハードテンから4馬身差の6着に敗れた。

敗因は大外枠発走やトップハンデもあっただろうが、管理していたデュトロー・ジュニア師が禁止薬物を使用したとして60日間の調教停止と5千ドルの罰金処分を受けており、一時的にロバート・フランケル厩舎に移動するというトラブルに見舞われていた時期だったことも影響していたのではないかと思われる。

その後は少し間隔を空けて、6月のスティーヴンフォスターH(GⅠ・D9F)に出走した。前年のクラークHで3着だったパーフェクトドリフト、ニューオーリンズH・リズンスターS・ハルズホープHの勝ち馬でシガーマイルH2着のバッジオブシルヴァー、前年のクラークH5着後にスキップアウェイHを勝っていたユーロシルヴァー、前年のウッドワードS7着後にメリーランドミリオンクラシックSを勝ち前走ピムリコスペシャルHで3着していたプレジデンシャルアフェアーなどが対戦相手となった。前走の敗戦と121ポンドのトップハンデにも関わらず本馬が単勝オッズ1.9倍の1番人気に支持され、119ポンドのバッジオブシルヴァーが単勝オッズ4.2倍の2番人気、117ポンドのパーフェクトドリフトが単勝オッズ4.7倍の3番人気、113ポンドのユーロシルヴァーが単勝オッズ13.2倍の4番人気、115ポンドのプレジデンシャルアフェアーが単勝オッズ14.1倍の5番人気となった。

スタートが切られるとプレジデンシャルアフェアーが先頭に立ち、バッジオブシルヴァーが2番手で、本馬は3番手を追走した。そして三角で前を捕まえにかかるという、前走と似たようなレースぶりを展開した。しかし前走と異なり失速することはなく、直線に入ってもしっかりと伸びて、2着ユーロシルヴァーに2馬身3/4差をつける完勝でGⅠ競走2勝目を挙げた。

その後はデュトロー厩舎に復帰し、8月のホイットニーH(GⅠ・D9F)に出走した。リヒタースケイルBCスプリントCS・ダービートライアルS・ウエストヴァージニアダービーの勝ち馬でメトロポリタンH3着のサーシャックルトン、7戦6勝の上がり馬コメンテーター、ハッチソンS・ブルックリンH・バッシュフォードマナーS・タンパベイダービーの勝ち馬ライムハウス、右目を失明していながらもイリノイダービー・レナードリチャーズS・ローンスターダービー・ナショナルジョッキークラブHを勝ちピムリコスペシャルH2着・サバーバンH3着と活躍していたポラーズヴィジョン、ユーロシルヴァーなどが対戦相手となった。トップハンデの122ポンドを課された本馬が単勝オッズ1.7倍の1番人気、115ポンドのサーシャックルトンと116ポンドのコメンテーターのカップリングが単勝オッズ4.2倍の2番人気、117ポンドのライムハウスが単勝オッズ8.7倍の3番人気、117ポンドのポラーズヴィジョンが単勝オッズ10.6倍の4番人気となった。スタートが切られるとコメンテーターが先頭に立ち、本馬は2番手を追走した。コメンテーターは本馬に最大で6馬身程度の差をつける大逃げを打ったが、そのペースはそれほど速くなかった。そのために直線に入ってもコメンテーターは粘り続け、本馬は猛追及ばず首差の2着に敗れてしまった(3着馬サーシャックルトンには9馬身差をつけていた)。

次走は、前年は惜しくも勝てなかったウッドワードS(GⅠ・D9F)となった。出走馬は本馬を含めて僅か5頭であり、しかも本馬を含む3頭がデュトロー厩舎所属馬(馬主は異なる)で、残りの2頭はコメンテーターとサーシャックルトンだった。前走の敗戦が影響したのか、本馬の鞍上はプラード騎手から当時48歳の大ベテランであるジェリー・ベイリー騎手に乗り代わっていた。本馬が単勝オッズ1.4倍の1番人気、コメンテーターとサーシャックルトンのカップリングが単勝オッズ2.45倍の2番人気、特筆できる実績が無いショウブートとクラフティプレイヤーのカップリングが単勝オッズ14.7倍の3番人気となった。

スタートが切られるとコメンテーターが逃げを打ち、ショウブートとクラフティプレイヤーの2頭がそれに絡んで先頭争いを展開。今までは逃げ先行のレースぶりが多かった本馬だが、ここでは前3頭の争いを見るように、3馬身ほど離れた4番手を追走した。そして三角から外側を通って上がっていき、四角途中で先頭に立った。直線では唯一、道中はぽつんと最後方を走っていたサーシャックルトンがコメンテーターを12馬身以上引き離して追いすがってきたが、その追撃を2馬身差で完封して勝利した。

BCクラシック

ベルモントパーク競馬場で行われたBCクラシック(GⅠ・D10F)が引退レースとなった。本馬が惨敗したサンタアニタH3着後にハリウッド金杯で2着してさらにパシフィッククラシックS・ジョッキークラブ金杯を連勝してきた上がり馬ボレゴ、トラヴァーズS・レーンズエンドS・ジムダンディSの勝ち馬でアーカンソーダービー・ドワイヤーS2着のフラワーアレイ、サンディエゴHを2連覇した他にドバイワールドCでロージズインメイの3着という実績があったチョクトーネイション、スティーヴンフォスターH3着後にワシントンパークHを勝ちパシフィッククラシックSで2着していたパーフェクトドリフト、サラトガBCH・ノーザンダンサーSの勝ち馬で前走ジョッキークラブ金杯2着のスワーヴ、タンパベイダービー・レナードリチャーズS・ペンシルヴァニアダービーの勝ち馬でハスケル招待H2着・BCジュヴェナイル・ジョッキークラブ金杯3着のサンキング、サーシャックルトン、ホーソーン金杯Hを勝ってきたスーパーフローリックといった地元米国馬勢に加えて、国外からも、豪州でチッピングノートンS・オーストラリアンダービー・マッジウェイパーツワールドS・ストーニーブリッジSとGⅠ競走4勝を挙げた後に英国に移籍してムーランドロンシャン賞・クイーンエリザベスⅡ世Sを勝っていたスタークラフト、ジャンリュックラガルデール賞・エクリプスS・愛チャンピオンS・愛フューチュリティSなどの勝ち馬で愛フェニックスS・デューハーストS・愛2000ギニー2着のオラトリオ、マクトゥームチャレンジR2の勝ち馬でドバイワールドC4着のジャックサリヴァン、加プリンスオブウェールズS・ブリーダーズS・ドミニオンデイH・チャイニーズカルチュアルセンターS・スカイクラシックHの勝ち馬でクイーンズプレート2着の加国調教馬アビットオーゴールドといった馬が参戦してきて、本馬を含めて合計13頭による戦いとなった。

本馬が単勝オッズ3.4倍の1番人気、ボレゴが単勝オッズ3.6倍の2番人気、スタークラフトが単勝オッズ9.5倍の3番人気、オラトリオが単勝オッズ10.4倍の4番人気、フラワーアレイが単勝オッズ11倍の5番人気となった。

スタートが切られると、単勝オッズ31.5倍の9番人気馬サンキングが内枠を利して先頭に立ち、スワーヴが2番手、フラワーアレイが3番手を追走。一方の本馬は、スタート直後にコーナーに入るベルモントパーク競馬場ダート10ハロンのコース形態からして不利な外枠発走だったため、ベイリー騎手は無理に先行せずにスタート直後は前3頭から離れた好位4番手につけた。三角手前で後続馬勢が加速して押し寄せてくると、本馬も一緒に加速しながら三角に入り、四角で外側から前3頭に並びかけていった。そして直線を向くとすぐに先頭に立ち、内側で粘るフラワーアレイとの叩き合いとなった。フラワーアレイがかなりの粘りを発揮し、一時は本馬を差し返すかという場面もあったが、ゴール前でようやく本馬が前に出て、2着フラワーアレイに1馬身差で優勝して有終の美を飾った。

なお、レース後に「これが私にとって最後のブリーダーズカップとなるでしょう」とコメントしたベイリー騎手も、翌年1月に30年以上に及ぶ騎手生活に終止符を打って引退している。

5歳時6戦4勝の成績を残した本馬は、プリークネスSとベルモントSを制した3歳馬アフリートアレックスを194票対56票で抑えてエクリプス賞年度代表馬を、メトロポリタンHを圧勝したゴーストザッパーを250票対5票で抑えて最優秀古馬牡馬を受賞した。ウッドワードSとBCクラシックを連勝して年度代表馬に選ばれたのは前年のゴーストザッパーと同じだった。

血統

Saint Ballado Halo Hail to Reason Turn-to Royal Charger
Source Sucree
Nothirdchance Blue Swords
Galla Colors
Cosmah Cosmic Bomb Pharamond
Banish Fear
Almahmoud Mahmoud
Arbitrator
Ballade Herbager Vandale Plassy
Vanille
Flagette Escamillo
Fidgette
Miss Swapsco Cohoes Mahmoud
Belle of Troy
Soaring Swaps
Skylarking
Quiet Dance Quiet American Fappiano Mr. Prospector Raise a Native
Gold Digger
Killaloe Dr. Fager
Grand Splendor
Demure Dr. Fager Rough'n Tumble
Aspidistra
Quiet Charm Nearctic
Cequillo
Misty Dancer Lyphard Northern Dancer Nearctic
Natalma
Goofed Court Martial
Barra
Flight Dancer Misty Flight Princequillo
Grey Flight
Courbette Native Dancer
Gallorette

父セイントバラードは2・3歳時に米で走り通算成績9戦4勝2着2回。加国の名馬産家エドワード・P・テイラー氏の生産馬であり、1980年のエクリプス賞最優秀古馬牝馬グローリアスソングや1983年のエクリプス賞最優秀2歳牡馬デヴィルズバッグの全弟という良血馬。その血統の良さから期待されたが、2歳時は1戦未勝利。3歳初戦で初勝利を挙げ、3月に2勝目を挙げたが、ジムビームS(米GⅡ)・ブルーグラスS(米GⅡ)と見せ場無く敗れたためにケンタッキーダービーは断念。裏路線に向かうと、シェリダンS(米GⅢ)・アーリントンクラシックS(米GⅡ)と連続圧勝して、ようやく素質を開花させた。しかしGⅠ競走初挑戦にも関わらず1番人気に支持されたハスケル招待H(米GⅠ)で4着に終わり、そのまま現役引退となった。

引退後は米国フロリダ州で種牡馬入りした。1997年に、初年度産駒のキャプテンボジットがフロリダダービー・ウッドメモリアルSを制する活躍を見せたことと、グローリアスソングの子でセイントバラードにとっては甥に当たるシングスピールが前年のジャパンCを優勝したため、同年に日本へ輸入される事が検討された。しかし米国で受けていた予防接種のワクチンが日本の検疫条項に抵触したため、実現しなかった。翌1998年に米国ケンタッキー州テイラーメイドファームに移動して種牡馬生活を続けた。種牡馬入り当初は2500ドルだった種付け料は最盛期には12万5千ドルまで達したが、2002年に脊髄症を発症。術後の経過が思わしくなかったため、同年10月に13歳の若さで安楽死の措置が執られた。死後の2005年になって、残された産駒である本馬とアシャドの大活躍により、北米首位種牡馬に輝いた。

母クワイエットダンスは2~4歳時に米で走り23戦6勝、ギャラリルSを勝ち、デモワゼルS(米GⅡ)で2着している。特に目立つ競走成績ではなかったが、本馬の半弟コングレッショナルオナー(父フォレストリー)【ベイメドウズダービー(米GⅢ)】、半妹クワイエットジャイアント(父ジャイアンツコーズウェイ)【モリーピッチャーS(米GⅡ)】を産むなど、繁殖成績は優秀である。本馬の半妹ビーテムバスター(父オナーアンドグローリー)の子にはバスターズレディ【マザーグースS(米GⅠ)】が、クワイエットダンスの半妹フォグダンス(父アンブライドルズソング)の子にはローリングフォグ【デルマーフューチュリティ(米GⅠ)】もいる。

クワイエットダンスの母ミスティダンサーは現役成績3戦未勝利だが、その半姉にはミスティギャロア【ヘンプステッドH(米GⅡ)・バーバラフリッチーH(米GⅢ)・ディスタフH(米GⅢ)・ベッドオローゼズH(米GⅢ)・ロングルックH(米GⅢ)】、ミンストレラ【愛フェニックスS(愛GⅠ)・モイグレアスタッドS(愛GⅠ)・チェヴァリーパークS(英GⅠ)】がいる。ミスティギャロアの曾孫にはガブリエルチャールズ【エディリードS(米GⅠ)】が、ミンストレラの子にはミニダー【シカゴBCH(米GⅢ)】、コロニアルミンストレル【シュヴィーH(米GⅡ)・ヒューマナディスタフH(米GⅢ)】がいる。ミスティダンサーの曾祖母は米国競馬史上有数の名牝ギャロレットであり、同じ牝系からは多数の活躍馬が出ているが、その詳細はギャロレットの項を参照してほしい。→牝系:F17号族

母父クワイエットアメリカンは、リアルクワイエットの項を参照。

競走馬引退後

競走馬を引退した本馬は米国ケンタッキー州レーンズエンドファームで種牡馬入りした。初年度の種付け料は5万ドルに設定された。本馬の活躍などにより前年の北米首位種牡馬に輝きながら、その3年前に既に他界していた父セイントバラードの後継種牡馬として期待され、初年度から115頭の繁殖牝馬を集めた。

ところが種付けシーズン終了後の2006年8月、牧場内を移動中に何故か興奮状態となり立ち上がってバランスを崩した拍子に左後脚の脛骨を粉砕骨折してしまった。そして搬送先のルード&リドル馬病院において予後不良と診断され安楽死の措置が執られた。享年6歳という若さだった。死後の2007年に、所有者だったウォーレン・ジュニア夫妻の寄付により改築されたインディアナ州ノートルダム大学のヘルスセンターが、本馬の名を冠してセイントリアムと命名された。

残された産駒は1世代96頭だけだったが、その中からハヴァードグレイスが出た。ハヴァードグレイスは牝馬ながらウッドワードSで父娘制覇を果たし、さらに父に続いてエクリプス賞年度代表馬にも選出された。父娘でエクリプス賞年度代表馬に選ばれたのは史上2組目(1組目はセクレタリアトレディーズシークレット)の快挙だった。

主な産駒一覧

生年

産駒名

勝ち鞍

2007

Buddy's Saint

ナシュアS(米GⅡ)・レムセンS(米GⅡ)

2007

Havre de Grace

アップルブロッサムH(米GⅠ)・ウッドワードS(米GⅠ)・ベルデイム招待S(米GⅠ)・コティリオンS(米GⅡ)・アゼリS(米GⅢ)・オービアS(米GⅢ)

2007

Liam's Dream

シケーダS(米GⅢ)

2007

Upgrade

ジャイプールS(米GⅢ)

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