和名:バンクスヒル |
英名:Banks Hill |
1998年生 |
牝 |
鹿毛 |
父:デインヒル |
母:ハシリ |
母父:カヤージ |
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BCフィリー&メアターフやジャックルマロワ賞などを制した欧米統一芝女王の意地を見せてロックオブジブラルタルに食い下がり、繁殖牝馬としても活躍中 |
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競走成績:2~4歳時に仏英米で走り通算成績15戦5勝2着5回3着3回 |
誕生からデビュー前まで
サウジアラビアのハーリド・ビン・アブドゥッラー王子が設立したジュドモンドファーム(英国における牧場名はバンステッドマナースタッド)において生産された英国産馬で、アブドゥッラー王子の所有馬として、仏国アンドレ・ファーブル調教師に預けられた。
競走生活(2・3歳時)
2歳10月にメゾンラフィット競馬場で行われたパールキャップ賞(T1400m)で、主戦となるオリビエ・ペリエ騎手を鞍上にデビュー。単勝オッズ1.6倍の1番人気に支持されると、5頭立ての4番手追走から外側を通って追い上げ、残り200m地点で先頭に立って、2着バミューダガールに1馬身半差をつけて勝ち上がった。
2歳時はこの1戦のみで終え、3歳時は4月にシャンティ競馬場で行われたリステッド競走アンジェルヴィユ賞(T1600m)から始動した。ここではクリストフ・スミヨン騎手とコンビを組んだ本馬は、後方からレースを進めたが、勝負どころで前が塞がってしまう不利があった。残り200m地点でようやく外側に持ち出して鋭く追い上げてきたが、勝ったカリスタから3馬身差の4着に終わった。
次走は仏1000ギニー(仏GⅠ・T1600m)となった。マルセルブサック賞の勝ち馬でグロット賞2着のアモニタ、グロット賞を勝ってきたクウォーターノート、ロベールパパン賞・フレッドダーリンSの勝ち馬でモルニ賞3着のロリーポリー、グロット賞3着馬ボーンサムシング、マルセルブサック賞3着馬チョコアイス、ネルグウィンSの勝ち馬リルズジェシー、カリスタなどが対戦相手となった。アモニタが単勝オッズ3.2倍の1番人気に支持されたが、1勝馬である本馬も素質が評価されていたのか、単勝オッズ4.3倍の2番人気に推された。スタートが切られると単勝オッズ5.8倍の3番人気に推されていたテンプティングフェイトが先頭に立ち、ペリエ騎手が騎乗する本馬は馬群の中団、アモニタはそのやや後方につけた。そのままの態勢で直線に入ると、残り400m地点で外側に持ち出して追撃を開始。しかし内側から鋭く伸びてきた単勝オッズ15.7倍の7番人気馬ローズジプシーに頭差屈して2着だった。
次走のサンドリンガム賞(仏GⅡ・T1600m)では、前走で単勝オッズ79倍の13番人気という低評価を覆して本馬から頭差の3着に突っ込んできたリーサルズレディを除けばこれといった強敵がいなかったため、本馬が単勝オッズ2.1倍の1番人気に支持された。ここでは馬群の後方を追走し、10頭立ての9番手で直線に入ると、残り400m地点で仕掛けて豪快に追い込んできた。そして残り100m地点で先頭に立つと、2着となった単勝オッズ10.7倍の4番人気馬リーサルズレディに1馬身半差をつけて快勝した。
続いて英国に向かい、コロネーションS(英GⅠ・T8F)に出走。フィリーズマイルの勝ち馬で愛1000ギニー2着のクリスタルミュージック、英1000ギニー馬アミーラット、仏1000ギニー馬ローズジプシー、ロウザーS・プリンセスマーガレットSの勝ち馬エンシューズド、モイグレアスタッドSの勝ち馬セコイア、仏1000ギニーで4着に逃げ粘ったテンプティングフェイト、チェヴァリーパークS2着・英1000ギニー・愛1000ギニー3着のトロカ、リーサルズレディなどが対戦相手となった。本馬が単勝オッズ5倍の1番人気に支持されたが、もう1頭、本馬と並んで1番人気に支持された馬がいた。それはクリスタルミュージックで、愛1000ギニーでクリスタルミュージックを2着に破って勝ったイマジンがその後の英オークスを勝っていた事もあり、評価を上げていた。そしてアミーラットが単勝オッズ6倍の3番人気、ローズジプシーとエンシューズドが並んで単勝オッズ9倍の4番人気と続いていた。
スタートが切られると今回もテンプティングフェイトが逃げを打ち、クリスタルミュージックはそれを見るように先行。一方の本馬は最後方待機策を採った。そして残り2ハロン地点から馬群を捌きながら追い上げてきた本馬と、残り1ハロン地点で先頭に立って押し切ろうとするクリスタルミュージックの1番人気馬2頭の戦いとなった。しかし本馬がゴール前でクリスタルミュージックを一気に差し切り、1馬身半差をつけて勝利を収めた。
帰国後は、牡馬古馬相手のジャックルマロワ賞(仏GⅠ・T1600m)に出走した。対戦相手は、仏2000ギニーで1位入線失格・デューハーストS・セントジェームズパレスSで2着と不運が続いていたが前走サセックスSを快勝してGⅠ競走の勝ち馬となっていた英シャンペンS・ジュライSの勝ち馬ノヴェール、仏2000ギニーを勝っていた同厩馬ヴァオリミクス、リュパン賞・パリ大賞・トーマブリョン賞の勝ち馬で仏ダービー2着のチチカステナンゴ、ミュゲ賞・ファルマスSを勝ってきたプラウドウイングス、独2000ギニー・ベルリンブランデンブルクトロフィーの勝ち馬ロイヤルドラゴン、レーシングポストトロフィー・パリ大賞3着のボナール、仏1000ギニー5着後に出走したアスタルテ賞でも5着だったアモニタ、コロネーションS4着後に出走したアスタルテ賞でも4着だったリーサルズレディの計8頭だった。ペリエ騎手がヴァオリミクスに騎乗したため、本馬はリチャード・ヒューズ騎手とコンビを組んだ。ノヴェールが単勝オッズ2.8倍の1番人気、本馬が単勝オッズ3.3倍の2番人気、ヴァオリミクスが単勝オッズ4.3倍の3番人気、チチカステナンゴが単勝オッズ8.4倍の4番人気、プラウドウイングスが単勝オッズ16倍の5番人気となった。
レースはプラウドウイングスと単勝オッズ19.4倍の6番人気馬ロイヤルドラゴンが先頭を引っ張り、本馬は例によって馬群の後方を追走した。そして残り400m地点でスパートを開始。脚色は一番良く、差し切る勢いだったのだが、残り50m地点で先頭のプラウドウイングスが左側に斜行して、その煽りを受けて失速。1位入線のプラウドウイングスから1馬身1/4差、2位入線のヴァオリミクスから3/4馬身差の3位入線だった。進路妨害を咎められたプラウドウイングスが失格となったため、ヴァオリミクスが繰り上がって勝利馬となり、本馬が繰り上がって2着となった。
次走のムーランドロンシャン賞(仏GⅠ・T1600m)では、ヴァオリミクス、パリ大賞・ノアイユ賞・ドラール賞・ロシェット賞・ラクープの勝ち馬で一昨年のジャックルマロワ賞3着のスリックリー、ジャンプラ賞の勝ち馬でセントジェームズパレスS3着のオールデンタイムス、デスモンドSを勝ってきたホークアイ、ロッキンジS2着馬ウォーニングフォード、前走で9位最下位入線(8着に繰り上がり)だったリーサルズレディ、サンチャリオットSの勝ち馬ダンスアバウトの計7頭が対戦相手となった。不利が無ければ勝っていたと思われる前走の内容が評価された本馬が単勝オッズ2.5倍の1番人気に支持され、ヴァオリミクスが単勝オッズ3倍の2番人気、スリックリーが単勝オッズ5.3倍の3番人気、オールデンタイムスが単勝オッズ7.6倍の4番人気となった。ペリエ騎手は今回もヴァオリミクスに騎乗したため、本馬は引き続きヒューズ騎手とコンビを組んだ。スタートが切られるとスリックリーが先頭に立って、道中では後続に5馬身ほどの差をつける大逃げを打った。一方の本馬は馬群の中団後方を進んでいた。そして5番手で直線を向くと追い上げてきたが、前走ほどの強烈な切れは無く、残り200m地点で2番手に上がるのが精一杯で、逃げ切ったスリックリーに3馬身届かず2着に敗れた。
その後は米国に遠征して、ベルモントパーク競馬場で行われるブリーダーズカップに参戦。ただし出走したのはBCマイルではなくBCフィリー&メアターフ(米GⅠ・T10F)だった。ビヴァリーDS・ニューヨークHの勝ち馬で前走フラワーボウル招待H2着のイングランズレジェンド、愛オークス・ナッソーS・フラワーボウル招待Hなどこの年7戦全勝の3歳馬レイラニ、ダイアナHの勝ち馬で前走フラワーボウル招待S3着のスタリーン、ロワイヨモン賞の勝ち馬でマルレ賞・EPテイラーSと連続2着してきたヴォルガ、南アフリカのGⅠ競走ガーデンプロヴィンスSを勝った後に米国に移籍してハニーフォックスH・スワニーリヴァーH・ギャラクシーSを勝ちビヴァリーDSで3着していたスプークエクスプレス、ムシドラSの勝ち馬で前年の英オークス2着・前走のビヴァリーヒルズH3着のカリプソケイティー、オペラ賞で2着してきたこの年の愛オークス2着馬モットジャステ、リグレットS・パッカーアップSの勝ち馬ソルヴィグ、クレオパトル賞の勝ち馬で前走EPテイラーS3着のスプリングオーク、コロネーションS2着後に出走したオペラ賞では6着に終わっていたクリスタルミュージックなどが対戦相手となった。イングランズレジェンドが単勝オッズ3.65倍の1番人気、レイラニが単勝オッズ3.75倍の2番人気、スタリーンが単勝オッズ6.4倍の3番人気で、過去のレースはデビュー戦以外全てマイル戦だった本馬は距離不安を指摘されて単勝オッズ7倍の4番人気だった。
鞍上がペリエ騎手に戻っていた本馬は、スタート直後こそやや控え気味だったが、しばらくして内側から位置取りを上げて、逃げるイングランズレジェンドを3~4番手で追いかけるという、今までとは異なる走りを見せた。そして四角に入ると内埒沿いから先頭を奪い、直線に入ると後続を引き離していった。最後は2着に追い込んできたスプークエンプレスに5馬身半差をつける圧勝。事前の距離不安説を完全に消し去った。
3歳時の成績は7戦3勝だったが、その内容が評価されて、カルティエ賞最優秀3歳牝馬とエクリプス賞最優秀芝牝馬のタイトルをダブル受賞した。
競走生活(4歳時)
4歳時も現役を続け、5月のイスパーン賞(仏GⅠ・T1850m)から始動した。対戦相手は、マクトゥームチャレンジR2・ギョームドルナノ賞の勝ち馬だがGⅠ競走では愛チャンピオンSの3着が最高とその能力を出し切れていなかったゴドルフィンの期待馬ベストオブザベスツ、アルクール賞を勝ちガネー賞で2着してきたエグゼキュート、そのアルクール賞で3着だったプッサンの僅か3頭だけだった。本馬が単勝オッズ1.6倍の1番人気、エグゼキュートが単勝オッズ3.6倍の2番人気、ベストオブザベスツが単勝オッズ4.9倍の3番人気、プッサンが単勝オッズ6.6倍の最低人気となった。出走頭数が少ないだけにレースは団子状態で進み、直線の勝負となった。しかし出走馬中唯一休み明けだった本馬はいつもほどの切れ味を発揮することが出来ず、勝ったベストオブザベスツから1馬身半差、2着プッサンから1馬身差の3着に敗れた。
次走のプリンスオブウェールズS(英GⅠ・T10F)では、前走のシンガポール航空国際CでGⅠ競走初勝利を収めてきた前年のエクリプスS・英国際S2着馬グランデラ、英チャンピオンS・ドバイシーマクラシック・ローズオブランカスターS・セレクトS・カンバーランドロッジSの勝ち馬で前走タタソールズ金杯3着のネイエフ、条件ステークスを9馬身差で勝ってきたデザートディール、ロイヤルホイップSの勝ち馬でジャンプラ賞・タタソールズ金杯2着・エクリプスS・愛チャンピオンS・BCマイル3着のバッハ、イスパーン賞で本馬に先着する2着だったプッサン、伊共和国大統領賞・ミラノ大賞の勝ち馬でバイエルン大賞・加国際S・シンガポール航空国際C2着のパオリニ、アールオブセフトンSの勝ち馬で英チャンピオンS3着のインディアンクリークなどが対戦相手となった。本馬が単勝オッズ4.5倍の1番人気、グランデラとネイエフが並んで単勝オッズ5倍の2番人気、デザートディールが単勝オッズ7倍の4番人気、バッハが単勝オッズ8.5倍の5番人気となった。スタートが切られると、グランデラ陣営が用意したペースメーカー役のシデナムが先頭に立ち、本馬は馬群の好位を進んだ。そして残り2ハロン地点で先頭に並びかけようとしたが、最後方から豪快に伸びてきたグランデラに残り1ハロン地点で瞬く間にかわされ、やはり後方から差してきたインディアンクリークにもゴール前で抜かれて、勝ったグランデラから5馬身3/4差の3着に敗れた。
この結果により、牡馬相手の10ハロン路線は諦めて、次走に予定していたエクリプスSは回避。夏場は再びマイル路線を進んだ。
まずは前年に不利を受けて2着だったジャックルマロワ賞(仏GⅠ・T1600m)に出走した。ファルマスSを勝ってきたタシャワク、イスパーン賞勝利後に出走したクイーンアンSでは8着に終わっていたベストオブザベスツ、ジョンシェール賞の勝ち馬で仏2000ギニー2着のメデシス、クレオパトル賞・アスタルテ賞を勝ってきたタートルボウ、後にこの年のBCマイルを勝つシュマンドフェルデュノール賞の勝ち馬ドームドライヴァー、フォンテーヌブロー賞の勝ち馬で仏2000ギニー3着のボウマンなどが対戦相手となった。本馬が単勝オッズ2.7倍の1番人気、タシャワクが単勝オッズ3.4倍の2番人気、ベストオブザベスツが単勝オッズ5倍の3番人気、メデシスが単勝オッズ7.4倍の4番人気、タートルボウが単勝オッズ9倍の5番人気となった。ここでは馬群の中団後方につけると、残り200m地点から鋭く伸びた。そして残り150m地点で先頭に立つと、最後方からの追い込みに賭けた単勝オッズ14.6倍の6番人気馬ドームドライヴァーを1馬身半差の2着に抑えて勝利した。
次走のムーランドロンシャン賞(仏GⅠ・T1600m)では、仏グランクリテリウム・デューハーストS・英2000ギニー・愛2000ギニー・セントジェームズパレスS・サセックスSと6連続GⅠ競走出走6連勝中というロックオブジブラルタルという超強敵が出現した。他にも、イスパーン賞4着最下位以来の実戦となるエグゼキュート、前走6着のボウマン、前年のジャックルマロワ賞で失格になった後に日本のオープン特別キャピタルSを勝ったがそれ以外は今ひとつの成績が続いていたプラウドウイングス、フィリーズマイル・愛1000ギニー・プレステージSの勝ち馬ゴッサマーなどが出走していたが、それらは全て蚊帳の外であり、ロックオブジブラルタルが単勝オッズ1.6倍の1番人気、本馬が単勝オッズ3.4倍の2番人気、エグゼキュートが単勝オッズ15.6倍の3番人気という2強対決となった。
スタートが切られると、ロックオブジブラルタル陣営が用意したペースメーカー役のサハラデザートが先頭を引っ張り、本馬が3番手、ロックオブジブラルタルは5番手につけた。残り400m地点で本馬が仕掛けると、ほぼ同時にロックオブジブラルタルも動いた。残り200m地点で先頭に立った本馬に、ロックオブジブラルタルが並んできて、そして残り100m地点で前に出た。本馬も必死に食い下がったが、半馬身差の2着に敗れ、ロックオブジブラルタルの欧州新記録となる7連続GⅠ競走出走7連勝を許した。しかしレース直前に主戦のペリエ騎手が負傷欠場して急遽ヒューズ騎手に乗り代わっていたというハンデを抱えながらも、歴史的強豪馬を最後まで苦しめた本馬の走りもまた高く評価されることとなった。
その後はBCフィリー&メアターフの連覇を目指して渡米。ファーブル師の進言により、管理は米国のロバート・フランケル調教師にバトンタッチされた。まず前哨戦のイエローリボンS(米GⅠ・T10F)に、コーリー・ナカタニ騎手と共に出走した。デルマーオークス・ビヴァリーDS・ラスパルマスH・サンタアナHの勝ち馬でクイーンエリザベスⅡ世CCS・ラモナH2着のゴールデンアップルズ、ガーデンシティBCH・パロマーH・レイクジョージS・ボーゲイH・ローカストグローヴHの勝ち馬でゲイムリーBCH3着のヴードゥーダンサーの2頭が強敵だった。本馬が単勝オッズ2倍の1番人気に支持され、前走ビヴァリーDSを勝ってきたゴールデンアップルズが単勝オッズ2.4倍の2番人気、前走パロマーHを勝ってきたヴードゥーダンサーが単勝オッズ6.1倍の3番人気となった。
スタートが切られると、ノーチェスデローサ(チリ出身馬で、後にゲイムリーS・サンタアナHを勝っている)とネペンスの伏兵2頭が先頭を引っ張り、ゴールデンアップルズが3番手、ヴードゥーダンサーが4番手、本馬が5番手となった。やがて四角に入って逃げた2頭が遅れ始めると、ゴールデンアップルズが先頭に立ち、それにヴードゥーダンサーが並びかけた。本馬も追い上げようとしたが、下がってきた馬に進路を塞がれてしまい、仕掛けが遅れてしまった。結局、叩き合う前2頭に追いつくことは出来ずに、勝ったゴールデンアップルズから4馬身差、2着ヴードゥーダンサーから3馬身差の3着に敗れた。
この年はアーリントンパーク競馬場で行われた本番のBCフィリー&メアターフ(米GⅠ・T10F)では、ゴールデンアップルズ、ナッソーS・ヨークシャーオークス・ムシドラSの勝ち馬で前走の凱旋門賞であわやの走りを見せて5着していたイズリントン(翌年のBCフィリー&メアターフの勝ち馬)、前走デルマーオークスを勝ってきたダブリーノ、英1000ギニー・英オークス・フラワーボウル招待Hの勝ち馬カッツィア、ムーランドロンシャン賞で3着だったゴッサマー、前年のBCフィリー&メアターフ10着後にメイトリアークSを勝ちゲイムリーBCHで2着していたスタリーン、ジャックルマロワ賞4着後に出走したフラワーボウル招待Hで2着してきたタートルボウ、ニューヨークH・ギャラクシーS・グレンズフォールズHの勝ち馬オウズリー、クイーンエリザベスⅡ世CC・サンズポイントSの勝ち馬でガーデンシティBCH2着のリスカヴァース、この年の仏1000ギニー馬でコロネーションS・クイーンエリザベスⅡ世CC2着のゼンダなどが対戦相手となった。ゴールデンアップルズが単勝オッズ3.8倍の1番人気、連覇がかかる本馬が単勝オッズ4.8倍の2番人気、イズリントンが単勝オッズ5倍の3番人気、ダブリーノが単勝オッズ10.1倍の4番人気、カッツィアが単勝オッズ11.2倍の5番人気となった。
スタートが切られるとカッツィアが逃げて、ジェリー・ベイリー騎手騎乗の本馬は馬群の中団5番手を追走。イズリントンやゴールデンアップルズは後方に控えた。四角では本馬の少し前を走っていたスタリーンが仕掛けてカッツィアに並びかけ、次いで本馬も上がっていった。直線では後方から来たイズリントンやゴールデンアップルズと共に、逃げるスタリーンを追撃。しかし1馬身半届かずに2着に敗れた(3着イズリントン、4着ゴールデンアップルズ、5着ゴッサマーは首差ずつ抑え込んだ)。
目標としていたBCフィリー&メアターフ連覇に失敗したためか、急遽1か月後のメイトリアークS(米GⅠ・T9F)に参戦した。ここにも顔を出してきたゴールデンアップルズに加えて、クイーンエリザベスⅡ世CCS・ラブレアS・ラモナH・ハリウッドオークス・エルエンシノSの勝ち馬でデルマーオークス・アップルブロッサムH・ミレイディBCH・ヴァニティH2着のアフルーエント、サンチャリオットS・デズモンドS・愛メイトロンSの勝ち馬でモイグレアスタッドS2着のドレストゥスリルなどが対戦相手となった。ベイリー騎手騎乗の本馬が単勝オッズ2.3倍の1番人気、ゴールデンアップルズが単勝オッズ2.4倍の2番人気、アフルーエントが単勝オッズ6倍の3番人気、ドレストゥスリルが単勝オッズ8.3倍の4番人気となった。今回の本馬は、逃げるアフルーエントに積極的に絡んで共に先頭を走った。しかし慣れない逃げ戦法が結果的に裏目に出たのか、直線でゴールデンアップルズ、ドレストゥスリル、マジックミッションの3頭に差されて、勝ったドレストゥスリルから1馬身3/4差の4着に敗退。このレースを最後に、4歳時7戦1勝の成績で競走馬を引退した。
なお、本馬が挙げた5勝全てが鞍上ペリエ騎手によるものであり、他の騎手が騎乗したときは7戦未勝利だった。
血統
デインヒル | Danzig | Northern Dancer | Nearctic | Nearco |
Lady Angela | ||||
Natalma | Native Dancer | |||
Almahmoud | ||||
Pas de Nom | Admiral's Voyage | Crafty Admiral | ||
Olympia Lou | ||||
Petitioner | Petition | |||
Steady Aim | ||||
Razyana | His Majesty | Ribot | Tenerani | |
Romanella | ||||
Flower Bowl | Alibhai | |||
Flower Bed | ||||
Spring Adieu | Buckpasser | Tom Fool | ||
Busanda | ||||
Natalma | Native Dancer | |||
Almahmoud | ||||
Hasili | Kahyasi | イルドブルボン | Nijinsky | Northern Dancer |
Flaming Page | ||||
Roseliere | Misti | |||
Peace Rose | ||||
Kadissya | Blushing Groom | Red God | ||
Runaway Bride | ||||
Kalkeen | Sheshoon | |||
Gioia | ||||
Kerali | High Line | ハイハット | Hyperion | |
Madonna | ||||
Time Call | Chanteur | |||
Aleria | ||||
Sookera | Roberto | Hail to Reason | ||
Bramalea | ||||
Irule | Young Emperor | |||
Iaround |
父デインヒルは当馬の項を参照。
母ハシリもジュドモンドファームの生産馬で、競走馬としては仏で走り17戦4勝、リステッド競走サブロネット賞勝ちがある。繁殖牝馬としては10頭の産駒を産んでおり、その戦績と主な勝ち鞍を以下に記す。
初子が2006年の仏首位種牡馬に輝いた本馬の全兄ダンシリ(14戦5勝)【ミュゲ賞(仏GⅡ)・メシドール賞(仏GⅢ)・エドモンブラン賞(仏GⅢ)】、2番子が本馬、3番子が半妹ヒートヘイズ(父グリーンデザート:14戦7勝)【メイトリアークS(米GⅠ)・ビヴァリーDS(米GⅠ)・ラスシエネガスH(米GⅢ)・チャーチルディスタフターフマイルS(米GⅢ)】、4番子が2005年のエクリプス賞最優秀芝牝馬に選ばれた全妹インターコンチネンタル(22戦13勝)【BCフィリー&メアターフ(米GⅠ)・メイトリアークS(米GⅠ)・ジャストアゲームBCH(米GⅡ)・パロマーBCH(米GⅡ)・ギャラクシーS(米GⅡ)・ジェニーワイリーS(米GⅢ)2回・キャッシュコールマイル招待S(米GⅢ)】、5番子が全弟カシーク(18戦7勝)【マンノウォーS(米GⅠ)・マンハッタンH(米GⅠ)・ダニエルウィルデンシュタイン賞(仏GⅡ)・ダフニ賞(仏GⅢ)・シュマンドフェルデュノール賞(仏GⅢ)】、6番子が全弟シャンゼリゼ(28戦6勝)【加国際S(加GⅠ)・ハリウッドターフCS(米GⅠ)・ノーザンダンサーターフS(加GⅠ)・サンマルコスS(米GⅡ)・エドヴィル賞(仏GⅢ)】、7番子が新国で種牡馬入りした半弟レイズザフラッグ(父サドラーズウェルズ:1戦未勝利)、8番子が半妹デラックス(父ストームキャット:9戦4勝)【カーディナルH(米GⅢ)】、9番子が半妹ベリーグッドニュース(父エンパイアメーカー:不出走)、10番子が半妹レスポンシブル(父オアシスドリーム:不出走)である。
7番子以降は今ひとつではあるが、初子が仏首位種牡馬、2番子から6番子までの5頭が全てGⅠ競走勝ち馬という、ハシリの繁殖牝馬としての優秀さは驚異的なほどであり、2006年のケンタッキー州最優秀繁殖牝馬にも選ばれている。
ハシリの母ケラリは自身の直子の競走成績こそ振るわなかったが、孫世代以降はかなり活躍しており、ハシリの半姉ディセンブル(父アホヌーラ)の子にユアピボ【サンパウロ大賞(伯GⅠ)】、2005年のエクリプス賞最優秀芝牡馬ルロワデザニモー【サイテーションH(米GⅠ)・フランクEキルローマイルH(米GⅠ)・アットマイル(加GⅠ)・フォースターデイヴH(米GⅡ)・イングルウッドH(米GⅢ)・モーヴィックH(米GⅢ)】が、ハシリの半姉スカイアブル(父ニニスキ)の子にスリーバレーズ【デルマーBCH(米GⅡ)・コヴェントリーS(英GⅢ)・オーシャンポートS(米GⅢ)】が、ハシリの全妹アライヴの子にプロミシングリード【プリティポリーS(愛GⅠ)・ミドルトンS(英GⅢ)】、ヴィジット【プリンセスマーガレットS(英GⅢ)・オークツリーS(英GⅢ)】が、ハシリの半妹キッドグローヴズ(父インザウイングス)の子にトリートジェントリー【マルレ賞(仏GⅡ)・シープスヘッドベイS(米GⅡ)・ロバートGディック記念H(米GⅢ)】がいる。
ケラリの母スーケラはチェヴァリーパークS(英GⅠ)の勝ち馬で、ケラリの半弟にソーファクチュアル【ナンソープS(英GⅠ)】が、ケラリの半姉リスーカの孫にホークスリーヒル【アーケイディアH(米GⅡ)・エルリンコンH(米GⅡ)】、曾孫にベンバウン【アベイドロンシャン賞(仏GⅠ)】がいる。スーケラの祖母イアラウンドの半姉アイロニカリーの玄孫にはジャイアンツコーズウェイの名前も見られる。→牝系:F11号族②
母父カヤージは当馬の項を参照。
競走馬引退後
競走馬を引退した本馬は、現在米国ジュドモンドファームで繁殖生活を送っている。さすがに母ハシリほど驚異的な繁殖成績ではないが、11歳時に産んだ4番子の牝駒ロマンティカ(父ガリレオ)が、ジャンロマネ賞(仏GⅠ)・ノネット賞(仏GⅡ)・アレフランス賞(仏GⅢ)を勝っており、母としてもしっかりと実績を挙げている。