和名:プレザントリーパーフェクト |
英名:Pleasantly Perfect |
1998年生 |
牡 |
鹿毛 |
父:プレザントコロニー |
母:リーガルステート |
母父:アファームド |
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シガー以来史上2頭目となるBCクラシック・ドバイワールドCのダブル制覇を達成するがエクリプス賞のタイトルには無縁だった無冠の帝王 |
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競走成績:3~6歳時に米首で走り通算成績18戦9勝2着3回3着2回 |
誕生からデビュー前まで
米国ケンタッキー州クローベリーファームの生産馬。1歳時のキーンランドセールにおいて、ダイヤモンド・A・レーシング社により72万5千ドルという高額で購買された期待馬で、数々の名馬を手掛けたカリフォルニア州の名伯楽リチャード・マンデラ調教師に預けられた。高額で取引されただけあって血統も良く、成長すると体高17ハンドに達したバランスが取れた好馬体の持ち主でもあった。
競走生活(3・4歳時)
しかしデビューはかなり遅く、3歳5月にハリウッドパーク競馬場芝8.5ハロンで行われた未勝利戦だった。ブライス・ブランク騎手を鞍上に出走した本馬は、単勝オッズ12倍で10頭立ての7番人気。レースではスタートから他馬から大きく離された最後方に置き去りにされ、直線に入ったところで既に後方2番手の馬からは20馬身もの差が開いていた。そしてブランク騎手の判断で競走中止となり、完走できなかった(勝ったのは単勝オッズ4.9倍の2番人気馬モデストマン)。3歳時はこの1戦のみで終わってしまった。
これで競走馬登録を抹消されても不思議ではなかったのだが、購入金額が高額だったために簡単に諦めるわけにもいかず、4歳時も現役を続けた。
4歳1月にサンタアニタパーク競馬場で行われたダート8.5ハロンの未勝利戦で復帰した。ここでは単勝オッズ17.8倍で7頭立ての6番人気とほぼ無視された存在だった。しかし主戦となるマイク・スミス騎手を鞍上に、好スタートから馬群の好位4番手を追走すると、直線入り口2番手から、逃げる1番人気馬アロッタナンバーズを追撃し、2馬身及ばなかったものの2着に入った。3着馬は本馬から6馬身後方だったから、次は勝てそうな雰囲気が漂ってきた。
次走は2月にサンタアニタパーク競馬場で行われた芝9ハロンの未勝利戦だった。ここでは単勝オッズ2倍の1番人気に支持された。しかし馬群の中団後方から直線で伸びを欠き、勝った単勝オッズ8.8倍の5番人気馬サムシングデンジャラスから5馬身半差の4着に敗れた。芝競走で2戦とも勝ち負けにならなかったため、陣営もその後は本馬を芝競走に出すことは無かった。
というわけで、次走は前走から2週間後のサンタアニタパーク競馬場ダート8ハロンの未勝利戦だった。芝を走った前走の敗戦は度外視されたようで、単勝オッズ1.4倍の1番人気に支持された。そして5頭立ての後方2番手から四角で位置取りを上げると、直線で鮮やかに差し切り、2着となった単勝オッズ9倍の3番人気馬プレッシャープレイに1馬身差をつけて勝ち上がった。
次走は4月にサンタアニタパーク競馬場で行われたダート8.5ハロンのオプショナルクレーミング競走だった(本馬は売却の対象外)。ここではアレックス・ソリス騎手を鞍上に、単勝オッズ3.6倍の1番人気となった。レースでは道中で最後方の辺りを追走し、四角でまくって5番手で直線に入ると、逃げていた単勝オッズ7.6倍の4番人気馬ホットマーケットを追撃。しかし四角で後続を大きく引き離していたホットマーケットには最後まで追いつけず、1馬身差の2着に敗れた。
次走は6月にハリウッドパーク競馬場で行われたダート8.5ハロンの一般競走だった。ここでは再びスミス騎手とコンビを組み、単勝オッズ1.6倍の1番人気に支持された。そして馬群の中団から四角で仕掛けて直線入り口で先頭に立ち、逃げていた単勝オッズ4倍の2番人気馬エリックダボムとの叩き合いを1馬身差で制して勝利した。
次走は8月にデルマー競馬場で行われたダート8.5ハロンのオプショナルクレーミング競走だった(本馬は売却の対象外)。そろそろ対戦相手にも実力馬の名前が出てくるようになり、サンベルナディノH2着馬ミステリアスキャット、ストラブS3着馬ジミーズィーなどの姿があった。この中で単勝オッズ2.2倍の1番人気に支持された本馬は、馬群の中団やや後方を追走すると、四角で位置取りを上げて直線に入るとすぐに先頭に立った。そのまま後続を引き離し、2着に追い込んできた単勝オッズ8.1倍の4番人気馬ジミーズィーに3馬身半差をつけて完勝した。
ミステリアスキャットやジミーズィーよりも2ポンド重い120ポンドのトップハンデで勝ったため、陣営は機が熟したと判断したようで、本馬を3週間後のパシフィッククラシックS(米GⅠ・D10F)に向かわせた。定量戦であるため実績不足の本馬が斤量に恵まれることは無いから、陣営にはそれ相応の自信があったのであろう。しかし対戦相手のレベルは今までのレースとは全く桁が違っていた。なにしろ、この年のケンタッキーダービー・プリークネスS・ハスケル招待H・イリノイダービーを勝っていた3歳最強馬ウォーエンブレムが参戦してきたのである。他にも、サンタアニタダービー・ホープフルS・サンヴィンセントS・サンラファエルS・スワップスS・ハリウッドジュヴェナイルCSS・アファームドHを勝っていた3歳馬ケイムホーム、サンタアニタH・カリフォルニアンS・オハイオダービー・マリーンSの勝ち馬で一昨年のハスケル招待Hと前走のハリウッド金杯で3着だったミルウォーキーブルー、そのハリウッド金杯に加えてマーヴィンルロイH・ネイティヴダイヴァーHも勝っていたスカイジャック、前走ハリウッド金杯でスカイジャックの2着していたネイティヴダイヴァーHの勝ち馬モメンタム、マーヴィンルロイH・カリフォルニアンSで連続2着してきたサンバーナーディノHの勝ち馬ボスケレドンド、ゴドルフィンマイル・サンディエゴH・ハリウッドプレビューSの勝ち馬でサンカルロスH2年連続3着のグレイメモなどが出走していた。ウォーエンブレムが単勝オッズ2.2倍の1番人気、ミルウォーキーブルーが単勝オッズ4.8倍の2番人気、モメンタムが単勝オッズ6.5倍の3番人気、ケイムホームとボスケレドンドのカップリングが単勝オッズ11.5倍の4番人気と続く一方で、今年の6戦中5戦で騎乗していたスミス騎手がケイムホームに騎乗したため、ソリス騎手とコンビを組んだ本馬は単勝オッズ18.2倍の8番人気止まりだった。
レースはスカイジャックとボスケレドンドの2頭がウォーエンブレムのハナを叩いて逃げを打ち、典型的な逃げ馬だったウォーエンブレムは仕方なく3番手につけた。一方の本馬は馬群の後方でじっと我慢して、直線の末脚に賭けた。逃げた2頭とウォーエンブレムは前半のハイペースが祟って直線入り口では揃って失速し、4~5番手の好位を追走していたケイムホームとモメンタムの2頭が直線で抜け出し、それを本馬とミルウォーキーブルーの後方待機馬2頭が追撃する展開となった。結果はケイムホームが勝ち、本馬は2馬身3/4差の4着だったが、GⅠ競走初出走でこのメンバー相手に4着なら上出来だっただろう。
次走のグッドウッドBCH(米GⅡ・D9F)では、前走2着のモメンタム、同12着のグレイメモ、デルマーBCHで2着してきたケラ、ベルエアH・オールアメリカンH・コーンハスカーBCHの勝ち馬でジャパンCダートにも参戦経験があるユーカー、スワップスS2着・ハスケル招待H3着のライクアヒーロー、デルマーBCH3着馬リーバズゴールドなどが対戦相手となった。モメンタムが単勝オッズ1.9倍の1番人気に支持されたのは当然として、今回は少し斤量面の恩恵を受けた(トップハンデのモメンタムより4ポンド軽い115ポンド)本馬が単勝オッズ4.7倍の2番人気、116ポンドのケラが単勝オッズ8.2倍の3番人気、116ポンドのユーカーが単勝オッズ10.6倍の4番人気となった。
前走に引き続きソリス騎手とコンビを組んだ本馬は、9頭立ての8番手を追走した。そして三角で仕掛けると四角で一気に位置取りを上げて、3番手で直線に入ってきた。そしてリーバズゴールドやモメンタムを一気にかわすと、2着モメンタムに3馬身1/4差をつけて快勝。勝ちタイム1分46秒8はコースレコードだった。
陣営はBCクラシックも念頭にちらついたらしいが、このレース直後に鼻出血を発症したため、規定により出走停止措置が言い渡されてしまい、この年のBCクラシックには出走不能となってしまった。4歳時の成績は8戦4勝だった。
競走生活(5歳時)
5歳時からはソリス騎手が主戦として固定された。まずは2月のサンアントニオH(米GⅡ・D9F)から始動した。このレースには、スワップスS・シガーマイルH・ウッドメモリアルS・デルマーBCH・サンパスカルH・ローンスターパークHの勝ち馬でケンタッキーダービー・プリークネスSでも見せ場を作る3着と好走していたコンガリー、前年のパシフィッククラシックSで本馬に先着する3着に入った後に出走したBCクラシックでも3着と好走していたミルウォーキーブルーという2頭の強豪馬が出走してきた。123ポンドのコンガリーが単勝オッズ1.5倍の1番人気、117ポンドの本馬が単勝オッズ4.1倍の2番人気、前走サンパスカルHでコンガリーに完敗する2着だったミルウォーキーブルーが120ポンドで単勝オッズ5.9倍の3番人気、117ポンドのネイティヴダイヴァーHの勝ち馬ピエンサソナンドが単勝オッズ18.8倍の4番人気だった。
スタートが切られると、単勝オッズ26.9倍の5番人気馬フリートストリートダンサーが先頭に立ち、コンガリーが2番手、本馬とミルウォーキーブルーが最後方につけた。そして本馬とミルウォーキーブルーが同時に上がっていき、四角で先頭に立っていたコンガリーを直線で追撃。しかし2頭とも最後まで届かず、コンガリーが勝ち、2馬身1/4差の2着がミルウォーキーブルー、さらに1馬身差の3着が本馬だった。本馬は4着ピエンサソナンドには5馬身差をつけていたから、GⅢ競走レベルの馬よりは実力上位だが、GⅠ競走レベルの馬よりは実力下位というのがこのレースにおける本馬の評価だった。
次走のサンタアニタH(米GⅠ・D10F)では、コンガリー、ミルウォーキーブルー、ピエンサソナンド、オークローンHの勝ち馬キュドスとの対戦となった。コンガリーが124ポンドのトップハンデでも単勝オッズ1.6倍の1番人気に支持されたが、単勝オッズ4.7倍の2番人気に推されたのは116ポンドの本馬であり、単勝オッズ4.8倍の3番人気だった119ポンドのミルウォーキーブルーや、単勝オッズ9.8倍の4番人気だったキュドスより評価された。
スタートが切られると、単勝オッズ36.6倍の最低人気だったチリセントレジャーの勝ち馬トロンポリノが逃げて、コンガリーとミルウォーキーブルーが2~3番手、本馬はやはり最後方につけた。しかしレースは先頭を争いながら直線に入ったコンガリーとミルウォーキーブルーの2頭による勝負となり、ミルウォーキーブルーが頭差競り勝って優勝。末脚不発に終わった本馬はキュドスも捕らえられず、ミルウォーキーブルーから6馬身差の4着に敗れた。
この2戦の結果次第ではドバイワールドCに遠征するプランもあったらしいのだが、結局白紙となり秋まで休養した。
10月初めのグッドウッドBCH(米GⅡ・D9F)で復帰した。トリプルベンドBC招待H・デルマーBCHの勝ち馬ジョーイフランコ、シャンペンS・ハリウッドフューチュリティ・レムセンS・ローレルフューチュリティの勝ち馬トセット、前年の同競走6着後にサンカルロスHで3年連続の3着となっていたグレイメモ、前年の同競走3着後にシービスケットHを勝ちジャパンCダートにも参戦したリーバズゴールド、サンアントニオH6着最下位後にマーヴィンルロイH2着・パシフィッククラシックS3着の成績を挙げていたフリートストリートダンサーなどが対戦相手となった。116ポンドの本馬が単勝オッズ2.4倍の1番人気、117ポンドのジョーイフランコが単勝オッズ5.5倍の2番人気、113ポンドのトセットが単勝オッズ5.9倍の3番人気、115ポンドのリーバズゴールドと113ポンドのフリートストリートダンサーが並んで単勝オッズ7.8倍の4番人気となった。
本馬はここでは馬群の中団後方を追走。そして三角手前から徐々に上がっていった。そして4番手で直線に入ると、前を行くジョーイフランコ以下を一気に差し切った。ここで本馬に迫ってきたのは、今回は本馬より後方でレースを進めたフリートストリートダンサーだった。しかし本馬がその追撃を半馬身抑えて勝利した。なお、フリートストリートダンサーはこの8週間後のジャパンCダートに勝利する事になる。
本馬は続いて前年は出走できなかったBCクラシック(米GⅠ・D10F)に挑戦した。この年のブリーダーズカップは、本馬がこの1年間主戦場としてきたサンタアニタパーク競馬場で行われたから、本馬にとってはホームグラウンドだった。
しかし問題はやはり対戦相手のレベルの高さであり、トラヴァーズS・ホイットニーH・サンフェリペS・ジムダンディS・ストラブS・オークローンHの勝ち馬で前年のベルモントS・BCクラシック・ウッドメモリアルSと前走のパシフィッククラシックSで2着していたメダグリアドーロ、サンタアニタH2着後にカーターH・ハリウッド金杯を勝っていたコンガリー、この年のケンタッキーダービー・プリークネスSの勝ち馬でウッドメモリアルS2着・ベルモントS・ハスケル招待H3着のファニーサイド、トラヴァーズS・スーパーダービー・イリノイダービーの勝ち馬でベルモントS2着のテンモストウォンティド、スティーヴンフォスターH・レーンズエンドS・ワシントンパークH・ケンタッキーCクラシックH・ホーソーン金杯・インディアナダービーの勝ち馬でケンタッキーダービー3着のパーフェクトドリフト、仏グランクリテリウム・レイルウェイSの勝ち馬で米国でも前年のBCジュヴェナイル3着・前走ウッドワードSで2着と実績を挙げていた前年のカルティエ賞最優秀2歳牡馬ホールドザットタイガー、前走メドウランズBCSで2着してきたローンスターダービーの勝ち馬ダイネヴァー、最低人気で圧勝した前年のBCクラシックを筆頭にペガサスH・ピルグリムS・ポーカーHを勝ちこの年のサバーバンH・ホイットニーHなどで2着していたヴォルポニ、ジョッキークラブ金杯・サラトガBCH・ディスカヴァリーH・クイーンズカウンティH・アケダクトH・レッドスミスHの勝ち馬でホイットニーH・ジョッキークラブ金杯3着の前年4着馬イヴニングアタイアの計9頭が対戦相手となった。
どの馬が勝っても不思議ではない状況ではあったが、出走馬10頭中、GⅠ競走未勝利馬は本馬とダイネヴァーの2頭のみであり、本馬の存在はやはり小さかった。前年2着の雪辱を期するメダグリアドーロが単勝オッズ3.6倍の1番人気、テンモストウォンティドが単勝オッズ5.1倍の2番人気、パーフェクトドリフトが単勝オッズ6.7倍の3番人気、8か月前には本馬など敵ではなかったコンガリーが単勝オッズ7.3倍の4番人気、ホールドザットタイガーが単勝オッズ9.5倍の5番人気、ファニーサイドが単勝オッズ9.7倍の6番人気で、本馬が単勝オッズ15.2倍の7番人気となった。
スタートが切られると、メダグリアドーロとコンガリーが先頭争いを演じ、本馬は10頭立ての8番手につけた。そして向こう正面で少しペースが落ち着いた隙を突いて徐々に進出していった。四角では外側を通って追い上げ、4番手で直線に入ってきた。そして豪快な末脚を繰り出すと、前方で叩き合うメダグリアドーロとコンガリーの2頭を一気にかわし、2着メダグリアドーロに1馬身半差、3着ダイネヴァーにはさらに3/4馬身差をつけて勝利。これで米国ダート路線の頂点に立った。
本馬を管理するマンデラ師は、同日のBCジュヴェナイルフィリーズをハーフブライドルドで、BCジュヴェナイルをアクションディスデイで、BCターフをジョハーで勝っており、この年のブリーダーズカップにおいて実に4勝を挙げる快挙を成し遂げた。そのために本馬がBCクラシックを勝った瞬間に実況は「今日はマンデラの日です!」と絶叫した。5歳時は4戦2勝の成績だった。
競走生活(6歳時)
6歳時はドバイワールドCを目指して、1月のサンアントニオH(米GⅡ・D9F)から始動した。このレースは、BCクラシック4着後にシガーマイルHを勝っていたコンガリー、ジャパンCダートを勝ってきたフリートストリートダンサー、前走サンパスカルHを勝ってきたスタークロスの3頭だけが対戦相手となった。前年の同競走ではコンガリーが6ポンドのハンデを与えた本馬を一蹴したから、BCクラシックの結果だけでは2頭の評価が逆転したとはいかず、コンガリーが124ポンドのトップハンデでも単勝オッズ1.4倍の1番人気に支持され、121ポンドの本馬が単勝オッズ2.9倍の2番人気、114ポンドのスタークロスが単勝オッズ11.8倍の3番人気、116ポンドのフリートストリートダンサーが単勝オッズ12.9倍の最低人気となった。
出走頭数が少ないために全馬が殆ど一団となって進んだが、その中でも最後方にいた本馬が三角で仕掛けて、直線入り口では先頭に踊り出た。コンガリーにはまったく伸びが無く、もはや本馬の行く手を妨げる馬はいなかった。本馬が2着スタークロスに4馬身差をつけて圧勝し、コンガリーはさらに4馬身1/4差の4着最下位に沈んだ。
そして前年実現しなかったドバイワールドC(首GⅠ・D2000m)参戦となった。対戦相手は、シーズン初戦のドンHを圧勝してきたメダグリアドーロ、マクトゥームチャレンジR2・マクトゥームチャレンジR3を連勝してきた前年のUAEダービー馬ヴィクトリームーン、ペンシルヴァニアダービーの勝ち馬グランドオンブレ、前走サンアントニオHで3着だったフリートストリートダンサー、サンタカタリナS・ストラブSの勝ち馬でハリウッドフューチュリティ2着のドメスティックディスピュート、マクトゥームチャレンジR3で2着してきたディニーパー、ドラール賞・プランスドランジュ賞の勝ち馬ステートシントウ、そして日本から参戦してきた朝日杯フューチュリティS・JBCクラシック2回・マイルCS南部杯・フェブラリーS・エルムSの勝ち馬で前年のジャパンCダート鼻差2着のアドマイヤドン、前走フェブラリーSで2着してきたシンザン記念・武蔵野Sの勝ち馬サイレントディール、川崎記念・ダイオライト記念・名古屋グランプリの勝ち馬でジャパンCダート・川崎記念2着のリージェントブラフの3頭などだった。
英国ブックメーカーのオッズでは、メダグリアドーロが単勝オッズ3倍の1番人気、本馬が単勝オッズ3.5倍の2番人気、ヴィクトリームーンが単勝オッズ5倍の3番人気、アドマイヤドンが単勝オッズ12倍の4番人気だった。
スタートが切られるとフリートストリートダンサーが先頭に立ち、メダグリアドーロが2番手、本馬はメダグリアドーロを見るように3番手辺りの好位につけた。そのままの位置取りで直線に入ると、メダグリアドーロがフリートストリートダンサーをかわして先頭に立った。そこへ本馬が外側から並びかけてきて、2頭の長く激しい叩き合いが始まった。最後は本馬が前に出て、2着メダグリアドーロに3/4馬身差、3着ヴィクトリームーンにはさらに5馬身差をつけて勝利を収め、シガー以来史上2頭目となるBCクラシック・ドバイワールドCのダブル制覇を果たした。これで本馬は名実ともに世界最強ダート馬の地位に君臨した。
マンデラ師は過去にソウルオブザマター、サイフォン、サンドピット、マレク、プエルトマデロの5頭をドバイワールドCに送り込み、5頭全てが4着以内に入っていたが、勝ったのは今回が始めてだった。
帰国後はしばらく休養し、8月のサンディエゴH(米GⅡ・D8.5F)で復帰した。しかし本馬が休養している間に主戦のソリス騎手が落馬事故で重傷を負ってしまっていた。彼は背骨や肋骨の骨折、肺破裂などで、一時は生命も危ぶまれる状態だった。9か月後に復帰してその後も一線級で活躍するのだが、復帰時点で既に競走馬を引退していた本馬に乗る機会は2度と無かった。そのため、このレースでは久々にスミス騎手が本馬に騎乗した。
スワップスS・ジェロームH・ディスカヴァリーH・サンフェルナンドSの勝ち馬デュアリング、4歳2月のデビューからまだ半年ながら4戦無敗で臨んできたチョクトーネイション、サンディエゴHの勝ち馬テーストオブパラダイス、前年のグッドウッドBCHで6着に終わっていたリーバズゴールドなどが対戦相手となった。他馬勢より6~12ポンド重い124ポンドの本馬が単勝オッズ1.6倍の1番人気、118ポンドのデュアリングが単勝オッズ5.3倍の2番人気、114ポンドのチョクトーネイションが単勝オッズ7.3倍の3番人気、115ポンドのテーストオブパラダイスが単勝オッズ7.5倍の4番人気となった。今回の本馬はスタート後にしばらくは好位につけていたが、向こう正面に入るところで加速して先頭に踊り出た。そのまま先頭で直線に入ってきたのだが、10ポンドのハンデを与えたチョクトーネイションにゴール直前で捕まり、3/4馬身差の2着に敗れた。
次走のパシフィッククラシックS(米GⅠ・D10F)では、チョクトーネイション、前走3着のデュアリング、前年のBCクラシック6着後にスティーヴンフォスターH3着・前走ホイットニーH2着と復調気配のパーフェクトドリフト、チリのGⅠ競走タンテオデポトリジョス賞を勝って米国移籍後はマーヴィンルロイHでフリートストリートダンサーを2着に破って勝った程度しか目立つ勝ち鞍が無かったが前走ハリウッド金杯で米国GⅠ競走初勝利を挙げて本格化の兆しが見えていたトータルインパクト、この年のスティーヴンフォスターHを勝っていた同父馬コロニアルコロニーなどが対戦相手となった。今回は定量戦であり、ジェリー・ベイリー騎手と初コンビを組んだ本馬が単勝オッズ2倍の1番人気、チョクトーネイションとパーフェクトドリフトが並んで単勝オッズ5.4倍の2番人気、トータルインパクトが単勝オッズ7.2倍の4番人気、デュアリングが単勝オッズ14.4倍の5番人気となった。レースでは馬群の中団やや後方を追走し、三角に入ってから仕掛けた。そして直線に入って間もなく先頭に立つと、追い上げてきたパーフェクトドリフトに1馬身差をつけて勝利した。
その後はローンスターパーク競馬場に向かい、連覇を狙ってBCクラシック(米GⅠ・D10F)に出走。前年の同レースで本馬と戦った馬の多くは既に姿が無く(本馬を除くと3頭のみ)、今度は本馬が新興勢力の挑戦を受けて立つ立場になった。当然本馬は前年の覇者であり単勝オッズ3.5倍の1番人気に支持されたが、もう一頭並んで1番人気に支持された馬がいた。それはヴォスバーグS・トムフールH・フィリップHアイズリンBCH・ウッドワードSと4連勝中の4歳馬ゴーストザッパーで、圧倒的強さを誇った短距離路線から10ハロン路線に転向してきたのである。
他の出走馬は、前年の同競走9着後にジョッキークラブ金杯・エクセルシオールBCHを勝ちドンH・サバーバンHで3着していたファニーサイド、パシフィッククラシックS2着後にホーソーン金杯でも2着してきたパーフェクトドリフト、前年の同競走3着後にサンバーナーディノHを勝ちブルックリンH・メドウランズBCSで2着していたダイネヴァーの前年対戦馬3頭と、ベルモントS・トラヴァーズS・シャンペンSの勝ち馬バードストーン、コーンハスカーBCH・ホイットニーH・ケンタッキーCクラシックHなど5連勝中の上がり馬ロージズインメイ、BCディスタフ・サンタマルガリータ招待H・アップルブロッサムH3回・ミレイディBCH2回・ヴァニティH2回・ゴーフォーワンドH・スピンスターSとGⅠ競走11勝を挙げていた一昨年のエクリプス賞年度代表馬アゼリ、カナディアンターフH・スキップアウェイHの勝ち馬でサバーバンH・ジョッキークラブ金杯2着のニューファンドランド、ケルソBCH・ホーソーン金杯Hの勝ち馬フリーフォーインターネット、前走スーパーダービーを勝ってきたファンタスティキャット、メドウランズカップBCSの勝ち馬でオークローンH・メトロポリタンH2着・ホイットニーS・ウッドワードS3着のボウマンズバンド、ダービーグランプリを9馬身差で圧勝して挑んできた日本調教馬パーソナルラッシュだった。ベルモントSでスマーティジョーンズの無敗の米国三冠達成の栄誉を阻止したバードストーンが単勝オッズ7.5倍の3番人気、前走ジョッキークラブ金杯でGⅠ競走3勝目を挙げてきたファニーサイドが単勝オッズ8.7倍の4番人気、ロージズインメイが単勝オッズ9.7倍の5番人気と続いていた。
スタートが切られると有無を言わさずにゴーストザッパーがハナを奪い、他馬勢もゴーストザッパーのすぐ後ろを固まって追走。ベイリー騎手騎乗の本馬も馬群後方とは言え、ゴーストザッパーからはそれほど差が無い位置取りだった。そして三角から四角にかけて徐々に上がっていき大外に持ち出して直線勝負に出た。しかし先頭のゴーストザッパーは直線で逆に他馬を引き離していき、2着ロージズインメイに3馬身差をつけてレコードタイムで圧勝。四角であまりにも外側を通ってしまった本馬はコースロスも響き、ロージズインメイからさらに4馬身差の3着と完敗した。
本馬の次走には実はジャパンCダートが予定されていたらしいのだが、BCクラシックの直後に後脚球節に軽度の負傷が判明したために、そのまま6歳時5戦3勝で現役を引退した。
本馬が世界最強ダート馬だった時期は確実にあったが、休養期間が長く、時期的なタイミングも合わなかったため、エクリプス賞のタイトルとは無縁に終わった。もっとも、本馬のように高額で取引された馬は案外走らないケースが多いものだが、本馬の獲得賞金総額は778万9880ドルであり、取引額の10倍以上に達しているから、ダイヤモンド・A・レーシング社にとっては大当たりの馬だった。
血統
Pleasant Colony | His Majesty | Ribot | Tenerani | Bellini |
Tofanella | ||||
Romanella | El Greco | |||
Barbara Burrini | ||||
Flower Bowl | Alibhai | Hyperion | ||
Teresina | ||||
Flower Bed | Beau Pere | |||
Boudoir | ||||
Sun Colony | Sunrise Flight | Double Jay | Balladier | |
Broomshot | ||||
Misty Morn | Princequillo | |||
Grey Flight | ||||
Colonia URU | Cockrullah | Nasrullah | ||
Summerleaze | ||||
Nalga | Guatan | |||
Nagoya | ||||
Regal State | Affirmed | Exclusive Native | Raise a Native | Native Dancer |
Raise You | ||||
Exclusive | Shut Out | |||
Good Example | ||||
Won't Tell You | Crafty Admiral | Fighting Fox | ||
Admiral's Lady | ||||
Scarlet Ribbon | Volcanic | |||
Native Valor | ||||
La Trinite | Lyphard | Northern Dancer | Nearctic | |
Natalma | ||||
Goofed | Court Martial | |||
Barra | ||||
Promessa | Darius | Dante | ||
Yasna | ||||
Peseta | Neckar | |||
Prompt Payment |
父プレザントコロニーは当馬の項を参照。
母リーガルステートは現役時代に12戦して僅か2勝だったが、モルニ賞(仏GⅠ)を勝ち、ジャックルマロワ賞(仏GⅠ)・サラマンドル賞(仏GⅠ)で2着しており、その内容は濃かった。母としては本馬の半兄ハリケーンステート(父ミスワキ)【エクリプス賞(仏GⅢ)】も産んでいる。また、本馬の半妹グードテロワール(父レモンドロップキッド)の子にはイルーシヴケイト【マルセルブサック賞(仏GⅠ)・ロートシルト賞(仏GⅠ)2回・ファルマスS(英GⅠ)・カルヴァドス賞(仏GⅢ)】がいる。リーガルステートの半姉にはセブンスプリングズ(父アイリッシュリヴァー)【ロベールパパン賞(仏GⅠ)・モルニ賞(仏GⅠ)】がおり、その子にはディスタントヴュー【サセックスS(英GⅠ)】がいる。セブンスプリングズやリーガルステートの曾祖母ペセタはなかなかの名牝系を構築しており、その子にはピア【英オークス】、孫にはチーフシンガー【ジュライC(英GⅠ)・サセックスS(英GⅠ)】、玄孫世代以降にはファシネイティングロック【英チャンピオンS(英GⅠ)】、日本で走ったシーザリオ【優駿牝馬(米GⅠ)・アメリカンオークス(米GⅠ)】とエピファネイア【菊花賞(米GⅠ)・ジャパンC(米GⅠ)】、リオンディーズ【朝日杯フューチュリティS(GⅠ)】の母子などがいる。→牝系:F16号族③
母父アファームドは当馬の項を参照。
競走馬引退後
競走馬を引退した本馬は、かつて父プレザントコロニーが一時的に繋養されていたケンタッキー州レーンズエンドファームで種牡馬入りした。初年度の種付け料は4万ドルに設定された。81頭誕生した初年度産駒の1頭シェアードアカウントが2010年のBCフィリー&メアターフで人気薄を覆す激走を見せて勝利したが、2015年現在のところ産駒のGⅠ競走勝ちはこの一戦のみ。ステークスウイナー数も16頭程度と伸び悩んでいる。本馬の産駒で最も有名なのは、下級戦のみ走り続けて22連勝という近代北米競馬の最多連勝記録(年間19勝というシーズン最多勝利タイ記録も持っている)を樹立し、2011年のエクリプス賞特別賞を受賞したラピッドリダックスである。2014年の種付け料は5千ドルまで下落した。同年8月に、翌年からテイラーメイドファームで繋養される事がいったんは発表された。しかしその直後の10月に、トルコの馬産家ルヴァン・サリカヤ氏に転売され、2015年からはトルコ国立牧場で繋養されることが発表された。
主な産駒一覧
生年 |
産駒名 |
勝ち鞍 |
2006 |
Shared Account |
BCフィリー&メアターフ(米GⅠ)・レイクプラシッドS(米GⅡ)・オールアロングS(米GⅢ) |
2006 |
Silverside |
ゴールデネパイチェ(独GⅡ) |
2007 |
Cozi Rosie |
ブエナビスタH(米GⅡ)・ジョンCメイビーS(米GⅡ)・セニョリータS(米GⅢ) |
2009 |
Nonios |
アファームドH(米GⅢ) |
2011 |
Idalino |
パレルモ競馬場大賞(亜GⅠ)・ペルー賞(亜GⅡ)・ブラジル連邦共和国賞(亜GⅢ) |
2011 |
Perfectly Associat |
アルミランテマルケスデタマンダレ大賞(伯GⅡ) |