ピヴォタル

和名:ピヴォタル

英名:Pivotal

1993年生

栗毛

父:ポーラーファルコン

母:フィアレスリヴァイヴァル

母父:コジーン

競走馬として勝利したGⅠ競走は現役最後のレースとなったナンソープSのみだが、種牡馬としては100頭以上のステークスウイナーを出して大活躍する

競走成績:2・3歳時に英で走り通算成績6戦4勝

誕生からデビュー前まで

英国チェヴァリーパークスタッドの生産・所有馬で、英国サー・マーク・プレスコット調教師に預けられた。父ポーラーファルコンが短距離馬であった事から、本馬もデビューから一貫して短距離路線を進んだ。

競走生活(2歳時)

2歳10月にニューベリー競馬場で行われた芝6ハロン8ヤードの未勝利ステークスで、C・ナッター騎手を鞍上にデビュー。しかし単勝オッズ17倍で20頭立ての9番人気という低評価だった。さらにはスタートで出遅れてしまい、先頭争いには全く加わることが出来ずに、勝ったフライチップから6馬身差の9着に敗れた。

次走はそれから11日後にニューカッスル競馬場で行われた芝6ハロンの未勝利ステークスとなった。ここでは主戦となるジョージ・ダフィールド騎手と初コンビを組み、単勝オッズ3倍の2番人気に推された。今回は普通にスタートを切ってそのまま先行。残り2ハロン地点で仕掛けると、残り1ハロン地点で先頭に立った後も力強く脚を伸ばし続け、2着ドマクアマームに2馬身半差をつけて快勝した。

次走は1週間後にフォークストーン競馬場で行われたエピー条件S(T5F)となった。ここでは単勝オッズ2倍の1番人気に支持された。スタートが切られると単勝オッズ8.5倍の5番人気馬コミックファンタジーが先頭に立ち、本馬もそれを追って先行した。そして残り1ハロン地点で、先に先頭に立っていた単勝オッズ41倍の8番人気馬スミサリーンズをかわして先頭に立つとそのまま差を広げ、2着に粘ったスミサリーンズに4馬身差をつけて圧勝した。勝ちタイム58秒4はコースレコードだった。2歳時の成績は3戦2勝だった。

競走生活(3歳時)

3歳時は6月までレースに出ず、初戦は夏のキングズスタンドS(GⅡ・T5F)となった。アベイドロンシャン賞を筆頭にメルトン賞・ゴールデネパイチェ・キングジョージS・セーネワーズ賞などを勝って前年のカルティエ賞最優秀短距離馬に選ばれたヘヴァーゴルフローズ、テンプルS2回・ノーフォークS・パレスハウスSを勝っていたマインドゲームス、前走の英2000ギニーで惨敗するまではミドルパークS・ジムクラックS・コヴェントリーSなど4戦無敗だったロイヤルアプローズ、前走テンプルSで2着してきたサンジョルジュ賞勝ち馬ストラグラー、グリーンランズSの勝ち馬リダーナ、ロベールパパン賞・ノーフォークSの勝ち馬ラッキーライオネル、モールコームSの勝ち馬アルマトイ、クリテリウムドメゾンラフィット・エクリプス賞の勝ち馬ティタスリヴィアス、前年のアベイドロンシャン賞3着馬イブニングパフォーマンスといった欧州短距離路線の有力馬達が大挙して参戦しており、本馬が出走した過去3戦とは全くレベルが違っていた。マインドゲームスが単勝オッズ4倍の1番人気、ロイヤルアプローズが単勝オッズ6.5倍の2番人気となったが、グループ競走初出走の本馬も単勝オッズ7.5倍の3番人気となっており、単勝オッズ12倍の5番人気だったヘヴァーゴルフローズより評価が上だった。

スタートが切られるとマインドゲームスが一気に先頭に立ち、本馬やヘヴァーゴルフローズもそれを追って先行した。残り1ハロン地点では粘るマインドゲームスと追い詰める本馬の2頭に勝ち馬が絞られた。ゴール直前まではマインドゲームスが先頭だったが、最後の一完歩で本馬がかわし、半馬身差で勝利した。勝ちタイム59秒49は、同競走としては当時2番目(1位は1986年にラストタイクーンが計時した59秒28)の好タイムだった。

続いてジュライC(GⅠ・T6F)に出走。マインドゲームス、前走4着のヘヴァーゴルフローズに加えて、グロシェーヌ賞・サンジョルジュ賞など4連勝中のアナバー、愛フェニックスS・愛ナショナルS・グリーナムSの勝ち馬でデューハーストS2着のデインヒルダンサー、ジャージーSを勝ってきたルカヤンプリンスなどが対戦相手となった。本馬が単勝オッズ3.25倍の1番人気に支持され、アナバーが単勝オッズ3.75倍の2番人気、デインヒルダンサーが単勝オッズ8倍の3番人気と、後に種牡馬として成功する3頭が上位人気を占めた。スタートが切られると即座にアナバーが先頭に立ち、本馬やデインヒルダンサーは中団でレースを進めた。しかしアナバーのスピードは最後まで衰えず、そのまま逃げ切って勝利。本馬はゴール前の4着争いに加わるのが関の山で、勝ったアナバーから5馬身1/4差の6着に敗れた。

次走のナンソープS(GⅠ・T5F)では、前走3着のヘヴァーゴルフローズ、同7着のマインドゲームス、キングズスタンドSで10着だったイブニングパフォーマンス、同16着だったストラグラーなどが主な対戦相手となった。マインドゲームスが単勝オッズ2.75倍の1番人気、ヘヴァーゴルフローズが単勝オッズ3.75倍の2番人気で、本馬は単勝オッズ4.33倍の3番人気となった。

スタートが切られると単勝オッズ17倍の5番人気だったイブニングパフォーマンスが先頭に立った。本馬はスタートがあまり良くなかったが、ダフィールド騎手がすぐに加速させたために好位につけた。そしてレース中盤でさらに加速すると、粘るイブニングパフォーマンスに残り1ハロン過ぎで並びかけた。そして2頭が殆ど同時にゴールインしたが、写真判定の結果は本馬が短頭差で勝利しており、GⅠ競走勝ち馬となった。勝ちタイム56秒53は、同競走としては当時2番目(1位は1990年にデイジュールが計時した56秒16)の好タイムだった。そしてこの勝利を最後に、3歳時3戦2勝の成績で早々に競走馬を引退した。

カルティエ賞最優秀短距離馬の座は、ジュライCの次走モーリスドギース賞でGⅠ競走2勝目を挙げたアナバーが受賞した。本馬は、おそらく6ハロンでも長い生粋の短距離馬だった。

血統

Polar Falcon Nureyev Northern Dancer Nearctic Nearco
Lady Angela
Natalma Native Dancer
Almahmoud
Special Forli Aristophanes
Trevisa
Thong Nantallah
Rough Shod
Marie D'Argonne Jefferson Charlottesville Prince Chevalier
Noorani
Monticella Cranach
Montenica
Mohair Blue Tom トンピオン
Pink Silk
Imberline Ocarina
Barley Corn
Fearless Revival Cozzene Caro フォルティノ Grey Sovereign
Ranavalo
Chambord Chamossaire
Life Hill
Ride the Trails Prince John Princequillo
Not Afraid
Wildwook Sir Gaylord
Blue Canoe
Stufida Bustino Busted Crepello
Sans le Sou
Ship Yard Doutelle
Paving Stone
Zerbinetta Henry the Seventh King of the Tudors
Vestal Girl
Yucatan Le Lavandou
Chiffonier

父ポーラーファルコンはヌレイエフ産駒で、現役時代は仏独英米で走り通算成績14戦5勝2着2回3着1回。3歳4月に仏国でデビューし、2戦1勝の成績でジャンプラ賞(仏GⅠ)に出走したがプリオロの4着と完敗。その後はマイル路線を進み、独国にも遠征したが勝ち切れなかった。3歳時の成績は8戦2勝でグループ競走は未勝利に終わった。4歳時も当初はマイル路線を進み、ロッキンジS(英GⅡ)で名牝インザグルーヴを2着に破ってグループ競走初勝利を挙げた。次走のジュライC(英GⅠ)で初の短距離戦に挑んだが、いきなりの距離短縮に戸惑って伸び切れずポリッシュパトリオットの4着に敗れた。次走のジャックルマロワ賞(仏GⅠ)でヘクタープロテクターの4着に敗れたため、再度短距離戦に向かいスプリントC(英GⅠ)に参戦。すると、この年のカルティエ賞最優秀短距離馬に選ばれるシェイクアルバドゥを1馬身半差の2着に下してあっさり勝ってしまった。その後はBCマイル(米GⅠ)に向かったが、オープニングヴァースの11着と惨敗して引退した。マイル戦でもそれなりに走っていたが、最初から短距離路線に的を絞っていればもっと活躍できた快速馬だった。競走馬引退後はチェヴァリーパークスタッドで種牡馬入りしたが、種牡馬成績は今ひとつで、2001年12月に肺癌のため14歳で他界している。

母フィアレスリヴァイヴァルは現役成績6戦2勝、ロックフェルS(英GⅢ)で2着している。本馬の5歳年下の全妹リサージェンスの子に、アラーファ【愛2000ギニー(愛GⅠ)・セントジェームズパレスS(英GⅠ)】がいる。フィアレスリヴァイヴァルの母ステゥフィダは、リディアテシオ賞(伊GⅠ)・ロイヤルメアズ賞(伊GⅢ)の勝ち馬。牝系は1963年の天皇賞春を勝ったコレヒサ、1966年の天皇賞秋と有馬記念を勝ったコレヒデの兄弟と同じだが、本馬の近親とは言うには遠い。→牝系:F7号族①

母父コジーンは当馬の項を参照。

競走馬引退後

競走馬を引退した本馬は生まれ故郷のチェヴァリーパークスタッドで種牡馬入りした。当初はそれほど期待された種牡馬ではなく、種付け料も6千ポンドと安価だった。しかし初年度産駒からゴールデンアップルズ、キラチー、シルヴェスターレディーと3頭のGⅠ競走勝ち馬が出ると、その後も数多くの活躍馬を輩出して名種牡馬となった。2005年にはドバイのシェイク・モハメド殿下が種付け権利の4分の1を取得している。

2012年のバージナハールをアフリカンストーリーが勝利して、産駒のステークスウイナーが100頭に到達した。全盛期の種付け料は8万5千ポンドに達した。

自身と同様の短距離馬が多いが、サリスカ、ファー、バズワード、アフリカンストーリーのように10ハロン以上の距離で活躍する馬もおり、距離適性はかなり幅広い。ダート競走で走る産駒は少数派で、米国を主戦場とした馬であってもその多くは芝馬である。

主な産駒一覧

生年

産駒名

勝ち鞍

1998

Golden Apples

デルマーオークス(米GⅠ)・ビヴァリーDS(米GⅠ)・イエローリボンS(米GⅠ)・ラスパルマスH(米GⅡ)・サンタアナH(米GⅡ)

1998

Kyllachy

ナンソープS(英GⅠ)・テンプルS(英GⅡ)・パレスハウスS(英GⅢ)

1998

Low Pivot

キウスーラ賞(伊GⅢ)

1998

Needwood Blade

パレスハウスS(英GⅢ)・ベイメドウズBCH(米GⅢ)

1998

Ratio

ドバイ国際空港ワールドトロフィー(英GⅢ)

1998

Silvester Lady

独オークス(独GⅠ)

1999

Captain Rio

クリテリウムドメゾンラフィット(仏GⅡ)

1999

Chorist

プリティポリーS(愛GⅠ)・ブランドフォードS(愛GⅢ)

1999

Megahertz

ジョンCメイビーH(米GⅠ)・イエローリボンS(米GⅠ)・ハネムーンBCH(米GⅡ)・サンタバーバラH(米GⅡ)3回・サンゴルゴーニオH(米GⅡ)・サンタアナH(米GⅡ)・ビヴァリーヒルズH(米GⅡ)・アメリカンオークス

1999

Ringmoor Down

キングジョージS(英GⅢ)・フライングファイブ(愛GⅢ)

1999

Stolzing

プリミパッシ賞(伊GⅢ)

2000

Humouresque

ペネロープ賞(仏GⅢ)

2000

Pivotal Point

ダイアデムS(英GⅡ)・プティクヴェール賞(仏GⅢ)・スプリントS(英GⅢ)・スチュワーズC

2000

Somnus

スプリントC(英GⅠ)・モーリスドギース賞(仏GⅠ)・フォレ賞(仏GⅠ)

2001

Lucky Spin

チャートウェルフィリーズS(英GⅢ)・サマーS(英GⅢ)

2001

Peeress

サンチャリオットS(英GⅠ)・ロッキンジS(英GⅠ)・ウィンザーフォレストS(英GⅡ)

2001

Violet Park

ダリアS(英GⅢ)

2002

Penkenna Princess

フレッドダーリンS(英GⅢ)

2002

Saoire

愛1000ギニー(愛GⅠ)

2002

Windsor Knot

ソラリオS(英GⅢ)・ニューマーケットダーレーS(英GⅢ)

2003

Danak

アメジストS(愛GⅢ)

2003

Heaven Sent

ダリアS(英GⅢ)2回

2003

Leo

ロイヤルロッジS(英GⅡ)

2003

Nick's Nikita

ノーブレスS(愛GⅢ)

2004

Alzerra

ジョエルS(英GⅢ)

2004

Beauty Is Truth

グロシェーヌ賞(仏GⅡ)・アランベール賞(仏GⅢ)

2004

Brazilian Bride

フィリーズスプリントS(愛GⅢ)

2004

Enticing

モールコームS(英GⅢ)・キングジョージS(英GⅢ)

2004

Excellent Art

セントジェームズパレスS(英GⅠ)・ミルリーフS(英GⅡ)

2004

Regal Parade

スプリントC(英GⅠ)・モーリスドギース賞(仏GⅠ)・シャドウェルS(英GⅢ)

2004

Six of Hearts

バリーコーラスS(愛GⅢ)

2005

Briseida

独1000ギニー(独GⅡ)

2005

Falco

仏2000ギニー(仏GⅠ)

2005

Girouette

フェニックススプリントS(愛GⅢ)

2005

Halfway to Heaven

愛1000ギニー(愛GⅠ)・ナッソーS(英GⅠ)・サンチャリオットS(英GⅠ)

2005

Infallible

ネルグウィンS(英GⅢ)

2005

Poet

キルターナンS(愛GⅢ)・ローズオブランカスターS(英GⅢ)

2005

Spring Style

ロバートJフランケルS(米GⅡ)

2005

Virtual

ロッキンジS(英GⅠ)

2006

Entangle

マリットスヴェアースミネロップ(那GⅢ)

2006

Noordhoek Flyer

ケープギニー(南GⅠ)・KRAギニー(南GⅡ)

2006

Pearl Banks

フランクフルト牝馬賞(独GⅢ)

2006

Sariska

英オークス(英GⅠ)・愛オークス(愛GⅠ)・ミドルトンS(英GⅡ)・ムシドラS(英GⅢ)

2006

Summer Fete

オークツリーS(英GⅢ)

2006

Swiss Diva

モートリー賞(仏GⅢ)・プティクヴェール賞(仏GⅢ)

2006

Turning Top

ビヴァリーヒルズH(米GⅢ)

2007

African Story

ドバイワールドC(首GⅠ)・マクトゥームチャレンジR3(首GⅠ)・ゴドルフィンマイル(首GⅡ)・バージナハール(首GⅢ)2回

2007

Buzzword

独ダービー(独GⅠ)・ロシェット賞(仏GⅢ)

2007

Emerald Commander

エッティンゲンレネン(独GⅡ)・ダフニ賞(仏GⅢ)

2007

Maarek

アベイドロンシャン賞(仏GⅠ)・英チャンピオンズスプリントS(英GⅡ)・デュークオブヨークS(英GⅡ)・チップチェイスS(英GⅢ)・ルネサンスS(愛GⅢ)・ドバイ国際空港ワールドトロフィー(英GⅢ)

2007

Siyouni

ジャンリュックラガルデール賞(仏GⅠ)

2008

Amanee

セクウィニS(南GⅠ)

2008

Farhh

ロッキンジS(英GⅠ)・英チャンピオンS(英GⅠ)

2008

Immortal Verse

コロネーションS(英GⅠ)・ジャックルマロワ賞(仏GⅠ)・サンドランガン賞(仏GⅡ)

2008

Izzi Top

プリティポリーS(愛GⅠ)・ジャンロマネ賞(仏GⅠ)・ミドルトンS(英GⅡ)・フロール賞(仏GⅢ)・ダリアS(英GⅢ)

2009

Nephrite

キラヴーランS(愛GⅢ)

2009

Saint Baudolino

ギョームドルナノ賞(仏GⅡ)・ギシュ賞(仏GⅢ)

2010

Calyxa

ハンブルガー牝馬マイレ(独GⅢ)

2010

Harasiya

シルバーフラッシュS(愛GⅢ)

2010

Hot Snap

ネルグウィンS(英GⅢ)

2010

The Lark

パークヒルS(英GⅡ)

2011

Eagle Top

キングエドワードⅦ世S(英GⅡ)

2011

Shamkala

クレオパトル賞(仏GⅢ)

2011

Talco

シューメーカーマイルS(米GⅠ)

2012

Koora

セントサイモンS(英GⅢ)

2012

Queen's Jewel

サンタラリ賞(仏GⅠ)・ペネロープ賞(仏GⅢ)

2012

Racing History

ウインターヒルS(英GⅢ)

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