コンサーン

和名:コンサーン

英名:Concern

1991年生

鹿毛

父:ブロードブラッシュ

母:ファラズチーム

母父:テューナラップ

最後方からの追い込み戦法を武器にして貴重なドミノ直系を一時的に現代に復活させたBCクラシック優勝馬だが種牡馬としては全く振るわず

競走成績:2~4歳時に米加で走り通算成績30戦7勝2着7回3着11回

誕生からデビュー前まで

米国メリーランド州フィッツヒューファームにおいて、ロバート・E・メイヤーホフ氏により生産・所有され、リチャード・W・スモール調教師に預けられた。

競走生活(2歳時)

2歳8月にピムリコ競馬場で行われた芝8ハロンの未勝利戦で、アンドレア・シーフェルト騎手を鞍上にデビュー。しかし単勝オッズ12.9倍で11頭立ての8番人気という低評価。レースでも最後方を付いて回り、直線で少しだけ順位を上げただけで、勝った単勝オッズ4倍の2番人気馬コールエイブルから6馬身半差の7着という結果に終わった。

翌9月にフィラデルフィア競馬場で出走したダート8ハロンの未勝利戦でも、シーフェルト騎手とコンビを組んだ。ここでは対戦相手のレベルが下がった事もあり、単勝オッズ4.8倍の3番人気となった。ここでは後方2番手追走から徐々に位置取りを押し上げていったものの、先に抜け出した馬達にはまったく追いつけず、勝った単勝オッズ2.4倍の1番人気馬オレステスから10馬身差の3着に敗れた。

翌10月にピムリコ競馬場で出走したダート8.5ハロンの未勝利戦では、しばらく主戦を務めるスティーヴ・ハミルトン騎手を鞍上に、単勝オッズ4倍の2番人気となった。レースでは後方3番手を追走すると、向こう正面で位置取りを上げて三角では先頭に並びかけた。そしてそのまま先頭で直線に入ると後続を引き離し、2着ディフェンスオブリバティーに4馬身差で勝ち上がった。

その後はローレルパーク競馬場に向かい、12月までに4戦を消化。まずはダート8.5ハロンの一般競走に出走。ここでは同馬主同厩同父のルーミングとのカップリングではあったが、単勝オッズ2.5倍の1番人気に支持された。馬群の中団後方につけた本馬は、三角から四角にかけて位置取りを上げて、直線入り口では先頭に並びかけたが、ここから突き抜けきれずに、勝った単勝オッズ12倍の6番人気馬プリンスオブロイヤリティの1馬身差2着に敗れた。

続いて、メリーランド州産馬限定競走のローリッキングS(D7F)に出走。ここでは単勝オッズ10.1倍の5番人気止まりだった。今までのレースもそうだったが、今回も本馬はスタートダッシュが悪く、後方2番手からのレースとなった。そして直線入り口でもまだ6番手の位置取りであり、ここから追い込んでは来たものの、勝った単勝オッズ2.8倍の1番人気馬カントンリバーから2馬身3/4差の3着に敗れた。

次走のダート8.5ハロンの一般競走では、同馬主同厩のバージインとのカップリングで単勝オッズ1.4倍の1番人気に支持された。レースは、バージインが後方2番手、本馬が最後方を走る展開となった。そしてバージインが先に仕掛けて上がっていくと、本馬もそれに付いていった。直線に入って先頭に立ったバージインを、後方から本馬が必死に追いかけたが、鼻差届かず2着に敗れた。

2歳最後のレースとなったメリーランドジュヴェナイルCSS(D9F)では、バージイン、ルーミングの2頭とのカップリングで単勝オッズ1.9倍の1番人気に支持された。レースは、この3頭が揃って最後方、その中でも本馬が一番後ろを走るという展開となった。そして3頭全てが追い込み不発に終わり、本馬は、逃げて勝った単勝オッズ10.2倍の4番人気馬ランオールデンから12馬身差の8着に沈んだ。結局2歳時は7戦して1勝のみと振るわなかった。

競走生活(3歳初期)

3歳1月にオークローンパーク競馬場で行われたダート8ハロンの一般競走ではシーフェルト騎手とコンビを組み、単勝オッズ4.2倍の2番人気となった。今回はことのほかスタート後の加速が悪く、当初は離された最後方を走っていた。しかし三角手前で進出を開始すると、直線入り口4番手から追い込み、先行して抜け出していた単勝オッズ2.1倍の1番人気馬ファルコンフライヤーを首差捕らえて2勝目を挙げた。

翌2月に同コースで行われた一般競走でもシーフェルト騎手とコンビを組み、単勝オッズ2.8倍の1番人気に支持された。ここでもスタート後の加速は非常に悪く、大きく離された最後方をてくてくと走っていた。三角でようやくエンジンがかかり、次々に他馬を追い抜いて位置取りを上げてきた。そしてゴール前では先頭に迫ってきたのだが、好位から抜け出した単勝オッズ3.6倍の2番人気馬ファインダーズウィッシュに半馬身及ばず2着に敗れた。

次走のオールドローズバドS(D8F)では、ファインダーズウィッシュが単勝オッズ1.9倍の1番人気に支持され、ファビオ・アルゲリョ・ジュニア騎手が騎乗した本馬は単勝オッズ3.7倍の2番人気だった。例によって離れた最後方につけた本馬は、向こう正面から進出を開始。そして3番手で直線に入ると、末脚を伸ばしてきたが、結局追い込みきれずに、ファインダーズウィッシュの1馬身差3着に敗れた。

次走のグレートウェストS(D8.5F)では、5連勝中のシルバーゴブリンという馬が単勝オッズ1.7倍の1番人気に支持されており、シーフェルト騎手が騎乗する本馬は単勝オッズ7.8倍の3番人気だった。レースはシルバーゴブリンが先行して早めに抜け出す優等生的な競馬を見せ、後方2番手につけていた本馬は三角で仕掛けて上がっていくという競馬を見せた。結果はシルバーゴブリンが2着スリーダイヤモンズに10馬身半差をつけて圧勝し、本馬はスリーダイヤモンズから2馬身差の3着に敗れた。

このように、一般競走では勝ち負けになってもステークス競走では足りない状況が続いていた本馬だが、そうした状況に変化が現れたのは、4月になってからだった。レベルS(米GⅢ・D8.5F)に出走したフランシーヌ・ヴィルヌーヴ騎手が騎乗する本馬は、単勝オッズ7.1倍の4番人気止まりだった。サプリングSの勝ち馬セイクリッドオナーなどが出走しており、対戦相手の質も向上していた。ここでも本馬は相変わらずの最後方追走。そして三角から四角にかけて位置取りを上げていった。そして4番手で直線に入ると、前との差を着実に詰めていった。単勝オッズ13.7倍の6番人気馬ジャッジティーシーだけには届かなかったものの、1馬身差の2着まで突っ込んできたのである。

もっとも、本馬はジャッジティーシーから7ポンドのハンデを貰っていたから、その点ではあまり威張れなかったが、曲がりなりにもグレード競走で勝ち負けになったという事実は、本馬の今後の方針に大きな影響を与えることになり、次走はアーカンソーダービー(米GⅡ・D9F)となった。

アーカンソーダービー

このレースは、ケンタッキーダービーを目指そうかという実力馬達が前哨戦として出走してくるものであり、この年もフロリダダービー2着馬ライドザレイルズ、BCジュヴェナイル2着馬ブルミンアフェアー、シルバーゴブリン、ジャッジティーシーなど、明らかにケンタッキーダービーを見据えている馬達が参戦してきた。本馬はギャレット・ゴメス騎手と初コンビと組んで出走したのだが、実績不足の本馬が人気になるわけもなく、単勝オッズ21.7倍で9頭立ての6番人気という低評価だった。

しかもレースではスタート直後から1頭だけ馬群からぽつんと離された最後方に置き去りにされてしまった。実況が“far far back(はるか、遥かに後方)”と言うほど他馬からは離されており(馬群最後方の馬からは10~12馬身ほどの差)、レース序盤で既に圏外に去ったように見えたため、テレビカメラは向こう正面に入る頃に早々に本馬の姿を切ってしまった。ところが四角でいつのまにか6~7番手まで上がって来ていた本馬が、直線に入ると先頭のシルバーゴブリン以下を大外からごぼう抜きにして、2着ブルミンアフェアーに首差で勝利してしまったのである。

小回りで直線が短い競馬場ばかりの米国競馬においては、追い込みで勝つと言っても、直線入り口では既に先頭にかなり詰め寄っているのが一般的なのだが、このレースにおいては直線半ばまで本馬の姿は画面外(馬群を正面から映す四角でちらっと姿が映っている程度)であり、米国競馬における常識の範囲外の追い込みであった。

競走生活(3歳中期と後期)

本馬自身はケンタッキーダービーには向かわなかったが、ブルミンアフェアーはケンタッキーダービーに挑戦して3着に好走している。それもあって本馬の実力に手応えを得た陣営は、本馬を地元メリーランド州で行われるプリークネスS(米GⅠ・D9.5F)に送り込んだ。対戦相手は、ケンタッキーダービー馬ゴーフォージンを筆頭に、ブルミンアフェアー、サンラファエルSの勝ち馬タバスコキャット、ダービートライアルSの勝ち馬ヌメラス、シルバーゴブリンなどだった。ゴメス騎手が騎乗する本馬はルーミングとのカップリングで、ようやく単勝オッズ11.2倍の6番人気という低評価。アーカンソーダービーで破ったブルミンアフェアーやシルバーゴブリンより人気薄だった。

レースは、ゴーフォージンを始めとする有力馬達が先行する一方で、本馬とルーミングが揃って馬群から離された最後方を走る展開となった。向こう正面では先頭から15馬身もつけられてしまい、直線入り口でもまだ10頭立ての9番手という絶望的な位置取りだった。直線では逃げるゴーフォージンにタバスコキャットが並びかけながら伸び、この2頭が後続を大きく引き離していったが、それ以外の馬達は伸びが無く、本馬はそれらを次々にかわしてきた。そして最後は3着に食い込んだ。もっとも、ゴーフォージンを3/4馬身競り落として勝利したタバスコキャットからは6馬身3/4差をつけられており、まだ一線級と言えるほどの実力は無かったようである。

夏場も休み無く走り、まずは6月のオハイオダービー(米GⅡ・D9F)に出走した。リズンスターS2着馬スマイリンシンギンサム、ルイジアナダービーの勝ち馬カンダリー、ラファイエットSの勝ち馬エクスクルシヴプラリネといった馬達も参戦してきた。スマイリンシンギンサムがケンタッキーダービーで10着だったにも関わらず単勝オッズ2.7倍の1番人気、ゴメス騎手騎乗の本馬が単勝オッズ3.4倍の2番人気となった。スタートが切られると、単勝オッズ31.4倍の6番人気馬エクスクルシヴプラリネが先頭に立ち、本馬は相変わらず最後方を追走した。そして7番手で直線に入ると、一気に追い上げてきた。しかし逃げていたエクスクルシヴプラリネだけに届かず、2馬身3/4差の2着に敗れた。

7月のラウンドテーブルS(米GⅢ・D9F)でもゴメス騎手とコンビを組み、エクスクルシヴプラリネ、前走3着のスマイリンシンギンサム、同5着のカンダリーなどを抑えて、単勝オッズ2.5倍の1番人気に支持された。ここでもやはり最後方を追走し、直線入り口でもまだ後方3番手。ここからやはり豪快に伸びては来たものの、単勝オッズ18.5倍の6番人気馬のダンヴィルと、単勝オッズ5倍の3番人気馬カンダリーの2頭に届かず、勝ったダンヴィルから2馬身1/4差の3着に敗れた。

次走は、GⅠ競走2度目の出走となるハスケル招待H(米GⅠ・D9F)だった。ここには、ケンタッキーダービーで12着に敗れ去ったためにプリークネスSには不参加だった、ベルモントフューチュリティS・ハッチソンS・フロリダダービー・ブルーグラスS・メトロポリタンH・ドワイヤーSの勝ち馬ホーリーブルの姿もあった。他にもフラミンゴSの勝ち馬メドウフライト、カンダリーなどが出走していた。ホーリーブルが126ポンドのトップハンデながらも単勝オッズ1.2倍という圧倒的な1番人気に支持され、斤量2位の118ポンドだったメドウフライトが単勝オッズ6.9倍の2番人気、同じ118ポンドの本馬は単勝オッズ11.7倍の3番人気だった。スタートが切られると逃げ馬のホーリーブルがやはり先頭に立った。シーフェルト騎手が騎乗した本馬は後方2番手につけて、直線入り口4番手から追い込みを開始した。しかしこの斤量でもホーリーブルは強く、そのまま逃げ切って勝利。本馬はメドウフライトも捕まえられず、ホーリーブルの3馬身半差3着に敗れた。

アーカンソーダービー以外は追い込んで届かないレースを繰り返していた本馬だったが、ジェリー・ベイリー騎手と初めてコンビを組んで、単勝オッズ6.5倍の3番人気で出走したトラヴァーズS(米GⅠ・D10F)では、やや状況が変わった。結果から書けば2着であり、やはり勝つ事は出来なかったが、大きく離された最後方追走から四角で位置取りを上げると、直線で先頭をひた走る単勝オッズ1.8倍の1番人気馬ホーリーブルに襲い掛かって首差まで迫り、単勝オッズ2.6倍の2番人気だったプリークネスS・ベルモントSの勝ち馬タバスコキャット(3着)を17馬身もちぎったのである。ホーリーブルがいなければ史上稀に見る大圧勝だった(タバスコキャット陣営がホーリーブル潰しのためにペースメーカーを準備していたのがレースに影響を与えた一面はあっただろうが)わけであり、ホーリーブルと本馬の斤量は今回同じだった事も考えると、本馬の実力が確実に上昇している事を示す内容だった。

9月には加国のウッドバイン競馬場で行われたモルソンエクスポートミリオン(加GⅡ・D9F)に、主戦となったベイリー騎手と共に参戦。スワップスS2着馬ドラマティックゴールド、前走トラヴァーズSでは4着だったジムダンディSの勝ち馬アナカウンティドフォー、加国の三冠競走第2戦プリンスオブウェールズSを勝ってきたブルーシズミルなどを抑えて、単勝オッズ2.9倍の1番人気に支持された。ここでもやはり最後方に陣取ったが、今回は三角から進出を開始し、直線入り口では4番手まで押し上げてきた。ここから末脚を伸ばしたものの、単勝オッズ4.3倍の2番人気馬ドラマティックゴールドと、単勝オッズ7.6倍の4番人気馬ブルーシズミルの2頭に届かずに、勝ったドラマティックゴールドから4馬身半差の3着に敗退した。

次走のスーパーダービー(米GⅠ・D10F)では、サンフェリペSの勝ち馬でケンタッキーダービー5着のソウルオブザマター、ペンシルヴァニアダービーを勝ってきたメドウフライト、デルマー招待ダービーを勝ってきたオーシャンクレストなどが対戦相手となった。ソウルオブザマターが単勝オッズ2.9倍の1番人気、本馬が単勝オッズ3.1倍の2番人気となった。やはり最後方を追走した本馬は、先頭から最大10馬身もの差を直線で猛然と縮めてきた。しかし好位から抜け出したソウルオブザマターに首差届かず2着に敗退。これで、7戦連続で2着又は3着となってしまった。

BCクラシック(3歳時)

なかなか勝ち切れないレースが続いた本馬の次走は、チャーチルダウンズ競馬場で行われたBCクラシック(米GⅠ・D10F)となった。出走していれば確実に大本命になっていたはずのホーリーブルはブリーダーズカップ登録が無かったため、高額の追加登録料を嫌った陣営が早々に回避を表明。代わりに本命に押し出されていたジョッキークラブ金杯の勝ち馬コロニアルアッフェアーもレース2週間前に故障のため引退に追い込まれてしまい、本命不在の大混戦となった。

出走馬は、タバスコキャットとゴーフォージンの米国三冠競走勝ち馬2頭、ソウルオブザマター、グッドウッドHで2着してきたドラマティックゴールドといった既対戦組の他に、サンタアニタH・ハリウッド金杯・ノーフォークS・ハリウッドフューチュリティ・チャールズHストラブS・オークローンHとGⅠ競走6勝を挙げていた米国西海岸の強豪ベストパル、サバーバンH2連覇・ウッドメモリアル招待S・ガルフストリームパークH・ピムリコスペシャルHとGⅠ競走5勝のデヴィルヒズデュー、前年にパシフィッククラシックS・ウッドワードSなどを勝ちBCクラシックでも2着してエクリプス賞最優秀古馬牡馬に選ばれていたバートランドといった、初顔合わせとなる地元米国の有力馬。それに、英国際S2回・エクリプスSの勝ち馬エズード、デューハーストS・セントジェームズパレスSの勝ち馬グランドロッジ、愛チャンピオンSの勝ち馬セザンヌ、英チャンピオンSの勝ち馬デルニエアンプルール、前走凱旋門賞で敗戦するまではパリ大賞・ジャンプラ賞など10戦無敗だったミルコム、早めに米国に遠征してきてマンノウォーS2着・ジョッキークラブ金杯3着の実績を残していたフラッグダウンといった欧州の実力馬も参戦してきて、合計14頭による戦いとなった。

本馬は直前まで地元ピムリコ競馬場で調整されており、スモール師が運転する車に12時間揺られてチャーチルダウンズ競馬場に到着したのはレース前日だった。タバスコキャットが単勝オッズ4.5倍の1番人気、ベストパルとドラマティックゴールドのカップリングと、デヴィルヒズデュー単独が並んで単勝オッズ6.8倍の2番人気、ベイリー騎手が騎乗する本馬が単勝オッズ8.5倍の4番人気となった。

スタートが切られると、まずはバートランドが一気に先頭に立ち、ドラマティックゴールド、タバスコキャット、ゴーフォージンなどを引き連れて逃げを打った。一方の本馬は例によって最後方を追走し、向こう正面で少し位置取りを上げると、三角から四角にかけて外を通って一気に上がって行った。直線に入るとドラマティックゴールドが先頭に立ち、そこへ外側からタバスコキャットが並びかけて叩き合いとなったが、さらに外側から本馬がやって来て、残り半ハロン地点からは本馬とタバスコキャットの叩き合いとなった。最後は本馬が僅かに前に出て、2着タバスコキャットに首差、3着ドラマティックゴールドにはさらに1馬身半差をつけて優勝した。

3歳時は14戦して勝ち星は3勝に留まったが、2着5回、3着6回であり、着外は1度も無かったという安定感だった。

競走生活(4歳時)

翌4歳時も第2第3のタイトルを戴冠するべく走り続けた。なお、この年はベイリー騎手に代わって、同年2月のドンHで故障して引退したホーリーブルの主戦だったマイク・スミス騎手が、本馬の主戦を務めることになった。

まずは3月のニューオーリンズH(米GⅢ・D9F)に出走した。本馬には125ポンドのトップハンデが課せられ、これは他馬勢よりも7~15ポンドも重いものだった。それでも、サンパスカルH・サンアントニオHで連続3着してきたトスオブザコイン、フライクライなどに比べると実績的には群を抜いており、単勝オッズ1.8倍の1番人気に支持された。スタートが切られると、本馬陣営が用意したペースメーカー役のスティックスアンドブリンクスが先頭に立った。ペースメーカー役を準備してもらえる立場になっていた本馬は、やはり他馬から大きく離された最後方につけた。役割を果たしたスティックスアンドブリンクスが四角で後退すると、本馬が入れ代わりに上がっていった。そして直線ではフライクライやトスオブザコインをあっさりと差し切り、2着フライクライに3馬身差をつけて勝利した。

まずは順調なスタートを切った本馬は、続いてオークローンH(米GⅠ・D9F)に向かった。ところが、ここで本馬は巨大な壁に突き当たってしまう。その壁とは、芝路線からダート路線に転向した途端に目覚めて、NYRAマイルH・ドンH・ガルフストリームパークHなど5連勝中のシガーであり、そしてその主戦はかつて本馬とコンビを組んでいたベイリー騎手であった(ベイリー騎手がこの年に本馬の主戦から降りたのは、シガーを優先したためだったのである)。このレースには他にも、BCクラシック5着後にサンアントニオH勝利・サンタアニタH2着など活躍していたベストパル、ベストパルを破ってサンタアニタHを勝利していた欧州からの移籍馬アージェントリクエスト、プリークネスSこそ8着だったが、その後は裏路線ながらもオマハ金杯S・フェアマウントダービー・エセックスH・レイザーバックHなど破竹の8連勝中だったシルバーゴブリン、前年のBCマイルで2着していたリュパン賞の勝ち馬ヨハンクアッツといった有力馬の姿もあった。このメンバー構成の中で、本馬は122ポンドのトップハンデを課せられてしまった。シガーが単勝オッズ2.7倍の1番人気に支持され、本馬は単勝オッズ4倍の2番人気となった。ここでもペースメーカー役のスティックスアンドブリンクスが先頭に立ち、本馬は最後方につけた。そして四角で位置取りを上げて追い込んできたのだが、2ポンドのハンデを与えたシガーと、3ポンドのハンデを与えたシルバーゴブリンに全く届かず、勝ったシガーから6馬身半差、2着シルバーゴブリンから4馬身差の3着に敗れてしまった。

続くピムリコスペシャルH(米GⅠ・D9.5F)では、シガーに加えて、BCクラシックでは本馬の11着だったデヴィルヒズデュー、2年前のハスケル招待Hの勝ち馬キッシンクリスなどの姿もあった。今回はシガーが122ポンドのトップハンデで、本馬とデヴィルヒズデューは121ポンドだった。しかしシガーが当然のように単勝オッズ1.4倍の1番人気に支持され、本馬が単勝オッズ4.7倍の2番人気となった。このレースに本馬陣営はスティックスアンドブリンクスを出走させなかった。そのために行く馬がおらず、シガーが先頭に押し出されて単騎逃げを打つ展開となった。本馬は6頭立ての後方2番手で様子を伺い、三角から四角にかけて上がっていった。しかしスローペースで完全な前残りのレースになってしまい、逃げ切って勝ったシガーから5馬身差、2番手で粘ったデヴィルヒズデューから2馬身3/4差の3着に敗退してしまった。

その後は、初めて米国西海岸に遠征を行い、カリフォルニアンS(米GⅠ・D9F)に出走した。シガーは不在だったが、オークローンHで4着だったベストパル、マーヴィンルロイHを勝ってきたトスオブザコイン、パシフィッククラシックSの勝ち馬ティナーズウェイなどが対戦相手となった。地元の声援を受けたベストパルが単勝オッズ2.5倍の1番人気で、本馬が単勝オッズ3.5倍の2番人気となった。ここで本馬は珍しく、馬群の中団につけるという作戦に出た。そして向こう正面で位置取りを上げると、三角では既に先頭に並びかけていた。そして直線に入ると抜け出して、2着トスオブザコインに2馬身3/4差で勝利。今までとは異なるスタイルで2つ目のGⅠ競走タイトルを獲得した。

続くハリウッド金杯(米GⅠ・D10F)では、遅れて西海岸に遠征してきたシガーと3度目の対戦となった。他の出走馬は、トスオブザコイン、前走で3着だったティナーズウェイ、同4着だったベストパル、オークローンHで6着だったアージェントリクエスト、サンバーナーディノH2回・マーヴィンルロイH・サンパスカルHの勝ち馬デルマーデニス、プリークネスSで6着後に長期休養に入っていたブルミンアフェアーだった。シガーが単勝オッズ1.9倍の1番人気に支持され、本馬が単勝オッズ4.1倍の2番人気となった。ところが発走時にスターティングゲートに頭をぶつけた時点で事実上本馬のレースは終わってしまい、勝ったシガーから10馬身半差をつけられた6着に敗退した。

シガーはこの1戦のみで東海岸に戻っていったが、本馬は調子を落としてしまった。次走のパシフィッククラシックS(米GⅠ・D10F)では、前走2着のティナーズウェイ、同4着のブルミンアフェアー、BCクラシックで本馬の5着後にベルエアHを勝っていたソウルオブザマター、前年のハリウッド金杯の勝ち馬スルーオブダマスカスなどを抑えて、単勝オッズ2.6倍の1番人気に支持された。このレースに限り、本馬にはゲイリー・スティーヴンス騎手が騎乗した。しかし最後方の位置取りから、道中で殆ど順位を上げることが出来ず、2連覇を果たしたティナーズウェイから6馬身差をつけられた5着と完敗した。

その後は東海岸に戻り、メドウランズCH(米GⅠ・D9F)に出走した。ホイットニーH2着馬ルカリエール、イリノイダービー・モルソンエクスポートミリオンなどを勝ってきたピークスアンドヴァレーズ、前年の同競走勝ち馬コンヴェアー、ボルチモアBCH・ポリネシアンSを勝ってきたプアーバットアネストなどが対戦相手となった。本馬は他馬勢より6~9ポンド重い122ポンドのトップハンデだったが、プリークネスSで7着だったルーミングとのカップリングながらも、単勝オッズ2.6倍の1番人気に支持された。レースではルーミングは最初から蚊帳の外であり、他馬5頭が一団となって進んだ。本馬はその馬群の中では最後方の位置取りだった。しかし斤量差が効いたのか、末脚が伸びず、勝ったピークスアンドヴァレーズから4馬身半差、2着プアーバットアネストから2馬身差の3着に敗退した。

それでも史上初の2連覇を目指して、ベルモントパーク競馬場で行われたBCクラシック(米GⅠ・D10F)に参戦した。対戦相手は、ウッドワードS・ジョッキークラブ金杯も勝つなど目下11連勝中のシガー、ジョッキークラブ金杯でシガーに迫る2着だったホイットニーHの勝ち馬アナカウンティドフォー、エクリプスS・英国際Sなど8連勝中のホーリング、グッドウッドHを勝ってきたソウルオブザマター、ジェロームHの勝ち馬フレンチデピュティ、ピークスアンドヴァレーズ、グッドウッドHで2着してきたティナーズウェイ、前走4着のルカリエールなどだった。シガーが単勝オッズ1.7倍という断然の1番人気に支持されており、本馬を含む他馬は基本的にその他大勢扱いだった。その中でも本馬は前年の覇者にも関わらず、単勝オッズ20.6倍の8番人気止まりだった。レースでは前年と同様に最後方を追走したが、最後まで前年のような行きっぷりが見られることは無く、勝ったシガーから15馬身差をつけられて8着に沈んだ。

その後は、フェアグラウンズ競馬場で行われたダート8.5ハロンの一般競走を引退レースとして選択した。鞍上は最初で最後のコンビとなるジェリリン・ブラウン騎手だった。さすがにここでは格が違い、単勝オッズ2倍の1番人気に支持された。そしてスタートから離れた最後方を走り、直線に入ってから怒涛の追い込みを繰り出すという、本馬が一番強かった時期の走り方そのままで、2着カンダリーに2馬身半差で勝利。4歳時9戦3勝の成績で現役生活に別れを告げた。

競走馬としての特徴

本馬は後方からレースを進めることが多く、安定感はあったが、先頭に届かないままゴールという事もしばしばあった。また、同期の大物ホーリーブルには2戦2敗で、ホーリーブル引退後に出現した超大物シガーには4戦4敗の対戦成績。BCクラシックを勝ってはいるが、どちらかというとバイプレイヤー的な印象が強い馬である。それでも、獲得賞金総額は307万9350ドルに達し、メリーランド州産馬としては史上3頭しかいない300万ドルホースの1頭となった(残りの2頭はシガーとアワッド)。

また、アーカンソーダービーやBCクラシックで見せた最後方からの追い込みの迫力は並々ならぬものであった。特にアーカンソーダービーの追い込みはあり得ないほど凄まじく、機会があれば是非一度は見てほしいものである。筆者が過去にリアルタイムで見た追い込み劇の中で最も衝撃を受けたのは、ブロードアピールが勝った2000年の根岸Sなのだが、このアーカンソーダービーの映像もそれに引けを取らないほどの印象度であった。

血統

Broad Brush Ack Ack Battle Joined Armageddon Alsab
Fighting Lady
Ethel Walker Revoked
Ethel Terry
Fast Turn Turn-to Royal Charger
Source Sucree
Cherokee Rose Princequillo
The Squaw
Hay Patcher Hoist the Flag Tom Rolfe Ribot
Pocahontas
Wavy Navy War Admiral
Triomphe
Turn to Talent Turn-to Royal Charger
Source Sucree
Hidden Talent Dark Star
Dangerous Dame
Fara's Team Tunerup The Pruner Herbager Vandale
Flagette
Punctilious Better Self
Puccoon
Our Girl Rocky Royale Rockefella
Narcisse
Nell-Girl I Appeal
Nell K.
Specialization Princely Native Raise a Native Native Dancer
Raise You
Charlo Francis S.
Neutron
Special Vintage Specialmante Nigromante
Special Touch
Dark Duet Spy Song
Dark Vintage

ブロードブラッシュは当馬の項を参照。1994年には北米首位種牡馬を獲得しているが、その理由の大部分は本馬のBCクラシック制覇によるものである。

母ファラズチームはテストS(米GⅠ)・プライオレスS(米GⅡ)に勝つなど21戦6勝の成績を残した名牝。ファラズチームの半弟にはデラフィールド(父アイランドホイール)【エセックスH(米GⅢ)】が、ファラズチームの半妹クロスオーバードリームズ(父バッカルー)の子にはミスターマッカートニー【サッコー少佐大賞(伯GⅠ)】が、ファラズチームの半妹シネステシア(父クワイエットアメリカン)の子にはメンタリティ【豪シャンペンS(豪GⅠ)・ランドウィックギニー(豪GⅠ)・ジョージメインS(豪GⅠ)・エクスプレスウェイS(豪GⅡ)・カンタベリーS(豪GⅡ)・プレミアS(豪GⅡ)】がいる。→牝系:A5号族

母父テューナラップは、パターソンH(米GⅡ)・メドウランズCH(米GⅡ)・ホーソーン金杯H(米GⅡ)に勝つなど29戦9勝の成績を残した中堅競走馬。テューナラップの父ザプルナーはエルバジェ産駒で、アメリカンダービー勝ちなど45戦8勝だった。

競走馬引退後

競走馬を引退した本馬は、メリーランド州チェサピークシティにあるノースビュースタリオンステーションで種牡馬入りした。初年度の種付け料は1万ドルに設定された。本馬は米国産馬でありながら、血統表にボールドルーラーノーザンダンサーミスタープロスペクターも無いという異流血脈の持ち主であり、後世にドミノ系の貴重な血を伝えて欲しいところであったが、種牡馬成績は振るわなかった。勝ち上がり率こそ58%と悪くなかったが、大物競走馬に恵まれず、ステークスウイナーは10頭に過ぎなかった。代表産駒は2007・08年に2年連続でエクリプス賞最優秀障害競走馬に選ばれたグッドナイトシャートといった程度である。

2004年にオクラホマ州オクラホマ馬産センターに移動して種牡馬生活を続けた。当初はオクラホマ州繋養種牡馬としては上位の成績を収めていたが、徐々に産駒成績は下がり、2011年には交配数が0となり、翌2012年に正式に種牡馬を引退した。その後もオクラホマ馬産センターで余生を送っていたが、2015年3月に24歳で他界し、オクラホマ馬産センターに埋葬された。繁殖牝馬の父としては、ジャパンダートダービー・フェブラリーSを制したテスタマッタなどを出している。

主な産駒一覧

生年

産駒名

勝ち鞍

2001

Good Night Shirt

米グランドナショナル(米GⅠ)

TOP