シルヴァーホーク

和名:シルヴァーホーク

英名:Silver Hawk

1979年生

鹿毛

父:ロベルト

母:グリヴィタス

母父:アメリゴ

競走馬としてはGⅢ競走勝ち止まりだったが種牡馬としてはGⅠ競走の勝ち馬を続出させたグラスワンダーの父

競走成績:2・3歳時に英愛で走り通算成績8戦3勝2着3回3着1回

誕生からデビュー前まで

米国ケンタッキー州クローヴァリーファームの生産馬で、1歳7月にファシグティプトン社が実施したセリにおいて、バックラムオークファームの所有者マームード・フストク氏(後にクリスタルグリッターズなども所有)により7万7千ドルという安値で購入された。父ロベルトは名種牡馬であるが、本馬がデビューした時期にはまだそれほど成功していたわけではなく(本馬より前の世代から出たGⅠ競走勝ち馬は1頭だけ)、本馬に対する注目度も低かった。本馬は英国ニューマーケットで開業していたミカエル・アルビナ調教師に預けられたが、このアルビナ師はエジプト出身の無名調教師だった。

競走生活(2歳時)

2歳時にヤーマウス競馬場で行われた芝6ハロンの未勝利ステークスでデビューして、2馬身1/4差で快勝。次走のチャートシーロックS(T6F)では、後のクリスタルマイルの勝ち馬サンドハーストプリンスの4馬身差2着に敗退した。しかし8月のソラリオS(T7F)では、後にホーリスヒルS・クリスタルマイルを勝つモンテキンを5馬身差の2着に破って圧勝。次走のロイヤルロッジS(英GⅡ・T8F)では、後に仏グランクリテリウム・ベンソン&ヘッジズ金杯で2着するノーウィックの3馬身差2着だった。

2歳時の成績は4戦2勝で、グループ競走の勝ちも無く、英タイムフォーム社のレーティングは118ポンドに過ぎなかった。しかしソラリオSで負かした馬の中に、デューハーストSを7馬身差で圧勝して英タイムフォーム社のレーティングで2歳馬トップの132ポンドを獲得したウインドアンドワザリング、コヴェントリーSを勝ったレッドサンセット、ホーリスヒルSを勝ったモンテキンなどがいたため、本馬の評価はある程度上昇することになった。馬主フストク氏の所有馬としては、本馬の他にもグリーンフォレストが同年のモルニ賞・サラマンドル賞・仏グランクリテリウムを制する活躍を見せており、彼にとってこの年は当たり年だった。

競走生活(3歳時)

3歳時は4月のクレイヴンS(英GⅢ・T8F)から始動して、2着同着だったニューラルゴとウォンチョイの2頭に1馬身半差をつけて勝利した。

そして次走の英2000ギニー(英GⅠ・T8F)では1番人気の評価を受ける事になった。しかし、クリテリウムドメゾンラフィットの勝ち馬でサラマンドル賞2着のジノ、ウインドアンドワザリング、リッチモンドSの勝ち馬でデューハーストS3着のテンダーキングなど4頭に屈して、勝ったジノから5馬身1/4差をつけられた5着に敗退した。

次走の英ダービー(英GⅠ・T12F)では、バリモスS・ニジンスキーSなど3戦無敗のゴールデンフリース、ノアイユ賞・リュパン賞をいずれも2馬身差で勝ってきたペルセポリス、ウィリアムヒルフューチュリティS・ブルーリバンドトライアルSの勝ち馬カウントパーレン、リングフィールドダービートライアルSを勝ってきたウィリアムヒルフューチュリティS3着馬ジャルムード、サンダウンクラシックトライアルSを勝ってきたピースタイム、チェスターヴァーズを勝ってきたスーパーサンライズ、ダンテS2着馬パレスゴールド、チェスターヴァーズ2着馬ファーザールーニー、ノーウィックなどが対戦相手となった。トニー・マーレー騎手と組んだ本馬は5番人気と、前走より評価を下げていた。レースでは馬群の中団を追走して直線勝負に賭けた。しかしタッテナムコーナーを下りきったところで馬群に包まれて抜け出すのに手間取り、ようやく外側に持ち出して猛然と追い上げてきたときには時既に遅く、好位から直線で鋭く伸びて勝ったゴールデンフリースから4馬身差、2着に粘った同父馬タッチングウッド(後に英セントレジャー・愛セントレジャーを制覇)から1馬身差の3着までだった。

次走の愛ダービー(愛GⅠ・T12F)では、ゴールデンフリースが回避(英ダービーを最後に早くも引退)したため、仏ダービー・ベレスフォードS・ガリニュールSの勝ち馬アサートとの一騎打ちムードだった。しかし結果は勝ったアサートに8馬身差をつけられて2着に完敗。その後の調教中に球節を故障したために、3歳時4戦1勝の成績で競走馬を引退した。

血統

Roberto Hail to Reason Turn-to Royal Charger Nearco
Sun Princess
Source Sucree Admiral Drake
Lavendula 
Nothirdchance Blue Swords Blue Larkspur
Flaming Swords 
Galla Colors Sir Gallahad
Rouge et Noir
Bramalea Nashua Nasrullah Nearco
Mumtaz Begum
Segula Johnstown
Sekhmet
Rarelea Bull Lea Bull Dog
Rose Leaves
Bleebok Blue Larkspur
Forteresse
Gris Vitesse Amerigo Nearco Pharos Phalaris
Scapa Flow
Nogara Havresac
Catnip
Sanlinea Precipitation Hurry On
Double Life
Sun Helmet Hyperion
Point Duty
Matchiche Mat de Cocagne Birikil Biribi
Kill Lady
Fascine Fastnet
Mistigrise
Chimere Fabuleuse Coaraze Tourbillon
Corrida
Nine Nino
Iordane

ロベルトは当馬の項を参照。

母グリヴィタスは現役成績6戦2勝ではあるが、勝ち星のうち1つがジャックルマロワ賞だった。グリヴィタスの母マチッシュと祖母シメルファビュリューは共にノネット賞の勝ち馬で、マチッシュの半弟にはヴィンチ【サンルイレイS】がいる。本馬の半姉ペイパルディクリー(父ノーブルディクリー)の子にペイパルパワー【ホープフルS(米GⅠ)・ハッチソンS(米GⅢ)】、孫にアギーエンジニア【サンパスカルS(米GⅡ)】が、本馬の半妹ビューティフルベドウィン(父ヒズマジェスティ)の子にワンダリングスター【EPテイラーS(加GⅡ)】、孫にウォーコマンド【デューハーストS(英GⅠ)・コヴェントリーS(英GⅡ)・愛フューチュリティS(愛GⅡ)】、ロールアウトザカーペット【新1000ギニー(新GⅠ)】がいる。しかし近親にそれほど活躍馬が多くいるわけではない。シメルファビュリューの7代母ロンリーは英オークス馬で、名障害競走馬ミルハウス、名種牡馬インリアリティ、日本で活躍したタマモクロスとミヤマポピーの兄妹は同じ牝系だが、いずれも近親とは言い難いほど離れている。→牝系:F21号族①

母父アメリゴはフォートマーシーの項を参照。

競走馬引退後

競走馬を引退した本馬は米国ケンタッキー州エアドリースタッドで種牡馬入りした。一流とは言いがたい競走成績だったが、エアドリースタッドの所有者ブレアトン・ジョーンズ氏は本馬に興味を抱き、進んで本馬の種牡馬シンジケートを結成したそうである。当初は繁殖牝馬の質量共に恵まれなかったが、3年目産駒から仏オークス馬レディインシルヴァーや、ノーフォークS・セクレタリアトS・オークツリー招待Sを制したホークスターを出して注目を集めた。この2頭の活躍以降は繁殖牝馬の質も上がり、その中から英ダービー馬ベニーザディップ、英セントレジャー馬ムタファーウェク、そして日本の怪物グラスワンダーが登場したのである。種牡馬入り当初の種付け料は1万5千ドルだったが、晩年には7万5千ドルに達していた。産駒のステークスウイナーは76頭以上である。

産駒は10ハロン以上の距離に強い傾向があり、マイル以下の活躍馬は少ない(産駒の平均勝利距離は9.62ハロン)。また、ダートで走る子は少なく、明らかに芝向き種牡馬である。本馬は日本の競馬に適合したロベルト直子の名種牡馬ということで、グラスワンダーを筆頭に多くの産駒が日本に輸入されている。長年にわたってエアドリースタッドの中心的種牡馬として活躍していたが、2003年秋に種牡馬を引退。そして2008年6月に老衰のため29歳で他界、遺体はエアドリースタッドに埋葬された。本馬の死去を報じる米ブラッドホース誌の記事内で代表産駒として真っ先に挙げられているのはグラスワンダーである(ベニーザディップが2番目)。

GⅠ競走を勝った牡駒の大半が種牡馬として失敗に終わり、後継種牡馬としてはグラスワンダーが孤軍奮闘している状況である。最近はグラスワンダーの代表産駒スクリーンヒーローが種牡馬として活躍を始めており、しばらくは直系が残りそうである。繁殖牝馬の父としてはブラックホークなど54頭以上のステークスウイナーを出している。

主な産駒一覧

生年

産駒名

勝ち鞍

1985

Silver Lane

グロット賞(仏GⅢ)

1986

Dansil

アーカンソーダービー(米GⅡ)

1986

Hawkster

ノーフォークS(米GⅠ)・セクレタリアトS(米GⅠ)・オークツリー招待H(米GⅠ)・デルマーダービー(米GⅡ)

1986

Lady in Silver

仏オークス(仏GⅠ)

1986

Silver Medallion

キーンランドBCS(米GⅢ)

1987

Silver Ending

ペガサスH(米GⅠ)・アーカンソーダービー(米GⅡ)・エルカミノリアルダービー(米GⅢ)

1988

Magnificent Star

ヨークシャーオークス(英GⅠ)

1988

Red Bishop

サンフアンカピストラーノ招待H(米GⅠ)・クイーンエリザベスⅡ世C・ブリガディアジェラードS(英GⅢ)・香港ヴァーズ

1989

Silver Ray

ホイストザフラッグS(米GⅢ)

1989

Silver Wisp

ジョッキークラブS(英GⅡ)

1990

Silver Wizard

アメリカンH(米GⅡ)

1990

Zoonaqua

オークリーフS(米GⅠ)・ソレントS(米GⅢ)・カウンテスファーガーH(米GⅢ)

1991

Rory Creek

バドワイザーエンデュランスS(米GⅢ)

1991

Silver Wedge

クイーンズヴァーズ(英GⅢ)

1992

Devil River Peek

ヴィットリオディカプア賞(伊GⅠ)・ドルトムント経済大賞(独GⅢ)・ヘッセンポカル(独GⅢ)・シュプレティレネン(独GⅢ)

1992

Fahal

ローズオブランカスターS(英GⅢ)

1992

Hawk Attack

セクレタリアトS(米GⅠ)・アーリントンクラシックS(米GⅡ)

1993

Magnificient Style

ムシドラS(英GⅢ)

1993

Memories of Silver

クイーンエリザベスⅡ世CCS(米GⅠ)・ビヴァリーDS(米GⅠ)・ダイアナH(米GⅡ)・ニジャナS(米GⅢ)・ジャストアゲームBCH(米GⅢ)・ボールストンスパBCH(米GⅢ)

1994

Benny the Dip

英ダービー(英GⅠ)・ロイヤルロッジS(英GⅡ)・ダンテS(英GⅡ)

1994

トキオワイルド

京都ジャンプS(JGⅢ)

1995

Albarahin

ドラール賞(仏GⅡ)

1995

Silver Rhapsody

プリンセスロイヤルS(英GⅢ)

1995

グラスワンダー

朝日杯三歳S(GⅠ)・有馬記念(GⅠ)2回・宝塚記念(GⅠ)・京成杯三歳S(GⅡ)・京王杯スプリングC(GⅡ)・毎日王冠(GⅡ)

1995

ミラクルタイム

毎日杯(GⅢ)・京都四歳特別(GⅢ)

1996

Mutafaweq

英セントレジャー(英GⅠ)・ドイツ賞(独GⅠ)・加国際S(加GⅠ)・コロネーションC(英GⅠ)・キングエドワードⅦ世S(英GⅡ)

1996

Silver Comic

ミセスリヴィアS(米GⅡ)

1997

Aiglonne

フィユドレール賞(仏GⅢ)

1997

Mubtaker

ジェフリーフリアS(英GⅡ)3回・セプテンバーS(英GⅢ)・カンバーランドロッジS(英GⅢ)・ジョンポーターS(英GⅢ)

1997

シルヴァコクピット

きさらぎ賞(GⅢ)・毎日杯(GⅢ)

1998

シンコウカリド

セントライト記念(GⅡ)

1999

Narooma

ヴィンターケーニヒン賞(独GⅢ)

1999

Wonder Again

ガーデンシティBCH(米GⅠ)・ダイアナH(米GⅠ)・レイクプラシッドH(米GⅡ)・ニューヨークH(米GⅡ)・ノーブルダムゼルH(米GⅢ)

2000

Almushahar

英シャンペンS(英GⅡ)

2001

Silverskaya

ロワイヨモン賞(仏GⅢ)・ミネルヴ賞(仏GⅢ)

2002

Exhibit One

パオロメザノッテ賞(伊GⅢ)・カルロダレッシオ賞(伊GⅢ)

2003

Germance

サンタラリ賞(仏GⅠ)・ペネロープ賞(仏GⅢ)・ノネット賞(仏GⅢ)

2003

Nashoba's Key

ヴァニティ招待H(米GⅠ)・イエローリボンS(米GⅠ)・サンタマルガリータ招待H(米GⅠ)・ミレイディH(米GⅡ)・クレメントLハーシュH(米GⅡ)

2004

Bold Hawk

ホーソーンダービー(米GⅢ)

2004

Tazeez

アールオブセフトンS(英GⅢ)・ニューマーケットダーレーS(英GⅢ)・ケンブリッジシャーH

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