和名:アジュディケーティング |
英名:Adjudicating |
1987年生 |
牡 |
黒鹿 |
父:ダンチヒ |
母:リゾルヴァー |
母父:レヴュワー |
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米国2歳GⅠ競走を2勝して日本に種牡馬として輸入され、8年連続で地方競馬の首位種牡馬に輝き、「地方のサンデーサイレンス」の異名を取る |
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競走成績:2・3歳時に米で走り通算成績16戦5勝2着2回3着3回 |
誕生からデビュー前まで
米国の名馬産家オグデン・ミルズ・フィップス氏の生産・所有馬で、2歳時は当時フィップス氏の専属だったクロード・“シャグ”・マゴーヒー調教師、3歳時にはフィリップ・G・ジョンソン調教師が管理した。
競走生活(2歳時)
2歳7月にベルモントパーク競馬場で行われたダート6ハロンの未勝利戦でデビューして5馬身半差で圧勝。翌月にサラトガ競馬場で出たダート6ハロンの一般競走も4馬身差で楽勝した。しかしサプリングS(GⅡ・D6F)では、後のフォールハイウェイトH勝ち馬カーソンシティ、後のトムフールS勝ち馬ミスターナスティの2頭に後れを取り、カーソンシティの7馬身3/4差3着に敗北。さらにホープフルS(GⅠ・D6.5F)では、サラトガスペシャルSなど4戦無敗で臨んできた後のプリークネスS勝ち馬サマースコールの5馬身半差4着に敗れてしまった。
しかしベルモントフューチュリティS(GⅠ・D7F)では、セニョールペテの2馬身差2着に入った。続くカウディンS(GⅠ・D7F)では2着スラヴィックに首差で勝利してGⅠ競走を初制覇。さらにシャンペンS(米GⅠ・D8F)でも、四角で外側から先頭に並びかけると同馬主同厩のリズムとの直線の一騎打ちを首差制して、GⅠ競走を連勝した。
その後はガルフストリームパーク競馬場に向かい、大一番のBCジュヴェナイル(GⅠ・D8.5F)に出走した。リズム、ブリーダーズフューチュリティSを勝ってきたスラヴィック、ノーフォークSを勝ってきたグランドキャニオン、ノーフォークSで2着してきたシングルドーン、サニースロープSを勝ってきたプレザントタップ、ローレルフューチュリティを勝ってきた愛国調教馬ゴーアンドゴーなどが対戦相手となった。スラヴィックが単勝オッズ3.2倍の1番人気に支持されており、本馬とリズムのカップリングが単勝オッズ3.6倍の2番人気、グランドキャニオンが単勝オッズ5.4倍の3番人気と続いた。しかし本馬は外枠発走の上にスタートの出が悪く後方からのレースとなってしまい、そのまま見せ場無くリズムの16馬身差11着と惨敗を喫してしまった。2歳時の成績は8戦4勝だった。
競走生活(3歳時)
3歳時は3月のサウスウエストS(D8F)から始動した。しかしタラスコンという馬が、2着となった後のイリノイダービー勝ち馬ドットセロに12馬身差をつけて大圧勝し、本馬はドットセロから1馬身差の3着に敗退。この結果によりケンタッキーダービーを始めとする米国三冠競走は断念となった。
短期休養を経て6月のリヴァリッジS(GⅢ・D7F)に向かい、2着サイレントジェネレーションに半馬身差で勝利した。その後はアーリントンクラシックS(GⅡ・D9F)に向かったが、レキシントンS勝ち馬ホームアットラスト(3着)には先着するも、イリノイダービー・セントポールダービー2着馬サウンドオヴキャノンズに頭差屈して2着。次走のアメリカンダービー(GⅡ・D10F)では、サンフェリペS勝ち馬リアルキャッシュとホームアットラストの2頭に屈して、リアルキャッシュの6馬身差3着に敗れた。
その後は新境地を求めて芝レースに方向転換。しかしギャラントマンS(GⅢ・T9F)では、ソシアルレトリーの3馬身1/4差4着。セクレタリアトS(GⅠ・T10F)では、2着となったケンタッキーダービー馬アンブライドルドに3/4馬身差で勝利したスーパーアバウンドから9馬身1/4差をつけられた8着最下位。芝で結果を残すことはできなかった。
何とか活路を見出すべく再度ダート短距離路線に向かった。しかし、テストS・ジェニュインリスクS2回・プライオレスSなどの勝ち馬で前年のBCスプリントで2着してエクリプス賞最優秀短距離馬に選ばれていたセイフリーケプト、カーソンシティ、トゥルーノースH勝ち馬ミスターニッカーソンなどとの顔合わせとなったブージャムH(GⅢ・D6F)では、カーソンシティの3馬身3/4差5着に敗退してしまった。
次走はベルモントパーク競馬場で行われたBCスプリント(GⅠ・D6F)となったが、このレース前に本馬は日本のビッグジャパンファーム代表の川上晋一郎氏に購入された。そのため本番では日本の名手河内洋騎手を鞍上に迎えて挑んだ。対戦相手筆頭格は、ナンソープS・スプリントC・アベイドロンシャン賞・テンプルS・キングズスタンドSなど欧州短距離競走を勝ちまくって遠征してきた欧州競馬史上最強短距離馬の有力候補デイジュールであり、他にもカーソンシティ、前走ブージャムHで2着だったミスターニッカーソン、同4着だったセイフリーケプト、前年のBCスプリントを筆頭にサバーバンH・カーターH・トゥルーノースHを勝っていたダンシングスプリー、エインシェントタイトルBCHを勝ってきたコーウィンベイ、シェリダンSを勝ってきたブラックタイアフェアーなどの姿があった。デイジュールとコーウィンベイの2頭が並んで単勝オッズ3.4倍の1番人気、ダンシングスプリーが単勝オッズ5.7倍の3番人気となる一方で、本馬は単勝オッズ39.1倍の9番人気という低評価だった。
レースは単勝オッズ13.2倍の6番人気馬セイフリーケプトが逃げてそれをデイジュールが追う縦長の展開となったが、河内騎手は無理に追いかけずに後方に控えた。道中で心臓麻痺を起こして競走を中止したミスターニッカーソンに巻き込まれてシェイカーニットという馬も競走中止(2頭とも命を落とした)になる惨事があったが、本馬は影響を受けずに済んだ。そして直線に入ると追い上げて、デイジュールを首差抑えて勝ったセイフリーケプトから6馬身半差の4着(3着ブラックタイアフェアーからは2馬身1/4差)に入り、9番人気の評価を上回る着順となった。このレースを最後に3歳時8戦1勝の成績で競走馬を引退した。
血統
Danzig | Northern Dancer | Nearctic | Nearco | Pharos |
Nogara | ||||
Lady Angela | Hyperion | |||
Sister Sarah | ||||
Natalma | Native Dancer | Polynesian | ||
Geisha | ||||
Almahmoud | Mahmoud | |||
Arbitrator | ||||
Pas de Nom | Admiral's Voyage | Crafty Admiral | Fighting Fox | |
Admiral's Lady | ||||
Olympia Lou | Olympia | |||
Louisiana Lou | ||||
Petitioner | Petition | Fair Trial | ||
Art Paper | ||||
Steady Aim | Felstead | |||
Quick Arrow | ||||
Resolver | Reviewer | Bold Ruler | Nasrullah | Nearco |
Mumtaz Begum | ||||
Miss Disco | Discovery | |||
Outdone | ||||
Broadway | Hasty Road | Roman | ||
Traffic Court | ||||
Flitabout | Challedon | |||
Bird Flower | ||||
Lovely Morning | Swaps | Khaled | Hyperion | |
Eclair | ||||
Iron Reward | Beau Pere | |||
Iron Maiden | ||||
Misty Morn | Princequillo | Prince Rose | ||
Cosquilla | ||||
Grey Flight | Mahmoud | |||
Planetoid |
父ダンチヒは当馬の項を参照。
母リゾルヴァーは現役成績25戦6勝、パリスパイクSを勝った他に、オープンファイアS(米GⅡ)で2着、メイトロンS(米GⅠ)で3着などの成績がある。繁殖成績はかなり優秀で、本馬の半兄タイムフォーアチェンジ(父ダマスカス)【フラミンゴS(米GⅠ)・エヴァーグレイズS(米GⅢ)】、全妹ディスピュート【ケンタッキーオークス(米GⅠ)・ガゼルH(米GⅠ)・ベルデイムS(米GⅠ)・スピンスターS(米GⅠ)・ボニーミスS(米GⅡ)】も産んだ。本馬の半姉レイクレイム(父ミスタープロスペクター)と半姉バンキングアワーズ(父キートゥザミント)はいずれも日本に繁殖牝馬として輸入され、前者はアレアズマ【NTV盃】を産み、後者はゴールデンイースト【埼玉新聞杯(南関東GⅢ)】を産んだ。また、本馬の半姉ジュリスディクショナル(父ダマスカス)の子にはシークレットセイヴィングズ【ドンカスターマイル(豪GⅠ)】が、本馬の半妹インディクト(父ポリッシュネイビー)の子には日本に輸入されたドラールアラビアン【大井記念(南関東GⅡ)】がいる。リゾルヴァーの母ラブリーモーニングの半兄にはボールドラッド【サプリングS・ベルモントフューチュリティS・ホープフルS・シャンペンS・メトロポリタンH】と、サクセッサー【シャンペンS・ローレンスリアライゼーションS】の2頭の米最優秀2歳牡馬がいる。他にも近親には多くの活躍馬がおり、かなりの名門牝系である。→牝系:F5号族③
母父レヴュワーはラフィアンの項を参照。
競走馬引退後
競走馬を引退した本馬はすぐに来日してビッグジャパンファームで種牡馬生活を開始した(後にアロースタッドに移動している)。初年度は66頭、2年目は74頭の繁殖牝馬が集まった。3年目の交配数は43頭まで落ちたが、初年度産駒がデビューした4年目の1994年には、130頭まで交配数が増加。種牡馬生活5年目となる1995年の交配数は42頭と再び下落したが、この年にアジュディケーターが京成杯三歳Sを勝つなど活躍馬が現れ始め、6年目の交配数は90頭、7年目の1997年は85頭まで回復した。この1997年にミスジュディが南関東のGⅠ競走東京プリンセス賞を勝利すると、ダート向きの種牡馬としてその地位を不動のものにした。8年目は142頭、9年目は146頭、10年目は168頭、11年目は125頭、12年目は165頭、13年目は116頭、14年目は166頭、15年目は129頭、16年目の2006年も129頭の繁殖牝馬を集める人気種牡馬となった。
地方競馬で活躍する産駒が多かったため、全日本種牡馬ランキングでは2001年の11位が最高だったが、地方競馬では2001年から2008年まで8年連続で首位種牡馬を獲得。1998・99年は9位、2000・09年は2位、2010年は5位、2011年は8位、2012年は7位であり、15年連続で地方競馬の種牡馬ランキング10位以内に入った。そのために「地方のサンデーサイレンス」の異名を戴いた。
種牡馬生活17年目となった2007年以降は年齢の影響もあって交配数が減少したが、それでも同年は60頭、翌18年目は61頭、19年目は63頭、20年目は33頭、21年目は14頭、22年目は22頭、23年目は8頭と交配した。24年目の2014年は2頭と交配したがいずれも不受胎だったために種牡馬を引退。繋養先のアロースタッドからベルモントファーム(旧ビッグジャパンファーム)に戻って余生を送り、2015年2月に老衰のため28歳で他界した。
芝で走る産駒もたまにいたし、2000m程度までならこなせる産駒もいたが、基本的には自身と同様にダートの短距離を得意とする産駒が多かった。母父としてはユニコーンSの勝ち馬ロングプライドなどを出している。
主な産駒一覧
生年 |
産駒名 |
勝ち鞍 |
1993 |
アジュディケーター |
京成杯三歳S(GⅡ) |
1993 |
シルクフェニックス |
エンプレス杯(GⅡ)2回 |
1993 |
スターアタック |
九州サラブレッドスプリント(中津) |
1994 |
ミスジュディ |
東京プリンセス賞(南関GⅠ) |
1995 |
タヤスケーポイント |
マーチS(GⅢ)・プロキオンS(GⅢ) |
1996 |
ハタノアドニス |
東京盃(GⅡ)・東京シティ盃(南関GⅢ)・フロンティアスプリント盃(南関GⅢ)・栗駒賞(水沢)・アフタースター賞(南関GⅢ)2回 |
1997 |
アヤノミドリ |
兵庫ダービー(園田) |
1997 |
イエローパワー |
羽田盃(南関GⅠ)・スーパーCS(南関GⅡ) |
1997 |
オオギリセイコー |
金の鞍賞(高知)・黒潮皐月賞(高知)・高知優駿(高知)・黒潮菊花賞(高知) |
1997 |
タカラファイヤ |
黒潮盃(南関GⅡ) |
1997 |
バイオレットカラー |
ジュニアチャンピオン(佐賀) |
1997 |
ヒノデケーティング |
ブルーバードC(南関GⅢ) |
1997 |
ミデオンビット |
七夕賞(GⅢ) |
1997 |
ロングカイソウ |
さくらんぼ記念(GⅢ)・サマーチャンピオン(GⅢ) |
1998 |
バンケーティング |
ダイヤモンドC(水沢)・岩鷲賞(水沢)・不来方賞(盛岡)・東北ダービー(新潟)・桐花賞(水沢)・東北サラブレッド大賞典(水沢)・北上川大賞(盛岡) |
1998 |
ベルモントデーンズ |
東京三歳優駿牝馬(南関GⅠ) |
1998 |
ベルモントビーチ |
マリーンC(GⅢ) |
1998 |
マキノヒット |
九州皐月賞・ 荒尾ダービー(荒尾) |
1999 |
キヌガサダンサー |
日本海ダービー(金沢) |
1999 |
クインキャスト |
園田プリンセスC(園田)・のじぎく賞(園田) |
1999 |
サンコーキング |
北陸四県畜産会長賞(金沢) |
1999 |
トキノアジュディ |
ニューイヤーC(南関GⅢ) |
1999 |
ベルモントファラオ |
東京シティ盃(南関GⅢ) |
2000 |
サンエムウルフ |
高知県知事賞(高知) |
2000 |
チョウサンタイガー |
テレビ埼玉杯(南関GⅢ) |
2000 |
ナスキーサンホーク |
九州ジュニアチャンピオン(KG1) |
2000 |
ハヤセスイグン |
園田ジュニアC(園田) |
2000 |
ベルモントソレイユ |
テレビ埼玉杯(南関GⅢ) |
2001 |
アジュディミツオー |
東京大賞典(GⅠ)2回・川崎記念(GⅠ)・かしわ記念(GⅠ)・帝王賞(GⅠ)・東京ダービー(南関GⅠ)・マイルグランプリ(南関GⅡ)・東京湾C(南関GⅢ) |
2001 |
キョウエイプライド |
黒潮盃(南関GⅡ) |
2001 |
タカラアジュディ |
名古屋優駿(GⅡ)・名港盃(SPⅡ) |
2001 |
バンメガミ |
日高賞(水沢) |
2001 |
ベルモントストーム |
京浜盃(南関GⅡ)・ニューイヤーC(南関GⅢ)・京成盃グランドマイラーズ(南関GⅢ)・東京シティ盃(SⅢ) |
2001 |
ヤマカツスミレ |
園田プリンセスC(園田) |
2002 |
キヌガサアジュディ |
園田プリンセスC(園田) |
2002 |
スコーピオンリジイ |
ローレル賞(南関GⅢ) |
2003 |
カネショウマリノス |
鎌倉記念(南関GⅢ) |
2003 |
カネマサドゥイット |
サンライズC(H3) |
2003 |
スターオブジェンヌ |
トゥインクルレディー賞(SⅡ) |
2003 |
センパツトモ |
金沢プリンセスC(金沢)・ヤングチャンピオン(金沢)・園田クイーンセレクション(園田)・北日本新聞杯(金沢) |
2004 |
ベルモントルパン |
スパーキングサマーC(SⅢ) |
2005 |
タッカールーラー |
園田プリンセスC(園田) |
2005 |
マルチグランドボス |
ヤングチャンピオン(福山) |
2006 |
ネフェルメモリー |
東京2歳優駿牝馬(SⅠ)・浦和桜花賞(SⅠ)・東京プリンセス賞(SⅠ)・栄冠賞(H2)・フローラルC(H3) |
2007 |
ファインスター |
ヤングチャンピオン(金沢) |
2009 |
エスワンプリンス |
笠松グランプリ(SPⅠ)・九州ダービー栄城賞(KJ1)・吉野ヶ里記念(S1)・ロータスクラウン賞(KJ2)・六角川賞(S2)・志布志湾賞(S2)・玄界灘賞(S2)・鶴見岳賞(S2)・園田FCスプリント(園田)・飛燕賞(KJ3) |
2009 |
キタサンツバサ |
クラウンC(SⅢ) |
2009 |
ワイドバッハ |
武蔵野S(GⅢ) |
2013 |
アンサンブルライフ |
平和賞(SⅢ) |