セレナズソング

和名:セレナズソング

英名:Serena's Song

1992年生

鹿毛

父:ラーイ

母:イマジニング

母父:ノースフィールズ

2歳から4歳まで頑健に走り続けて、牝馬として史上初のハスケル招待H勝利などGⅠ競走で11勝をマークした1990年代を代表する米国の名牝

競走成績:2~4歳時に米加で走り通算成績38戦18勝2着11回3着3回

誕生からデビュー前まで

米国ケンタッキー州において、ハワード・J・ベーカー博士により生産された。1歳7月のキーンランドセールに出品されたが、本馬を気に掛ける人は少なかった。しかし「かつて見た中でも最上級の1歳馬だった」と感じたダレル・ウェイン・ルーカス調教師によって15万ドルで購入され、ロバート・ボブ・ルイス氏と妻のビバリー夫人の所有馬、ルーカス師の管理馬となった。

ルーカス師は本馬を「グレース・ケリーの上品さ、ジンジャー・ロジャースの動き、マリリン・モンローのカリスマ性を併せ持っていました。若い人にも分かるように言えば、ジャネット・ジャクソンの動きと、ブリトニー・スピアーズのカリスマ性といったところでしょうか」と評している。また、非常に健康な馬であり、故障や病気とはまったく無縁だった。当然、鼻出血防止剤のラシックスなどの薬物を使用することも1度も無かった。

競走生活(2歳時)

2歳5月にチャーチルダウンズ競馬場で行われたダート5ハロンの未勝利戦で、シェーン・セラーズ騎手を鞍上にデビュー。単勝オッズ4.2倍で12頭立ての2番人気の評価を受けた。レースでは馬群の中団後方を追走したが、最後まで今ひとつ伸びずに、勝った単勝オッズ14.2倍の7番人気馬フォンバードから6馬身半差の5着に敗退した。

2週間後に同じチャーチルダウンズ競馬場で出走したデビュータントS(D5.5F)では、ドナ・バートン騎手とコンビを組んだ。ジーンラフィットフューチュリティ・ワッツTVSなど3戦無敗のチャージドアップシカモアが121ポンドのトップハンデでも単勝オッズ2.1倍の1番人気に支持され、前走で本馬を破った116ポンドのフォンバードが単勝オッズ3倍の2番人気、112ポンドの本馬は単勝オッズ7.5倍の3番人気だった。今回は前走から一転してスタートから先頭争いに参加する先行策を採った。しかし徐々に後退していき、勝ったチャージドアップシカモアから5馬身半差の4着に終わった。

その2週間後には米国西海岸に場所を移して、ハリウッドパーク競馬場で行われたダート5ハロンの未勝利戦に出走した。ここではヴァリッドアトラクションという馬が単勝オッズ2.5倍の1番人気に支持されており、しばらく主戦を務めるゲイリー・スティーヴンス騎手が騎乗する本馬が単勝オッズ2.8倍の2番人気だった。今回も前走と同じくスタートから先頭争いに参加。そして徐々に後続との差を広げていき、最後は2着ヴァリッドアトラクションに10馬身差をつけて初勝利を挙げた。

7月のランダルースS(米GⅡ・D6F)では、本馬が単勝オッズ2.2倍の1番人気に支持され、未勝利戦を快勝してきた後の好敵手の1頭キャッツクレイドルが単勝オッズ3.6倍の2番人気となった。レースは好スタートを切った本馬にキャッツクレイドル達が競りかけてきて、激しい先頭争いが展開された。しかし本馬が直線に入ってから他馬を引き離し、2着に突っ込んできた単勝オッズ66.8倍の最低人気馬エンブロイダードに4馬身半差、3着キャッツクレイドルにはさらに2馬身差をつけて快勝した。

同月末に出走したハリウッドジュヴェナイルCSS(米GⅡ・D6F)は牡馬相手の競走だった。このレースで単勝オッズ2.2倍の1番人気に支持されたのは後のサンタアニタHでも本馬と対戦する牡馬ミスターパープルで、本馬は単勝オッズ2.5倍の2番人気となった。レースはミスターパープルが先行策から押し切って勝利を収め、好位から追い上げてきた本馬は半馬身差の2着だった。

8月のソレントS(米GⅡ・D6.5F)では、121ポンドのトップハンデを課された本馬が単勝オッズ1.6倍の1番人気で、後にグレード競走を2勝するスキーダンサーが単勝オッズ3倍の2番人気となった。ところが結果は意外にも、本馬が勝ったランダルースSで7着に終わっていた単勝オッズ28.7倍の5番人気馬ハウソーワゾが逃げ切って勝利。4番手の好位を進んだ本馬は、ゴール直前でスキーダンサーに鼻差かわされて、ハウソーワゾから2馬身差の3着に敗退した。

9月に出走したデルマーデビュータントS(米GⅡ・D7F)では、スキーダンサーが単勝オッズ3.3倍の1番人気、未勝利戦を快勝してきたコールナウが単勝オッズ3.5倍の2番人気、本馬が単勝オッズ3.9倍の3番人気、ハウソーワゾが単勝オッズ8.1倍の4番人気、ランダルースS3着後にカリフォルニアサラブレッド生産協会Sを勝っていたキャッツクレイドルが単勝オッズ15.5倍の5番人気となった。レースはコールナウが逃げて、ハウソーワゾが2番手、本馬が馬群のちょうど中間で、スキーダンサーが最後方を進む展開となった。しかしスタートで躓いていた本馬は明らかに反応が悪く、直線に入っても伸びず、コールナウ、ハウソーワゾ、スキーダンサーの3頭に屈して、勝ったコールナウから9馬身3/4差をつけられた4着と完敗を喫した。

10月に出走したオークリーフS(米GⅠ・D8.5F)では、スティーヴンス騎手に代わってコーリー・ナカタニ騎手とコンビを組んだ。ここでは、コールナウが単勝オッズ1.5倍の1番人気、本馬が単勝オッズ4.7倍の2番人気、ハウソーワゾが単勝オッズ5.7倍の3番人気だった。スタートが切られると本馬が即座に先頭に立ち、そのままハイペースで逃げを打った。コールナウが2番手、ハウソーワゾが3番手で追いかけてきたが、やがてハウソーワゾは失速し、本馬とコールナウの一騎打ちとなった。しかし直線に入ってから本馬がコールナウを徐々に引き離していった。最後は2着コールナウに2馬身3/4差をつけて完勝し、GⅠ競走初勝利を挙げた。これによりナカタニ騎手が本馬の新たな主戦となった。

そしてデビューの地であるチャーチルダウンズ競馬場に凱旋し、BCジュヴェナイルフィリーズ(米GⅠ・D8.5F)に挑んだ。対戦相手は、スピナウェイS・フリゼットS勝ちなど4戦3勝の成績で唯一の敗戦であるメイトロンSは1位入線失格だったためデビュー以来一度も他馬の後ろでゴールした経験が無かったフランダース、フランダースが失格となったメイトロンSで繰り上がり勝利を収めたソロリティS・セリマSの勝ち馬ストーミーブルース、ヴィクトリアS・シャディウェルS・オンタリオデビュータントS・マザリンSなど5戦無敗だったこの年のソヴリン賞最優秀2歳牝馬に選ばれる加国調教馬ホンキートンクチューン、アルキビアデスSなど3連勝中のポストイット、ケンタッキーカップジュヴェナイルフィリーズSの勝ち馬キャットアピール、欧州から遠征してきたモイグレアスタッドSの勝ち馬ベルジーニアスなどだった。フランダースとキャットアピールのカップリングが単勝オッズ1.4倍の1番人気、本馬が単勝オッズ8倍の2番人気、ストーミーブルースが単勝オッズ9.4倍の3番人気、ホンキートンクチューンが単勝オッズ15.6倍の4番人気で、ほぼフランダースの1強独裁状態だった。

スタートが切られるとホンキートンクチューン、フランダース、本馬の3頭が先頭争いを展開した。向こう正面でホンキートンクチューンが後退し、本馬がフランダースと一緒に先頭を牽引した。四角で後方からリリーカポウティが追い上げてきたが直線に入ると失速し、本馬とフランダースの一騎打ちとなった。2頭の叩き合いはゴールまで続いたが、最後になってフランダースが前に出て勝利し、本馬は頭差2着に惜敗した(3着ストーミーブルースには4馬身差をつけていた)。なお、フランダースはこの直後に種子骨を骨折してしまい、生命は助かったものの二度と競馬場に戻ってくることは出来なかった。

その後は西海岸に戻り、12月のハリウッドスターレットS(米GⅠ・D8.5F)に出走した。対戦相手は、モカシンSを勝ってきたアーベイン、デルマーデビュータントS3着後に出走したマイディアガールSで6着に終わっていたスキーダンサーなど4頭だった。本馬が単勝オッズ1.4倍の1番人気、アーベインが単勝オッズ4.8倍の2番人気で、前走の大敗が響いたスキーダンサーは単勝オッズ9.3倍の4番人気止まりだった。スタートが切られるとすぐに本馬が先頭に立ち、それにアーベインが競りかけてきた。この2頭の競り合いは直線に入って以降も延々と続いた。いったんは本馬が完全に前に出たのだが、ゴール直前でアーベインが差し返してきた。しかし本馬が凌いで鼻差で勝利した。

2歳時の成績は10戦4勝(うちGⅠ競走2勝)だったが、エクリプス賞最優秀2歳牝馬の座は5戦4勝(うちGⅠ競走3勝)のフランダースの頭上に輝いた。米ブラッドホース誌が実施した、この年にもっとも印象に残ったレースを決める読者アンケートにおいては、フランダースと本馬が一騎打ちを演じたBCジュヴェナイルフィリーズが選ばれた。

競走生活(3歳前半)

2歳時は半年間に10戦という強行軍だった本馬は、3歳時もタフに走り続ける。1月のサンタイネスBCS(米GⅢ・D7F)では、オークリーフS2着後にパサデナSを勝っていたコールナウ、デルマーデビュータントS8着後にカリフォルニアブリーダーズチャンピオンSを勝っていたキャッツクレイドルとの対戦となった。121ポンドのコールナウが単勝オッズ2.1倍の1番人気、123ポンドの本馬が単勝オッズ2.5倍の2番人気、121ポンドのキャッツクレイドルが単勝オッズ8.5倍の3番人気となった。レースは絶好のスタートを切った本馬にコールナウが競りかけてきて、2頭が先頭争いを演じた。本馬が直線入り口でコールナウを振り払って単独先頭に立つと、追い上げてきた2着キャッツクレイドルに2馬身差をつけて勝利した。

2月のラスヴァージネスS(米GⅠ・D8F)では、キャッツクレイドル、ハリウッドスターレットSから直行してきたアーバイン、ハリウッドスターレットS3着後にサンタイサベルSを勝っていたスキーダンサーなどとの対戦となった。122ポンドの本馬が単勝オッズ1.5倍の1番人気、116ポンドのアーバインが単勝オッズ4.4倍の2番人気、118ポンドのキャッツクレイドルが単勝オッズ6.4倍の3番人気、116ポンドのスキーダンサーが単勝オッズ11.3倍の4番人気となった。今回も絶好のスタートを切った本馬に対して、今度はキャッツクレイドルが競りかけてきた。そしてこの2頭が直線に入った後も延々と先頭争いを演じた末に、ゴール前で斤量が4ポンド重い本馬が前に出て、2着キャッツクレイドルに1馬身1/4差で勝利した。

3月のサンタアニタオークス(米GⅠ・D8.5F)では、ラスヴァージネスSで3着だったアーバイン、前走の一般競走を10馬身差で勝ってきたマリズシーバ(GⅠ競走5勝のコンガリーの母)、後のプリンセスSの勝ち馬フェイヴァードワン、3連勝中のジュエルプリンセスの4頭が対戦相手となった。本馬が単勝オッズ1.7倍の1番人気、アーバインが単勝オッズ2.8倍の2番人気、マリズシーバが単勝オッズ8.4倍の3番人気でほぼ2強ムードだった。スタートが切られると本馬のハナを叩いてマリズシーバが逃げを打ち、本馬は直後の2番手を追走した。四角でマリズシーバをかわして先頭に立つと、そのまま独走になるかと思われた。しかし最後方で末脚を溜めていたアーバインが猛然と追いかけてきて、2頭の差がみるみる縮まった。しかし本馬がしのぎ切り、2着アーバインに頭差、3着マリズシーバにはさらに14馬身差をつけて勝利した。

その後はケンタッキー州に向かい、ジムビームS(米GⅡ・D9F)に出走した。このレースは牡馬混合戦であり、ケンタッキーCジュヴェナイルS・ブリーダーズフューチュリティの勝ち馬でBCジュヴェナイル3着のテハノラン、トロピカルパークダービーの勝ち馬でフロリダダービー3着のメッキー(後のアーリントンミリオンの勝ち馬)といった実力派牡馬が対戦相手となった。紅一点の本馬が単勝オッズ1.9倍の1番人気に支持され、テハノランが単勝オッズ4.5倍の2番人気、メッキーが単勝オッズ8.2倍の3番人気となった。牡馬相手でも本馬のレースぶりは何も変わるところは無かった。スタートしてすぐに先頭に立つと、後続馬勢の圧力を受けながらも先頭を維持。そして四角で後続を引き離すと、追い込んできた2着テハノランに3馬身半差をつけて余裕の勝利を収めた。

これでグレード競走5連勝とした本馬は、今度はケンタッキーダービー(米GⅠ・D10F)に果敢に挑んだ。本馬をケンタッキーダービーに参戦させたことについてルーカス師は「同じ私の管理馬と彼女を対戦させるのは気が進まなかったので、ケンタッキーオークスに出走させることも検討しました。しかし彼女の生涯の中でケンタッキーダービーに参戦できる機会は1度だけでしたので」と語っている。しかし前走ジムビームSで既に牡馬と戦わせていた事や、後になっても本馬は何度も牡馬相手のレースに出ている事からすると、彼はもともと本馬を牡馬相手でも勝ち負けできる器だと見ていたようである。また、この7年前には管理していた牝馬のウイニングカラーズをやはりケンタッキーダービーに参戦させて勝利を収めていた事も、それを後押ししたと思われる。

対戦相手は、BCジュヴェナイル・シャンペンS・バルボアSを制して前年のエクリプス賞最優秀2歳牡馬に選ばれていた同馬主同厩のティンバーカントリー、やはり本馬と同厩(ただし馬主は異なる)のフロリダダービー・レムセンS・ファウンテンオブユースSの勝ち馬でハリウッドフューチュリティ2着のサンダーガルチ、ゴーサムS・ウッドメモリアルSを連続圧勝してきたトーキンマン、ハリウッドフューチュリティ・ハリウッドプレビューBCS・サンヴィセントBCS・サンフェリペSの勝ち馬でサンタアニタダービー2着のアフタヌーンディーライツ、エルカミノリアルダービーの勝ち馬でサンタアニタダービー3着のジャムロン、ブルーグラスSを勝ってきたワイルドシン、ワットアプレジャーS・プレビューSの勝ち馬でフロリダダービー・ファウンテンオブユースS・ブルーグラスS2着のスワーヴプロスペクト、ジムビームS2着後にブルーグラスSで3着してきたテハノラン、ジムビームS3着後にサイテーションSで2着してきたメッキー、フラミンゴSの勝ち馬ピラミッドピーク、アーカンソーダービーの勝ち馬ダズリングフォールズ、ロイヤルロッジS・ヴィンテージSの勝ち馬でBCジュヴェナイル2着の英国調教馬エルティシュ、きさらぎ賞を勝ち朝日杯三歳Sで2着していた日本調教馬スキーキャプテンなどだった。本馬とティンバーカントリーとのカップリングが単勝オッズ4.4倍の1番人気、トーキンマンが単勝オッズ5倍の2番人気、ジャムロンが単勝オッズ6.6倍の3番人気、テハノランが単勝オッズ9.6倍の4番人気、アフタヌーンディーライツが単勝オッズ9.7倍の5番人気となった。

スタートが切られるとやはり本馬は即座に先頭に立った。そして18頭の牡馬勢を引き連れて逃げ続けた。しかしさすがはケンタッキーダービーだけあって後続馬の圧力は今までとは比較にならないほど激しく、最初の2ハロンを22秒57、半マイルを45秒89というハイペースで逃げる羽目になった。これではさすがに最後まで保つはずは無く、四角途中までは先頭を死守したものの直線で失速。勝った単勝オッズ25.5倍の11番人気馬サンダーガルチから11馬身半差をつけられた16着と惨敗してしまった。

気を取り直して13日後に出走したブラックアイドスーザンS(GⅡ・D9F)からは、ナカタニ騎手に代わってスティーヴンス騎手を再度主戦に迎えた。BCジュヴェナイルフィリーズ3着後にシケーダS・カムリーSと連続2着していたストーミーブルース、アッシュランドSで2着してきたコンキスタドレス、前走の一般競走を6馬身差で圧勝してきた2戦2勝のレアオポチュニティ、前走アッシュランドSで3着してきた前年のBCジュヴェナイルフィリーズ6着馬ポストイットなどが対戦相手となった。122ポンドの本馬が単勝オッズ1.4倍の1番人気、同じく122ポンドのストーミーブルースが単勝オッズ5.1倍の2番人気、115ポンドのコンキスタドレスが単勝オッズ5.8倍の3番人気、115ポンドのレアオポチュニティが単勝オッズ10.8倍の4番人気となった。スタートが切られるとレアオポチュニティが先頭に立ち、本馬は1馬身ほど後方の2番手を追走。直線入り口でレアオポチュニティに並びかけると後続を一気に突き放し、2着に追い上げてきたコンキスタドレスに9馬身差をつける圧勝劇を演じた。

6月のマザーグースS(米GⅠ・D9F)では、一般競走を2連勝してきたアスタリタS2着馬ゴールデンブリーくらいしか目立つ対戦相手がいなかった。そのために本馬が単勝オッズ1.05倍という究極の1番人気に支持され、ゴールデンブリーが単勝オッズ9.8倍の2番人気となった。今回の本馬はスタートしてすぐに先頭に立ち、道中でゴールデンブリーに絡まれながらも先頭を維持。そして四角からゴールデンブリーとの差を少しずつ広げていき、最後は2着ゴールデンブリーに3馬身差をつけて勝利した。

次走のCCAオークス(米GⅠ・D10F)では、リーヴシュライジュニアSを勝ってきたローグスウォーク、ゴールデンブリー程度しか目立つ対戦相手がいなかった。本馬が単勝オッズ1.2倍の1番人気、ローグスウォークが単勝オッズ6.9倍の2番人気、ゴールデンブリーが単勝オッズ8.5倍の3番人気となった。しかしここではローグスウォークとフォレステッドの2頭にハナを叩かれてペースを乱されてしまった。それでも向こう正面では先頭に立ち、そのまま直線に入ってきたが、4番手で機を伺っていたゴールデンブリーに直線半ばで差されて、1馬身半差の2着に敗れた。

競走生活(3歳後半)

同月末には再び牡馬相手の競走となるハスケル招待H(米GⅠ・D9F)に出走した。ハスケル招待Hは28年の伝統を誇る、モンマスパーク競馬場の名物競走であり、前年の勝ち馬ホーリーブルを筆頭に多くの有力馬が勝利してきた。しかしこの年のレベルは今ひとつであり、本馬以外の主な出走馬は、ケンタッキーダービー9着後にピーターパンSを勝ちベルモントSで3着していたシタディード、ケンタッキーダービー11着後にロングブランチBCSで2着していたスワーヴプロスペクト、ラウンドテーブルSを勝ってきたキングダムシティ、ケンタッキーダービー17着後にロングブランチBCSを勝っていたピラミッドピークくらいだった。

出走馬の層はケンタッキーダービーとは比べるべくも無かったが、それでもハスケル招待Hを牝馬が勝った例は過去に1度もなかった上に、本馬の斤量は118ポンドと、斤量トップのスワーヴプロスペクト、ピラミッドピークの2頭より2ポンド軽いだけであり、性差を考慮すると事実上のトップハンデだったために不安視する向きもあった。それでも本馬が単勝オッズ2.5倍の1番人気に支持され、118ポンドのシタディードが単勝オッズ4.5倍の2番人気、スワーヴプロスペクトが単勝オッズ6倍の3番人気、118ポンドのキングダムシティが単勝オッズ7倍の4番人気、ピラミッドピークが単勝オッズ7.8倍の5番人気となった。

スタートが切られると、単勝オッズ46.3倍の9番人気馬リアリティロードと単勝オッズ36.7倍の8番人気馬ジョンアンドパットが本馬のハナを叩いて先頭争いを展開し、有力牡馬勢は軒並み後方からという、まるで本馬包囲網のような状況となった。最初の2ハロン通過は22秒74で、実況が「これは速い!」と言うほどのハイペースだった。しかし三角手前で鉄砲玉2頭を振り払った本馬が、そのまま四角で後続を引き離し、5馬身ほどリードして直線に入ってきた。さすがに最後は脚が鈍って後続馬に迫られたものの、2着ピラミッドピークに3/4馬身差で勝利した。ハスケル招待Hを牝馬が勝ったのは史上初の快挙で、本馬以降にはハンデ競走から別定重量戦に変わった後の2009年のレイチェルアレクサンドラしかいない。

次走は9月のガゼルH(米GⅠ・D9F)となった。主な対戦相手は、CCAオークスで本馬を破った後に出走したアラバマSで6着に終わっていたゴールデンブリー、そのアラバマSを勝利したメイトロンS2着・フリゼットS3着のプリティディスクリート、ブラックアイドスーザンS2着後にリーヴシュレイジュニアSで2着していたコンキスタドレス、アスタリタSの勝ち馬でデモワゼルS・テストS2着・プライオレスS3着のミスゴールデンサークルだった。124ポンドの本馬が単勝オッズ1.35倍の1番人気、121ポンドのゴールデンブリーが単勝オッズ6.8倍の2番人気、118ポンドのプリティディスクリートが単勝オッズ10.8倍の3番人気、113ポンドのコンキスタドレスが単勝オッズ11.3倍の4番人気、113ポンドのミスゴールデンサークルが単勝オッズ11.4倍の5番人気となった。スタートが切られるとプリティディスクリートが先頭を奪い、本馬やミスゴールデンサークル達がそれに絡んで先頭争いを展開した。三角手前でプリティディスクリートが失速すると逆に本馬が先頭馬群から抜け出していった。そして直線を独走して、2着ミスゴールデンサークルに7馬身差をつけて圧勝した。

同月末のターフウェイパークBCS(米GⅡ・D8.5F)では、予後不良寸前の故障から復帰していたワシントンラッシーS・アクサーベンオークス・アーリントンハイツオークス・アーリントンメイトロンHの勝ち馬マライアズストーム(ジャイアンツコーズウェイの母)、アップルブロッサムH・ピムリコディスタフH2着のヘイローアメリカの2頭が強敵だった。119ポンドの本馬が単勝オッズ1.2倍の1番人気、117ポンドのマライアズストームが単勝オッズ6.1倍の2番人気、120ポンドのヘイローアメリカが単勝オッズ6.4倍の3番人気となった。レースはヘイローアメリカを先頭に、マライアズストーム、本馬の順番で走っていった。三角でヘイローアメリカが脱落し、マライアズストームが先頭、その1馬身ほど後方で本馬が直線に入ってきた。ところがここからマライアズストームが本馬を着実に引き離していった。結局本馬は5馬身半差をつけられて2着に敗れてしまった。

次走のベルデイムS(米GⅠ・D9F)では、フリゼットS・アラバマS・ガゼルH・ベルデイムS・アップルブロッサムH・ヘンプステッドH・ゴーフォーワンドH・ジョンAモリスHとGⅠ競走8勝を挙げていたヘヴンリープライズ、ラスヴァージネスS・サンタアニタオークス・マザーグースS・ハリウッドオークスとGⅠ競走4勝を挙げていたレイクウェイという、年上の難敵2頭との対戦となった。目下GⅠ競走4連勝中のヘヴンリープライズが単勝オッズ1.65倍の1番人気に支持され、本馬が単勝オッズ3.05倍の2番人気、レイクウェイが単勝オッズ4.4倍の3番人気となった。スタートが切られると本馬がレイクウェイを抑えて先頭に立ち、ヘヴンリープライズは後方からレースを進めた。徐々にレイクウェイは本馬に付いていけなくなり、向こう正面では5馬身ほどの差がついた。そしてその差を維持したまま本馬が直線に入ってきた。そこにヘヴンリープライズがレイクウェイを置き去りにして本馬を猛追してきた。しかし本馬がしのぎ切って、3/4馬身差で勝利した。

そしてベルモントパーク競馬場で行われたBCディスタフ(米GⅠ・D9F)に挑んだ。出走馬は、ヘヴンリープライズ、前走3着のレイクウェイ、ターフウェイパークBCS勝利後にスピンスターSで3着してきたマライアズストームの既対戦馬3頭に加えて、アッシュランドS・エイコーンS・シュヴィーH・ラフィアンH・スピンスターSとGⅠ競走5勝を挙げていたインサイドインフォメーション、チュラヴィスタH・レディーズシークレットHなど4連勝中と勢いに乗るボロディスルー、ラブレアSの勝ち馬トップラングなど古馬が中心であり、3歳馬は本馬と、ブラックアイドスーザンS6着・マザーグースS3着・CCAオークス6着・ガゼルH5着と4戦全て本馬に先着されていたフォレステッドの2頭のみだった。同馬主同厩だったインサイドインフォメーションとヘヴンリープライズの2頭がカップリングで単勝オッズ1.8倍の1番人気に支持され、本馬が単独で単勝オッズ3.5倍の2番人気、マライアズストームが単勝オッズ9倍の3番人気となった。

しかしレースは生憎と本馬が過去に経験した事が無い不良馬場となった。本馬はインサイドインフォメーション、マライアズストーム、レイクウェイなどと共に先行争いを演じたが、馬場に脚を取られたのか徐々に後退。レースはインサイドインフォメーションが2着ヘヴンリープライズに13馬身半差をつける記録的圧勝劇を演じ、本馬はレイクウェイ、フォレステッドにも先着されてしまい、勝ったインサイドインフォメーションから18馬身3/4差をつけられた5着に敗退してしまった。

それでも3歳時13戦9勝(うちGⅠ競走6勝)の好成績を残し、この年のエクリプス賞最優秀3歳牝馬に選出された。

競走生活(4歳前半)

3歳時も相当な過密日程だったのだが、4歳時は前年以上に多くレースに出走する。まずは米国西海岸に飛び、1月のサンタモニカH(米GⅠ・D7F)に出走した。目立つ対戦相手は、ラブレアSなど5戦全勝の成績を誇っていた後のGⅠ競走3勝馬エグゾティックウッド、前年のBCディスタフで7着に終わっていたトップラング、エルエンシノS・モンロヴィアHの勝ち馬でサンタマルガリータ招待H3着のクラッシーキムといったところだった。123ポンドの本馬と118ポンドのエグゾティックウッドが並んで単勝オッズ2.1倍の1番人気、116ポンドのトップラングが単勝オッズ6.5倍の3番人気、116ポンドのクラッシーキムが単勝オッズ14.4倍の4番人気となった。スタートが切られるとクラッシーキムが逃げを打ち、本馬は直後の2番手を追走した。そのままの態勢で直線に入ると、クラッシーキムをかわして先頭に立ち、そのまま押し切って、2着に追い上げてきたエグゾティックウッドに半馬身差をつけて勝利した。

2月のサンタマリアH(米GⅠ・D8.5F)では、前走3着のクラッシーキム、デルマーオークス・リンダヴィスタBCHの勝ち馬トゥワイスザヴァイスなど4頭が対戦相手となった。124ポンドの本馬が単勝オッズ1.3倍の1番人気、118ポンドのトゥワイスザヴァイスが単勝オッズ3.8倍の2番人気、116ポンドのクラッシーキムと114ポンドのリアルコネクションのカップリングが単勝オッズ8.5倍の3番人気となった。スタートが切られると今回もクラッシーキムが先頭に立ち、本馬は2番手につけた。さらにトゥワイスザヴァイスも本馬を徹底マークしてきた。そのままの態勢で直線に入ると、本馬が抜け出し、それをトゥワイスザヴァイスが追いかけてきた。しかし2頭の差は縮まらず、本馬が2着トゥワイスザヴァイスに1馬身1/4差をつけて勝利した。

次走は牡馬相手のサンタアニタH(米GⅠ・D10F)となった。主な対戦相手は、ストラブS・サンフェルナンドS・ヴォランテHの勝ち馬でハリウッドダービー2着のヘルムズマン、ケンタッキーダービー8着後の長期休養を経てマリブSを勝ちストラブSで2着していたアフタヌーンディーライツ、ネイティヴダイヴァーH・サンパスカルH・サンアントニオHと3連勝して勢いに乗る後のBCクラシック馬アルファベットスープ、サンマルコスHを勝ってきた前年の覇者アージェントリクエスト、2歳時のハリウッドジュヴェナイルCSSで本馬を破って以降にアファームドHを勝ったものの今ひとつ波に乗れていなかったが前走ストラブSで3着してきたミスターパープルなどであり、牝馬は本馬のみだった。ハスケル招待Hと異なりそれほど本馬に厳しい斤量が課せられることは無かった。121ポンドのヘルムズマンが単勝オッズ3.6倍の1番人気、119ポンドのアフタヌーンディーライツが単勝オッズ3.7倍の2番人気、120ポンドのアルファベットスープが単勝オッズ5.5倍の3番人気、114ポンドの本馬が単勝オッズ7倍の4番人気となった。本馬はここではスタートから他馬に絡まれて、先手を取ることが出来なかった。向こう正面ではいったん先頭に立ったものの、直線に入ると失速。レースは後方2番手からまくって位置取りを上げた単勝オッズ19倍の7番人気馬ミスターパープルが勝利を収め、本馬はミスターパープルから12馬身1/4差をつけられた7着に終わった。

次走は4月のアップルブロッサムH(米GⅠ・D8.5F)となった。対戦相手は、サンタマリアH2着後にサンタマルガリータ招待Hを勝ってきたトゥワイスザヴァイス、ヒューマナディスタフH・ガーデニアHの勝ち馬ローラズピストレット、前年のターフウェイパークBCS5着後にオークローンBCHで2着していたいたヘイローアメリカ、そのオークローンBCHを勝っていたベルオブコジーン、フォールズシティHの勝ち馬アルコヴィーなどだった。124ポンドの本馬が単勝オッズ1.6倍の1番人気、117ポンドのトゥワイスザヴァイスが単勝オッズ4倍の2番人気、112ポンドのローラズピストレットが単勝オッズ7.6倍の3番人気、115ポンドのヘイローアメリカが単勝オッズ10.6倍の4番人気だった。スタートが切られるとヘイローアメリカが単騎の逃げに持ち込み、本馬は2番手を追走した。そのままの態勢で直線に入ったが、トゥワイスザヴァイスに直線で差された上に、翌年の同競走を勝つことになるヘイローアメリカを捕まえることにも失敗し、勝ったトゥワイスザヴァイスから3馬身差の2着に敗れた。

5月のルイビルBCH(米GⅡ・D8.5F)では、前年のサンタアニタオークスでは勝った本馬に25馬身差をつけられた5着最下位に敗れるもサンクレメンテH・リンダヴィスタBCH・エルエンシノS・ラカナダSを勝ちサンタマルガリータHでトゥワイスザヴァイスの僅差3着と急激に力を付けてきたジュエルプリンセス、コティリオンHの勝ち馬クリアマンデートなどが対戦相手となった。123ポンドの本馬が単勝オッズ1.6倍の1番人気、118ポンドのジュエルプリンセスが単勝オッズ3倍の2番人気、112ポンドのクリアマンデートが単勝オッズ6.9倍の3番人気となった。今回は本馬がスタートから先頭に立ち、先頭を維持した状態で直線に入ってきた。しかしここで道中は後方を走っていたジュエルプリンセスが追い上げてきて、本馬に並びかけてきた。こうなると5ポンドの斤量差はかなり大きく響いてくる事になり、競り負けた本馬は首差2着に敗れた。それでも10ポンドのハンデを与えた3着馬ナスクラカラーズには7馬身半差をつけており、凡走したわけではなかった。

それから2週間後に出走したピムリコディスタフH(米GⅢ・D9F)では、カラセルSの勝ち馬ミススルーピー、スノーグースHの勝ち馬シュープ、カラセルS2着馬チャーチベルチャイムズの、GⅢ競走レベルの馬3頭だけが対戦相手となった。123ポンドの本馬が単勝オッズ1.3倍の1番人気、114ポンドのチャーチベルチャイムズが単勝オッズ5.5倍の2番人気、116ポンドのシュープが単勝オッズ6.4倍の3番人気、117ポンドのミススルーピーが単勝オッズ9.7倍の最低人気となった。今回も本馬がスタートから先頭に立ち、そのまま後続に1馬身ほどの差をつけて逃げ続けた。そして直線に入ると鞍上のスティーヴンス騎手は手と踵だけで本馬を追い、2着シュープに1馬身半差をつけて楽勝した。

6月に出走したフルールドリスH(米GⅢ・D9F)は、過去に未勝利戦・デビュータントS・BCジュヴェナイルフィリーズ・ケンタッキーダービー・ルイビルBCHと5戦全敗だった験の悪いチャーチルダウンズ競馬場のレースだった。本馬が出走しなかったケンタッキーオークスを制覇していたギャルインアラックス、アップルブロッサムH5着後にシックスティセイルズHを勝っていたアルコヴィー、アーリントンBCH・ミネソタディスタフターフCSHの勝ち馬ゴールデンパー、アップルブロッサムH2着後に出走したシュヴィーHで5着だったヘイローアメリカなどが対戦相手となった。124ポンドの本馬が単勝オッズ1.6倍の1番人気、117ポンドのアルコヴィーが単勝オッズ5.6倍の2番人気、109ポンドのゴールデンパーが単勝オッズ7.1倍の3番人気、117ポンドのヘイローアメリカが単勝オッズ8.1倍の4番人気、115ポンドのギャルインアラックスが単勝オッズ15.1倍の5番人気となった。スタートが切られると本馬やヘイローアメリカなど3頭が先頭争いを展開。三角からは本馬とヘイローアメリカの一騎打ちとなった。2頭の叩き合いはゴール前まで続いたが、7ポンド斤量が重い本馬が競り勝って半馬身差で勝利を収め、チャーチルダウンズ競馬場6戦目にしてようやく初勝利を挙げた。

次走のヘンプステッドH(米GⅠ・D8.5F)からは、しばらくジェリー・ベイリー騎手とコンビを組むことになった。目立つ対戦相手は、ルイビルBCH5着後に出走したシュヴィーHでGⅠ競走制覇を果たしてきたクリアマンデート、ピムリコディスタフHで本馬の2着だったシュープ、シュヴィーHで2着してきたスムーズチャーマーだった。125ポンドの本馬が単勝オッズ1.4倍の1番人気、116ポンドのクリアマンデートが単勝オッズ6.4倍の2番人気、112ポンドのスムーズチャーマーが単勝オッズ10.8倍の3番人気、115ポンドのシュープが単勝オッズ12.2倍の4番人気となった。今回の本馬はスムーズチャーマーやクリアマンデート達を先に行かせて4番手を追走。そして直線入り口で難なく先頭に立つと、追いかけてきた2着シュープに3馬身3/4差をつけて快勝した。

競走生活(4歳後半)

その後は西海岸に飛び、7月のヴァニティH(米GⅠ・D9F)に出走した。ここでは、ルイビルBCH勝利後にホーソーンH・ミレイディBCHと連続2着してきたジュエルプリンセス、前走ミレイディBCHでGⅠ競走3連勝としたトゥワイスザヴァイス、欧州から移籍してきてチュラヴィスタH・レディーズシークレットH・ホーソーンHを勝っていたボロディスルー、サンタモニカHで4着だったトップラングなどが対戦相手となった。125ポンドの本馬と122ポンドのトゥワイスザヴァイスが並んで単勝オッズ2.6倍の1番人気、120ポンドのジュエルプリンセスが単勝オッズ3.5倍の3番人気、117ポンドのボロディスルーが単勝オッズ13.4倍の4番人気という3強対決となった。スタートが切られるとボロディスルーやトップラングが強引に本馬の前を走り、本馬は仕方なくジュエルプリンセスと共に3~4番手につけた。三角手前でジュエルプリンセスが抜け出して先頭に立ったが、本馬はそれに食らいついていく事が出来ず、ゴール前で差を広げられて3馬身差の2着に敗れた。

次走は牡馬相手のホイットニーH(GⅠ・D9F)となった。モルソンエクスポートミリオン・メドウランズCH・イリノイダービーなどの勝ち馬ピークスアンドヴァリーズ、前年のBCクラシックとホイットニーHで2着・前々走ドバイワールドCと前走サバーバンH3着のエルカリエレ、前年のハスケル招待Hで本馬の2着に敗れた後にトラヴァーズSで2着して前走ボルチモアBCHを勝ってきたピラミッドピーク、ブルックリンH・サバーバンHと連続2着してきたマホガニーホール、エクリプスH・ドミニオンデイHを勝っていた加国調教馬マウントササフラなどが対戦相手となった。121ポンドのピークスアンドヴァリーズが単勝オッズ2.7倍の1番人気、116ポンドのエルカリエレが単勝オッズ4.5倍の2番人気、116ポンドの本馬が単勝オッズ4.55倍の3番人気、118ポンドのピラミッドピークが単勝オッズ6.8倍の4番人気、113ポンドのマホガニーホールが単勝オッズ7.1倍の5番人気となった。スタートが切られると即座に本馬が先頭に立ち、2番手のマウントササフラに1~2馬身ほどの差をつけて逃げ続けた。そして直線に入っても粘り続けたが、ゴール前で追い上げてきたマホガニーホールにかわされて首差2着に惜敗した。

次走はやはり牡馬相手のレースとなるフィリップHアイズリンH(米GⅠ・D8.5F)となった。ここでは過去3戦で騎乗したベイリー騎手に代わってバートン騎手とコンビを組んだ。前走のアーリントンサイテーションチャレンジ招待Sで現役米国最強馬シガーの3着してきた前年のケンタッキーダービー6着馬エルティシュ、サルヴェイターマイルHなど5連勝中のスマートストライク、ルイジアナダービー・オハイオダービー・ラホヤHの勝ち馬ペションヴィル、カーターH2着・メトロポリタンH・ヴォスバーグH3着の良血馬アワーエンブレムなどが対戦相手となった。115ポンドの本馬が単勝オッズ2.6倍の1番人気、116ポンドのエルティシュが単勝オッズ2.9倍の2番人気、115ポンドのスマートストライクが単勝オッズ3.7倍の3番人気、116ポンドのペションヴィルが単勝オッズ9倍の4番人気となった。スタートが切られると単勝オッズ46.4倍の最低人気馬コージードライヴが先頭を奪い、本馬は2番手を進んだ。三角手前で先頭に立ち、そのまま直線に入ってきたものの、スマートストライクとエルティシュの2頭に直線で差されて、勝ったスマートストライクから3馬身1/4差の3着に敗退した。

9月のラフィアンH(米GⅠ・D8.5F)からは、鞍上がスティーヴンス騎手に戻った。マザーグースS・アラバマSの勝ち馬でエイコーンS・モンマスBCオークス2着の3歳馬ヤンクスミュージック、テストS・トップフライトH・ファーストフライトH2回・コロンビアS・ヴェイグランシーH・オナラブルミスSとGⅠ競走2勝を含むグレード競走7勝のツイストアフリート、ヘンプステッドHで5着だったクリアマンデートなどが対戦相手となった。126ポンドの本馬が単勝オッズ1.75倍の1番人気、116ポンドのヤンクスミュージックが単勝オッズ3.1倍の2番人気、114ポンドのクリアマンデートが単勝オッズ8.7倍の3番人気、119ポンドのツイストアフリートが単勝オッズ9.2倍の4番人気となった。スタートが切られるとツイストアフリートが先頭に立ち、本馬は今回も2番手を進んだ。向こう正面で先頭を奪うと、そのまま先頭をひた走ったが、すぐ直後にはヤンクスミュージックがぴったりとマークしてきていた。そして直線に入るとこの2頭が後続馬を9馬身も引き離して一騎打ちを演じたが、さすがに10ポンドの斤量差は厳しく、競り負けた本馬は首差の2着に敗れた。

次走のベルデイムS(米GⅠ・D9F)では、ヤンクスミュージック、前走4着のクリアマンデート、ヘンプステッドH2着後にゴーフォーワンドS・ジョンAモリスHでも2着していたシュープに加えて、BCジュヴェナイルフィリーズ・アッシュランドS・CCAオークス・ガゼルHとGⅠ競走4勝を挙げていた3歳馬マイフラッグが対戦相手となった。前走と異なりこのレースは馬齢定量戦であり、古馬と3歳馬の斤量差は4ポンドだった。本馬が単勝オッズ1.95倍の1番人気、ヤンクスミュージックが単勝オッズ3.3倍の2番人気、マイフラッグが単勝オッズ3.55倍の3番人気、シュープが単勝オッズ22.6倍の4番人気という3強対決となった。今回は絶好のスタートを切った本馬がそのまま先頭に立ち、シュープやヤンクスミュージックを引き連れて逃げを打った。しかし今回も直線でヤンクスミュージックが並びかけてきて、競り負けた本馬は3/4馬身差の2着に敗れた。

その後は加国のウッドバイン競馬場で行われたBCディスタフ(加GⅠ・D9F)に向かった。エストレージャス大賞ジュヴェナイルフィリーズ・コパデプラタ大賞と亜国のGⅠ競走を2勝した後に米国に移籍してビヴァリーヒルズH・チュラヴィスタH・スピンスターSなどを勝っていたディファレント、ヴァニティH勝利後にレディーズシークレットBCHで2着してきたジュエルプリンセス、前走3着のクリアマンデート、同4着のマイフラッグ、アスタリタS・モンマスBCオークスの勝ち馬で前走スピンスターS2着のトップシークレットの5頭だけが対戦相手となった。ディファレントが単勝オッズ2.3倍の1番人気、ジュエルプリンセスが単勝オッズ3.4倍の2番人気、本馬が単勝オッズ3.7倍の3番人気、マイフラッグが単勝オッズ8.6倍の4番人気となった。スタートが切られるとトップシークレットが先頭に立ち、本馬は2馬身ほど離れた2番手を追走。そして直線入り口で先頭に立ったのだが、すぐに内側からジュエルプリンセスに差されて、1馬身半差の2着に敗れた。皮肉なことに、ジュエルプリンセスの鞍上は本馬のかつての相棒ナカタニ騎手だった。

その後は翌11月のチャーチルダウンズディスタフS(米GⅡ・D8F)に向かった。目立つ対戦相手は、フルールドリスHで本馬の2着となった後にモリーピッチャーBCHを勝っていたヘイローアメリカくらいであり、本馬にとって最大の強敵は他馬勢より7~16ポンド重い125ポンドのトップハンデだった。それでも本馬が単勝オッズ1.5倍の1番人気に支持された。スタートが切られると単勝オッズ12.3倍の4番人気止まりだった118ポンドのヘイローアメリカが先頭に立ち、本馬は3番手を追走した。そして三角手前で先頭に立ち、そのまま直線に突入してきた。ところが本馬より16ポンド斤量が軽い単勝オッズ33.3倍の8番人気馬ファストキャッチにゴール前で捕まって、3/4馬身差2着に敗れた。これが現役最後のレースとなった。

4歳時の成績は15戦5勝で、GⅠ競走では3勝を挙げたものの、エクリプス賞最優秀古馬牝馬の座はジュエルプリンセスのものとなった。しかし獲得賞金総額は328万3380ドルで、北米賞金女王になっている。生涯38戦中で36戦がステークス競走、単勝オッズ1.8倍以下の人気になった回数は19回を数えた。後の2002年には米国競馬の殿堂入りを果たしている。

血統

Rahy Blushing Groom Red God Nasrullah Nearco
Mumtaz Begum
Spring Run Menow
Boola Brook
Runaway Bride Wild Risk Rialto
Wild Violet
Aimee Tudor Minstrel
Emali
Glorious Song Halo Hail to Reason Turn-to
Nothirdchance
Cosmah Cosmic Bomb
Almahmoud
Ballade Herbager Vandale
Flagette
Miss Swapsco Cohoes
Soaring
Imagining Northfields Northern Dancer Nearctic Nearco
Lady Angela
Natalma Native Dancer
Almahmoud
Little Hut Occupy Bull Dog
Miss Bunting
Savage Beauty Challenger
Khara
Image Intensifier ダンサーズイメージ Native Dancer Polynesian
Geisha
Noors Image Noor
Little Sphinx
Pat's Irish Tudor Minstrel Owen Tudor
Sansonnet
Snow Shower The Phoenix
Sleet

ラーイは当馬の項を参照。

母イマジニングは現役成績26戦2勝。本馬の半姉ヴィヴィッドイマジネーション(父レイズアマン)【ゴールデンロッドS(米GⅢ)】も産んでいる。ヴィヴィッドイマジネーションの孫には日本で走ったフミノイマージン【札幌記念(GⅡ)・福島牝馬S(GⅢ)・マーメイドS(GⅢ)・愛知杯(GⅢ)】がいる。また、本馬の全妹セレーナズシスターの子にはダブルズパートナー【アメリカンターフS(米GⅡ)・タンパベイS(米GⅢ)・カナディアンターフS(米GⅢ)】、曾孫にはリジーナ【モイグレアスタッドS(愛GⅠ)・コロネーションS(英GⅠ)】がいる。イマジニングの半姉にはアラバマナナ(父サッチング)【ファーストフライトH(米GⅢ)】が、イマジニングの半妹で日本に繁殖牝馬として輸入されたファイアーテン(父グリーンダンサー)の子にはスペシャリスト【オグリキャップ記念・高知県知事賞・西日本グランプリ】が、イマジニングの半妹ストームオーファイア(父ストームバード)の孫にはヴァケア【クイーンエリザベスⅡ世CCS(米GⅠ)】がいる。近親と言うには遠いが、日本で種牡馬として活躍したスティールハート【ミドルパークS】は遠縁で、アラジ、日本で走ったダンスパートナー、ダンスインザダーク、ダンスインザムード、イーグルカフェ、スズカマンボも一応は同じ牝系。→牝系:F7号族①

母父ノースフィールズはセントジョヴァイトの項を参照。

競走馬引退後

競走馬を引退した本馬は、米国ケンタッキー州デナリスタッドで繁殖入りした。本馬は繁殖牝馬としても優秀で、子出しが良い上に、産駒の勝ち上がり率は高く、ステークス競走で活躍する子も多い。

6歳時に産んだ初子の牝駒セレーナズチューン(父ミスタープロスペクター)は現役成績14戦7勝、ラハブラS・フェニックスS・ヴィクトリアラスHを勝利した。セレーナズチューンは既に後継繁殖牝馬として成功し、子にヴォーカライズド【グリーナムS(英GⅢ)・テトラークS(愛GⅢ)】、孫にノーブルチューン【アメリカンターフS(米GⅡ)・ピルグリムS(米GⅢ)】、オナーコード【メトロポリタンH(米GⅠ)・ホイットニーS(米GⅠ)・レムセンS(米GⅡ)・ガルフストリームパークH(米GⅡ)】がいる。しかしセレーナズチューンは2006年に蹄葉炎のため母より先に他界している。

7歳時に産んだ2番子の牝駒ソフィスティキャット(父ストームキャット)は1歳7月のキーンランドジセールにおいてクールモアグループにより340万ドルで落札された期待馬で、現役成績は12戦3勝。コロネーションS(英GⅠ)・グロット賞(英GⅢ)に勝ち、チェヴァリーパークS(英GⅠ)・ロウザーS(英GⅡ)・クイーンメアリーS(英GⅢ)で2着、モイグレアスタッドS(愛GⅠ)・仏1000ギニー(仏GⅠ)で3着した活躍馬だが、落札価格と比較するとこれでも期待以下に見えてしまったりする。

8歳時に産んだ3番子の牡駒アービトレート(父デピュティミニスター)は現役成績33戦5勝、ドクターファーガーSで2着している。特に目立つ競走成績ではないが、血統が評価されて墨国で種牡馬入りしている。

9歳時に産んだ4番子の牡駒グランドリワード(父ストームキャット)は現役成績24戦4勝、オークローンH(米GⅡ)に勝ち、ミルリーフS(英GⅡ)で2着している。引退後は米国や亜国で種牡馬生活を送っている。

10歳時に産んだ5番子の牡駒ハーリントン(父アンブライドルド)は、1歳9月のキーンランドセールにおいて280万ドルの値がついた。やはり取引価格が高額すぎて期待はずれに見えてしまうが、ガルフストリームパークH(米GⅡ)を勝つなど10戦6勝という優れた競走成績を残し、引退後はケンタッキー州やフロリダ州で種牡馬供用されている。

11歳時に産んだ6番子の牝駒ピュアシンメトリー(父ストームキャット)は6戦未勝利に終わった。

12歳時に産んだ7番子の牡駒カラフルスコア(父ストームキャット)は1歳9月のキーンランドセールにおいてドバイのシェイク・モハメド殿下により350万ドルで購入された。しかしスタートに難があり、英国では2戦未勝利。ドバイの未勝利戦を7馬身差で圧勝したが、結局は現役成績9戦1勝に終わってしまった。

13歳時に産んだ8番子の牡駒スパークキャンドル(父エーピーインディ)は、1歳9月のキーンランドセールにおいて日本人馬主の山本英俊氏によって150万ドルで落札され、外国産馬として日本に輸入された。最初は中央競馬の藤沢和雄厩舎に所属して、同厩のカジノドライヴが米国GⅡ競走ピーターパンSを勝利した際に一緒に出走して6着している。しかし中央競馬では2勝に終わり、後に地方競馬に移って勝ち星を上乗せし、通算28戦9勝の成績を残した。

14歳時に産んだ9番子の牡駒シュラムスバーグ(父ストームキャット)は現役成績24戦6勝、ジョンBコナリーターフカップH(米GⅢ)・リーミントングリーンS・オマハSに勝っている。引退後は加国で種牡馬入りしている。

16歳時に産んだ10番子の牡駒ストームバーグ(父ストームキャット)は現役成績14戦2勝。17歳時に産んだ11番子の牝駒ナイトアンドデイ(父アンブライドルズソング)は1戦未勝利。18歳時に産んだ12番子の牝駒セレーナズメロディ(父ストリートクライ)は11戦2勝。19歳時に産んだ13番子の牝駒(父メダグリアドーロ)は生後すぐに他界。22歳時の2014年には14番子の牝駒(父メダグリアドーロ)を出産している。

本馬はこの2014年をもって繁殖牝馬も引退して、現在はデナリスタッドで余生を送っている。健康状態には何の問題もなく、これだけ競走馬としても繁殖牝馬としても活躍したのだから残りは悠々自適の余生を送らせたいとデナリスタッド側が判断したのだという。

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