エーピーインディ

和名:エーピーインディ

英名:A.P.Indy

1989年生

黒鹿

父:シアトルスルー

母:ウィークエンドサプライズ

母父:セクレタリアト

筋骨隆々の雄大な馬体で力強く走りベルモントSとBCクラシックを快勝した1990年代米国最強3歳馬は種牡馬としても超一流

競走成績:2・3歳時に米加で走り通算成績11戦8勝3着1回

誕生からデビュー前まで

米国ケンタッキー州レーンズエンドファームにおいて、同牧場の所有者ウィリアム・スタンプス・ファリッシュⅢ世氏とウィリアム・S・キルロイ氏の両名により生産された。幼少期から筋骨隆々の雄大な体格を誇り、見る者を圧倒する威圧感があったという。

1歳7月のキーンランドセールに出品された時には、既に半兄サマースコールがプリークネスSを勝つなどの活躍を見せていたせいもあって米国の競馬関係者達から注目され、米国の名伯楽ウェイン・ルーカス調教師と、日本人馬主の鶴巻智徳氏の代理人ノエル・オコーラガン氏が競り合った結果、同年の最高額となる290万ドルという高値でオコーラガン氏に落札され、鶴巻氏の所有馬となった(同年の落札額2位の200万ドルでオコーラガン氏により落札されたファピアノ産駒の牡駒も鶴巻氏の所有馬となった)。

鶴巻氏は不動産開発業者であり、ちょうどこの年にF1開催を目指して5億円を投じてサーキット場「オートポリス(Autopolis)」を大分県日田市に開設した人物だった(彼はピカソが描いた「ピエレットの婚礼」という絵を5130万ドルという超高額で落札した事でも知られる)。鶴巻氏はこの「オートポリス」の頭文字にちなんで「A.P.」を冠名として使用しており、本馬には「エーピーインディ」、ファピアノ産駒には「エーピージェット」と命名した。鶴巻氏はエーピージェットを日本に送って走らせた(京成杯を勝ち、朝日杯三歳Sでミホノブルボンの3着するなどの成績を残した)が、本馬はそのまま米国に留め置いた。

最初、鶴巻氏は自身の他の所有馬を管理していたリック・メッティー調教師に本馬も委ねるつもりだったらしいが、理由は不明だが結局その話は流れてしまい、本馬はニール・ドライスデール調教師に預けられる事になった。ドライスデール師によると、本馬は非常に意思が強固な馬で、かつ、とても飲み込みが早い馬だったという。主戦はエディ・デラフーセイ騎手で、本馬の全レースに騎乗した。

競走生活(2歳時)

2歳8月にデルマー競馬場で行われたダート6ハロンの未勝利戦でデビュー。単勝オッズ3.3倍の1番人気に支持された。馬群の中団でレースを進めたが、道中で2度の不利を受けた影響もあって直線で伸びず、勝った単勝オッズ4.1倍の3番人気馬シャープバンディットから5馬身半差の4着に敗れた。

その後、本馬は半兄サマースコールと同じく停留睾丸(通常、睾丸は胎生期には腹腔内にあり、成育とともに下下して、出産時には陰嚢内に完全に収まるものだが、この正常な睾丸下降が行われず、下降の途中で睾丸が停滞してしまった状態を指す。痛みを感じるだけでなく、放置すると悪性腫瘍を発症したり、授精能力が失われたりするため、早めの処置が必要とされる。片方の睾丸のみが停留している事が多く、本馬の場合もそうであった)である事が判明した。騙馬に多くの大競走への門戸が閉ざされている欧州や日本ならいざ知らず、米国であればこの場合は正常な睾丸ごと去勢してしまうのが一般的だったのだが、本馬の血統的背景から種牡馬としての価値を見出していた鶴巻氏は、停留している睾丸のみを除去して正常な睾丸は残す手術を試みた。半兄サマースコールも同じく正常な睾丸を残す手術を受けて成功していた事も決断の背景にあったと思われる。本馬に関しても手術は無事に成功し、授精能力を失う事を免れた。

その後は10月にサンタアニタパーク競馬場で行われたダート6.5ハロンの未勝利戦で復帰。単勝オッズ2.3倍の1番人気に支持された。レースは不良馬場で行われたが、本馬には影響なかったようで、馬群の中団後方追走から直線で先行馬勢を一気に差し切り、最後は2着ドクターペインに4馬身差をつけて快勝した。

その後は米国東海岸に向かい、ベルモントパーク競馬場で行われたダート8ハロンの一般競走に出走。単勝オッズ1.2倍という圧倒的な1番人気に支持された。今回はスタートから先頭に立ってレースを支配し、そのまま逃げ切って2着カローカンボーイに3馬身差で勝利した。

その18日後には、米国西海岸のハリウッドパークパーク競馬場で行われたハリウッドフューチュリティ(米GⅠ・D8.5F)に出走。本馬を落札し損なったルーカス師の管理馬でブリーダーズフューチュリティS・ケンタッキージョッキークラブSを勝っていたダンスフロア、ハリウッドプレビューBCSの勝ち馬スターオブザクロップ、未勝利戦を5馬身差で圧勝してきたリアルウエスト、デルマーフューチュリティとノーフォークSで2着してきたチューリッヒ、フォスターシティマイルの勝ち馬カジュアルライズといった実力馬達との対戦となった。ダンスフロアが単勝オッズ4倍の1番人気で、本馬とスターオブザクロップが並んで単勝オッズ4.2倍の2番人気となった。

スタートが切られるとリアルウエストが逃げて、ダンスフロアやスターオブザクロップが好位でそれを追走。本馬は馬群の中団後方の位置取りだった。直線入り口でもまだ9番手だったが、ここから一気に追い込んで、2着ダンスフロアを首差差し切って勝利を収めた。着差は僅かだったが、鞍上のデラフーセイ騎手が鞭を使う事も無い楽勝だった。2歳時の成績は4戦3勝だった。

競走生活(3歳前半)

3歳時は2月末のサンラファエルS(米GⅡ・D8F)から始動。サンミゲルSの勝ち馬プリンスワイルド、ロスフェリツSの勝ち馬ヒックマンクリーク、ホイストザフラッグSの勝ち馬シルヴァーレイなどを抑えて、単勝オッズ1.5倍の1番人気に支持された。スタートから単勝オッズ22.6倍の最低人気馬トリークスターが逃げて、本馬はそれを追いかけるように先行した。トリークスターの逃げは非常に快調で、直線に入っても予想外の粘りを披露。そこへ並びかけた本馬が、後続を9馬身も引き離すトリークスターとの叩き合いを展開。最後は本馬が3/4馬身差で勝利を収めた。

1か月後のサンタアニタダービー(米GⅠ・D9F)では、デルマーフューチュリティ・ノーフォークS・サンフェリペSの勝ち馬で敗戦はBCジュヴェナイルでアラジの2着に敗れたのみというバートランドとの対戦となった。本馬が単勝オッズ1.9倍の1番人気で、バートランドが単勝オッズ2.1倍の2番人気、3番人気のカジュアルライズは単勝オッズ10.5倍という、一騎打ちムードとなった。バートランドが好スタートから逃げを打ち、本馬は馬群の中団につけた。直線に入るとカジュアルライズがバートランドに並びかけて叩き合いを開始したが、直線入り口4番手から差してきた本馬が前の2頭を一気にかわし、2着バートランドに1馬身3/4差をつけて勝利した。

そしてケンタッキーダービーに出走するべく東上した。この年のケンタッキーダービーにおける前評判では、前年に仏国2歳GⅠ競走を総なめにした上にBCジュヴェナイルをも圧勝した仏国調教馬アラジが断然の評価を得ていたが、アラジとは未対戦の本馬も対抗馬として高い評価を得ていた。しかし肝心のケンタッキーダービー当日朝、本馬は左前脚に挫石を発症したために、出走取り消しを余儀なくされてしまった。本馬の回避でアラジの独壇場になると思われたケンタッキーダービーだったが、アラジは予想外の惨敗を喫してしまい、米国三冠競走残り2戦には出走せず欧州に戻ってしまった。

本馬はプリークネスSも回避して、ベルモントSに照準を絞った。そして前哨戦としてピーターパンS(米GⅡ・D12F)に出走。ウッドメモリアル招待S・ゴーサムSを勝ってケンタッキーダービーに挑むも12着に惨敗してしまい立て直しを図っていたデヴィルヒズデューが主な対戦相手だった。本馬が単勝オッズ1.5倍の1番人気、デヴィルヒズデューが単勝オッズ3.8倍の2番人気で、この2頭が他馬より6~12ポンド重い126ポンドのトップハンデを背負っていた。本馬は痛めた脚を保護するために、アクリル樹脂製の蹄鉄を装着して臨んでいた。スタートから単勝オッズ8.4倍の3番人気馬リプレーションが先頭に立ち、デヴィルヒズデューが2番手を追走。本馬は焦らずに馬群の中団後方につけた。三角でリプレーションとデヴィルヒズデューの2頭が後退すると、代わりに本馬が先頭に立ち、直線に入ると独走。2着コロニーライトに5馬身半差をつけて圧勝した。

そして迎えたベルモントS(米GⅠ・D12F)には、プリークネスSで5着に終わったケンタッキーダービー馬リルイーティーが出走しておらず、骨のある相手はプリークネスS優勝馬パインブラフ程度で、他の出走馬は、ハリウッドフューチュリティ・サンタアニタダービーで共に本馬の3着に敗れていたケンタッキーダービー2着・プリークネスS3着馬カジュアルライズ、前走ピーターパンSで本馬に歯が立たなかったコロニーライト、カウディンS2着馬モントリオールマーティ、欧州から参戦してきたコンデ賞勝ち馬クリストフォリ、ディーS勝ち馬マイメモワールなどだった。本馬が単勝オッズ2.1倍の1番人気に支持され、パインブラフが単勝オッズ4.8倍の2番人気、カジュアルライズが単勝オッズ5.6倍の3番人気となった。

最内枠発走だった本馬は、隣の2番枠発走だったカジュアルライズを先に行かせて2番手を追走。向こう正面ではパインブラフなどが先に行ったために、いったん馬群の中団好位の4番手まで下がったが、3番手のパインブラフが三角で仕掛けると、それに外側から並びかけて一緒に上がっていった。そして直線ではパインブラフと本馬の叩き合いとなった。途中まではパインブラフがリードしていたが、残り半ハロン地点で本馬が前に出ると、最後は外側から追い込んできた2着マイメモワールの追撃を3/4馬身差抑えて優勝した。勝ちタイム2分26秒13は、本馬の母父セクレタリアトイージーゴアに次ぐ同レース史上3位の好時計だった(これ以降にこれより速いタイムでベルモントSが決着した事は無い)。

競走生活(3歳後半)

夏場は休養に充て、秋は加国のウッドバイン競馬場で行われたモルソンエクスポートミリオンS(加GⅡ・D9F)から始動した。ここでは、加国のダービーに相当するクイーンズプレートの勝ち馬で、プリークネスSと加国の三冠競走2戦目プリンスオブウェールズSでも2着していたアリディード、フロリダダービー・ハスケル招待Hの勝ち馬で、ケンタッキーダービーでアラジに次ぐ2番人気(結果は10着)だったテクノロジーという2頭の強敵が出現した。本馬が単勝オッズ1.7倍の1番人気で、アリディードが単勝オッズ3.7倍の2番人気、テクノロジーが単勝オッズ4.4倍の3番人気で、他の出走馬4頭は蚊帳の外といった雰囲気だった。

スタートからアリディードが逃げて、テクノロジーが2番手、本馬が3番手を追走した。しかし本馬はこのレースで何故か異常に反応が悪く、勝負どころで置いていかれてしまい、6番手で直線を向く羽目になった。アリディードとテクノロジーの2頭も直線では伸びが無く、人気薄の後続馬に次々と差されていった。結局勝ったのはプリンスオブウェールズSでアリディードを破って勝っていた単勝オッズ32.75倍の5番人気馬ベンバーブで、本馬は2馬身半差の5着に敗れてしまった(テクノロジーは4着で、アリディードは6着だった)。

その後はジョッキークラブ金杯(米GⅠ・D10F)に向かった。このレースは、ハリウッド金杯・ホイットニーH・ウッドワードSなどこの年GⅠ競走3勝のサルトリーソング、前走ウッドワードSで2着してきたマリブS・サバーバンHなどの勝ち馬プレザントタップ、この年もピムリコスペシャルH・ナッソーカウンティHを勝ちガルフストリームパークH・サバーバンHで2着するなど活躍していた前年のケンタッキーダービー馬ストライクザゴールドといった古馬の実力馬勢に加えて、3歳馬ながら本馬とは未対戦のトラヴァーズS・ジムダンディS勝ち馬サンダーランブル、ピーターパンS6着後にトラヴァーズSで2着していたデヴィルヒズデューなど、対戦相手がかなり揃った。サルトリーソングが単勝オッズ2.8倍の1番人気に支持され、本馬は単勝オッズ2.9倍の2番人気となった。

しかし悪いことは続くもので、本馬はスタートで躓いて大きく出遅れてしまい、最後方からの競馬となってしまった。一時は前方馬群から5馬身以上も離されてしまい、なんとか追い上げようとしたが直線半ばで失速。勝ったプレザントタップから6馬身3/4差、2着ストライクザゴールドからも2馬身1/4差の3着に終わった。しかもスタートで躓いた時に、かつてケンタッキーダービー当日に負傷した左前脚の怪我を悪化させてしまい、次走に予定していたBCクラシックに向けて暗雲が立ち込めた。

それでも陣営の尽力により立て直しに成功し、ガルフストリームパーク競馬場で行われたBCクラシック(米GⅠ・D10F)に無事に参戦できた。前走ジョッキークラブ金杯で対戦したプレザントタップ、ストライクザゴールド、サルトリーソング(前走4着)、サンダーランブル(前走7着最下位)がこぞって出走していた他に、ミドルパークS・英2000ギニー・愛2000ギニー・英国際S・英チャンピオンSなどを勝っていたこの年のカルティエ賞最優秀3歳牡馬ロドリゴデトリアーノ、古馬ハンデ競走路線で堅実に走ってメドウランズCH・ベルエアH・デルマーBCH・サンパスカルH・カーネルFWケスターHなどグレード競走7勝を積み重ねてきたトワイライトアジェンダ、仏オークス・ヴェルメイユ賞を勝っていたジョリファダンシングブレーヴの全妹)、ハリウッド金杯・エディリードHの勝ち馬マーケトリー、マンノウォーSの勝ち馬ディフェンシヴプレイ、テクノロジー、デルマーBCH・グッドウッドHを連勝して勢いに乗るレインロード、ドンH・ガルフストリームパークH・フィリップHアイズリンHとGⅠ競走を3勝していたジョリーズヘイロー、イスパーン賞・ワシントンDC国際S・愛国際S・タタソールズ金杯などの勝ち馬ゾーマンと、世界各国の有力馬達が各路線から集結していた。しかし単勝オッズ3.1倍の1番人気に支持されたのは本馬であり、プレザントタップが対抗馬として単勝オッズ3.5倍の2番人気、サルトリーソングが単勝オッズ6.7倍の3番人気、ロドリゴデトリアーノが単勝オッズ7.2倍の4番人気、ストライクザゴールドが単勝オッズ8.7倍の5番人気となっていた。

スタートから先頭を伺う勢いだった本馬だったが、外側から来たサンダーランブルやジョリーズヘイローを先に行かせた後、位置取りを下げて馬群の中団好位の内側を追走した。道中では本馬の前方と外側のいずれにも他馬が密集しており、抜け出すことが出来るのか懸念されたが、三角でデラフーセイ騎手がゴーサインを出すと馬群の間をすり抜けて進出し、四角では外側に持ち出して3番手で直線を向いた。そして直線では堂々と突き抜けていき、2着プレザントタップに2馬身差をつけて完勝した。

このレースを最後に競走馬を引退。3歳時の成績は7戦5勝で、この年のエクリプス賞年度代表馬・最優秀3歳牡馬のタイトルを獲得した。幼少期のセリにおいて高額で落札された馬がそれ以上の賞金を稼ぐのは難しいが、本馬の獲得賞金総額は297万9815ドルであり、きっちりと落札額を上回っている。

血統

Seattle Slew Bold Reasoning Boldnesian Bold Ruler Nasrullah
Miss Disco
Alanesian Polynesian
Alablue
Reason to Earn Hail to Reason Turn-to
Nothirdchance
Sailing Home Wait a Bit
Marching Home
My Charmer Poker Round Table Princequillo
Knight's Daughter
Glamour Nasrullah
Striking
Fair Charmer Jet Action Jet Pilot
Busher
Myrtle Charm Alsab
Crepe Myrtle
Weekend Surprise Secretariat Bold Ruler Nasrullah Nearco
Mumtaz Begum
Miss Disco Discovery
Outdone
Somethingroyal Princequillo Prince Rose
Cosquilla
Imperatrice Caruso
Cinquepace
Lassie Dear Buckpasser Tom Fool Menow
Gaga
Busanda War Admiral
Businesslike
Gay Missile Sir Gaylord Turn-to
Somethingroyal
Missy Baba My Babu
Uvira

シアトルスルーは当馬の項を参照。

母ウィークエンドサプライズは現役成績31戦7勝、スカイラヴィルS(米GⅢ)・ゴールデンロッドS(米GⅢ)の勝ち馬で、他にラカナダS(米GⅠ)で2着、フリゼットS(米GⅠ)・メイトロンS(米GⅠ)・デラウェアH(米GⅠ)・サンタマルガリータ招待H(米GⅠ)でそれぞれ3着している。繁殖牝馬としては非常に優秀で、本馬の半兄サマースコール(父ストームバード)【プリークネスS(米GⅠ)・ホープフルS(米GⅠ)・サラトガスペシャルS(米GⅡ)・ジムビームS(米GⅡ)・ブルーグラスS(米GⅡ)・フェイエットH(米GⅡ)・ペンシルヴァニアダービー(米GⅢ)】、種牡馬としてBCディスタフ勝ち馬アドレーションなど多くの活躍馬を輩出した半兄オナーグレイズ(父ダンチヒ)、半妹ウェルカムサプライズ(父シーキングザゴールド)【ドッグウッドS(米GⅢ)】などを産み、1992年には本馬の活躍によりケンタッキー州最優秀繁殖牝馬に選ばれた。また、本馬の半妹ウィークエンドストーム(父ストームバード)の子には、日本の公営競馬で活躍したタガノインディー【園田金杯・新春賞・六甲盃】の他に、スマートサプライズ【ヘンドリーS(加GⅢ)】、コートヴィジョン【BCマイル(米GⅠ)・ハリウッドダービー(米GⅠ)・シャドウェルターフマイルS(米GⅠ)・ガルフストリームパークターフH(米GⅠ)・ウッドバインマイル(加GⅠ)・レムセンS(米GⅡ)・ジャマイカH(米GⅡ)・イロコイS(米GⅢ)】がいる。

ウィークエンドサプライズの半弟にはウルフハウンド(父ヌレイエフ)【フォレ賞(仏GⅠ)・スプリントC(英GⅠ)・ダイアデムS(英GⅢ)】がいる。また、ウィークエンドサプライズの半妹ラッシーズレディ(父アリダー)の子にはバイトザブレット【サンフォードS(米GⅡ)】、孫にはデュークオブマーマレード【キングジョージⅥ世&クイーンエリザベスS(英GⅠ)・ガネー賞(仏GⅠ)・タタソールズ金杯(愛GⅠ)・プリンスオブウェールズS(英GⅠ)・英国際S(英GⅠ)】とルーラーオブザワールド【英ダービー(英GⅠ)】の兄弟が、ウィークエンドサプライズの半妹チャーミングラッシー(父シアトルスルー)の子にはブリュレイ【レイルバードS(米GⅡ)】、レモンドロップキッド【ベルモントS(米GⅠ)・ベルモントフューチュリティS(米GⅠ)・トラヴァーズS(米GⅠ)・ホイットニーH(米GⅠ)・ウッドワードS(米GⅠ)・ブルックリンH(米GⅡ)・サバーバンH(米GⅡ)】、スタチューオブリバティ【コヴェントリーS(米GⅢ)】がいる。近親には1980年の北米首位種牡馬ラジャババ、1980年のエクリプス賞最優秀短距離馬プラグドニックル【ローレルフューチュリティ(米GⅠ)・フロリダダービー(米GⅠ)・ウッドメモリアルS(米GⅠ)・ヴォスバーグS(米GⅠ)】、2011年のエクリプス賞年度代表馬ハヴァードグレイス【アップルブロッサムH(米GⅠ)・ウッドワードS(米GⅠ)・ベルデイム招待S(米GⅠ)】など活躍馬が多数おり、文句無しの名門牝系。→牝系:F3号族④

母父セクレタリアトは当馬の項を参照。本馬は父と母父ともにボールドルーラー直系の米国三冠馬というスケールの大きな配合である。

競走馬引退後

競走馬を引退した本馬は生まれ故郷のレーンズエンドファームで種牡馬入りした。本馬の所有者は日本人の鶴巻氏であり、そのままであれば日本で種牡馬入りする可能性もあったが、本馬の生産者ファリッシュⅢ世氏とキルロイ氏の両名は、本馬を米国で種牡馬入りさせるために、鶴巻氏から本馬を買い戻したのである。ちょうどこの時期、バブル崩壊により鶴巻氏が代表を務めていた日本オートポリス社が倒産してしまっており、彼は本馬を手放さざるを得なかったようである。

本馬が2歳時に受けた停留睾丸の手術の影響を懸念する声もあったが、初年度の種付け料は5万ドルという高額に設定された。しかしこの種付け料でも安かったと断言できるほど本馬は種牡馬として超一流の成績を残し、父のシアトルスルーと共にボールドルーラー直系の中核となった。初年度産駒は45頭だったが、そのうち28.9%に当たる13頭がステークスウイナーとなった。その後も活躍馬を続出させ、2003・06年には北米首位種牡馬に輝いた。最盛期の種付け料は30万ドルに達したが、本馬の産駒は平均55万ドルで売れたため、これだけ高額の種付け料でも引く手数多だった。産駒のステークスウイナーは148頭以上に達している。

2011年に交配した繁殖牝馬25頭が1頭も受胎しなかったため、この年限りで種牡馬を引退したが、同年における種付け料も15万ドルと高額を維持していた。本馬の種牡馬引退の報を受けた米国の競馬マスコミは本馬を「完璧なサラブレッド」「理想的な種牡馬」とこぞって賞賛した。種牡馬引退以降はレーンズエンドファームで余生を送っている。ケンタッキーダービー当日に負った左前脚の負傷は完治した訳ではないようで、現在も治療用の蹄鉄を装着しているらしいが、競走馬引退から20年以上も経過しているとは思えないほどの体格を維持しているという。2000年に米国競馬の殿堂入りを果たしている。

繁殖牝馬の父としても優秀で、BCレディーズクラシック2連覇のロイヤルデルタやケンタッキーダービー馬スーパーセイヴァーなどを出し、近々ステークスウイナーが100頭を突破する事はほぼ確実な情勢である。

主な産駒一覧

生年

産駒名

勝ち鞍

1994

A. P. Assay

アグリームH(米GⅡ)

1994

Accelerator

ピリグリムS(米GⅢ)

1994

General Royal

ウイリアムPキーンH(米GⅢ)

1994

Parade Queen

ミセスリヴィアS(米GⅢ)・ジョーネイマスH(米GⅢ)

1994

Pulpit

ファウンテンオブユースS(米GⅡ)・ブルーグラスS(米GⅡ)

1994

Royal Indy

ガゼルH(米GⅠ)

1994

Runup The Colors

アラバマS(米GⅠ)

1994

Tomisue's Delight

ラフィアンH(米GⅠ)・パーソナルエンスンH(米GⅠ)・フォールズシティH(米GⅢ)

1994

ヒシナイル

フェアリーS(GⅢ)

1995

Crowd Pleaser

サラナクH(米GⅢ)

1995

Golden Missile

ピムリコスペシャルH(米GⅠ)・スティーヴンフォスターH(米GⅡ)・ワイドナーH(米GⅢ)

1995

I'm Indy Mood

グレンズフォールズH(米GⅢ)

1995

Let

チャーチルダウンズディスタフH(米GⅡ)

1995

Lu Ravi

コティリオンH(米GⅡ)・モリーピッチャーBCH(米GⅡ)・フェアグラウンズオークス(米GⅢ)・シックスティセイルズH(米GⅢ)・デラウェアH(米GⅢ)

1995

Old Trieste

スワップスS(米GⅡ)・デルマーBCH(米GⅡ)・カリフォルニアンS(米GⅡ)・アファームドH(米GⅢ)

1996

Stephen Got Even

ドンH(米GⅠ)・ギャラリーファーニチャードットコムS(米GⅡ)

1996

サヤカ

フラワーC(GⅢ)

1996

シンボリインディ

NHKマイルC(GⅠ)・京成杯オータムH(GⅢ)

1997

Aptitude

ハリウッド金杯(米GⅠ)・ジョッキークラブ金杯(米GⅠ)・サラトガBCH(米GⅡ)

1997

Festival of Light

ゴドルフィンマイル(首GⅢ)

1997

Secret Status

ケンタッキーオークス(米GⅠ)・マザーグースS(米GⅠ)・フロリダオークス(米GⅢ)

1997

アラタマインディ

小倉記念(GⅢ)

1998

A. P. Valentine

シャンペンS(米GⅠ)

1998

Indygo Shiner

ジェファーソンCS(米GⅢ)

1998

Snake Mountain

スタイヴァサントH(米GⅢ)・クイーンズカウンティH(米GⅢ)・アケダクトH(米GⅢ)

1998

With Ability

ネクストムーヴH(米GⅢ)・シックスティセイルズH(米GⅢ)

1999

Alumni Hall

ベンアリS(米GⅢ)・フェイエットS(米GⅢ)

1999

Delta Princess

ボーゲイH(米GⅢ)・ミントジュレップH(米GⅢ)・ローカストグローヴH(米GⅢ)

1999

Fisher Pond

ローレンスリアライゼーションH(米GⅢ)

1999

Jilbab

CCAオークス(米GⅠ)

1999

Jump Start

サラトガスペシャルS(米GⅡ)

1999

Mineshaft

ピムリコスペシャルH(米GⅠ)・サバーバンH(米GⅠ)・ウッドワードS(米GⅠ)・ジョッキークラブ金杯(米GⅠ)・ニューオーリンズH(米GⅡ)・ベンアリS(米GⅢ)

1999

Olmodavor

ネイティヴダイヴァーH(米GⅢ)・ワーラウェイH(米GⅢ)

1999

Passing Shot

パーソナルエンスンH(米GⅠ)・ベッドオローゼズBCH(米GⅢ)

1999

Tempera

BCジュヴェナイルフィリーズ(米GⅠ)・ソレントS(米GⅡ)

2000

Congrats

サンパスカルH(米GⅡ)

2000

Indy Five Hundred

ガーデンシティBCH(米GⅠ)

2000

Mingun

メルドS(愛GⅢ)

2000

Yell

ダヴォナデイルS(米GⅡ)・レイヴンランS(米GⅢ)

2001

A. P. Adventure

ラスヴァージネスS(米GⅠ)・サンタイザベルS(米GⅢ)

2001

Daydreaming

トップフライトH(米GⅡ)・インディアナBCオークス(米GⅢ)・ネクストムーヴH(米GⅢ)

2001

Friends Lake

フロリダダービー(米GⅠ)

2001

Gradepoint

リズンスターS(米GⅢ)

2001

La Reina

テンプテッドS(米GⅢ)

2001

Lovely Rafaela

ハネムーンBCH(米GⅡ)

2001

Quick Temper

アーリントンメイトロンH(米GⅢ)

2001

Rosberg

プレミアズS(加GⅢ)

2001

Shaniko

ケンタッキーCクラシックS(米GⅡ)

2001

Suave

サラトガBCH(米GⅡ)・ワシントンパークH(米GⅡ)・ノーザンダンサーS(米GⅢ)

2002

A. P. Arrow

クラークH(米GⅡ)・スキップアウェイH(米GⅢ)

2002

Admiral's Cruise

ジェフリーフリアS(英GⅢ)

2002

Dance with Ravens

グレイBCS(加GⅡ)

2002

Indian Vale

フォールズシティH(米GⅡ)・フルールドリスH(米GⅡ)・ターンバックジアラームH(米GⅢ)・ネクストムーヴH(米GⅢ)

2002

Master Command

メドウランズCS(米GⅡ)・ニューオーリンズH(米GⅡ)・ウィリアムドナルドシェイファーH(米GⅢ)・マインシャフトH(米GⅢ)・ナショナルジョッキークラブH(米GⅢ)

2002

Saint Anddan

チャーチルダウンズS(米GⅡ)

2002

Scipion

リズンスターS(米GⅢ)

2002

Sweet Symphony

アラバマS(米GⅠ)

2003

A. P. Warrior

サンフェリペS(米GⅡ)・ラホヤH(米GⅡ)

2003

Altesse

ターンバックジアラームH(米GⅢ)

2003

Bernardini

プリークネスS(米GⅠ)・トラヴァーズS(米GⅠ)・ジョッキークラブ金杯(米GⅠ)・ジムダンディS(米GⅡ)・ウィザーズS(米GⅢ)

2003

Just as Well

アーリントンH(米GⅢ)

2003

She's Indy Money

シーウェイS(加GⅢ)

2003

Teammate

ボニーミスS(米GⅡ)・シュヴィーH(米GⅡ)

2004

Boca Grande

デモワゼルS(米GⅡ)・カムリーS(米GⅡ)

2004

Lomaki

エンデバーS(米GⅢ)

2004

Marchfield

加ブリーダーズS・オータムS(加GⅡ)・スカイクラシックS(加GⅡ)・ドミニオンデイH(加GⅢ)

2004

Rags to Riches

ベルモントS(米GⅠ)・ラスヴァージネスS(米GⅠ)・サンタアニタオークス(米GⅠ)・ケンタッキーオークス(米GⅠ)

2004

Serenading

フォールズシティH(米GⅡ)

2004

Telling

ソードダンサー招待S(米GⅠ)2回

2005

Adriano

レーンズエンドS(米GⅡ)・ケントS(米GⅢ)

2005

Eldaafer

ブルックリンH(米GⅡ)・ターフウェイパークフォールCSS(米GⅢ)・BCマラソン(米GⅢ)・グリーンウッドCS(米GⅢ)

2005

Little Belle

アッシュランドS(米GⅠ)

2005

Majestic Warrior

ホープフルS(米GⅠ)

2005

Music Note

マザーグースS(米GⅠ)・CCAオークス(米GⅠ)・ガゼルS(米GⅠ)・バレリーナS(米GⅠ)・ベルデイムS(米GⅠ)

2005

You and I Forever

ガルフストリームパークH(米GⅡ)

2006

El Crespo

パームビーチS(米GⅢ)

2006

Eye of the Leopard

クイーンズプレート

2006

Flashing

テストS(米GⅠ)・ガゼルS(米GⅠ)・ナッソーカウンティS(米GⅢ)

2006

Friesan Fire

ルイジアナダービー(米GⅡ)・ルコントS(米GⅢ)・リズンスターS(米GⅢ)

2006

Girolamo

ヴォスバーグS(米GⅠ)・ジェロームH(米GⅡ)

2007

Stratford Hill

シェイカータウンS(米GⅢ)

2008

Astrology

イロコイS(米GⅢ)

2008

Clear Attempt

ポーカーS(米GⅢ)

2008

Love and Pride

パーソナルエンスン招待H(米GⅠ)・ゼニヤッタS(米GⅠ)・オービアS(米GⅢ)

2009

Take Charge Indy

フロリダダービー(米GⅠ)・アリシーバS(米GⅡ)

2010

Antipathy

シュヴィーH(米GⅢ)

2010

Deceptive Vision

カナディアンS(加GⅡ)・ダブルドッグデアS(米GⅢ)

2010

Dreaming of Julia

フリゼットS(米GⅠ)・ガルフストリームオークス(米GⅡ)

2010

Majestic River

モリーピッチャーS(米GⅡ)

2011

America

ターンバックジアラームH(米GⅢ)

2011

Commissioner

ホーソーン金杯(米GⅡ)・スキップアウェイS(米GⅢ)・ピムリコスペシャルS(米GⅢ)

2011

Got Lucky

スピンスターS(米GⅠ)・モリーピッチャーS(米GⅢ)

2011

Honor Code

メトロポリタンH(米GⅠ)・ホイットニーS(米GⅠ)・レムセンS(米GⅡ)・ガルフストリームパークH(米GⅡ)

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