グリーンダンサー

和名:グリーンダンサー

英名:Green Dancer

1972年生

鹿毛

父:ニジンスキー

母:グリーンヴァリー

母父:ヴァルドロワール

仏2000ギニーを勝ち英ダービーや凱旋門賞では完敗したマイラーだったが種牡馬としては優秀なスタミナや底力を産駒に伝えたニジンスキーの後継種牡馬

競走成績:2・3歳時に仏英で走り通算成績8戦4勝2着2回

誕生からデビュー前まで

米国ケンタッキー州において、母グリーンヴァリーの所有者だったジェルメーヌ・レベル・ウェルトハイマー夫人(リファールリヴァーマンの現役時代の所有者)により生産された。本馬が2歳時にウェルトハイマー夫人が死去したため、本馬は彼女の息子であるジャック・ウェルトハイマー氏の所有馬となり、仏国アレック・ヘッド調教師に預けられた。主戦はヘッド師の息子フレデリック・ヘッド騎手が務めた。

競走生活

2歳時にドーヴィル競馬場で行われたタンカーヴィユ賞(T1200m)でデビューして勝ち上がった。10月のシェーヌ賞(仏GⅢ・T1600m)では、後の仏クランクリテリウム勝ち馬マリアッチに敗れて2着。その後は英国に移動してオブザーヴァー金杯(英GⅠ・T8F)に出走。単勝オッズ4.5倍の評価を受けた。レースでは直線で進路を塞がれる不利を受けながらも、2着シーブレイクに1馬身半差、3着となった後のクレイヴンSの勝ち馬ノーアリモニーにはさらに半馬身差をつけて勝利。2歳時の成績は3戦2勝となった。

3歳時はいきなり仏2000ギニー(仏GⅠ・T1600m)からの始動となったが、2着コンドルセに1馬身差で勝利した。さらにリュパン賞(仏GⅠ・T2100m)でも、2着マリアッチに3/4馬身差、3着となった後のパリ大賞勝ち馬マタホークにはさらに6馬身差をつけて勝利した。

次走は仏ダービーではなく英ダービー(英GⅠ・T12F)となった。デューハーストS・愛2000ギニー・英シャンペンSの勝ち馬で英2000ギニー2着のグランディ、オブザーヴァー金杯で本馬の2着だったフェニックスパークトライアルSの勝ち馬シーブレイク、後の英セントレジャー馬ブルーニ、ミドルパークS2着馬ロイヤルマナクル、サンタラリ賞・グロット賞の勝ち馬で仏1000ギニー2着だった後のワシントンDC国際Sの勝ち馬ノビリアリー、ダンテSを勝ってきたホブノブ、ニジンスキーSを勝ってきたナットハッチ、リングフィールドダービートライアルS2着馬アンズプリテンダーなどが対戦相手となった。本馬が単勝オッズ2.5倍の1番人気に支持され、グランディが単勝オッズ6倍の2番人気となった。しかしスムーズにレースを進めたグランディとは対照的に本馬は気性の悪さを出してしまい、勝ったグランディから10馬身差の6着に敗れてしまった。鞍上のヘッド騎手は思いもかけない本馬の凡走に驚いたという。

夏場は休養に充て、秋はニエル賞(仏GⅢ・T2200m)から始動した。結果は英ダービー4着・愛ダービー3着馬アンズプリテンダーの首差2着だった。次走の凱旋門賞(仏GⅠ・T2400m)では、前年の凱旋門賞を筆頭にクリテリウムデプーリッシュ・仏1000ギニー・仏オークス・ヴェルメイユ賞・ガネー賞2回・イスパーン賞などを勝っていた「ロンシャンの女王」アレフランス、キングジョージⅥ世&クイーンエリザベスDS2回・サンタラリ賞・愛オークス・ワシントンDC国際S・サンクルー大賞・ベンソン&ヘッジズ金杯2回・マンノウォーSなどを勝っていたダリアという2頭の歴史的女傑に加えて、仏1000ギニー・ヴェルメイユ賞・ノネット賞の勝ち馬イヴァンジカ、英セントレジャーを勝ってきたブルーニ、英ダービーで2着と健闘していたノビリアリー、前年の凱旋門賞で2着していた前年のサンタラリ賞の勝ち馬コンテスドロワール、米国から遠征してきたハリウッドダービー・セクレタリアトSの勝ち馬イントレピッドヒーロー、ロワイヤルオーク賞を勝ってきたヘンリルバラフル、サンクルー大賞の勝ち馬アンコペック、エクリプスS・ミラノ大賞の勝ち馬スターアピールなどが対戦相手となった。アレフランスが1番人気に支持され、本馬とイヴァンジカのカップリングが2番人気となった。ヘッド騎手がイヴァンジカに騎乗したため、本馬にはG・ムーア騎手が騎乗した。しかし勝ったのは単勝オッズ120.7倍の最低人気馬スターアピールで、本馬はスターアピールから9馬身半差の8着に敗退。このレースを最後に3歳時5戦2勝の成績で競走馬を引退した。

血統

Nijinsky Northern Dancer Nearctic Nearco Pharos
Nogara
Lady Angela Hyperion
Sister Sarah
Natalma Native Dancer Polynesian
Geisha
Almahmoud Mahmoud
Arbitrator
Flaming Page Bull Page Bull Lea Bull Dog
Rose Leaves
Our Page Blue Larkspur
Occult
Flaring Top Menow Pharamond
Alcibiades
Flaming Top Omaha
Firetop
Green Valley Val de Loir Vieux Manoir Brantome Blandford
Vitamine
Vieille Maison Finglas
Vieille Canaille
Vali Sunny Boy Jock
Fille de Soleil
Her Slipper Tetratema
Carpet Slipper
Sly Pola Spy Song Balladier Black Toney
Blue Warbler
Mata Hari Peter Hastings
War Woman
Ampola Pavot Case Ace
Coquelicot
Blue Denim Blue Larkspur
Judy o'Grady

ニジンスキーは当馬の項を参照。

母グリーンヴァリーは不出走馬だが、繁殖牝馬としてはかなり優秀で、本馬の半弟エルコラノ(父サーアイヴァー)【リス賞(仏GⅢ)】、全弟ヴァルダンスール【ゴールデンゲートH(米GⅡ)・ローリンググリーンH(米GⅢ)】、日本で種牡馬入りしてライブリマウントの父となった半弟グリーンマウント(父リファール)を産んでいる。グリーンヴァリーの牝系子孫はかなり発展しており、本馬の半妹ピンクヴァレー(父ネヴァーベンド)の子にはピンク【ミュゲ賞(仏GⅢ)・シュマンドフェルデュノール賞(仏GⅢ)・ロンポワン賞(仏GⅢ)】、曾孫には日本で走ったティアップワイルド【兵庫ゴールドトロフィー(GⅢ)・かきつばた記念(GⅢ)】が、本馬の半妹ヴァリーダンサンテ(父リファール)の子にはブルックリンズダンス【クレオパトル賞(仏GⅢ】、孫にはオカワンゴ【仏グランクリテリウム(仏GⅠ)】、オーソライズド【英ダービー(英GⅠ)・レーシングポストトロフィー(英GⅠ)・英国際S(英GⅠ)】、ソレミア【凱旋門賞(仏GⅠ)】、曾孫にはキジャーノ【バーデン大賞(独GⅠ)・ミラノ大賞(伊GⅠ)2回】が、本馬の半妹アイリッシュヴァリー(父アイリッシュリヴァー)の子にはグリーンポーラ【カルヴァドス賞(仏GⅢ)】、アルハース【デューハーストS(英GⅠ)・シャンペンS(英GⅡ)・ロンポワン賞(仏GⅡ)・愛国際S(愛GⅡ)・ドラール賞(仏GⅡ)・ヴィンテージS(英GⅢ)・ソラリオS(英GⅢ)】、孫にはマクフィ【英2000ギニー(英GⅠ)・ジャックルマロワ賞(仏GⅠ)】、日本で走ったケープリズバーン【TCK女王盃(GⅢ)】がいるなど、活躍馬が多数登場している。

グリーンヴァリーの母スライポーラは、ロベールパパン賞・アベイドロンシャン賞・グロット賞・グロシェーヌ賞を勝つなど10戦5勝の成績を残した活躍馬。グリーンヴァリーの半妹エルパロマー(父ルメニル)の子にはパレオ【伊グランクリテリウム(伊GⅠ)・イタリア大賞(伊GⅠ)】が、グリーンヴァリーの半妹ポーラデラッジア(父リヴァーピース)の曾孫にはポルレッツァ【モーリスドギース賞(仏GⅠ)】がいる。グリーンヴァリーの従兄妹には仏グランクリテリウムでシーバードに生涯唯一の黒星をつけたグレイドーン【モルニ賞・サラマンドル賞・仏グランクリテリウム】やライトアウェイ【仏1000ギニー】がおり、グリーンヴァリーの従姉妹ミアポーラの曾孫にはドリームウェル【仏ダービー(仏GⅠ)・愛ダービー(愛GⅠ)】とスラマニ【仏ダービー(仏GⅠ)・ドバイシーマクラシック(首GⅠ)・アーリントンミリオンS(米GⅠ)・ターフクラシック招待S(米GⅠ)・英国際S(英GⅠ)・加国際S(加GⅠ)】の兄弟がいるなど、かなりの名門牝系である。→牝系:F16号族①

母父ヴァルドロワールは現役成績21戦7勝、主な勝ち鞍は仏ダービー・ノアイユ賞・オカール賞・ドーヴィル大賞。種牡馬としても優秀で、1973年から3年連続で仏首位種牡馬となった。名馬シャーガーの母父でもある。その父ヴューマノワールはブラントーム直子で、現役成績5戦3勝。パリ大賞を勝ち、英セントレジャーで2着して仏最優秀3歳牡馬に選出された。種牡馬としても1958年に仏首位種牡馬になっている。

競走馬引退後

競走馬を引退した本馬は仏国ケスネー牧場で種牡馬入りした。初年度産駒から1980年の仏1000ギニーを制したアリアンヌを出して注目され、同年に米国ケンタッキー州ゲインズウェイファームに移動した。その後も各国で活躍馬を送り出して種牡馬として成功。1983・84年に仏種牡馬ランキングで4位に入ると、1991年には凱旋門賞馬スワーヴダンサーの活躍により仏首位種牡馬の座を獲得した。産駒のステークスウイナーは83頭で、繁殖牝馬の父としても100頭程度のステークスウイナーを送り出した。25年間もの長きに渡って種牡馬生活を続けていたが、2000年11月に老衰のため種牡馬を引退。その直後の12月に急激に体調が悪化したため28歳で安楽死の措置が執られ、遺体はゲインズウェイファームに埋葬された。28歳という年齢はサラブレッドとしては長命の部類に入るが、本馬が他界した時点でゲインズウェイファームには本馬より長命の引退種牡馬が3頭(当時31歳のリファールとビッグスプルース、当時30歳のストップザミュージック)もいた。これはゲインズウェイファームの健康管理体制が優れている事を示しており、種牡馬として成功する最重要条件の一つである長生きするという点を本馬が充たす事が出来たのはゲインズウェイファームで供用された事も大きいと思われる。

ニジンスキー系らしくやや重い血であるが、大レース向きの優秀なスタミナや底力を伝え、一流のスピード能力も内包する万能血統である。日本でも孫のスーパークリークや直子のエイシンプレストンの活躍でその名を知らしめている。ダートでの活躍馬は皆無ではないが少数派であり、明らかに芝向き種牡馬である。母父としては米国GⅠ競走4勝のナスルエルアラブ、英ダービー馬クエストフォーフェイム、米国の歴史的名障害競走馬ローンサムグローリー、ブラジルのGⅠ競走4勝と米国GⅠ競走5勝のサンドピット、欧州中距離王ホーリング、英2000ギニー馬ペニカンプ、加年度代表馬ピークスアンドヴァレーズ、豪州年度代表馬ジューン、BCターフ馬カラニシ、愛2000ギニー・セントジェームズパレスS勝ち馬ブラックミナルーシュなどバラエティ豊かな面々を送り出している。

主な産駒一覧

生年

産駒名

勝ち鞍

1977

Aryenne

仏1000ギニー(仏GⅠ)・クリテリウムデプーリッシュ(仏GⅠ)・グロット賞(仏GⅢ)

1978

Anitra's Dance

ミネルヴ賞(仏GⅢ)

1979

Cadoudal

オカール賞(仏GⅡ)

1979

Dancing Rocks

ナッソーS(英GⅡ)

1980

Lovely Dancer

アルクール賞(仏GⅡ)・プランスドランジュ賞(仏GⅢ)2回

1980

Maximova

サラマンドル賞(仏GⅠ)・カルヴァドス賞(仏GⅢ)・モートリー賞(仏GⅢ)・セーネワーズ賞(仏GⅢ)

1981

Greinton

サンタアニタH(米GⅠ)・カリフォルニアンS(米GⅠ)・ハリウッド金杯(米GⅠ)・サンバーナーディノH(米GⅡ)

1981

Silver Green

バルブヴィル賞(仏GⅢ)・グラディアトゥール賞(仏GⅢ)

1982

Will Dancer

伊グランクリテリウム(伊GⅠ)

1983

Primary

エボアH

1983

Vilzak

ハリウッドターフCS(米GⅠ)

1984

Gem Master

シェリダンS(米GⅡ)

1985

First Waltz

モルニ賞(仏GⅠ)

1985

Green Barb

ローレンスアーマーH(米GⅡ)

1986

Athenia Green

サンフランシスコH(米GⅢ)

1986

Confirmed Dancer

アーリントンオークス(米GⅢ)

1986

Fantastic Look

ファンタジーS(米GⅠ)・シルヴァーベルズH(米GⅡ)

1986

Torjoun

ダンテS(英GⅡ)

1987

Behaving Dancer

ゴールデンハーヴェストH(米GⅢ)

1987

Senor Pete

ベルモントフューチュリティS(米GⅠ)

1988

Al Mutahm

サガロS(英GⅢ)

1988

Bistro Garden

ロンポワン賞(仏GⅢ)・ベイメドウズダービー(米GⅢ)

1988

Suave Dancer

凱旋門賞(仏GⅠ)・仏ダービー(仏GⅠ)・愛チャンピオンS(愛GⅠ)・グレフュール賞(仏GⅡ)

1989

Emerald Jig

ローリンググリーンH(米GⅢ)

1989

Green Darlin

デラウェアH(米GⅡ)

1989

Market Booster

ダルマイヤー大賞(独GⅠ)・プリティポリーS(愛GⅡ)・ロングアイランドH(米GⅡ)・メルドS(愛GⅢ)・シープスヘッドベイH(米GⅢ)・ビウィッチS(米GⅢ)

1989

Midnight Air

メイヒルS(英GⅢ)

1990

Lindon Lime

ナイアガラBCS(加GⅡ)

1990

Northern Emerald

フラワーボウル招待H(米GⅠ)・ヴァインランドH(米GⅢ)

1990

Takarouna

プリティポリーS(愛GⅡ)

1991

Fabulous Frolic

トロピカルパークダービー(米GⅢ)

1991

Green Tune

仏2000ギニー(仏GⅠ)・イスパーン賞(仏GⅠ)・ミュゲ賞(仏GⅡ)

1991

Kalajana

クレオパトル賞(仏GⅢ)

1992

Grab the Prize

モンロヴィアH(米GⅢ)

1992

Green Means Go

ヒルプリンスS(米GⅢ)・レキシントンS(米GⅢ)

1993

Canon Can

ドンカスターC(英GⅢ)

1993

Tarator

ショードネイ賞(仏GⅡ)・リューテス賞(仏GⅢ)

1996

Gandria

加プリンスオブウェールズS

1996

Green Fee

ケルソBCH(米GⅡ)

1996

Rochester

ケンタッキーCターフH(米GⅢ)2回・シカモーBCS(米GⅢ)

1997

Kim Loves Bucky

エルクホーンS(米GⅢ)2回・ルイビルH(米GⅢ)

1997

エイシンプレストン

朝日杯三歳S(GⅠ)・香港マイル(香GⅠ)・クイーンエリザベスⅡ世C(香GⅠ)2回・ニュージーランドトロフィー四歳S(GⅡ)・毎日王冠(GⅡ)・アーリントンC(GⅢ)・北九州記念(GⅢ)

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