アルハース

和名:アルハース

英名:Alhaarth

1993年生

鹿毛

父:アンフワイン

母:アイリッシュヴァリー

母父:アイリッシュリヴァー

2歳時にデューハーストSなど5戦全勝の成績を挙げた1995年のカルティエ賞最優秀2歳牡馬は3歳以降は振るわなかったが種牡馬として好成績を残す

競走成績:2~4歳時に英愛仏で走り通算成績17戦8勝2着2回3着3回

誕生からデビュー前まで

ドバイのシェイク・ハムダン殿下率いるシャドウェルステーブルにより生産された愛国産馬で、ハムダン殿下の所有馬として英国ディック・ハーン調教師に預けられた。体高は16ハンドと並だったが、非常に大きなストライドで走るため、体格以上の迫力を感じさせたという。

競走生活(2歳時)

2歳7月にニューマーケット競馬場で行われた芝7ハロンの未勝利ステークスで、主戦となるウィリー・カーソン騎手を鞍上にデビュー。デビュー戦からいきなりマークオブエスティームという強敵との対戦となった。本馬が単勝オッズ4.5倍の1番人気、マークオブエスティームが単勝オッズ5倍の2番人気となった。レースでは本馬とマークオブエスティームが揃って先行。両馬がほぼ同時に仕掛けて残り2ハロン地点で並んで先頭に立った。しかしここから本馬がまだ青い部分を見せながらも接戦を制し、マークオブエスティームを首差の2着に抑えて勝利した。

2週間後に出走したヴィンテージS(英GⅢ・T7F)では、単勝オッズ1.83倍の1番人気に支持された。ここでは馬群の中団を追走したが、勝負どころの残り2ハロン半地点で前が塞がる不利があった。しかしここから左側に進路変更すると、最後は差し切って2着アライドフォーシズに1馬身差で勝利した。

次走のソラリオS(英GⅢ・T7F16Y)では、単勝オッズ1.3倍の1番人気に支持された。好スタートから2番手を追走すると、残り2ハロン地点で悠々と先頭に立ち、2着スタフィンに3馬身差をつけて快勝した。

続くシャンペンS(英GⅡ・T7F)では僅か3頭立てとなり、やはり単勝オッズ1.4倍の1番人気に支持された。少頭数だけにレースはスローペースで推移し、ゴール直前で本馬が僅かに抜け出して2着リオデュヴィダに半馬身差で勝利するという内容だった。

次走のデューハーストS(英GⅠ・T7F)でも4頭立てと少頭数となったが、さすがに英国2歳最強馬決定戦だけあり、愛フェニックスS・愛ナショナルS勝ち馬デインヒルダンサー、モルニ賞勝ち馬タグラといった実力馬が対戦相手となった。本馬が単勝オッズ1.57倍の1番人気に支持され、デインヒルダンサーが単勝オッズ3倍の2番人気、タグラが単勝オッズ7.5倍の3番人気となった。レースではペースメーカーのアルバハを先に行かせ、残り3ハロン地点で先頭に立った。そこへタグラとデインヒルダンサーの2頭が叩き合いながら追ってきたが、ゴール前では逆に2頭を引き離し、2着デインヒルダンサーに2馬身半差をつけて勝利。ハーン師をして「破壊的」と言わしめた圧巻の走りだった。

まだ成長途上と評価された本馬は、この時点で英2000ギニーの最有力候補と目され、英2000ギニーの前売りオッズは3倍まで下がった。この年5戦全勝の成績で、カルティエ賞最優秀2歳牡馬に選出された。

競走生活(3歳時)

しかし3歳シーズンを迎えた本馬は、予想よりも成長が鈍く、ハーン師を心配させた。3歳時は4月のクレイヴンS(英GⅢ・T8F)から始動して、単勝オッズ1.5倍の1番人気に支持された。ここではカーソン騎手との呼吸が合わず、抑えようとする鞍上の指示に逆らって先行。残り1ハロン地点で先頭に立ったものの、ゴール前でレーシングポストトロフィー勝ち馬ボーシャンキングに首差差されて2着に終わり、初黒星を喫した。

次走の英2000ギニー(英GⅠ・T8F)では、ボーシャンキング、フェイルデンSを4馬身差で圧勝してきたストームトルーパー(後のハリウッドパークターフHの勝ち馬)、コヴェントリーS・ジムクラックS・ミドルパークSと4戦無敗のロイヤルアプローズ、マークオブエスティーム、デインヒルダンサー、愛フューチュリティSの勝ち馬ビジューダンドなどの錚々たるメンバーを抑えて、単勝オッズ3倍の1番人気に支持された。しかしスタートから逃げ馬を見る形で先行するも、勝負どころで反応が鈍く、インコースからマークオブエスティーム、イーヴントップ、ビジューダンドの3頭が叩き合いながら伸びていくのに付いて行けず、勝ったマークオブエスティームから6馬身差をつけられた4着と完敗を喫した。

次走の英ダービー(英GⅠ・T12F10Y)では、ダンテS2着馬ダシャンター、英2000ギニー2着のイーヴントップ、伊グランテリウム・ダンテSの勝ち馬グローリーオブダンサー、ストームトルーパー、2戦1勝ながらも素質を評価されていたシャーミット、後の英セントレジャー馬シャントゥなどが対戦相手となった。かなりの混戦模様であり、ウォーニングコマンダーインチーフの半弟という血統も評価されたダシャンターが単勝オッズ5.5倍の1番人気となり、2連敗中の本馬は単勝オッズ8.5倍で、英2000ギニー11着・ダンテS6着だったストームトルーパーと同じ4番人気まで評価を落とした。レースは出走馬が一団となって進み、本馬は馬群の真ん中より前方でレースを進めた。そのまま直線に入り、先行馬を捕らえにかかったが、外側から一気に抜け出したシャーミットに付いて行けず、さらに後続馬にもかわされてしまい、勝ったシャーミットから3馬身半差の5着に敗れた。

それでもこの英ダービーはそれほど悪い内容ではなかったが、単勝オッズ7.5倍の3番人気で出走した次走の愛ダービー(愛GⅠ・T12F)では、またしても折り合いを欠いてしまい、見せ場無くザグレブの16馬身差9着と惨敗した。

その後はマイル路線に活路を求め、サセックスS(英GⅠ・T8F)に出走した。クイーンアンSを勝ってきたチャーンウッドフォレスト、プリンスオブウェールズSを勝ってきたファーストアイランド、愛1000ギニー馬マティヤなどが対戦相手となり、テン乗りのケヴィン・ダーレイ騎手騎乗の本馬は単勝オッズ15倍の6番人気まで評価を落としていた。レースでは先行して抜け出そうとしたが伸びを欠き、ファーストアイランドの2馬身3/4差3着までだった。

次走のセレブレーションマイル(英GⅡ・T8F)では、マークオブエスティームと3度目の対戦となった。マークオブエスティームが単勝オッズ3.75倍の1番人気に支持され、鞍上がカーソン騎手に戻った本馬が単勝オッズ4.5倍の2番人気となった。ここでは本馬が先行して、マークオブエスティームが後方につける展開となった。残り2ハロン地点で先頭に立った本馬だが、後方から来たマークオブエスティームに瞬く間に差されてしまい、さらに単勝オッズ6倍の3番人気だったクリテリウムドメゾンラフィット勝ち馬ビショップオブカシェルにもかわされ、マークオブエスティームの4馬身1/4差3着に敗退した。

次走のロンポワン賞(仏GⅡ・T1600m)では、セレブレーションマイル2着後にパークSを勝ってきたビショップオブカシェル、前年の同競走勝利馬シャンクシーなどが対戦相手となった。ビショップオブカシェルが単勝オッズ3.4倍の1番人気、シャンクシーが単勝オッズ3.9倍の2番人気と上位人気を占める一方で、リチャード・ヒルズ騎手騎乗の本馬は単勝オッズ9.1倍の5番人気だった。しかしここではスタートから先手を奪うとそのまま2着シャンクシーに1馬身半差をつけて逃げ切り、1年ぶりの勝利を挙げた。これが3歳時唯一の勝利で、この年の成績は7戦1勝だった。

この3歳シーズン終了後、本馬はゴドルフィン名義に変わり、調教師もドバイのサイード・ビン・スルール師に変更となった。また、主戦のカーソン騎手はこの年限りで騎手を引退したため、この後はランフランコ・デットーリ騎手が本馬の主戦となっている。なお、数え切れないほどのGⅠ競走を制してきたカーソン騎手にとって、本馬で制したデューハーストSが最後の英国GⅠ競走勝利となった。

競走生活(4歳時)

4歳初戦のプリンスオブウェールズS(英GⅡ・T10F)では、前年の英1000ギニー・英チャンピオンSの勝ち馬でカルティエ賞最優秀3歳牝馬に選ばれていたボスラシャム、イーヴントップ、香港でクイーンエリザベスⅡ世Cを勝ってきた南アフリカの歴史的名馬ロンドンニューズなどが対戦相手となった。ボスラシャムが単勝オッズ1.36倍の1番人気、英ダービーで13着に敗れた後はあまり振るわなかったイーヴントップが単勝オッズ7.5倍の2番人気で、本馬は単勝オッズ11倍の3番人気となった。ここでもスタートから先手を取って逃げたが、残り2ハロン地点でボスラシャムにかわされると、どんどんと差を広げられてしまい、最後はボスラシャムから8馬身離された2着に敗退した。

それでも続く愛国際S(愛GⅡ・T8F)では、単勝オッズ2倍の1番人気に支持された。ここでは2番手を追走し、残り1ハロン地点で先頭に立つと2着となった前年の同競走勝利馬ガゼンバーグに1馬身差で勝利した。

続いてサセックスS(英GⅠ・T8F)に出走した。対戦相手の層はかなり厚く、ジャンプラ賞・セントジェームズパレスSを連勝してきたスターボロー、2歳時のヴィンテージSで本馬の2着だったペガサスH・ジャマイカH・クイーンアンSの勝ち馬アライドフォーシズ、ジャージーS勝ち馬で翌年のサセックスSを勝つアマングメン、前年のサセックスSでは7着だったが、その後は9戦着外無しの安定した成績を残していたアリロイヤル、伊2000ギニー・独2000ギニー勝ち馬で後のクイーンエリザベスⅡ世S勝ち馬エアエクスプレス、愛1000ギニー馬クラシックパークなどが出走してきた。デットーリ騎手ではなくヒルズ騎手が騎乗した本馬は前年と同じく6番人気だったが、単勝オッズは8.5倍であり、15倍だった前年よりは評価されていた。しかしレースではスタートから後方のままで、まったく何の見せ場も無く、勝ったアリロイヤルから16馬身差の9着最下位と惨敗を喫した。

続く愛チャンピオンS(愛GⅠ・T10F)では、当時欧州最強古馬の一角を占めていたBCターフ・エクリプスS勝ち馬ピルサドスキー、愛2000ギニー・愛ダービー勝ち馬デザートキングという2頭の難敵が対戦相手となった。ピルサドスキーが単勝オッズ2.25倍の1番人気、デザートキングが単勝オッズ2.375倍の2番人気と、完全な2強対決となり、ダーレイ騎手騎乗の本馬は3番人気ながらも単勝オッズ10倍だった。レースでは本馬が3番手を追走し、ピルサドスキーとデザートキングの2頭は本馬の後方だった。しかしやがて人気馬2頭にかわされると、どんどんと差を広げられていった。最終的に3着は確保したが、勝ったピルサドスキーからは18馬身半差、2着デザートキングからも14馬身差をつけられており、内容には乏しかった。

次走のドラール賞(仏GⅡ・T1950m)では、後のアルクール賞・ガネー賞勝ち馬アスタラバド、ホーリスヒルS・クレイヴンS勝ち馬デザートストーリー、仏2000ギニー3着馬ビジョナリーなどとの対戦となった。ここでは単勝オッズ2.6倍の2番人気となった。3戦ぶりに騎乗したデットーリ騎手はスタートから本馬を先頭に立たせた。そして最後まで粘り切って1馬身差で勝利した。

しかし結局このレースを最後に4歳時5戦2勝の成績で競走馬を引退。3歳以降はGⅠ競走に勝つ事は出来なかった。馬名はアラビア語で「農夫」を意味する。

血統

Unfuwain Northern Dancer Nearctic Nearco Pharos
Nogara
Lady Angela Hyperion
Sister Sarah
Natalma Native Dancer Polynesian
Geisha
Almahmoud Mahmoud
Arbitrator
Height of Fashion Bustino Busted Crepello
Sans le Sou
Ship Yard Doutelle
Paving Stone
Highclere Queen's Hussar March Past
Jojo
Highlight Borealis
Hypericum
Irish Valley Irish River Riverman Never Bend Nasrullah
Lalun
River Lady Prince John
Nile Lily
Irish Star Klairon Clarion
Kalmia
Botany Bay East Side
Black Brook
Green Valley Val de Loir Vieux Manoir Brantome
Vieille Maison
Vali Sunny Boy
Her Slipper
Sly Pola Spy Song Balladier
Mata Hari
Ampola Pavot
Blue Denim

アンフワインは当馬の項を参照。

母アイリッシュヴァリーは現役成績6戦未勝利だが、その半兄にはグリーンダンサー(父ニジンスキー)【仏2000ギニー(仏GⅠ)・リュパン賞(仏GⅠ)・オブザーヴァー金杯(英GⅠ)】、エルコラーノ(父サーアイヴァー)【リス賞(仏GⅢ)】、ヴァルダンスール(父ニジンスキー)【ゴールデンゲートH(米GⅡ)・ローリンググリーンH(米GⅢ)】、半弟にはライブリマウントの父として知られる本邦輸入種牡馬グリーンマウント(父リファール)がいる良血馬。アイリッシュヴァリーの産駒には本馬の半姉グリーンポーラ(父ニジンスキー)【カルヴァドス賞(仏GⅢ)】がいる。グリーンポーラは日本に繁殖牝馬として輸入されており、ケープリズバーン【TCK女王盃(GⅢ)】を産んだ。また、本馬の半妹ダライール(父サドラーズウェルズ)の子にアカリーム【リングフィールドダービートライアルS(英GⅢ)】が、本馬の半妹デラール(父グリーンデザート)の子にマクフィ【英2000ギニー(英GⅠ)・ジャックルマロワ賞(仏GⅠ)・ジェベル賞(仏GⅢ)】がいる。

アイリッシュヴァリーの半姉ピンクヴァレー(父ネヴァーベンド)の子にはピンク【ミュゲ賞(仏GⅢ)・シュマンドフェルデュノール賞(仏GⅢ)・ロンポワン賞(仏GⅢ)】が、アイリッシュヴァリーの半姉ヴァリーダンサンテ(父リファール)の子にはブルックリンズダンス【クレオパトル賞(仏GⅢ)】、孫にはオカワンゴ【仏グランクリテリウム(仏GⅠ)】、オーソライズド【英ダービー(英GⅠ)・レーシングポストトロフィー(英GⅠ)・英国際S(英GⅠ)】、ソレミア【凱旋門賞(仏GⅠ)】がいる。→牝系:F16号族①

母父アイリッシュリヴァーは当馬の項を参照。

競走馬引退後

競走馬を引退した本馬はハムダン殿下が所有する愛国デリンズタウンスタッドで種牡馬入りした。本馬は種牡馬としても30頭ほどのステークスウイナーを出して成功し、父アンフワインの後継として活躍した。どちらかと言えばアベレージヒッターで、大物は少ないが勝ち上がり率は高いようである。また、産駒には仕上がり早いスピード馬が多いが、必ずしも早熟の短距離馬とは断言できない競走成績だった自身と同様、距離をこなしたり古馬になって活躍したりする産駒もいる。2013年に心臓疾患の悪化のため種牡馬生活の続行が困難となり、種牡馬を引退。その後はデリンズタウンスタッドで余生を送っている。

主な産駒一覧

生年

産駒名

勝ち鞍

1999

Bandari

グレートヴォルティジュールS(英GⅡ)・プリンセスオブウェールズS(英GⅡ)・ハードウィックS(英GⅡ)・リングフィールドダービートライアルS(英GⅢ)・ゴードンS(英GⅢ)・ブリガディアジェラードS(英GⅢ)

1999

Dominica

キングズスタンドS(英GⅡ)・ジョエルS(英GⅢ)

1999

Misterah

ネルグウィンS(英GⅢ)

2000

Hoh Buzzard

ミセスリヴィアS(米GⅡ)

2000

Maharib

カラーC(愛GⅢ)

2000

Phoenix Reach

加国際S(加GⅠ)・香港ヴァーズ(香GⅠ)・ドバイシーマクラシック(首GⅠ)・ゴードンS(英GⅢ)

2001

Haafhd

英2000ギニー(英GⅠ)・英チャンピオンS(英GⅠ)・クレイヴンS(英GⅢ)

2002

Hallowed Dream

イエルバブエナBCH(米GⅢ)

2006

Mourayan

AJCシドニーC(豪GⅠ)・クレイブンS(豪GⅢ)

2007

Awzaan

ミドルパークS(英GⅠ)・ミルリーフS(英GⅡ)

2007

Morana

オータムS(英GⅢ)

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