アンフワイン
和名:アンフワイン |
英名:Unfuwain |
1985年生 |
牡 |
鹿毛 |
父:ノーザンダンサー |
母:ハイトオブファッション |
母父:バスティノ |
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GⅠ競走未勝利ながらGⅠ競走級の実力を発揮したノーザンダンサー最後の大物競走馬にして大物後継種牡馬 |
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競走成績:2~4歳時に英仏で走り通算成績10戦6勝2着2回 |
誕生からデビュー前まで
ドバイのシェイク・ハムダン殿下により米国ケンタッキー州シャドウェルファームにおいて生産・所有され、英国ディック・ハーン調教師に預けられた。主戦はウィリー・カーソン騎手で、本馬の10戦中9戦に騎乗した。
競走生活(3歳前半まで)
2歳8月にニューベリー競馬場で行われた芝7ハロンの未勝利ステークスでデビューし、27頭立ての多頭数の中で、後の英セントレジャー馬ミンスターサンの1馬身半差2着に入った。1か月後のハンソン&クラーク条件S(T8F)で、2着ケファーに1馬身差をつけて勝ち上がった。
3歳時は4月にエプソム競馬場で行われたリステッド競走ウォーレンS(T12F)から始動して、単勝オッズ2.375倍の1番人気に支持された。好位を追走すると、タッテナムコーナーを3番手で回った。そして残り2ハロン地点で先頭に立つと、ぐんぐんと後続馬を引き離し、2着ウォータータイトに15馬身差をつけて大圧勝した。このレースは英ダービーと同コースだったため、この時点で英ダービーの有力候補に躍り出た。
次走のチェスターヴァーズ(英GⅢ・T12F65Y)では、単勝オッズ1.33倍という断然の1番人気に支持された。ここでは2番手を追走し、直線入り口で先頭に立つと、またしても直線独走の走りを披露し、2着カラケイトに8馬身差をつけて圧勝した。
そして迎えた英ダービー(英GⅠ・T12F)では、ダンテS勝ち馬レッドグロウ(単勝オッズ3.75倍)に次ぐ単勝オッズ5.5倍の2番人気となり、英2000ギニー馬ドユーン(単勝オッズ10倍)やリングフィールドダービートライアルS勝ち馬カヤージ(単勝オッズ12倍)よりも人気を集めた。カーソン騎手が3番人気のミンスターサン(単勝オッズ7倍)に騎乗したため、本馬にはスティーブ・コーゼン騎手が騎乗した。スタートから先頭を伺いながら走り、タッテナムコーナーで仕掛けて先頭で直線を向いた。しかし直線半ばで力尽き、勝ったカヤージから7馬身差の7着と完敗を喫してしまった。
再度カーソン騎手を鞍上に迎えた次走のプリンセスオブウェールズS(英GⅡ・T12F)では、加国際S勝ち馬インファミーやイタリア大賞勝ち馬イブンベイなどを抑えて、単勝オッズ2.5倍の1番人気に支持された。そして残り2ハロン地点から後続をぐんぐん引き離して2着アンダーカットに15馬身差をつけるという圧巻の走りを見せ、母ハイトオブファッションとの母子制覇を達成した。
この勝ち方が評価されたようで、次走のキングジョージⅥ世&クイーンエリザベスDS(英GⅠ・T12F)では、エクリプスSとプリンスオブウェールズSをいずれも2連覇してきたムトト、伊共和国大統領賞2回・ミラノ大賞2回・伊ジョッキークラブ大賞などを勝ち前年の凱旋門賞で2着していた伊国最強馬トニービン、英ダービーで3着だったドユーン、愛ダービーでカヤージの3着だった英ダービー2着馬グラシアルストームなどを抑えて、単勝オッズ3倍の1番人気に支持された。スタートから先頭に立ってレースを進めていたが、道中で他馬2頭が上がってくると先頭を譲って3番手に控えた。そして三角で再度先頭に並びかけて四角先頭から押し切りを狙った。しかし直線大外を追い込んできたムトトに残り1ハロン地点でかわされ、その後に食い下がったものの、2馬身差の2着に敗れた。
競走生活(3歳後半以降)
その後は秋の凱旋門賞(仏GⅠ・T2400m)に直行。5連勝で臨んできたムトトを筆頭に、英ダービー・愛ダービー馬カヤージ、英オークス・愛オークス・ヨークシャーオークスを勝ち英セントレジャーで2着したディミニュエンド、ヴェルメイユ賞勝ち馬インディアンローズ、トニービン、パリ大賞勝ち馬フィジャータンゴといった有力馬が一同に会したため、さすがに7番人気まで評価を落としていた。24頭立ての多頭数であり、他馬陣営のペースメーカーもいたために、ここでは無理に先頭を狙わずに好位につける作戦を採った。そして直線を向くと先に内側から抜け出したジャンドショードネイ賞勝ち馬ボヤティノを追撃した。しかし残り100m地点手前でボヤティノに並びかけるかと思われたときに、外側から追い込んできたトニービンとムトトに瞬く間にかわされてしまった。結局ボヤティノを抜くことも出来ず、勝ったトニービンから1馬身半差の4着に敗れた。3歳馬では最先着であり、世代トップクラスの実力を有することは示したが、3歳時の成績は6戦3勝、GⅠ競走では3戦全敗となってしまった。
4歳時は4月のジョンポーターS(英GⅢ・T12F)から始動して、単勝オッズ1.44倍の1番人気に支持された。ここでも先行して、直線入り口2番手から早めに抜け出して押し切り、2着パークォドに1馬身半差で勝利した。
次走のジョッキークラブS(英GⅡ・T12F)では、前年の英ダービーで本馬より1つ上の6着後にキングエドワードⅦ世S・グレートヴォルティジュールSを勝ち英セントレジャーで3着していたシェリフズスター、グラシアルストーム、英ダービーで4着だったレッドグロウなどが相手となったが、単勝オッズ1.83倍の1番人気に支持された。ここでもお得意の先行策を採ると、残り3ハロン地点で先頭に立って押し切り、2着グラシアルストームに1馬身差で勝利を収めた。
しかしその後は一度もレースに出る事は無く、そのまま4歳時2戦2勝の成績で現役引退となってしまった。理由は故障ではなく、(おそらく気性の悪化などにより)調教が困難になったためとされている。
本馬は優秀なスタミナとスピードの持続力を有しており、スタートから先手を奪ってそのまま押し切るレーススタイルが得意だった。しかしいわゆる切れ味には欠けており、それが大一番で勝てない原因だったようである(もっとも負けたGⅠ競走3戦は全て欧州を代表する大競走であり、対戦相手が強かった一面は否定できない)。
血統
Northern Dancer | Nearctic | Nearco | Pharos | Phalaris |
Scapa Flow | ||||
Nogara | Havresac | |||
Catnip | ||||
Lady Angela | Hyperion | Gainsborough | ||
Selene | ||||
Sister Sarah | Abbots Trace | |||
Sarita | ||||
Natalma | Native Dancer | Polynesian | Unbreakable | |
Black Polly | ||||
Geisha | Discovery | |||
Miyako | ||||
Almahmoud | Mahmoud | Blenheim | ||
Mah Mahal | ||||
Arbitrator | Peace Chance | |||
Mother Goose | ||||
Height of Fashion | Bustino | Busted | Crepello | Donatello |
Crepuscule | ||||
Sans le Sou | ヴィミー | |||
Martial Loan | ||||
Ship Yard | Doutelle | Prince Chevalier | ||
Above Board | ||||
Paving Stone | Fairway | |||
Rosetta | ||||
Highclere | Queen's Hussar | March Past | Petition | |
Marcelette | ||||
Jojo | Vilmorin | |||
Fairy Jane | ||||
Highlight | Borealis | Brumeux | ||
Aurora | ||||
Hypericum | Hyperion | |||
Feola |
父ノーザンダンサーは当馬の項を参照。本馬はノーザンダンサー最晩年の産駒であり、数々の名馬を送り出したノーザンダンサーの最後の大物競走馬と言われることもある。
母ハイトオブファッションは英国エリザベスⅡ世女王陛下の生産・所有馬で、現役成績は7戦5勝。非常にがっちりとした体格の馬だったという。2歳時はデビュー戦のエイコムS・メイヒルS(英GⅢ)・フィリーズマイル(英GⅢ)と3戦全勝の成績で、英最優秀2歳牝馬に選ばれた。3歳時は5月のルーペSから始動して勝利したが、有力候補と目されていた英オークスは、その走法がエプソム競馬場には不適合であるという理由で回避となった。7月に出走したプリンセスオブウェールズS(英GⅡ)では、名長距離馬のアルドロス以下を一蹴してコースレコード勝ち。その後にハムダン殿下によって150万ポンドで購入され、キングジョージⅥ世&クイーンエリザベスDS(英GⅠ)とヨークシャーオークス(英GⅠ)に出たが共に敗れて引退した。競走馬引退後はシャドウェルファームで繁殖入りした。
ハイトオブファッションは繁殖牝馬としては非常に優秀で、11頭の産駒を産み、そのうち8頭が勝ち上がった。産駒の質も非常に高く、本馬の全兄アルワスミ【ジョンポーターS(英GⅢ)】、半弟ナシュワン(父ブラッシンググルーム)【英2000ギニー(英GⅠ)・英ダービー(英GⅠ)・エクリプスS(英GⅠ)・キングジョージⅥ世&クイーンエリザベスDS(英GⅠ)】、半弟ネイエフ(父ガルチ)【英チャンピオンS(英GⅠ)・ドバイシーマクラシック(首GⅠ)・英国際S(英GⅠ)・プリンスオブウェールズS(英GⅠ)・ローズオブランカスターS(英GⅢ)・セレクトS(英GⅢ)・カンバーランドロッジS(英GⅢ)】と活躍馬を続出させた。2000年にエーピーインディとの子を受胎したが、同年7月に21歳で他界した。また、本馬の半妹マンワー(父リファール)の子にはマスタンファー【レキシントンS(米GⅢ)・シカモーBCS(米GⅢ)】が、半妹バシャイエル(父ミスタープロスペクター)の孫にはラフドゥード【BCフィリー&メアターフ(米GⅠ)・フラワーボウル招待S(米GⅠ)】が、半妹ウィジダン(父ミスタープロスペクター)の子にはオリエンタルファッション【リボー賞(伊GⅡ)】とマクデラー【ニューヨークS(米GⅡ)】が、半妹サライール(父ミスタープロスペクター)の子にはマワシーク【カンバーランドロッジS(英GⅢ)】とガナーティ【英1000ギニー(英GⅠ)・コロネーションS(英GⅠ)】がいる。
ハイトオブファッションの母ハイクレアは、英1000ギニー(英GⅠ)・仏オークス(仏GⅠ)を勝ちキングジョージⅥ世&クイーンエリザベスDS(英GⅠ)で2着した名牝で、その牝系子孫からは七冠馬ディープインパクトも出ている。上記に挙げた以外にも近親には多くの活躍馬がいるが、その詳細はハイクレアの項を参照してほしい。→牝系:F2号族②
母父バスティノは当馬の項を参照。
競走馬引退後
競走馬を引退した本馬は、ハムダン殿下所有の英国ナネリースタッド(シャドウェルスタッド)で種牡馬入りした。種牡馬としては28頭のステークスウイナーを出し、父ノーザンダンサー最後の有力後継種牡馬として活躍した。スタミナが豊富な産駒が多いことと、牡馬より牝馬の活躍馬が多いことが特徴であるとされている。2000年の英1000ギニーでは本馬産駒のラハンが1着、ペトルシュカが3着となった他、2着にも本馬を母父に持つプリンセスエレンが入り、上位3頭を本馬の血を持つ馬が占めた。この年は英国繋養種牡馬ランキング1位の成績を残した。2002年1月に神経障害のためにナネリースタッドにおいて17歳で他界した。後継種牡馬としてアルハースが成功している。
主な産駒一覧
生年 |
産駒名 |
勝ち鞍 |
1991 |
Bolas |
愛オークス(愛GⅠ)・リブルスデールS(英GⅡ) |
1992 |
Alpha City |
ドイツヘロルト賞(独GⅢ)・ドイツ牝馬賞(独GⅢ) |
1993 |
デューハーストS(英GⅠ)・英シャンペンS(英GⅡ)・ロンポワン賞(仏GⅡ)・愛国際S(愛GⅡ)・ドラール賞(仏GⅡ)・メイヒルS(英GⅢ)・ヴィンテージS(英GⅢ)・ソラリオS(英GⅢ) |
|
1995 |
Gulland |
チェスターヴァーズ(英GⅢ) |
1996 |
Dano-Mast |
ジャンドショードネイ賞(仏GⅡ)・ドラール賞(仏GⅡ) |
1996 |
Zahrat Dubai |
ナッソーS(英GⅠ)・ムシドラS(英GⅢ) |
1997 |
Lahan |
英1000ギニー(英GⅠ)・ロックフェルS(英GⅡ) |
1997 |
Petrushka |
愛オークス(愛GⅠ)・ヨークシャーオークス(英GⅠ)・オペラ賞(仏GⅠ)・ネルグウィンS(英GⅢ) |
1998 |
Amiwain |
クリテリウムドメゾンラフィット(仏GⅡ) |
1998 |
Lailani |
愛オークス(愛GⅠ)・ナッソーS(英GⅠ)・フラワーボウル招待S(米GⅠ) |
1998 |
Ranin |
パークヒルS(英GⅢ) |
2000 |
Frühlingssturm |
ユーロC(独GⅡ) |
2000 |
Medici |
デュッセルドルフ大賞(独GⅢ) |
2002 |
Eswarah |
英オークス(英GⅠ) |
2002 |
Perfect Hedge |
ペネロープ賞(仏GⅢ) |
2002 |
Ruwi |
ノアイユ賞(仏GⅡ) |
2002 |
Thakafaat |
リブルスデールS(英GⅡ) |
2002 |
Vadawina |
サンタラリ賞(仏GⅠ)・クレオパトル賞(仏GⅢ) |