シェリフズスター

和名:シェリフズスター

英名:Sheriff's Star

1985年生

芦毛

父:ポッセ

母:キャッスルムーン

母父:カラムーン

古馬になってコロネーションC・サンクルー大賞を連勝して日本で種牡馬入りするも代表産駒の登場前に種牡馬を廃用となり行方不明になったセイウンスカイの父

競走成績:2~4歳時に英仏独で走り通算成績13戦6勝2着2回3着2回

誕生からデビュー前まで

英国貴族のラヴィニア・メアリー・フィッツアラン・ハワード・ノーフォーク公爵夫人により生産・所有された英国産馬で、彼女の娘である女性調教師ヘリス女史の管理馬となった。背が高くて脚がひょろ長く、痩せた体格の馬だったという。主戦はトニー・アイヴス騎手が務めた。

競走生活(2歳時)

2歳8月にニューマーケット競馬場で行われた芝7ハロンの未勝利ステークスでデビューした。単勝オッズ34倍という低評価だったが、残り1ハロン地点で内側を突いて先頭に立ち、2着トップサイダーマンに2馬身半差で勝利した。アスコット競馬場に場所を移して出走したモーニントンS(T7F)では、事前調教の動きが良かった事も評価されて1番人気となった。そして残り2ハロン地点で先頭に立ち、2着エインシャントフレイムを3/4馬身差で抑えて勝利した。

3戦目はドンカスター競馬場で行われたウィリアムヒルフューチュリティS(英GⅠ・T8F)となった。ここではスタートで出遅れた上に、道中で本馬を抑えようとするアイヴス騎手に激しく抗うという酷い内容だった。しかしそれでもゴール前で鋭く伸び、勝ったエムソンから首差の2着に突っ込み、後にフォレ賞・チャレンジS・ハンガーフォードS・キヴトンパークSを勝つサルスを2馬身差の3着に抑えた。2歳時の成績は3戦2勝となった。

競走生活(3歳時)

3歳時は英ダービーを目指して、5月にグッドウッド競馬場で行われたリステッド競走プレドミネートS(T10F)から始動した。ヴィンテージS・スーパーレイティヴSの勝ち馬アンダーカット、ニューマーケットSを勝ってきたミンスターサンなどが対戦相手となった。アンダーカットが単勝オッズ3.25倍の1番人気、ミンスターサンが単勝オッズ4倍の2番人気で、本馬は単勝オッズ9倍で4番人気の評価だった。レースでは後方待機策を採り、直線入り口6番手から追い込んできたが、先に抜け出していたミンスターサンに及ばずに、1馬身半差の2着に敗れた。

本番の英ダービー(英GⅠ・T12F)では、ダンテSを勝ってきたレッドグロウ、チェスターヴァーズを8馬身差で圧勝してきたアンフワイン、ミンスターサン、英2000ギニー馬ドユーン、リングフィールドダービートライアルSを勝ってきたカヤージ、英2000ギニー2着馬チャーマー、ホーリスヒルSの勝ち馬でサンダウンクラシックトライアルS2着・ダンテS3着のグレイシャルストームなどが対戦相手となった。レッドグロウが単勝オッズ3.5倍の1番人気、アンフワインが単勝オッズ5.5倍の2番人気、ミンスターサンが単勝オッズ7倍の3番人気となる一方で、本馬は単勝オッズ19倍で14頭立て9番人気の低評価だった。ここでも後方待機策を採った本馬は、直線に入ってから追い上げてきたが、全馬を差し切るほどの勢いは無く、勝ったカヤージから6馬身3/4差の6着に敗れた。

その13日後にはキングエドワードⅦ世S(英GⅡ・T12F)に出走した。未勝利ステークスを5馬身差、グラデュエーションSを7馬身差で勝ってきたポーラーギャップという馬が単勝オッズ3倍の1番人気に支持されており、本馬は単勝オッズ5.5倍の3番人気だった。ここでも馬群の中団後方につけた本馬は、5番手で直線に入ると残り2ハロン地点でスパート。先に抜け出していたポーラーギャップをゴール前で内側からかわすと、3/4馬身差をつけて勝利を収めた。

その後は秋の英セントレジャーを目標としてしばらく休養を取り、本番2週間前のグレートヴォルティジュールS(英GⅡ・T12F)に出走した。愛ダービーでカヤージの短頭差2着だったインサン、ホワイトローズSの勝ち馬アルワウーシュ、サンダウンクラシックトライアルSの勝ち馬ガリジンの3頭だけが対戦相手だった。インサンが単勝オッズ1.73倍の1番人気に支持され、本馬は単勝オッズ3.75倍の2番人気だった。出走頭数が少ないために本馬も今までのように後方で待機するわけには行かず、逃げるインサンを2番手で追撃した。そして残り2ハロン地点でインサンに内側から並びかけると競り落とし、3/4馬身差で勝利した。

本番の英セントレジャー(英GⅠ・T14F127Y)では、英オークス・愛オークス・ヨークシャーオークスなど4連勝中の牝馬ディミニュエンド、英ダービー8着後にゴードンSを勝っていたミンスターサン、ジェフリーフリアSを勝ってきたトップクラス、ハンデ競走路線から向かってきた3連勝中のザファランなど5頭が対戦相手となった。ディミニュエンドが単勝オッズ1.57倍の1番人気で、本馬が単勝オッズ4.5倍の2番人気となった。スタートが切られると、単勝オッズ34倍の最低人気馬マッツァカノ(名繁殖牝馬フォールアスペンの息子)が先頭に立ち、ミンスターサンが先行、本馬は中団後方、ディミニュエンドは最後方につけた。そして直線に入ると、ディミニュエンドと共に、先頭に立っていたミンスターサンを追撃した。しかし残り1ハロン地点でスタミナが切れて失速。2着ディミニュエンドを1馬身抑えて勝ったミンスターサンから9馬身差をつけられた3着と完敗した。3歳時の出走はこれが最後となり、この年の成績は5戦2勝だった。

競走生活(4歳時)

4歳時は5月にニューマーケット競馬場で行われたジョッキークラブS(英GⅡ・T12F)から始動した。英ダービー7着後にプリンセスオブウェールズSを勝ち、キングジョージⅥ世&クイーンエリザベスDSで2着、凱旋門賞で4着と健闘していたアンフワイン、英ダービー2着・愛ダービー3着と健闘するも勝ち星には恵まれていなかったグレイシャルストーム、英ダービー4着後はこれといった成績を残していなかったレッドグロウなど、前年の英ダービー出走組が主な対戦相手だった。3週間前のジョンポーターSを勝っていたアンフワインが単勝オッズ1.83倍の1番人気に支持され、本馬が単勝オッズ4.33倍の2番人気となった。しかしここでは直線で全く伸びを欠き、勝ったアンフワインから7馬身差の4着に敗れた。

次走はコロネーションC(英GⅠ・T12F)となった。オーモンドS・ヨークシャーCを連勝してきたマウンテンキングダム、前走2着のグレイシャルストーム、ロジャーズ金杯(現タタソールズ金杯)を勝ってきたイルドシフル、オーモンドSで2着してきたラザズ、アストンパークSで3着してきたクイーンズヴァーズの勝ち馬グリーンアドベンチャー、ジョッキークラブSで3着だったトラロスなどが出走してきたが、80年以上の歴史を誇り過去に多くの名馬が勝ってきたこのレースにしては少々薄いメンバー構成となった。そのために、単勝オッズ3.75倍の1番人気に支持されたのは本馬であり、マウンテンキングダムとグレイシャルストームが並んで単勝オッズ4.5倍の2番人気、イルドシフルが単勝オッズ7倍の4番人気となった。このレースで本馬の手綱を取ったテン乗りのレイ・コクレーン騎手は、やはり後方待機策を選択。6番手でタッテナムコーナーを回ると、残り2ハロン地点まで来てから仕掛けた。そして残り1ハロン地点で先頭のイルドシフルに並びかけると、叩き合いを半馬身差で制して勝利を収め、GⅠ競走初勝利を挙げた。

続いて仏国に渡り、アイヴス騎手鞍上でサンクルー大賞(仏GⅠ・T2400m)に参戦。凱旋門賞馬サガスの半弟でロワイヤルオーク賞・アルクール賞・エヴリ大賞を勝っていたスターリフト、ジャンドショードネイ賞を2連覇してきたボヤスィノ、英ダービーでナシュワンの5着してきたミルポンド、チェスターヴァーズとリス賞で連続2着してきた後のジャパンC・アーリントンミリオンSの勝ち馬ゴールデンフェザント、カドラン賞やラクープで2着してきたサンロマン賞・アンドレバボワン賞の勝ち馬ヴェイグリープレザントの5頭が対戦相手となった。スターリフトが単勝オッズ1.7倍の1番人気、ボヤスィノが単勝オッズ4.7倍の2番人気、本馬が単勝オッズ5.8倍の3番人気となった。ここではミルポンドを先頭に出走全馬が一団となって進み、本馬は馬群の後方につけた。そして直線に入ると瞬発力勝負となり、一足先に抜け出して残り200m地点で先頭に立った本馬が、最後方から追い上げてきたゴールデンフェザントを頭差の2着に抑えて勝利を収め、GⅠ競走2連勝とした。

英国に戻ってくると、GⅠ競走連勝の勢いを駆って、キングジョージⅥ世&クイーンエリザベスDS(英GⅠ・T12F)に出走した。英2000ギニー・英ダービー・エクリプスSなど5戦無敗の3歳馬ナシュワン、英ダービーでナシュワンの3着後にキングエドワードⅦ世Sを勝ってきたカコイーシーズ、前走のプリンセスオブウェールズSを勝ってきたバーデン大賞の勝ち馬キャロルハウス、前年の英セントレジャーでは最下位に終わるもその後はカンバーランドロッジS・ハードウィックS・豪州のGⅠ競走タンクレッドSで2着するなどしていたトップクラスなどが対戦相手となった。ナシュワンが単勝オッズ1.22倍の1番人気、カコイーシーズが単勝オッズ7倍の2番人気で、本馬は単勝オッズ11倍の3番人気だった。レースでは馬群の中団後方を進んだが、直線に入ると、叩き合いながら伸びるナシュワンとカコイーシーズの2頭に置き去りにされ、逃げたトップクラスを捕まえることにも失敗して、勝ったナシュワンから8馬身1/4差の4着に敗れ去った。

秋は独国に向かい、オイロパ賞(独GⅠ・T2400m)に出走。独ダービー・ベルリン銀行大賞・アラルポカル・バーデン大賞と目下GⅠ競走4連勝中の独国最強3歳馬モンドリアン、モーリスドニュイユ賞・ジェフリーフリアSなど3連勝中のイブンベイ、独セントレジャーなどを勝っていた牝馬ブリタアニア(独国が誇る名牝ボルジアの母)、独2000ギニー・ウニオンレネン・ダルマイヤー大賞などを勝っていたターフケーニッヒなどが対戦相手となった。スタートからイブンベイが先頭を飛ばし、本馬も先行した。そのまま2番手で直線に入ってきたのだが、イブンベイにどんどん引き離されてしまい、3番手にいたモンドリアンにも差されて、勝ったイブンベイから7馬身半差の3着と完敗した。

このオイロパ賞の翌月10月に、日本の西山牧場の牧場主西山正行氏が本馬を購入した。そのためにこの後はジャパンCに参戦する予定だったが、故障を発生したために回避。4歳時の成績は5戦2勝だった。5歳時もしばらく競走馬登録されていたが、5歳時は結局1度もレースに出ることなく競走馬引退となった。

血統

ポッセ Forli Aristophanes Hyperion Gainsborough
Selene
Commotion Mieuxce
Riot
Trevisa Advocate Fair Trial
Guiding Star
Veneta Foxglove
Dogaresa
In Hot Pursuit Bold Ruler Nasrullah Nearco
Mumtaz Begum
Miss Disco Discovery
Outdone
Lady Be Good Better Self Bimelech
Bee Mac
Past Eight Eight Thirty
Helvetia
Castle Moon Kalamoun ゼダーン Grey Sovereign Nasrullah
Kong
Vareta Vilmorin
Veronique
Khairunissa Prince Bio Prince Rose
Biologie
Palariva Palestine
Rivaz
Fotheringay Right Royal Owen Tudor Hyperion
Mary Tudor
Bastia Victrix
Barberybush
La Fresnes Court Martial Fair Trial
Instantaneous
Pin Stripe Hyperion
Herringbone

父ポッセは亜国の歴史的名馬フォルリの直子で、2戦未勝利の身で挑んだ英2000ギニー(英GⅠ)では道中でヌレイエフの斜行による不利を受けながらもノウンファクトの首差2着と好走(ノウンファクトはヌレイエフの失格による繰り上がり勝利)。次走の愛2000ギニー(愛GⅠ)もニコリの半馬身差4着と、未勝利馬でありながら欧州クラシック戦線で健闘を続けた。6月のセントジェームズパレスS(英GⅡ)で2着ファイナルストローに1馬身半差をつけて、ようやく初勝利を挙げた。次走のサセックスS(英GⅠ)でも2着ファイナルストローに頭差で勝利し、瞬く間にGⅠ競走勝ち馬に上り詰めたのも束の間、故障のため6戦2勝で引退となった。競走馬引退後は欧州で種牡馬入りし、本馬の他にも、ヨークシャーオークス・リブルスデールSの勝ち馬サリーブラウン、モーリスドニュイユ賞・コンセイユドパリ賞の勝ち馬アルタヤンなどの活躍馬を出した。それが評価されて1991年に日本に輸入されたが、輸入直後の不慮の事故により生殖機能を失い、そのまま種牡馬廃用となった不運な馬だった。

母キャッスルムーンは現役成績9戦3勝。繁殖牝馬としては優れており、本馬の半兄ムーンマッドネス(父ヴィティージ)【英セントレジャー(英GⅠ)・サンクルー大賞(仏GⅠ)・ジェフリーフリアS(英GⅡ)・ヨークシャーC(英GⅡ)・カンバーランドロッジS(英GⅢ)】、半弟ラッキームーン(父タッチングウッド)【グッドウッドC(英GⅢ)】を産んでいる。キャッスルムーンの半兄にはラグストーン(父ラグーザ)【アスコット金杯(英GⅠ)・ヘンリーⅡ世S(英GⅢ)】がいる他、キャッスルムーンの半姉ペンクイックジュエル(父ペティンゴ)の孫には1994年のカルティエ賞最優秀2歳牡馬ケルティックスウィング【レーシングポストトロフィー(英GⅠ)・仏ダービー(仏GⅠ)】、曾孫にはレインボーピーク【伊ジョッキークラブ大賞(伊GⅠ)】がいる。

キャッスルムーンの母フォザリンゲイの半姉クリンカーズの孫にはエルキュイート【イタリア大賞(伊GⅠ)・ロワイヤルオーク賞(仏GⅠ)】、曾孫にはミケロッツォ【英セントレジャー(英GⅠ)】がいる。フォザリンゲイの曾祖母ヘリングボーンは英1000ギニー・英セントレジャーを勝った名牝である。→牝系:F8号族②

母父カラムーンはカラグロウの項を参照。

競走馬引退後

競走馬を引退した本馬は来日して、6歳時から西山牧場で種牡馬入りした。初年度は40頭、2年目は48頭、3年目は57頭、4年目の1994年は45頭の交配数だった。初年度産駒はこの1994年にデビューしたが、その成績は極めて不振だった。そのために5年目は6頭、6年目は5頭、7年目の1997年は2頭と、交配数は激減した。この時期の西山牧場の経営状態は非常に悪化しており、1996年に父の正行氏に代わって牧場の経営を担当する事になった西山茂行氏は、それまでの大量生産体制から少数精鋭体制への移行を決断した。そしてこの1997年に、西山牧場に繋養されていた種牡馬のほぼ全てと繁殖牝馬・子馬の多くは売却されることになった。そして本馬も売却されて、西山牧場を去った。

この時点で西山牧場にいた本馬産駒の大半も売却されたが、いずれも4年目産駒であるセイウンスカイ、セイウンエリア、ニシノアクトレスの3頭は西山牧場に残った。そしてセイウンスカイが1998年の皐月賞と菊花賞の二冠を制し、セイウンエリアも1999年の日経賞でセイウンスカイの2着に入るなど、3頭のうち2頭までが中央競馬のオープン馬に上り詰めた。

これにより一躍注目を集めた本馬だが、売却後は行方不明になっており、その消息は現在でも分かっていない。消息不明になった本馬をネタにした笑い話がいくつか作られているのを見た事があるが、そんな話を作る人間には速やかに競馬界から消えて欲しいものである。

種牡馬廃用後の本馬は屠殺されて食肉にされたという説が以前は一般的だったが、現在では有志により引き取られた後に草競馬出走を目指して調教されていたがその途中で心不全を起こして死んだという、競馬評論家花岡貴子氏の説が有力とされているようである(死亡時期はセイウンスカイが活躍している頃だという)。もっとも、花岡氏も直接見たわけではなく他者からの又聞きであるらしいため、信憑性という点では疑問である。

廃用後の種牡馬は屠殺されるのが日本では一般的であること(日本で種牡馬入りした1987年のエクリプス賞年度代表馬ファーディナンドも廃用後に屠殺されたのはほぼ確定的である)、日本国内で走ったわけでもない本馬を引き取ろうとする日本人が現れるとは考えにくいこと(日本で走った馬なら応援していたファンが引き取る場合もあるだろうが)、草競馬出走云々の話が出てきた2005年は、ファーディナンド屠殺事件の発覚をきっかけに、オジジアン、フレイズ、サンシャインフォーエヴァーなどが米国に引き取られていったまさにその年であることなどから推察するに、おそらく本馬も屠殺されたというのが真実であり、それを有耶無耶にしたかった人間がそれを否定する噂を流したのであろうと筆者は考えている。

主な産駒一覧

生年

産駒名

勝ち鞍

1995

セイウンスカイ

皐月賞(GⅠ)・菊花賞(GⅠ)・京都大賞典(GⅡ)・日経賞(GⅡ)・札幌記念(GⅡ)

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