ウィジャボード

和名:ウィジャボード

英名:Ouija Board

2001年生

鹿毛

父:ケープクロス

母:セレクションボード

母父:ウェルシュページェント

世界各国を走り回り史上初めて2度のカルティエ賞年度代表馬に輝いた英国の名牝は繁殖牝馬としても大活躍中

競走成績:2~5歳時に英愛仏米日香首で走り通算成績22戦10勝2着3回3着5回

誕生からデビュー前まで

第19代ダービー伯爵エドワード・スタンリー卿により生産・所有された英国産馬である。スタンリー卿は自身の兄弟であるピーター・スタンリー氏が管理するハッチフィールドファーム(スタンリーハウススタッド)という、ニューマーケット近郊の牧場で馬産を行っていた。

牧場が小規模であるため所有できる繁殖牝馬の数は限られており、繋養する繁殖牝馬を厳選するために、生産した牡馬は全て売却し、牝馬のみを所有するというポリシーをスタンリー卿は持っていた。そのため、スタンリー卿が同時に所有する馬は1頭か多くて2頭程度であり、本馬の現役当時は本馬以外の現役競走馬を所有していなかったという。なお、スタンリー卿は後にハッチフィールドファームを住宅地に替えようとしたが、各国の競馬関係団体が反対運動を展開したために頓挫している。

本馬は、牝馬の育成に定評がある英国エドワード・ダンロップ調教師に預けられた。

競走生活(2歳時)

2歳10月にニューマーケット競馬場で行われた芝7ハロンの未勝利ステークスで、エディ・アハーン騎手を鞍上にデビュー。単勝オッズ21倍で23頭立て10番人気の低評価だったが、馬群の中団追走から残り1ハロン地点ではいったん先頭に立ち、勝ち馬シークレットチャームから1馬身半差の3着と好走した。

次走のヤーマウス競馬場芝7ハロン3ヤードの未勝利ステークスでは、ジェイミー・スペンサー騎手を鞍上に迎えて、単勝オッズ2倍の1番人気に支持された。ここでも馬群の中団後方につけると、左側に大きく切れ込みながらも残り1ハロン地点で先頭に立ち、そのまま2着ライダルに4馬身差をつけて圧勝した。

続くモントローズフィリーズS(T8F)でもスペンサー騎手とコンビを組み、単勝オッズ3.75倍の1番人気に支持された。しかしスタートで後手を踏んでしまい、すぐに馬群の中団まで押し上げたものの、残り1ハロン地点から伸びを欠いて、スポットライトの4馬身差3着に敗退。2歳時を3戦1勝の成績で終えた。

競走生活(3歳時)

3歳時は5月にニューマーケット競馬場で行われたリステッド競走プリティポリーS(T10F)から始動した。ここではキーレン・ファロン騎手を鞍上に、単勝オッズ3倍の1番人気に支持された。レースでは馬群の中団後方追走から残り2ハロン地点で仕掛けた。そして残り1ハロン地点で先頭に立った後も後続を引き離し続け、最後は2着サフールに6馬身差をつけて圧勝した。

この勝ち方を見た陣営は、当初予定していたムシドラSをスキップして、英オークス(英GⅠ・T12F10Y)に本馬を直行させる事にした。出走馬は僅か7頭だったが、かなりの混戦模様となっていた。凱旋門賞馬アーバンシーの娘で英ダービー馬ガリレオの全妹に当たる超良血のサルサビルS勝ち馬オールトゥービューティフルが単勝オッズ3.75倍の1番人気、英1000ギニーで2着していたサンデーサイレンス産駒の日本産馬サンドロップが単勝オッズ4倍の2番人気、ムシドラSを6馬身差で勝ってきたフィリーズマイル3着馬パンクティリオスが単勝オッズ4.33倍の3番人気、本馬が単勝オッズ4.5倍の4番人気と続いていた。再びファロン騎手を鞍上に迎えた本馬は、出遅れ気味のスタートから、道中は馬群の後方2番手を追走。タッテナムコーナーで少し位置取りを上げると、4番手で直線に入ってきてからスパートを開始。残り2ハロン地点で先頭に立った後も後続馬をどんどん引き離し、最後は2着オールトゥービューティフルに7馬身差をつけて圧勝した。

次走の愛オークス(愛GⅠ・T12F)でもファロン騎手とコンビを組み、オールトゥービューティフルや前走3着のパンクティリオスを抑えて、単勝オッズ1.57倍の1番人気に支持された。今回もスタートがあまり良くなく、道中は馬群の中団後方を追走した。4番手で直線に入ってから仕掛けると、残り1ハロン半地点でパンクティリオスをかわして先頭に踊り出た。そして必死に粘るパンクティリオスを1馬身差の2着に退けて、2分28秒2の好タイムで優勝。1999年のラムルマ以来5年ぶり史上10頭目となる英オークス・愛オークスの連覇を果たした。

夏場は休養に充て、秋はぶっつけ本番で凱旋門賞(仏GⅠ・T2400m)に出走。英ダービー・ダンテSの勝ち馬で愛ダービー2着のノースライト、仏ダービー馬ブルーカナリ、愛ダービー馬グレイスワロー、クリテリウム国際・ジャンプラ賞・パリ大賞の勝ち馬バゴ、仏オークス馬ラティス、ユジェーヌアダム賞・ニエル賞を連勝してきたヴァリクシール、ドーヴィル大賞を勝ってきたチェリーミックス、仏ダービー2着馬プロスペクトパークといった3歳馬勢や、日本から参戦してきたジャパンC・宝塚記念勝ち馬タップダンスシチー、コロネーションC2連覇・バーデン大賞勝ちのウォーサン、香港ヴァーズ勝ち馬ヴァレーアンシャンテ、アレフランス賞の勝ち馬でヴェルメイユ賞3着のプライドといった古馬勢が出走していた。しかしどの馬も決め手に欠けており、本命馬不在の状態だった。一応はノースライトが1番人気に支持されたが、単勝オッズは5.5倍と高かった。グレイスワローが単勝オッズ6倍の2番人気で、本馬は単勝オッズ8倍の3番人気だった。

過去3戦で騎乗したファロン騎手がノースライトを選択したため、本馬にはテン乗りのジョニー・ムルタ騎手が騎乗した。本馬は馬群の中団後方に待機し、直線入り口でもまだ後ろから数えたほうがかなり早いような位置取りだった。そして末脚勝負に賭けたのだが、直線入り口では馬群に包まれており、すぐには抜け出せない状態だった。それでも残り400m地点から馬群を捌いて猛然と追い込み、勝ったバゴから1馬身半差、2着チェリーミックスから1馬身差の3着まで突っ込んできた。

次走は米国ローンスターパーク競馬場で行われたBCフィリー&メアターフ(米GⅠ・T11F)となった。対戦相手は、ビヴァリーヒルズH・イエローリボンSを勝ってきたライトジグ、前年の愛1000ギニー馬で、英オークス・ヴェルメイユ賞・オペラ賞で2着、BCフィリー&メアターフで3着していたイエスタデイ、ハネムーンBCH・サンタバーバラ2回・ジョンCメイビーH・サンゴルゴーニオHなどの勝ち馬メガヘルツ、レイクプラシッドH・ガーデンシティBCH・ニューヨークH・ダイアナHの勝ち馬ワンダーアゲイン(グラスワンダーの全妹)、フラワーボウル招待Sを勝ってきたリスカヴァース、クイーンエリザベスⅡ世CCSの勝ち馬フィルムメーカー、シープスヘッドベイH勝ち馬モスコーバーニングなどだった。ファロン騎手が鞍上に戻ってきた本馬は出走馬中唯一の3歳馬ながら、単勝オッズ1.9倍の1番人気に支持された。

スタートが切られるとモスコーバーニングが先頭に立ち、本馬は馬群の中団内側好位につけた。そして三角で仕掛けて3番手で直線を向くと、2番手追走から抜け出していたフィルムメーカーを差し切って1馬身半差で勝利を収めた。

3歳時は5戦4勝の成績を残し、カルティエ賞年度代表馬及び最優秀3歳牝馬、並びにエクリプス賞最優秀芝牝馬のタイトルを受賞した。牝馬がカルティエ賞年度代表馬に選ばれたのは1995年のリッジウッドパール以来9年ぶり史上4頭目だったが、過去3頭(ユーザーフレンドリーロックソング、リッジウッドパール)が牡馬混合GⅠ競走を勝っていたのに対して、本馬は凱旋門賞3着こそあるが牝馬限定GⅠ競走勝ちしかなく、この年の欧州競馬における牡馬の不甲斐なさを現す結果ではあった(カルティエ賞最優秀古馬も牝馬のソヴィエトソングが受賞している)。

競走生活(4歳時)

4歳時は6月のコロネーションCから始動する予定だったが、左前脚に腫れ物が発見されたために直前になって回避。

コロネーションCから12日後のプリンスオブウェールズS(英GⅠ・T10F88Y)に急遽出走する事になった。ここでは、セントジェームズパレスS・愛チャンピオンS勝ち馬で次走のキングジョージⅥ世&クイーンエリザベスDSを勝つアザムール、デスモンドSの勝ち馬エース、アールオブセフトンSの勝ち馬ノーズダンサー、豪州でGⅠ競走4勝を挙げた後に海外遠征に旅立ちドバイデューティーフリーを勝っていたエルヴストローム、ドラール賞の勝ち馬タッチオブランド、前年の凱旋門賞で9着に終わっていたウォーサンなどが対戦相手となった。ファロン騎手がエイダン・オブライエン厩舎所属のエースに騎乗したため、本馬には2歳時以来となるスペンサー騎手が騎乗した。アザムールが単勝オッズ2.375倍の1番人気に支持され、本馬は単勝オッズ4.5倍の2番人気に推された。しかし調整不足は明らかであり、スタートから最後方に置かれてしまい、最終コーナーで落鉄した影響もあって、勝ったアザムールから30馬身も離された7着と惨敗してしまった。

しかもこのときの落鉄の影響か、左前脚に疲労骨折と裂蹄を発症してしまい、しばらく休養入りとなった。

9月にニューマーケット競馬場で行われたプリンセスロイヤルS(英GⅢ・T12F)で復帰。ランフランコ・デットーリ騎手と初コンビを組んで、単勝オッズ2.375倍の1番人気に支持された。ここでは後方待機策から残り3ハロン地点でスパートを開始し、2着ブリオレットに2馬身半差で快勝した。

続いてベルモントパーク競馬場で行われたBCフィリー&メアターフ(米GⅠ・T10F)に出走して同競走の連覇を狙った。対戦相手は、前走フラワーボウル招待Sで頭差2着してきた前年3着馬ワンダーアゲイン、この年にサンタアナH・サンタバーバラH・ビヴァリーヒルズH・イエローリボンSの勝利を上積みしてきた前年11着馬メガヘルツ、前年2着馬フィルムメーカー、ニューヨークHの勝ち馬ウェンド、4年前の同競走覇者バンクスヒルの全妹であるメイトリアークS・パロマーBCH・ギャラクシーSなどの勝ち馬インターコンティネンタル、コロネーションSとクイーンエリザベスⅡ世CCSで2着のカレンズケイパー、オペラ賞で2着してきたモナリザ、フラワーボウル招待Sを2連覇してきたリスカヴァース、ナッソーS勝ち馬フェイヴァラブルタームズ、ビヴァリーDS勝ち馬アンガラ、サンドロップなどだった。ファロン騎手はエイダン・オブライエン厩舎所属のモナリザに、デットーリ騎手はサイード・ビン・スルール厩舎所属のサンドロップに騎乗したため、本馬にはテン乗りのジェリー・ベイリー騎手が騎乗したが、それでも単勝オッズ3.3倍の1番人気に支持された。

スタートからインターコンティネンタルが押して逃げを打ち、ウェンドやリスカヴァースなどがそれを追走。本馬は馬群の中団を進み、三角で仕掛けて3番手で直線を向くという、前年と似たようなレースぶりを展開した。しかし快調に逃げていたインターコンティネンタルを捕らえることが出来ず、1馬身1/4差の2着に敗れた。

最大目標のBCフィリー&メアターフを落としてしまった陣営は、本馬に疲労が残っていないのを確認したため、本馬を日本に向かわせてジャパンC(日GⅠ・T2400m)に出走させた。地元日本からは、前年に天皇賞秋・ジャパンC・有馬記念の3連勝を達成していたゼンノロブロイ、東京優駿と宝塚記念で2着していたハーツクライ、前走の菊花賞で三冠馬ディープインパクトの2着に入ったアドマイヤジャパン、2年前の覇者タップダンスシチー、天皇賞秋を勝ってきたヘヴンリーロマンス、阪神大賞典・京都大賞典の勝ち馬リンカーン、天皇賞春の勝ち馬スズカマンボなどが出走。本馬以外の海外馬勢は、サンクルー大賞・ジョッキークラブSの勝ち馬アルカセット、この年初戦のガネー賞でGⅠ競走5勝目を挙げた後は勝ち切れないレースが続いていたバゴ、前年のBCターフを筆頭にソードダンサー招待H・ユナイテッドネーションズS・マンノウォーSとGⅠ競走4勝のベタートークナウ、ソードダンサー招待Sの勝ち馬キングスドラマ、プリンスオブウェールズS5着後にバーデン大賞を2連覇してきたウォーサンなどが参戦していた。連覇を目指すゼンノロブロイが単勝オッズ2.1倍の1番人気に支持され、ファロン騎手が騎乗した本馬は単勝オッズ12.8倍の5番人気(海外馬ではアルカセットに次ぐ人気)での出走となった。

タップダンスシチーが引っ張るハイペースの中、本馬は中団好位の10番手辺りを追走。そして残り1000m地点で早めに仕掛けると、直線ではアルカセットと共に伸びてきたが、ゴール前で脚色が鈍ってしまい、ハーツクライ、ゼンノロブロイ、リンカーンに後れを取ってアルカセットの2馬身差5着に敗れた。

さらに休む間もなく香港に向かい、香港ヴァーズ(香GⅠ・T2400m)に出走。カドラン賞2連覇・ロワイヤルオーク賞2連覇・アスコット金杯勝ちの名長距離馬であるだけでなく前走の凱旋門賞でハリケーンランの2着していたウェスターナー、ヴェルメイユ賞・パークヒルSなどの勝ち馬スイートストリーム、シャティントロフィーHの勝ち馬ベストギフト、伊ジョッキークラブ大賞を勝ってきたチェリーミックス、ショードネイ賞の勝ち馬シャムダラ、プリンスオブウェールズS6着後にキングジョージⅥ世&クイーンエリザベスDSで2着していたノーズダンサー、ジャパンCで13着だったウォーサン、皐月賞2着・東京優駿3着・菊花賞4着(全て勝ったのはディープインパクト)の日本馬シックスセンスなどが出走してきた。ウェスターナーが単勝オッズ3.25倍の1番人気で、ファロン騎手騎乗の本馬は単勝オッズ3.5倍の2番人気に推された。

スタートがあまり良くなかった影響なのか、陣営が目論んでいた好位追走よりも後ろの最後方に近い位置取りとなってしまったが、直線に入ると馬群の間から抜け出して一気に先頭に立ち、2着に粘ったシックスセンスに3馬身差をつけて完勝した。4歳時の成績は5戦2勝だった。

競走生活(5歳時)

5歳時も現役を続け、この年はドバイシーマクラシック(首GⅠ・T2400m)から始動した。前年のジャパンC2着後に出走した有馬記念でディープインパクトに初黒星をつけたハーツクライ、加国際S勝ち馬リラックスドジェスチャー、南アフリカ最大の競走ダーバンジュライの勝ち馬で前哨戦ドバイシティオブゴールドも勝ってきたグレイズイン、オペラ賞・香港C・プリティポリーS・ナッソーSの勝ち馬アレクサンダーゴールドラン、愛セントレジャー馬コリアーヒルなどが対戦相手となった。英国ブックメーカーのオッズでは、本馬が単勝3.25倍の1番人気に支持されており、ハーツクライが単勝オッズ3.75倍の2番人気となっていた。

スタートが切られるとハーツクライが逃げを打ち、ファロン騎手騎乗の本馬は馬群の中団後方につけた。そして直線一気に追い込んできたが、先行馬勢が止まる気配を見せず、勝ったハーツクライから9馬身差の4着に敗れた。レース直前に打ち上げられた花火に驚いて焦れ込んでしまったため、本馬本来の走りが見られなかったという。

続いて再度香港に向かい、クイーンエリザベスⅡ世C(香GⅠ・T2000m)に出走。香港ダービーを勝ってきたヴィヴァパタカ、南アフリカでフィリーズクラシック・ウーラヴィントン2200とGⅠ競走を2勝していた牝馬イリデセンス、香港チャンピオンズ&チャターC2着馬ベストギフト、香港スチュワーズC・香港チャンピオンズ&チャターC・香港金杯の勝ち馬スーパーキッド、香港金杯・香港スチュワーズC・チャンピオンズマイルの勝ち馬でこの年の安田記念を勝つブリッシュラックなどが対戦相手となったが、デットーリ騎手とコンビを組んだ本馬が単勝オッズ3.5倍の1番人気に支持された。しかしスタートで出遅れてしまい、直線入り口10番手から大外一気の追い込みを見せるも、イリデセンスとベストギフトの2頭に僅かに及ばずに、イリデセンスの首差3着と惜敗した。

次走は前年出走できなかったコロネーションC(英GⅠ・T12F10Y)となった。独ダービー・伊ジョッキークラブ大賞の勝ち馬で前年のBCターフも勝っていた独国調教馬シロッコ、BCターフでシロッコの2着だったエースの2頭が強敵だった。シロッコが単勝オッズ1.73倍の1番人気で、デットーリ騎手騎乗の本馬は単勝オッズ3.75倍の2番人気となった。スタートからシロッコが先頭に立ち、エースも掛かり気味にそれに絡んだ。強敵2頭が先頭に立ったためなのか、本馬はそれを追うように好位を追走した。そして残り2ハロン地点で仕掛けると、逃げるシロッコに挑みかかったが、最後まで脅かす事は出来ずに1馬身3/4差2着に敗れた。

続いてプリンスオブウェールズS(英GⅠ・T10F)に出走。英チャンピオンS・ドバイデューティーフリーを勝ってきたデビッドジュニア、ミラノ大賞・英国際Sの勝ち馬で前走ドバイワールドCを完勝してきたエレクトロキューショニスト、前走7着最下位に終わっていたエース、アルクール賞勝ち馬でイスパーン賞2着のマンデュロ、アールオブセフトンS・ブリガディアジェラードSを連勝してきたノットナウケイト、ガネー賞の勝ち馬コールカミノなどが対戦相手となった。ドバイミーティングを制したデビッドジュニア(単勝オッズ2.375倍)とエレクトロキューショニスト(単勝オッズ3.25倍)の両雄に人気が集中し、本馬は単勝オッズ9倍で離された3番人気だった。

デットーリ騎手がエレクトロキューショニストに騎乗し、ファロン騎手もエースに騎乗したために、本馬にはテン乗りのオリビエ・ペリエ騎手が騎乗した。中団好位を追走した本馬は、直線半ばまで前が開かずに仕掛けられなかったが、外側に持ち出すと先行馬勢を撫で斬りにして、逃げ粘ったエレクトロキューショニストを半馬身差の2着に下して勝利した。

次走のエクリプスS(英GⅠ・T10F7Y)では、八百長疑惑で逮捕されたファロン騎手を始めとして過去に本馬に騎乗した騎手達が誰も都合が付かなかったため、テン乗りのクリストフ・スミヨン騎手が騎乗した。前走4着のデビッドジュニア、同5着のノットナウケイト、仏2000ギニー馬オージールールズ、ラクープを勝ってきたブルーマンデーなどを抑えて、単勝オッズ3倍の1番人気に支持された。今回は後方待機策を選択し、直線の末脚に賭けた。ところが直線途中で進路が塞がってしまい、脚を余してデビッドジュニアの4馬身差5着に敗退。これは騎乗ミスだとしてスミヨン騎手は非難を受ける事になった。

このレース中に脚部を負傷していたため、次走に予定していたキングジョージⅥ世&クイーンエリザベスDSは回避し、その1週間後のナッソーS(英GⅠ・T9F192Y)にデットーリ騎手鞍上で出走した。フィリーズマイル・コロネーションSの勝ち馬ナンニナ、プリティポリーSでGⅠ競走5勝目を挙げてきたアレクサンダーゴールドランなどを抑えて、単勝オッズ2倍の1番人気に支持された。今回は牝馬限定戦という事もあってか、今までのような控える競馬はせず、無難に先行して残り3ハロン地点で先頭に立つ走りを見せた。しかしここで最後方からアレクサンダーゴールドランが一気に上がってきて、残り2ハロン地点で本馬に並びかけてきた。ここから2頭の大接戦が展開され、最後は殆ど同時にゴール。写真判定の末に、本馬が短頭差で勝利を収めた。

続く愛チャンピオンS(愛GⅠ・T10F)では、かつての相棒ファロン騎手が騎乗する愛ダービー馬ディラントーマス、アレクサンダーゴールドランなどと顔を合わせた。ディラントーマスが単勝オッズ2.625倍の1番人気で、本馬が単勝オッズ3.75倍の2番人気、アレクサンダーゴールドランが単勝オッズ4倍の3番人気となった。デットーリ騎手が同日行われた英セントレジャーで1番人気のシックスティーズアイコンに騎乗(優勝)したため、本馬には久々にスペンサー騎手が騎乗した。レースでは5頭立ての3番手を追走。そして直線に入ると、前を行くディラントーマスに並びかけて、いったんは前に出た。しかしここからディラントーマスが盛り返し、残り1ハロンで叩き合いを演じた末に、首差屈して2着に敗れた。

その後はチャーチルダウンズ競馬場に向かい、3年連続となるBCフィリー&メアターフ(米GⅠ・T11F)にデットーリ騎手鞍上で出走した。アメリカンオークス招待S・イエローリボンSなど4連勝中だったこの年のエクリプス賞最優秀3歳牝馬ウェイトアホワイル、前年3着馬フィルムメーカー、ジャンロマネ賞の勝ち馬サトワクイーン、EPテイラーS・フラワーボウル招待Hなどの勝ち馬ハニーライダー、サンタラリ賞の勝ち馬ジェルマンス、後のビヴァリーDS勝ち馬モーララカナ、アーバンシーの娘でミセスリヴェレS・ボールトンスパHなどを勝っていたマイタイフーン、ジョンCマビーHの勝ち馬ダンシングエディなどが対戦相手となったが、本馬が単勝オッズ2.4倍で3年連続の1番人気に支持された。

スタートが切られるとダンシングエディが先頭に立ち、マイタイフーンやフィルムメーカーがそれを追って先行。本馬は例によって馬群の中団内側を追走したが、この年は馬群に包まれてなかなか抜け出せなかった。それでも直線入り口でようやく外側に持ち出すと、4番手から堂々と突き抜けて、2着フィルムメーカーに2馬身1/4差をつけて完勝した。

2年連続ではないブリーダーズカップ2度制覇は、1996・98年にBCマイルを制したダホスに次ぐ史上2頭目だった。また、フィルムメーカーはBCフィリー&メアターフで3年連続本馬の次の着順という結果になってしまった。

次走は2度目の出走となるジャパンC(日GⅠ・T2400m)となった。この年のジャパンCに出走した海外馬は本馬とポモーヌ賞勝ち馬フリードニアだけであり、他は全て日本馬だった。そのメンバー構成は、前走の凱旋門賞で薬物検査に引っ掛かって失格の憂き目に遭ってしまった汚名返上を期するディープインパクト、ドバイシーマクラシック勝利後にキングジョージⅥ世&クイーンエリザベスDSでハリケーンランの3着していたハーツクライ、皐月賞・東京優駿の二冠馬メイショウサムソン、皐月賞2着・東京優駿3着・菊花賞2着だった神戸新聞杯勝ち馬ドリームパスポート、シンガポール航空国際Cを勝っていた北海道営競馬の星コスモバルク、天皇賞秋で2着してきたスウィフトカレント、前走エリザベス女王杯を繰り上がりで勝ってきたフサイチパンドラなどだった。ディープインパクトが単勝オッズ1.3倍の1番人気、喘鳴症という不安材料を抱えていたハーツクライが単勝オッズ5.8倍の2番人気で、前年のジャパンCでアルカセットに騎乗して同競走最多の3勝目を挙げていたデットーリ騎手が騎乗する本馬は単勝オッズ9.5倍の3番人気となった。

スタートから最後方に陣取ったディープインパクトを意識したのか、本馬は後方2番手といつもより後ろを追走。三角で仕掛けて上がっていったが、さらに外側からディープインパクトも上がってきたため、直線入り口では行き場を無くしてしまった。止むを得ずディープインパクトの後方を回り込むように外側に持ち出して追い込んできたが、ディープインパクトとドリームパスポートの2頭に遅れを取って、ディープインパクトの2馬身半差3着に敗れた。それでも上がり3ハロン33秒9はジャパンCに出走した馬としては1991年の優勝馬ゴールデンフェザントの34秒2を上回る海外馬最速タイム(日本馬を含めてもこの年にディープインパクトが記録した33秒5に次ぐ史上2位。いずれも当時)であり、高速馬場にも対応できる事を証明してみせた。

この後は香港に向かい、連覇を目指して香港ヴァーズに出走登録したが、前年に疲労骨折を起こした左前脚の患部に痛みを訴えたためにレース前日に回避し、そのまま現役を引退した。香港ヴァーズに出走して2着以内に入れば、英国調教馬史上最高獲得賞金になっていたと海外の資料にあるが、当時の1位がどの馬かは記載されておらず、筆者が調べた範囲では本馬が獲得した631万2552ドルが当時英国調教馬史上最高額であると思われる(後にプレスヴィスにより更新)。

5歳時の成績は9戦3勝で、カルティエ賞では年度代表馬及び最優秀古馬を受賞。カルティエ賞の創設以降初めて2度の年度代表馬に選出された馬となった。また、エクリプス賞でも2度目の最優秀芝牝馬を受賞している。

本馬がレースに出走した国の数は7か国、競馬場は16か所、騎乗した騎手は8人に上るが、大半のレースで見せ場を作っている。本馬以上に牡馬相手に派手な活躍を見せた牝馬は多いが、様々な条件下でいつも安定した走りを見せる本馬もまた歴史的名牝と呼ぶに相応しいだろう。

名前は「霊応盤(心霊術で使われる占い用のボード、すなわちコックリさんを行うための板)」の意味で、祖母ウィジャと母セレクションボードの名前に由来しているようである。

血統

Cape Cross Green Desert Danzig Northern Dancer Nearctic
Natalma
Pas de Nom Admiral's Voyage
Petitioner
Foreign Courier Sir Ivor Sir Gaylord
Attica
Courtly Dee Never Bend
Tulle
Park Appeal Ahonoora Lorenzaccio Klairon
Phoenissa
Helen Nichols Martial
Quaker Girl
Balidaress Balidar Will Somers
Violet Bank
Innocence シーホーク
Novitiate
Selection Board Welsh Pageant Tudor Melody Tudor Minstrel Owen Tudor
Sansonnet
Matelda Dante
Fairly Hot
Picture Light Court Martial Fair Trial
Instantaneous
Queen of Light Borealis
Picture Play
Ouija Silly Season Tom Fool Menow
Gaga
Double Deal Straight Deal
Nonats
Samanda Alycidon Donatello
Aurora
Gradisca Goya
Phebe

ケープクロスは当馬の項を参照。

母セレクションボードは現役成績2戦未勝利。セレクションボードの半兄にはテレプロンプター(父ウェルシュページェント)【バドワイザーミリオンS(米GⅠ)・クイーンエリザベスⅡ世S(英GⅡ)・愛国際S(愛GⅢ)2回・デズモンドS(愛GⅢ)・クインシー賞(仏GⅢ)】、半弟にはシェトイアント(父レインボークエスト)【ブリガディアジェラードS(英GⅢ)】がいる。また、セレクションボードの半姉ロージアベイ(父ハイトップ)の子には、イブンベイ【イタリア大賞(伊GⅠ)・オイロパ賞(独GⅠ)・ベルリン銀行大賞(独GⅠ)・愛セントレジャー(愛GⅠ)・ドーヴィル大賞(仏GⅡ)・モーリスドニュイユ賞(仏GⅡ)・ジェフリーフリアS(英GⅠ)】とロジートターン【ヨークシャーオークス(英GⅠ)・ジョッキークラブS(英GⅡ)・ランカシャーオークス(英GⅢ)】の兄妹が、曾孫にはレッドブルーム【フィリーズマイル(英GⅠ)】がいる。

セレクションボードの母ウィジャの従姉妹の子には豪州競馬史上指折りの名馬キングストンタウン【コックスプレート(豪GⅠ)3回・スプリングチャンピオンS(豪GⅠ)・ローズヒルギニー(豪GⅠ)・タンクレッドS(豪GⅠ)・シドニーC(豪GⅠ)・AJCダービー(豪GⅠ)・クイーンズランドダービー(豪GⅠ)・ジョージメインS(豪GⅠ)2回・コーフィールドS(豪GⅠ)2回・ウエスタンメイルクラシック(豪GⅠ)】がいる。→牝系:F12号族①

母父ウェルシュページェントは現役成績20戦11勝、ロッキンジS2回・クイーンアンS・クイーンエリザベスⅡ世S・ハンガーフォードSなどを勝った名マイラーで、テューダーメロディー、テューダーミンストレルと遡れる系統である。

競走馬引退後

競走馬を引退した本馬はスタンリー卿所有のもと、スタンリーハウススタッドで繁殖入りした。初年度はキングマンボ、2年目はモンズーン、3・4・7年目はガリレオ、5・6年目はドバウィと交配されている。キングマンボとの牡駒ブードゥープリンスや、ガリレオとの牡駒オーストラリアが勝ち上がっており、オーストラリアはBCジュヴェナイルターフトライアルS(愛GⅢ)を勝っている。

と、ここまでは2013年時点における記載内容であり、翌2014年になって、そのオーストラリアが英ダービー(英GⅠ)・愛ダービー(愛GⅠ)・英国際S(英GⅠ)とGⅠ競走を3連勝する活躍を見せ、歴史的名牝ウィジャボードの物語に新たなページを加えてくれた。また、ブードゥープリンスも豪州に移籍してアワーブードゥープリンスと改名し、イースターC(豪GⅢ)に勝利している。

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