アクワレリスト

和名:アクワレリスト

英名:Aquarelliste

1998年生

鹿毛

父:デインヒル

母:アガセ

母父:マニラ

仏オークス・ヴェルメイユ賞を制し凱旋門賞でも2着と健闘、古馬になっても牡馬相手に好走を続けた21世紀欧州競馬界最初の女傑

競走成績:3~5歳時に仏英香首で走り通算成績13戦7勝2着2回3着1回

誕生からデビュー前まで

仏国の画商で馬主でもあったダニエル・ウィルデンシュタイン氏により、仏国アレフランスステーブルにおいて生産・所有され、仏国アンドレ・ファーブル調教師に預けられた。

競走生活(3歳時)

デビューはかなり遅く、3歳4月にロンシャン競馬場で行われたリステッド競走セリザイエ賞(T2000m)となった。単勝オッズ2.5倍の1番人気に推されると、不良馬場をものともせずに、中団後方から残り200m地点で悠々と抜け出して3馬身差で快勝した。

しかしこの時期、トラブルメーカーとして知られていたウィルデンシュタイン氏とファーブル師との間に諍いが生じ、本馬はエリー・ルルーシュ厩舎に転厩した。

それでも本馬は人間内の悶着などお構いなしに、続くリステッド競走メリサンド賞(T2000m)でも、単勝オッズ1.73倍の1番人気に応えて、最後方から直線一気の追い込みを見せて2着シュガーミルに2馬身半差で勝利。

次走の仏オークス(仏GⅠ・T2100m)では主戦となるドミニク・ブフ騎手と初コンビを組んで、単勝オッズ2.8倍の1番人気で出走。対戦相手は、ムシドラSを勝ってきたタイムアウェイ、サンタラリ賞を勝ってきたナディア、ヴァントー賞勝ち馬でサンタラリ賞2着のメアノストラム、クレオパトラ賞を勝ってきたスプリングオーク、ペネロープ賞を勝ってきたバルドウィナなどだった。ここでは馬群の中団を追走して7番手で直線を向いた。そして逃げていたナディアを残り150m地点過ぎで捕らえると一気に突き抜けて、2着ナディアに1馬身半差で優勝した。

夏場は休養に充て、秋はヴェルメイユ賞(仏GⅠ・T2400m)に出走。単勝オッズ2.6倍の1番人気に支持されたが、単勝オッズ2.7倍という僅差の2番人気に推された馬がいた。それは夏の間にマルレ賞・ノネット賞など4連勝していた上がり馬ディアミリナだった。レースはディアミリナが2番手を先行し、本馬が馬群の中団を走る展開となった。そして直線に入るとディアミリナが先に抜け出してゴールを目指したが、後方から来た本馬が残り100m地点で並びかけて、叩き合いを短頭差で制して勝利した。

デビュー以来無敗の4連勝で挑んだ凱旋門賞(仏GⅠ・T2400m)では、この年の英ダービー・愛ダービー・キングジョージⅥ世&クイーンエリザベスDS勝ち馬ガリレオこそ不在だったが、前年の英ダービー2着馬で、前走英国際Sを7馬身差で圧勝してきた4歳馬サキー、グレートヴォルティジュールS・英セントレジャーを連勝してきたミラン、この年の英2000ギニー馬で前哨戦のニエル賞も勝ってきたゴーラン、フォワ賞を勝ってきたハイトーリ、クリテリウムドサンクルー勝ち馬で武豊騎手騎乗のサガシティ、ディアミリナ、仏ダービー馬アナバーブルー、先輩仏オークス馬で前年の2着馬エジプトバンド、前年の仏ダービー馬ホールディングコートなど、この当時の欧州を代表する有力馬達が対戦相手となった。本馬はサキー(単勝オッズ3.2倍)に続く単独2番人気(単勝オッズ5.5倍)に推され、ゴーラン、ミラン、アナバーブルーといった同世代の強豪牡馬達より支持された。不良馬場の中で行われたレースで本馬は馬群の中団後方を追走。そして10番手で直線に入ると、一気に追い上げてきた。殆どの馬達は本馬の末脚に敵わずに抜き去られていったが、中団好位から先に抜け出したサキーの1頭だけが本馬の追い上げをまったく寄せ付けずにそのまま直線を独走して圧勝。本馬はサキーから6馬身差をつけられた2着に敗れた。それでも、同世代の強豪牡馬勢には悉く先着した。

凱旋門賞の16日後、ウィルデンシュタイン氏は84歳で死去した。彼の事業のうち競走馬部門は長男のアレク・ネイサン・ウィルデンシュタイン氏が受け継いだ。本馬はアレク氏が代表を務めるエキュリ・ウィルデンシュタイン社の名義で4歳時以降も現役を続ける事になった。

競走生活(4歳時)

4歳初戦のガネー賞(仏GⅠ・T2100m)では、アルクール賞を勝ってきたエクスキュート(2年後のガネー賞勝ち馬)、凱旋門賞9着だったアナバーブルー、凱旋門賞で本馬から1馬身差3着と好走していたサガシティなどを抑えて、単勝オッズ1.7倍の断然人気に支持された。ここでは今までとは異なり2番手を先行するという走りを見せた。そして残り200mで抜け出すと、最後方から追い込んできた2着エクスキュートに半馬身差で勝利して、GⅠ競走3勝目を挙げた。

続くサンクルー大賞(仏GⅠ・T2400m)でも、単勝オッズ1.6倍の断然人気に支持された。対戦相手はガネー賞で本馬の5着に敗れた後にシャンティ大賞を勝ってきたアナバーブルー、エドヴィル賞・ジャンドショードネイ賞の勝ち馬カリフェなど5頭であり(うち1頭は本馬のペースメーカー)、本馬が負ける要素は少なかった。ところがスタート前に非常にゲート入りを嫌がり、スタート時間を5分も遅らせた。そしてレースでも直線入り口4番手から伸びずに、アンジュガブリエルの2馬身差3着に敗れた。

次走は初めて仏国外のレースとなる、キングジョージⅥ世&クイーンエリザベスDS(英GⅠ・T12F)となった。対戦相手は、シンガポール航空国際C・プリンスオブウェールズSを連勝してきたグランデラ、凱旋門賞4着・ジャパンC6着以来のレースとなるゴーラン、ヨークシャーC・ハードウィックSを勝ってきたジンダバッド、13年前に同競走を勝ったナシュワンの半弟に当たる英チャンピオンS・ドバイシーマクラシックの勝ち馬ネイエフ、コロネーションC・ハードウィックSと連続2着のストーミングホーム、独ダービー・コロネーションCの勝ち馬ボリアルなどだった。かなりの混戦模様であり、本馬は5番人気ながらも単勝オッズは9倍だった。ここでは2番手につける積極的な競馬を見せたが、直線に入ると失速。追い込んで勝ったゴーランから5馬身3/4差の4着に終わった。

秋はフォワ賞(仏GⅡ・T2400m)に出走。伊共和国大統領賞・ミラノ大賞など4連勝中だった後のジャパンC勝ち馬ファルブラヴ、サンクルー大賞で本馬に先着する2着だったドーヴィル大賞勝ち馬ポリッシュサマー、アナバーブルーといった、凱旋門賞の前哨戦に相応しい好メンバーとなった。この中で本馬は単勝オッズ1.9倍の1番人気に支持された。ここでは後方待機策に戻し、直線入り口後方2番手から追い込んで、2着アナバーブルーに1馬身差で勝利した。

そして再度の凱旋門賞(仏GⅠ・T2400m)に挑んだ。英ダービー・愛ダービー馬ハイシャパラル、仏ダービー馬スラマニ、ナッソーS・ヨークシャーオークスを勝ってきたイズリントン、日本から参戦してきた菊花賞・有馬記念・天皇賞春勝ち馬マンハッタンカフェ、ファルブラヴ、ドイツ賞・バーデン大賞を連勝してきたマリエンバード、アナバーブルーなどが対戦相手となった。かなりレベルの高い混戦模様であり、1番人気のハイシャパラルがペースメーカー役のブラックサムベラミーとのカップリングで単勝オッズ3.2倍、2番人気のスラマニがペースメーカー役のセンシブルとのカップリングで単勝オッズ4.5倍であり、本馬は単独で単勝オッズ5.2倍の3番人気となった。スタートが切られるとブラックサムベラミーを先頭に、ハイシャパラル、イズリントン、マンハッタンカフェなどが先行。本馬はこれらの馬達を見るように好位を追走した。そして直線に入ると追い上げてきたが、ゴール前で今ひとつ伸びを欠いて6着に敗れた。しかし勝った伏兵マリエンバードとの着差は2馬身3/4差であり、見方を変えれば(6馬身差をつけられた)前年より好走したとも言える。

さらに香港に遠征して香港ヴァーズ(香GⅠ・T2400m)に出走。前年の2着馬エクラール(このときの勝ち馬は言わずと知れたステイゴールド)、サンクルー大賞で本馬を破った後にコンセイユドパリ賞を勝ってきたアンジュガブリエル、アーリントンHなどの勝ち馬でBCターフ3着のファルコンフライト、ポリッシュサマー、伊オークス馬グアダループなどを抑えて、単勝オッズ2.9倍の1番人気に支持された。ここでは好位につけて最後に伸びを欠いた前走の反省からか、より一層の後方待機策を選択。そして直線に入ると猛然と追い込んできたが、アンジュガブリエルに競り負けて3/4馬身差2着と惜敗した。

競走生活(5歳時)

翌5歳時は欧州における年度最初の平地グループ競走エクスビュリ賞(仏GⅢ・T2000m)から始動。単勝オッズ2倍の1番人気に支持された。メンバーは揃っており、アンドレバボワン賞勝ち馬カエサリオン、ラクープドメゾンラフィットの勝ち馬で後にガネー賞を勝つフェアミックス、スコティッシュクラシック・メルドSの勝ち馬インペリアルダンサーなども出走していた。しかしここでは格が違っていたようで、得意な重馬場に助けられたこともあり、直線で中団からあっさりと抜け出して、2着カエサリオンに5馬身差で圧勝した。

そしてドバイに遠征して、引退レースのドバイワールドC(首GⅠ・D2000m)に出走した。対戦相手は前年のキングジョージⅥ世&クイーンエリザベスDSで本馬に先着する2着だった後に英国際Sを勝っていたネイエフ、前哨戦のマクトゥームチャレンジR2を勝ってきた地元馬ムーンバラッド、前哨戦のマクトゥームチャレンジR3を勝ってきた前年のカルティエ賞最優秀古馬グランデラ、フロリダダービー・ブルーグラスS・ドンHと米国GⅠ競走3勝のハーランズホリデーなどだった。本馬は、英国ブックメーカーのオッズでは単勝8.5倍で5番人気の評価だった。レースでは3番手の好位を追走するも、直線に入ると大きく失速してしまい、勝ったムーンバラッドから19馬身差の9着と惨敗してしまった。

名前は「水彩画家」という意味であり、世界的画商だったウィルデンシュタイン氏らしい命名である。

血統

デインヒル Danzig Northern Dancer Nearctic Nearco
Lady Angela
Natalma Native Dancer
Almahmoud
Pas de Nom Admiral's Voyage Crafty Admiral
Olympia Lou
Petitioner Petition
Steady Aim
Razyana His Majesty Ribot Tenerani
Romanella
Flower Bowl Alibhai
Flower Bed
Spring Adieu Buckpasser Tom Fool
Busanda
Natalma Native Dancer
Almahmoud
Agathe Manila Lyphard Northern Dancer Nearctic
Natalma
Goofed Court Martial
Barra
Dona Ysidra Le Fabuleux Wild Risk
Anguar
Matriarch Bold Ruler
Lyceum
Albertine Irish River Riverman Never Bend
River Lady
Irish Star Klairon
Botany Bay
Almyre Wild Risk Rialto
Wild Violet
Ad Gloriam Alizier
Ad Altiora

デインヒルは当馬の項を参照。

母アガセは現役成績14戦2勝だが、プシシェ賞(仏GⅢ)を勝ち、仏1000ギニー(仏GⅠ)で2着、仏オークス(仏GⅠ)で3着した活躍馬。アガセの産駒には本馬の全弟アルティストロワイヤル【クレメントLハーシュ記念ターフCSS(米GⅠ)・チャールズウィッテンガム記念H(米GⅠ)・サンマルコスS(米GⅡ)】がいる。アガセの半兄にはアルカング(父サガス)【BCクラシック(米GⅠ)・イスパーン賞(仏GⅠ)・ユジェーヌアダム賞(仏GⅡ)・ジョンヘンリーH(米GⅡ)・プランスドランジュ賞(仏GⅢ)】がいる他、アガセの半姉アフリクブルーアズール(父サガス)の子にケープヴェルディ【英1000ギニー(英GⅠ)・ロウザーS(英GⅡ)】が、アガセの半妹アニエール(父スペンドアバック)の子にオーストラリー【フロール賞(仏GⅢ)】が、アガセの半妹アンジュブルー(父アレッジド)の子にアクトリス【コリーダ賞(仏GⅡ)】とアンガラ【ビヴァリーDS(米GⅠ)・ダイアナH(米GⅠ)・ビウィッチS(米GⅢ)】が、アガセの半妹アルタナ(父マウンテンキャット)の子にガラテ【ブルーウインドS(愛GⅢ)】がいる。→牝系:F8号族①

母父マニラは当馬の項を参照。

競走馬引退後

競走馬を引退した本馬は愛国・英国・仏国を行き来しながら繁殖生活を送っている。サドラーズウェルズレインボークエストエルナンドモンジュー、ガリレオ、パントレセレブルオアシスドリームドバウィといった一流馬ばかりと交配されて産駒をもうけているが、現在のところ活躍した産駒はいないようである。

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