ハイシャパラル

和名:ハイシャパラル

英名:High Chaparral

1999年生

鹿毛

父:サドラーズウェルズ

母:カソラ

母父:ダルシャーン

英ダービー・愛ダービーを連覇した他に史上初めてBCターフの2連覇を達成した生涯着外無しの安定感抜群の名馬は種牡馬としても活躍したが惜しくも早世

競走成績:2~4歳時に英愛仏米で走り通算成績13戦10勝2着1回3着2回

誕生からデビュー前まで

愛国ティペラリー郡において、愛国の馬産家ショーン・コクラン氏により生産された。コクラン氏の牧場は決して生産規模は大きくないが、過去にはリッジウッドパールを輩出するなど優秀な成績を収めていた。

1歳9月にタタソールズセールに出品され、クールモアグループと親しいマイケル・テイバー氏の代理人ダーモット・“デミ”・オバイアン氏によって27万ギニー(当時の為替レートで約4700万円)で購入されてクールモアの所有馬となり、愛国のエイダン・パトリック・オブライエン調教師に預けられた。体高は16ハンドと並だったが、非常に力強い馬体の持ち主だった。

競走生活(2歳時)

2歳9月に愛国パンチェスタウン競馬場で行われた芝7ハロン100ヤードの未勝利戦で、主戦となるマイケル・キネーン騎手を鞍上にデビュー。この時点で既にかなりの評判馬であり、単勝オッズ1.53倍の1番人気に支持された。道中は馬群の中団を進み、直線入り口7番手から追い上げてきた。そして先に抜け出していた単勝オッズ6倍の2番人気馬ホットトロッターに並びかけて叩き合いに持ち込んだが、既にこれが4戦目だったホットトロッターとの実戦経験の差が最後に出たのか、短頭差で競り負けて2着だった。

その1週間後には愛国ティペラリー競馬場で行われた芝7ハロンの未勝利戦に出走。ここではシーミー・ヘファーナン騎手とコンビを組んで、単勝オッズ1.33倍の1番人気に支持された。今回は逃げる単勝オッズ8倍の2番人気馬クェリンピアーを追いかけて2番手を追走。そして残り2ハロン地点で仕掛けて残り1ハロン地点で先頭に立つと、2着に粘ったクェリンピアーに2馬身半差をつけて勝ち上がった。

それから20日後には英国に遠征してレーシングポストトロフィー(英GⅠ・T8F)に参戦。ベレスフォードSを7馬身差で圧勝してきた同厩馬キャッスルガンドルフォが単勝オッズ1.62倍の1番人気に支持されており、ケヴィン・ダーレイ騎手騎乗の本馬が単勝オッズ5.5倍の2番人気だった。

レースは本馬にとってあまり得意とは言えない不良馬場で行われた。スタートが切られると、オブライエン師が用意したペースメーカー役のベレスフォードS2着馬キャンプデービッドが先頭に立ち、本馬とキャッスルガンドルフォはいずれも馬群の中団を進んだ。残り3ハロン地点で本馬とキャッスルガンドルフォがほぼ同時に仕掛けて、残り2ハロン地点で先にキャッスルガンドルフォが先頭に立った。それを追撃した本馬は、馬場状態が影響したのか、最後に左側によれる場面もあったが、最後はキャッスルガンドルフォをかわして3/4馬身差で勝利した。2歳時の成績は3戦2勝だった。

競走生活(3歳時)

3歳時は4月にレパーズタウン競馬場で行われたリステッド競走バリサックスS(T10F)から始動した。他馬より7~10ポンド重い131ポンドの斤量だったが、キネーン騎手を鞍上に単勝オッズ1.67倍の1番人気に支持された。ここでも馬群の中団を追走すると、残り1ハロン地点で先頭に立って後続を突き放し、2着に逃げ粘った単勝オッズ17倍の6番人気馬トゥエンティトゥーアンドチェンジに7馬身差をつけて圧勝した。

その後はヘファーナン騎手とコンビを組んで、5月のデリンズタウンスタッドダービートライアルS(愛GⅢ・T10F)に出走した。本馬以外にこれといった馬は出走しておらず、他馬より7ポンド重い130ポンドの斤量ながらも、単勝オッズ1.2倍の1番人気に支持された。レースでは同厩馬ノストラダムスがスタートから逃げを打ち、本馬はここでも馬群の中団を追走した。そして加速しながら最終コーナーを回ると、残り1ハロン地点で先頭に立った。ここから前走のような伸びは見られなかったが、最後は2着となった単勝オッズ15倍の4番人気馬インタイムズアイに1馬身差で勝利した。

次走が英ダービー(英GⅠ・T12F10Y)となった。ここには、愛ナショナルS・愛フューチュリティSの勝ち馬で、前走の英2000ギニーでロックオブジブラルタルの短頭差2着だった同厩馬ホークウイングの姿もあった。ホークウイングの主戦でもあったキネーン騎手は迷った末にホークウイングを選んだ。そのため本馬にはジョニー・ムルタ騎手が騎乗する事になった。この2頭以外の出走馬は、リングフィールドダービートライアルSを13馬身差で圧勝してきたバンダリ(後にグレートヴォルティジュールS・プリンセスオブウェールズS・ハードウィックSなどに勝利)、ヴィンテージSの勝ち馬で愛ナショナルS2着のナヒーフ、チェスターヴァーズを勝ってきたファイトユアコーナー、ロイヤルロッジS・ソラリオS2着馬ゾリジャナー、ダンテSを勝ってきたムーンバラッド(翌年のドバイワールドC勝ち馬)、タタソールSの勝ち馬ウェアオアウェン(この年の秋にクイーンエリザベスⅡ世Sを勝利)などだった。ホークウイングが単勝オッズ3.25倍の1番人気、本馬が単勝オッズ4.5倍の2番人気、バンダリが単勝オッズ5.5倍の3番人気、ナヒーフが単勝オッズ6倍の4番人気、ファイトユアコーナーが単勝オッズ9倍の5番人気となった。

スタートが切られるとまずはコショクトンが先頭に立ったが、しばらくしてムーンバラッドが先頭を奪って馬群を引っ張った。ホークウイングは馬群の中団につけ、本馬は最後方からレースを進めた。ムーンバラッドが作り出すペースはかなり速く、スタミナを要する湿った馬場状態や、起伏が激しいエプソム競馬場のコースも相まって、能力不足の馬は早い段階から脱落していくサバイバル合戦の様相を呈した(実際にコショクトンは道中で故障して安楽死となった)。本馬は失速していく他馬勢を次々に抜き去りながら進出していき、3番手で直線を向いた。そして残り2ハロン地点で先頭に立ったところに、後方からホークウイングが追撃してきた。いったんは並びかけられたが、最後には突き放して、2着ホークウイングに2馬身差、3着ムーンバラッドにはさらに12馬身差をつけて快勝した。

次走は愛ダービー(愛GⅠ・T12F)となった。ホークウイングはエクリプスSに向かうことになったため不在であり、キングエドワードⅦ世Sを勝ってきたバラケリ、デリンズタウンスタッドダービートライアルS2着以来の実戦となるインタイムズアイ、クリテリウムドサンクルー・ノアイユ賞の勝ち馬で伊ダービー2着のバリンガリー、愛2000ギニーでロックオブジブタルタルの3着だったガリニュールSの勝ち馬デラフランチェスカ、伊グランクリテリウムの勝ち馬で愛フューチュリティS2着・愛ナショナルS3着のショロコフなどが対戦相手となった。キネーン騎手が鞍上に戻ってきた本馬が単勝オッズ1.33倍という圧倒的な1番人気に支持され、バラケリが単勝オッズ7.5倍の2番人気、インタイムズアイが単勝オッズ8.5倍の3番人気、バリンガリーが単勝オッズ13倍の4番人気となった。

スタートが切られると、単勝オッズ201倍の最低人気だったショロコフが逃げを打ち、本馬は好位を追走した。人気薄のショロコフだったが、ここではかなりの粘りを見せ、直線入り口でいったんは他馬勢に並ばれながらも残り2ハロン地点では再び単独先頭に立っていた。しかし外側から差してきた本馬の末脚には敵わず、残り1ハロン地点で先頭が入れ代わると、そのまま本馬が2着ショロコフに3馬身半差、3着バリンガリーにはさらに1馬身半差をつけて快勝。一昨年のシンダー、前年のガリレオに続く3年連続史上15頭目の英ダービー・愛ダービー連覇を達成した。

ショロコフもバリンガリーもオブライエン厩舎の所属馬であり、上位3頭をオブライエン師の管理馬が独占する結果となった。また、キネーン騎手がこの後に本馬の鞍上を他の騎手に譲ることは無くなった。なお、この1週間後に行われたエクリプスSでは、ホークウイングがショロコフを2馬身半差の2着に破って勝っている。

しかしその後、本馬が調教を行っていた愛国バリードイル厩舎にウイルス性疾患が蔓延した。それに本馬も罹患してしまい、夏場は完全に棒に振った。

秋は前哨戦として予定していたニエル賞にも出走できず、ぶっつけ本番で凱旋門賞(仏GⅠ・T2400m)に出走した。対戦相手は、本馬不在のニエル賞を勝ってきた4連勝中の仏ダービー馬スラマニ、仏オークス・ヴェルメイユ賞・ガネー賞・フォワ賞の勝ち馬で前年の凱旋門賞2着のアクワレリスト、ナッソーS・ヨークシャーオークスと連続圧勝してきたイズリントン、日本から参戦してきた菊花賞・有馬記念・天皇賞春の勝ち馬マンハッタンカフェ、伊共和国大統領賞・ミラノ大賞の勝ち馬で伊ダービー2着のファルブラヴ、ドイツ賞・バーデン大賞とGⅠ競走を連勝してきたヨークシャーC・ジョッキークラブSの勝ち馬マリエンバード、前年の仏ダービー・ノアイユ賞とこの年のシャンティ大賞を勝っていたアナバーブルー、セプテンバーSを勝ってきたアジアンハイツ、ヴァントー賞の勝ち馬でヴェルメイユ賞2着・仏オークス3着のアナマリー、ラクープドメゾンラフィットを勝ってきたフェアミックス、独ダービー・コロネーションCの勝ち馬でバイエルン大賞・バーデン大賞2着・ドバイシーマクラシック3着のボリアル、ジャンドショードネイ賞・エドヴィル賞の勝ち馬カリフェなどだった。本馬がガリレオの全弟ブラックサムベラミーとのカップリングで単勝オッズ3.2倍の1番人気に支持され、スラマニが同厩のガネー賞3着馬センシブルとのカップリングで単勝オッズ4.5倍の2番人気、アクワレリストが単勝オッズ5.2倍の3番人気、イズリントンが単勝オッズ8.2倍の4番人気、マンハッタンカフェが単勝オッズ9.3倍の5番人気となった。

スタートが切られると、ペースメーカー役としての出走だったブラックサムベラミーが先頭を引っ張り、本馬はそれを見るように3番手を追走した。そのままの状態で直線に入ると、2番手からイズリントンが抜け出して先頭に立ち、それに本馬と単勝オッズ132倍の最低人気馬カリフェが並びかけて叩き合いに持ち込んだ。しかしこの3頭をまとめてかわしたマリエンバードが真っ先にゴールを駆け抜け、大外から差してきたスラマニが3/4馬身差の2着。本馬はカリフェとイズリントンには競り勝ったものの、スラマニから半馬身差の3着に敗れた。完調だったらと惜しまれる敗戦だった。

その後は米国に遠征して、アーリントンパーク競馬場で行われたBCターフ(米GⅠ・T12F)に参戦した。地元米国からは、仏国でフォンテーヌブロー賞を勝ち仏2000ギニー・ジャンプラ賞で3着した後に米国に移籍してハリウッドダービー・チャールズウィッテンガムH・ターフクラシック招待Sを勝ちユナイテッドネーションズH・ソードダンサー招待Hで2着していたデノン、ソードダンサー招待H2回・マンノウォーS2回・ユナイテッドネーションズHの勝ち馬でユナイテッドネーションズH・ターフクラシックS2着のウィズアンティシペーション、クレメントLハーシュ記念ターフCSS・アメリカンHの勝ち馬ザティンマン、仏国でオカール賞を勝った後に米国に移籍してエルリンコンH・スターズ&ストライプスH・アーリントンHを勝ちターフクラシックS・加国際Sで2着していたファルコンフライトが、加国からはナイアガラBCH2着馬パーフェクトソウルが、欧州からは、英2000ギニー・キングジョージⅥ世&クイーンエリザベスDS・ニエル賞の勝ち馬で英ダービー・英国際S2着・愛ダービー3着のゴーラン、愛ダービーで本馬の3着した後に愛セントレジャーでも3着して前走の加国際Sを勝ってきたバリンガリーが参戦していた。本馬が単勝オッズ1.9倍の1番人気、ゴーランが単勝オッズ4.7倍の2番人気、デノンが単勝オッズ8.6倍の3番人気、ウィズアンティシペーションが単勝オッズ9.7倍の4番人気、バリンガリーが単勝オッズ10.4倍の5番人気と続いた。

スタートが切られると、単勝オッズ15.1倍の7番人気馬ザティンマンが先頭に立ち、バリンガリーやデノンが先行、本馬は馬群の中団につけた。そして三角で各馬が一斉に仕掛けると本馬もスパート。直線入り口では4番手だったが、ここから力強い末脚を伸ばして残り1ハロン地点でザティンマンをかわして先頭に立ち、そのまま2着ウィズアンティシペーションに1馬身1/4差をつけて勝利した。

3歳時は6戦5勝(うちGⅠ競走3勝)の成績を残したが、この年のカルティエ賞では無冠に終わった(年度代表馬と最優秀3歳牡馬は共にロックオブジブラルタルが受賞)。しかしエクリプス賞最優秀芝牡馬に選出された。

競走生活(4歳時)

英ダービー・愛ダービー・BCターフに勝利という成績であれば、この年限りで競走馬を引退するのが欧州競馬界の常識(特にクールモアグループはその傾向が強い)なのだが、陣営は本馬を4歳時も現役続行させた。

しかし肩を負傷した影響もあって、復帰は8月のロイヤルホイップS(愛GⅡ・T10F)までずれ込んだ。前年の愛ダービーで7着に終わっていたインタイムズアイ、スコティッシュクラシック・メルドS・セントサイモンSの勝ち馬でダルマイヤー大賞3着のインペリアルダンサーなどが主な対戦相手となった。139ポンドを課せられた本馬が単勝オッズ1.9倍の1番人気、132ポンドのインタイムズアイが単勝オッズ4倍の2番人気、同じく132ポンドのインペリアルダンサーが単勝オッズ6.5倍の3番人気となった。もっとも、本馬と他馬との実績の差からすれば、他馬より7ポンド以上重い斤量であっても、もっと低いオッズになってもおかしくはなく、やはり長期休養明けというのがマイナス要因だったようである。レースはインタイムズアイが逃げを打ち、本馬は無難に3番手の好位につけた。そして残り2ハロン地点でスパート。休み明けが影響したのか、ここから右側によれる場面があったが、なんとか2着インペリアルダンサーに3/4馬身差で勝利した。

続いて愛チャンピオンS(愛GⅠ・T10F)に出走。愛ダービー・キングジョージⅥ世&クイーンエリザベスDS・デリンズタウンスタッドダービートライアルS・ベレスフォードSの勝ち馬で英ダービー3着のアラムシャー、前年の凱旋門賞9着後にジャパンCを勝ちこの年にイスパーン賞・エクリプスS・英国際Sを勝って欧州10ハロン路線のトップに上り詰めていたファルブラヴ、愛オークスを勝ってきたヴィンテージティプル、前年の英ダービー3着後にドバイワールドC・セレクトS・マクトゥームチャレンジR2を勝ち英チャンピオンSで2着するもドバイワールドC制覇後は不調に陥っていたムーンバラッド、前年の凱旋門賞5着後にBCフィリー&メアターフ・プリンスオブウェールズSで3着してヨークシャーオークスを2連覇してきたイズリントン、テトラークSの勝ち馬で愛2000ギニー2着のフランスが対戦相手となった。アラムシャーが単勝オッズ2.25倍の1番人気、ファルブラヴが単勝オッズ3.75倍の2番人気で、勢いと距離適性で前2頭より差があると判断された本馬が単勝オッズ5倍の3番人気だった。

スタートが切られると本馬のペースメーカー役としての出走だったフランスが先頭に立ち、ムーンバラッドが2番手、アラムシャーが3番手、本馬は4番手の好位を追走した。そして直線に入るとムーンバラッドが先頭に立ち、その内側からアラムシャー、外側から本馬が伸びてきた。残り1ハロン地点ではこの3頭が横一線となったが、本馬が抜け出した。しかしここで本馬も左側によれるなどもたついてしまい、直線の末脚に賭けたファルブラヴとイズリントンの2頭が内外から襲い掛かってきた。最後はこの3頭が横一線となったが、本馬が2着ファルブラヴを首差、3着イズリントンをさらに頭差退けて勝利した。

その後は前年のリベンジとして凱旋門賞(仏GⅠ・T2400m)に向かった。敗戦は愛ダービーでアラムシャーの2着のみだったクリテリウム国際・リュパン賞・仏ダービー・グレフュール賞・ニエル賞・シェーヌ賞の勝ち馬ダラカニ、ニエル賞で2着してきたリス賞の勝ち馬ドワイエン、サンクルー大賞2回・香港ヴァーズ・コンセイユドパリ賞・シャンティ大賞・フォワ賞の勝ち馬でドバイシーマクラシック2着のアンジュガブリエル、この年の英ダービー馬でキングジョージⅥ世&クイーンエリザベスDS3着のクリスキン、愛セントレジャーを3連覇(翌年に4連覇)してロワイヤルオーク賞も勝っていた前年のカルティエ賞最優秀長距離馬ヴィニーロー、ウニオンレネン・独ダービー・バイエルン大賞と3連勝中のダイジン、ジェフリーフリアS2回・セプテンバーSなど年を跨いで4連勝中のムブタケル、前年の英セントレジャー馬ボーリンエリック、前年の凱旋門賞10着後に伊ジョッキークラブ大賞・タタソールズ金杯を勝って開花したブラックサムベラミー、ドーヴィル大賞の勝ち馬ポリシーメイカーなどが対戦相手となった。本馬が単勝オッズ2.625倍の1番人気、ダラカニが単勝オッズ3.25倍の2番人気、翌年のキングジョージⅥ世&クイーンエリザベスDSを勝つドワイエンが単勝オッズ6.5倍の3番人気、アンジュガブリエルが単勝オッズ10倍の4番人気となった。

しかしレースは生憎の不良馬場で行われた。スタートが切られると、ダラカニ陣営が用意したペースメーカー役のダイヤプールが先頭に立ち、クリスキン陣営が用意したペースメーカー役のファーストチャーターが2番手、ブラックサムベラミーが3番手を走り、本馬は好位、ダラカニは後方待機策を採った。やがて本馬はムブタケルと共に位置取りを上げて、先頭に代わっていたブラックサムベラミーに詰め寄っていった。そして3番手で直線に入ってきたが、ここから馬場に脚を取られて伸びを欠き、ムブタケルに引き離されていった。そして後方から来たダラカニにかわされると抵抗できず、勝ったダラカニから5馬身3/4差、2着に粘ったムブタケルから5馬身差の3着に完敗してしまった。

その後は前年に引き続き米国に遠征して、サンタアニタパーク競馬場で行われたBCターフ(米GⅠ・T12F)に出走した。欧州で英チャンピオンS・キングエドワードⅦ世Sを勝ちコロネーションCで2着した後に米国に移籍してチャールズウィッテンガムH・クレメントLハーシュ記念ターフCSを勝ちアーリントンミリオンでも1位入線(ゴール直前の斜行で4着に降着)していたストーミングホーム、前年の凱旋門賞2着後にドバイシーマクラシック・アーリントンミリオン(2位入線からの繰り上がり)・ターフクラシック招待Sを勝ちキングジョージⅥ世&クイーンエリザベスDSで2着していたスラマニ、愛チャンピオンS2着後にクイーンエリザベスⅡ世Sを快勝してきたファルブラヴ、ハリウッドダービー・オークツリーダービー・サンマルコスSの勝ち馬でクレメントLハーシュ記念ターフCS2着のジョハー、前年のBCターフ4着後にサンルイオビスポHを勝ちユナイテッドネーションズHで2着していたザティンマン、仏オークス・オペラ賞・アスタルテ賞の勝ち馬でサンタラリ賞・イスパーン賞2着・ヴェルメイユ賞・ムーランドロンシャン賞・オペラ賞3着のブライトスカイ、ユナイテッドネーションズH・レーンズエンドスパイラルS・アーカンソーダービー・ワーラウェイHの勝ち馬でマンノウォーS2着・ターフクラシック招待S3着のバルトスター、シャンペンS・ハリウッドフューチュリティ・レムセンS・ローレルフューチュリティの勝ち馬トセットが対戦相手となった。ストーミングホームが単勝オッズ3倍の1番人気、スラマニが単勝オッズ4.1倍の2番人気、ファルブラヴが単勝オッズ4.6倍の3番人気で、前走の敗戦が影響したのか本馬は単勝オッズ5.9倍の4番人気に留まった。

スタートが切られると単勝オッズ25.1倍の8番人気馬バルトスターが先頭に立ち、それにザティンマンが絡んで馬群を先導。本馬とファルブラヴは馬群の中団好位につけ、ストーミングホームとスラマニはその後方に控えた。やがてバルトスターが後退していき、代わりにファルブラヴが進出を開始。本馬もそれを追って上がっていった。ストーミングホームとスラマニは共に伸びが無く、最後方に陣取っていた単勝オッズ15.2倍の5番人気馬ジョハーが2頭を追い抜いて上がってきた。そしてザティンマン、ファルブラヴ、本馬、ジョハーの順番で直線に入ってきた。よく粘ってきたザティンマンだったが、直線入り口でファルブラヴに並びかけられると失速。そしてファルブラヴが先頭に立ったのだが、そこへ本馬が急追して外側から並びかけた。さらに次の瞬間には大外からジョハーが強襲してきた。最後はこの3頭が横一線となってゴール。ファルブラヴは頭差の3着だったが、本馬とジョハーの差は写真判定でも確定できず、結果は1着同着。これで本馬は史上初のBCターフ2連覇を達成した。

これが現役最後のレースとなった。4歳時4戦3勝(うちGⅠ競走2勝)の成績を残したが、カルティエ賞ではまたも無冠に終わった(年度代表馬はダラカニ、最優秀古馬はファルブラヴが受賞)。しかし2年連続のエクリプス賞最優秀芝牡馬に加えて、エミレーツワールドシリーズ王者のタイトルを獲得した。

競走馬としての評価と馬名に関して

本馬は凱旋門賞こそ運に恵まれず2年連続3着だったが、全てのレースで着外なしの安定感を誇り、古馬になって苦戦する(又は3歳限りで引退する)傾向が強い近年の欧州クラシックホースとしては珍しく長期間に渡り活躍した実力馬であった。

21世紀の英ダービー馬で、古馬になってGⅠ競走を勝ったのは本馬のみである(本馬以前では、1990年の英ダービー馬クエストフォーフェイムが5歳時にハリウッドターフHを勝ったのが最後)。21世紀の東京優駿勝ち馬で、古馬になってGⅠ競走を勝った馬は5頭いるから、古馬になっても強いダービー馬の姿を殆ど見ることが出来ない英国の競馬ファンに比べれば、日本の競馬ファンは遥かに恵まれていると言えるかもしれない。

馬名を直訳すると「繁栄する低木の密林」という意味であるが、おそらく1970年前後に米国NBCテレビが放送していた、アリゾナ州の牧場を舞台として人気を博した西部劇“The High Chaparral”に由来するのではないかと推察される(ただし明記されている資料は無い)。日本では「ハイシャパラル」と「ハイチャパラル」の2通りの馬名表記がある。本馬が出走したレースを見ると、実況は「ハイシャパラル」と呼んでいる事が多いが、興奮すると「ハイチャパラル」と呼ぶ場面もあったから、どちらでも構わないようである。

血統

Sadler's Wells Northern Dancer Nearctic Nearco Pharos
Nogara
Lady Angela Hyperion
Sister Sarah
Natalma Native Dancer Polynesian
Geisha
Almahmoud Mahmoud
Arbitrator
Fairy Bridge Bold Reason Hail to Reason Turn-to
Nothirdchance
Lalun Djeddah
Be Faithful
Special Forli Aristophanes
Trevisa
Thong Nantallah
Rough Shod
Kasora Darshaan Shirley Heights Mill Reef Never Bend
Milan Mill
Hardiemma ハーディカヌート
Grand Cross
Delsy Abdos Arbar
Pretty Lady
Kelty ヴェンチア
マリラ
Kozana Kris Sharpen Up エタン
Rocchetta
Doubly Sure Reliance
Soft Angels
Koblenza Hugh Lupus Djebel
Sakountala
Kalimara Norseman
Montana

サドラーズウェルズは当馬の項を参照。

母カソラは、アガ・カーンⅣ世殿下の生産馬で、競走馬としては不出走のまま3歳12月のタタソールズ繁殖牝馬セールに出品され、コクラン氏により購入されていた。母としては、本馬の全弟ブラックベアーアイランド【ダンテS(英GⅡ)】も産んでいる。また、本馬の半妹モーラバイ(父インディアンリッジ)の子にはデヴィッドリヴィングストン【ベレスフォードS(愛GⅡ)・ローズオブランカスターS(英GⅢ)】がいる。カソラの母コザナはマルレ賞(仏GⅡ)・サンドリンガム賞(仏GⅢ)の勝ち馬で、ムーランドロンシャン賞(仏GⅠ)でルションの2着、凱旋門賞(仏GⅠ)でレインボークエストの3着したかなりの実力馬だった。コザナの半兄カルクールはカドラン賞(仏GⅠ)の勝ち馬で、コザナの母コブレンザは仏1000ギニー馬。→牝系:F1号族⑤

母父ダルシャーンは当馬の項を参照。

競走馬引退後

競走馬を引退した本馬は、愛国クールモアスタッドと新国ウィンザーパークスタッドを行き来するシャトルサイヤーとなった。愛国産馬もそれなりに走っているが、新国産馬の活躍の方が顕著である。特にソーユーシンクはコックスプレートを2連覇するなど豪州GⅠ競走を5勝した後にオブライエン厩舎に移籍して、エクリプスSなど欧州GⅠ競走を5勝する活躍を見せている。2010年からは豪州のクールモア・オーストラリアと愛国を行き来するようになった。

しかし種牡馬として脂が乗っている最中の2014年12月、疝痛を発症したために愛国ティペラリー郡フェザードにある動物病院で開腹手術が行われたが、施術の段階で状態がかなり悪化しており、術後の合併症のために15歳で他界した。

主な産駒一覧

生年

産駒名

勝ち鞍

2005

Magadan

エドヴィル賞(仏GⅢ)

2005

Senlis

伊2000ギニー(伊GⅢ)

2005

Unsung Heroine

ギブサンクスS(愛GⅢ)

2006

Above Average

サンダウンクラシックトライアルS(英GⅢ)

2006

Descarado

コーフィールドC(豪GⅠ)・コーフィールドS(豪GⅠ)・ヒルS(豪GⅡ)

2006

Golden Sword

チェスターヴァーズ(英GⅢ)

2006

High Heeled

セントサイモンS(英GⅢ)

2006

Lady Chaparral

タウランガS(新GⅢ)

2006

Monaco Consul

AJCスプリングチャンピオンS(豪GⅠ)・ヴィクトリアダービー(豪GⅠ)

2006

Redwood

ノーザンダンサーターフS(加GⅠ)・グロリアスS(英GⅢ)

2006

Serienhoehe

モーリスラクロアトロフィー(独GⅢ)

2006

Shoot Out

ランドウィックギニー(豪GⅠ)・AJCダービー(豪GⅠ)・AJCチッピングノートンS(豪GⅠ)2回・AJCジョージメインS(豪GⅠ)・QTCサイアーズプロデュースS(豪GⅡ)・ロイヤルソブリンS(豪GⅡ)・JJリストンS(豪GⅡ)・ブレッチングリーS(豪GⅢ)

2006

So You Think

コックスプレート(豪GⅠ)2回・アンダーウッドS(豪GⅠ)・ヤルンバS(豪GⅠ)・マッキノンS(豪GⅠ)・タタソールズ金杯(愛GⅠ)2回・エクリプスS(英GⅠ)・愛チャンピオンS(愛GⅠ)・プリンスオブウェールズS(英GⅠ)・メムジーS(豪GⅡ)・ムーアズブリッジS(愛GⅢ)

2006

The Miniver Rose

パークヒルS(英GⅡ)

2006

Western Symbol

ネヴィルセルウッドS(豪GⅢ)

2007

Hidden Asset

クラシックヒッツチャンピオンS(新GⅡ)

2007

Joanna

サンドランガン賞(仏GⅡ)・カルヴァドス賞(仏GⅢ)・インプルーデンス賞(仏GⅢ)・ポルトマイヨ賞(仏GⅢ)

2007

Noll Wallop

レパーズタウン2000ギニートライアルS(愛GⅢ)

2007

Wigmore Hall

ノーザンダンサーターフS(加GⅠ)2回・ジェベルハッタ(首GⅡ)

2008

High Jinx

カドラン賞(仏GⅠ)

2008

Petit Chevalier

ゴントービロン賞(仏GⅢ)

2009

It's a Dundeel

AJCスプリングチャンピオンS(豪GⅠ)・AJCランドウィックギニー(豪GⅠ)・ローズヒルギニー(豪GⅠ)・AJCダービー(豪GⅠ)・MRCアンダーウッドS(豪GⅠ)・AJCクイーンエリザベスS(豪GⅠ)・グローミングS(豪GⅢ)

2009

Tai Chi

ヴィンターファヴォリテン賞(独GⅢ)

2009

Vaquera

ティビーS(豪GⅢ)

2009

Wrote

BCジュヴェナイルターフ(米GⅠ)

2010

Contributer

チッピングノートンS(豪GⅠ)・ランヴェットS(豪GⅠ)・アポロS(豪GⅡ)・デビッドジョーンズC(豪GⅢ)

2010

Forever Loved

ブレイザーS(豪GⅡ)

2010

Frine

ロワイヤリュー賞(仏GⅡ)・フィユドレール賞(仏GⅢ)

2010

Pondarosa Miss

ARCイースターH(新GⅠ)

2010

Show the World

サウンドチャンピオンシップS(新GⅡ)

2010

Toronado

サセックスS(英GⅠ)・クイーンアンS(英GⅠ)・英シャンペンS(英GⅡ)・クレイヴンS(英GⅢ)

2011

Alpine Eagle

コーフィールドオータムクラシック(豪GⅡ)

2011

Beautiful Heroine

アンドレバボワン賞(仏GⅢ)

2011

Elektrum

ジョンCメイビーS(米GⅡ)

2011

Fenway

ヴァイナリースタッドS(豪GⅠ)・WHストックスS(豪GⅡ)

2011

Free Eagle

プリンスオブウェールズS(英GⅠ)・KPMGエンタープライズS(愛GⅢ)

2011

Hi World

カービンクラブS(豪GⅢ)・フランクパッカープレート(豪GⅢ)

2011

Lucky Lion

ダルマイヤー大賞(独GⅠ)・独2000ギニー(独GⅡ)・ドクトルブッシュ記念(独GⅢ)

2011

Sadler's Lake

ラフハビットプレート(豪GⅢ)・ビルリッチーH(豪GⅢ)

2011

Western Hymn

ユジェーヌアダム賞(仏GⅡ)・サンダウンクラシックトライアルS(英GⅢ)・ゴードンリチャーズS(英GⅢ)・ブリガディアジェラードS(英GⅢ)

2012

Karaktar

ノアイユ賞(仏GⅢ)・プランスドランジュ賞(仏GⅢ)

2012

Last Bullet

ブリーダーズS(豪GⅢ)

2012

Mr Singh

バーレーントロフィー(英GⅢ)

2012

Sacred Eye

コーフィールドクラシック(豪GⅢ)

2012

Star Storm

カンバーランドロッジS(英GⅢ)

2012

Taniya

フィユドレール賞(仏GⅢ)

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