ダルシャーン

和名:ダルシャーン

英名:Darshaan

1981年生

黒鹿

父:シャーリーハイツ

母:デルシー

母父:アブドス

仏ダービーでサドラーズウェルズとレインボークエストとの後の名種牡馬対決を制し、名馬ミルリーフの血脈を欧州で繁栄させる立役者となる

競走成績:2・3歳時に仏英で走り通算成績8戦5勝3着1回

誕生からデビュー前まで

アガ・カーンⅣ世殿下により生産・所有された英国産馬で、仏国アラン・ド・ロワイエ・デュプレ調教師に預けられた。主戦はイヴ・サンマルタン騎手で、本馬の全競走に騎乗した。

競走生活

2歳9月にロンシャン競馬場で行われたヴィユボン賞(T1600m)でデビューしたが、5頭立ての最下位。少し間隔を空けて、11月にサンクルー競馬場で行われたダトゥ賞(T1600m)に出走すると、ここでは2着アリストンに6馬身差をつけて圧勝した。続くクリテリウムドサンクルー(仏GⅡ・T2000m)も、2着グランドオリエントに1馬身半差をつけて、2分07秒4のレースレコードで勝利した。2歳時の成績は3戦2勝だった。

翌3歳時は仏ダービーを目指して、4月のグレフュール賞(仏GⅡ・T2100m)から始動した。そして、後の仏2000ギニー2着馬グリーンパラダイスを5馬身差の2着に、コンデ賞の勝ち馬ロングミックをさらに4馬身差の3着に破って圧勝した。次走のオカール賞(仏GⅡ・T2400m)でも、2着エクストールに1馬身半差で快勝した。

本番の仏ダービー(仏GⅠ・T2400m)では、愛2000ギニー・ベレスフォードS・デリンズタウンスタッドダービートライアルSの勝ち馬サドラーズウェルズ、デューハーストS・クレイヴンSで2着していた後の凱旋門賞馬レインボークエスト、リュパン賞を勝ってきたダハールなどが主な対戦相手となった。雨が降りしきる重馬場の中で行われたレースでは、サドラーズウェルズが先行して、本馬やレインボークエストは馬群の後方を追走した。そして直線に入ると残り400m地点でサドラーズウェルズが馬群から抜け出して先頭に立った。しかしそこへ本馬がレインボークエストと叩き合いながら伸びてきた。残り200m地点では、粘るサドラーズウェルズ、本馬、本馬に必死に食らいつくレインボークエストによる、後の名種牡馬3頭の三つ巴の戦いとなった。最後は本馬が突き抜けて、2着サドラーズウェルズに1馬身半差、3着レインボークエストにさらに半馬身差をつけて優勝した。

続いて英国に出向き、キングジョージⅥ世&クイーンエリザベスDS(英GⅠ・T12F)に出走した。ここでは前年の同競走を筆頭に英オークス・英チャンピオンS・コロネーションC・サンチャリオットS・フォワ賞を勝っていたタイムチャーター、オーモンドS・サンクルー大賞を連勝してきた前年の英ダービー馬ティーノソ、仏ダービー2着後にエクリプスSを勝ってきたサドラーズウェルズ、前年の英オークス・ヨークシャーオークス・英セントレジャーの勝ち馬で凱旋門賞・コロネーションC2着のサンプリンセス、前年のアーリントンミリオンの勝ち馬トロメオなどの強豪馬が対戦相手となった。しかし同競走史上当時2番目に速い2分27秒95の好タイムで決着するようなぱんぱんの良馬場で行われたこのレースで本馬は実力を発揮することが出来ず、終始レースを支配して勝ったティーノソの10着と惨敗してしまった。

凱旋門賞を睨んで出走したニエル賞(仏GⅢ・T2400m)でも、ロシェット賞・ノアイユ賞・ユジェーヌアダム賞の勝ち馬でリュパン賞2着のカリエロール、ロングミックの2頭に敗れて、勝ったカリエロールから2馬身差の3着に敗退。凱旋門賞には出ずに、そのまま3歳時5戦3勝の成績で競走馬を引退した。

この年の国際クラシフィケーションにおいては131ポンドが与えられた。これは仏国調教の3歳馬ではトップ、3歳馬全体でも138ポンドのエルグランセニョール、132ポンドのチーフシンガー(ジュライC・サセックスSの勝ち馬)に次ぐ3位だった。英タイムフォーム社のレーティングにおいては133ポンドの評価を受け、これは136ポンドのエルグランセニョールに次ぐ3歳馬第2位だった。いずれも同世代のサドラーズウェルズ、レインボークエストや、英ダービー馬セクレトより上の評価だった。

血統

Shirley Heights Mill Reef Never Bend Nasrullah Nearco
Mumtaz Begum
Lalun Djeddah
Be Faithful
Milan Mill Princequillo Prince Rose
Cosquilla
Virginia Water Count Fleet
Red Ray
Hardiemma ハーディカヌート ハードリドン Hard Sauce
Toute Belle
Harvest Maid Umidwar
Hay Fell
Grand Cross Grandmaster Atout Maitre
Honorarium
Blue Cross Blue Peter
King's Cross
Delsy Abdos Arbar Djebel Tourbillon
Loika
Astronomie Asterus
Likka
Pretty Lady Umidwar Blandford
Uganda
La Moqueuse Teddy
Primrose Lane
Kelty ヴェンチア Relic War Relic
Bridal Colors
Rose O'Lynn Pherozshah
Rocklyn
マリラ Marsyas Trimdon
Astronomie
Albanilla Pharis
Tourzima

シャーリーハイツは当馬の項を参照。

母デルシーはマルセル・ブサック氏の生産・所有馬だが、ブサック氏の事業が倒産した後にアガ・カーンⅣ世殿下の所有馬となった。現役時代は6戦1勝、ポモーヌ賞(仏GⅢ)で3着した程度と振るわなかったが、母としては本馬のほかに、いずれも本馬の半妹に当たるダララ“Darara”(父トップヴィル)【ヴェルメイユ賞(仏GⅠ)・プシシェ賞(仏GⅢ)】、ダララ“Dalara”(父ドユーン)【ロワイヤリュー賞(仏GⅡ)】を産むなど一流の成績を残している。ダララ“Darara”の子には、ダラザリ【ランヴェットS(豪GⅠ)・モーリスドニュイユ賞(仏GⅡ)】、リヴァーダンサー【クイーンエリザベスⅡ世C(香GⅠ)】、ダーレミ【プリティポリーS(愛GⅠ)・ヨークシャーオークス(英GⅠ)・ドバイシーマクラシック(首GⅠ)・ミネルヴ賞(仏GⅢ)】、リワイルディング【ドバイシーマクラシック(首GⅠ)・プリンスオブウェールズS(英GⅠ)・グレートヴォルティジュールS(英GⅡ)】と4頭のGⅠ競走勝ち馬がおり、孫にはダラシム【ケルゴルレイ賞(仏GⅡ)・グッドウッドC(英GⅡ)】がいる。本馬の全妹ダヤナタの子にはコーティアス【ドーヴィル大賞(仏GⅡ)・サンダウンクラシックトライアル(英GⅢ)】、孫にはハンターズライト【ローマ賞(伊GⅠ)・マクトゥームチャレンジR3(首GⅠ)・ジェベルハッタ(首GⅠ)・マクトゥームチャレンジR2(首GⅡ)】が、ダララ“Dalara”の子には、ダリアプール【コロネーションC(英GⅠ)・香港ヴァーズ(香GⅠ)・オーモンドS(英GⅢ)・カラーC(愛GⅢ)】、ダラムプール【クイーンズヴァーズ(英GⅢ)】がいるなど、デルシーは一大牝系を形成しつつある。→牝系:F13号族①

母父アブドスは仏グランクリテリウムなど2戦2勝の競走馬。父としてよりも母父としての活躍が目立ち、本馬の他にも凱旋門賞馬アキーダなどを出している。アブドスの父アルバールはジェベル産駒で、ジャンプラ賞・カドラン賞・アスコット金杯など9戦7勝の成績を残した名長距離馬だった。

競走馬引退後

競走馬を引退した本馬は、アガ・カーンⅣ世殿下が所有する愛国ギルタウンスタッドで種牡馬入りした。本馬は種牡馬として数多くの活躍馬を送り出し、名馬ミルリーフの血脈を繁栄させる功労馬となった。産駒のステークスウイナーは65頭以上となっている。2000年の種付け料は5万愛ポンドに達したが、この年の繁殖シーズン途中に疝痛のために緊急手術が行われた。手術は成功して回復し、翌2001年にも66頭と交配するなど種牡馬活動を行っていたが、5月になって疝痛が再発。今度の手術は成功せず、腸破裂のために20歳で他界した。死後の2003年にダラカニの大活躍で仏首位種牡馬の座を獲得した。

繁殖牝馬の父としても非常に優れており、数多くの優駿を送り出した。1999年の全欧母父首位種牡馬、2002年の英愛母父首位種牡馬、及び2002・06年の仏母父首位種牡馬になっている。特にサドラーズウェルズとの好相性を示していると海外でもよく言われているようだが、同い年の2頭は種牡馬入りも同年で、しかもいずれも同じ愛国で繋養されていた一流種牡馬であり、さらには血統構成が全く違うことから、片方の牝駒ともう片方の種牡馬が交配される機会は多いはずであり、活躍馬が出ないほうがおかしいと言える。また、父としても母父としても長距離競走で活躍する馬が多い(中には例外もいるが)のが特徴的である。繁殖牝馬の父としては、愛オークス・ロワイヤルオーク賞の勝ち馬エバディーラ、仏オークス・サンタラリ賞の勝ち馬ザインタ、アスコット金杯の勝ち馬エンゼリ、仏2000ギニー・セントジェームズパレスS・ムーランドロンシャン賞・イスパーン賞の勝ち馬センダワール、モイグレアスタッドSの勝ち馬エダビヤ、凱旋門賞馬マリエンバード、英ダービー・愛ダービー・BCターフ2連覇のハイシャパラル、ヨークシャーオークス2連覇・BCフィリー&メアターフの勝ち馬イズリントン、名牝アレクサンダーゴールドラン、仏ダービー馬ダルシ、仏オークス・サンクルー大賞・サンタラリ賞の勝ち馬サラフィナ、タタソールズ金杯・プリンスオブウェールズS・エクリプスSの勝ち馬アルカジーム、アスコット金杯の勝ち馬エスティメイト、オペラ賞の勝ち馬リダジーナ、英ダービー馬プールモアなどを出している。

主な産駒一覧

生年

産駒名

勝ち鞍

1986

Zayyani

グリーナムS(英GⅢ)

1987

Arzanni

ヨークシャーC(英GⅡ)

1987

Game Plan

プリティポリーS(愛GⅡ)

1987

Hellenic

ヨークシャーオークス(英GⅠ)・リブルスデールS(英GⅡ)

1987

Khalafiya

メルドS(愛GⅢ)

1987

Narwala

プリンセスロイヤルS(英GⅢ)

1987

Satin Wood

エマヌエーレフィリベルト賞(伊GⅢ)

1988

Kotashaan

BCターフ(米GⅠ)・サンルイレイS(米GⅠ)・サンフアンカピストラーノ招待H(米GⅠ)・エディリードH(米GⅠ)・オークツリー招待H(米GⅠ)・サンルイオビスポH(米GⅡ)・フォルス賞(仏GⅢ)

1989

Grand Plaisir

ノアイユ賞(仏GⅡ)

1990

Kithanga

セントサイモンS(英GⅢ)

1990

Sueboog

フレッドダーリンS(英GⅢ)

1991

Darnay

愛国際S(愛GⅡ)

1991

Sharamana

ミネルヴ賞(仏GⅢ)

1991

Truly a Dream

EPテイラーS(加GⅡ)・ロワイヨモン賞(仏GⅢ)

1993

Key Change

ヨークシャーオークス(英GⅠ)

1993

Mark of Esteem

英2000ギニー(英GⅠ)・クイーンエリザベスⅡ世S(英GⅠ)・セレブレーションマイル(英GⅡ)

1995

Hibernian Rhapsody

トロピカルターフH(米GⅢ)

1995

Make No Mistake

ロイヤルホイップS(愛GⅡ)・メルドS(愛GⅢ)・ブーゲンヴィリアH(米GⅢ)・アーリントンH(米GⅢ)

1995

Mutamam

加国際S(加GⅠ)・プリンセスオブウェールズS(英GⅡ)・ローズオブランカスターS(英GⅢ)・セレクトS(英GⅢ)・セプテンバーS(英GⅢ)2回・カンバーランドロッジS(英GⅢ)

1995

Sayarshan

オカール賞(仏GⅡ)・デルマーH(米GⅡ)・ゴールデンゲートH(米GⅢ)

1996

Cerulean Sky

サンタラリ賞(仏GⅠ)

1996

Josr Algarhoud

ジムクラックS(英GⅡ)・ポルトマイヨ賞(仏GⅢ)

1998

And Beyond

クイーンズヴァーズ(英GⅢ)

1998

Dilshaan

レーシングポストトロフィー(英GⅠ)・ダンテS(英GⅡ)

1998

Jomana

エクスビュリ賞(仏GⅢ)・コリーダ賞(仏GⅢ)

1998

Olden Times

ジャンプラ賞(仏GⅠ)・アールオブセフトンS(英GⅢ)

1998

Perfect Plum

レゼルヴォワ賞(仏GⅢ)・サンロマン賞(仏GⅢ)

1998

Sayedah

ロックフェルS(英GⅡ)

1998

Street Shaana

リューテス賞(仏GⅢ)

1998

Time Away

ムシドラS(英GⅢ)

1999

Shaanmer

シェーヌ賞(仏GⅢ)

1999

Summertime Legacy

レゼルヴォワ賞(仏GⅢ)

2000

Dalakhani

凱旋門賞(仏GⅠ)・仏ダービー(仏GⅠ)・クリテリウム国際(仏GⅠ)・リュパン賞(仏GⅠ)・グレフュール賞(仏GⅡ)・ニエル賞(仏GⅡ)・シェーヌ賞(仏GⅢ)

2000

Discreet Brief

パークヒルS(英GⅢ)

2000

Mezzo Soprano

ヴェルメイユ賞(仏GⅠ)

2001

Blue Monday

ラクープ(仏GⅢ)・アークトライアル(英GⅢ)2回・ケンブリッジシャーH

2001

Cairdeas

ムーアズブリッジS(愛GⅢ)

2001

Necklace

モイグレアスタッドS(愛GⅠ)・デビュータントS(愛GⅢ)

2002

Cassydora

ヒルズボローS(米GⅢ)

2002

Desideratum

リス賞(仏GⅢ)

2002

Hard Top

グレートヴォルティジュールS(英GⅡ)

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