インディアンリッジ

和名:インディアンリッジ

英名:Indian Ridge

1985年生

栗毛

父:アホヌーラ

母:ヒルブラウ

母父:スウィングイージー

一本調子の逃げ馬だったため競走馬として大成出来なかったが種牡馬として優れた速度を産駒に伝え欧州では稀少となったトウルビヨン直系を21世紀に伝える

競走成績:2~4歳時に英仏で走り通算成績11戦5勝2着2回

誕生からデビュー前まで

W・ホワイトヘッド夫妻により生産された愛国産馬で、アン・コフラン夫人の所有馬となり、英国デビッド・R・C・エルズワース調教師に預けられた。

競走生活(2・3歳時)

2歳6月にソールスベリー競馬場で行われた芝5ハロンの未勝利ステークスでデビューしたが、ここでいきなり強豪ウォーニングとぶつかり、5馬身差をつけられて2着に敗れた。次走は3か月後にソールスベリー競馬場で行われた芝6ハロンの未勝利ステークスだったが、2馬身半差の2着に敗退した。しかしその10日後に出走したグラデュエーションS(T6F)を3/4馬身差で勝ち上がった。さらにヘッジホッグS(T6F)では2着ベリーアジャセントに4馬身差で圧勝して、2歳時の成績を4戦2勝とした。

3歳時は6月のジャージーS(英GⅢ・T7F)から始動。単勝オッズ11倍で4番人気の評価だったが、キャッシュ・アスムッセン騎手を鞍上にスタートからゴールまで先頭を走りきり、2着サルスに1馬身半差で勝利を収めた。

次走のジュライC(英GⅠ・T6F)では、スティーブ・コーゼン騎手とコンビを組んだ。ここには仏2000ギニー・サセックスS・フォレ賞・トラストハウスフォルテマイルなどを勝っていたソヴィエトスター、デュークオブヨークS2回・リゾランジ賞・テンプルSを勝っていたハンサムセーラー、ミドルパークS・フライングチルダースSの勝ち馬ガリックリーグなどの快速馬勢が出走していた。ソヴィエトスターが単勝オッズ2.875倍の1番人気に支持され、本馬は単勝オッズ4.5倍の2番人気に推された。ここでもスタートから猛然と先頭に立って馬群を先導したのだが、残り2ハロン地点で後続馬に捕まると失速して、勝ったソヴィエトスターから10馬身差の8着と完敗を喫した。

次走のハンガーフォードS(英GⅢ・T7F60Y)では、ジャージーS2着後にウォーニングやカドゥージェネルーといった強豪と互角に張り合い、さらに前走ビーズウイングSを勝ってきたサルスと再び顔を合わせた。サルスが単勝オッズ3.25倍の1番人気に支持される一方で、本馬は単勝オッズ7.5倍の4番人気と評価を下げていた。ここでもスタートから先頭争いを演じたが、残り1ハロン地点から大きく失速し、サルスの8馬身1/4差6着と大敗した。

生涯最初で最後のマイル戦となったクイーンエリザベスⅡ世S(英GⅠ・T8F)では、サセックスSを勝っていたウォーニング、ムーランドロンシャン賞でミエスクを破ってきたソヴィエトスター、サルス、セントジェームズパレスS勝ち馬パーシャンハイツなどが対戦相手となっており、本馬は単勝オッズ67倍で8頭立ての最低人気だった。ここでもスタートから先頭をひた走ったが、残り2ハロン地点で失速。勝ったウォーニングから15馬身差の6着に終わり、上記4頭には全て先着される結果となった。3歳時の成績は4戦1勝だった。

競走生活(4歳時)

4歳時は5月のデュークオブヨークS(英GⅢ・T6F)から始動。前年のジュライC3着後にスプリントCS・アベイドロンシャン賞とGⅠ競走を2勝していたハンサムセーラー、前年のジュライCで7着だったガリックリーグ、アバーナントSを勝ってきたポイントオブライトなどが対戦相手となったが、前年8月の落馬事故から回復したコーゼン騎手とジュライC以来のコンビを組んだ本馬が単勝オッズ4.5倍の1番人気に支持された。ここでは強引に先頭に立たずに普通の先行策を選択。そして残り1ハロン地点で先頭に立つと、左側によれながらも2着ガリックリーグに1馬身半差で勝利した。

次走のキングズスタンドS(英GⅡ・T5F)でも、チェリーヒントンS勝ち馬で英1000ギニー2着のケレラ、クリテリオンS・ダイアデムSの勝ち馬カドゥージェネルー、ガリックリーグ、前走9着のハンサムセーラーなどを抑えて、単勝オッズ3.25倍の1番人気に支持された。ここでも無理に先頭には拘らずに先行策を採り、残り2ハロン地点で先頭に立つと、単勝オッズ26倍の伏兵ティガニの追撃を首差で封じて勝利した。なお、ここで8着に敗れたカドゥージェネルーは、続いて出走したジュライCとスプリントCSを連勝して欧州短距離王に君臨する事になる。

一方の本馬は仏国に遠征して、モーリスドギース賞(仏GⅡ・T1300m)に参戦した。ここでも先行策を採ったが、残り200m地点で失速して、クリケットボールの5馬身差5着に敗退した。このレースを最後に4歳時3戦2勝の成績で現役を引退。結局GⅠ競走勝ちには手が届かないままだった。

基本的にスタートから快速に任せて飛ばすことしかできないタイプの競走馬であり、GⅡ競走までの短距離戦はそれで押し切ることができても、マイル戦や出走馬の層が厚いGⅠ競走では勝ち負けにならなかったようである。

血統

Ahonoora Lorenzaccio Klairon Clarion Djebel
Columba
Kalmia Kantar
Sweet Lavender
Phoenissa The Phoenix Chateau Bouscaut
Fille de Poete
Erica Fragrans Big Game
Jennydang
Helen Nichols Martial Hill Gail Bull Lea
Jane Gail
Discipliner Court Martial
Edvina
Quaker Girl Whistler Panorama
Farthing Damages
Mayflower Borealis
Foliage
Hillbrow Swing Easy Delta Judge Traffic Judge Alibhai
Traffic Court
Beautillion Noor
Delta Queen
Free Flowing Polynesian Unbreakable
Black Polly
Rytina Milkman
Sea Cradle
Golden City スカイマスター Golden Cloud Gold Bridge
Rainstorm
Discipliner Court Martial
Edvina
West Shaw Grey Sovereign Nasrullah
Kong
Irish Candy Ballyogan
Sugar Hills

アホヌーラは当馬の項を参照。

母ヒルブラウは現役成績13戦2勝。本馬の半妹レディエレン(父ホレージ)の孫にミスベアトリクス【モイグレアスタッドS(愛GⅠ)】がいる。ヒルブラウの母ゴールデンシティの半姉ウェザーフェルの孫にはレッドビショップ【サンフアンカピストラーノ招待H(米GⅠ)・香港ヴァーズ・クイーンエリザベスⅡ世C】、ゴールデンシティの半妹ジェントルメロディの玄孫にはマミファイ【サウスオーストラリアンダービー(豪GⅠ)・アンダーウッドS(豪GⅠ)・コーフィールドC(豪GⅠ)・ヤルンバS(豪GⅠ)・シンガポール航空国際C(新GⅠ)】がいる。牝系を遡ると、1920年の英1000ギニー馬シナを経て、19世紀末英国の歴史的名牝ラフレッチェに行きつく。サンデーサイレンスも同じ牝系だが、本馬の近親と言うにはさすがに遠すぎる(本馬の7代母とサンデーサイレンスの6代母が半姉妹)。→牝系:F3号族③

母父スウィングイージーは現役成績12戦7勝。ナンソープS・キングズスタンドS・リッチモンドS・ジュライS・ニューSなどを勝ち、アベイドロンシャン賞で2着した典型的な短距離馬だった。系統を遡ると、米国でサプリングS・フォールハイウェイトH・グレーブセンドH勝ちなど16戦8勝のデルタジャッジ、メトロポリタンH・サバーバンH・ウッドワードS・ウィザーズS・オハイオダービー・ジェロームHなどを勝った44戦13勝のトラフィックジャッジ、そしてアリバイ、ハイペリオンの名前が出てくる。

競走馬引退後

競走馬を引退した本馬は英国キャンベルスタッドで種牡馬入りした。主流からかけ離れた血統と現役成績の影響で当初は殆ど期待されていなかったようである。しかし1993年にデビューした初年度産駒の出来が良く、アイランドマジックがソラリオSを勝つなどの活躍を見せたため、翌1994年から愛国ナショナルスタッドに移動した。この年にリッジウッドベンがグラッドネスSを勝ち愛2000ギニーで3着する活躍を示すと、続いて2年目産駒のディフィニットアーティクルが愛ナショナルSを勝ち、翌年の愛ダービーで2着。そしてこの1995年に2年目産駒のリッジウッドパールがBCマイルなどGⅠ競走を4勝してカルティエ賞年度代表馬に輝く大活躍を見せたために一躍人気種牡馬になった。その後も欧米で大レース勝ち馬を複数輩出し、欧州におけるトウルビヨン直系の中心的存在となった。2006年10月に心臓発作のため21歳で他界したが、この年も7万5千ポンドという高額の種付け料ながら、70頭の繁殖牝馬を集めていた。産駒のステークスウイナーは他界時点において74頭であり、その後も増えているはずであるため、90頭程度に達したと推計される。愛国ナショナルスタッドの管理者ジョン・クラーク氏は本馬の死に際して「この牧場にいた最も偉大な種牡馬の一頭でした」とその死を惜しんだ。本馬は、生産者は勿論のこと、愛国の競馬ファンからも愛され、本馬を見学に来る観光客は後を絶たなかったという。産駒の傾向として、ディフィニットアーティクルが愛ダービーで2着しているようにある程度の距離までは克服できるが、やはり短距離馬が多く、産駒の勝ち鞍の実に8割がマイル以下に集中している。

後継種牡馬としては、ディフィニットアーティクルが愛セントレジャー4連覇のヴィニーローを、ナミドがアベイドロンシャン賞勝ち馬トータルギャラリーを、コンプトンプレイスがナンソープS2連覇のボーダレスコットを出す活躍を見せ、稀少なトウルビヨン直系を守るべく奮闘している。

主な産駒一覧

生年

産駒名

勝ち鞍

1991

Island Magic

ソラリオS(英GⅢ)

1991

Ridgewood Ben

グラッドネスS(愛GⅢ)

1992

Blomberg

ダイオメドS(英GⅢ)

1992

Definite Article

愛ナショナルS(愛GⅠ)・タタソールズ金杯(愛GⅡ)

1992

Ridgewood Pearl

BCマイル(米GⅠ)・愛1000ギニー(愛GⅠ)・コロネーションS(英GⅠ)・ムーランドロンシャン賞(仏GⅠ)・ウェルドパークS(愛GⅢ)

1993

Tumbleweed Ridge

ホーリスヒルS(英GⅢ)・バリーコーラスS(愛GⅢ)3回・ポルトマイヨ賞(仏GⅢ)

1994

Compton Place

ジュライC(英GⅠ)

1994

Handsome Ridge

クレジットスイス個人銀行マイルS(英GⅡ)・ダフニ賞(仏GⅢ)・キヴトンパークS(英GⅢ)・パース賞(仏GⅢ)

1994

Indian Rocket

ミルリーフS(英GⅡ)

1995

Bardonecchia

プシシェ賞(仏GⅢ)

1996

Cassandra Go

テンプルS(英GⅡ)・キングズスタンドS(英GⅡ)・キングジョージS(英GⅢ)

1996

Namid

アベイドロンシャン賞(仏GⅠ)・アングルシーS(愛GⅢ)・グリーンランズS(愛GⅢ)・フライングファイブ(愛GⅢ)

1996

St. Clair Ridge

愛フューチュリティS(愛GⅢ)

1997

Indian Mary

テュディニ賞(伊GⅢ)・ナポリ市大賞(伊GⅢ)

1997

Nicobar

サンダウンマイル(英GⅡ)・エミリオトゥラティ賞(伊GⅡ)

1998

Domedriver

BCマイル(米GⅠ)・ダニエルウィルデンシュタイン賞(仏GⅡ)・シュマンドフェルデュノール賞(仏GⅢ)

1998

High Pitched

セントサイモンS(英GⅢ)

1998

Indian Creek

ハードウィックS(英GⅡ)・アールオブセフトンS(英GⅢ)・ゴードンリチャーズS(英GⅢ)

1998

Munir

チャレンジS(英GⅡ)2回・レノックスS(英GⅡ)・グリーナムS(英GⅢ)・ダイオメドS(英GⅢ)2回・レノックスS(英GⅢ)

1999

Monturani

ブランドフォードS(愛GⅡ)

1999

Sights on Gold

ブリガディアジェラードS(英GⅢ)・アークトライアル(英GⅢ)

2000

Campsie Fells

ヴァントー賞(仏GⅢ)

2000

Indian Haven

愛2000ギニー(愛GⅠ)

2000

Indian Maiden

モートリー賞(仏GⅢ)

2001

Imperial Stride

スコティッシュダービー(英GⅡ)・セプテンバーS(英GⅢ)

2001

Relaxed Gesture

加国際S(加GⅠ)

2001

Sleeping Indian

チャレンジS(英GⅡ)・ハンガーフォードS(英GⅢ)

2001

Snow Ridge

ロイヤルロッジS(英GⅡ)

2001

Tahreeb

ヴィルトシャフト大賞(独GⅢ)

2002

Linngari

ヴィットリオディカプア賞(伊GⅠ)・ダルマイヤー大賞(独GⅠ)・アルファヒディフォート(首GⅡ)2回・ゴールデネパイチェ(独GⅡ)・アルラシディヤ(首GⅢ)

2002

Noelani

ルネサンスS(愛GⅢ)・コンコルドS(愛GⅢ)

2004

Daytona

ハリウッドダービー(米GⅠ)・シューメーカーマイルS(米GⅠ)・オークツリーダービー(米GⅡ)・サンガブリエルH(米GⅡ)・アーケイディアH(米GⅡ)・フェアグラウンズH(米GⅢ)

2004

Indian Ink

チェヴァリーパークS(英GⅠ)・コロネーションS(英GⅠ)

2005

Mad About You

グラッドネスS(愛GⅢ)

2005

Patkai

クイーンズヴァーズ(英GⅢ)・サガロS(英GⅢ)

2006

Libano

伊2000ギニー(伊GⅢ)

2006

Rayeni

キラヴーランS(愛GⅢ)

2007

Rosendhal

カルロアンドフランチェスコアロイージ賞(伊GⅢ)2回

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