アサート
和名:アサート |
英名:Assert |
1979年生 |
牡 |
鹿毛 |
父:ビーマイゲスト |
母:アイリッシュバード |
母父:シーバード |
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仏国外の調教馬として史上初の仏ダービー制覇を果たし、さらに史上初の仏ダービー・愛ダービーのダブル制覇も達成する |
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競走成績:2・3歳時に愛英仏で走り通算成績11戦6勝2着3回 |
誕生からデビュー前まで
愛国モイグレアスタッドファームにおいて同牧場の所有者だったスイス産まれの実業家ウォルター・ハーフナー氏により生産された。ゼネラルモーターズのスイス支社勤務からスタートしてコンピューター事業や自動車販売事業で巨万の富を築き、2012年に101歳で死去したハーフナー氏は、1962年にモイグレアスタッドファームを購入して馬産も開始していた。1歳時に仏国で実施されたセリに出品され、英国の名物馬主ロバート・サングスター氏により16万フランで購入された本馬は、愛国デビッド・オブライエン調教師に預けられた。
競走生活(2歳時)
2歳9月にレパーズタウン競馬場で行われた芝8ハロンの未勝利戦でデビューした。しかしここではオブライエン師の父であるヴィンセント・オブライエン調教師が管理していた同馬主のゴールデンフリースが勝利を収め、本馬は6馬身差をつけられて2着に敗れた。ゴールデンフリースは2歳時この1戦のみで休養入りした。
一方の本馬は翌月のベレスフォードS(愛GⅡ・T8F)に向かった。そして主戦となるクリスティ・ロシェ騎手を鞍上に直線早めに抜け出して、2着ロングリートに2馬身差(資料によっては4馬身差となっている)をつけて勝ち、初勝利をグループ競走で挙げた。その後は英国に向かってウィリアムヒルフューチュリティS(英GⅠ・T8F)に出走して3番人気に推されたが、カウントパーレンの7馬身1/4差8着と大敗。2歳時の成績は3戦1勝となった。
競走生活(3歳前半)
3歳時は5月のニジンスキーS(愛GⅡ・T10F)から始動した。ここではバリモスSを勝ってきたゴールデンフリースとの再戦となったが、ゴールデンフリースに2馬身半差をつけられて2着に敗北した。その2週間後にはガリニュールS(愛GⅡ・T12F)に出走した。このレースには後にベルギーのGⅠ競走ブリュッセル大賞に勝利するリヴェリノという馬も出走していたのだが、本馬がリヴェリノを10馬身差の2着に圧倒して勝利した。
ガリニュールSの11日後には英ダービーが、15日後には仏ダービーが控えていたが、ゴールデンフリースと本馬の2頭を欧州クラシック路線で使い分けるつもりだったらしいサングスター氏はゴールデンフリースのみを英ダービーに向かわせ、本馬は仏ダービー(仏GⅠ・T2400m)に向かわせた。英ダービーを3馬身差で圧勝したゴールデンフリースに続く欧州クラシック競走制覇が期待され、単勝オッズ3.2倍の1番人気に支持された。そして先行して直線で早めに抜け出し、後に日本で名種牡馬となるリアルシャダイを3馬身差の2着に、グレフュール賞を勝ってきたボアドグラースを3着に破って優勝した。1836年に創設された仏ダービー史上、仏国外の調教馬が勝利したのはこれが145回目にして初めてだった。また、前年には本馬の半兄ビカラも同競走を勝っており、兄弟で2年連続制覇となった。
それから間もなくしてゴールデンフリースが調教中の故障により引退に追い込まれたため、本馬は単独で愛ダービー(愛GⅠ・T12F)に向かった。ゴールデンフリース不在という事もあり、単勝オッズ1.57倍の1番人気に支持された。そして本馬はこの圧倒的な人気を裏切らず、英ダービーでゴールデンフリースの4馬身差3着だったシルヴァーホーク(グラスワンダーの父)を8馬身差の2着に切り捨てて圧勝した(英タイムフォーム社は10馬身差と記録している)。仏国と愛国のダービーを両方勝った馬は、1866年の愛ダービー創設から実に116年目にして本馬が初めてとなった(本馬以降にはオールドヴィック、ドリームウェル、モンジューの3頭が達成している)。また、サングスター氏はこれで英仏愛と3か国のダービーを同一年で勝利した事になったが、通称“Derby hat-trick”と呼ばれるこの快挙を達成した馬主は2015年現在でもこの年の彼のみである。
競走生活(3歳後半)
その後はキングジョージⅥ世&クイーンエリザベスDS(英GⅠ・T12F)に出走した。このレースにはガネー賞を勝ってきたビカラも参戦しており、兄弟対決となった。他にも、ブリガディアジェラードS・エクリプスSを連勝してきたカラグロウ、伊グランクリテリウム・伊ダービー・パリ大賞・オイロパ賞・サンクルー大賞などを勝っていたグリントオブゴールド、プリンセスオブウェールズSを勝ってきたハイトオブファッション(アンフワイン、ナシュワン、ネイエフの母)などの姿もあった。このメンバー構成の中で本馬は単勝オッズ1.91倍の1番人気に支持された。レースでは兄ビカラの背中を見るように進み、直線で抜け出してそのまま押し切ると思われたが、ゴール直前でカラグロウに捕まって首差の2着に惜敗した(ビカラは5着だった)。
次走のベンソン&ヘッジズ金杯(英GⅠ・T10F110Y)では、ロシェ騎手ではなくパット・エデリー騎手とコンビを組んだ。そして単勝オッズ1.8倍の1番人気に応えて、ロイヤルロッジS勝ち馬ノルウィックを6馬身差の2着に破って逃げ切り圧勝した。
次走のジョーマクグラス記念S(愛GⅠ・T10F)では再びロシェ騎手とコンビを組み、単勝オッズ1.25倍という圧倒的な1番人気に支持された。そして先行して直線で抜け出し、直線半ばでは既に後続馬に8馬身差をつけてしまった。もう全力で走らせる必要も無いと判断したロシェ騎手が抑えたために着差は縮まったが、プリンスオブウェールズS勝ち馬カインドオブハッシュを3馬身差の2着に破って楽勝した。英タイムフォーム社は「駆け足の調教より少し真面目に走った程度でした」とこのレースを評した。
その後は凱旋門賞(仏GⅠ・T2400m)に出走した。ここには半兄ビカラに加えて、ニエル賞を勝ってきたクリテリウムドサンクルー勝ち馬ボンサン、アスコット金杯2回・ロワイヤルオーク賞・ガリニュールS・ヨークシャーC2回・グッドウッドC・ジェフリーフリアS2回などグループ競走13勝の欧州調教馬最多タイ記録を保持していた名長距離馬アルドロス、この年の仏オークス・サンタラリ賞勝ち馬ハーバー、仏オークス・ヴェルメイユ賞など3戦連続2着中のアキーダ、前年のヴェルメイユ賞・ターフクラシックSを勝ち凱旋門賞では3着だったエイプリルラン、モーリスドニュイユ賞・ヴェルメイユ賞を連勝してきたオールアロング、それにリアルシャダイやノーアテンションといった後に日本で種牡馬として活躍する馬達の姿もあった。やや混戦模様だったが、エデリー騎手騎乗の本馬が単勝オッズ3.5倍で1番人気の支持を受けた。しかしレースでは好位で直線に入ってくるも、ここから全く伸びずに、勝ったアキーダから約10馬身差をつけられて屈辱の11着惨敗。仏ダービーで一蹴したリアルシャダイ(5着)にも先着されてしまった。ちなみにビカラは12着であり、兄弟揃って惨敗した。
本馬はこのレースを最後に3歳時8戦5勝の成績で引退した。この年の国際クラシフィケーションは133で、ゴールデンフリースの134に次いで全体の2位。英タイムフォーム社のレーティングでは134ポンドで、ゴールデンフリースの133ポンドを上回る全体の1位タイ(アルドロス、ムーランドロンシャン賞を圧勝した3歳馬グリーンフォレストの2頭と同値)だった。
血統
Be My Guest | Northern Dancer | Nearctic | Nearco | Pharos |
Nogara | ||||
Lady Angela | Hyperion | |||
Sister Sarah | ||||
Natalma | Native Dancer | Polynesian | ||
Geisha | ||||
Almahmoud | Mahmoud | |||
Arbitrator | ||||
What a Treat | Tudor Minstrel | Owen Tudor | Hyperion | |
Mary Tudor | ||||
Sansonnet | Sansovino | |||
Lady Juror | ||||
Rare Treat | Stymie | Equestrian | ||
Stop Watch | ||||
Rare Perfume | Eight Thirty | |||
Fragrance | ||||
Irish Bird | Sea-Bird | Dan Cupid | Native Dancer | Polynesian |
Geisha | ||||
Vixenette | Sickle | |||
Lady Reynard | ||||
Sicalade | Sicambre | Prince Bio | ||
Sif | ||||
Marmelade | Maurepas | |||
Couleur | ||||
Irish Lass | Sayajirao | Nearco | Pharos | |
Nogara | ||||
Rosy Legend | Dark Legend | |||
Rosy Cheeks | ||||
Scollata | Niccolo Dell'Arca | Coronach | ||
Nogara | ||||
Cutaway | Fairway | |||
Schiaparelli |
父ビーマイゲストは当馬の項を参照。
母アイリッシュバードは競走馬としては仏国で走り3戦1勝の成績に終わったが、繁殖牝馬としては非常に優秀で、本馬の半兄ビカラ(父カラムーン)【仏ダービー(仏GⅠ)・ガネー賞(仏GⅠ)】、半妹ユーロバード(父エラマナムー)【愛セントレジャー(愛GⅠ)・ブランドフォードS(愛GⅡ)】も産んでいる。アイリッシュバードの半兄にはアイリッシュボール(父ボールドリック)【愛ダービー(愛GⅠ)・ダリュー賞(仏GⅡ)】がいる。また、アイリッシュバードの半妹ミルプリンセス(父ミルリーフ)は姉に負けず劣らず優秀な繁殖牝馬で、ラストタイクーン【BCマイル(米GⅠ)・キングズスタンドS(英GⅠ)・スプリントCS(英GⅠ)・アランベール賞(仏GⅢ)・サンジョルジュ賞(仏GⅢ)・グロシェーヌ賞(仏GⅢ)】、アストロネフ【メルトン賞(伊GⅡ)・ゴールデネパイチェ(独GⅢ)2回】、ザパーフェクトライフ【ボワ賞(仏GⅢ)】の母となっただけでなく、ヴァレンタインワルツ【仏1000ギニー(仏GⅠ)】、センスオブスタイル【スピナウェイS(米GⅠ)・メイトロンS(米GⅠ)】、タイブラック【仏1000ギニー(仏GⅠ)】、イモータルヴァース【コロネーションS(英GⅠ)・ジャックルマロワ賞(仏GⅠ)】の祖母ともなっている。アイリッシュバードの母アイリッシュラスはミネルヴ賞の勝ち馬で、その半姉にはリンクリス【愛オークス・ヨークシャーオークス・愛セントレジャー】がいる。→牝系:F8号族②
母父シーバードは当馬の項を参照。
競走馬引退後
競走馬を引退した本馬は、2500万ドル(当時の為替レートで約60億円)という巨額のシンジケートが組まれて、米国ケンタッキー州ウインドフィールズファームで種牡馬入りした。種付け料も12万5千ドルと高額に設定されたが、種牡馬としてはこれらの金額に見合うだけの活躍は出来なかった。もっとも金額が高すぎただけであり、平均以上の種牡馬成績は残している。1988年に伊国に輸出され、1995年に16歳で他界した。母父としては日本で活躍したクイーンSの勝ち馬プロモーションを出している。
主な産駒一覧
生年 |
産駒名 |
勝ち鞍 |
1984 |
Timely Assertion |
サンタアニタオークス(米GⅠ)・ラスヴァージネスS(米GⅡ) |
1985 |
Betty Lobelia |
ミスグリオS(米GⅢ)・ニジャナS(米GⅢ) |
1985 |
Nomadic Way |
ワールドハードル(英GⅠ)・愛チャンピオンハードル・シザレウィッチH |
1985 |
Willa on the Move |
アッシュランドS(米GⅠ) |
1986 |
Dancehall |
パリ大賞(仏GⅠ)・ノアイユ賞(仏GⅡ)・オカール賞(仏GⅡ)・コンデ賞(仏GⅢ) |
1987 |
Star Standing |
オーキッドH(米GⅡ) |
1988 |
Asserche |
ローレルターフCS(米GⅢ) |
1988 |
Patricia |
ポモーヌ賞(仏GⅡ)・ランカシャーオークス(英GⅢ)・パークヒルS(英GⅢ) |
1989 |
Square Cut |
サンルイオビスポH(米GⅡ)・ローレルターフCS(米GⅢ) |
1991 |
Rugged Bugger |
ローレルターフCS(米GⅢ) |
1992 |
All My Dreams |
独ダービー(独GⅠ)・オイロパ選手権(独GⅡ) |
1992 |
Lecroix |
ウニオンレネン(独GⅡ) |
1992 |
Running Flame |
ハリウッドターフCS(米GⅠ)・ラクープドメゾンラフィット(仏GⅢ) |
1992 |
Tzar Rodney |
フォルス賞(仏GⅢ)・オールアメリカンH(米GⅢ) |
1993 |
Cymbala |
ビウィッチS(米GⅢ) |