ナタゴラ

和名:ナタゴラ

英名:Natagora

2005年生

芦毛

父:ディヴァインライト

母:レイナミクサ

母父:リナミックス

日本で走り重賞未勝利に終わった父ディヴァインライトに伝統ある英国クラシック競走優勝馬サイアーの名誉を送った孝行娘

競走成績:2・3歳時に仏英香で走り通算成績15戦7勝2着4回

父ディヴァインライトについて

本馬の項目を書き出すには、まずその父の話を書かなければならない。本馬の父ディヴァインライトはサンデーサイレンス産駒で、日本産まれの日本調教馬だった。有限会社社台レースホースの所有馬として走り、現役成績は26戦4勝。2000年の高松宮記念(GⅠ)では直線で一瞬先頭に立つもゴール寸前でキングヘイローに首差差されて2着に惜敗。他にもマイラーズC(GⅡ)・毎日杯(GⅢ)・阪急杯(GⅢ)・東京新聞杯(GⅢ)で2着しており、重賞で2着が合計5回あったが、屈腱炎に悩まされた影響もあって結局重賞勝ちには至らず、勝ち星は新馬戦と条件戦のみだった。

血統的にはサンデーサイレンス×ノーザンテーストという日本における黄金血統(もっとも最初はこの組み合わせからGⅠ競走勝ち馬がなかなか出ず、ネガティヴニックスだという俗説も出たが、そう言われ始めた直後からGⅠ競走勝ち馬が続出している)であり、半姉に中山三歳牝馬S・クイーンCと重賞2勝のカッティングエッジ、従兄弟に皐月賞馬ダイナコスモスがいるという良血も手伝って、重賞未勝利馬ながら社台スタリオンステーション荻伏で種牡馬入りを果たした。

しかし種牡馬としての人気は出ず、種牡馬生活1年目だった2003年の交配数は9頭で、初年度産駒は僅か4頭(血統登録されたのが3頭で、出走したのは2頭、勝ち上がり馬は1頭)だった。そのため種牡馬供用1年で日本を去り、日本で種牡馬入りしながらも不振だった1998年のカルティエ賞年度代表馬ドリームウェルなどと共に新天地を求めて仏国に移動した。

仏国では日本よりは人気を集め、仏国の種牡馬生活1年目である2004年には22頭の繁殖牝馬が集まった。しかし受精率が悪く、仏国における初年度産駒は8頭に留まった。本馬はそんな父の仏国における数少ない初年度産駒の1頭である。

誕生からデビュー前まで

生産者は仏国の馬産家ベルトラン・グアン氏とジョルジュ・ドゥーカ氏の両名だった。1歳10月のアルカナドーヴィルセールに上場されたが、両親共に全くの無名馬だったことから、3万ユーロ(当時の為替レートで約450万円)という安値で、パチック・バルブ氏という人物により購入され、さらにスウェーデン人のステファン・フリボーグ氏に転売された。フリボーグ氏は本馬を、ドリームウェルも管理していた仏国のパスカル・バリー調教師に預けた。

競走生活(2歳時)

2歳5月にサンクルー競馬場で行われたヴァレーオールー賞(T900m)で、ジョニー・ムルタ騎手を鞍上にデビューして、後に本馬の主戦となるクリストフ・ルメール騎手が騎乗するファスレンの1馬身半差2着と、まずまずのスタートを切った。それから18日後にシャンティ競馬場で行われたローム賞(T1100m)ではルメール騎手と初コンビを組み、2着フルリーナに2馬身半差で勝ち上がった。

翌6月にはロンシャン競馬場でリステッド競走ラフレッシュ賞(T1000m)に出走して、単勝オッズ2.5倍の1番人気に支持された。レースでは馬群の中団好位を進むと、残り300m地点で先頭に立って後続を引き離し、2着ジェーンブルーに4馬身差をつけて快勝した。

次走は7月にメゾンラフィット競馬場で行われたボワ賞(仏GⅢ・T1000m)となった。ここではルメール騎手がヴァレーオールー賞で本馬を破ったファスレンに騎乗する先約があったため、本馬にはこの年の仏平地首位騎手となるステファン・パスキエ騎手が代打騎乗した。乗り代わりにも関わらず本馬が単勝オッズ2倍の1番人気に支持され、ファスレンが単勝オッズ4.9倍の2番人気となった。スタートが切られると、単勝オッズ7.8倍の4番人気馬ウィルキが先頭に立ち、本馬も離されないように付いていった。そして残り400m地点でウィルキに並びかけると、ここから2頭の叩き合いが始まった。最後は闘争心で勝った本馬が2着ウィルキに3/4馬身差で勝利を収め、現役時代に重賞勝ちが無かった父ディヴァインライトにグループ競走勝利をプレゼントした。

その後は同月末のロベールパパン賞(仏GⅡ・T1100m)に向かった。本馬が単勝オッズ1.9倍の1番人気で、伊国のGⅢ競走プリミパッシ賞など3戦全勝のマグリットが単勝オッズ5.4倍の2番人気、ノーフォークS2着馬アートアドバイザーが単勝オッズ5.7倍の3番人気、次走のリッチモンドSを勝ち、後にミルリーフSとミドルパークSで2着するストライクザディールが単勝オッズ8.3倍の4番人気となった。スタートが切られると本馬は逃げ戦法に出て、マグリットの圧力を受けながら先頭を守り続けた。残り200m地点でマグリットが本馬に並びかけてきたものの、ここから闘争心を発揮した本馬が3/4馬身差で競り勝った。

次走はモルニ賞(仏GⅠ・T1200m)となった。ここでは前走アングルシーSを7馬身差で圧勝してきた愛国調教の牡馬マイボーイチャーリーが単勝オッズ2.5倍の1番人気に支持され、本馬は単勝オッズ2.75倍の2番人気、カブール賞など3連勝中の牡馬アレクサンドロスが単勝オッズ3.75倍の3番人気、他の出走馬3頭は全て単勝オッズ51倍だった。スタートが切られると、人気薄のフライングブルーが先頭を伺ったが、すぐに本馬がそれをかわして先頭を奪取。マイボーイチャーリーとアレクサンドロスはいずれも後方からレースを進めた。本馬は残り300m地点で仕掛けて押し切ろうとしたが、ここで後方から来たマイボーイチャーリーに並びかけられると、残り200m地点でかわされてしまい、2馬身差をつけられて2着に敗れた(3着アレクサンドロスは半馬身抑え込んだ)。

すると今度は本馬が仏国を飛び出して国外に向かい、英国のチェヴァリーパークS(英GⅠ・T6F)に参戦した。プリンセスマーガレットS勝ち馬でロウザーS2位入線(後に薬物検査に引っ掛かって失格)のビジット、フライングチルダースS・モールコームS勝ち馬でロウザーS3位入線(ビジットの失格により繰り上がって2着)のフリーティングスピリット、クイーンメアリーS勝ち馬でチェリーヒントンS・愛フェニックスS3着のエルテル、後に米国GⅡ競走プロヴィデンシアSを勝つミスイット、ファースオブクライドSを勝ってきたユニラテラルといった有力馬勢が対戦相手となった。プリティポリーS勝ち馬プロミシングリードの半妹で、GⅠ競走勝ち馬5頭の母となったハシリの姪にも当たる良血馬ビジットが単勝オッズ3.75倍の1番人気に支持され、本馬とフリーティングスピリットが並んで単勝オッズ4.5倍の2番人気、エルテルが単勝オッズ7倍の4番人気となった。

スタートが切られると本馬が一目散に先頭を目指して走り出し、フリーティングスピリットも追撃してきた。後方からレースを進めたビジットには伸びが無く、本馬とフリーティングスピリットが争いながらレース終盤に差し掛かった。残り2ハロン地点ではフリーティングスピリットが本馬の横まで迫ってきたのだが、ここで本馬が得意の闘争心を披露してフリーティングスピリットに抜かさせず、首差で勝利。

競走馬としてはGⅠ競走勝利に縁が無かった父ディヴァインライトはこれで種牡馬としてGⅠ競走制覇を成し遂げた事になった。また、管理するバリー師は過去に、イスパーン賞勝ち馬ハイエストオナー、BCターフ勝ち馬ミスアレッジド、仏ダービー・愛ダービー勝ち馬ドリームウェル、イスパーン賞勝ち馬クロコルージュ、仏ダービー馬スラマニ、BCマイル勝ち馬ドームドライヴァーとシックスパーフェクションズ、仏1000ギニー・仏オークス勝ち馬ディヴァインプロポーションズなど多くの名馬を手掛けてきたが、英国のGⅠ競走を勝ったのは意外にもこれが初めてだった。

ちなみに本馬とフリーティングスピリットはこれ以降2度と対戦する機会は無かった。それはフリーティングスピリットが3歳以降に徹底して短距離路線を走ったためであり、4歳時にはジュライCを制するなどの活躍を見せてカルティエ賞最優秀短距離馬に選ばれるまでになっている。

本馬はこの勝利で2歳戦を終了し、この年の成績は7戦5勝2着2回となった。同世代の欧州調教牝馬には、愛フェニックスS・モイグレアスタッドSとGⅠ競走を2勝したサーシャアブーがいたのだが、サーシャアブーの2歳戦成績は8戦3勝2着1回3着3回であり、本馬より安定感で劣っていた。また、同世代である後の凱旋門賞馬ザルカヴァも2歳時にマルセルブサック賞を完勝していたが、この年の成績は2戦2勝に過ぎなかった。そんなわけで、半年間に渡って安定した活躍を続けた本馬がこの年のカルティエ賞最優秀2歳牝馬のタイトルを受賞した。

競走生活(3歳前半)

3歳時は4月にメゾンラフィット競馬場で行われたリステッド競走インプルーデンス賞(T1400m)から始動した。本馬が単勝オッズ1.8倍の1番人気で、ミエスク賞など3連勝中のモダンルックが単勝オッズ3.3倍の2番人気となった。非常に馬場状態が悪い中でスタートが切られるとブルーカイエンが先頭を奪い、本馬は2番手を追走、モダンルックは馬群の中団につけた。残り200m地点で本馬がブルーカイエンをかわして先頭に立ったところに、後方からモダンルックが追い上げてきた。しかし前年よりも落ち着いて走っていた本馬の脚色には余裕があり、2着モダンルックの追撃を1馬身半差で完封して勝利した。

そして再度英国に遠征して英1000ギニー(英GⅠ・T8F)に参戦。対戦相手は、ネルグウィンSを3馬身半差で完勝してきた2戦2勝馬インファリブル、メイヒルSなど2戦2勝のスペーシャス、フレッドダーリンSなど3戦3勝のムタバラ、ロックフェルSの勝ち馬キティマッチャム、パークエキスプレスS2着馬セーブジスダンスフォーミー、カルヴァドス賞2着馬ローレルディーンゲイル、レパーズタウン1000ギニートライアルSで3着してきたサーシャアブー、ロウザーS勝ち馬ナフード、フレッドダーリンS3着馬レディドーヴィル、後のコロネーションS・ヨークシャーオークス・メイトロンS勝ち馬ラッシュラッシーズ、ロックフェルS3着馬ロイヤルコンフィデンスなど14頭だった。

この時期になると本馬の父ディヴァインライトとは何者なのかが欧州競馬関係者の間でもしっかりと調べられており、基本的に短距離馬であった事は既に明らかにされていた(距離2000mの毎日杯2着もあったのだが)から、その娘である本馬に関しても距離不安を指摘する意見が見受けられた。しかしそれでも最終的には単勝オッズ3.75倍の1番人気に支持され、インファリブルが単勝オッズ4.5倍の2番人気、スペーシャスが単勝オッズ6.5倍の3番人気、ムタバラとキティマッチャムが並んで単勝オッズ9倍の4番人気となった。

スタートが切られるとフランチェスカディゴージオが先頭を奪い、本馬やインファリブル、ムタバラ、ローレルディーンゲイルなども先行。スペーシャスやサーシャアブーは馬群の中団につけた。スタートして2ハロンほど走ったところで本馬が先頭に立ち、そのまま内埒沿いに馬群を牽引した。残り2ハロン地点でムタバラが本馬に迫ってきたが、残り1ハロン地点でムタバラは左側によれて失速。代わりにインファリブルが本馬に迫ってきて、さらにはスペーシャスやサーシャアブーも追い上げてきた。しかし残り1ハロン地点からルメール騎手の必死の檄に応えた本馬が二の脚を使って粘り、2着スペーシャスに半馬身差、3着サーシャアブーにもさらに半馬身差をつけて勝利。4着インファリブル、5着ナフードまで上位5頭が1馬身半以内の接戦であり、2歳戦で発揮していた接戦に強い面をここでも存分に発揮した結果となった。

これで本馬は、仏国調教馬としては1992年のハトゥーフ以来16年ぶり史上15頭目の英1000ギニー制覇を果たすと同時に、父ディヴァインライトに伝統の英国クラシック優勝馬の父親という名誉をプレゼントした。

本国に戻ってきた本馬は、仏オークスではなく牡馬相手の仏ダービー(仏GⅠ・T2100m)に挑戦した。仏ダービーを最後に牝馬が勝ったのは1917年のブルメリまで遡らなければならず、本馬は91年ぶりの牝馬による仏ダービー制覇に挑んだのだった。

この年に限って言えば、ザルカヴァがゴルディコヴァを破って勝利した1週間後の仏オークスのほうが結果的にレベルは高かった気もするのだが、それでもこの年の仏ダービーのレベルが例年より低かったわけではなく、コンデ賞・フォルス賞を連勝してきたハイロック、グレフュール賞を勝ってきたプロスペクトウェルズ、4戦全勝で臨んできたヴィジョンデタ、クリテリウム国際・トーマブリョン賞勝ち馬ザウェイユーアー、クリテリウムドサンクルー・ノアイユ賞勝ち馬フルオブゴールド、オカール賞を勝ってきたデモクレート、ギシュ賞など3連勝中のトリンコ、レパーズタウン2000ギニートライアルSを勝ってきたフェイマスネーム、クリテリウム国際2着馬ハローモーニング、オカール賞で2着してきたスターリッシュ、グレフュール賞で3着してきたトロワロア、ロイヤルロッジS・BCジュヴェナイルターフ2着馬スリープウェル、後のパリ大賞勝ち馬モンマルトルなどの牡馬19頭が対戦相手となった。

ハイロックが単勝オッズ3.75倍の1番人気で、紅一点の本馬が単勝オッズ4.5倍の2番人気、ザウェイユーアーが単勝オッズ6倍の3番人気、プロスペクトウェルズが単勝オッズ11倍の4番人気となった。

ルメール騎手が優先騎乗契約を結んでいたJ・ルゲ厩舎所属のハイロックに騎乗したため、本馬にはランフランコ・デットーリ騎手(騎乗予定の馬が脚部不安で急遽回避したため手が空いていた)が騎乗した。スタミナを消耗する重馬場の中でスタートが切られると単勝オッズ151倍の最低人気馬メイウェザーが先頭を奪い、本馬は2番手につけた。しばらくして単勝オッズ51倍の伏兵ブルーブレジルが2番手に上がったため本馬は3番手に下がったが、直線に入ると残り300m地点で先頭を奪い、そのまま押し切ろうとした。しかしゴール前100m地点で、好位から差してきたヴィジョンデタと、後方から追い込んできたフェイマスネームの2頭に相次いでかわされ、勝ったヴィジョンデタから1馬身3/4差の3着に敗れた(ハイロックは本馬から1馬身半差の4着だった)。

しかし勝ったヴィジョンデタは後にガネー賞・プリンスオブウェールズS・香港CとGⅠ競走3勝を上乗せする実力馬であるし、2着のフェイマスネームは後にロイヤルホイップS・愛国際S3回・デズモンドS・アメジストS3回・メルドS3回・ソロナウェイSとグループ競走12勝を上乗せする馬であるから、弱い相手に先着されたわけではなく、17頭の牡馬に先着した本馬はその能力を確かに示したと言えた。

競走生活(3歳後半)

その後はマイル路線を進むことになり、次走は8月のロートシルト賞(仏GⅠ・T1600m)となった。主な対戦相手は、前年の仏1000ギニー・アスタルテ賞・ムーランドロンシャン賞の勝ち馬で、この年はドバイデューティーフリー・イスパーン賞・クイーンアンSと牡馬相手のGⅠ競走で3戦連続2着していたダルジナ、仏1000ギニー2着・仏オークス3着といずれもザルカヴァに敗れたものの前走クロエ賞を完勝してきたゴルディコヴァ、英1000ギニー5着後にファルマスSを勝ってきたナフード、チャートウェルフィリーズS・ウィンザーフォレストSなど3連勝してきたサバナパディーダだった。本馬が単勝オッズ2.75倍の1番人気、ダルジナが単勝オッズ3.75倍の2番人気、ゴルディコヴァが単勝オッズ5倍の3番人気、ナフードが単勝オッズ5.5倍の4番人気となった。ルメール騎手が鞍上に戻ってきた本馬はスタートから速いペースで先頭を飛ばした。しかし残り300m地点でゴルディコヴァとダルジナの2頭に捕まり、勝ったゴルディコヴァから2馬身半差の3着に敗れた。

その2週間後にはジャックルマロワ賞(仏GⅠ・T1600m)に出走。対戦相手は、ジャンプラ賞を勝ってきたタマユズ、イスパーン賞を勝ってきたサージュブルク、グリーナムS・ベット365マイル・ジョンオブゴーントS勝ち馬でサセックスS3着のメジャーカドゥー、エドモンブラン賞・ミュゲ賞・メシドール賞を勝ってきたラシンガー、ポールドムーサック賞を勝ってきたアルカディアズアングルなどだった。

ちょうどこの時期に日本の武豊騎手が、ジャックルマロワ賞が施行されるドーヴィル競馬場に遠征してきていた。武豊騎手は本馬の父ディヴァインライトに2回騎乗経験があり(いずれも1600万下条件戦)、1勝を挙げていた。そうした事もあったのか、本馬には武豊騎手が騎乗する事になり、ルメール騎手はアルカディアズアングルに騎乗した。タマユズが単勝オッズ2.375倍の1番人気、サージュブルクが単勝オッズ3.5倍の2番人気、本馬が単勝オッズ5.5倍の3番人気となった。スタートが切られるとラシンガーが先頭に立ち、タマユズが2番手につけた。本馬は逃げずに馬群の中団に控え、徐々に位置取りを上げていく作戦に出た。そして先に抜け出したタマユズを残り200m地点から追撃したが、届かずに2馬身半差の2着に敗れた。

次走のムーランドロンシャン賞(仏GⅠ・T1600m)ではルメール騎手が鞍上に戻ったが、英2000ギニー・愛2000ギニー・セントジェームズパレスS・サセックスSとマイルGⅠ競走4連勝中のヘンリーザナヴィゲーター、ゴルディコヴァ、前走ロートシルト賞の2着でGⅠ競走4戦連続2着となった前年の覇者ダルジナ、レノックスS・ハンガーフォードSを連勝してきたパコボーイ、前走4着のサージュブルクなど相手が非常に揃い、3連敗中の本馬は単勝オッズ13倍の5番人気まで評価を下げていた。前走で武豊騎手が本馬を控えさせて2着まで持ってきたのを直に目にしていたルメール騎手はそれに倣ったのか、本馬を馬群の中団に位置取らせた。そして6番手で直線に入ると末脚を伸ばしたが、追い込みきれずに、勝ったゴルディコヴァから2馬身1/4差の6位入線(3位入線のパコボーイが薬物検査に引っ掛かって失格となったため5着に繰り上がり)に敗れた。

次走のフォレ賞(仏GⅠ・T1400m)では、パコボーイ、スプリントCを勝ってきたモーリスドギース賞2着のアフリカンローズ、南アフリカのGⅠ競走ケープフィリーズギニーの勝ち馬でパン賞を勝ってきたキャプテンズラヴァー、チップチェイスS勝ち馬ユトモストリスペクトなどが対戦相手となった。パコボーイが単勝オッズ2.5倍の1番人気、アフリカンローズが単勝オッズ3.8倍の2番人気、本馬が単勝オッズ6.3倍の3番人気となった。スタートが切られると単勝オッズ39倍の最低人気馬ダフが先頭に立ち、本馬は2番手を追走した。そして直線に入ると残り400m地点で先頭に立ったのだが、直線入り口7番手だったパコボーイに残り200m地点で一気にかわされ、3馬身差の2着に敗れた。

その後は来日してスワンSやマイルCSに出走する話もあったが結局実現せず、年末の香港マイル(香GⅠ・T1600m)に向かった。対戦相手は、スチュワーズC・チェアマンズトロフィーの勝ち馬で、この年の安田記念でウオッカの2着だったアルマダ、前年の香港マイルとこの年のチャンピオンズマイルなどを勝っていたグッドババ、香港国際マイルトライアルを勝ってきたエジプシャンラ、前年のBCマイルを筆頭にフランクEキルローマイルH・メイカーズマークマイルS2回を勝っていたキップデヴィル、前年のチャンピオンズマイル勝ち馬エイブルワン、それに日本から遠征してきたスワンS・京王杯スプリングC・毎日王冠勝ち馬でマイルCS2年連続2着のスーパーホーネットなどだった。ルメール騎手騎乗の本馬は単勝オッズ15倍の6番人気だった。レースでは先行して2番手で直線に入るもすぐに失速して、勝ったグッドババから8馬身3/4差の11着と惨敗。3歳時の成績は8戦2勝となった。

当初は4歳時も現役続行の予定だったが、1月にドバイのシェイク・モハメド殿下に購入されて繁殖入りすることが決定したため、そのまま現役引退となった。

血統

ディヴァインライト JPN サンデーサイレンス Halo Hail to Reason Turn-to
Nothirdchance
Cosmah Cosmic Bomb
Almahmoud
Wishing Well Understanding Promised Land
Pretty Ways
Mountain Flower Montparnasse
Edelweiss
メルドスポート JPN ノーザンテースト Northern Dancer Nearctic
Natalma
Lady Victoria Victoria Park
Lady Angela
シャダイプリマ JPN マリーノ Worden
Buena Vista
ナイトアンドデイ JPN ラティフィケイション
ナイトライト
Reinamixa Linamix メンデス ベリファ Lyphard
Belga
Miss Carina Caro
Miss Pia
Lunadix Breton Relko
La Melba
Lutine Alcide
Mona
Reine Margie Margouillat ダイアトム Sicambre
Dictaway
Tita Tim Tam
Always Sunny
Reine des Sables ミンシオ Relic
Merise
Begrolles Fairey Fulmar
Sena

父ディヴァインライトが仏国で種牡馬入りするまでの経緯は前述のとおり。2007年までは仏国で種牡馬生活を送っていたが、本馬がカルティエ賞最優秀2歳牝馬に選ばれた直後にトルコジョッキークラブに購入され、翌2008年からトルコの国立牧場カラカベイペンションスタッドで新たな種牡馬生活をスタートした。ディヴァインライトがトルコに移った後に本馬が英1000ギニーを勝ったため、仏国馬産界からは流出を嘆く意見も出た。もっとも、トルコは馬産数こそ多くはないが、ヴィクトリーギャロップマニラ、シーヒーロー、ストライクザゴールドなど米国の名馬が当時多数繋養されており、ディヴァインライトも欧州で結果を出したことで注目されたわけである。ディヴァインライトはトルコで人気種牡馬となり、トルコダービー馬ディヴァインハートを出し、トルコの種牡馬ランキングで上位に入るなど実績も残した。2014年にトルコのアダナセイハン交配場に移動したが、同年5月に小腸腫瘍のため19歳で他界した。

母レイナミクサは現役成績5戦1勝。レイナミクサの従姉妹には1988年の仏オークス馬レスレスカラがいるが、それほど近親に活躍馬がいるわけではない。ジャパンCなどGⅠ競走8勝を挙げた名馬ファルブラヴは同じ牝系だが、レイナミクサの祖母の従姉妹の孫であるから、近親と言うには遠い。レイナミクサの産駒は本馬の活躍を受けて高額で売れるようになり、本馬の半妹バイラモレナ(父アグネスカミカゼ)は、姉が安く買われたアルカナドーヴィルセールにおける新記録となる33万ユーロ(当時の為替レートで5400万円)で、本馬の馬主フリボーグ氏に落札されている(ただし活躍したという話は聞かない)。→牝系:F4号族②

母父リナミックスは当馬の項を参照。

競走馬引退後

競走馬を引退した本馬はモハメド殿下所有のもと、主に英国で繁殖生活を送っている。現時点では特筆できる成績を挙げた産駒は出ていない。

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