ミスアレッジド

和名:ミスアレッジド

英名:Miss Alleged

1987年生

鹿毛

父:アレッジド

母:ミステュスキュラム

母父:ボールドネシアン

仏国ではそれほど目立たなかったが遠征先の米国でBCターフを勝利し、さらにハリウッドターフCも勝利してエクリプス賞最優秀芝牝馬を受賞する

競走成績:3~5歳時に仏米で走り通算成績15戦5勝2着4回3着3回

誕生からデビュー前まで

米国ケンタッキー州において、カール・M・フリーマン氏により生産された。1歳時のキーンランド7月セールに出品され、レバノンの実業家イサム・マイケル・ファレス氏により25万ドルで購入され、ファレスファームズの名義として仏国パスカル・バリー調教師に預けられた。父アレッジドという重厚な血統が影響したのか、陣営は本馬をマイル以下の競走には出さずに当初から徹底して2000m以上の長距離路線を進ませることにしていたようである。

競走生活(3歳時)

デビューはかなり遅くなり、3歳5月にロンシャン競馬場で行われたセレサンクルー賞(T2200m)だった。主戦となるエリック・ルグリ騎手を鞍上に、後に米国に移籍してタイダルH・ガルフストリームパークBCターフSとGⅡ競走を2勝するパサジェールデュソワールを2馬身差の2着に抑えて勝利した。それから12日後にはロワイヨモン賞(仏GⅢ・T2100m)に出走した。ここでは、後のプシシェ賞の勝ち馬ヴュカヴァリエール、後のフィユドレール賞の勝ち馬サヴルーズレディ、本馬と同じアレッジド産駒のアリアージュの3頭が対戦相手となった。ルグリ騎手がヴュカヴァリエールに騎乗したために本馬はドミニク・ブフ騎手とコンビを組んだ。そして直線入り口最後方から追い込んで、2着ヴュカヴァリエールに1馬身差で勝利した。

その気になればロワイヨモン賞と同コースで実施される2週間後の仏オークスに出る事も出来たはずだが、陣営は自重して、ロワイヨモン賞から4週間後のマルレ賞(仏GⅡ・T2400m)に本馬を向かわせた。伊オークスで2着してきたルビータイガー(後のEPテイラーS・プリティポリーS・ナッソーS2回などの勝ち馬)、後のポモーヌ賞の勝ち馬ホワイトヘヴンなど3頭が対戦相手となった。ルグリ騎手が鞍上に戻った本馬は、逃げるホワイトヘヴンを追って2番手を走り、残り200m地点で先頭に立つと、2着ホワイトヘヴンに2馬身差で楽勝した。

夏場は休養に充て、秋は9月のヴェルメイユ賞(仏GⅠ・T2400m)に直行した。このレースには、英1000ギニー・英オークス・マルセルブサック賞といった牝馬限定GⅠ競走だけでなく、牡馬相手の愛ダービーも勝利してきた5連勝中のサルサビルという、同世代の中では牡馬を含めても最強と思われる馬が出走してきて、単勝オッズ1.4倍という圧倒的な1番人気に支持されていた。他にも、愛1000ギニー・英国際S・ムシドラSの勝ち馬インザグルーヴ、ミネルヴ賞の勝ち馬でヨークシャーオークス3着のワジド(英セントレジャー馬ネダウィの母)、サンタラリ賞・ペネロープ賞の勝ち馬で仏オークス3着のエアデリーン、プシシェ賞を勝ってきたヴュカヴァリエールなどの姿もあり、本馬が出走してきたレースの中では最もレベルが高かった。それでも本馬は単勝オッズ8.8倍の4番人気とそれなりの評価を受け、単勝オッズ10倍の5番人気だったインザグルーヴより上位人気だった。

ロワイヨモン賞と同じく今回もルグリ騎手はヴュカヴァリエールに騎乗(おそらく専属契約の関係だと思われる)したため、本馬にはブフ騎手が騎乗した。レースでは好位を進んだサルサビルが直線で堂々と抜け出したが、直線入り口で後方2番手だった本馬が、インザグルーヴなどと共に猛然と追い上げていった。英ダービー馬クエストフォーフェイムや後のキングジョージⅥ世&クイーンエリザベスDSの勝ち馬ベルメッツを愛ダービーで捻り潰したサルサビルに肉薄したが、さすがにサルサビルは強くゴール前で粘りを発揮。本馬は首差届かずに2着に惜敗した。

予定ではそのまま凱旋門賞に向かうはずだったのだが、ヴェルメイユ賞の後に脚首を痛めて手術を受けることになったため、凱旋門賞には出走せずに、3歳時を4戦3勝の成績で終えた。

競走生活(4歳中期まで)

復帰したのは4歳5月のジャンドショードネイ賞(仏GⅡ・T2400m)だった。前走のガネー賞で2着してきたコンセイユドパリ賞の勝ち馬パッシングセール(後の伊ジョッキークラブ大賞の勝ち馬)、同3着だったディアドクター(後のアーリントンミリオンの勝ち馬)、エドヴィル賞を勝ってきたグロリファイといった辺りが強敵だった。パッシングセールが単勝オッズ2.1倍の1番人気、本馬が単勝オッズ3.1倍の2番人気、ディアドクターが単勝オッズ3.4倍の3番人気となった。レースではパッシングセールが先行して、本馬は好位を追走した。そして残り300m地点で仕掛けたのだが、休養明けのためか反応が悪く、後方から来たディアドクターに瞬く間に差された。パッシングセールを捕らえる事にも失敗した本馬は、勝ったディアドクターから4馬身差の3着に敗れた。

次走はエヴリ大賞(仏GⅡ・T2400m)となった。ここには、リュパン賞・グレフュール賞・ニエル賞の勝ち馬で、仏ダービー・凱旋門賞でも惜しい2着だったエペルヴィエブルーがシーズン初戦として出走してきて、単勝オッズ1.1倍という圧倒的な1番人気に支持されていた。本馬が対抗馬として単勝オッズ5.9倍の2番人気、ヴェルメイユ賞で4着だったワジドが単勝オッズ10.7倍の3番人気となった。しかし勝ったのはワジドであり、エペルヴィエブルーは2馬身差の2着、本馬はさらに1馬身半差の3着に敗れた。

さらにサンクルー大賞(仏GⅠ・T2400m)に参戦。エペルヴィエブルー、ワジド、ジャンドショードネイ賞2着から直行してきたパッシングセール、リングフィールドダービートライアルS・ジョンポーターS・ジョッキークラブS・ハードウィックSの勝ち馬でコロネーションC3着のロックホッパー、アルクール賞の勝ち馬パノラミック(ジャイアンツコーズウェイの伯父)、エスペランス賞・ヴィコンテスヴィジェ賞2回を勝ってきたテュルジュオン(後に愛セントレジャーやロワイヤルオーク賞などに勝利して初代のカルティエ賞最優秀長距離馬に選出)などが出走してきた。このメンバー構成では本馬はさすがに人気を落とし、単勝オッズ14倍の5番人気だった。レースでは馬群の中団やや後方につけて直線の末脚に賭けた。それなりには追い上げては来たものの、突き抜けるほどの脚は無く、勝ったエペルヴィエブルーから4馬身3/4差の4着に敗れた。

前年と同様に夏場は休養に充て、秋はプランスドランジュ賞(仏GⅢ・T2400m)から始動した。サンクルー大賞で3着だったパッシングセール、リュパン賞の勝ち馬クダス、ギョームドルナノ賞を勝ってきたグリティなど4頭が対戦相手となった。ここでも馬群の中団後方を追走し、直線に入ると残り300m地点で仕掛けて一気に先頭に立った。そしてそのまま押し切るかと思われたが、いったんは本馬に抜かれたパッシングセールが再び伸びてきて、首差かわされて2着に落ちたところがゴールだった。

それでも悲観するような内容ではなく、次走は前年に出走できなかった凱旋門賞(仏GⅠ・T2400m)となった。対戦相手は、英ダービー・愛ダービー・キングジョージⅥ世クイーンエリザベスDS・デューハーストSの勝ち馬ジェネラス、仏ダービー・愛チャンピオンS・グレフュール賞の勝ち馬でリュパン賞・愛ダービー2着のスワーヴダンサー、クリテリウムドサンクルー・ノアイユ賞・オカール賞・コンデ賞の勝ち馬ピストレブルー、英セントレジャー・ミラノ大賞・ドーヴィル大賞の勝ち馬でクリテリウムドサンクルー1位入線2着降着・前年の凱旋門賞3着のスナージ、この年の英セントレジャー・モーリスドニュイユ賞・チェスターヴァーズの勝ち馬トゥーロン、前年の英ダービー馬で英国際S2着のクエストフォーフェイム、ヴェルメイユ賞・マルレ賞・オマール賞の勝ち馬で仏オークス2着のマジックナイト、イタリア大賞・サンロマン賞の勝ち馬でクリテリウムドサンクルー2着のピジョンヴォワヤジュール、前年のヴェルメイユ賞3着後に英チャンピオンS・コロネーションC・トラストハウスフォルテマイルを勝っていたインザグルーヴ、この年の英オークス馬で愛オークス・ヨークシャーオークス2着のジェットスキーレディ、ハイアリアターフカップH・ボーリンググリーンH・ソードダンサーH2回とGⅠ競走で4勝を挙げてロスマンズ国際S・ターフクラシックSでも2着していた米国調教馬エルセニョールなどだった。かなり豪華なメンバー構成であり、本馬が単勝オッズ44倍の11番人気になってしまうのは致し方なかった。スタートが切られるとラクープの勝ち馬アートブルーが先頭に立ち、ジェネラスなどがそれを追って先行。本馬は馬群の好位6番手につけていた。そのままの態勢で直線に入ってきたのだが、この年の凱旋門賞は先行した1番人気のジェネラスが馬群に沈んだようにペースが速く、後方の馬が有利な展開になった。本馬も直線では馬群の中で伸びを欠いてどんどん順位を落とし、勝ったスワーヴダンサーから12馬身差の11着と大敗してしまった。

競走生活(4歳後期)

凱旋門賞から僅か13日後、本馬の姿は米国ローレルパーク競馬場にあった。目的はバドワイザー国際S(米GⅠ・T12F)に出走するためだった。バリー師だけでなくルグリ騎手も仏国から同行してきた。このレースには、亜国でドスミルギネアス大賞・亜ジョッキークラブ大賞・カルロスペレグリーニ大賞とGⅠ競走3勝を挙げた後に米国に移籍してアーリントンミリオンで2着していたアルゲニブ、マンノウォーS・ターフクラシック招待SとGⅠ競走を2連勝してきたヒルプリンスS・レキシントンS・サラトガバドワイザーBCHの勝ち馬ソーラースプレンダー、アーリントンミリオン・ニエル賞・ジョンヘンリーHの勝ち馬で次走のジャパンCを勝つゴールデンフェザント、独国のGⅡ競走ユーロCを勝ってきたグーファリク、米国調教馬でありながらこの年の愛2000ギニー・ピリグリムSを勝っていたフォースターズオールスター、伊国のGⅡ競走グイドベラルデリ賞の勝ち馬フォーチュンズホイール、マーヴィンルロイHの勝ち馬スーパーメイ、エクスビュリ賞・アスタルテ賞を勝ってきたリアリヴァなどが出走しており、凱旋門賞ほどではないにしてもハイレベルなメンバー構成となった。アルゲニブとソーラースプレンダーが並んで単勝オッズ5倍の1番人気に支持される一方で、本馬は単勝オッズ12倍の6番人気だった。

レースでは、ソーラースプレンダーが2番手を先行、アルゲニブは馬群の中団後方と、1番人気の2頭が対照的な位置取りとなった。本馬は最初4番手の好位につけていたのだが、徐々に位置取りが下がり、後方から数えたほうが早い順位になった。それでも四角で再び位置取りを上げると、直線入り口7番手から追い込む構えを見せた。しかしゴール前では失速してしまい、4馬身1/4差の5着に敗退。勝ったのは13頭立ての12番手で序盤はひたすら我慢し、三角から四角にかけて猛然と駆け上がってその勢いのまま直線で突き抜けた単勝オッズ45.3倍の11番人気馬リアリヴァだった。

その後はすぐさまケンタッキー州チャーチルダウンズ競馬場に飛び、BCターフ(米GⅠ・T12F)に挑戦した。対戦相手は、凱旋門賞で3着だったピストレブルー、同5着だったピジョンヴォワヤジュール、同6着だったインザグルーヴ、同7着だったクエストフォーフェイム、同9着だったエルセニョール、ロスマンズ国際S・キングエドワード金杯など6連勝で臨んできた加国調教馬スカイクラシック、前年のBCマイルで人気薄を覆して2着に入ると立て続けにハリウッドダービー・ハリウッドターフCとGⅠ競走を連勝してエクリプス賞最優秀芝牡馬の座を射止めていたエルクホーンS・ウィルロジャーズS・アスコットH・キーンランドBCSの勝ち馬でハリウッドターフH2着のイッツオールグリークトゥミー、ガネー賞・ダルマイヤー大賞・ナッソーS・サンチャリオットSの勝ち馬でヨークシャーオークス2着・アーリントンミリオン3着のカルタジャナ、オークツリー招待H・アーリントンHを勝ってきたフィラゴ、ジャンドショードネイ賞で本馬を破って勝った後にマンノウォーS・ターフクラシック招待Sで連続2着していたディアドクター、英セントレジャーで2着してきたキングエドワードⅦ世Sの勝ち馬サドラーズホール、ロワイヤリュー賞を勝ってきたサガネカ(凱旋門賞馬サガミックスの母)の計12頭だった。

デビューから1度も着外が無かったピストレブルーが単勝オッズ3.8倍の1番人気、スカイクラシックが単勝オッズ4.3倍の2番人気、イッツオールグリークトゥミーが単勝オッズ5.7倍の3番人気、カルタジャナが単勝オッズ7.9倍の4番人気、インザグルーヴが単勝オッズ8.5倍の5番人気と続く一方で、本馬は単勝オッズ43.1倍の10番人気だった。

スタートが切られるとスカイクラシックが先頭に立ち、イッツオールグリークトゥミー、ピストレブルー、クエストフォーフェイムなどがそれを追って先行。本馬はそれら有力馬勢を見るように5~6番手の好位につけていた。そのままの態勢で直線に入ると、スカイクラシックが少しずつ後退し、ピストレブルーも今ひとつ伸びを欠く中、イッツオールグリークトゥミーが抜け出し、クエストフォーフェイムがそれを追撃。さらに外側からは本馬もやって来た。そして残り半ハロン地点から強烈な末脚を繰り出した本馬が、クエストフォーフェイムを一気にかわしてイッツオールグリークトゥミーに接近。そしてゴール直前でかわして半馬身差で勝利した。

BCターフを牝馬が勝ったのは、1985年のペブルス以来6年ぶり史上2頭目だった。しかしレース直後に実況が「今年のブリーダーズカップはこれも番狂わせでした!」と叫んだとおりに、BCスプリントは単勝オッズ27.3倍の9番人気馬シェイクアルバドゥが、BCマイルは単勝オッズ27.7倍の10番人気馬オープニングヴァースが勝っていた上に、BCターフの直前に実施されたBCジュヴェナイル(第6競走。BCターフが第7競走)でアラジが凄まじい勝ち方をしていたため、本馬の勝利は目立たないものとなってしまったらしい。もっとも、BCターフを牝馬が勝った例はかなり珍しく、本馬以降には2015年のファウンドまで24年間無かった。1999年にBCフィリー&メアターフが創設されてからは牝馬がBCターフに出る事自体が少なくなったのも無縁ではないだろう。

この勝利がきっかけで、本馬はそのまま米国で走る事になり、サンデーサイレンス等の調教師として知られるチャールズ・ウィッティンガム師の管理馬となり、ウィッティンガム師の本拠地である米国西海岸に飛んだ。そしてBCターフから6週間後の12月中旬にハリウッドターフC(米GⅠ・T12F)に出走した。鞍上は転厩後の主戦を務める事になるクリス・マッキャロン騎手だった。主な対戦相手は、イッツオールグリークトゥミー、前走で本馬から2馬身半差の3着だったクエストフォーフェイムのBCターフ上位組と、ハリウッドダービー・デルマー招待ダービーを勝ってきたエタニティスターなどだった。イッツオールグリークトゥミーが単勝オッズ2.4倍の1番人気、本馬が単勝オッズ3.9倍の2番人気、エタニティスターが単勝オッズ4.5倍の3番人気、クエストフォーフェイムが単勝オッズ5倍の4番人気で、他馬は全て人気薄だった。

スタートが切られると、エタニティスターが先頭に立ち、イッツオールグリークトゥミーが3番手、本馬は後方2番手、クエストフォーフェイムが最後方の位置取りとなった。その中で真っ先に動いたのは本馬であり、向こう正面で外側を通ってイッツオールグリークトゥミーの隣まで進出してきた。そしてエタニティスターが先頭、本馬が2番手で、四角を回って直線へと突入。エタニティスターは直線半ばで伸びを欠き、代わりに本馬が残り半ハロン地点で先頭に立った。そこへ後方から来たのはやはりイッツオールグリークトゥミーとクエストフォーフェイムの2頭だった。特にイッツオールグリークトゥミーの脚色が良く、本馬との差は徐々に縮まったが、本馬が頭差堪えて勝利を収めた。

4歳時の成績は8戦2勝だったが、シーズン最後のGⅠ競走2連勝が評価されて、この年のエクリプス賞最優秀芝牝馬を受賞した。

競走生活(5歳時)

5歳時は2月のサンルイオビスポH(米GⅢ・T12F)から始動した。主な対戦相手は、ハリウッドターフCで本馬から1馬身1/4差の3着だったクエストフォーフェイム、欧州でガリニュールS・セレクトSを勝った後に米国に移籍してオークツリー招待Sで2着していたミッショナリーリッジ、前々走ベイメドウズHの勝ち馬フレンチセブンティファイブ、スイスのGⅠ競走スイスダービーを勝った後に米国に移籍してデルマー招待Hを勝っていたマイスタイルなどだった。実績では本馬とクエストフォーフェイムが抜けており、この2頭が他馬勢より5~9ポンド重い121ポンドの斤量となったが、性別を考慮すると本馬が単独トップハンデだった。それでも本馬が単勝オッズ2.3倍の1番人気に支持され、クエストフォーフェイムが単勝オッズ3.7倍の2番人気、116ポンドのミッショナリーリッジが単勝オッズ5.8倍の3番人気、116ポンドのフレンチセブンティファイブが単勝オッズ8.8倍の4番人気となった。スタートが切られるとミッショナリーリッジが先頭に立ち、クエストフォーフェイムが好位、本馬は馬群の中団につけた。三角から四角にかけてクエストフォーフェイムはスムーズに上がっていき、直線入り口で先頭に立った。一方の本馬は三角から四角にかけての手応えが明らかに悪く、5番手で直線を向くことになった。そして直線でも今ひとつ伸びず、クエストフォーフェイムとクールゴールドムードの2頭に後れを取り、勝ったクエストフォーフェイムから3馬身差の3着に敗れた。

その後は4月のサンタバーバラH(米GⅠ・T10F)に向かった。本馬にとってはヴェルメイユ賞以来久々の牝馬限定競走ではあったが、ハンデ競走だけに、それほど楽なレースにはなりそうになかった。対戦相手は、イエローリボンS・ラスパルマスH・デズモンドSの勝ち馬で愛チャンピオンS3着のコストローマ、前年のサンタラリ賞2着馬で米国に移籍して一般競走を2連勝してきたポレミック、カウンテスファーガーHの勝ち馬でメイトリアークS3着のフリーアットラスト(BCマイルの勝ち馬バラシアの半姉)、オペラ賞・ノネット賞・ミュゲ賞の勝ち馬でビヴァリーDS・サンタマリアH2着のカラーチャート、カリフォルニアジョッキークラブH・ブエナビスタHの勝ち馬で前走サンタアナH2着のアピーリングミッシーだった。121ポンドのコストローマが単勝オッズ2.6倍の1番人気、124ポンドの本馬が単勝オッズ2.9倍の2番人気、117ポンドのポレミックが単勝オッズ4.5倍の3番人気、117ポンドのフリーアットラストが単勝オッズ8.8倍の4番人気となった。レースはフリーアットラストが先頭を引っ張り、本馬は最後方から進む展開となった。出走頭数が少ないために馬群は比較的密集しており、直線入り口では全馬が一団となった。ここから抜け出したのはコストローマであり、本馬がそれを追いかけたが、最後まで届かずに1馬身1/4差の2着に敗れた。

次走は3週間後のサンフアンカピストラーノH(米GⅠ・T14F)となった。対戦相手は8頭いたが、強敵と言えるのは、エディリードH・バドワイザー国際H・サンルイレイS・サイテーションH・サンマルコスH・アーケイディアHの勝ち馬フライティルドーンのみだった。118ポンドの本馬が単勝オッズ2.2倍の1番人気、121ポンドのフライティルドーンが単勝オッズ2.9倍の2番人気で、他馬は全て単勝オッズ10倍以上だった。スタートが切られるとフライティルドーンが先頭に立ち、本馬は馬群の中団につけた。しかし四角からフライティルドーンが再加速して後続を引き離しにかかると、本馬はそれに付いていくことが出来なかった。ゴール前では何とか2番手に上がったものの、勝ったフライティルドーンからは7馬身差をつけられて完敗した。このレースを最後に、5歳時3戦未勝利の成績で競走馬を引退した。

血統

Alleged Hoist the Flag Tom Rolfe Ribot Tenerani
Romanella
Pocahontas Roman
How
Wavy Navy War Admiral Man o'War
Brushup
Triomphe Tourbillon
Melibee
Princess Pout Prince John Princequillo Prince Rose
Cosquilla
Not Afraid Count Fleet
Banish Fear
Determined Lady Determine Alibhai
Koubis
Tumbling War Admiral
Up the Hill
Miss Tusculum Boldnesian Bold Ruler Nasrullah Nearco
Mumtaz Begum
Miss Disco Discovery
Outdone
Alanesian Polynesian Unbreakable
Black Polly
Alablue Blue Larkspur
Double Time
Sailor Town Sailor Eight Thirty Pilate
Dinner Time
Flota Jack High
Armada
Dashing Relic War Relic
Bridal Colors
Cute Trick Cantankerous
Trig

アレッジドは当馬の項を参照。

母ミステュスキュラムは不出走馬。本馬の半姉アークティックデブ(父ノーザリー)の子にキャプテンヴァリッド【ハリウッドジュヴェナイルCSS(米GⅡ)】が、半姉フェイトフルディシジョン(父レイズアネイティヴ)の曾孫にフォートバード【パラナ大賞(伯GⅠ)】が、半妹マリアムミー(父バーベイタム)の孫にゼベディー【フライングチルダースS(英GⅡ)】がいるなど近親には何頭か活躍馬がいるが、GⅠ競走の勝ち馬が次々に出るような優れた牝系ではない。→牝系:F5号族③

母父ボールドネシアンはシアトルスルーの項を参照。

競走馬引退後

競走馬を引退した本馬は、最初はケンタッキー州ファレスファームで繁殖入りしたが、後にファレス氏が所有する仏国マンヌヴィユ牧場に移動した。ダンチヒとの間に産んだ初子の牡駒ジョシュアダンサーは1995年のキーンランド7月セールにおいて当該セリの最高額となる95万ドルで落札されるなど、当初の産駒評価は高かった。しかし本馬の産駒は殆ど活躍出来なかった。全部で13頭の子を産んだものの、勝ち上がった馬は僅か2頭。ゴーンウエストとの間に産んだ4番子の牝駒ズゴルタがティベールヴィユ賞を勝ったのが、産駒唯一のステークス競走の勝ちだった。前述のジョシュアダンサーは3戦未勝利に終わってしまった。しかしジョシュアダンサーは血統が評価されて南アフリカで種牡馬入りして、複数のGⅠ競走の勝ち馬を出している。本馬は2008年にミエスクズサン牝駒のトライナイテを産んだ直後に子宮破裂を起こしたため、21歳で安楽死の措置が執られた。本馬の牝駒は5頭おり、そのうちトライナイテを除く4頭が繁殖入りしているが、いずれも成功していない。

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