シェイクアルバドゥ

和名:シェイクアルバドゥ

英名:Sheikh Albadou

1988年生

鹿毛

父:グリーンデザート

母:サンクタリー

母父:ウェルシュページェント

人気薄ながら欧州調教馬として史上唯一のBCスプリント制覇を果たし初代のカルティエ賞最優秀短距離馬に選ばれたた芝ダート不問の名短距離馬

競走成績:2~4歳時に英仏米で走り通算成績15戦6勝2着4回3着1回

誕生からデビュー前まで

英国ハイクレアスタッドで生産され、ヒラル・サレム氏の所有馬となり、英国アレクサンダー・アーチボルド・スコット師に預けられた。スコット師は既に名短距離馬カドゥージェネルーを手掛けていた人物で、後にラムタラの最初の管理調教師となるもラムタラの大成を見ることなく厩務員に射殺されるという悲劇的な運命を辿ることになる。

競走生活(2・3歳時)

2歳10月にニューマーケット競馬場で行われた芝6ハロンの未勝利ステークスで、主戦となるパット・エデリー騎手を鞍上にデビューした。単勝オッズ6.5倍で11頭立て2番人気の評価を受けたが、スタートで出遅れて残り4ハロン地点で早くも仕掛けて残り1ハロン地点で失速するという酷い内容で、勝った単勝オッズ10倍の5番人気馬チマヨから7馬身差をつけられた8着と惨敗。2歳時の出走はこれだけだった。

半年間の休養を経て、3歳4月にポンテフラクト競馬場で行われた芝6ハロンの未勝利ステークスに出走した。ここではB・レイモンド騎手とコンビを組み、単勝オッズ2.625倍の1番人気に支持された。今回はスタートから先行して残り1ハロン地点で先頭に立つと、瞬く間に後続馬をちぎり捨て、2着アールマティに7馬身差をつけて圧勝した。

その後はヨーク競馬場に向かい、5月のノーウエストホルストトロフィーH(T7F)に出走。エデリー騎手を鞍上に、単勝オッズ3.75倍の1番人気に支持された。レースでは馬群の中団につけると、残り2ハロン地点でスパートを開始。残り1ハロン地点で先頭のロクトンノースに並びかけたが、本馬より14ポンド斤量が軽いロクトンノースがここから粘りを見せ、最後までかわせなかった本馬は短頭差の2着に敗れた。

そのままヨーク競馬場に留まり、翌6月のゴールデンスパーズトロフィーH(T7F)に出走した。斤量は前走の127ポンドから2ポンド増えて129ポンドとなっていたが、それでも単勝オッズ3.25倍の1番人気に支持された。今回は逃げ馬を積極的に追いかける先行策を採り、残り2ハロン地点で先頭に立つと、2着アドウィックパークに4馬身差をつけて快勝した。

この勝ち方に手応えを得たのか、その2週間後にはニューマーケット競馬場でクリテリオンS(英GⅢ・T7F)に出走した。前走のクイーンアンSで2着してきたラミという有力馬が出走してきたが、ラミより9ポンド斤量が軽い本馬が単勝オッズ2.5倍の1番人気に支持され、ラミが単勝オッズ3.5倍の2番人気となった。レースでは馬群の中団に控えて残り2ハロン地点でスパートを開始するという作戦を採ったが、残り1ハロン地点からの伸びが悪く、勝った単勝オッズ11倍の3番人気馬ラグランジュミュージックから2馬身3/4差の4着に敗れた。

この敗戦にも関わらず、スコット師は本馬の次走としてナンソープS(英GⅠ・T5F)を選択した。グロシェーヌ賞・アランベール賞・リゾランジ賞の勝ち馬でロベールパパン賞・モルニ賞2着・チェヴァリーパークS・クリテリウムドメゾンラフィット3着の3歳牝馬ディヴァインダンス、テンプルS・キングズスタンドS・パレスハウスSと3連勝した後に出走した前走ジュライCで3着だったエルビオ、グループ競走未勝利ながらもデビューから6戦5勝の成績を挙げていたノーフォークS2着の2歳馬パリスハウス、キングジョージSを勝ってきたタイトルロールなどが主な対戦相手となった。ディヴァインダンスが単勝オッズ3倍の1番人気、エルビオが単勝オッズ3.75倍の2番人気、本馬が単勝オッズ7倍の3番人気となった。

距離が短いために全馬がスタートから全力で飛ばし、本馬も遅れずに付いていった。スタート後1ハロン半ほど走ったところで2歳馬ゆえに斤量108ポンドと恵まれていたパリスハウスが先頭に立った。そしてそのままパリスハウスが先頭をひた走ったが、残り1ハロン地点で斤量129ポンドの本馬がインコースから差してきた。そしてパリスハウスを抜き去ると、最後は1馬身半差をつけて勝利した。

次走のスプリントC(英GⅠ・T6F)では、対戦相手の数こそ前走の8頭から5頭まで減少したが、レベルは下がっていなかった。英1000ギニー・マルセルブサック賞・フレッドダーリンSの勝ち馬でコロネーションS・サセックスS2着・英オークス3着のシャダイード、英2000ギニー馬ミスティコ、ロッキンジSの勝ち馬ポーラーファルコンなどが出走してきた。シャダイードが単勝オッズ2.625倍の1番人気、今回はレイモンド騎手が騎乗する本馬が単勝オッズ3.25倍の2番人気、ミスティコが単勝オッズ5.5倍の3番人気、ポーラーファルコンが単勝オッズ7.5倍の4番人気となった。

スタートが切られると本馬が先頭を伺ったが、単勝オッズ21倍の5番人気馬シャルフォードが強引に先頭を奪い、シャダイードなどがそれを追いかけていった。残り2ハロン地点で本馬が先頭に立ってそのまま押し切ろうとしたが、道中は後方で機会をうかがっていたポーラーファルコンが差してきて、残り1ハロン地点で一瞬にして本馬を抜き去った。本馬は3着シャダイードには3馬身半差をつけたものの、勝ったポーラーファルコンから1馬身半差をつけられて2着に敗れた。

その後は渡仏して、アベイドロンシャン賞(仏GⅠ・T1000m)に出走した。ナンソープS2着後にフライングチルダースSを勝ってきたパリスハウス、ナンソープS4着後にセーネワーズ賞を勝ってきたディヴァインダンス、ノーフォークSを勝ってきた2歳馬マジックリング、愛1000ギニー・コロネーションSを勝った名牝ケイティーズの初子に当たるその名もケイティーズファースト(ヒシアマゾンの半姉)、ハックウッドSを勝ってきたキーンハンター、セーネワーズ賞2着馬ダンザンテなどが対戦相手となった。マジックリングが単勝オッズ3.1倍の1番人気、本馬が単勝オッズ4倍の2番人気、ディヴァインダンスが単勝オッズ4.7倍の3番人気、パリスハウスが単勝オッズ6.2倍の4番人気となった。

今回も本馬にはレイモンド騎手が騎乗した(エデリー騎手はダンザンテに騎乗した)。ナンソープSと同様に全馬がスタートから全力疾走を始め、その中でも本馬は先頭3頭の中に含まれていた。そして残り400m地点で単独先頭に立ったのだが、残り300m地点で単勝オッズ12.5倍の5番人気馬キーンハンターに先頭をとってかわられると、抜き返すことが出来ずに1馬身差の2着に敗れた。

BCスプリント(3歳時)

その後は渡米して、チャーチルダウンズ競馬場で行われたBCスプリント(米GⅠ・D6F)に参戦した。対戦相手は、ジェロームH・カーターH・ヴォスバーグS・ウィザーズS・フォアゴーH・ハッチソンS・スウェイルS・ラファイエットS・ダービートライアルS・シェリダンS・キングズビショップSとグレード競走11勝を挙げていた前年のエクリプス賞最優秀短距離馬ハウスバスター、マリブSの勝ち馬でケンタッキーダービー・サンタアニタH3着のプレザントタップ、一般競走を2連勝してきたポリッシュナンバーズ(名牝ナンバードアカウントの息子で名種牡馬プライヴェートアカウントの半弟)、アーリントンクラシックS・セントポールダービーの勝ち馬でトラヴァーズS2着のクレヴァートレヴァー、ホープフルS・ハリウッドジュヴェナイルCSS・サプリングSの勝ち馬でベルモントフューチュリティS2着のデポジットチケット、フォールハイウェイトH・スポートページH・ブージャムHの勝ち馬でフォアゴーH2着のセニョールスピーディ、トリプルベンドHの勝ち馬ロビンダンサー、キングズビショップSの勝ち馬でBCジュヴェナイル2着のテイクミーアウト、フィラデルフィアパークBCH・ハイランダーSを連勝してきたキースピリット、ガヴァナーズカップH2着馬メディアプランの計10頭だった。

このレースの主役は、既に2年連続のエクリプス賞最優秀短距離馬受賞が確実視されていたハウスバスターであり、前年に怪我で出られなかったBCスプリント制覇はほぼ確実と目され、単勝オッズ1.4倍という圧倒的な1番人気に支持されていた。単勝オッズ9.8倍の2番人気馬プレザントタップも含めて他馬勢は全てその他大勢扱いだったが、その中でも本馬の評価は低く、単勝オッズ27.3倍の9番人気だった。初ダートだから軽視された一面はあっただろうが、前年には同じく初ダートのデイジュールが1番人気に支持されて、しかも勝ったも同然のレース内容を見せていたから、単純にデイジュールと本馬では格が違うと判断された面が大きそうである。それに本馬の父グリーンデザートが5年前のBCスプリントで9着最下位に終わっていたのも影響していたと思われる。しかしスコット師は内心で自信を持っていたそうである。何故なら彼はこの5か月も前から本馬に対してダートとポリトラックの混合調教を施しており、本馬はダートを十分こなすという確信を持っていたからだった。この5か月前と言うと、本馬がまだハンデ競走路線にいた時期であり、その段階で既にスコット師の念頭にはBCスプリントがあった事になる。また、欧州における短距離戦より斤量面でかなり優遇されるという点も、スコット師の自信を後押ししていたそうである。

スタートが切られると単勝オッズ65.5倍の最低人気馬メディアプランが逃げを打ち、それをハウスバスターが2番手で追いかける展開となった。エデリー騎手が鞍上に復帰していた本馬は、スタート直後こそ先行する構えを見せたが、深追いはせずに6番手の好位を追走していた。そして最終コーナーでは内側を回って直線入り口では外側に持ち出した。直線半ばでハウスバスターが一瞬先頭に立とうとしたのだが、そこへ外側から来た本馬が瞬く間に抜き去って先頭を奪った。そしてそのまま後続を引き離して優勝。ゴールの瞬間に実況が「5馬身差!」と叫ぶほど見た目には後続との差がついていた(公式には3馬身差)。2着には追い込んできたプレザントタップが入り、実はスタート時点で負傷していたハウスバスターはゴール前で失速して9着に敗れた。

この見事な勝利が決め手となり、本馬は記念すべき第1回カルティエ賞最優秀短距離馬を受賞した。この年はBCジュヴェナイルをアラジが、BCターフをミスアレッジドが勝利しており、欧州調教馬の活躍が目立つブリーダーズカップとなった。3歳時の成績は8戦4勝だった。

競走生活(4歳時)

4歳時は新たに主戦騎手としてウォルター・スウィンバーン騎手を迎え、6月のキングズスタンドS(英GⅡ・T5F)から始動した。グロシェーヌ賞・パレスハウスSを連勝してきたモンドブルー、前年のナンソープS5着後に休養入りしてこの年初戦のサンジョルジュ賞を勝っていたエルビオ、前年のアベイドロンシャン賞では14着最下位に沈むも前走パレスハウスSで2着して立て直してきたパリスハウス、グラッドネスS・バリーオーガンS・コンコルドSの勝ち馬ミスターブルックス、ヨーロピアンフリーHで3着してきたウルフハウンドなどが対戦相手となった。本馬とモンドブルーが並んで単勝オッズ4.5倍の1番人気に支持され、エルビオが単勝オッズ5.5倍の3番人気となった。前年のBCスプリントと同様にやや抑え気味に入った本馬は、残り1ハロン地点で先頭に立つと、食い下がる単勝オッズ8.5倍の5番人気馬ミスターブルックスを半馬身差の2着に抑えて勝利した。

次走のジュライC(英GⅠ・T6F)では、ミスターブルックス、前走3着のエルビオ、同4着のウルフハウンド、前年のスプリントC5着後にダイアデムS・デュークオブヨークS・コーク&オラリーSを勝っていたシャルフォード、英2000ギニー3着馬パースートオブラヴなどが対戦相手となった。本馬が単勝オッズ2.875倍の1番人気、シャルフォードが単勝オッズ3.25倍の2番人気、ウルフハウンドが単勝オッズ6倍の3番人気となった。ここではスタートから先行して残り1ハロン半地点で先頭に立ったが、ゴール直前で単勝オッズ17倍の6番人気馬ミスターブルックスと単勝オッズ7.5倍の4番人気馬パースートオブラヴに差されて、ミスターブルックスの半馬身差3着に敗れた。

その後は初のマイル戦となるサセックスS(英GⅠ・T8F)に挑戦した。チェヴァリーパークS・愛1000ギニー・コロネーションS・クイーンメアリーSの勝ち馬で英1000ギニー2着のマーリング、クイーンエリザベスⅡ世S・ロッキンジSの勝ち馬セルカーク、前年のサセックスSの勝ち馬でセントジェームズパレスS・クイーンアンS2着のセカンドセット、伊グランクリテリウム・伊2000ギニー・ヴィットリオディカプア賞2回・伊共和国大統領賞2回・ローマ賞・リボー賞・クイーンアンS・愛国際Sを勝っていたサイクストン、チョイスH・ケルソHの勝ち馬で前年のBCマイル3着のスターオブコジーンなどが対戦相手となった。7戦6勝2着1回の成績だったマーリングが単勝オッズ2.1倍の1番人気、セルカークとセカンドセットが並んで単勝オッズ4.5倍の2番人気、本馬が単勝オッズ12倍の4番人気となった。過去最長距離のレースだけに序盤から先頭を飛ばす事は避け、やや抑え気味に入った。そして残り2ハロン地点で仕掛けたが、やはり距離が長かったのか伸びが悪く、勝ったマーリングから3馬身差の4着に敗れた。

3週間後のナンソープSは回避して、さらに16日後のスプリントC(英GⅠ・T6F)に向かった。対戦相手は、ジュライC勝利後にベルリン大賞を勝ち、ナンソープSでは26ポンドのハンデを与えた2歳牝馬リリックファンタジーの半馬身差2着してきたミスターブルックス、ジュライC6着から直行してきたウルフハウンド、ジュライC7着から直行してきたシャルフォードなどだった。本馬とミスターブルックスが並んで単勝オッズ3.25倍の1番人気に支持され、シャルフォードが単勝オッズ3.5倍の3番人気、ウルフハウンドが単勝オッズ8倍の4番人気となった。

今回はスウィンバーン騎手ではなくレイモンド騎手が騎乗した本馬は、ミスターブルックスと共に馬群の好位を追走した。そして残り2ハロン地点でミスターブルックスが仕掛けるのを見計らってからスパートを開始。残り1ハロン地点でミスターブルックスを置き去りにして先頭に立つと、その後は右側によれながらも差を広げ、2着ミスターブルックスに2馬身半差をつけて完勝した。この勝ち方は欧州における本馬最高のパフォーマンスだったと評されている。

その後はアベイドロンシャン賞に向かったミスターブルックスといったん別れて、BCスプリント連覇を目指して先に渡米。前哨戦のヴォスバーグS(米GⅠ・D7F)に出走した。NYRAマイルH・カーターH・トムフールS・フォアゴーH・ウエストチェスターHの勝ち馬でメトロポリタンH2着のルビアノ、BCジュヴェナイル・シャンペンS・フロリダダービー・ハッチソンS・ファウンテンオブユースS・ジムダンディS・リヴァリッジSを勝っていた一昨年のエクリプス賞最優秀2歳牡馬フライソーフリー、ジェロームHを勝ってきたフューリアスリー、メトロポリタンH・ウィザーズSの勝ち馬ディキシーブラス、ホープフルS・カウディンS・キングズビショップS・フォールハイウェイトH・トレモントBCSの勝ち馬ソルトレイクと、前哨戦としては十分すぎる好メンバーが顔を揃えた。ルビアノとフライソーフリーのカップリングが単勝オッズ2.6倍の1番人気、フューリアスリーが単勝オッズ3.6倍の2番人気、スウィンバーン騎手が鞍上に戻ってきた本馬が単勝オッズ4倍の3番人気となった。レースでは本馬は2~3番手を先行して、そのままの態勢で直線に入ってきた。そして前を行くソルトレイクをかわしたのだが、後方から来たルビアノに差されて、3/4馬身差の2着に敗れた。それでも改めてダート適性を証明することが出来た。

本番のBCスプリント(米GⅠ・D6F)はガルフストリームパーク競馬場で行われた。主な対戦相手は、アベイドロンシャン賞を勝って遠征してきたミスターブルックス、ルビアノ、前走3着のソルトレイク、カウントフリートスプリントH・エインシェントタイトルBCHの勝ち馬グレイスルーピー、コロンビアSの勝ち馬でテストS2着のメアファラ、前年の同競走で4着だったセニョールスピーディ、フランクJドフランシス記念ダッシュS・リヴァリッジSの勝ち馬スーパーストライク、ビングクロスビーHの勝ち馬サーティスルーズなどだった。ルビアノが単勝オッズ3.1倍の1番人気、本馬が単勝オッズ4倍の2番人気、ソルトレイクが単勝オッズ8倍の3番人気、ミスターブルックスが単勝オッズ8.1倍の4番人気であり、やはり前年に比べると欧州調教馬の評価が高くなっていた。

スタートが切られると単勝オッズ14.8倍の6番人気馬メアファラが先頭に立ち、単勝オッズ19.7倍の9番人気馬サーティスルーズが少し離れた2番手、本馬は4番手前後の好位につけ、ルビアノとミスターブルックスは後方から競馬を進めた。しかしレース前に鞍上のレスター・ピゴット騎手がスウィンバーン騎手に向かって「どうも今日の彼はあまり調子が良くないようです」と危惧を漏らしていたミスターブルックスは最終コーナーで故障を発生して競走を中止してしまった。レースはかなりのハイペースで進行したが、それにも関わらず前残りの展開となり、メアファラとサーティスルーズが直線で叩き合った末にサーティスルーズが首差で勝利を収めた。メアファラから3馬身差の3着に追い込んだルビアノが入り、ゴール直前でルビアノに鼻差かわされた本馬は4着に終わった。

右前脚の大砲骨を複雑骨折したミスターブルックスは予後不良となり、鞍上のピゴット騎手も全治3か月の重傷を負うという、非常に後味が悪いレースとなった。ミスターブルックスは明らかに調子が悪かったが、実は本馬も本調子ではなかったらしく、発熱の治療薬であるフェニルブタゾンを服用していたようである。ガルフストリームパーク競馬場があるフロリダ州は温暖すぎて欧州調教馬が体調を崩す事例がしばしばあるが、本馬やミスターブルックスもそうだった公算が大きい。

本馬はこのレースを最後に4歳時6戦2勝の成績で競走馬を引退した。ミスターブルックスとの対戦成績は本馬の3勝1敗だったが、同年のカルティエ賞最優秀短距離馬の座はGⅠ競走2勝のミスターブルックスに譲ることとなった。本馬は2015年時点において、BCスプリントを制した唯一の欧州調教馬である。本馬以降にも欧州調教馬がBCスプリントに挑戦する事例は珍しくないが、人気の有無に関わらず惨敗ばかりであり、本馬の勝利以降のBCスプリントにおける欧州調教馬のベストリザルトは本馬の4着である。

血統

Green Desert Danzig Northern Dancer Nearctic Nearco
Lady Angela
Natalma Native Dancer
Almahmoud
Pas de Nom Admiral's Voyage Crafty Admiral
Olympia Lou
Petitioner Petition
Steady Aim
Foreign Courier Sir Ivor Sir Gaylord Turn-to
Somethingroyal
Attica Mr. Trouble
Athenia
Courtly Dee Never Bend Nasrullah
Lalun
Tulle War Admiral
Judy-Rae
Sanctuary Welsh Pageant Tudor Melody Tudor Minstrel Owen Tudor
Sansonnet
Matelda Dante
Fairly Hot
Picture Light Court Martial Fair Trial
Instantaneous
Queen of Light Borealis
Picture Play
Hiding Place Doutelle Prince Chevalier Prince Rose
Chevalerie
Above Board Straight Deal
Feola
Jojo Vilmorin Gold Bridge
Queen of the Meadows
Fairy Jane Fair Trial
Light Tackle

グリーンデザートは当馬の項を参照。

母サンクタリーは不出走馬。サンクタリーの母ハイディングプレイスはネルグウィンSの勝ち馬。ハイディングプレイスはかなり優れた繁殖牝馬であり、サンクタリーの半兄ディスガイズ(父クレイロン)【ホーリスヒルS(英GⅢ)】、半兄スマッグラー(父エクスビュリ)【ヨークシャーC(英GⅡ)・ゴードンS(英GⅢ)・プリンセスオブウェールズS(英GⅢ)・ヘンリーⅡ世S(英GⅢ)】、半兄リトルウルフ(父グランディ)【アスコット金杯(英GⅠ)・ジャンドショードネイ賞(仏GⅡ)・グッドウッドC(英GⅡ)・セントサイモンS(英GⅢ)・ジョッキークラブC(英GⅢ)】と3頭のグループ競走勝ち馬を産んだ。また、サンクタリーの半妹カビーホール(父タウンアンドカントリー)の子にはニッチ【ロウザーS(英GⅡ)・ファルマスS(英GⅡ)・ノーフォークS(英GⅢ)・ネルグウィンS(英GⅢ)】、孫にはキャプテンハリケーン【ジュライS(英GⅡ)】がいる。ハイディングプレイスの半兄にはクイーンズハザー【ロッキンジS・サセックスS】がおり、この馬は英国競馬史上最強馬の誉れ高いブリガディアジェラードの父として著名である。→牝系:F19号族①

母父ウェルシュページェントは現役成績20戦11勝。セントジェームズS・ロッキンジS・クイーンアンS・クイーンエリザベスⅡ世S・ロッキンジS(英GⅡ)・ハンガーフォードS(英GⅢ)を制したマイラーだった。ウェルシュページェントの父テューダーメロディはテューダーミンストレル産駒の英国2歳王者。

競走馬引退後

競走馬を引退した本馬は米国ケンタッキー州ゲインズボローファームで種牡馬入りした。本馬は種牡馬としてはアベレージヒッターで、勝ち馬数は多いが大物産駒には恵まれず、一般的には種牡馬としては不成功だったと評されている。後に豪州ニューサウスウェールズ州エミレーツパークスタッドによって購入され、欧州と豪州を股にかけるシャトルサイアーになる事になった。まずは1998年にエミレーツパークスタッドで75頭の繁殖牝馬と交配した後、翌年には英国カートリントンスタッドに移動したが、同年5月、種付け中の心臓発作のため11歳で他界した。

主な産駒一覧

生年

産駒名

勝ち鞍

1994

Curitiba

1月25日大賞(伯GⅡ)・ブラジルジョッケクルブ大賞(伯GⅢ)

1994

Tayseer

スチュワーズC

1996

Badouizm

レイクプラシッドH(米GⅡ)

1996

Boismorand

ヴィシー大賞(仏GⅢ)

1997

Remember Sheikh

エルカミノリアルダービー(米GⅢ)

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