ゴーンウエスト

和名:ゴーンウエスト

英名:Gone West

1984年生

鹿毛

父:ミスタープロスペクター

母:セクレテーム

母父:セクレタリアト

GⅠ競走勝ちはドワイヤーSのみだったが内容は12馬身半差の圧勝であり、種牡馬としても父ミスタープロスペクターの後継として大活躍する

競走成績:2・3歳時に米で走り通算成績17戦6勝2着4回3着2回

誕生からデビュー前まで

米国ケンタッキー州においてウィリアム・O・リード博士により生産された。1歳7月のキーンランドセールにおいてアリス・デュポン・ミルズ夫人により190万ドルで購入され、彼女のヒッコリーツリーステーブル名義で競走馬となり、米国ウッドフォード・セフィス・スティーヴンズ調教師に預けられた。体高は16ハンドと平均的な体格だった。

競走生活(2歳時)

2歳9月にベルモントパーク競馬場で行われたダート7ハロンの未勝利戦でデビューして、8馬身3/4差で圧勝して鮮烈なデビューを飾った。しかし翌月にベルモントパーク競馬場で行われたダート8ハロンの一般競走では、クリプトクリアランスの5馬身半差3着に敗退。

それから10日後に出走したシャンペンS(GⅠ・D8F)では、アーリントンワシントンフューチュリティ・ローレルフューチュリティ・サプリングSなど5戦無敗のベットトゥワイス、カウディンSなど3戦無敗のポリッシュネイビー、カウディンS2着馬ジャワゴールド、ベルモントフューチュリティS2着馬デーモンズビーゴーンといった非常に強力なメンバー構成となった。結果は上記4頭全てに屈して、勝ったポリッシュネイビーから7馬身差の5着と完敗した。11月にアケダクト競馬場で行われたダート8ハロンの一般競走でも1馬身3/4差の2着に敗れ、今ひとつ波に乗れずに4戦1勝で2歳戦を終えた。

競走生活(3歳前半)

3歳時は1月にハイアリアパーク競馬場で行われたダート6ハロンの一般競走から始動して、6馬身半差で圧勝。次走のハイアリアパーク競馬場ダート7ハロンの一般競走も2馬身半差で勝利した。そしてガルフストリームパーク競馬場に場所を移して、ハッチソンS(GⅢ・D7F)に出走。しかし、未勝利戦を勝ち上がってきたばかりのウェルセレクティドに敗れて、1馬身差の2着に終わった。次走のファウンテンオブユースS(GⅡ・D8.5F)では、ウェルセレクティド(7着)には先着したものの、シャンペンSで3着に終わって連勝が途切れていたベットトゥワイス、これまでは特に目立つ実績が無かったノーモアフラワーズの2頭に後れを取り、ベットトゥワイスの2馬身3/4差3着に終わった。

アケダクト競馬場に場所を移して出走したゴーサムS(GⅡ・D8F)では、BCジュヴェナイル・ノーフォークSを勝利して前年のエクリプス賞最優秀2歳牡馬に選ばれたカポウティ、ホープフルS・ベルモントフューチュリティS・サラトガスペシャルS・ベイショアS・トレモントSの勝ち馬でノーフォークS2着のガルチ、ベイショアSで3着してきたトレモントS2着馬シャークリットウォンなどが対戦相手となった。しかし本馬が2着シャークリットウォンに1馬身差で勝利を収め、ガルチはさらに8馬身半差の3着、カポウティは4着に終わった。次走のウッドメモリアル招待S(GⅠ・D9F)でも、シャークリットウォン、ガルチ、カポウティとの対戦となった。今回はガルチが勝利を収め、本馬は頭差の2着、シャークリットウォンは3着、カポウティは4着に終わった。

ガルチ、シャークリットウォン、カポウティの3頭はケンタッキーダービーに向かったが、本馬は向かわなかった。プリークネスSも回避して、目標をベルモントS一本に絞り、ニューヨーク州に留まった。これは本馬を管理していたスティーヴンズ師の同競走6連覇という大記録がかかっていたためと言われる。

まずはウィザーズS(GⅡ・D8F)に出走して、ベイショアS2着馬ハイブライトを半馬身差の2着に抑えて勝利した。次走のピーターパンS(GⅡ・D9F)では、ケンタッキーダービーで7着だったブルーグラスS2着馬レオキャステリの半馬身差2着だった。

こうして前哨戦を2回叩いた本馬は、万全の態勢でベルモントS(GⅠ・D12F)に出走した。対戦相手は、ケンタッキーダービー・プリークネスSを連勝してきたアリシーバ、一般競走で本馬を破った後にエヴァーグレーズS・フロリダダービーを勝ちケンタッキーダービー4着・プリークネスS3着だったクリプトクリアランス、ケンタッキーダービー6着・プリークネスS4着後に古馬相手のメトロポリタンHを勝ってきたガルチ、ケンタッキーダービー・プリークネスSで連続2着だったベットトゥワイス、レオキャステリ、前走ピーターパンSで3着だったケンタッキーダービー11着馬シャークリットウォンなどだった。1978年のアファームド以来9年ぶり史上12頭目の米国三冠馬誕生が懸かっていたアリシーバが1番人気、クリプトクリアランスが2番人気で、本馬が3番人気となった。しかしスタートから先手を取ったものの、道中で大きく失速して、勝ったベットトゥワイスから24馬身差をつけられた6着と完敗してしまった。

競走生活(3歳後半)

次走のドワイヤーS(GⅠ・D9F)では、米国三冠競走で激戦を演じてきた馬達が揃って不在であり、シャンペンSを勝ったところまでは順調だったが次走のBCジュヴェナイルで7着に敗れた後に骨折が判明して米国三冠競走を全休していたポリッシュネイビー、ローレルフューチュリティ2着馬プレッジカードなどが対戦相手となった。スタートが切られるとポリッシュネイビーが先頭を伺ったが、それを内側からかわしたエディ・メープル騎手鞍上の本馬が先頭を奪い、この2頭が先頭争いを展開した。しかし三角に入る頃には、馬なりのまま走る本馬が、必死に追うポリッシュネイビーを徐々に引き離し始めた。直線入り口では既に5~6馬身ほどの差がついており、その後もどんどんその差が開いていった。最後は本馬が2着プレッジカードに12馬身半差という圧倒的な差をつけてGⅠ競走初制覇を果たし、ゴール前で差されたポリッシュネイビーはさらに半馬身差の3着だった。

次走のホイットニーH(GⅠ・D9F)では、前年のシャンペンS4着後にレムセンSを勝ったが3歳時は米国三冠競走に出走せずに裏街道を進んでいたジャワゴールド、ベルモントS3着から直行してきたガルチ、それに1歳年上のサンタアニタH・ウッドメモリアルS・メドウランズCH・サバーバンH・オハイオダービー・ペンシルヴァニアダービーなどの勝ち馬ブロードブラッシュなどが対戦相手となった。ここではジャワゴールドが勝利を収め、本馬は3馬身半差の4着に敗れた。

次走のウッドワードS(GⅠ・D9F)では、ホイットニーH2着後に出走したトラヴァーズSで4着に終わっていたガルチ、そのトラヴァーズSで2着してきたベルモントS2着馬クリプトクリアランス、ドワイヤーS3着後にジムダンディSを勝ちトラヴァーズSで3着してきたポリッシュネイビー、ベルモントS・アメリカンダービー・ジェロームH・スーパーダービー・ジョッキークラブ金杯・ドンH・パターソンH・WLマックナイト招待Hを勝っていた2歳年上のクレームフレーシュなどが対戦相手となった。しかしドワイヤーSで圧倒した相手であるポリッシュネイビーがこのレースの勝利馬となり、本馬は5馬身半差をつけられて7着に敗れた。

その後は短距離路線に向かい、ヴォスバーグS(GⅠ・D7F)に出走した。しかし、トムフールH2回・フォアゴーH2回・トゥルーノースHを勝っていたこの年のエクリプス賞最優秀短距離馬グルーヴィの前に、5馬身半差をつけられた5着に敗退。ブリーダーズカップには出走することなく、3歳時13戦5勝の成績で引退した。

本馬の競走生活を振り返ると、休養と言える期間は2歳最終戦の一般競走から3歳初戦の一般競走までの2か月半しかなく、しかも3歳時は1月から7月のドワイヤーSまで半年間で10戦を消化している。そのため、3歳後半の不振は疲労が溜まっていたのが影響していたのではないかとも思われる。

馬名を直訳すると「(金の採掘場がある)西へ」であり、ミスタープロスペクターの血を引く馬に数多く見られるゴールドラッシュに由来する名前である。

血統

Mr. Prospector Raise a Native Native Dancer Polynesian Unbreakable
Black Polly
Geisha Discovery
Miyako
Raise You Case Ace Teddy
Sweetheart
Lady Glory American Flag
Beloved 
Gold Digger Nashua Nasrullah Nearco
Mumtaz Begum
Segula Johnstown
Sekhmet
Sequence Count Fleet Reigh Count
Quickly
Miss Dogwood Bull Dog
Myrtlewood
Secrettame Secretariat Bold Ruler Nasrullah Nearco
Mumtaz Begum
Miss Disco Discovery
Outdone
Somethingroyal Princequillo Prince Rose
Cosquilla
Imperatrice Caruso
Cinquepace
Tamerett Tim Tam Tom Fool Menow
Gaga
Two Lea Bull Lea
Two Bob
Mixed Marriage Tudor Minstrel Owen Tudor
Sansonnet
Persian Maid Tehran
Aroma

ミスタープロスペクターは当馬の項を参照。

母セクレテームは米で走りシャーリージョーンズHなど10戦6勝、ガゼルH(米GⅡ)で2着した実績がある。母としては、種牡馬としても活躍した本馬の全弟ライオンキャヴァーン【トゥルーノースH(米GⅡ)・ホーリスヒルS(英GⅢ)・グリーナムS(英GⅢ)】も産んでいる。また、本馬の半妹で外国産馬として日本に輸入されたサクラセクレテーム(父ダンチヒ)の子には、サクラオリオン【中京記念(GⅢ)・函館記念(GⅢ)】がいる。

セクレテームの母タムレットは優秀な繁殖牝馬で、セクレテームの半兄テンタム(父インテンショナリー)【メトロポリタンH(米GⅠ)・ガヴァナーS(米GⅠ)・ユナイテッドネーションズH(米GⅠ)・ジムダンディS・トボガンH(米GⅢ)・バーナードバルークH(米GⅢ)・ボードウォークH】、半兄テレト(父ボールドネシアン)【シネマH(米GⅡ)】、半兄ノウンファクト(父インリアリティ)【英2000ギニー(英GⅠ)・ミドルパークS(英GⅠ)・クリスタルマイル(英GⅡ)・クイーンエリザベスⅡ世S(英GⅡ)】を産んだ。さらに、セクレテームの半姉タミネッテ(父インリアリティ)の子にタピアノ【スピナウェイS(米GⅠ)・メイトロンS(米GⅠ)・デモワゼルS(米GⅠ)・シャーリージョーンズH(米GⅢ)・サラブレッドクラブオブアメリカS(米GⅢ)・ガーデンステートパークBCH(米GⅢ)・ジェニュインリスクH(米GⅢ)・バーバラフリッチーH(米GⅢ)】、日本で走ったエーピージェット【京成杯(GⅢ)】、玄孫にレディジョンヌ【アラバマS(米GⅠ)】、シャックルフォード【プリークネスS(米GⅠ)・メトロポリタンH(米GⅠ)・クラークH(米GⅠ)】がいる。また、セクレテームの半妹バッジオブカーリッジ(父ウェルデコレイテッド)の子にトゥルーヒーロー【サンダウンクラシックトライアル(英GⅢ)】、孫にいずれも日本で走ったタイキフォーチュン【NHKマイルC(GⅠ)・毎日杯(GⅢ)】、タイキダイヤ【クリスタルC(GⅢ)】、タイキリオン【ニュージーランドトロフィー3歳S(GⅡ)】の3兄妹、玄孫にクラリティスカイ【NHKマイルC(GⅠ)】がおり、タムレットはかなり優秀な牝系を構築している。タムレットの半兄にはネイティヴダンサーの後継種牡馬エタンがおり、悲劇の名牝ゴーフォーワンドも近親に当たる。→牝系:F2号族②

母父セクレタリアトは当馬の項を参照。

競走馬引退後

競走馬を引退した本馬は米国ケンタッキー州ミルリッジファームで種牡馬入りした。当初の期待はそれほどでもなかったが、2年目産駒ザフォニックの大活躍で一躍人気種牡馬の仲間入りを果たした。産駒のステークスウイナーは98頭以上に及ぶ。自身は現役時代ダートしか出走経験が無かったが、産駒は芝とダートを問わない。

長年に渡りミスタープロスペクター系を代表する名種牡馬として頑張っていたが、2009年に受精率低下のため25歳で種牡馬を引退。同年9月に腫瘍に起因する疝痛を発症したために手術を受けたが、合併症を併発するなど経過が思わしくなかったため安楽死の措置が執られ、ミルリッジファームに埋葬された。2009年時点で直子又は孫で種牡馬登録されている馬は32頭もおり、後継種牡馬にはかなり恵まれている。

主な産駒一覧

生年

産駒名

勝ち鞍

1989

West by West

ナッソーカウンティH(米GⅠ)・ジャマイカH(米GⅡ)・ワイドナーH(米GⅡ)

1990

Double Sixes

ピムリコディスタフH(米GⅢ)

1990

Link River

ジョンAモリスH(米GⅠ)

1990

Zafonic

英2000ギニー(英GⅠ)・モルニ賞(仏GⅠ)・サラマンドル賞(仏GⅠ)・デューハーストS(英GⅠ)

1991

Aboline

モーリスドニュイユ賞(仏GⅡ)

1991

Gold Land

ビングクロスビーH(米GⅢ)・ロサンゼルスH(米GⅢ)・エインシェントタイトルBCH(米GⅢ)

1991

Gone for Real

ロイヤルパームH(米GⅢ)

1991

Lassigny

ロスマンズ国際S(加GⅠ)・ギョームドルナノ賞(仏GⅡ)・ガルフストリームパークBCターフS(米GⅡ)・ブーゲンヴィリアH(米GⅢ)

1991

Royal Abjar

独2000ギニー(独GⅡ)・エッティンゲンレネン(独GⅢ)

1991

West Man

サンジョルジュ賞(仏GⅢ)・リゾランジ賞(仏GⅢ)

1992

Da Hoss

BCマイル(米GⅠ)2回・ジャージーダービー(米GⅡ)・デルマー招待ダービー(米GⅡ)・ベストターンS(米GⅢ)・フォースターデイヴH(米GⅢ)

1992

Mr. Greeley

スペクタキュラービッドBCS(米GⅢ)・スウェイルS(米GⅢ)・ラファイエットS(米GⅢ)

1992

Old Tascosa

カウディンS(米GⅡ)

1992

Raah Algharb

フライングチルダースS(英GⅡ)

1992

Supremo

ノーフォークS(米GⅡ)

1992

Tamayaz

ローズオブランカスターS(英GⅢ)・ドバイデューティーフリー

1992

Western Larla

リヴァリッジS(米GⅢ)

1993

Elusive Quality

ジャイプールH(米GⅢ)・ポーカーH(米GⅢ)

1993

ザフォリア

京都四歳特別(GⅢ)

1994

Dance Parade

ブエナビスタH(米GⅡ)・クイーンメアリーS(英GⅢ)・フレッドダーリンS(英GⅢ)・ラスシエネガスH(米GⅢ)・オータムデイズH(米GⅢ)

1994

Dazzle

チェリーヒントンS(英GⅡ)

1994

Zamindar

カブール賞(仏GⅢ)

1995

Double Honor

サプリングS(米GⅢ)

1995

Grand Slam

ベルモントフューチュリティS(米GⅠ)・シャンペンS(米GⅠ)・ピーターパンS(米GⅡ)

1996

Muqtarib

リッチモンドS(英GⅡ)

1996

Mythical Girl

プリンセスマーガレットS(英GⅢ)

1997

Commendable

ベルモントS(米GⅠ)

1997

Dance Master

バッシュフォードマナーS(米GⅡ)

1997

Performing Magic

イリノイダービー(米GⅡ)・ダービートライアルS(米GⅢ)

1997

Promontory Gold

ヒルプリンスS(米GⅢ)

1997

スイートオーキッド

クリスタルC(GⅢ)

1998

Goncharova

フィユドレール賞(仏GⅢ)

1998

Scoop

インディアナBCオークス(米GⅢ)

1998

Speightstown

BCスプリント(米GⅠ)・チャーチルダウンズH(米GⅡ)・トゥルーノースBCH(米GⅡ)・アルフレッドGヴァンダービルトH(米GⅡ)

1999

Came Home

ホープフルS(米GⅠ)・サンタアニタダービー(米GⅠ)・パシフィッククラシックS(米GⅠ)・サンヴィンセントS(米GⅡ)・サンラファエルS(米GⅡ)・スワップスS(米GⅡ)・ハリウッドジュヴェナイルCSS(米GⅢ)・アファームドH(米GⅢ)

1999

Canadian Frontier

ボールドルーラーH(米GⅢ)

1999

Castle Gandolfo

ベレスフォードS(愛GⅢ)

1999

Changeintheweather

グレイBCS(加GⅠ)

1999

Johar

BCターフ(米GⅠ)・ハリウッドダービー(米GⅠ)・オークツリーダービー(米GⅡ)・サンマルコスS(米GⅡ)

1999

Proud Citizen

レキシントンS(米GⅡ)

1999

Saddad

フライングチルダースS(英GⅡ)

2000

Westerly Breeze

アルキビアデスS(米GⅡ)

2002

Istan

ターフウェイパークフォールCSS(米GⅢ)・アクアクH(米GⅢ)

2003

Marsh Side

加国際S(加GⅠ)・ノーザンダンサーターフS(加GⅠ)・スカイクラシックS(加GⅡ)

2003

Union Avenue

アメリカンダービー(米GⅡ)

2004

ビクトリーテツニー

カペラS(GⅢ)

2005

Tiz West

シネマH(米GⅢ)

2005

Zaftig

エイコーンS(米GⅠ)・ナッソーカウンティS(米GⅢ)

2006

Quetsche

ロワイヨモン賞(仏GⅢ)

2007

Treble Jig

ジェベルアリマイル(首GⅢ)

2009

Bahamian Squall

スマイルスプリントH(米GⅡ)

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