スボティカ

和名:スボティカ

英名:Subotica

1988年生

鹿毛

父:パンパバード

母:テルドフー

母父:バステッド

歴代最強クラスのメンバーが揃った凱旋門賞を4歳時に制覇したレッドゴッド直系の傍流から出現した実力馬だが種牡馬としては全く振るわず

競走成績:2~4歳時に仏英米で走り通算成績14戦6勝2着4回3着1回

誕生からデビュー前まで

仏国ノルマンディーのメズレー牧場において、同牧場の所有者ポール・ド・ムーサック氏により生産された。仏国の有力事業家オリビエ・ルセルフ氏に購入されて、仏国アンドレ・ファーブル調教師に預けられた。

競走生活(2・3歳時)

2歳8月にドーヴィル競馬場で行われたロシェノワール賞(T1500m)でデビューしたが、後のロシェット賞の勝ち馬ボーサルタンの4着に敗退。2戦目は11月にメゾンラフィット競馬場で行われたミューセ賞(T1600m)となった。後にリュパン賞を勝つクダスという強敵の姿があったが、クダスは5着に沈み、重馬場の中を快走した本馬が2着ダブルフレーバーに3馬身差で勝ち上がった。2週間後にエヴリ競馬場で出たリステッド競走アイソノミー賞(T1800m)では、主戦となるティエリ・ジャルネ騎手と初コンビを組んで勝利を挙げ、2歳時の成績は3戦2勝となった。

3歳時は仏2000ギニーには目もくれず、仏ダービーを目指して4月のノアイユ賞(仏GⅡ・T2200m)から始動した。クリテリウムドサンクルー・コンデ賞など3戦無敗だったピストレブルー、当時は全く無名だった後のエクリプス賞年度代表馬コタシャーンとの対戦となった。レースでは直線入り口6番手から内側を突いて追い込むも、勝ったピストレブルーに3馬身差をつけられて2着に敗れた。

翌月のオカール賞(仏GⅡ・T2400m)では、再びピストレブルーと顔を合わせた。レースは本馬の得意な重馬場となった事もあり、前走より早めに仕掛けて3番手で直線に入ってきた。そして前を行くピストレブルーに迫ったが届かずに、3/4馬身差の2着に敗れた。

本番の仏ダービー(仏GⅠ・T2400m)では、ピストレブルーがレース前日に判明した故障のため不在だったが、グレフュール賞の勝ち馬スワーヴダンサー、リュパン賞の勝ち馬クダスなどが対戦相手となった。スワーヴダンサーが単勝オッズ1.6倍の1番人気、クダスが単勝オッズ3.7倍の2番人気、本馬が単勝オッズ7.2倍の3番人気となった。今回も本馬は直線入り口3番手から抜け出そうとしたが、直線入り口5番手から爆発的な末脚を繰り出したスワーヴダンサーに一気にかわされてしまい、勝ったスワーヴダンサーから4馬身差をつけられた2着に敗れた。

それから3週間後のパリ大賞(仏GⅠ・T2000m)には、愛ダービーに向かったスワーヴダンサーは不在であり、前走3着のクダス、ジャンプラ賞を勝ってきたシレリー、レゼルヴォワ賞・ヴァントー賞の勝ち馬マスラマなどが強敵だった。他にも、ノアイユ賞5着後にクルーセル賞・フォルス賞を連勝してきたコタシャーンも参戦してきた。クダスが単勝オッズ2.9倍の1番人気、本馬が単勝オッズ3.7倍の2番人気、マスラマが単勝オッズ5.2倍の3番人気、シレリーが単勝オッズ5.5倍の4番人気となった。本馬が得意とする重馬場の中でスタートが切られると、シレリー陣営が用意したペースメーカー役のアイドルサンが逃げを打ち、クダスが2番手、シレリーが3番手を追走。本馬は馬群の中団後方で機を伺った。そして直線入り口6番手から素晴らしい伸びを見せて前にいる他馬勢を全て差し切り、2着シレリーに首差、3着コタシャーンにはさらに2馬身差をつけて勝利した。

夏場は休養に充て、秋は8月にドーヴィル競馬場で行われたリステッド競走ピアジェドール(T2000m)から始動。しかし勝ったラカレンから僅か3/4馬身差の5着に敗れた。

次走のニエル賞(仏GⅡ・T2400m)では、故障休養明けの宿敵ピストレブルー、ユジェーヌアダム賞の勝ち馬でギョームドルナノ賞2着の同厩馬アルカングとの対戦となった。レースはピストレブルーとアルカングが先行して、本馬は後方待機策を採った。そして6番手で直線に入ってきても、まだジャルネ騎手は仕掛けを我慢した。ようやく仕掛けたのは残り200m地点だったが、ここから計ったように差し切り、2着ピストレブルーに首差、3着アルカングにはさらに半馬身差をつけて勝利した。

しかし体調を崩してしまったため凱旋門賞には出走できずに、3歳時6戦2勝の成績で休養入りした。

競走生活(4歳前半)

4歳時は5月のガネー賞(仏GⅠ・T2100m)から始動した。このレースでは、前年の凱旋門賞を完勝していたスワーヴダンサーと2度目、前年の凱旋門賞で3着、前走のアルクール賞で2着だったピストレブルーと4度目の対戦となった。他の出走馬は、伊ジョッキークラブ大賞・コンセイユドパリ賞・プランスドランジュ賞の勝ち馬で前年のガネー賞2着のパッシングセール、エクスビュリ賞・アルクール賞を連勝してきたフォーチュンズホイール、ギョームドルナノ賞の勝ち馬グリティ、ラクープの勝ち馬アートブルーの4頭だった。スタートが切られるとアートブルーとグリティが先頭を引っ張り、ピストレブルーが3番手、本馬が5番手、スワーヴダンサーが6番手を進んだ。そのままの態勢で直線に入ると、本馬がスワーヴダンサーを置き去りにして末脚を伸ばし、ゴール直前でピストレブルーをかわして首差で勝利した。ピストレブルーから3馬身差の3着に終わったスワーヴダンサーは、そのまま現役を引退した。

次走は渡英してのコロネーションC(英GⅠ・T12F10Y)となった。キングエドワードⅦ世S・ジョンポーターS・オーモンドSの勝ち馬で前年の英セントレジャー2着のサドラーズホール、リングフィールドダービートライアルS・ジョンポーターS・ジョッキークラブS・ハードウィックS・プリンセスオブウェールズS・ヨークシャーCの勝ち馬で前年のサンクルー大賞2着・コロネーションC・キングジョージⅥ世&クイーンエリザベスDS3着のロックホッパー、英セントレジャー・ミラノ大賞・ドーヴィル大賞の勝ち馬で一昨年の凱旋門賞3着のスナージ、英国際S・アールオブセフトンSを勝ちコロネーションCで2着して前年のカルティエ賞最優秀古馬に選ばれたテリモン、プリンセスオブウェールズS・ジョッキークラブSの勝ち馬サピエンス、ロワイヤリュー賞の勝ち馬サガネカなどが対戦相手となった。ジョンポーターS・オーモンドSを連勝してきたサドラーズホールが単勝オッズ2.25倍の1番人気、本馬が単勝オッズ3.75倍の2番人気、ロックホッパーが単勝オッズ8倍の3番人気となった。今回も本馬は後方待機策を採り、5番手で直線に入ってきた。しかし残り2ハロン地点で進路を失う場面があり、ゴール前の追撃及ばず、勝ったサドラーズホールから僅か1馬身差の4着に敗れた。

仏国に戻って出走したサンクルー大賞(仏GⅠ・T2400m)では、ガネー賞2着後にエヴリ大賞を勝ってきたピストレブルーと5度目の対戦となった。他にも、前年のヴェルメイユ賞・マルレ賞の勝ち馬で仏オークス・凱旋門賞・ジャパンC2着のマジックナイト、ガネー賞5着後にエヴリ大賞で2着していたアートブルー、コロネーションC6着後にミラノ大賞で2着していたサガネカなどが出走してきた。しかしこのレースで本馬は折り合いを欠いて先行してしまい、直線に入ると失速。勝ったピストレブルーから7馬身半差、2着マジックナイトからも2馬身半差をつけられた3着に終わった。故障のためこれが現役最後のレースとなったピストレブルーとの対戦はこれが最後で、対戦成績は本馬の2勝3敗だった。

競走生活(4歳後半)

秋はフォワ賞(仏GⅢ・T2400m)から始動した。対戦相手は、サンクルー大賞2着後にポモーヌ賞を勝ってきたマジックナイト、英チャンピオンS・アラルポカル・ダフニ賞・ラクープドメゾンラフィットの勝ち馬テルクウェル、サンクルー大賞4着から直行してきたサガネカの3頭だけだった。マジックナイトが単勝オッズ1.7倍の1番人気、本馬が単勝オッズ2.4倍の2番人気、テルクウェルが単勝オッズ5.6倍の3番人気となった。少頭数のレースだったためにテルクウェルを先頭に馬群が一団となって進み、本馬は2番手で様子を見た。そして直線で抜け出しを図ったが、マジックナイトに競り負けて3/4馬身差の2着に敗れた。

その後に前年は出走できなかった凱旋門賞(仏GⅠ・T2400m)に向かった。この年の凱旋門賞は綺羅星のごとく有力馬が名を連ね、シーバードが勝った1965年や、ダンシングブレーヴが勝った1986年と比肩されるほどの強力メンバー構成となった。対戦相手は、マジックナイト、前走最下位のサガネカ、コロネーションC勝利後にプリンセスオブウェールズSを勝ちキングジョージⅥ世&クイーンエリザベスDSで2着していたサドラーズホール、コロネーションC8着後にエクリプスS・バーデン大賞で3着していたサピエンス、本馬が勝ったニエル賞で3着した後にイスパーン賞で2着してプランスドランジュ賞を勝ってきた同厩馬アルカングの既対戦組の他に、英オークス・愛オークス・ヨークシャーオークス・英セントレジャーなど6戦無敗の名牝ユーザーフレンドリー、英ダービー2着後に愛ダービーを12馬身差で大圧勝してキングジョージⅥ世&クイーンエリザベスDSでも古馬勢を6馬身差で圧倒していたセントジョヴァイト、セントジョヴァイトとの対戦成績で勝ち越していた英ダービー・愛チャンピオンS・デューハーストSの勝ち馬ドクターデヴィアス、1980年代欧州最強馬ダンシングブレーヴの全妹で仏オークス・ヴェルメイユ賞を勝ってきた同厩馬ジョリファ、遠征先の米国でアーリントンミリオンを勝ちマンノウォーSで2着してきたジャンドショードネイ賞2回・ゴードンリチャーズSの勝ち馬ディアドクター、この年の仏ダービー馬ポリテン、ミラノ大賞・バーデン大賞・愛セントレジャーの勝ち馬マシャーラー、レーシングポストトロフィーの勝ち馬で仏グランクリテリウム・英チャンピオンS3着のシアトルライム、モーリスドニュイユ賞・エドヴィル賞の勝ち馬ヴェールタマンド、カルヴァドス賞の勝ち馬でマルセルブサック賞・サンタラリ賞・仏オークス3着のヴェルヴェンヌ、プリティポリーS・メルドSの勝ち馬で愛1000ギニー・愛オークス2着のマーケットブースター、スペインのGⅠ競走サンセバスチャン金賞の勝ち馬でニエル賞2着のプティルウだった。ユーザーフレンドリー、マジックナイト、ジョリファなどの牝馬勢が人気を集め、セントジョヴァイト、ドクターデヴィアス、そして本馬がそれに続く人気となった。

当日のロンシャン競馬場は重馬場となり、重馬場適性が問われるレースとなった。いつもなら先行してレースを支配するセントジョヴァイトは馬場に脚を取られて先手を取れずに2番手を追走。先手を取ったのはサドラーズホールだった。その後方をユーザーフレンドリーなどが走っていた。一方の本馬は例によって馬群の中団後方から慎重にレースを進めて、直線に入ると得意の追い込みを繰り出した。次々に他馬をかわしていくと、残り100m地点で先頭に立ち、2着に粘ったユーザーフレンドリーに首差、直線入り口最後方から追い込んできたヴェールタマンドにはさらに2馬身差をつけて優勝。欧州競馬の頂点に立った。勝ちタイム2分39秒0は凱旋門賞としてはかなり遅い部類であり、この年以降にこれより遅いタイムで決着した事例は無い(次に遅いのは、史上最悪の馬場状態と言われた1999年で、モンジューが2分38秒5で勝っている)。

その後は渡米して、ガルフストリームパーク競馬場で行われたBCターフ(米GⅠ・T12F)に参戦した。本馬が勝った凱旋門賞に比べれば層は薄かったが、それでも、ロスマンズ国際S・ターフクラシック招待S・ETマンハッタンH・シーザーズ国際H・アーリントンHの勝ち馬でアーリントンミリオン2着のスカイクラシック、デルマー招待H・オークツリー招待Hなど5連勝中のナヴァロン、凱旋門賞6着からの巻き返しを図るドクターデヴィアス、マンノウォーS2回・ターフクラシック招待Sなどの勝ち馬ソーラースプレンダー、ソードダンサー招待Hの勝ち馬でターフクラシック招待S2着のフレイズ、米国に移籍してハリウッドターフHを勝っていた2年前の英ダービー馬クエストフォーフェイム、デルマー招待ダービーの勝ち馬でオークツリー招待S3着のダロス、マルレ賞の勝ち馬トリシド、グレートヴォルティジュールSなどの勝ち馬コラプトが参戦していた。スカイクラシックが単勝オッズ1.9倍の1番人気、ナヴァロンが単勝オッズ4.3倍の2番人気、本馬が単勝オッズ8.5倍の3番人気、ドクターデヴィアスが単勝オッズ10.1倍の4番人気、ソーラースプレンダーが単勝オッズ11.4倍の5番人気となった。

レースはソーラースプレンダーと単勝オッズ42.9倍の8番人気馬ダロスの2頭が先手を取り、スカイクラシックやドクターデヴィアスがそれを見るように先行、本馬は馬群の中団後方を追走した。そして徐々に位置取りを上げると、四角で外側に持ち出して先行集団に並びかけていったが、直線で伸びを欠いて3馬身差の5着に敗退。勝ったのは、四角で内側を掬ってスカイクラシックを競り落としたフレイズだった。このレースを最後に、4歳時6戦2勝の成績で競走馬を引退した。

血統

Pampabird Pampapaul イエローゴッド Red God Nasrullah
Spring Run
Sally Deans Fun Fair
Cora Deans
Pampalina Bairam Nearco
Bibi Toori
Padus Anwar
Cherry Way
Wood Grouse セルティックアッシュ Sicambre Prince Bio
Sif
Ash Plant Nepenthe
Amboyna
French Bird ガーサント Bubbles
Montagnana
Golden Pheasant Gold Bridge
Bonnie Birdie
Terre de Feu Busted Crepello Donatello Blenheim
Delleana
Crepuscule Mieuxce
Red Sunset
Sans le Sou ヴィミー Wild Risk
Mimi
Martial Loan Court Martial
Loan
Ludivine Luthier Klairon Clarion
Kalmia
Flute Enchantee Cranach
Montagnana
Tita Tim Tam Tom Fool
Two Lea
Always Sunny Sun Again
Bim's Queen

父パンパバードは本馬の生産者ムーサック氏の所有馬で、現役成績は20戦6勝。シュマンドフェルデュノール賞(仏GⅢ)・メシドール賞(仏GⅢ)・ロンポワン賞(仏GⅢ)を勝っている。種牡馬としてはあまり成功しておらず、本馬以外にはギョームドルナノ賞の勝ち馬ヴァランジュを出したくらいである。パンパバードの父パンパポールは、日本に輸入されたイエローゴッドが欧州に残してきた代表産駒の1頭で、愛2000ギニー(愛GⅠ)・愛ナショナルS(愛GⅡ)勝ちなど11戦3勝の成績。愛2000ギニーは名馬ザミンストレルを2着に退けての勝利だった。やはり種牡馬としてはそれほど成功しておらず、パンパバード以外にはクリスタルマイルの勝ち馬サンドハーストプリンスを出した程度である。

母テルドフーは本馬の生産者ムーサック氏の生産・所有馬で、競走馬としては仏国で走り12戦2勝だった。近親には活躍馬が少なく、テルドフーの母リュディヴィーヌの半兄にマルグイヤ【オカール賞(仏GⅡ)・ドラール賞(仏GⅡ)・コンデ賞(仏GⅢ)】がいるのが目立つ程度である。牝系は19世紀英国の名牝アリスホーソンからの流れであるが、本馬から比較的近い日本で馴染みがある馬は、リュディヴィーヌの曾祖母ビムズクイーンの半妹リーガルディマンドの玄孫に当たるフジノウェーブ【JBCスプリント(GⅠ)・東京盃(GⅡ)】と、ビムズクイーンの母メトリーゼロワイヤルの半妹ロワイヤルの牝系子孫であるアインブライド【阪神三歳牝馬S(GⅠ)】くらいである。→牝系:F4号族②

母父バステッドは当馬の項を参照。

競走馬引退後

競走馬を引退した本馬は仏国シャヤック牧場で種牡馬入りした。ブラッシンググルームを経由する以外のレッドゴッド直系という貴重な血筋の持ち主であるが、残念ながら種牡馬としてはまったく成功しておらず、グレード競走及びグループ競走勝ち馬は皆無である。現在も現役種牡馬ではあるらしいが、種付け料が900ユーロという格安にも関わらず産駒は殆ど出しておらず、事実上種牡馬引退状態となっている。

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