スキーパラダイス

和名:スキーパラダイス

英名:Ski Paradise

1990年生

芦毛

父:リファール

母:スキーゴーグル

母父:ロイヤルスキー

GⅠ競走では勝ち切れない事が多かったが、京王杯スプリングCで見せた豪脚と武豊騎手に海外国際GⅠ競走初制覇をプレゼントした事で有名な芦毛の名牝

競走成績:2~4歳時に仏米日英で走り通算成績20戦6勝2着8回3着1回

誕生からデビュー前まで

母スキーゴーグルは、日本の社台ファームが以前米国ケンタッキー州に所有していたフォンテーヌブローファームの生産馬で、社台ファームがフォンテーヌブローファームを売却した後もそのまま繁殖牝馬として残っていた。本馬は、スキーゴーグルの子としてフォンテーヌブローファームで誕生し、社台ファームの代表者である吉田照哉氏の所有馬として、仏国アンドレ・ファーブル調教師に預けられた。

競走生活(2歳時)

2歳9月にエヴリ競馬場で行われたオメール賞(T1200m)で、主戦となるティエリ・ジャルネ騎手を鞍上にデビューして、ファームフレンドの1馬身半差2着に入った(このレースで3着だったリドジャスティスは4年後にBCスプリントを勝利してエクリプス賞最優秀短距離馬に選ばれている)。

2戦目のアランベール賞(仏GⅢ・T1000m)では、次走のミドルパークSを勝ち、後に遠く離れた日本で本馬と邂逅を果たすことになるラフレッチェ賞の勝ち馬ザイーテンが単勝オッズ1.6倍の1番人気、後にプティクヴェール賞を勝ちクリテイウムドメゾンラフィットで2着するウィクソンが単勝オッズ4.2倍の2番人気、後のポルトマイヨ賞・チュラヴィスタH・ホーソーンH勝ち馬ボロディスルーが単勝オッズ4.8倍の3番人気で、本馬は単勝オッズ6.5倍の4番人気だった。レースでは先行するもゴール前で伸びを欠き、ザイーテンとウィクソンの2頭に差されて、勝ったザイーテンから2馬身1/4差の3着に敗れた。

3戦目のグリスペルル賞(T1200m)は、チャンストゥビーワイルドの2着に敗退。4戦目は11月にサンクルー競馬場で行われたガルドフュー賞(T1200m)だった。ここでようやく初勝利を挙げ、2歳時は4戦1勝の成績となった。

競走生活(3歳時)

3歳時は4月にエヴリ競馬場で行われたリステッド競走アンフェルヴィユ賞(T1600m)から始動。2着シアーダーに1馬身差、3着ボロディスルーにはさらに1馬身半差をつけて勝利した。

続いて仏1000ギニー(仏GⅠ・T1600m)に参戦。ここでは、グロット賞を快勝してきた同厩馬バヤが単勝オッズ1.5倍の1番人気、マルセルブサック賞の勝ち馬でグロット賞2着のゴールドスプラッシュが単勝オッズ4.7倍の2番人気、フランソワ・ブータン調教師が送り込んできたマドレーヌズドリームとテンガの2頭カップリングが単勝オッズ5.9倍の3番人気で、ジャルネ騎手がバヤに騎乗したためにドミニク・ブフ騎手に乗り代わっていた本馬は単勝オッズ10.2倍の5番人気だった。スタートが切られるとテンガが先頭を引っ張り、本馬は後方を追走した。そして後方3番手で直線に入ると、残り400m地点で仕掛けて追い込み、残り200m地点で先頭に立った。しかし道中では本馬より少し前を走りながらも仕掛けをワンテンポ遅らせていたマドレーヌズドリームにゴール直前で差されて、短頭差の2着に惜敗した。ここで本馬から3/4馬身差の3着に敗れたゴールドスプラッシュは次走のコロネーションSを勝っている。

続いて出走したサンドリンガム賞(仏GⅢ・T1600m)では、単勝オッズ1.4倍という断然の1番人気に応えて、2着ルーケットに3馬身差で快勝した。次走のアスタルテ賞(仏GⅢ・T1600m)では、コロネーションSでゴールドスプラッシュの首差2着してきたエクリプス賞の勝ち馬エリザベスベイが単勝オッズ2.4倍の1番人気に支持され、本馬は単勝オッズ3.8倍の2番人気だった。ジャルネ騎手がエリザベスベイに騎乗したために、本馬にはS・ギヨ騎手が騎乗した。しかし後方待機策を採った本馬が残り400m地点から鋭く追い込み、残り200m地点で先頭に立って、2着フレッシャーに半馬身差、3着エリザベスベイにはさらに短頭差をつけて勝利した。

次走のジャックルマロワ賞(仏GⅠ・T1600m)では、英1000ギニー・チェヴァリーパークS・モイグレアスタッドS・チェリーヒントンSの勝ち馬で前走サセックスS2着の同世代の牝馬サイエダティ、仏2000ギニー・セントジェームズパレスSを連勝してきた同世代の牡馬キングマンボ、コロネーションSから直行してきたゴールドスプラッシュ、エリザベスベイといった強力なメンバーとの対戦となった。このレースにはジャルネ騎手が都合により出られなかったため、本馬にはパット・エデリー騎手が騎乗した。結果は3着キングマンボには首差で先着したものの、サイエダティに頭差敗れて2着だった。なお、サイエダティも後に日本で本馬と再度顔を合わせる事になる。

続くムーランドロンシャン賞(仏GⅠ・T1600m)では、キングマンボ、前走サセックスSの勝ち馬でジャンプラ賞・パリ大賞2着の同世代の牡馬ビッグストーン、愛2000ギニーの勝ち馬で英2000ギニー2着の同世代の牡馬バラシア、前年の仏1000ギニーを筆頭にマルセルブサック賞・フィリーズマイル・ロウザーS・エミリオトゥラティ賞などを勝っていた一昨年のカルティエ賞最優秀2歳牝馬カルチャーヴァルチャー、前走5着のゴールドスプラッシュといった、これまた高レベルなメンバーとの対戦となった。ビッグストーンが単勝オッズ2.5倍の1番人気で、本馬とキングマンボが並んで単勝オッズ3.7倍の2番人気となった。スタートが切られると、キングマンボの同厩馬ヒュードーと、バラシアの同厩馬フィツカラルドの2頭が先頭に立ち、キングマンボが3番手、本馬がそれをマークするように4番手、ビッグストーンは中団につけた。そのままの態勢で直線に入ると、残り300m地点でキングマンボが先頭に立ったが、そこへ本馬が並びかけていったんは完全にかわした。しかしここからキングマンボが差し返しにかかり、さらに後方からビッグストーンも上がってきて、ゴール前では3頭横一線の勝負となった。そして最後はキングマンボが勝利を収め、本馬は頭差の2着、ビッグストーンはさらに鼻差の3着だった。

次走のフォレ賞(仏GⅠ・T1400m)では、セーネワーズ賞を勝ってきたドルフィンストリート、シティオブヨークS・テンプルフォーチュンSとリステッド競走を2連勝してきたティナーズウェイ(後に米国に移籍して、パシフィッククラシックS2連覇・カリフォルニアンSとGⅠ競走で3勝を挙げる)など4頭が対戦相手となった。本馬が単勝オッズ1.7倍の1番人気、ドルフィンストリートが単勝オッズ2.8倍の2番人気、ティナーズウェイが単勝オッズ6.6倍の3番人気となった。スタートが切られると、本馬と同厩のメシドール賞の勝ち馬アクチュールフランセが先頭に立ち、ティナーズウェイが2番手、ドルフィンストリートが3番手、本馬が4番手につけた。直線に入ると残り300m地点でティナーズウェイが先頭に立ち、そこへすかさず本馬が並びかけた。しかしそこへ直線入り口で進路を失って仕掛けがワンテンポ遅れていたドルフィンストリートが伸びてきて、2頭の争いに加わった。そして最後はドルフィンストリートが勝利を収め、本馬は頭差の2着、ティナーズウェイはさらに3/4馬身差の3着だった。なお、ドルフィンストリートはこれまた後に本馬と日本で顔を合わせる事になる。

その後は米国に遠征して、サンタアニタパーク競馬場で行われたBCマイル(米GⅠ・T8F)に参戦。前年のBCマイルを筆頭にゴーサムS・ETターフクラシックH・ETディキシーH・ダリルズジョイS・ケルソHを勝っていたルアー、メイトリアークS2回・ビヴァリーヒルズS2回・ラモナH2回・ビヴァリーDSとGⅠ競走で7勝を挙げて前年に続いてこの年もエクリプス賞最優秀芝牝馬に選ばれるフローレスリー、前年のBCマイル2着馬でもあるハリウッドダービー・米国競馬名誉の殿堂博物館Sの勝ち馬パラダイスクリーク、ゲイムリーH・ウィルシャーH・アメリカンHの勝ち馬トゥソード、エルクホーンS・バーナードバルークHなどを勝っていた一昨年の愛2000ギニー馬フォースターズオールスターといった地元米国の有力芝馬に加えて、ムーランドロンシャン賞3着後にクイーンエリザベスⅡ世Sを勝ってきたビッグストーン、ムーランドロンシャン賞4着後にクイーンエリザベスⅡ世Sで2着してきたバラシア、ダイアデムS・チャレンジSを連勝してきたスプリントC2着馬キャットレイル、そのスプリントCの勝ち馬ウルフハウンドなど、メンバーが揃いも揃っていた。連覇を目指すルアーが単勝オッズ2.3倍の1番人気に支持される一方で、本馬は単勝オッズ19.2倍で9番人気の低評価だった。レースでは最内枠発走から好スタートを切ると、ルアーを先に行かせて道中は2番手を追走。三角でいったん3番手に下がったが、四角で盛り返すと直線で逃げるルアーを追撃。結局ルアーには2馬身1/4差届かなかったが2着を確保した。3歳時は8戦3勝2着5回という安定した成績を残したが、2着5回は全てGⅠ競走という、典型的な善戦馬になってしまっていた。

競走生活(4歳前半)

4歳になった本馬の最初の目標は日本の安田記念となった。安田記念はこの前年1993年から国際競走になっており、海外馬も参戦可能になっていたのである。そして来日した本馬は、この年から国際競走に指定されていた前哨戦の京王杯スプリングC(日GⅡ・T1400m)に出走した。本馬の鞍上はジャルネ騎手から地元日本の武豊騎手にスイッチしていた。このレースに出てきた本馬以外の海外馬は、ドルフィンストリート、サイエダティ、ザイーテン、ダーボンの4頭であり、ザイーテンの同厩馬ダーボンを除く3頭全てが、かつて本馬と対戦経験がある馬だった。そしてダーボン以外の海外馬4頭は全てこのレースがこの年の初戦だった。

一方の日本馬勢は少々層が薄く、前年のエリザベス女王杯を人気薄で勝利したホクトベガが実績最上位で、当時の日本におけるマイル短距離路線のトップクラスの出走は無かった。というわけで上位人気はダーボンを除く海外馬4頭が占領したのだが、その4頭の中で唯一のGⅠ競走未勝利馬だった本馬が単勝オッズ2.2倍の1番人気に支持され、ドルフィンストリートが単勝オッズ5.9倍の2番人気、サイエダティが単勝オッズ7倍の3番人気、ザイーテンが単勝オッズ10.8倍の4番人気で、ホクトベガが単勝オッズ12.1倍で日本馬最上位の5番人気となった。

スタートが切られると、サラブレッドクラブ・ラフィアンの走る広告塔マイネルヨースが先頭に立ち、ザイーテン、本馬、マザートウショウなどがそれを追って先行した。そのまま本馬は4番手で直線に入ってくると、素晴らしい豪脚を繰り出して抜け出し、2着ザイーテンに1馬身半差で完勝した。鞍上武豊騎手の手は直線でも殆ど動いておらず、この勝ち方は日本中の競馬ファンの度肝を抜いた。なお、ザイーテンから鼻差の3着にサイエダティ、さらに1馬身半差の4着にドルフィンストリートと海外馬が上位を独占し、日本馬の最高順位はホクトベガの5着だった。

次走の安田記念(日GⅠ・T1600m)では、京王杯スプリングCで上位を独占した海外馬4頭が揃って参戦し、さらに前年の香港国際ボウルを勝っていたウィニングパートナーズを含めた海外馬5頭体制となった。対する日本馬勢は、京王杯スプリングCに比べると一枚上手のメンバー構成ではあったが、目立つ馬は、前年のスプリンターズSや前走のダービー卿チャレンジトロフィーを勝っていた短距離王サクラバクシンオー、阪神牝馬特別・京都牝馬特別・マイラーズCと3連勝してきた前年のエリザベス女王杯2着馬ノースフライト、ダービー卿チャレンジトロフィーで2着してきたドージマムテキの3頭くらい(後の香港国際Cの勝ち馬フジヤマケンザンもいたが、この時点では重賞未勝利)であり、他の出走馬は京王杯スプリングCとそれほどレベルが変わらなかった。

そんなわけで、本馬が単勝オッズ2.6倍の1番人気に支持され、GⅠ競走4勝と海外における実績では最上位だったサイエダティが単勝オッズ4倍の2番人気、サクラバクシンオーが単勝オッズ6.9倍で日本馬最上位の3番人気、ドルフィンストリートが単勝オッズ7倍の4番人気、ノースフライトが同じ単勝オッズ7倍で僅差の5番人気、ザイーテンが単勝オッズ16.9倍の6番人気、ウィニングパートナーズが単勝オッズ38.6倍の7番人気と続いていた。

ところが本馬は前走から16kgの体重増となっていた。小柄な馬である本馬(京王杯スプリングCにおける馬体重は432kg)にとって、16kgの増加というのは影響が大きいのではないかと、日本のファンからは不安視する声も聞かれた。体重が増えていた海外馬は本馬だけでなく、サイエダティはプラス8kg、ドルフィンストリートはプラス4kg、ザイーテンはプラス6kgだった。この年の海外馬(特に本馬)にいったい何が起きていたのかについては調べても分からない。日本に来て美味しいものを食べ過ぎたのだと冗談めかして言う意見は頻繁に見かけるが、案外それが真実に近いかもしれない。どの海外馬の陣営も日本遠征に慣れていなかったはずだから、不必要に多くの飼料を与えてしまった可能性は否定できないからである。

さて、スタートが切られると最初に先頭に立ったマザートウショウをかわしてマイネルヨースが先頭に立ち、サクラバクシンオー、ザイーテン、ドージマムテキなどが3~5番手につけ、本馬とサイエダティは6~7番手につけた。そのままの態勢で直線に入ってきたが、大幅体重増の懸念が的中し、やはり本馬の伸びは悪かった。本馬とは全然違う勢いで外側から伸びてきたのは、道中は馬群の後方を追走していたノースフライトだった。瞬く間にノースフライトに置き去りにされた本馬は、さらに内側のドルフィンストリートや外側のトーワダーリンにも差され、前を行くサクラバクシンオーは捕らえられずという始末で、勝ったノースフライトから3馬身半差の5着と完敗を喫してしまった。京王杯スプリングCで上位を独占した海外馬勢のこのレースにおける成績はドルフィンストリートの3着が最高で、サイエダティは7着、ザイーテンは12着(ウィニングパートナーズは14着)と、全体的に振るわなかった。安田記念の海外馬による初制覇は、この翌年に武豊騎手騎乗のハートレイクが勝つまでもう1年待たなければならなかった。

本馬はこの後地元の仏国に戻ったが、引き続き武豊騎手が主戦を務めることになった。その理由は、本馬と同じく吉田氏の所有馬だった4歳馬ホワイトマズルが、前年にいずれも2着だったキングジョージⅥ世&クイーンエリザベスDSと凱旋門賞に今年も出走予定であり、2競走とも武豊騎手を鞍上に据える腹積もりだった吉田氏が彼を欧州の競馬に少しでも慣れさせようとしたためであるらしい。

競走生活(4歳後半)

帰国初戦となった7月のアスタルテ賞(仏GⅡ・T1600m)では、英1000ギニー・EPテイラーS・英チャンピオンS・オペラ賞などを勝っていた5歳牝馬ハトゥーフという強敵が出現した。ハトゥーフが単勝オッズ2.3倍の1番人気、本馬が単勝オッズ4.4倍の2番人気、サンドランガン賞を勝ってきたルナフェアリーが単勝オッズ5倍の3番人気、コロネーションSで2着してきたエターナルレーヴが単勝オッズ5.5倍の4番人気となった。結果はハトゥーフが勝ち、本馬は3/4馬身差の2着だったが、斤量は本馬よりハトゥーフのほうが2kg重かった(実績ではハトゥーフのほうが明らかに上だったのだが)し、武豊騎手もまだ欧州の競馬に慣れていなかったから、この敗戦は致し方ないだろう。

次走のジャックルマロワ賞(仏GⅠ・T1600m)では、サセックスSで4着してきたサイエダティに加えて、仏1000ギニー・仏オークスを連勝してきたイーストオブザムーン、前年のBCマイルでは5着に終わるもこの年のクイーンアンSを勝ちサセックスSで2着してきたバラシア、ロッキンジSの勝ち馬エンペラージョーンズ、コロネーションSで3着してきた愛1000ギニー馬メサーフ、クリテリウムドメゾンラフィット・ダフニ賞の勝ち馬シニュディヴァンなどが対戦相手となった。キングマンボの半妹イーストオブザムーンが単勝オッズ1.9倍の1番人気、バラシアとエンペラージョーンズのカップリングが単勝オッズ3.4倍の2番人気、本馬が単勝オッズ5倍の3番人気となった。本馬はここでは3番手を追走して、残り400m地点で先頭に立ったが、残り200m地点から失速して、イーストオブザムーン、サイエダティ、メサーフ、シニュディヴァンに次々と差され、勝ったイーストオブザムーンから6馬身3/4差の5着と完敗した。

続くムーランドロンシャン賞(仏GⅠ・T1600m)では、イーストオブザムーン、前走2着のサイエダティ、同4着のシニュディヴァン、この年のガネー賞を勝っていたマリルド、前年のBCマイルでは6着に終わるもこの年のイスパーン賞でGⅠ競走3勝目を挙げていたビッグストーン、この年の仏2000ギニー馬グリーンチューンの計6頭が対戦相手となった。イーストオブザムーンが単勝オッズ1.4倍の1番人気、マリルドが単勝オッズ4.2倍の2番人気、サイエダティが単勝オッズ8.5倍の3番人気、ビッグストーンが単勝オッズ8.8倍の4番人気、グリーンチューンが単勝オッズ9.8倍の5番人気で、本馬は単勝オッズ10.2倍の6番人気まで評価を落としていた。

本馬の鞍上武豊騎手はジャックルマロワ賞の後に一時的に米国アーリントンパーク競馬場に遠征しており、レース数日前に仏国にとんぼ返りしていた。ファーブル師はあまり騎手に指示をしない調教師だったが、このときは武豊騎手に「抑えて内側に入れるように」と指示していたという。そしてファーブル師の指示どおりにレースを進めた武豊騎手騎乗の本馬は、道中で上手く折り合いをつけると、直線で有力馬が一団となった馬群の隙間を突いて伸び、2着イーストオブザムーンに3/4馬身差で優勝。自身のGⅠ競走初勝利だけでなく、鞍上の武豊騎手にも日本人騎手による海外国際GⅠ競走初制覇という快挙をプレゼントした。

本馬は続いて渡英してクイーンエリザベスⅡ世S(英GⅠ・T8F)に出走。イーストオブザムーン、前走4着のビッグストーン、同5着のサイエダティ、ジャックルマロワ賞3着後にセレブレーションマイルを勝ってきたメサーフ、ジャックルマロワ賞6着から直行してきたバラシアの既対戦馬5頭に加えて、サセックスSを勝ってきたディスタントヴュー、愛2000ギニーを15馬身差で圧勝していたタートルアイランドも出走してきた。出走馬9頭中本馬を含む8頭がGⅠ競走勝ち馬であり、同レース史上でも稀に見るほどのメンバー構成となった。しかし意外にも勝ったのは、唯一のGⅠ競走未勝利馬だったために単勝オッズ67倍の最低人気だったマルーフ。単勝オッズ8倍の3番人気で出走した武豊騎手騎乗の本馬は、スタートで出遅れて後方からの競馬となってしまい、残り1ハロン地点から猛然と追い上げるも、バラシアやビッグストーンにも届かず、マルーフの4馬身差4着に敗れた。

武豊騎手はこの8日後に行われた凱旋門賞でホワイトマズルに騎乗したが6着に敗退。このときの騎乗ぶりがホワイトマズルを管理していたピーター・チャップルハイアム調教師を始めとする各方面から散々に酷評された影響があったのか、凱旋門賞の2週間後に行われたフォレ賞(仏GⅠ・T1400m)で本馬に騎乗したのは武豊騎手ではなく、本馬とは久々のコンビとなるジャルネ騎手だった。対戦相手は、クイーンエリザベスⅡ世Sで3着だったビッグストーン、スプリントCの勝ち馬ラヴィニアフォンタナ、愛1000ギニーでメサーフの2着していた英1000ギニー馬ラスメニナス、英シャンペンS・ポルトマイヨ賞の勝ち馬アンブレスト、ロンポワン賞を勝ってきたミストフライト、モイグレアスタッドS・ファルマスSなどの勝ち馬レモンスフレ、パレロワイヤル賞・ハンガーフォードSの勝ち馬ヤングアーン、グラッドネスSの勝ち馬リッジウッドベンなどだった。本馬が単勝オッズ2.1倍の1番人気に支持され、ビッグストーンが単勝オッズ4.2倍の2番人気だった。ここでも本馬はスタートから最後方につけた。そして直線の末脚に賭けたのだが、残り400m地点で馬群に包まれてしまい、脚を余して、勝ったビッグストーンから4馬身差の6位入線(4位入線のヤングアーンが進路妨害で失格になったために5着に繰り上がり)に敗退。

このときのジャルネ騎手の騎乗ぶりは、武豊騎手の凱旋門賞以上に酷かったため、本馬の引退レースとなったチャーチルダウンズ競馬場で行われたBCマイル(米GⅠ・T8F)では、武豊騎手が乗る事になった。対戦相手は、同競走史上初の3連覇を目指すルアー、アーケイディアH・シューメーカーHの勝ち馬ミーガンズインターコ、リュパン賞・カーネルFWケスターHの勝ち馬ヨハンクアッツ、ウィルロジャーズH・シネマHの勝ち馬アンフィニッシュドシンフ、ビッグストーン、前走2着のミストフライト、クイーンエリザベスⅡ世Sで2着だったバラシア、同5着だったディスタントヴュー、同7着だったイーストオブザムーンなどだった。ルアーが単勝オッズ1.9倍の1番人気に支持され、本馬は単勝オッズ12.2倍の5番人気だった。本馬は前年と同様に内枠発走だったが、好スタートだった前年と異なりスタートはあまり良くなかった。そのまま馬群の中団を追走したが、直線に入っても伸びず、勝ったバラシアから11馬身差の10着と大敗。4歳時8戦2勝の成績で競走馬を引退した。

血統

Lyphard Northern Dancer Nearctic Nearco Pharos
Nogara
Lady Angela Hyperion
Sister Sarah
Natalma Native Dancer Polynesian
Geisha
Almahmoud Mahmoud
Arbitrator
Goofed Court Martial Fair Trial Fairway
Lady Juror
Instantaneous Hurry On
Picture
Barra Formor Ksar
Formose
La Favorite Biribi
La Pompadour
Ski Goggle ロイヤルスキー Raja Baba Bold Ruler Nasrullah
Miss Disco
Missy Baba My Babu
Uvira
Coz o'Nijinsky Involvement Intent
Lea Lane
Gleam Tournoi
Flaring Top
Mississippi Siren Delta Judge Traffic Judge Alibhai
Traffic Court
Beautillion Noor
Delta Queen
Cable Censor Sailor Eight Thirty
Flota
New Lede Tudor Minstrel
Obedient

リファールは当馬の項を参照。

母スキーゴーグルは現役成績6戦5勝。エイコーンS(米GⅠ)・レイルバードS(米GⅢ)・サンタイサベルSを勝ち、敗戦は現役最後のレースとなったリンダヴィスタH(米GⅢ)の2着のみという名牝。前述したように米国ケンタッキー州フォンテーヌブローファームで繁殖生活を送り、本馬の半兄スキーチャンプ(父アイスカペイド)【5月25日大賞(亜GⅠ】、半兄スキーチーフ(父チーフズクラウン)【プティクヴェール賞(仏GⅢ)】、日本で走った半弟スキーキャプテン(父ストームバード)【きさらぎ賞(GⅢ)・2着朝日杯三歳S(GⅠ)】、同じく日本で走った半弟バーボンカントリー(父シアトリカル)【すみれS】などの活躍馬を次々と出している。スキーゴーグルの近親にはあまり活躍馬はいないが、スキーゴーグルの曾祖母ニューレードの半兄にはドントアリバイ【サンルイレイS・サンフアンカピストラーノ招待H】、半弟にはアイアンルーラー【カウディンS・ジェロームH】がいる。ニューレードの母オベディエントの半妹ミスティババの牝系子孫には、エーピーインディを筆頭とする多くの活躍馬がいる。→牝系:F3号族④

母父ロイヤルスキーは米国産馬で、競走馬としても米国で走り現役成績14戦8勝2着2回。2歳時にローレルフューチュリティ(米GⅠ)・レムセンS(米GⅡ)・ヘリテージS(米GⅢ)を勝つなど9戦6勝という中身の濃い成績を残した。しかし3歳時は調整に失敗し、5戦して2勝止まり、ステークス競走の入着は無かった。競走馬引退後は米国ケンタッキー州マーティファームで種牡馬入りしてスキーゴーグルなどを出した後、1980年に日本に輸入された。日本では人気種牡馬であり、桜花賞馬アグネスフローラを出すなど産駒成績も良好だった。29歳まで現役種牡馬として頑張り続け、2004年に老衰のため30歳で他界した。アグネスフローラが母として東京優駿馬アグネスフライトと皐月賞馬アグネスタキオンを産んだ他に、ワカオライデンが後継種牡馬としてライデンリーダーを出すなど成功を収めている。ロイヤルスキーの父ラジャババはボールドルーラーの直子で、現役成績41戦7勝。アリゲーターH・フランシススコットキーS・デラウェアバレーH・ボールドルーラーパースを制した程度の中級競走馬だった。それでも種牡馬としては父の後継の一頭として活躍し、1980年の北米首位種牡馬となっている。

競走馬引退後

競走馬を引退した本馬は来日して社台ファームで繁殖入りした。6歳時には初子となる牝駒アグネスショコラ(父サンデーサイレンス)を産んだ。アグネスショコラは9戦2勝の成績だった。7歳時には2番子の牝駒エアトゥーレ(父トニービン)を産んだ。エアトゥーレは23戦6勝、阪神牝馬S(GⅡ)を勝ち、遠征先の仏国でモーリスドギース賞(仏GⅠ)に2着するなど、本馬の子の中で最も優れた競走成績を残した。8~10歳時は産駒がおらず、11歳時に産んだ3番子の牡駒(父エリシオ)は名前が付けられないまま終わった。12歳時には4番子の牝駒アスピリンスノー(父エルコンドルパサー)を産んだ。アスピリンスノーは21戦3勝、、フローラS(GⅡ)で3着して優駿牝馬(GⅠ)にも出走したが、シーザリオの15着に敗れた。14歳時には5番子の牝駒フレジェール(父アグネスタキオン)を産んだ。フレジェールは15戦2勝の成績だった。16歳時には6番子の牡駒サトノパラダイス(父タイキシャトル)を産んだ。サトノパラダイスは4戦2勝の成績だった。18歳時には7番子の牡駒プランスデトワール(父ディープインパクト)を産んだ。プランスデトワールは2015年現在も現役競走馬で、4勝を挙げている。プランスデトワールが最後の産駒であり、現在は既に繁殖生活から退いている。

産駒数は少ないが勝ち上がり率が高く、繁殖牝馬としての成績はまずまずだった。また、孫世代からは、アグネスショコラの子であるゴールデンチケット【兵庫チャンピオンシップ(GⅡ)】、エアトゥーレの子であるキャプテントゥーレ【皐月賞(GⅠ)・デイリー杯2歳S(GⅡ)・朝日チャレンジC(GⅢ)2回】とアルティマトゥーレ【セントウルS(GⅡ)・シルクロードS(GⅢ)】兄弟などが登場しており、牝系を発展させ始めている。

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