ミッドウェイレディ

和名:ミッドウェイレディ

英名:Midway Lady

1983年生

鹿毛

父:アレッジド

母:スムーズボア

母父:ヒズマジェスティ

英1000ギニーを勝つスピードと英オークスを勝つスタミナを併せ持ったリボー直系の結晶は、母としても英オークス馬を産んで成功を収める

競走成績:2・3歳時に英仏で走り通算成績6戦5勝2着1回

誕生からデビュー前まで

米国ケンタッキー州においてシャドウローンファームとエドワード・A・セルツァー氏により生産された。幼少期から大柄で力強さを感じさせる馬だったという。1歳9月のキーンランドセールに出品され、馬主団体ロビン・エンタープライズにより4万2千ドルで購入された。この価格は父アレッジドの当時における種付け料の半額にも満たない値段であり、優れた馬体の持ち主だったにも関わらずこの安値になった理由は、脚が湾曲していたためらしい。ロビン・エンタープライズに購入された本馬だが、競走馬としては生産者であるシャドウローンファームの所有者の一人であるハリー・レーニア氏名義で走っており、この辺りの経緯は英タイムフォーム社も不明瞭であるとしている。

競走生活(2歳時)

英国ベン・ハンブリー調教師に預けられた本馬は、2歳8月に英国ヤーマウス競馬場で行われた芝7ハロンの未勝利ステークスでデビューして、後にフィリーズマイルやヨークシャーオークスを制するアントールドの1馬身半差2着。次走は同月末にヤーマウス競馬場で行われた同コースの未勝利ステークスとなり、これを4馬身差で制して勝ち上がった。

秋はドンカスター競馬場に向かい、メイヒルS(英GⅢ・T8F)に出走。レスター・ピゴット騎手が騎乗した本馬は単勝オッズ6.5倍で上位人気の一角を占めた。そして後方待機策から抜け出して、2着テンダーラヴィングケアに3馬身差で勝利した。

さらに仏国に遠征してマルセルブサック賞(仏GⅠ・T1600m)に参戦。今回もピゴット騎手を鞍上に迎えた本馬は、ここでは単勝オッズ1.7倍の1番人気に支持された。レースでは好位を進み、直線入り口では2番手。直線で先頭に立つと、後ろからフィールディとリヴァーブライドの2頭が迫ってきたが、最後は2着フィールディに首差、3着リヴァーブライドにもさらに首差で優勝した。接戦にはなったが、最後まで本馬が抜かれそうには見えなかったという。2歳時の成績は4戦3勝だった。

競走生活(3歳時)

重厚な血統構成からスタミナ豊富とみなされた本馬は、3歳初めには既に英オークスの最有力候補となっていた。しかし英オークスの前に英1000ギニー(英GⅠ・T8F)に出走した。ピゴット騎手が前年末にいったん引退したため、鞍上はレイ・コクレーン騎手に代わっていた。距離適性、ぶっつけ本番、乗り代わりなど不安要素が多かった故か、1番人気は前哨戦のネルグウィンSを勝ってきたソニックレディ(単勝オッズ2.5倍)に譲り、単勝オッズ11倍での出走となった。レースでは、先行したシャーガー産駒のフレッドダーリンSの勝ち馬メイスーンとソニックレディの2頭が、残り2ハロン地点で馬群から抜け出して先頭に立った。そしてこの2頭が叩き合いを開始した次の瞬間に、馬群の好位を進んでいた本馬が猛然と追いかけてきて、残り1ハロン地点で前の2頭に並びかけた。ここから3頭横一線の叩き合いがしばらく続いたが、最後に本馬が僅かに前に出て、2着メイスーンに3/4馬身差、3着ソニックレディにはさらに短頭差をつけて勝利した。ハンブリー師は、スタミナ豊富な本馬に対しては、確かに当初から英オークスを最大目標とした調整を施していたけれども、ピゴット元騎手が本馬は英1000ギニーを勝てるだけのスピードも有していると意見を述べたために、出走に踏み切った旨をレース後に証言している。

次走は最大目標の英オークス(英GⅠ・T12F)だった。やはりコクレーン騎手が騎乗した本馬は、ここでは単勝オッズ2.875倍の1番人気に支持された。スタートが切られると、アントールドが先頭を伺い、本馬やメイスーンは馬群の中団につけた。そのままの態勢で直線に入ると、アントールドが一気に加速して後続を引き離しにかかった。しかし直線入り口で7~8番手だった本馬とメイスーンが叩き合いながら伸びてきて、残り1ハロン半地点ではこの3頭が横一線となった。ここからアントールドが粘りを発揮してなかなか先頭を譲らなかったが、残り半ハロン地点でようやく本馬がアントールドをかわして先頭に立ち、アントールドを1馬身差の2着に、メイスーンをさらに3/4馬身差の3着に、後の愛オークス馬カラースピン(母としてオペラハウスなど活躍馬を何頭も産んでいる)をさらに4馬身差の4着に破って勝利した。勝ちタイムの2分35秒6は3日前の英ダービーでシャーラスタニダンシングブレーヴを破って記録した2分37秒13より1秒53も速かった。

しかしこのレースの後に屈腱炎を発症したため、英オークス以降はレースに出ることなく、8月に競走馬引退が発表された。

血統

Alleged Hoist the Flag Tom Rolfe Ribot Tenerani
Romanella
Pocahontas Roman
How
Wavy Navy War Admiral Man o'War
Brushup
Triomphe Tourbillon
Melibee
Princess Pout Prince John Princequillo Prince Rose
Cosquilla
Not Afraid Count Fleet
Banish Fear
Determined Lady Determine Alibhai
Koubis
Tumbling War Admiral
Up the Hill
Smooth Bore His Majesty Ribot Tenerani Bellini
Tofanella
Romanella El Greco
Barbara Burrini
Flower Bowl Alibhai Hyperion
Teresina
Flower Bed Beau Pere
Boudoir
French Leave Damascus Sword Dancer Sunglow
Highland Fling
Kerala My Babu
Blade of Time
Marche Lorraine Blue Moon Massine
Halston
Croix de Lorraine Madrigal
Gloire de Lorraine

アレッジドは当馬の項を参照。

母スムーズボアは現役時代に2歳から4歳まで米国で42戦して5勝を挙げている。本馬の半妹オーソースムーズ(父ニジンスキー)の孫にジョイントエフォート【ラトロワンヌS(米GⅢ)・ドッグウッドS(米GⅢ)】が、日本に繁殖牝馬として輸入された半妹サバルヤード(父ノーザンダンサー)の曾孫にデスペラード【ステイヤーズS(GⅡ)2回・京都記念(GⅡ)】が、全妹プリペットの子にグリーンランダー【ロベールパパン賞(仏GⅡ)】がいる。スムーズボアの従兄妹にはフレンチコロニアル【マンノウォーS(米GⅠ)・ニッカボッカーH(米GⅢ)】、クレフダルジャン【テストS(米GⅡ)】がおり、近親にはスイスヨーデラー【ハリウッドフューチュリティ(米GⅠ)】、シルヴァーヴォイス【マンハッタンH(米GⅠ)】、ナインキーズ【アップルブロッサムH(米GⅠ)】などの名前も見られる。→牝系:F8号族②

母父ヒズマジェスティは当馬の項を参照。

本馬は父系も母父系もリボーの直系という特徴的な血統構成の持ち主である。

競走馬引退後

競走馬を引退した本馬は、引退年の11月に行われたキーンランド繁殖牝馬セールにおいて、ドバイのシェイク・ハムダン殿下により330万ドルで購入され、彼が所有していたシャドウェルスタッドで繁殖入りした。5歳時に産んだ初子の牝駒ウムニヤティー(父グリーンデザート)が、愛1000ギニー(愛GⅠ)で3着に入るなど6戦2勝の成績を残した。その後も9歳時に産んだ4番子の牡駒(騙馬)フェイトハルクフェア(父クリス)が障害レースを主に走り99戦20勝の成績を残した。平地のグループ競走勝ち馬はなかなか出せなかったが、17歳時に産んだ6番子の牝駒イトナブ(父グリーンデザート)がプリンセスロイヤルS(英GⅢ)を勝利するなど5戦3勝の成績を挙げた。そして19歳時に産んだ7番子の牝駒エスワラー(父アンフワイン)が英オークス(英GⅠ)を優勝して母子制覇を果たし、5戦3勝の成績を残している。23歳時に最後の子となる10番子の牝駒サナアベル(父アルハース)を産んだのを最後に繁殖生活から退いた。2015年時点で32歳という高齢だが、他界したという話は今のところ伝わってこない。ウムニヤティーの牝系子孫が発展を始めており、本馬の曾孫世代にブラジルのGⅠ競走ブラジル共和国大統領大賞を勝ったマルテスが出ている。

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