クリス
和名:クリス |
英名:Kris |
1976年生 |
牡 |
栗毛 |
父:シャーペンアップ |
母:ダブリーシュア |
母父:リライアンス |
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生涯3着以下無しの安定感を誇った1980年代英国を代表する名マイラーは種牡馬としても成功しエタン直系が欧州で繁栄する立役者となる |
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競走成績:2~4歳時に英で走り通算成績16戦14勝2着2回 |
誕生からデビュー前まで
第9代ハワード・デ・ウォルデン男爵ジョン・スコット・エリス卿により生産・所有された英国産馬で、英国ヘンリー・セシル調教師に預けられた。主戦はジョー・マーサー騎手が務めた。
競走生活(2歳時)
2歳時にレスター競馬場で行われた芝5ハロンの未勝利ステークスでデビューして勝利。次走のセリンジS(T6F)も勝ち、3戦目のマーストンムーアS(T6F)も勝利した。さらに10月のホーリスヒルS(GⅢ・T7F)では、単勝オッズ1.83倍の1番人気に応えて、2着ハードグリーンに首差で勝利を収めた。
2歳時は4戦全勝の成績だったが、強敵との対戦は無く、本馬の評価は世代トップというわけにはいかなかった。この時点で評価が高かったのはデューハーストSを3馬身差で快勝したトロモスで、翌年の英2000ギニーにおける最有力候補だった。
競走生活(3歳時)
しかし3歳になり、トロモスがシーズン初戦のクレイヴンSで本馬と同厩のソラリオSの勝ち馬リファーズウィッシュに2馬身半差をつけられて2着に敗れ、逆に本馬がシーズン初戦となった4月のグリーナムS(GⅢ・T7F)で、リッチモンドSの勝ち馬でミドルパークS2着のヤングジェネレーションを3馬身差の2着に破って快勝すると、本馬とトロモスの立場は逆転し、本馬が英2000ギニーの最有力候補に躍り出た。
しかし1番人気に支持された英2000ギニー(GⅠ・T8F)では、先に抜け出した単勝オッズ21倍の伏兵タップオンウッドに追いつけずに、半馬身差の2着に惜敗してしまった(本馬から短頭差の3着がヤングジェネレーション)。
セシル師は本馬をその後もマイル路線に進ませて英国のトップマイラーに育てる事により、英2000ギニーの汚名を返上する事を企図した。まずはヘロンS(T7F)を勝利し、続いてセントジェームズパレスS(GⅡ・T8F)に出走。ここでは英2000ギニー3着後にロッキンジSとジャンプラ賞を勝っていたヤングジェネレーションを抑えて、単勝オッズ2.1倍の1番人気に支持された。レースでは直線入り口3番手から一気に先頭に立ち、2着ヤングジェネレーションに1馬身半差で勝利した。
次走のサセックスS(GⅠ・T8F)では、ジュライC・デュークオブヨークS・コーク&オラリーSを勝ってきたサッチング、前年の英チャンピオンS・サンチャリオットSの勝ち馬スイスメイドといった有力古馬勢が対戦相手となったが、本馬が単勝オッズ1.8倍の1番人気に支持された。そして期待どおりに、2着スイスメイドに5馬身差をつけて圧勝した。
次走のクリスタルマイル(GⅡ・T8F)では、単勝オッズ1.3倍という圧倒的な1番人気に応えて、クイーンアンS・ブリガディアジェラードS2回・パース賞を勝っていたジェラビーを3/4馬身差の2着に抑えて勝利。
クイーンエリザベスⅡ世S(GⅡ・T8F)では、単勝オッズ1.73倍の1番人気に支持された。道中は逃げ馬を見るように2~3番手を進むと、直線に入ってすぐの残り2ハロン半地点で先頭に立ち、2着フォヴェロスに5馬身差、3着ジェラビーにはさらに3馬身差をつけて圧勝した。
次走のチャレンジS(GⅢ・T7F)でも、単勝オッズ1.44倍の1番人気に応えて、スプリントC・コーンウォリスS・ダイアデムSを勝っていたアブサロムを2馬身半差の2着に退けて楽勝。8戦7勝の成績で3歳時を終えた。
英国内における強豪マイラーをことごとく打ち負かした本馬だったが、仏国のマイル路線を支配していた同世代のアイリッシュリヴァーとの対戦は、お互いに本国を離れることが無かったために実現しなかった(アイリッシュリヴァーは3歳限りで引退している)。なお、2頭の国際クラシフィケーションにおける評価は131ポンドで全く互角だったが、英タイムフォーム社のレーティングでは本馬が135ポンド、アイリッシュリヴァーが131ポンドで、本馬のほうが上位となっている。
競走生活(4歳時)
4歳時も現役を続け、この年は10ハロン戦まで活躍の場を広げる事が計画された。まずはヘイドックパーク競馬場で行われたウィンドウズS(T7F)から始動して、2着ハビチュエイトに1馬身差をつけてコースレコードで勝利。次走のロッキンジS(GⅡ・T8F)でも単勝オッズ1.44倍の1番人気に応えて、2着フォヴェロスに3/4馬身差で勝利した。さらにクラウンオブクラウンズS(T8F)も制し、次走は初の10ハロン戦となるエクリプスSが予定されていた。しかし脚の筋肉に軽度の負傷を起こしたために結局回避となった。
その後は気性がやや難しくなったため調教が困難となり、サセックスSにも出走できなかったが、セシル師は何とか立て直して9月のクイーンエリザベスⅡ世S(GⅡ・T8F)で本馬を復帰させた。このレースにはこの年の英2000ギニー勝ち馬ノウンファクトも参戦していた。ノウンファクトの英2000ギニー制覇はヌレイエフの失格による繰り上がり勝利だったため、やや評価は低かった。しかしこのクイーンエリザベスⅡ世Sでは、本馬とノウンファクトの一騎打ちとなった。2番手を追走して直線で抜け出した本馬と、本馬をマークするように追走していたノウンファクトの2頭が直線で内外離れた大激戦を演じた末に、ノウンファクトが僅かに前に出て勝利し、本馬は首差2着に敗れた(3着ギフトラップドはさらに6馬身後方)。このレースは1980年の“Race of the Year”と呼ばれるほどの名勝負であり、機会があれば一見する事をお勧めする。
本馬はこの生涯2度目の敗戦を最後に、4歳時4戦3勝の成績で競走馬を引退したが、この敗戦で何も失わなかったと評されている。英2000ギニーの段階ではやや評価が低かったノウンファクトだったが、ここで本馬を打ち負かした事により、英タイムフォーム社のレーティングで135ポンドという高評価を得ることが出来た(本馬は134ポンド)。
血統
Sharpen Up | エタン | Native Dancer | Polynesian | Unbreakable |
Black Polly | ||||
Geisha | Discovery | |||
Miyako | ||||
Mixed Marriage | Tudor Minstrel | Owen Tudor | ||
Sansonnet | ||||
Persian Maid | Tehran | |||
Aroma | ||||
Rocchetta | Rockefella | Hyperion | Gainsborough | |
Selene | ||||
Rockfel | Felstead | |||
Rockliffe | ||||
Chambiges | Majano | Deiri | ||
Madgi Moto | ||||
Chanterelle | Gris Perle | |||
Shah Bibi | ||||
Doubly Sure | Reliance | Tantieme | Deux-Pour-Cent | Deiri |
Dix Pour Cent | ||||
Terka | Indus | |||
La Furka | ||||
Relance | Relic | War Relic | ||
Bridal Colors | ||||
Polaire | Le Volcan | |||
Stella Polaris | ||||
Soft Angels | Crepello | Donatello | Blenheim | |
Delleana | ||||
Crepuscule | Mieuxce | |||
Red Sunset | ||||
Sweet Angel | Honeyway | Fairway | ||
Honey Buzzard | ||||
No Angel | Nasrullah | |||
Fair Angela |
父シャーペンアップは当馬の項を参照。
母ダブリーシュアは現役時代5戦未勝利に終わったが、繁殖牝馬としては本馬の全弟ダイイシス【ミドルパークS(英GⅠ)・デューハーストS(英GⅠ)】、全弟キーン(種牡馬としてウッドワードS・ジョッキークラブ金杯の勝ち馬リヴァーキーンを輩出)、半弟ルディメンタリー(父ヌレイエフ)【トラストハウスフォルテマイル(英GⅡ)】を産むなど、非常に優秀な成績を収めた。本馬の半妹プリス(父プリアモス)の子にはプリズマティック【ロッキンジS(英GⅡ)】、パーペンディキュラー【プリンスオブウェールズS(英GⅡ)・ドイツ統一賞(独GⅢ)】がいる。ダブリーシュアの母ソフトエンジェルスはロイヤルロッジSの勝ち馬。ソフトエンジェルスの半兄にはスウィートモス【ディーS・ダンテS・ゴードンS】、半弟にはスカーリー【カンバーランドロッジS】がいる。近親とは言えないが、日本で種牡馬として大活躍したライジングフレームも同じ牝系。→牝系:F2号族③
母父リライアンスは当馬の項を参照。
競走馬引退後
競走馬を引退した本馬は400万ポンドの種牡馬シンジケートが組まれて、エリス卿が所有する英国ソーントンスタッドで種牡馬入りした。初年度産駒のオーソーシャープの活躍により1985年には2世代の産駒だけで英愛首位種牡馬になるなど、種牡馬としても活躍し、全弟ダイイシスと共にエタンの系統を後世に伝える原動力となった。産駒のステークスウイナーは80頭、ステークスウイナー率は約10%である。自身はマイル路線で活躍したが、産駒はある程度距離まで延長が可能である。ただし、牝馬の活躍馬が多いため後継種牡馬にはあまり恵まれていない。1994年にソーントンスタッドが他者に売却されると、エリス卿が所有する英国プランテーションスタッドに移動した。2002年2月に種牡馬を引退し、2004年11月に心不全のためプランテーションスタッドにおいて28歳で他界した。日本ではネオユニヴァース、クリスザブレイヴ、チューニー、アズマビヨンドの母父として知られている。
主な産駒一覧
生年 |
産駒名 |
勝ち鞍 |
1982 |
Fitnah |
サンタラリ賞(仏GⅠ)・ヴァントー賞(仏GⅢ)・ノネット賞(仏GⅢ)・プランスドランジュ賞(仏GⅢ) |
1982 |
Kozana |
マルレ賞(仏GⅡ)・サンドランガン賞(仏GⅢ) |
1982 |
英1000ギニー(英GⅠ)・英オークス(英GⅠ)・英セントレジャー(英GⅠ)・フィリーズマイル(英GⅢ)・ネルグウィンS(英GⅢ) |
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1982 |
Reach |
ロイヤルロッジS(英GⅡ) |
1983 |
Dusty Dollar |
サンチャリオットS(英GⅡ) |
1983 |
Flash of Steel |
愛2000ギニー(愛GⅠ)・ベレスフォードS(愛GⅡ)・テトラークS(愛GⅢ) |
1983 |
Putting |
サンマルコスH(米GⅢ) |
1983 |
Sure Blade |
英シャンペンS(英GⅡ)・セントジェームズパレスS(英GⅡ)・クイーンエリザベスⅡ世S(英GⅡ)・コヴェントリーS(英GⅢ) |
1984 |
Mr. Pintips |
オーモンドS(英GⅢ) |
1984 |
Swept Away |
クロエ賞(仏GⅢ) |
1984 |
The Scout |
フォルス賞(仏GⅢ) |
1984 |
Unite |
英オークス(英GⅠ)・愛オークス(愛GⅠ) |
1985 |
Common Grounds |
サラマンドル賞(仏GⅠ) |
1985 |
Kris Kringle |
デリンズタウンスタッドダービートライアルS(愛GⅡ)・ブランドフォードS(愛GⅡ) |
1985 |
Sudden Love |
EPテイラーS(加GⅠ) |
1986 |
Shining Steel |
シューメーカーH(米GⅡ)・ダイオメドS(英GⅢ) |
1987 |
Evening Kiss |
バグッタ賞(伊GⅢ) |
1987 |
Moon Cactus |
プレステージS(英GⅢ) |
1987 |
Oh So Risky |
グラディアトゥール賞(仏GⅢ) |
1987 |
Rafha |
仏オークス(仏GⅠ)・メイヒルS(英GⅢ) |
1987 |
Shavian |
セントジェームズパレスS(英GⅠ)・セレブレーションマイル(英GⅡ) |
1988 |
Divine Danse |
グロシェーヌ賞(仏GⅡ)・アランベール賞(仏GⅢ)・リゾランジ賞(仏GⅢ)・セーネワーズ賞(仏GⅢ) |
1988 |
Ristna |
サンチャリオットS(英GⅡ) |
1988 |
Shamshir |
フィリーズマイル(英GⅠ) |
1989 |
Landowner |
クイーンズヴァーズ(英GⅢ) |
1989 |
Voleris |
ロンポワン賞(仏GⅡ)・パレロワイヤル賞(仏GⅢ) |
1991 |
Hawajiss |
ナッソーS(英GⅡ)・メイヒルS(英GⅢ)・ムシドラS(英GⅢ) |
1992 |
Jural |
愛フューチュリティS(愛GⅢ) |
1994 |
All Gong |
米グランドナショナル(米GⅠ) |
1994 |
Montemiro |
イングルウッドH(米GⅢ) |
1994 |
Riviera |
アットマイル(加GⅠ)・モーヴィックH(米GⅢ) |
1994 |
Single Empire |
伊ダービー(伊GⅠ)・サンフアンカピストラーノ招待H(米GⅠ)・サンルイレイS(米GⅡ) |
1995 |
Prolix |
スコティッシュクラシック(英GⅢ) |
1995 |
Ultimately Lucky |
ラクープ(仏GⅢ) |
1996 |
Balisada |
コロネーションS(英GⅠ) |
1997 |
Takali |
ロイヤルホイップS(愛GⅡ)・メルドS(愛GⅢ) |
1998 |
Lil's Jessy |
ネルグウィンS(英GⅢ) |
1999 |
Krisman |
オメノーニ賞(伊GⅢ) |
2000 |
Behkara |
ショードネイ賞(仏GⅡ) |
2002 |
Bellamy Cay |
モーリスドニュイユ賞(仏GⅡ)・エドヴィル賞(仏GⅢ) |