スリートロイカス

和名:スリートロイカス

英名:Three Troikas

1976年生

鹿毛

父:リファール

母:スリーローゼズ

母父:デュアル

仏1000ギニー・ヴェルメイユ賞に加えて凱旋門賞も完勝を収め、国際クラシフィケーションにおいて牝馬としては史上最高のレーティングを獲得する

競走成績:2~4歳時に仏米で走り通算成績13戦7勝2着3回3着1回

誕生からデビュー前まで

南アフリカの有力建設業者アルトゥール・プファッフ氏により生産された仏国産馬で、仏国の現役調教師で馬産家でもあったアレック・ヘッド氏により購入されて妻のギスレーヌ・ヘッド夫人名義で競走馬となり、ヘッド夫妻の娘であるクリスティアーヌ・ヘッド調教師の管理馬となった。主戦はヘッド夫妻の息子でクリスティアーヌ師の兄であるフレデリック・ヘッド騎手で、本馬の全レースに騎乗した。

競走生活(3歳中期まで)

2歳11月にサンクルー競馬場で行われたメッサリーヌ賞(T1550m)でデビューして、あっさりと勝ち上がった。2歳戦はこの1戦のみで終え、3歳時は仏国牝馬クラシック競走を目標として、4月のヴァントー賞(仏GⅢ・T1900m)から始動した。オマール賞の勝ち馬デュネットなどが出走していたが、2着デュネットに3馬身差、3着フェリックスクープラにはさらに4馬身差をつけて圧勝した。

それから僅か1週間後に出走した仏1000ギニー(仏GⅠ・T1600m)では、レゼルヴォワ賞の勝ち馬ノノアルカ、カルヴァドス賞の勝ち馬ウォーターウェイなどが対戦相手となったが、2着ノノアルカに2馬身半差、3着ウォーターウェイにはさらに1馬身差をつけて勝利を収めた。

それから3週間後のサンタラリ賞(仏GⅠ・T2000m)では、ロベールパパン賞・クリテリウムデプーリッシュの勝ち馬でモルニ賞2着のピタシアが挑んできたが、ピタシアを2馬身差の2着に破って勝利した。

さらに2週間後には仏オークス(仏GⅠ・T2100m)に参戦した。しかしここではデュネットの激走の前に鼻差屈して2着に惜敗してしまった。それでも、ロワイヨモン賞を勝って臨んできたプロデューサー(後に同年のフォレ賞・オペラ賞などを勝っている)は2馬身半差の3着に抑えた。

夏場は休養に充て、秋はヴェルメイユ賞から凱旋門賞へ向かうという王道路線を進んだ。まずはヴェルメイユ賞(仏GⅠ・T2400m)に出走して、サンタラリ賞で本馬から2馬身半差の3着だったサルピンクスを短頭差の2着に、サンタラリ賞2着後にマルレ賞・ノネット賞を勝っていたピタシアをさらに半馬身差の3着に抑えて勝利した。

凱旋門賞

そして勇躍凱旋門賞(仏GⅠ・T2400m)に挑んだ。この凱旋門賞には、英ダービー・愛ダービー・キングジョージⅥ世&クイーンエリザベスDS・ベンソン&ヘッジズ金杯のGⅠ競走4連勝を含む6連勝中というトロイという絶対的本命馬がいた。他にも、仏ダービー・リュパン賞・サンロマン賞・コンデ賞・ギシュ賞など6連勝していた同世代馬トップヴィル、ロシェット賞・グレフュール賞・オカール賞・ニエル賞の勝ち馬で仏ダービー2着のルマルモ、キングジョージⅥ世&クイーンエリザベスDS・コロネーションC・キングエドワードⅦ世S・ジェフリーフリアSの勝ち馬イルドブルボン、ガネー賞・ドラール賞2回・アルクール賞・ミネルヴ賞・ロワイヤリュー賞・フォワ賞の勝ち馬で前年の凱旋門賞を筆頭に仏オークス・ロワイヤルオーク賞・イスパーン賞・サンクルー大賞・ガネー賞と6度のGⅠ競走2着があったこの年のエクリプス賞最優秀芝牝馬トリリオン、ピタシア、コンデ賞・フォワ賞の勝ち馬でガネー賞3着のペヴェロ、プリンスオブウェールズS・コートノルマンディ賞の勝ち馬でエクリプスS・ベンソン&ヘッジズ金杯2着のクリムゾンボウ、サンルイレイS2回・ユナイテッドネーションズH2回・タイダルH・ブーゲンヴィリアH・ハイアリアターフカップH・カナディアンターフH・パンアメリカンSを勝って米国から遠征してきたノーブルダンサー、バーデン大賞・ジャンドショードネイ賞の勝ち馬ヴァルーア、亜国でカルロスペレグリーニ大賞・ポージャデポトリジョス大賞・亜ジョッキークラブ大賞・ナシオナル大賞といった大競走を制した後に欧州に遠征してきたテレスコピコ、フォルス賞・リス賞の勝ち馬でニエル賞2着のファビュラスダンサー、コートノルマンディ賞の勝ち馬で英ダービー・エクリプスS3着のノーザンベイビー、ディーSの勝ち馬でジョーマクグラス記念S2着のトゥーオブダイヤモンズ、グレートヴォルティジュールSの勝ち馬ノーブルセイントなどが参戦していた。トロイが1番人気、トップヴィルが2番人気、ルマルモが3番人気で、本馬は同馬主同厩のファビュラスダンサーとのカップリングで4番人気止まりだった。

スタートが切られると複数のペースメーカー役やクリムゾンボウなどが先頭に立ち、馬群がその後方に固まった。本馬はその中でも比較的前目の好位でレースを進めた。フォルスストレートでノーザンベイビーがクリムゾンボウをかわして先頭に立ち、そのまま直線に入ってきた。直線に入ってすぐにルマルモがノーザンベイビーに並びかけて競り落とした。しかしそこへ直線入り口で5番手だった本馬が外側から豪快に伸びてきて、残り200m地点でルマルモを抜き去って先頭に立った。その後も脚を伸ばし続け、2着に粘ったルマルモに3馬身差、3着に追い上げてきたトロイにはさらに1馬身差をつけて完勝。欧州競馬界の頂点に立った。本馬を管理したクリスティアーヌ師は女性調教師として史上初の凱旋門賞制覇を果たした(後に彼女はトレヴで同競走を2連覇している。彼女以外に凱旋門賞を勝った女性調教師は現在でも他にいない)。

3歳時の成績は6戦5勝だった。この年の本馬のレーティングについて、英タイムフォーム社は133ポンドの数値を与えたが、これは137ポンドのトロイより低かった。しかし国際クラシフィケーションは本馬を137ポンドと評価し、136ポンドのトロイより高い値をつけた。いずれにしても牝馬としてはかなり高い数値であり、本馬の3歳時におけるパフォーマンスの高さを表している。国際クラシフィケーションにおいて本馬より高い数値を獲得した牝馬はその前も後も全く出現しておらず、国際クラシフィケーションから名前が変わったワールド・サラブレッド・レースホース・ランキングが2013年に過去のレーティングの見直しを実施して本馬の数値が132ポンドに下方修正されるまで単独1位の地位を維持し続け、現在でも2011年に132ポンドの評価を受けたブラックキャビアと並んで1位タイの地位を確保している。

競走生活(4歳時)

4歳時も現役を続けた本馬は、4月のアルクール賞(仏GⅡ・T2000m)から始動した。ルマルモに加えて、前年のサンクルー大賞・加国際CSSで3着していたゲインなどが出走してきた。斤量は本馬が57.5kg、ルマルモが58kg、ゲインが56kgに設定され、性差を考慮すると本馬がトップハンデだった。しかし本馬が2着ゲインに1馬身半差、3着ルマルモにはさらに頭差をつけて勝利した。

次走のガネー賞(仏GⅠ・T2100m)では、ルマルモ、前年の凱旋門賞6着後に英チャンピオンSを勝っていたノーザンベイビーなどとの対戦となった。ここではルマルモが意地を見せて勝利を収め、本馬は1馬身半差の2着、ノーザンベイビーはさらに3馬身差の3着だった。次走のドラール賞(仏GⅡ・T1950m)では、ノーザンベイビー、愛2000ギニー・イスパーン賞2着馬ストロングゲイルの2頭に屈して、勝ったノーザンベイビーから3馬身半差の3着に敗れた。

前年同様に夏場は休養に充て、秋はプランスドランジュ賞を叩いて凱旋門賞へ向かう路線を採用した。まずはプランスドランジュ賞(仏GⅢ・T2000m)に出走して、前年の仏オークスで本馬を破った後にサンクルー大賞を勝っていたデュネット、ノーザンベイビーと対戦した。ここではデュネットが勝利を収め、本馬は半馬身差の2着、ノーザンベイビーはさらに1馬身半差の3着だった。

それでも前哨戦としてはまずまずの内容で、本番の凱旋門賞(仏GⅠ・T2400m)に向かった。対戦相手は、デュネット、前哨戦のフォワ賞を勝ってきたルマルモ、エクリプスS・キングジョージⅥ世&クイーンエリザベスDS・ロイヤルロッジS・キングエドワードⅦ世S・プリンスオブウェールズS・アールオブセフトンSの勝ち馬エラマナムー、フィユドレール賞・ノネット賞の勝ち馬でヴェルメイユ賞3着のデトロワ、ベルリン大賞2回・オイロパ賞・バーデン大賞・ウニオンレネン・デュッセルドルフ大賞などを勝っていた独国最強馬ネボス、仏ダービー馬でサンクルー大賞3着のポリスマン、ドーヴィル大賞・コートノルマンディ賞の勝ち馬グレノラム、仏オークス・ヴェルメイユ賞・チェヴァリーパークS・チェリーヒントンS・ロウザーSの勝ち馬でキングジョージⅥ世&クイーンエリザベスDS2着のミセスペニー、愛セントレジャー・ロワイヤルオーク賞・ジェフリーフリアS・ジョンポーターS・オーモンドSの勝ち馬でコロネーションC2着のニニスキ、クリテリウムドサンクルー・グレフュール賞の勝ち馬で仏ダービー3着のプロヴィデンシャル、愛オークス・ヴェルメイユ賞2着のリトルボニー、プリンセスオブウェールズS・ジェフリーフリアS・ジョッキークラブCの勝ち馬ニコラスビル、プリンスローズ大賞の勝ち馬でリュパン賞2着のアーギュメント、ジャンドショードネイ賞の勝ち馬ムールーキなどだった。エラマナムーとルマルモのカップリングが1番人気で、連覇がかかる本馬が単独で2番人気となった。レースは前年と同じく複数のペースメーカーが引っ張り、本馬は好位を追走した。そして前年と同じく直線に入ってから抜け出し、一緒に伸びてきたエラマナムーとの争いとなった。しかしそこへ後方からデトロワとアーギュメントが追い上げてきて、ゴール前では4頭による勝負となった。そして僅かに後れた本馬は、勝ったデトロワから1馬身差の4着に敗れた。3着エラマナムーはともかくとして、デトロワと2着アーギュメントの2頭は斤量の恩恵を受ける3歳馬だった(前年は本馬が斤量の恩恵を受けていたが、3馬身差の完勝だった)事から、本当の実力で負けたとは言い難い内容だった。

その後は米国に遠征してターフクラシックS(米GⅠ・T12F)に出走した。しかし疲労が出たのか、米国の芝が合わなかったのかは定かではないが、ミネルヴ賞・グラディアトゥール賞の勝ち馬でロワイヤルオーク賞2着の実績があった仏国調教馬アニファ、加国際CSS・エルカミノリアルS・ルイジアナダービー・アーカンソーダービー・セクレタリアトS・ローレンスリアライゼーションSの勝ち馬でプリークネスS・ベルモントS2着・ケンタッキーダービー・マンノウォーS3着のゴールデンアクト、この年に遂に本格化してサンルイレイS・サンフアンカピストラーノH・ハリウッド招待H・ハイアリアターフCなどを勝っていたジョンヘンリーといった面々に敗れて、勝ったアニファから大差をつけられた8着最下位とデビュー以来初の大敗を喫してしまい、そのまま4歳時6戦1勝の成績で競走馬引退となった。

血統

Lyphard Northern Dancer Nearctic Nearco Pharos
Nogara
Lady Angela Hyperion
Sister Sarah
Natalma Native Dancer Polynesian
Geisha
Almahmoud Mahmoud
Arbitrator
Goofed Court Martial Fair Trial Fairway
Lady Juror
Instantaneous Hurry On
Picture
Barra Formor Ksar
Formose
La Favorite Biribi
La Pompadour
Three Roses Dual Chanteur Chateau Bouscaut Kircubbin
Ramondie
La Diva Blue Skies
La Traviata
Duplicity Nearco Pharos
Nogara
Doubleton Bahram
Double Life
Always Loyal King's Troop Princely Gift Nasrullah
Blue Gem
Equiria Atout Maitre
Epona
Constant Worry Torbido Ortello
Tempesta
Idle Curiosity Bois Roussel
Fairetta

リファールは当馬の項を参照。

母スリーローゼズは現役成績14戦2勝、フェニックスパークSを勝っている。近親にはあまり、と言うか殆ど活躍馬がおらず、スリーローゼズの4代母フェアレッタの半妹である愛1000ギニー馬アネッタが最も直近の活躍馬である。天皇賞馬ホクトボーイ、英2000ギニー馬ミスターベイリーズ、英ダービー馬オース、エリザベス女王杯を2連覇した英愛オークス馬スノーフェアリーなどは同じ牝系だが、遠縁とは言えるかもしれないが少なくとも近親ではない。→牝系:F1号族⑥

母父デュアルはソラリオSの勝ち馬。デュアルの父シャントゥールはフォンテーヌブロー賞・オカール賞・ジャンプラ賞・エドモンブラン賞・ホワイトローズS・サブロン賞・コロネーションCの勝ち馬。遡ると、ロベールパパン賞・モルニ賞・フォレ賞・ノアイユ賞・仏ダービー・カドラン賞の勝ち馬チャトーボスコー、愛セントレジャー・イスパーン賞・仏共和国大統領賞の勝ち馬キルキュビン、キャプティヴェイション(1戦未勝利)を経てサイリーンに行きつく。

競走馬引退後

競走馬を引退した本馬は米国ケンタッキー州で繁殖入りした。母としては7頭の子を産み、うち6頭が競走馬となり、うち4頭が勝ち上がっている。4番子の牡駒オレゴン(父ヘイロー)がナシュアS(米GⅢ)で2着するなど7戦2勝、6番子の牝駒スリーエンジェルス(父ヘイロー)がレゼルヴォワ賞(仏GⅢ)を勝ちサンタラリ賞(仏GⅠ)で2着するなど6戦1勝の成績を残しているが、自身に匹敵するような産駒は出なかった。没年は不明だが、最後の子を産んだのが16歳時の1992年であるから、それ以降である。

オレゴンは血統が評価されて新国で種牡馬入りして、GⅠ競走の勝ち馬を出すなどそれなりの成功を収めた。また、スリーエンジェルスの娘スリーソウツは日本に繁殖牝馬として輸入され、マヤノオスカー【ゴールド争覇・イヌワシ賞・北國王冠・オータムC】、サンクスノート【京王杯スプリングC(GⅡ)】を産んでおり、牝系は続いている。

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