マキャヴェリアン

和名:マキャヴェリアン

英名:Machiavellian

1987年生

黒鹿

父:ミスタープロスペクター

母:クードフォリー

母父:ヘイロー

競走馬としては仏国最優秀2歳牡馬に選ばれた早熟馬だったが種牡馬としてドバイワールドC勝ち馬を2頭輩出したミスタープロスペクターの後継種牡馬

競走成績:2・3歳時に仏英愛で走り通算成績7戦4勝2着1回

誕生からデビュー前まで

ギリシアの海運王スタブロス・ニアルコス氏により米国ケンタッキー州において生産・所有され、仏国フランソワ・ブータン調教師に預けられた。主戦はフレデリック・ヘッド騎手で、本馬の全レースに騎乗した。

競走生活(2歳時)

2歳8月にドーヴィル競馬場で行われたリステッド競走ヤコウレフ賞(T1200m)でデビュー。このレースは同じミスタープロスペクター産駒で、母系の優秀さでも本馬に匹敵するジェイドロバリーのデビュー戦でもあったが、本馬がジェイドロバリーを2馬身差の2着に下して勝利した。続いてモルニ賞(仏GⅠ・T1200m)に出走した。ここでは、ロベールパパン賞を勝ってきたオゾンフレンドリー、ロベールパパン賞3着馬ミルレディ、2戦2勝のキルマジ(日本で走ったヒシマサルの半姉)などが相手となったが、本馬が2着キルマジに2馬身差で勝利した。

さらにサラマンドル賞(仏GⅠ・T1400m)に出走。このレースにはキルマジに加えて、コヴェントリーS・ジュライS・ジムクラックSなど5戦全勝のロックシティも出走してきた。スタートが切られるとタルサタイムという馬が大逃げを打ち、ロックシティが離れた2番手、本馬がその直後3番手につけた。そのままの態勢で直線に入ると本馬がロックシティを瞬く間に抜き去って残り200m地点で先頭に立ち、外側から追い上げてきた2着キルマジに半馬身差で勝利した。着差はそれほどでも無かったが、このレースは翌年の英2000ギニーの有力候補が勝ったものとしては最も楽な勝ち方だったと評されている。

その後は仏グランクリテリウムを目指したが、感冒のため回避。本馬が不在の仏グランクリテリウムはジェイドロバリーが勝利を収めた。結局2歳時の出走はサラマンドル賞が最後となったが、2歳時3戦全勝の成績で、仏最優秀2歳牡馬に選ばれた。国際クラシフィケーションにおいても2歳馬トップとなる125ポンドの評価を得た(ジェイドロバリーは120ポンドで第2位タイ)。

競走生活(3歳時)

3歳時は4月に地元仏国メゾンラフィット競馬場で行われたリステッド競走ジェベル賞(T1400m)から始動した。対戦相手は僅か2頭であり、そのうち強敵と言えるのは前年のヴィシー賞を5馬身差で圧勝していたロンズヴィクトリー(後にダイアデムSなどグループ競走を3勝)のみだった。そして本馬が2着ロンズヴィクトリーに2馬身半差をつけて完勝した。

そして渡英して英2000ギニー(英GⅠ・T8F)に参戦した。デューハーストS・愛ナショナルSの勝ち馬ダッシングブレード、ヨーロピアンフリーHの勝ち馬でデューハーストS3着のアンシャン、ホーリスヒルS・クレイヴンSの勝ち馬チロル、クレイヴンS2着馬シュアシャープ、イースターSなど3戦全勝のエルマームル(後にこの年のエクリプスS・愛チャンピオンSを勝利する)、イースターS2着馬ラジワキ、前年のサラマンドル賞で本馬の4着に敗れた後にミドルパークSで2着して前走グリーナムSを勝ってきたロックシティ、フォンテーヌブロー賞で2着してきたクリテリウムドメゾンラフィット・トーマブリョン賞の勝ち馬セプティエムシエル(後にこの年のフォレ賞を勝利する)などが対戦相手となった。本馬が単勝オッズ2.5倍の1番人気に支持され、アンシャンが単勝オッズ7倍の2番人気、2戦2勝のナウリッスンが単勝オッズ9.5倍の3番人気、チロルとシュアシャープが並んで単勝オッズ10倍の4番人気となった。

スタートが切られると単勝オッズ251倍の最低人気馬ソードスミスが逃げを打ち、アンシャンなどが先行、チロルなどが中団、そして本馬は最後方辺りを追走した。しかし勝負どころの残り2ハロン地点で馬群を抜け出すのに手間取ってしまい、その間に抜け出したチロルがゴールへと突き進んでいった。本馬も残り1ハロン地点からよく追い上げてきたが、チロルに届かずに2馬身差の2着に敗れた。

次走の愛2000ギニー(愛GⅠ・T8F)では、チロル、テトラークSを勝ってきたロイヤルアカデミー(後にこの年のジュライC・BCマイルを勝利する)、フェニックスパーク2000ギニートライアルSを勝ってきたロータスプール、グラッドネスS2着馬ミスターブルックス(2年後にカルティエ賞最優秀古馬及び最優秀短距離馬に選出される)などが主な対戦相手となった。今回はチロルが単勝オッズ2.25倍の1番人気で、本馬が単勝オッズ3.25倍の2番人気、ロイヤルアカデミーが単勝オッズ5倍の3番人気、ロータスプールが単勝オッズ15倍の4番人気となった。

スタートが切られると、単勝オッズ201倍の最低人気馬ディケンズレーンが先頭を引っ張り、チロルが2番手、本馬やロイヤルアカデミーは最後方につけた。そして直線に入るとチロルが抜け出したところに内側を突いたロイヤルアカデミーが襲い掛かっていった。そして本馬は今回も馬群を抜け出すのに手間取り、ようやく外側に持ち出して追い上げてきたときには既に遅かった。レースはいったんロイヤルアカデミーに抜かれたチロルが差し返して首差で勝利し、本馬は中団から差したロータスプールとの3着争いにも敗れて、チロルから僅か1馬身差の4着に敗れた。

その後はしばらく間隔を空けて、8月のモーリスドギース賞(仏GⅠ・T1300m)で復帰した。出走馬は本馬を含めて5頭、そのうち唯一の古馬であるホイッペットは殆ど実績が無い馬であり、英2000ギニー4着後にセントジェームズパレスS2着・クリテリオンS勝利・ジュライCでロイヤルアカデミーの3着する活躍をしていたロックシティ、チェヴァリーパークS・ロウザーS・クイーンメアリーSの勝ち馬デッドサーテン、エクリプス賞の勝ち馬ポールポジションといった3歳馬勢が有力な対戦相手だった。

スタートが切られるとホイッペットが先頭に立ち、本馬は好位を進んだ。しかし残り200m地点で大きく失速。レースは残り300m地点で抜け出したデッドサーテンが2着ロックシティに1馬身差をつけて勝ち、泡沫候補だったホイッペットにも半馬身遅れた本馬は、デッドサーテンから6馬身半差の5着最下位に敗れた。このレースを最後に、3歳時4戦1勝の成績で競走馬を引退した。

表向きの競走成績を眺めると典型的な早熟馬であるが、英2000ギニーや愛2000ギニーのレース内容を吟味すると、3歳時に振るわなかったのは騎手の責任も大きいような気もする。

血統

Mr. Prospector Raise a Native Native Dancer Polynesian Unbreakable
Black Polly
Geisha Discovery
Miyako
Raise You Case Ace Teddy
Sweetheart
Lady Glory American Flag
Beloved 
Gold Digger Nashua Nasrullah Nearco
Mumtaz Begum
Segula Johnstown
Sekhmet
Sequence Count Fleet Reigh Count
Quickly
Miss Dogwood Bull Dog
Myrtlewood
Coup de Folie Halo Hail to Reason Turn-to Royal Charger
Source Sucree
Nothirdchance Blue Swords
Galla Colors
Cosmah Cosmic Bomb Pharamond
Banish Fear
Almahmoud Mahmoud
Arbitrator
Raise the Standard Hoist the Flag Tom Rolfe Ribot
Pocahontas
Wavy Navy War Admiral
Triomphe
Natalma Native Dancer Polynesian
Geisha
Almahmoud Mahmoud
Arbitrator

ミスタープロスペクターは当馬の項を参照。

母クードフォリーは現役成績7戦4勝。オマール賞(仏GⅢ)を勝ち、マルセルブサック賞(仏GⅠ)で3着している。繁殖牝馬としては超一流で、本馬の半弟イグジットトゥノウェア(父アイリッシュリヴァー)【ジャックルマロワ賞(仏GⅠ)・トーマブリョン賞(仏GⅢ)・エドモンブラン賞(仏GⅢ)・ミュゲ賞(仏GⅢ)】、半妹ハイドロカリド(父ヌレイエフ)【アスタルテ賞(仏GⅡ)】、全妹クードジェニー【モルニ賞(仏GⅠ)・サラマンドル賞(仏GⅠ)・カブール賞(仏GⅢ)】、全弟オーシャンオブウィズダム【ロシェット賞(仏GⅢ)】と活躍馬を多数輩出している。ハイドロカリドの子には日本で走ったシンコウカリド【セントライト記念(GⅡ)】、孫にはフィフティーワナー【アンタレスS(GⅢ)】が、本馬の半妹サルチョウ(父ニジンスキー)の子にはウェイオブライト【仏グランクリテリウム(仏GⅠ)】が、クードジェニーの子にはラヴィングカインドネス【カブール賞(仏GⅢ)】、デネボラ【マルセルブサック賞(仏GⅠ)・カブール賞(仏GⅢ)】、孫にはバゴ【凱旋門賞(仏GⅠ)・クリテリウム国際(仏GⅠ)・ジャンプラ賞(仏GⅠ)・パリ大賞(仏GⅠ)・ガネー賞(仏GⅠ)】とマキシオス【イスパーン賞(仏GⅠ)・ムーランドロンシャン賞(仏GⅠ)】の兄弟、曾孫にはエモリエント【アッシュランドS(米GⅠ)・アメリカンオークス(米GⅠ)・スピンスターS(米GⅠ)・ロデオドライブS(米GⅠ)】が、本馬の全妹ラフィナの子にはアドミラルオブザフリート【ロイヤルロッジS(英GⅡ)・ディーS(英GⅢ)】が、本馬の全妹フーディーニズハニーの子にはオーサムアクト【ゴーサムS(米GⅢ)】がいるなど、クードフォリーは牝系子孫も大きく発展させている。クードフォリーの母レイズザスタンダードは大種牡馬ノーザンダンサーの半妹であり、近親にはここには挙げきれないほどの活躍馬がいる牝系は超一流と言える。→牝系:F2号族①

母父ヘイローは当馬の項を参照。ヘイローはレイズザスタンダードと従兄妹同士である。

競走馬引退後

競走馬を引退した本馬は英国ニューマーケットにあるダルハムホールスタッドで種牡馬入りした。初年度産駒から仏2000ギニー馬ヴェットーリなど8頭のステークスウイナーを出すなど良好な種牡馬成績を挙げ、最終的にはドバイワールドCの勝ち馬2頭を含む78頭のステークスウイナーを送り出した。産駒は736頭だからステークスウイナー率は10.6%であり、これは欧州繋養種牡馬としては極めて優秀な数字であり、欧州におけるミスタープロスペクター最良の後継種牡馬の1頭となった。

産駒は成長力もあり、古馬になっても活躍できる。さらには芝もダートも問わずに走り、しかも短距離戦から超長距離戦まで幅広く活躍馬を出すという万能種牡馬の典型例だった。

2004年の繁殖シーズン途中に右前脚蹄葉炎を発症して種付けを中断し、それから間もない6月に17歳で安楽死の措置が執られた。

後継種牡馬にも恵まれており、ストリートクライを筆頭に、メディシーン、ヴェットーリなどが活躍している。繁殖牝馬の父としても一流の成績を残しており、86頭以上のステークスウイナーを送り出した。その中にはシャマルダル、アサクサデンエン、ヴィクトワールピサなどが含まれており、母父としてもドバイワールドCの勝ち馬を出した事になる。

主な産駒一覧

生年

産駒名

勝ち鞍

1992

Phantom Gold

リブルスデールS(英GⅡ)・ジェフリーフリアS(英GⅡ)・セントサイモンS(英GⅢ)

1992

Sinyar

バーデナーマイレ(独GⅢ)

1992

Vettori

仏2000ギニー(仏GⅠ)

1992

コクトジュリアン

クリスタルC(GⅢ)

1993

Mudallel

ガルフニュースナドアルシバスプリント

1993

Susu

チャレンジS(英GⅡ)

1993

Titus Livius

クリテリウムドメゾンラフィット(仏GⅡ)・グロシェーヌ賞(仏GⅡ)・エクリプス賞(仏GⅢ)

1993

Whitewater Affair

ポモーヌ賞(仏GⅡ)・ジョンポーターS(英GⅢ)

1994

Invermark

カドラン賞(仏GⅠ)

1994

Kahal

チャレンジS(英GⅡ)・ニアークティックS(加GⅡ)

1994

Majorien

コンセイユドパリ賞(仏GⅡ)

1994

Rebecca Sharp

コロネーションS(英GⅠ)

1995

Almutawakel

ドバイワールドC(首GⅠ)・ジャンプラ賞(仏GⅠ)

1996

Fictitious

デラローズH(米GⅢ)

1996

Horatia

マッチメイカーS(米GⅢ)

1997

Best of the Bests

イスパーン賞(仏GⅠ)・ギョームドルナノ賞(仏GⅡ)・ソラリオS(英GⅢ)・マクトゥームチャレンジR2(首GⅢ)

1997

Cover Up

ジョッキークラブC(英GⅢ)・サガロS(英GⅢ)

1997

Medicean

ロッキンジS(英GⅠ)・エクリプスS(英GⅠ)・セレブレーションマイル(英GⅡ)・クイーンアンS(英GⅡ)

1997

Morning Pride

ボワ賞(仏GⅢ)

1998

Magic Mission

ロイヤルヒロインS(米GⅢ)

1998

No Excuse Needed

セレブレーションマイル(英GⅡ)・クイーンアンS(英GⅡ)・ヴィンテージS(英GⅢ)

1998

Patavellian

アベイドロンシャン賞(仏GⅠ)・スチュワーズC

1998

St. Paul House

テュディニ賞(伊GⅢ)2回・ウンブリア賞(伊GⅢ)2回

1998

Storming Home

英チャンピオンS(英GⅠ)・チャールズウィッティンガム記念H(米GⅠ)・クレメントLハーシュターフCSS(米GⅠ)・キングエドワードⅦ世S(英GⅡ)

1998

Street Cry

ドバイワールドC(首GⅠ)・スティーヴンフォスターH(米GⅠ)・マクトゥームチャレンジR3(首GⅡ)

1999

Blatant

マクトゥームチャレンジR1(首GⅢ)

1999

Medecis

ジョンシェール賞(仏GⅢ)

1999

Mephisto

エボアH

1999

Right Approach

ドバイデューティーフリー(首GⅠ)

2000

Chic

セレブレーションマイル(英GⅡ)2回・ハンガーフォードS(英GⅢ)

2000

Evolving Tactics

アメリカンダービー(米GⅡ)

2000

Shakis

バーナードバルークH(米GⅡ)2回

2000

グラスボンバー

福島記念(GⅢ)

2001

Cesare

サマーマイルS(英GⅡ)・ロイヤルハントC

2001

Mullins Bay

ストレンソールS(英GⅢ)

2002

Beautyandthebeast

ラスパルマスH(米GⅡ)

2002

Birthstone

オマール賞(仏GⅢ)

2002

Plea Bargain

キングエドワードⅦ世S(英GⅡ)

2002

Sun Boat

サンディエゴH(米GⅡ)

2002

ナイトスクール

ニューイヤーC(南関GⅢ)・しらさぎ賞(南関GⅢ)

2003

Emily Bronte

レゼルヴォワ賞(仏GⅢ)

2003

Greek Renaissance

ベンティンクS(英GⅢ)

2003

Palace Episode

レーシングポストトロフィー(英GⅠ)

2003

Tie Black

仏1000ギニー(仏GⅠ)

2004

Criticism

ラプレヴォヤンテH(米GⅡ)・シープスヘッドベイS(米GⅡ)・ロングアイランドH(米GⅢ)2回・ザベリワンS(米GⅢ)

2004

Marietta

アイオワオークス(米GⅢ)・アーリントンオークス(米GⅢ)

2004

West Wind

仏オークス(仏GⅠ)

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