ジェイドロバリー
和名:ジェイドロバリー |
英名:Jade Robbery |
1987年生 |
牡 |
黒鹿 |
父:ミスタープロスペクター |
母:ナンバー |
母父:ニジンスキー |
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GⅠ競走勝ちは仏グランクリテリウムのみだったが日本でダート巧者を多く輩出して成功を収めたミスタープロスペクター直子の超良血馬 |
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競走成績:2・3歳時に仏で走り通算成績7戦2勝2着2回3着1回 |
誕生からデビュー前まで
米国ケンタッキー州の名門クレイボーンファームと、本馬の近親でもある名牝ゲイムリーの所有者だったウィリアム・ハギン・ペリー氏の馬産団体ザ・ゲイムリー・コーポレーションにより共同生産された米国産馬である。1歳時のセリにおいて80万ドルという高額でドバイのシェイク・モハメド殿下に落札され、仏国の名伯楽アンドレ・ファーブル調教師に預けられた。主戦はキャッシュ・アスムッセン騎手で、本馬の全競走に騎乗した。
競走生活(2歳時)
2歳8月にドーヴィル競馬場で行われたリステッド競走ヤコウレフ賞(T1200m)でデビュー。しかし勝ったマキャヴェリアンに2馬身差をつけられ2着に敗れた。続くリステッド競走アラドラユドリエ賞(T1400m)では、2着オナーラジャナに1馬身半差で勝ち上がった。続くロシェット賞(GⅢ・T1600m)では好敵手となるリナミックスとの初顔合わせとなった。レースではリナミックスが先頭を飛ばし、本馬は2番手でそれを追いかけた。そして直線に入るとリナミックスに並びかけようとしたが、追い抜くほどの勢いは無く、勝ったリナミックスから3/4馬身差の2着に敗れた。
次走の仏グランクリテリウム(GⅠ・T1600m)でも、リナミックスとの対戦となった。リナミックスが単勝オッズ3倍の1番人気で、本馬が単勝オッズ3.2倍の2番人気となった。今回もスタートからリナミックスが先頭をひた走り、本馬は好位につけた。そして4番手で直線に入ると、右側に切れ込みながらも残り200m地点でリナミックスを差し切り、3/4馬身差をつけて勝利した。
2歳時の成績は4戦2勝で、この年の国際クラシフィケーションの2歳馬部門においては120ポンドの評価を受け、これはヤコウレフ賞で本馬を破った後にモルニ賞・サラマンドル賞も連勝した3戦無敗のマキャヴェリアン(125ポンド)に次ぐ第2位だった(リナミックスは118ポンド)。なお、この2歳の段階では既に本馬は、種牡馬としての将来を見越した社台グループの吉田照哉氏によって購入されている。
競走生活(3歳時)
3歳時は4月にロンシャン競馬場で行われる仏2000ギニーの前哨戦フォンテーヌブロー賞(GⅢ・T1600m)から始動した。ここにもリナミックスの姿があった他、クリテリウムドメゾンラフィット・トーマブリョン賞の勝ち馬セプティエムシエル、シェーヌ賞の勝ち馬フュナンビュル、ロシェット賞と仏グランクリテリウムで共に3着だったオナーラジャナなども出走してきた。本馬が単勝オッズ1.8倍の1番人気で、リナミックスが単勝オッズ2.8倍の2番人気となった。このレースではリナミックス陣営がラインステートというペースメーカー役を用意しており、リナミックスはラインステートを先に行かせて2番手につけた。一方の本馬は馬群の中団後方を進み、直線で追い上げる構えを見せた。しかし前が止まらず、勝ったリナミックスから4馬身差、2着セプティエムシエルから1馬身半差の3着に敗れてしまった。
本番の仏2000ギニー(GⅠ・T1600m)では、リナミックス、前走4着のオナーラジャナ、同5着のフュナンビュル、ジムクラックS2着馬ブックザバンド、後にイスパーン賞・バドワイザー国際Sなどを勝つ事になるゾーマンなどが対戦相手となった。今回もラインステートが先頭を飛ばし、リナミックスは2番手、本馬は後方2番手につけた。しかし本馬は直線に入っても伸びず、勝ったリナミックスから7馬身半差の5着と完敗を喫した。
続いてジャンプラ賞(GⅠ・T1850m)に出走した。英ダービーに向かった宿敵リナミックスの姿はここにはなく、マッチェム賞を勝ってきたプリオロ(後にジャックルマロワ賞とムーランドロンシャン賞を勝っている)、伊国のGⅢ競走エマヌエーレフィリベルト賞を勝ってきたサテンウッド、仏2000ギニーではなく英2000ギニーに出走して5着だったセプティエムシエル、後のスプリントC・ロッキンジSの勝ち馬ポーラーファルコンなどが対戦相手となった。ここでも本馬は後方待機策を採り、6頭立ての5番手で直線に入ってきたのだが、直線で伸びずに、勝ったプリオロから5馬身3/4差の5着に敗北。ここで早々と競走馬生活に終止符を打った。3歳時の成績は3戦未勝利だった。
血統
Mr. Prospector | Raise a Native | Native Dancer | Polynesian | Unbreakable |
Black Polly | ||||
Geisha | Discovery | |||
Miyako | ||||
Raise You | Case Ace | Teddy | ||
Sweetheart | ||||
Lady Glory | American Flag | |||
Beloved | ||||
Gold Digger | Nashua | Nasrullah | Nearco | |
Mumtaz Begum | ||||
Segula | Johnstown | |||
Sekhmet | ||||
Sequence | Count Fleet | Reigh Count | ||
Quickly | ||||
Miss Dogwood | Bull Dog | |||
Myrtlewood | ||||
Number | Nijinsky | Northern Dancer | Nearctic | Nearco |
Lady Angela | ||||
Natalma | Native Dancer | |||
Almahmoud | ||||
Flaming Page | Bull Page | Bull Lea | ||
Our Page | ||||
Flaring Top | Menow | |||
Flaming Top | ||||
Special | Forli | Aristophanes | Hyperion | |
Commotion | ||||
Trevisa | Advocate | |||
Veneta | ||||
Thong | Nantallah | Nasrullah | ||
Shimmer | ||||
Rough Shod | Gold Bridge | |||
Dalmary |
父ミスタープロスペクターは当馬の項を参照。
母ナンバーは現役成績26戦8勝、フィレンツェH(米GⅡ)・ヘンプステッドH(米GⅡ)・ファーストフライトH(米GⅢ)などに勝利した活躍馬。繁殖牝馬としても活躍し、亜国で種牡馬として成功した本馬の全弟ニューメラス【ダービートライアルS(米GⅢ)】、全弟チェッカー【ウイリアムPキーンH(米GⅢ)】も産んでいる。本馬の半姉アッド(父スペクタキュラービッド)の子にリザードアイランド【レイルウェイS(愛GⅡ)】、孫にデザートヒーロー【サンラファエルS(米GⅡ)】、コリンシアン【メトロポリタンH(米GⅠ)・BCダートマイル】、シックスオブハーツ【バリーコーラスS(愛GⅢ)】がいる。
ナンバーの母スペシャルは世界的名繁殖牝馬として著名であり、ナンバーの半姉キラヴェア(父ハワイ)の孫にビエナマド【ハリウッドターフカップS(米GⅠ)・サンフアンカピストラーノ招待H(米GⅠ)・チャールズウィッティンガムH(米GⅠ)】、曾孫にマダムチャン【英チャンピオンズフィリー&メアS(英GⅠ)】が、ナンバーの半姉フェアリーブリッジ(父ボールドリーズン)の子に大種牡馬サドラーズウェルズ【愛2000ギニー(愛GⅠ)・エクリプスS(英GⅠ)・愛チャンピオンS(愛GⅠ)・ベレスフォードS(愛GⅡ)・デリンズタウンスタッドダービートライアルS(愛GⅡ)】、名種牡馬フェアリーキング、テートギャラリー【愛ナショナルS(愛GⅠ)】、フェアリーゴールド【デビュータントS(愛GⅢ)】が、ナンバーの半兄に大種牡馬ヌレイエフ(父ノーザンダンサー)【トーマブリョン賞(仏GⅢ)】が、ナンバーの全妹バウンドの子にアーチペンコ【クイーンエリザベスⅡ世C(香GⅠ)・デリンズタウンスタッドダービートライアルS(愛GⅡ)・アルファヒディフォート(首GⅡ)・サマーマイルS(英GⅡ)・ザビールマイル(首GⅢ)】、孫に2010年のエクリプス賞最優秀古馬牡馬ブレイム【BCクラシック(米GⅠ)・スティーヴンフォスターH(米GⅠ)・ホイットニーH(米GⅠ)】、曾孫に日本で走ったエイジアンウインズ【ヴィクトリアマイル(GⅠ)】が、ナンバーの全妹デュラーの曾孫にロウト【BCジュヴェナイルターフ(米GⅠ)】などがいる。スペシャルの全弟にサッチ【ジュライC(英GⅠ)・サセックスS(英GⅠ)・セントジェームズパレスS(英GⅡ)】、全妹にリサデル【コロネーションS(英GⅡ)】、半弟にキングペリノア【オークツリー招待H(米GⅠ)・ガリニュールS(愛GⅡ)・ブランドフォードS(愛GⅡ)・アメリカンH(米GⅡ)・カールトンFバークH(米GⅡ)】がいる。リサデルの曾孫には日仏で活躍したエルコンドルパサー【ジャパンC(GⅠ)・NHKマイルC(GⅠ)・サンクルー大賞(仏GⅠ)】が、スペシャルの従姉妹には米国顕彰馬ゲイムリー【テストS・アラバマS・サンタマリアH・サンタマルガリータ招待H・ヴァニティH・ベルデイムS2回・サンタモニカH・ダイアナH】もおり、牝系は超一流である。→牝系:F5号族①
母父ニジンスキーは当馬の項を参照。
競走馬引退後
競走馬を引退した本馬は、すぐに来日して社台スタリオンステーションで種牡馬入りした。その血統の良さにより当初から人気種牡馬であり、初年度は89頭、2年目は100頭、3年目は106頭、4年目の1994年は141頭と順調に交配数が確保された。初年度産駒はこの1994年にデビューした。際立った活躍馬は出なかったが、安定してタイキシャーロック、イブキインターハイなどの産駒を出した。その後も人気種牡馬の地位を保ち続け、5年目は142頭、6年目は166頭、7年目は150頭、8年目は165頭、9年目は168頭、10年目の2000年は150頭の繁殖牝馬を集めた。この2000年には豪州にリースされた。帰国後の2001年の交配数は137頭だった。そして2002・03年にはドバイにリースされた。帰国後の2004年には110頭と交配した。しかしこの年の繁殖シーズン最中の5月に繋養先のレックススタッドで大腸癒着を発症し、手術の甲斐なく社台ホースクリニックにおいて17歳でこの世を去った。
自身の競走成績から産駒は早熟の短距離馬が多いと予想されていたが、中距離までならこなせ、古馬になっても活躍可能だった。超大物は少なかったが、産駒の質は平均的に高く、勝ち上がり率は優秀だった。芝で走る産駒もいたが、ダートのほうが圧倒的に得意だった。また、重馬場も得意だった。全日本種牡馬ランキングでは1999年の3位が最高で、1997・98年に4位、1996・2000年に5位、2001・02年に7位、2003年に9位と、8年連続でベスト10入りしている。中央競馬のダート競走限定ランキングでは、1997~99年まで3年連続1位で、地方競馬の種牡馬ランキングでは1998・99年に各3位に入っている。後継種牡馬には恵まれなかったが、繁殖牝馬の父としては多くの重賞勝ち馬を出しており、母系に入ってその血が受け継がれることになりそうである。
主な産駒一覧
生年 |
産駒名 |
勝ち鞍 |
1992 |
イブキインターハイ |
京都四歳特別(GⅢ) |
1992 |
タイキシャーロック |
マイルCS南部杯(GⅠ)・浦和記念(GⅡ)・エルムS(GⅢ) |
1992 |
テセウスフリーゼ |
アンタレスS(GⅢ)・さきたま杯(GⅢ)・黒船賞(GⅢ) |
1992 |
ナイキグレース |
浦和桜花賞(南関GⅠ) |
1992 |
ネーハイジャパン |
東京障害特別秋・京都大障害春 |
1992 |
ノムラテンカムテキ |
しらさぎ賞(南関GⅢ) |
1992 |
ヤマニホルダー |
新春ジュニア(名古屋) |
1993 |
ダイタクカミカゼ |
高知県知事賞(高知) |
1993 |
テンパイ |
プロキオンS(GⅢ) |
1993 |
ナイキジャガー |
羽田盃(南関GⅠ)・黒潮盃(南関GⅡ)・京浜盃(大井) |
1993 |
ファンドリロバリー |
阪神スプリングジャンプ(JGⅢ) |
1993 |
ロバリーハート |
群馬記念(GⅢ)・新潟グランプリ(新潟)2回・迎春賞(新潟)2回・東北サラブレッド大賞典(上山)・朱鷺大賞典(新潟) |
1994 |
オースミジェット |
平安S(GⅢ)2回・名古屋大賞典(GⅢ)2回・アンタレスS(GⅢ)・マーキュリーC(GⅢ)2回 |
1995 |
カイヨウジパング |
黒潮皐月賞(高知)・高知優駿(高知)・黒潮菊花賞(高知)・RKC杯(高知) |
1995 |
ダイアモンドコア |
東京三歳優駿牝馬(南関GⅠ)・浦和桜花賞(南関GⅠ) |
1995 |
マルカバリー |
オータムC(SPⅡ) |
1996 |
タワリングドリーム |
開設記念(高崎)(北関GⅠ)・坂東太郎賞(北関GⅢ) |
1997 |
オーミヤボレロ |
吉野ヶ里記念(KG2) |
1997 |
ナイキゴールド |
マーチC(SPⅡ)・白銀争覇(SPⅢ) |
1997 |
ハクシュカッサイ |
九州大賞(KG1)2回・九州記念(KG3)2回・吉野ヶ里記念(佐賀) |
1997 |
ヤマカツスズラン |
阪神三歳牝馬S(GⅠ)・クイーンS(GⅢ)・マーメイドS(GⅢ)・全日本サラブレッドC(GⅢ) |
1997 |
ルネッサンス |
ラジオたんぱ賞(GⅢ) |
1998 |
ジョウテンペガサス |
百万石賞(金沢)・スプリンターズC(金沢) |
1998 |
リキセレナード |
小倉三歳S(GⅢ) |
1999 |
ハイフレンドトーレ |
ビューチフルドリーマーC(盛岡) |
1999 |
バックギアー |
ブルーバードC(南関GⅢ)・若潮盃(南関GⅢ) |
2000 |
ウィンブロー |
クラウンC(南関GⅢ) |
2000 |
シャコーオープン |
東京記念(南関GⅡ)・船橋記念(南関GⅢ) |
2002 |
ゴッドセンド |
星雲賞(H2)・赤レンガ記念(H2)・高知県知事賞(高知) |
2002 |
ピカレスクコート |
ダービー卿チャレンジトロフィー(GⅢ) |
2003 |
オウシュウクラウン |
岩手ダービーダイヤモンドC(水沢)・不来方賞(盛岡)・阿久利黒賞(水沢)・桐花賞(水沢) |
2003 |
ダガーズアラベスク |
東京2歳優駿牝馬(南関GⅠ)・ローレル賞(南関GⅢ) |
2004 |
Kirklees |
伊グランクリテリウム(伊GⅠ)・ヨークS(英GⅡ)・セプテンバーS(英GⅢ) |
2005 |
キクノサリーレ |
武蔵野S(GⅢ) |
2005 |
ジェイドファスト |
ブリーダーズゴールドジュニアC(H1) |