インディジェナス

和名:インディジェナス

英名:Indigenous

1993年生

鹿毛

父:マルジュ

母:シーポート

母父:アヴェロフ

ジャパンCに三度参戦して最初の参戦時に2着と大健闘、数多くの日本馬と一緒に走り多くの機会で見せ場を作った香港の名馬

競走成績:2~10歳時に愛香英日首星で走り通算成績70戦15勝2着6回3着10回

香港のトップホースとして活躍した名馬で、ジャパンCに3度参戦するなど数多くのレースで日本馬と一緒に走り、その大半のレースで見せ場を作ったことで、日本の競馬ファンにも馴染み深い1頭。

誕生からデビュー前まで

愛国オールドタウンスタッドにおいて、同牧場の所有者メジャー・ジョン・デ・バー氏により生産された。1歳時にゴフ社主催のオービーセールに出品され、愛国のケヴィン・プレンダーガスト調教師に10500ギニーで購入された。プレンダーガスト師の所有・管理馬となった本馬は、“Qualtron(クォルトロン)”と命名された。

競走生活(愛国時代)

2歳8月に愛国ロスコモン競馬場で行われた芝7ハロンの未勝利戦で、愛国における主戦となるウィリー・サプル騎手を鞍上にデビュー。単勝オッズ11倍で13頭立ての5番人気で、勝ったドクタービートから4馬身半差の7着という結果だった。次走はカラー競馬場で行われた芝7ハロンの未勝利戦となった。ここでは単勝オッズ7倍の4番人気だったが、2着リャザナに1馬身半差で勝ち上がった。続いてナヴァン競馬場芝8ハロンの一般競走に出走。単勝オッズ4.5倍の1番人気に支持されたが、アリスバーリーの6馬身半差4着に敗れ、2歳時の成績は3戦1勝となった。

3歳時は4月にティペラリー競馬場で行われた芝7ハロンの一般競走から始動したが、単勝オッズ11倍の5番人気で、ハーガーの4馬身半差8着に敗退。次走ナース競馬場芝11ハロンのハンデ競走では、単勝オッズ5.5倍の2番人気となり、2着ザバーガーに1馬身半差をつけて2勝目を挙げた。続くナース競馬場芝7ハロンのハンデ競走でも単勝オッズ6倍の2番人気で、トロイセンドの半馬身差3着と好走。しかしレパーズタウン競馬場で出走したクオリティビーフS(T12F)では、単勝オッズ10倍の5番人気で、結果もダマンチェルの3馬身3/4差6着と今ひとつだった(このレースで2着だったザグレブは次走の愛ダービーを勝っている)。次走のカラー競馬場芝10ハロンのハンデ競走では単勝オッズ10倍の3番人気だったが、2着インチアクーリーに1馬身差をつけて3勝目を挙げた。

しかしこの直後に本馬は売りに出された。本馬を購入したのは香港のパン・ユエン・ヒン(彭遠慶)夫妻で、本馬は“インディジェナス(原居民)”と改名されて香港で競走生活を送ることになった。香港ではまず、S・L・ラング(梁錫麟)調教師に預けられた。

競走生活(96/97シーズン)

香港におけるデビュー戦は11月にハッピーバレー競馬場で行われた芝1650mのハンデ競走だった。しかし単勝オッズ34倍で13頭立ての10番人気という低評価で、しかも道中で不利を受けて、勝ったコテージビューから3馬身半差の7着に敗退という結果だった。次走のハッピーバレー競馬場芝1800mのハンデ競走では、単勝オッズ6.6倍で11頭立ての3番人気と前走より評価が上がったが、勝ったパーキーマンから4馬身半差の9着と結果が出なかった。

しかし初めての沙田競馬場となった年明けのカリH(T1800m)では単勝オッズ3.2倍の2番人気に推されると、2着クラシックボーイに3/4馬身差で勝利を収め、移籍後初勝利を挙げた。

次走の香港ダービー(香港国内GⅠ・T1800m)では、単勝オッズ26倍で13頭立ての7番人気という低評価ながら、馬群の中団から末脚を伸ばし、英国から移籍してきたオリエンタルエクスプレスの1馬身半差3着に入った。

続くATVカップH(T1600m)では単勝オッズ7.8倍の4番人気ながら、2着シタディードに1馬身3/4差で勝利した。しかしこの直後にラング師が汚職の疑いを受けて香港の汚職捜査機関である廉政公署による捜査を受けたため、本馬はL・S・リー(李立細)調教師の下に転厩した。

その後に出走した香港金杯(香港国内GⅠ・T2000m)では単勝オッズ10倍の4番人気で、ドーヴィルの2馬身1/4差7着に敗退。クイーンエリザベスⅡ世C(香港国内GⅠ・T2000m)では、オリエンタルエクスプレス、日本で毎日王冠を勝ってきたアヌスミラビリス、南アフリカの名馬ロンドンニューズ、日本から参戦した優駿牝馬・エリザベス女王杯勝ち馬ダンスパートナーと前年の有馬記念3着馬マイネルブリッジなど13頭が対戦相手となった。このメンバー構成の中で本馬は単勝オッズ51倍の11番人気であり、レースでも最後方からの追い込みが不発に終わり、ロンドンニューズの9馬身1/4差10着に敗れ去った(オリエンタルエクスプレスは4着)。ダンスパートナーは8着、マイネルブリッジは9着であり、本馬と日本調教馬の初対決は一応日本側の勝利となった。

しかし次走の香港チャンピオンズ&チャターC(香港国内GⅠ・T2400m)では単勝オッズ10倍で6頭立ての4番人気ながら、3番手から抜け出して2着シタディードに2馬身3/4差で勝利を収め、香港国内におけるGⅠ競走勝ち馬となった。96/97シーズンの成績は8戦3勝だった。その後、リー師が調教師を引退したため、本馬はオリエンタルエクスプレスを管理していたアイヴァン・W・アラン厩舎に転厩した。

競走生活(97/98シーズン)

97/98シーズンは11月のナショナルパナソニックCH(T1400m)から始動した。134ポンドという厳しい斤量が課せられた影響もあって単勝オッズ17倍で7番人気の低評価だったが、18ポンドのハンデを与えたスペシャルの2馬身差2着に入り、8着に終わったオリエンタルエクスプレスに先着した。

次走は香港三冠競走第1戦のスチュワーズC(香港国内GⅠ・T1600m)となった。単勝オッズ5.6倍の3番人気で出走した本馬は馬群の中団から末脚を伸ばして、スマッシングパンプキンの1馬身差3着に入り、7着に終わったオリエンタルエクスプレスに先着した。

続く香港国際ヴァーズ(香GⅡ・T2400m)では、前年の覇者でもあるドイツ賞勝ち馬ルソーが単勝オッズ1.45倍という断然の1番人気に支持され、本馬も単勝オッズ8.2倍の2番人気と評価されていた。レースでは中団待機から残り400m過ぎで鋭く追い込んだが、ルソーの1馬身3/4差4着に敗れた。なお、このレースには日本からエリザベス女王杯3着馬エイシンサンサンが参戦して12着に敗れており、本馬が初めて日本調教馬に先着した記念すべきレースとなった。

年が明けるとさらに調子が上がり、135ポンドのトップハンデながら単勝オッズ3.5倍の1番人気に支持されたサンミゲルシルヴァータンカードH(T1600m)では、10ポンドのハンデを与えた2着マザルに短頭差で勝利した。137ポンドのトップハンデながら単勝オッズ1.8倍の1番人気に支持されたセンテナリーヴァーズH(香港国内GⅢ・T2200m)も、12ポンドのハンデを与えた2着ファステストスターに頭差で勝利した。次走のセンテナリーC(香港国内GⅡ・T1000m)では距離が短すぎるために単勝オッズ7倍の2番人気で、最後方から追い込むもファステストスターの1馬身差3着に敗れた(オリエンタルエクスプレスが2着だった)。

しかし香港三冠競走第2戦の香港金杯(香港国内GⅠ・T2000m)では単勝オッズ1.7倍の1番人気に支持されると、馬群の中団後方から鮮やかな差し切りを決めて、単勝オッズ3.5倍の2番人気だったオリエンタルエクスプレスを1馬身1/4差の2着に破って勝利した。

続くクイーンエリザベスⅡ世C(香港国内GⅠ・T2000m)では単勝オッズ7.9倍の3番人気での出走となり、オリエンタルエクスプレスや香港ダービー馬ヨハンクライフなどに屈して、オリエンタルエクスプレスの1馬身3/4差4着に敗れた。

しかし沙田フューチュリティトロフィー(香港国内GⅢ・T1600m)では単勝オッズ2.7倍の2番人気ながらも、単勝オッズ1.5倍の1番人気に推されていたヨハンクライフをゴール前で完璧に差し切り、1馬身1/4差をつけて勝利した。

さらに前年も勝利した香港三冠競走第3戦の香港チャンピオンズ&チャターC(香港国内GⅠ・T2400m)に出走。ここでは単勝オッズ1.1倍の圧倒的1番人気に支持されると、やはり直線の追い込みを決めて2着スマッシングパンプキンに半馬身差で勝利した。97/98シーズンの成績は10戦5勝だった。

競走生活(98/99シーズン)

98/99シーズンは10月の沙田トロフィー(香港国内GⅢ・T1600m)から始動。135ポンドのトップハンデが課された影響もあって単勝オッズ6.5倍の3番人気だったが、21ポンドのハンデを与えた2着ファステストスターに1馬身半差で勝利した。次走のナショナルパナソニックCH(T1800m)では他の出走全馬より20~25ポンドの重い135ポンドを課せられたが、それでも単勝オッズ1.3倍の1番人気に応えて、2着エンラポートに1馬身差で勝利した。

そしてスチュワーズC(香港国内GⅠ・T1600m)に単勝オッズ2.4倍の1番人気で登場したが、結果は単勝オッズ16倍の4番人気馬ビリオンウィンが勝ち、単勝オッズ2.9倍の2番人気馬ヨハンクライフが2着、単勝オッズ3.4倍の3番人気馬オリエンタルエクスプレスが3着で、珍しく逃げた本馬はゴール前で捕まり、ビリオンウィンから3/4馬身差という僅差ながら4着に敗れた。

暮れの香港国際ヴァーズ(香GⅡ・T2400m)では、オイロパ賞とローマ賞を共に2連覇していたタイパン、ニエル賞で後の凱旋門賞馬エリシオの2着した事もあるモーリスドニュイユ賞勝ち馬ダラザリ、ウニオンレネン・アラルポカル・伊ジョッキークラブ大賞勝ち馬カイタノ、プリンセスオブウェールズ勝ち馬フルーツオブラヴ、独セントレジャー・ミラノ大賞・ドイツ賞勝ち馬ウンガロといった強力外国馬勢が対戦相手となった。タイパンが単勝オッズ3.3倍の1番人気に支持されたが、本馬も単勝オッズ4倍の2番人気と、地元の期待を集めていた。レースでは馬群の中団を追走して6番手で直線に入ると、ゴール前で猛然と追い込んで2着ダラザリに首差で勝利をもぎ取り、国際グレード競走勝ち馬となった。また、この時の本馬の鞍上で、後に香港首位騎手を8度獲得する南アフリカ出身のダグラス・ホワイト騎手にとっては香港で騎手デビューして初めてのGⅠ競走(香港国内)制覇となった。

その後はしばらくレースに出ず、翌年3月のセンテナリーC(T1000m)で復帰。香港競馬ではよく見られる調教代わりの短距離戦出走だったようで、単勝オッズ9.5倍の4番人気で、ベストオブザベストの9馬身1/4差12着に敗れた。

次走の香港金杯(香港国内GⅠ・T2000m)では、単勝オッズ2.9倍の1番人気に支持された。ここでは後方待機策を採り、直線入り口でスパートを開始。そしてオリエンタルエクスプレスやビリオンウィンなどを次々と抜き去ると、ゴール前で計ったようにヨハンクライフを首差でかわし、同競走2連覇を達成した。

次走はこの年から国際GⅡ競走に格上げされたクイーンエリザベスⅡ世C(香GⅡ・T2000m)となった。対戦相手はパリ大賞勝ち馬リンピド、香港国際ボウル勝ち馬で、モーリスドギース賞でシーキングザパールの2着だったジムアンドトニック、VRCクライスラーS・ドンカスターマイルと豪州GⅠ競走で2勝を挙げ、2年前の香港国際ボウルも勝っていたカタランオープニング、ヨハンクライフ、オリエンタルエクスプレス、ビリオンウィンなどだった。リンピドが単勝オッズ2.9倍の1番人気で、本馬が単勝オッズ3.5倍の2番人気となった。ここでもホワイト騎手は辛抱強く後方で待機。そしてレース中盤から上がっていくと、直線入り口7番手から追い込んできた。結局ジムアンドトニックに及ばず2馬身半差の2着に敗れたが、香港国内では最強である事を証明した。

続く香港チャンピオンズ&チャターC(香港国内GⅠ・T2400m)では、単勝オッズ1.2倍という圧倒的な1番人気となった。ここでも後方待機策から追い込んできたが、オリエンタルエクスプレスに頭差届かず2着に敗れた。しかし98/99シーズンは8戦4勝の成績で、香港年度代表馬・最優秀中距離馬・最優秀長距離馬・最高人気馬に選出された。

香港最強馬となった本馬を、陣営は積極的に海外遠征させる方針とした。香港競馬がオフとなる夏場には英国に遠征して、キングジョージⅥ世&クイーンエリザベスDS(英GⅠ・T12F)に参戦。これは香港調教馬としては史上初の英国におけるレース出走だった。1番人気の英ダービー馬オースを筆頭に、仏2000ギニー・エクリプスS・マンノウォーS・コロネーションCなどGⅠ競走4勝のデイラミ、ドバイシーマクラシック・ハードウィックSを勝ってきたフルーツオブラヴ、英ダービー・愛ダービーで共に2着だったダリアプール、英セントレジャー馬ネダウィ、英セントレジャー・コロネーションC・伊ジョッキークラブ大賞勝ち馬シルヴァーペイトリアークと、対戦相手には欧州トップクラスが揃い、さすがに8頭立ての7番人気(単勝オッズ21倍)という低評価だった。スタート後に行きたがる素振りを見せ、鞍上のキャッシュ・アスムッセン騎手が抑えたために3番手から6番手まで下がった。直線に入って追い込みを見せたが、2着ネダウィに5馬身差をつけて圧勝したデイラミから10馬身差の6着に敗れた。しかしオースとダリアプールの2頭に先着するという内容に、陣営は手応えを感じたようで、香港に戻ると暮れのジャパンCを目標に調整を開始した。

競走生活(99/00シーズン)

そして99/00シーズンに入ると、本番22日前に地元沙田競馬場でナショナルパナソニックC(T1000m)に出走した。ここでは距離が短かった上に135ポンドのトップハンデを課された影響もあり、単勝オッズ25倍で14頭立ての9番人気で、結果もベストオブザベストの3馬身3/4差10着だった。

そして予定どおり来日してジャパンC(日GⅠ・T2400m)に挑戦。この年のジャパンCには、前走の凱旋門賞で日本から参戦したエルコンドルパサーを2着に退けていた仏ダービー・愛ダービー馬モンジューの姿があった。他にもサンクルー大賞でエルコンドルパサーの2着だったバーデン大賞2連覇のタイガーヒル、独ダービー・バーデン大賞勝ち馬ボルジア、前年の英ダービー馬ハイライズ、フルーツオブラヴなどが海外から参戦。対する日本馬勢では、東京優駿・天皇賞春・天皇賞秋を勝っていたスペシャルウィークが大将格で、菊花賞3着馬ラスカルスズカ、GⅠ競走2着4回のステイゴールド、優駿牝馬勝ち馬ウメノファイバー、阪神三歳牝馬S勝ち馬スティンガーなどの姿もあった。本馬は前走ナショナルパナソニックCの10着という結果からまったく評価されておらず、単勝オッズ83.9倍で14頭立て12番人気の低評価だった。しかし前述のとおり香港競馬では調教代わりに短距離戦を使うことが一般的だったことは、当時日本ではあまり知られていなかった。

ホワイト騎手が手綱を取る本馬は、好スタートを切ると、逃げるアンブラスモアを見る形で先行。そして直線いったん先頭に立つと、スペシャルウィークに差された後も粘り続け、勝ったスペシャルウィークの1馬身半差2着と大健闘。ハイライズ(3着)、モンジュー(4着)、ボルジア(8着)、フルーツオブラヴ(9着)、タイガーヒル(10着)といった欧州のトップクラスや、ラスカルスズカ(5着)、ステイゴールド(6着)、ウメノファイバー(12着)、スティンガー(14着)といった日本の実力馬達に先着するという大銀星となった。これにより、世界の競馬関係者は香港競馬のレベルが高くなっている事を改めて認識したという。

次走の香港ヴァーズ(香GⅡ・T2400m)では、マッキノンS・メルボルンCを連勝してきた豪州調教馬ローガンジョシュ、シルヴァーペイトリアーク、グレートヴォルティジュールS勝ち馬シーウェーブ、ボルジア、日本から参戦したGⅡ競走4勝馬ローゼンカバリーなどが対戦相手となった。ローガンジョシュが単勝オッズ3.3倍の1番人気で、本馬が単勝オッズ4.1倍の2番人気だった。ここでは前走と同じく先行策を採ったのだが、直線に入ると馬群に包まれて抜け出すのに手間取り、脚を余してボルジアの1馬身差4着に敗れた(ローゼンカバリーは7着だった)。この年の国際クラシフィケーションでは香港調教馬としては過去最高となる119ポンドの評価を受けた。

翌年はボーヒニアススプリントトロフィー(香港国内GⅢ・T1000m)に出走。例によって調教代わりの出走であり、単勝オッズ22倍の7番人気で、ホーリーグレイルの4馬身差10着という結果だった。次走のセンテナリーC(香港国内GⅡ・T1000m)も調教代わりの出走であり、単勝オッズ24倍の7番人気で、ベストオブザベストの6馬身半差10着だった。

その後はドバイワールドC(首GⅠ・D2000m)に挑戦した。しかし初ダートという事もあって最初から最後まで後方のままで、圧倒的な強さを発揮したドバイミレニアムの前に成すすべなく18馬身半差をつけられて8着に敗れた。日本から参戦した東京大賞典勝ち馬ワールドクリークは6着であり、ここでは日本調教馬に勝つことが出来なかった。

帰国後はクイーンエリザベスⅡ世C(香GⅡ・T2000m)に出走。前年の香港Cを勝っていたジムアンドトニック、香港金杯を勝ってきたインダストリアリスト、同厩のハウスマスター、エレクトロニックユニコーンなどが対戦相手となった。本馬は単勝オッズ14倍の6番人気と評価を落としており、レースでも先行して粘り切れずに、インダストリアリストの1馬身1/4差4着に敗れた。

香港チャンピオンズ&チャターC(香港国内GⅠ・T2400m)では、インダストリアリスト、オリエンタルエクスプレス、前走3着のハウスマスターなどを抑えて単勝オッズ2.8倍の1番人気に支持されたが、直線の追い比べでハウスマスターに敗れて3/4馬身差の2着だった。結局99/00シーズンは8戦未勝利、ジャパンC2着以外は良いところが無かった。

競走生活(00/01シーズン)

00/01シーズンに入っても今ひとつ調子は上がらなかった。香港特別行政区長官C(T1200m)では134ポンドの斤量と距離不足の影響により単勝オッズ33倍の10番人気で、ビリオンウィンの2馬身半差7着。沙田トロフィー(香港国内GⅢ・T1600m)では単勝オッズ3.5倍の1番人気に支持されたが、ビリオンウィンの頭差2着と惜敗。ナショナルパナソニックC(T1000m)では他馬勢より10ポンド以上重いトップハンデだったために単勝オッズ19倍の7番人気で、プレンティプレンティの8馬身半差7着に敗退。ポクオイC(T2000m)では130ポンドのトップハンデながらも単勝オッズ2.4倍の1番人気に支持されたが、ニュージーランドからやってきた新ダービー馬ヘレンバイタリティ(斤量115ポンド)の1馬身3/4差5着と、敗戦続きだった。

この年から国際GⅠ競走となった香港ヴァーズ(香GⅠ・T2400m)では、コロネーションCを勝ち、キングジョージⅥ世&クイーンエリザベスDSでモンジューの3着するなど実力をつけていたダリアプール、ナッソーS・ヨークシャーオークス・マンノウォーSで2着、前走ジャパンCでテイエムオペラオーの4着だったランカシャーオークス勝ち馬エラアシーナ、ヘレンバイタリティ、独国のGⅠ競走エールトガス大賞の勝ち馬カテラ、後の香港金杯勝ち馬アイドル、カイタノ、オリエンタルエクスプレスなどが対戦相手となった。本馬は単勝オッズ8.7倍の4番人気であり、直線入り口6番手から追い上げるも、ダリアプールの2馬身1/4差4着に敗れた。

年明け初戦のスチュワーズC(香港国内GⅠ・T1600m)では単勝オッズ15倍の4番人気で、前年の安田記念を勝っていた同厩馬フェアリーキングプローンの4馬身3/4差5着に敗退。センテナリーヴァーズ(香港国内GⅢ・T2000m)では単勝オッズ4倍の2番人気だったが、単勝オッズ2.2倍の1番人気に推されていた後の香港ダービー馬インダストリアルパイオニアの2馬身3/4差3着に敗れた。

続いてドバイに遠征して、前年とは異なりドバイシーマクラシック(首GⅡ・T2400m)に参戦。対戦相手はかなり手強く、前年のドバイシーマクラシック・マンノウォーS・香港Cを勝っていたファンタスティックライト、ダリアプール、英セントレジャー・ドイツ賞・加国際Sを勝っていたムタファーウエク、前年の香港ヴァーズ5着馬で前走シンガポールCを圧勝してきた独国調教馬シルヴァノ、ミラノ大賞勝ち馬エンドレスホール、カイタノ、日本から参戦したステイゴールドなどが出走していた。英国ブックメーカーのオッズでは本馬は単勝オッズ21倍の9番人気だったが、単勝オッズ34倍の12番人気だったステイゴールドよりは評価されていた。レースでは先行したが、直線に入ると大きく失速。粘るファンタスティックライトをゴール直前で際どくかわしたステイゴールドから14馬身差の13着と大敗を喫した。

地元に戻り、国際GⅠ競走に格上げされたクイーンエリザベスⅡ世C(香GⅠ・T2000m)に出走。ドバイデューティーフリーを勝ってきたジムアンドトニック、ドバイシーマクラシックで3着だったシルヴァノ、ヘレンバイタリティ、ダリアプールなどが参戦しており、単勝オッズ42倍で13頭立ての9番人気まで評価を落としていた。しかし2番手追走から直線でもよく粘り、シルヴァノ、ジムアンドトニックに次ぐ3馬身1/4差3着と好走した。

しかし次走の香港チャンピオンズ&チャターC(香港国内GⅠ・T2400m)では単勝オッズ2.7倍の1番人気に応えられず、追い込みが不発に終わり、オリエンタルエクスプレスの4馬身1/4差5着に終わった。そして単勝オッズ94倍で14頭立ての13番人気まで評価が落ちた沙田ヴァーズ(香港国内GⅡ・T1000m)も、ウイニングカウンターの4馬身1/4差10着に敗れて、00/01シーズンを10戦未勝利で終えた。

競走生活(01/02シーズン)

01/02シーズンは10月のハッピーバレートロフィー(香港国内GⅢ・T1200m)から始動した。133ポンドのトップハンデと距離不足のため単勝オッズ56倍で12頭立ての最低人気だったが、ソリッドコンタクトの1馬身1/4差4着と好走した。次走の沙田トロフィー(香港国内GⅢ・T1600m)では単勝オッズ6.7倍の2番人気となり、今回は逃げを打って粘り、シャクシーフォーチュンの3/4馬身差3着とここでも好走。

そして2年ぶりに来日してジャパンC(日GⅠ・T2400m)に登場した。前年に天皇賞春・宝塚記念・天皇賞秋・ジャパンC・有馬記念など8戦全勝の金字塔を打ち立てたテイエムオペラオー、東京優駿勝ち馬ジャングルポケット、宝塚記念でテイエムオペラオーを遂に打ち負かしたメイショウドトウ、ステイゴールド、菊花賞馬ナリタトップロードと、上位人気は日本馬勢が独占。外国馬は全体的に蚊帳の外だったが、その中でも本馬は最も評価が低く、単勝オッズ114.7倍で15頭立ての13番人気だった。そして結果はジャングルポケットの5馬身半差7着だったが、W・C・マーウィング騎手を鞍上に、逃げ馬を見る形で先行して、直線でメイショウドトウに食い下がりながら粘るという内容で、健闘したと言える。

次走の香港ヴァーズ(香GⅠ・T2400m)は、ステイゴールドが悲願のGⅠ競走初制覇を飾ったレースとしてあまりにも有名だが、単勝オッズ17倍の7番人気だった本馬も中団からそれなりに脚を伸ばして、ステイゴールドから6馬身3/4差の3着に入っている。

年明け初戦のスチュワーズC(香港国内GⅠ・T1600m)では単勝オッズ11倍の3番人気だったが、エレクトロニックユニコーンの7馬身差6着と完敗。次走の香港金杯(香港国内GⅠ・T200m)は単勝オッズ10倍の3番人気で、インダストリアルパイオニアの4馬身半差5着。チェアマンズトロフィー(香港国内GⅡ・T1600m)は単勝オッズ22倍の8番人気で、レッドペッパーの5馬身1/4差11着と、3戦続けて見せ場無く敗れた。

そのため、クイーンエリザベスⅡ世C(香GⅠ・T2000m)では単勝オッズ100倍で14頭立ての最低人気まで落ちた。しかし本馬を見放したファンを見返すかのように、直線殿一気の末脚を繰り出して、香港マイル勝ち馬エイシンプレストン、香港C勝ち馬アグネスデジタルの日本馬ワンツーに次ぐ3/4馬身差3着に突っ込み、この年のカルティエ賞最優秀古馬に選ばれるグランデラ(5着)などに先着して健在ぶりをアピールした。

続くシンガポール航空国際C(星GⅠ・T2000m)では、馬群の好位から直線で粘り、グランデラ、パオリニに次ぐ4馬身半差3着に入った。しかし香港チャンピオンズ&チャターC(香港国内GⅠ・T2400m)では単勝オッズ5.1倍の3番人気と評価されたにも関わらず、チアーズホンコンの30馬身半差10着に大敗した。01/02シーズンの成績は10戦未勝利だった。

さすがにそろそろ引退かと思われたが、馬主のヒン氏は、本馬は11歳まで走ることが出来ると宣言して、多くの香港競馬ファンの不興を買った。

競走生活(02/03シーズン)

02/03シーズンは10月の沙田トロフィー(香港国内GⅢ・T1600m)から始動したが、現時点における本馬では133ポンドのトップハンデは厳しく、単勝オッズ23倍の4番人気で、レースでも先行して失速し、スーパーモリーの7馬身半差14着最下位に敗れた。

次走は3度目の挑戦となるジャパンC(日GⅠ・T2200m)となった。天皇賞秋を勝ってきたシンボリクリスエス、天皇賞秋で2着だったナリタトップロード、前年の覇者ジャングルポケット、皐月賞馬ノーリーズンと、やはり日本調教馬が上位人気を占め、外国馬の前評判は全体的に低かった。その中でも本馬の評価は群を抜いて低く、単勝オッズ125.2倍で16頭立ての最低人気だった。しかしE・サンマルタン騎手を鞍上に、インコースの好位をロス無く回り、2番手で直線を向くと粘り込んで、勝ったファルブラヴから2馬身半差の6着(5着ジャングルポケットとは半馬身の差)に入り、日本の馬場適性の高さをまざまざと見せてくれた。しかしこれが本馬の最後の輝きだった。

年末の香港ヴァーズ(香GⅠ・T2400m)では単勝オッズ52倍の9番人気で、サンクルー大賞勝ち馬アンジュガブリエルの11馬身3/4差12着と惨敗。年明け初戦のスチュワーズC(香港国内GⅠ・T1600m)では単勝オッズ53倍の9番人気で、エレクトロニックユニコーンの8馬身3/4差9着。チェアマンズスプリント(香港国内GⅠ・T1200m)では単勝オッズ100倍の9番人気で、グランドデライトの7馬身3/4差10着最下位と大敗続き。通算7度目の出走となった香港チャンピオンズ&チャターC(香港国内GⅠ・T2400m)では、単勝オッズ25倍の9番人気で、前年の香港C勝ち馬プレシジョンの11馬身差13着最下位に終わったのを最後に、02/03シーズン6戦未勝利で現役引退となった。

生涯獲得賞金4512万5289香港ドルは、香港調教馬としては当時最高記録だった。本馬は香港競馬史上でも有数の人気を誇った馬で、香港調教馬が国際的に活躍する先駆けとなった馬であるともされている。

血統

Marju ラストタイクーン トライマイベスト Northern Dancer Nearctic
Natalma
Sex Appeal Buckpasser
Best in Show
Mill Princess Mill Reef Never Bend
Milan Mill
Irish Lass Sayajirao
Scollata
Flame of Tara アーティアス Round Table Princequillo
Knight's Daughter
Stylish Pattern My Babu
Sunset Gun
Welsh Flame Welsh Pageant Tudor Melody
Picture Light
Electric Flash Crepello
Lightning
Sea Port Averof Sing Sing Tudor Minstrel Owen Tudor
Sansonnet
Agin the Law Portlaw
Revolte
Argentina Nearco Pharos
Nogara
Silvery Moon Solario
Silver Fox
Anchor Major Portion Court Martial Fair Trial
Instantaneous
Better Half Mieuxce
Malay Bride
Ripeck Ribot Tenerani
Romanella
Kyak Big Game
Felucca

父マルジュはラストタイクーンの直子で、名牝サルサビルの1歳年下の半弟。現役成績は7戦3勝で、セントジェームズパレスS(英GⅠ)・クレイヴンS(英GⅢ)を勝ち、英ダービー(英GⅠ)でもジェネラスの2着に入った距離不問の馬で、本馬のオールマイティな活躍ぶりの源泉であるとも言える。種牡馬としても成功しているが、活躍馬が牝駒に偏っている傾向が強い。

母シーポートは現役成績3戦未勝利だが、その母アンカーはネルグウィンSの勝ち馬。シーポートの半兄にはシーアンカー(父アルサイド)【キングエドワードⅦ世S(英GⅡ)・ヘンリーⅡ世S(英GⅢ)・ドンカスターC(英GⅢ)】がいる他、アンカーの半弟にはブーイ【コロネーションC(英GⅠ)・グレートヴォルティジュールS(英GⅡ)・ヨークシャーC(英GⅡ)・プリンセスオブウェールズS(英GⅢ)】、半妹にはバイリーム【英オークス(英GⅠ)・ムシドラS(英GⅢ)】が、バイリームの曾孫にはタレント【英オークス(英GⅠ)】がいるなど、近親には活躍馬が多数いる。シーポートの牝系子孫からは、本馬の半姉シーオブダイアモンズ(父グレンスタル)の孫にジェシカビール【AJCシドニーC(豪GⅠ)・チェアマンズH(豪GⅡ)】、本馬の半妹ディラローシェ(父デインヒル)の子に日本で走ったフェノーメノ【天皇賞春(GⅠ)2回・青葉賞(GⅡ)・セントライト記念(GⅡ)・日経賞(GⅡ)・2着東京優駿(GⅠ)・2着天皇賞秋(GⅠ)】が出ている。→牝系:F11号族②

母父アヴェロフは現役成績13戦4勝、セントジェームズパレスS(英GⅡ)の勝ち馬。アヴェロフの父シングシングはテューダーミンストレル産駒の英国2歳王者。

競走馬引退後

競走馬を引退した本馬は、現役最後のレースとなった香港チャンピオンズ&チャターCから2日後の6月3日に、ホワイト騎手を鞍上に沙田競馬場で引退式を行った。そして香港の新界公立乗馬学校で余生を送ることになった。しかし引退から1年少し経った2004年8月8日、重度の腸捻転を発症したため、11歳で安楽死の措置が執られた。その死が、長年の酷使と関係しているかどうかは実証されなかったそうである。

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