フェアリーキングプローン

和名:フェアリーキングプローン

英名:Fairy King Prawn

1995年生

鹿毛

父:デインヒル

母:ツイッグレット

母父:ツイッグモス

香港の短距離・マイル路線のトップホースとして活躍し、香港調教馬として初めて日本の安田記念を優勝する

競走成績:2~6歳時に香日首で走り通算成績26戦12勝2着10回

香港競馬と日本競馬の関係

本馬の紹介の前に香港競馬と日本競馬の関わりについて簡単に述べようと思う。香港は英国の植民地であったから、競馬の歴史自体は古く、19世紀中頃まで遡るようである。香港ジョッキークラブの設立も19世紀末であり、その点では20世紀に入ってから東京競馬会、競馬倶楽部、日本競馬会、日本中央競馬会といった順で施行団体が段階的に整備されていった日本より進んでいたのだが、サラブレッドの導入自体は日本より遅く、1960年代の話だった。

その香港競馬というものを日本競馬界がはっきりと意識し始めたのはいつ頃からなのだろうか。1995年にフジヤマケンザンが香港国際Cを勝っており、さらにその数年前から既に日本調教馬が香港に遠征する事例が見られた事から、この時期には香港でも競馬をやっているという認識は有していたはずだが、香港競馬のレベルがどれだけのものなのかを認識していたかと言われると、おそらく怪しいだろう。

逆に香港競馬界は、かなり早い段階から日本の競馬を意識していた。それはおそらく1981年のジャパンC創設まで遡る。世界的にジャパンCが大きく注目されていたかは正直微妙だが、少なくとも香港競馬界は相当注目していた。1988年に香港ジョッキークラブが香港招待Cを創設し、さらに1993年に香港国際Cに名称変更して国際競走を整備したのは、ジャパンCに負けないくらいの競走を創設して、香港競馬のレベル向上を図ろうという香港競馬界の意識の表れである。そして香港国内の競走においては、香港調教馬も海外の調教馬に引けをとらない走りを見せるまでに早い段階で至っていた。

しかし日本国内を含む香港外の競走において、香港調教馬が勝ち負けに絡む事例は当初は無かった。香港調教馬が最初に日本の国際競走に出走したのは、1994年の安田記念に出走したウイニングパートナーズだと思われるが、結果はノースフライトの14着だった。しかしその後に日本に遠征してきて結果を残す香港調教馬も登場してきた。1998年の安田記念で2着したオリエンタルエクスプレス、1999年のジャパンCで2着したインディジェナスである。この2頭はいずれも勝つまでには至らず、日本競馬界の香港競馬に対する認識を根底から覆すまでには至らなかったが、2000年になって遂に香港調教馬が日本のGⅠ競走を勝つ日がやってきた。その馬こそが本項の主人公フェアリーキングプローンである。

そしてその後は日本だけでなく世界各国で香港調教馬が活躍するようになった。そして香港国際C改め香港Cを含む年末の香港ミーティングは、はっきり言ってジャパンCとは比較にならないくらいに世界各国から有力馬が集結するようになっており、時期が接近しているジャパンCや有馬記念の存在意義は年を追うごとに薄れつつある。

その状況を打開するには、天皇賞秋の距離短縮、マイルCSの創設、グレード制の導入などの大改革を実行した1984年に匹敵する大胆なレース体系の見直しが必要なのだが、未だに「天皇賞秋の距離が短くなったのは許せない」「マイルCSなどは自分がその存在意義をまったく認めていないレースの一つである」などと時代遅れの主張を行う競馬記者・評論家・古いファンなどがいる(さすがにもうそろそろ絶滅危惧種に指定しても良いかもしれない)状況を鑑みると、大胆な改革は期待できそうにもない。こうして日本の競馬は世界から取り残されて、井の中の蛙状態となり、たまに日本調教馬が海外に遠征して結果を残しても大騒ぎするのは日本人だけという状況になっていくのだろう。

本項の主人公は香港調教馬たるフェアリーキングプローンであるのに、いきなりこんな話から始めたのは本馬に失礼なのだが、生粋の日本人たる筆者としては、国際的な認知度が完全に香港競馬に追い抜かれている今の状況が口惜しいのである。この名馬列伝集を見ている日本中央競馬会の関係者がいたら、筆者のこの悔しさを頭の片隅にでも置いて欲しいと切に願うばかりである。筆者の愚痴はここまでにして、本馬の話を始める。

誕生からデビュー前まで

本馬は1988年に設立された豪州の馬産団体トレモン・サラブレッズ社のC・B・レモンド夫人により生産された豪州産馬であり、香港の馬主である劉錫康(ラウ・シアク・ホン)氏の夫妻に購入され、香港の名調教師であるリッキー・イウ師に預けられた。

競走生活(97/98・98/99シーズン)

2歳3月に沙田競馬場で行われたスターライトプレート(T1000m)でデビューした。単勝オッズ6.4倍で12頭立ての3番人気といった程度の評価だったが、2着となった単勝オッズ3.8倍の2番人気馬チアーズウインに短頭差で勝利した。

2歳時はこの1戦のみで終え、翌98/99シーズンは9月の香港カントリークラブチャレンジC(T1200m)から始動した。単勝オッズ11倍で14頭立ての6番人気に過ぎなかったが、主戦となるスティーヴン・キング騎手を鞍上に、2着となった単勝オッズ4.8倍の2番人気馬マルシェユニバーサルに2馬身半差で勝利した。

次走は翌月に沙田競馬場で行われた芝1200mのハンデ競走となった。ここでは単勝オッズ2.3倍の1番人気に支持されたのだが、単勝オッズ4.8倍の2番人気に推されていた後の好敵手ベストオブザベストの6馬身差6着に敗れた。

次走のスプリントトライアルトロフィー(T1400m)では、ベストオブザベストが単勝オッズ2.9倍の1番人気に支持され、本馬は単勝オッズ15倍の6番人気まで評価を下げていた。結果はベストオブザベストが人気に応えて勝利したが、本馬も短頭差まで迫る2着と好走した。

12月に沙田競馬場で行われた芝1400mのハンデ競走では、単勝オッズ4.2倍の1番人気に応えて、2着となった単勝オッズ14倍の7番人気馬ファステストスターに1馬身差で勝利を収め、しばらく休養入りした。

翌年は2月末のTVBカップ(T1200m)から始動した。単勝オッズ2.8倍の1番人気に応えて、2着となった単勝オッズ16倍の7番人気馬バンパーストーム(香港国内GⅢ競走ハッピーバレートロフィーの勝ち馬)に2馬身3/4差で快勝した。

翌3月の香港テレコムC(T1400m)でも単勝オッズ2.2倍の1番人気に支持されたが、単勝オッズ30倍の10番人気馬エレクトロニックゾーンの大駆けに遭って、短頭差の2着に敗れた。

その後は少し間隔を空け、5月のチェアマンズプライズ(香港国内GⅠ・T1200m)に出走した。このレースには、香港国内GⅡ競走センテナリースプリントC・香港国内GⅢ競走チャイニーズクラブチャレンジCを勝ってきたベストオブザベストに加えて、一昨年の香港ダービー・昨年のクイーンエリザベスⅡ世C・チェアマンズプライズなどの勝ち馬で昨年の安田記念ではタイキシャトルの2着にも入っていた当時香港短距離界最強のオリエンタルエクスプレスも出走してきた。ベストオブザベストが単勝オッズ2倍の1番人気、本馬が単勝オッズ5.7倍の2番人気で、3連敗中とやや不調のオリエンタルエクスプレスは単勝オッズ8.1倍の4番人気に留まった。しかしレースではベストオブザベストを置き去りにして、本馬とオリエンタルエクスプレスの接戦となった。そして本馬が首差で勝利を収め、大競走の初勝利を挙げた。

2週間後には香港の名物マイル戦である沙田ヴァーズ(香港国内GⅡ・T1600m)に出走した。このレースにはベストオブザベストもオリエンタルエクスプレスもおらず、本馬が単勝オッズ1.4倍の1番人気に支持された。しかし結果は、単勝オッズ6倍の3番人気馬キングストントレジャーの2馬身1/4差2着に敗れた。それでも98/99シーズンは8戦4勝2着3回の好成績を残し、香港最優秀短距離馬のタイトルを獲得した。

競走生活(99/00シーズン)

翌99/00シーズンは、9月の香港特別行政区長官C(T1200m)から始動して、ベストオブザベスト、キングストントレジャーとの対戦となった。115ポンドと軽量に恵まれたキングストントレジャーが単勝オッズ3.2倍の1番人気、131ポンドのベストオブザベストが単勝オッズ3.5倍の2番人気で、135ポンドを課された本馬は単勝オッズ8倍の3番人気だった。結果はキングストントレジャーが勝ち、ベストオブザベストが1馬身1/4差の3着、本馬はベストオブザベストからさらに2馬身差の7着に敗れてしまった。

次走のナショナルパナソニックC(T1000m)では、ベストオブザベスト、チェアマンズプライズ2着直後の香港チャンピオンズ&チャターCを勝って向かった安田記念でエアジハードの12着に惨敗していたオリエンタルエクスプレス、香港チャンピオンズ&チャターC・香港国際ヴァーズ・香港金杯などを勝っていた香港中距離界のトップホースであるインディジェナスなどが出走してきた。127ポンドのベストオブザベストが単勝オッズ2.8倍の1番人気、131ポンドの本馬が単勝オッズ4.5倍の2番人気で、132ポンドのオリエンタルエクスプレスは単勝オッズ12倍の6番人気、135ポンドのインディジェナスは単勝オッズ25倍の9番人気だった。本馬は先行して残り300m地点で先頭に立って押し切ろうとしたが、本馬より4ポンド斤量が軽かったベストオブザベストに差されて1馬身差の2着に敗退。本馬からさらに1馬身半差の3着がオリエンタルエクスプレスだった。なお、このレースでインディジェナスは10着に惨敗した事もあって、次走のジャパンCで全くの人気薄だったわけだが、結果はスペシャルウィークの2着に入り、英ダービー馬ハイライズや凱旋門賞馬モンジューに先着して、オリエンタルエクスプレスに続いて香港調教馬の実力を私達日本の競馬ファンの前で見せてくれた。

インディジェナスに続いて日本の競馬ファンをあっと言わせる事になるのが本馬であるわけだが、それはもう少し先の話であり、次走は年末の香港スプリント(香港国内GⅠ・T1000m)となった。対戦相手の層は本馬が出走してきたレースの中で最高であり、ベストオブザベストに加えて、豪州のGⅠ競走オークレイプレートの勝ち馬ダンテラー、英国のGⅢ競走キングジョージSの勝ち馬ルディーズペット、仏国のGⅡ競走グロシェーヌ賞2連覇のセイントマリーン、米国のGⅡ競走パロスヴェルデスH・サンカルロスH・ポトレログランデBCHの勝ち馬ビッグジャグ、後にナンソープS・スプリントC・キングズスタンドSなどを制して翌2000年のカルティエ賞最優秀短距離馬にも選ばれるニュークリアディベイトなど、世界各国の有力馬が参戦してきた(日本調教馬の参戦は無かった)。ダンテラーが単勝オッズ3.4倍の1番人気、ベストオブザベストが単勝オッズ4.2倍の2番人気、ルディーズペットが単勝オッズ6.1倍の3番人気、セイントマリーンが単勝オッズ6.7倍の4番人気、ビッグジャグが単勝オッズ10倍の5番人気で、本馬は単勝オッズ13倍の6番人気と評価を下げていた。スタートが切られると、ダンテラーが先頭を伺い、それをベストオブザベストなどが追いかけていったが、本馬は無理に先行せずに中団に控える作戦を採った。この作戦が的中し、残り400m地点から加速すると、残り200m地点で先頭に立ち、最後は粘る単勝オッズ29倍の8番人気馬クリスタルチャームに1馬身差をつけて勝利した(ベストオブザベストは本馬から2馬身3/4差の5着に敗れた)。

年明け初戦は1月のボーヒニアスプリントトロフィー(香港国内GⅢ・T1000m)となった。ここにもベストオブザベストが出走してきて、単勝オッズ2.4倍の1番人気に支持された本馬と、単勝オッズ4.1倍の2番人気となったベストオブザベストの一騎打ちかと思われた。しかし結果は馬群の好位から抜け出した2頭は揃って前に届かず、本馬は1馬身1/4差の2着、ベストオブザベストはさらに短頭差の3着に敗退。勝ったのは、先行して押し切った単勝オッズ34倍の9番人気馬ホーリーグレイルだった。勝ったホーリーグレイルは前年の香港ダービーの勝ち馬だったが、如何せんそれが単勝オッズ99倍という人気薄の勝利であり、その後は大敗続きだったために、ここでは全くのノーマークだった。

次走は3月のセンテナリーC(香港国内GⅡ・T1000m)となった。このレースをステップにドバイワールドCに旅立つインディジェナスの姿もあったが、レースとしてはやはり単勝オッズ2.6倍の1番人気に支持された本馬と、単勝オッズ4.3倍の2番人気となったベストオブザベストの一騎打ちムードだった。今回も2頭ともに好位につけたが、今回は一足先に抜け出したベストオブザベストが勝ち、本馬は1馬身半差の2着だった。

この後に劉錫康氏は、本馬を日本に遠征させて安田記念に出走させる事を企図し、本馬をイウ厩舎からアイヴァン・アラン厩舎へと転厩させた。本馬と何度か対戦経験があるオリエンタルエクスプレスやインディジェナスの管理調教師だったアラン師は、日頃から香港調教馬の実力を世界に認めさせたい思いを抱いていたために非常に遠征意欲が旺盛であり、オリエンタルエクスプレスが2年前の安田記念で2着したのも、インディジェナスが前年のジャパンCで2着したのも、彼が2頭を日本に送り込んだ結果であった。劉錫康氏は、このように既に日本への遠征で結果を出していた彼の豊富な海外遠征のノウハウに期待したのだった。

アラン師はかつてオリエンタルエクスプレスが安田記念で2着した時と同じスケジュールを採用し、前哨戦として本馬をチェアマンズプライズ(香港国内GⅠ・T1200m)に出走させた。なお、このレースから本馬の主戦はR・フラッド騎手が務める事になった。単勝オッズ2.9倍の2番人気に推された本馬を、フラッド騎手は最後方から進めさせた。これは直線が長いために後方から行く馬の差し追い込みが決まりやすい東京競馬場を意識したのではないかと推察される。まだ慣れない戦法だったためか、上がり馬として単勝オッズ2.6倍の1番人気に推されていたタジャスールに首差届かずに2着に敗れた。オリエンタルエクスプレスが安田記念で2着する前に出た同競走では1着だったのだが、本馬も2着と言っても、香港クラシックトライアル・香港金杯・クイーンエリザベスⅡ世Cなどを勝ってきたインダストリアリスト(単勝オッズ6.2倍の3番人気で本馬から2馬身3/4差の3着)、オリエンタルエクスプレス(単勝オッズ7.4倍の4番人気で5着)、ホーリーグレイル(単勝オッズ26倍の7番人気で12着最下位)などには先着しており、アラン師にとっては満足いく内容だったらしい。

そして予定どおり本馬の次走は安田記念(日GⅠ・T1600m)となったのだった。対戦相手は、阪神三歳牝馬S・オークストライアル四歳牝馬特別・京王杯スプリングC・京都牝馬特別を勝っていた一昨年の中央競馬最優秀三歳牝馬スティンガー、前年のスプリンターズSを筆頭にスワンS・ダービー卿チャレンジトロフィー・阪急杯に勝ち前年のマイルCS3着・前走の京王杯スプリングC2着だったブラックホーク、前々走の高松宮記念で悲願のGⅠ競走初勝利を果たしていた中山記念・東京スポーツ杯三歳S・東京新聞杯の勝ち馬で皐月賞・マイルCS2着・スプリンターズS3着の良血馬キングヘイロー、前年のNHKマイルCの勝ち馬シンボリインディ、前年のマイルCS4着馬アドマイヤカイザー、前走のNHKマイルCと共同通信杯四歳Sを勝ってきた3歳馬イーグルカフェ、前年の優駿牝馬を筆頭に京王杯三歳S・クイーンCも勝っていた前年の中央競馬最優秀四歳牝馬ウメノファイバー、桜花賞トライアル四歳牝馬特別・シンザン記念・ダービー卿チャレンジトロフィーの勝ち馬で桜花賞・エリザベス女王杯2着のフサイチエアデール、富士S・中山牝馬Sの勝ち馬でNHKマイルC3着のレッドチリペッパー、前走のマイラーズCで3年5か月ぶりの重賞勝利を挙げた朝日杯三歳S・京成杯三歳S・函館三歳Sの勝ち馬マイネルマックス、オープン特別都大路Sを勝ってきたマイラーズC3着馬エイシンルバーン、東京新聞杯の勝ち馬ダイワカーリアン、新潟三歳S・京阪杯の勝ち馬ロサード、チューリップ賞の勝ち馬エイシンルーデンス、平安S2回・名古屋大賞典2回・アンタレスS・マーキュリーCを勝ち帝王賞で3着していたダート馬オースミジェット、この時点はほぼ無名だった翌年の中央競馬最優秀短距離馬トロットスターだった。以上は全て日本調教馬であり、海外からの参戦馬は本馬と、前年のモーリスドギース賞・スプリントC・クリテリオンSを勝っていたゴドルフィンの所属馬ディクタットの2頭のみだった。

京都牝馬特別・京王杯スプリングCを連勝してきたスティンガーが単勝オッズ4.5倍の1番人気、ブラックホークが単勝オッズ4.9倍の2番人気、キングヘイローが単勝オッズ7.7倍の3番人気、シンボリインディが単勝オッズ8倍の4番人気、重賞勝ちがまだ無かったアドマイヤカイザーが単勝オッズ8.1倍の5番人気と日本馬が上位人気を占め、欧州GⅠ競走2勝のディクタットは単勝オッズ8.8倍の6番人気、本馬は単勝オッズ39.9倍の10番人気だった。ちなみに筆者と友人はいずれも本命をディクタットにしていたのだが、申し訳ないが本馬はノーマークだった。

スタートが切られると、エイシンルーデンスが先手を取り、キングヘイローが好位、スティンガーが中団、ブラックホーク、本馬、ディクタットなどはいずれも中団後方につけた。そして直線に入るとキングヘイロー、スティンガー、トロットスターなどが抜け出したが、さらに外側から多くの日本の競馬ファンにとって予想外の馬が猛然と追い込んできた。実況が叫んだ。「そして、そして、あれは、あれは、フェアリーキングプローン!!」と。東京競馬場の長い直線を大外から豪快に突き進んだ本馬が、本馬の後ろから追い上げて2着に入ったディクタットに1馬身1/4差をつけて優勝。海外馬によるワンツーフィニッシュを演出した。ゴール直後に本馬鞍上のフラッド騎手と、ディクタット鞍上のダラ・オドノヒュー騎手が握手をかわしたのが印象的だった。日本馬はディクタットから首差の3着にキングヘイローが入ったのが最高成績だった。この勝利は香港所属馬として初の日本のGⅠ競走制覇となり、過去2回日本のGⅠ競走で2着していたアラン師にとっても悲願達成となった。

99/00シーズンの成績は7戦2勝だったが、香港スプリント・安田記念の勝利が高く評価され、香港年度代表馬・香港最優秀マイラー・香港最優秀短距離馬のトリプルタイトルを受賞した。

競走生活(00/01シーズン)

翌00/01シーズンは10月のハッピーバレートロフィー(香港国内GⅢ・T1200m)から始動した。ここでは135ポンドのトップハンデが課されても、単勝オッズ2.4倍の1番人気だった。そしてレースでも馬なりのまま好位から抜け出し、着差以上の強さを感じさせる内容で、2着となった単勝オッズ19倍の8番人気馬プレンティプレンティ(斤量113ポンド)に1馬身差で勝利した。

なお、このレースの10日前に、本馬の好敵手ベストオブザベストが日本のスプリンターズSに参戦して単勝オッズ13.1倍の5番人気と穴馬としての評価を受けたが、結果はダイタクヤマトの15着と惨敗してしまい、本馬とは対照的な結果となった。本馬にも、この時期に再度日本に遠征してマイルCSに参戦するプランがあったのだが、香港で日本脳炎を発症した競走馬が出たため検疫の関係で断念している。

本馬はその代わりにスプリントトライアルトロフィー(T1000m)に出走した。ここでは単勝オッズ1.5倍という圧倒的な1番人気に支持されたのだが、本馬には相変わらず135ポンドが課せられており、しかも他馬勢との斤量差は前走ハッピーバレートロフィーの7ポンド以上から、17ポンド以上に変わっていた。さすがにこれでは厳しく、22ポンドのハンデを与えた単勝オッズ6.7倍の3番人気馬キングオブデインズにゴール前で差されて短頭差2着に敗れた。

暮れには香港マイル(香GⅠ・T1600m)に参戦。このレースには、地元香港からはシュヴァリエCを勝ってきたエレクトロニックユニコーン、パナソニックデジタルワールドディヴァイデッドHなどを勝ってきたニュートランプス、沙田トロフィーを勝ってきたビリオンウィン、シュヴァリエCで2着してきたチャーミングシティなどが、米国からは、モルニ賞を勝ちサラマンドル賞・仏グランクリテリウム・フォレ賞で2着するなど仏国で活躍した後に米国に戦場を移してニッカーボッカーH・サイテーションHを勝っていたシャルジュダフェーレ、豪州からはサイアーズプロデュースS・ヴィクヘルスC・ライトニングS・豪フューチュリティS・イートウェルリヴウェルC・エミレーツSとGⅠ競走6勝のテスタロッサ、そしてコックスプレート2連覇・フライトS・ドンカスターH・クールモアクラシック・オールエイジドS・マニカトSとGⅠ競走7勝のサンラインが参戦してきた。サンラインが単勝オッズ2.2倍の1番人気、本馬が単勝オッズ5.3倍の2番人気で、新国産まれの豪州最強馬サンラインVS豪州産まれの香港最強馬フェアリーキングプローンの対決となった。2頭がこのレースで採った作戦は正反対であり、サンラインは得意の先行逃げ切り策、本馬は後方につけての追い込み策に出た。直線に入ると逃げていたサンラインが後続を引き離しにかかったが、そこへ後方から本馬だけが追い上げてきた。着実に2頭の差は縮まり、どちらが勝つのかゴール直前まで分からなかったが、サンラインが逃げ切りに成功し、本馬は短頭差届かず2着に敗れた。しかし3着アダムには4馬身半差をつけており、この2頭の実力が抜けている事を示す結果となった。まさしく豪州最強馬と香港最強馬の対決にふさわしい素晴らしい名勝負だった。

年明けには香港のマイル路線における大レースであるスチュワーズC(香港国内GⅠ・T1600m)に出走。香港マイルで4着だったニュートランプス、同5着だったエレクトロニックユニコーン、ドバイワールドCで惨敗した後は勝ち星に恵まれていなかったインディジェナス(厳密にはジャパンCで2着する半年以上前から勝ち星は無かったのだが)などを抑えて、単勝オッズ1.4倍という断然の1番人気に支持された。ここでは好スタートから徐々に後方に下げて中団に位置取り、直線に入ってから鮮やかに抜け出して、2着となった単勝オッズ27倍の6番人気馬マグニファイアーに1馬身半差で快勝した。

それから僅か12日後にはボーヒニアスプリントトロフィー(香港国内GⅠ・T1000m)に出走した。ここには久々の対戦となるベストオブザベストに加えて、昨年のコロネーションC・香港ヴァーズ・オーモンドSの勝ち馬で、英ダービー・愛ダービー2着・キングジョージⅥ世&クイーンエリザベスDS・加国際S3着の実績もあったダリアプールも、香港ヴァーズ勝利後にアラン厩舎の一員に加わって参戦してきた。世界的な実績では本馬とダリアプールのいずれが上かは即断できないが、このレースの距離では本馬に分があるのは自明の理であり、本馬が単勝オッズ2.2倍の1番人気に支持された。そして結果も大方の予想どおりで、馬群の中団から悠々と抜け出して残り300m地点で先頭に立った本馬が、2着となった単勝オッズ30倍の8番人気馬ケンウッドメロディー(豪州のGⅠ競走コーフィールドギニーの勝ち馬)に3/4馬身差をつけて勝利。単勝オッズ18倍の4番人気だったダリアプールは13着に沈んだ。単勝オッズ5倍の3番人気だったベストオブザベストも10着に終わっており、本馬とベストオブザベストの好敵手物語は過去の話となった。

その後アラン師は本馬を今度はドバイへ遠征させる事を企図。前哨戦として香港金杯(香港国内GⅠ・T2000m)を使った。このレースにはやはりドバイ遠征を目指していたダリアプールも出走していた。距離が伸びた今回は本馬とダリアプールの評価はほぼ互角であり、本馬が単勝オッズ2.4倍の1番人気、ダリアプールが単勝オッズ2.6倍の2番人気となった。本馬鞍上のフラッド騎手はいつも以上に距離を意識したようで、最後方から慎重にレースを進めた(逆にダリアプールは2番手を先行した)。結果は直線の追い込み届かず、勝った単勝オッズ50倍の9番人気馬アイドルから2馬身1/4差の6着に敗退(ダリアプールは5着)。

しかしアラン師にとっては想定の範囲内だったようで、そのまま本馬とダリアプールをドバイへ向かわせ、本馬はドバイデューティーフリー(首GⅡ・T1777m)に、ダリアプールはドバイシーマクラシックに出走させた。このドバイデューティーフリーには、香港マイル勝利後にワイカトドラフトスプリントなど2連勝してきたサンライン、パース賞2回・シュマンドフェルデュノール賞の勝ち馬でモーリスドギース賞・ロッキンジS・シンガポール航空国際C2着の実績もあったが主な勝ち鞍は香港C・香港国際ボウル・クイーンエリザベスⅡ世Cと香港のレースばかりという仏国調教馬ジムアンドトニック、ジェベルハッタを勝ってきたマーフース、パリ大賞・ノアイユ賞・ドラール賞・ロシェット賞・ラクープの勝ち馬でジャックルマロワ賞2着のスリックリー、ミルリーフS・クリテリオンS・ハンガーフォードSの勝ち馬アルカディアンヒーロー、ミルリーフS・ラーブカルヒャーバウストフC・デズモンドSの勝ち馬で愛1000ギニー・コロネーションS2着のゴールデンシルカ、独2000ギニーの勝ち馬でバイエルン大賞・プリンスオブウェールズS・ダルマイヤー大賞・ヴィットリオディカプア賞2着のスミタス、安田記念では本馬の13着に沈んでいたイーグルカフェなども出走してきた。英国ブックメーカーのオッズでは、サンラインが単勝オッズ2.75倍の1番人気、本馬とジムアンドトニックが並んで単勝オッズ6倍の2番人気となっていた。

スタートが切られると、やはりサンラインが先頭に立ったが、スリックリーがそれに絡んでサンラインを単騎で逃げさせなかった。そして本馬はサンラインからあまり離されないように好位につけた。それでもサンラインはさすがに強く、直線に入っても先頭を維持し続け、ナドアルシバ競馬場の長い直線を押し切る構えを見せた。しかしそこへ好位から来た本馬と、中団から差してきたジムアンドトニックの2頭がやってきた。まずは本馬がサンラインに並びかけて叩き合いに持ち込み、競り落とすことに成功したが、ジムアンドトニックにはかわされてしまい、首差の2着に敗れた(サンラインはさらに半馬身差の3着)。このレースの後、アラン師は「サンラインとの勝負に固執している間にジムアンドトニックに足元を掬われた」と怒り、フラッド騎手を本馬の主戦から降ろしてしまった。しかしほぼリアルタイムでこのレースを見た筆者に言わせると、3頭による見応えある名勝負であり、特に騎乗に問題があったようには思われなかった。なお、ダリアプールが出走したドバイシーマクラシックのほうは、日本から参戦したステイゴールドが勝利を収め、ダリアプールは7着に破れている。

帰国した本馬は、前走から1か月後のチェアマンズスプリント(香港国内GⅠ・T1200m)に出走した。ベストオブザベストの姿もあったが、もはや本馬の敵とはみなされておらず、W・マーウィング騎手騎乗の本馬が単勝オッズ1.5倍の1番人気に支持された。そして馬群の中団から抜け出して残り200m地点から後続を引き離し、2着となった単勝オッズ9.6倍の2番人気馬トリンキュロに4馬身差をつけて圧勝。格の違いを見せ付けた。

この年に英国で発生した口蹄疫問題で再来日が困難な状況だったため、その後はシンガポール航空国際Cへの出走を表明。このレースにはサンライン、ジムアンドトニックも参戦を表明しており、3頭の再戦が期待されたが、サンラインは結局回避。本馬も、日本が口蹄疫問題に関する馬の輸出入自粛措置を緩和したため、連覇を目指して安田記念に向かう事になり、3頭の再戦は成らなかった(ジムアンドトニックは出走したが、エンドレスホールの2着に敗れている)。

1年ぶりに日本の地を踏んだ本馬は、予定どおり安田記念(日GⅠ・T1600m)に登場した。対戦相手は、前年の安田記念では4着だったが前走の京王杯スプリングCで2連覇を達成してきたスティンガー、前走のマイラーズCをレコード勝ちしてきた東京スポーツ杯三歳S・京阪杯の勝ち馬ジョウテンブレーヴ、前年の安田記念では最低人気5着だったがCBC賞・シルクロードS・高松宮記念など4連勝して日本短距離界のトップホースまでに上り詰めていたトロットスター、全日本三歳優駿・名古屋優駿・ユニコーンSを勝ったダート馬のはずだったのに前年のマイルCSを勝っていたアグネスデジタル、産経大阪杯の勝ち馬で前年のマイルCS3着・前走のマイラーズC2着だったメイショウオウドウ、アメリカジョッキークラブC・アルゼンチン共和国杯の勝ち馬マチカネキンノホシ、前年の安田記念9着後にスプリンターズS・高松宮記念2着など2着4回3着2回の善戦馬と化していたブラックホーク、朝日杯三歳S・ニュージーランドトロフィー四歳S・アーリントンCを勝っていた一昨年の中央競馬最優秀三歳牡馬エイシンプレストン、セントウルSの勝ち馬ビハインドザマスク、アメリカジョッキークラブC・中山記念・エプソムC2回の勝ち馬アメリカンボス、前年のマイラーズC2着馬タイキブライドル、3年前のNHKマイルC2着馬で前々走の東京新聞杯2着のシンコウエドワード、オープン特別を2勝していたが重賞では中日スポーツ賞四歳S3着が最高だったブレイクタイム、阪神三歳牝馬Sの勝ち馬で秋華賞2着の一昨年の中央競馬最優秀三歳牝馬ヤマカツスズラン、重賞初挑戦のギャラクシーウイン、前年の安田記念17着後に札幌記念・富士Sを勝っていたダイワカーリアン、香港マイル8着後は絶不調に陥っていたテスタロッサだった。

出走馬の中には、アグネスデジタル、エイシンプレストンと、後に香港でも大活躍する馬達もいたのだが、この時点では両馬共に不調であり、他の出走馬にも決め手が欠けていた。そのために、前年の覇者たる本馬が前年の低評価とは打って変わって単勝オッズ4.6倍の1番人気に支持され、スティンガーが同じ単勝オッズ4.6倍ながら僅差の2番人気、ジョウテンブレーヴが単勝オッズ5.3倍の3番人気、トロットスターが単勝オッズ5.8倍の4番人気、テスタロッサが単勝オッズ10.9倍の5番人気となった。

スタートが切られると、ヤマカツスズランが先頭を引っ張り、本馬は馬群の好位につけた。しかし道中で窮屈な場所に入ってしまい、少し位置取りが下がって馬群の中団で直線に入ってきた。そして前年に見せた豪快な末脚は全く見られず、前に届かず後ろからも差されるで、勝ったブラックホークから5馬身1/4差の9着に敗退してしまった。本馬以外の上位人気馬勢も悉く馬群に沈んだ。ブラックホークは単勝オッズ20.1倍の9番人気、2着ブレイクタイムは単勝オッズ120.5倍の15番人気で、馬番連勝の払い戻しは12万600円という大波乱となった。

これがシーズン最後の出走となったが、それでも00/01シーズンは9戦4勝2着3回の好成績を残し、2年連続で香港年度代表馬・香港最優秀マイラー・香港最優秀短距離馬のトリプルタイトルを受賞した。

競走生活(01/02シーズン)

翌01/02シーズンは10月のナショナルデイC(T1400m)から始動した。ベストオブザベストやオリエンタルエクスプレスの姿もあったが、2頭とも泡沫候補扱いであり、本馬が他馬勢より12~27ポンドも重い133ポンドのトップハンデながらも、単勝オッズ1.8倍の1番人気に支持された。そして2着となった単勝オッズ5.1倍の2番人気馬メリディアンスター(斤量114ポンド)に2馬身差をつけて、1分21秒3のコースレコードで完勝した。

しかし直後に右前脚に脚部不安を発症してしまった。復帰を目指し、管骨の骨片の除去手術などの治療が行われたが、翌年2月に復帰を断念して現役を引退。同月に沙田競馬場で引退式が行われた。

馬名は「活きがいい大きなエビ」又は「妖精の様に華麗な大きなエビ」という意味(名種牡馬フェアリーキングとは関係はない)。“King Prawn(大きなエビ)”が冠名で、劉錫康氏の好物がエビだったことに由来するという。なお、地元香港における表記は「靚蝦王」である。

血統

デインヒル Danzig Northern Dancer Nearctic Nearco
Lady Angela
Natalma Native Dancer
Almahmoud
Pas de Nom Admiral's Voyage Crafty Admiral
Olympia Lou
Petitioner Petition
Steady Aim
Razyana His Majesty Ribot Tenerani
Romanella
Flower Bowl Alibhai
Flower Bed
Spring Adieu Buckpasser Tom Fool
Busanda
Natalma Native Dancer
Almahmoud
Twiglet Twig Moss Luthier Klairon Clarion
Kalmia
Flute Enchantee Cranach
Montagnana
Top Twig High Perch Alycidon
Phaetonia
Kimpton Wood ソロナウェー
Astrid Wood
Extradite Bletchingly Biscay Star Kingdom
Magic Symbol
Coogee Relic
Last Judgement
Expulsion インファチュエイション Nearco
Allure
Roedean Big Game
Brighton Rock

デインヒルは当馬の項を参照。

母ツイッグレットは豪州で走り、エドワードマニホールドS(豪GⅡ)・レジナルドアレンH・キーH・メイトロンSなど5勝を挙げた。産駒には、本馬の半弟イージーロッキング(父バラシア)【サリンジャーS(豪GⅠ)・サンミゲルチャレンジS(豪GⅡ)・カンタベリーS(豪GⅡ)・キンダーガーテンS(豪GⅢ)・ローマンコンサルS(豪GⅢ)】がいる。本馬の半妹ピンピネッラ(父フライングスパー)の子にはアニス【REキンダーガーデンS(豪GⅢ)】が、本馬の全妹クレヴェットの子にはコズミックエンデヴァー【タタソールズティアラ(豪GⅠ)・カンタベリーS(豪GⅠ)・サファイアS(豪GⅡ)・デーンリッパーS(豪GⅡ)】がいる。牝系からはそれほど活躍馬が出ておらず、日本の競馬ファンに馴染みがある最も近い馬は、ツイッグレットの4代母ブライトンロックの半妹テティスの曾孫であるランニングフリー【アメリカジョッキークラブC(GⅡ)・日経賞(GⅡ)・福島記念(GⅢ)】である。→牝系:F22号族①

母父ツイッグモスはリュティエの直子で現役成績は13戦3勝。ノアイユ賞(仏GⅡ)を勝ち、仏ダービー(仏GⅠ)ではユースの2着だった。引退後は豪州に種牡馬として輸出され、複数のGⅠ勝ち馬を出して成功した。

競走馬引退後

競走馬を引退した本馬は香港の競馬ファンが本馬にいつでも会えるようにしたいという劉錫康氏の意向により、屯門の公立騎術学校(乗馬スクール)に移動、現在もこの地で余生を送っている。

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