リュティエ

和名:リュティエ

英名:Luthier

1965年生

黒鹿

父:クレイロン

母:フルートアンシャンテ

母父:クラナック

種牡馬として活躍し貴重なトウルビヨン直系を1970~80年代の仏国で繁栄させる事に成功したリュパン賞・ジャックルマロワ賞の勝ち馬

競走成績:2~4歳時に仏で走り津産成績10戦4勝

誕生からデビュー前まで

仏国ノルマンディーのモートリー牧場において、仏国生まれの銀行家で凱旋門賞馬エクスビュリなどの所有者でもあったガイ・エドワール・アルフォンス・ポール・ド・ロートシルト男爵によって生産・所有され、仏国ジェフロワ・ワトソン調教師に預けられた。

競走生活(3歳前半まで)

2歳8月にドーヴィル競馬場で行われたトック賞(T1400m)でデビューして、ヴェンデュノルと1着同着で勝ち上がった。デビュー2戦目は10月の仏グランクリテリウム(T1600m)となった。しかしこのレースには、愛ナショナルSを完勝してきたサーアイヴァー(後の英2000ギニー・英ダービー・英チャンピオンS・ワシントンDC国際Sの勝ち馬)、クリテリウムドメゾンラフィットを勝ってきたポーラベラ(後に仏1000ギニー・ムーランドロンシャン賞・グロット賞・ノネット賞を勝ち、仏オークス・ヴェルメイユ賞で2着している)、後にフォンテーヌブロー賞・ユジェーヌアダム賞を勝ち仏ダービーで2着するティミーマイボーイといった強敵が勢揃いしており、この3頭全てに屈した本馬は、勝ったサーアイヴァーから8馬身半差の4着と完敗。2歳時の成績は2戦1勝に終わった。

3歳時は仏2000ギニーではなく最初から仏ダービーを目標として、まずは4月のグレフュール賞(T2100m)から始動した。しかし結果はヴァルダストの5着に敗退。しかし次走のノアイユ賞(T2200m)では、2着となったカブール賞の勝ち馬ソワイユに3馬身差をつけて完勝した。続くリュパン賞(T2100m)では、2か月後のキングジョージⅥ世&クイーンエリザベスSで2着し、翌年のサンクルー大賞を勝つことになるフェリシオを1馬身半差の2着に破って勝利を収め、仏ダービーの有力候補に躍り出た。しかし肝心の仏ダービー(T2400m)では、ジュイーニュ賞を勝ってきたタパルク、ティミーマイボーイ、ヴァルダストといった面々に屈して、勝ったタパルクから5馬身半差の6着と完敗を喫した。

競走生活(3歳後半以降)

その後はジャックルマロワ賞(T1600m)に向かった。そして前年のジャンプラ賞の勝ち馬で、この秋の英チャンピオンSでサーアイヴァーの2着するロクリを4馬身差の2着に退けて圧勝し、マイラーとしての資質を見せた。

しかし次走はムーランドロンシャン賞ではなく凱旋門賞(T2400m)となった。17頭立ての7番人気で、結果は勝ったヴェイグリーノーブルから11馬身差の9着と完敗。愛ダービー・英セントレジャーの勝ち馬リベロには先着したが、サーアイヴァー、仏オークス・ヴェルメイユ賞の勝ち馬ロゼリエール、パリ大賞・ロワイヤルオーク賞の勝ち馬ダウデヴィ、前年のロワイヤルオーク賞の勝ち馬サモスといった馬達には敗れており、どうやら距離不適だったようである。3歳時の成績は6戦3勝だった。

翌4歳時も現役を続け、まずはガネー賞(T2100m)に出走した。リュパン賞・ノアイユ賞・グレフュール賞の勝ち馬で仏グランクリテリウム2着のロイダゴバート、ダリュー賞・プランスドランジュ賞・アルクール賞・エクスビュリ賞の勝ち馬で前年の凱旋門賞3着のカルマルセン、フォワ賞・プランスドランジュ賞の勝ち馬で前年のワシントンDC国際S参戦(5着)を機に米国のレースにも参戦するようになりサンフアンカピストラーノ招待HやサンセットHを勝つペトローネといったなかなかの有力馬勢が対戦相手となった。そして結果は上記3頭全てに屈して、勝ったカルマルセンから2馬身差の4着に敗退した。

翌月のミュゲ賞(T1600m)では、プリンスジェット、コートノルマンディ賞・エドモンブラン賞の勝ち馬セミヤーンなど4頭に屈して、プリンスジェットの5着に敗退。このレースを最後に、4歳時2戦未勝利の成績で競走馬引退となった。

血統

Klairon Clarion Djebel Tourbillon Ksar
Durban
Loika Gay Crusader
Coeur a Coeur
Columba Colorado Phalaris
Canyon
Gay Bird Gay Crusader
Popinjay
Kalmia Kantar Alcantara Perth
Toison d'or
Karabe Chouberski
Kizil Sou
Sweet Lavender Swynford John o'Gaunt
Canterbury Pilgrim
Marchetta Marco
Hettie Sorrel
Flute Enchantee Cranach Coronach Hurry On Marcovil
Tout Suite
Wet Kiss Tredennis
Soligena
Reine Isaure Blandford Swynford
Blanche
Oriane Sans Souci
Reine Mab
Montagnana Brantome Blandford Swynford
Blanche
Vitamine Clarissimus
Viridiflora
Mauretania Tetratema The Tetrarch
Scotch Gift
Lady Maureen Spearmint
Molly Desmond

父クレイロンは現役成績17戦6勝。仏2000ギニー・ジャックルマロワ賞・ジョンシェール賞・カルヴァドス賞の勝ち馬で、クイーンエリザベスⅡ世Sで2着、英2000ギニーで3着している。最初は仏国で種牡馬入りしたが、後に英国に移動し、1976年に他界している。産駒にはマイラーだけでなく長距離戦を得意とする馬もおり、距離万能の種牡馬だった。クレイロンの父クラリオンはジェベル産駒で、現役成績26戦10勝。2歳時に仏グランクリテリウム・スカラムーシュ賞・ドゥバルドール賞・マロット賞・ブラントーム賞などを勝って仏最優秀2歳牡馬に選ばれた。2歳時は無敵に近かったが、呼吸器疾患で調整不足だったレースのみ敗れている。3歳以降も呼吸器疾患に悩まされ、カルヴァドス賞・クインシー賞・コンテッシーナ賞2回・ロンポワン賞を勝ったものの、大競走制覇には縁が無かった。

母フルートアンシャンテはドーヴィル大賞を勝ち、パリ大賞で2着、仏1000ギニーで3着した実力馬だった。繁殖牝馬としては、種牡馬として活躍した本馬の半兄ヴィオロンダングレ(父トゥルマン)、全兄プリミエヴィオロン【ノアイユ賞】も産んでいる。本馬の半姉クレモン(父ブルーピーター)の子にはイソリン【ポモーヌ賞】がいる。フルートアンシャンテの母モンタニャーナも優秀な繁殖牝馬で、フルートアンシャンテの全兄ヴァイオロンセル【サンクルー大賞・アルクール賞・エドヴィル賞2回・コンセイユミュニシパル賞・ラクープドメゾンラフィット】、半兄オカリナ(父バブルス)【サンクルー大賞】、日本で種牡馬として大活躍した半兄ガーサント(父バブルス)【仏2000ギニー・フォレ賞・ガネー賞・ハードウィックS・ポルトマイヨ賞】などを産んでいる。モンタニャーナの曾祖母モリーデズモンドはチェヴァリーパークSの勝ち馬で、その母は世紀の名牝プリティポリーである。→牝系:F14号族①

母父クラナックはコロナック産駒の仏国産馬だが、第二次世界大戦の際に独国へ連れ去られ、彼の地で40戦して11勝を挙げた。終戦後は仏国に戻って種牡馬となっている。

競走馬引退後

競走馬を引退した本馬は、仏国ノルマンディーのエトレアム牧場で1970年から種牡馬入りした。初年度産駒から活躍馬を出し、1973年には仏新種牡馬ランキング1位となった。1976年には初の仏首位種牡馬を獲得。1981年に16歳で他界したが、死後の1982・83・84年と3年連続で仏首位種牡馬になっている。産駒のステークスウイナーは61頭であり、もう少し余命があればと思わせる名種牡馬だった。

直子のダンディルートが日本に輸入されて活躍したが早世したため、その後ノーリュートやヤワなどの直子や、直子サガス産駒のアルカングなどが日本に輸入されてきたが、全体的に不調に終わった。ダンディルートから伸びたサイアーラインもほぼ途切れており、日本国外で成功した後継種牡馬も見当たらないため、本馬の直系はかなり衰退している。それでも、本馬は繁殖牝馬の父として96頭のステークスウイナーを出し、1987~93年までの7年連続と1995年の合計8度の仏母父首位種牡馬に輝くなど母の父として大きな成功を収めており、母系においては本馬の血は健在となっている。

主な産駒一覧

生年

産駒名

勝ち鞍

1971

Ashmore

ドーヴィル大賞(仏GⅡ)・ジャンドショードネイ賞(仏GⅡ)・ドーヴィル大賞(仏GⅡ)

1971

Red Girl

伊オークス(伊GⅠ)

1971

Riverton

サンロマン賞(仏GⅢ)・コンデ賞(仏GⅢ)

1972

Condorcet

モーリスドニュイユ賞(仏GⅡ)

1972

Dandy Lute

ロシェット賞(仏GⅢ)・ジョンシェール賞(仏GⅢ)・パレロワイヤル賞(仏GⅢ)

1972

Tip Moss

エヴリ大賞(仏GⅡ)

1973

Riverqueen

仏1000ギニー(仏GⅠ)・サンタラリ賞(仏GⅠ)・サンクルー大賞(仏GⅠ)・グロット賞(仏GⅢ)

1973

Twig Moss

ノアイユ賞(仏GⅡ)

1974

Guadanini

サンクルー大賞(仏GⅠ)・ジャンドショードネイ賞(仏GⅡ)・ヴィシー大賞(仏GⅢ)・ラクープ(仏GⅢ)

1974

Montcontour

オカール賞(仏GⅡ)・ハードウィックS(英GⅡ)

1975

Galiani

パリ大賞(仏GⅠ)

1975

Warfever

マッチメイカーS(米GⅠ)

1977

Hortensia

オペラ賞(仏GⅡ)・クレオパトル賞(仏GⅢ)

1977

Luth de Saron

マルレ賞(仏GⅡ)・ヴァントー賞(仏GⅢ)

1978

Leandra

マルレ賞(仏GⅡ)・ノネット賞(仏GⅢ)

1978

No Lute

リュパン賞(仏GⅠ)

1979

Bois de Grace

グレフュール賞(仏GⅡ)

1979

Sing Softly

ランカシャーオークス(英GⅢ)

1980

Fly Me

フロール賞(仏GⅢ)・コリーダ賞(仏GⅢ)

1980

Galant Vert

リューテス賞(仏GⅢ)

1980

Right Bank

伊オークス(伊GⅠ)・リディアテシオ賞(伊GⅠ)・伊1000ギニー(伊GⅡ)

1980

Sagace

凱旋門賞(仏GⅠ)・ガネー賞(仏GⅠ)・イスパーン賞(仏GⅠ)・コンセイユドパリ賞(仏GⅡ)・ニエル賞(仏GⅢ)・フォワ賞(仏GⅢ)2回

1980

Saint Cyrien

仏グランクリテリウム(仏GⅠ)・サンロマン賞(仏GⅢ)

1980

Yawa

パリ大賞(仏GⅠ)・ローマ賞(伊GⅠ)

1982

Idealiste

コンデ賞(仏GⅢ)

1982

King Luthier

ケルゴルレイ賞(仏GⅡ)

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