インディアンスキマー

和名:インディアンスキマー

英名:Indian Skimmer

1984年生

芦毛

父:ストームバード

母:ノビリアル

母父:ヴェイグリーノーブル

仏オークスをミエスク相手に圧勝し、牡馬相手に英国と愛国のチャンピオンSも勝利した芦毛の名牝

競走成績:2~5歳時に英仏愛米で走り通算成績16戦10勝2着1回3着3回

誕生からデビュー前まで

米国ケンタッキー州において、ロナルド・J・ワーズウィック氏とアッシュフォードスタッドにより共同生産され、ドバイのシェイク・モハメド殿下の所有馬となり、英国ヘンリー・セシル調教師に預けられた。主戦はスティーブ・コーゼン騎手が務めた。

競走生活(2・3歳時)

2歳10月にニューマーケット競馬場で行われた芝7ハロンの未勝利ステークスでデビューしたが4着に敗れ、2歳時の出走はこれだけだった。3歳時は4月に英国ウォルヴァーハンプトン競馬場で行われたブルーベルS(T9F)から始動し、重馬場の中を2着ジェントルパスエイションに10馬身差をつける快走で勝ち上がった。

次走のリステッド競走プリティポリーS(T10F)も、2着パーシーズラス(後に英ダービー馬サーパーシーの母となる)に4馬身差をつけて快勝。続いてムシドラS(英GⅢ・T10F110Y)に出走すると、後に英オークスと愛オークスでいずれもユナイトの2着に入るブルボンガールを4馬身差の2着に下して勝利した。

次走は英オークスかと思われたが、仏国に移動してサンタラリ賞(仏GⅠ・T2000m)に出走した。重馬場で行われたレースでは2着プリペイドに2馬身半差を、3着となったクリテリウムドメゾンラフィット勝ち馬グレシャンアーンにはさらに2馬身差をつけて快勝した。

続いて仏オークス(仏GⅠ・T2100m)に出走。このレースには、サラマンドル賞・マルセルブサック賞・英1000ギニー・仏1000ギニーなど5連勝中だったマイル女王ミエスクが出走していた。しかしレースでは2番手を進んだ本馬が残り400m地点で先頭に立つとそのまま後続を引き離し、2着ミエスクに4馬身差をつけて完勝した。このレースは重馬場で行われていた。ミエスクも得意とは言えない重馬場を幾度も克服して勝ち星を積み重ねてきていたが、明らかに重巧者だった本馬相手でこの距離では分が悪かったようである。本馬は仏オークスを最後にこの年は休養入りし、3歳時の成績は5戦全勝となった。

競走生活(4歳時)

4歳時は5月のブリガディアジェラードS(英GⅢ・T10F)から始動して、単勝オッズ2.75倍の1番人気に支持された。レースでは3番手を追走したが、直線で前の2頭に追いつけずに、ハイランドチーフテンの1馬身1/4差3着に敗れた。続いてエクリプスS(英GⅠ・T10F)に出走。前年の同競走勝ち馬でプリンスオブウェールズS2回・ブリガディアジェラードSも勝っていたムトト、マルセルブサック賞・愛2000ギニー・英チャンピオンS2回・ガネー賞・コロネーションC2回・英国際S・愛チャンピオンSとGⅠ競走9勝のトリプティクに次ぐ3番人気(単勝オッズ5倍)に推されるも、その2頭とロジャーズ金杯勝ち馬シェイディハイツとの直線の追い比べで屈して、ムトトの3馬身半差4着に終わった。

次走の英国際S(英GⅠ・T10F110Y)では、メッカブックメイカーズクラシックを勝ってきたケファ、セントジェームズパレスS勝ち馬パーシャンハイツ、エクリプスS2着後にダルマイヤー大賞を勝ってきたシェイディハイツ、仏グランクリテリウム・パリ大賞勝ち馬フィジャータンゴなどが対戦相手となった。本馬は単勝オッズ4.5倍の3番人気での出走となった。レースでは4番手の好位を追走し、残り1ハロン地点で仕掛けようとしたが、ここで後方から上がってきたパーシャンハイツが左側によってきて本馬の進路を妨害するアクシデントがあった。仕方なく右側に持ち出して追い出したが、パーシャンハイツとシェイディハイツの2頭に先着される3位入線。レース後にパーシャンハイツが1位から3着に降着になったため、2着に繰り上がりとなった。それから間もなくして、コーゼン騎手がグッドウッド競馬場で行われたレースで落馬して首を負傷したため、本馬の鞍上はしばらくマイケル・ロバーツ騎手が務める事となった。

稍重馬場で行われた愛チャンピオンS(愛GⅠ・T10F)では、パーシャンハイツ、シェイディハイツ、エクリプスSで3着だったトリプティクとの対戦となった。パーシャンハイツが単勝オッズ3倍の1番人気で、本馬が単勝オッズ3.25倍の2番人気となった。レースでは好スタートから3番手を追走。残り2ハロン地点で先頭のシェイディハイツに並びかけると叩き合いを制し、トリプティクの追い込みも完封。2着シェイディハイツに3/4馬身差、3着トリプティクにはさらに1馬身差をつけて勝利した。

次走のサンチャリオットS(英GⅡ・T10F)では、セプテンバーSを勝ってきたパーシーズラス、ゴードンリチャーズS勝ち馬でコロネーションC2着のインファミーとの対戦となった。単勝オッズ1.47倍の圧倒的1番人気に支持された本馬は、好位追走から残り2ハロン地点で先頭に立って押し切る競馬で、2着インファミーに2馬身差をつけて勝利した。

次走は英チャンピオンS(英GⅠ・T10F)となった。対戦相手は4頭だけだったが、愛チャンピオンSで4着だったパーシャンハイツ、シェイディハイツ、前走3着のパーシーズラス、英2000ギニー馬ドユーンと有力馬ばかりだった。しかし本馬が単勝オッズ1.53倍という断然の1番人気に支持された。今回は慎重に後方からレースを進めていたが、残り2ハロン地点で一気に先頭に踊り出ると、そのまま2着パーシャンハイツに4馬身差をつけて圧勝した。英国と愛国のチャンピオンSを両方制覇したのは、前年のトリプティクに次いで史上2頭目であり、その後もピルサドスキーニューアプローチの2頭のみである。

その後は渡米してチャーチルダウンズ競馬場で行われたBCターフ(米GⅠ・T12F)に参戦。マンノウォーS・ターフクラシックS・バドワイザー国際と3連勝中のサンシャインフォーエヴァー、加国際Sを勝ってきたインファミー、ガネー賞勝ち馬セントアンドリュース、これが現役最後のレースとなるトリプティク、サンフアンカピストラーノ招待H勝ち馬グレートコミュニケーターなどが対戦相手となった。本馬が単勝オッズ2.2倍の1番人気に支持され、サンシャインフォーエヴァーが単勝オッズ3.1倍の2番人気、インファミーが単勝オッズ10.7倍の3番人気となった。

レースは好スタートを切った単勝オッズ13.4倍の6番人気馬グレートコミュニケーターが先頭に立ち、本馬は馬群の好位につけた。しかし向こう正面でやや行きたがる素振りを見せたため、ロバーツ騎手が手綱を引っ張って抑える場面があった。その結果、やや後方に下がってしまった。四角で2番手のサンシャインフォーエヴァーと3番手のトリプティクの2頭が先頭のグレートコミュニケーターに並びかけていくと同時に本馬も外側から仕掛けていった。そして内側から順にグレートコミュニケーター、サンシャインフォーエヴァー、トリプティク、本馬の4頭が横一線で直線に入った。直線半ばでトリプティクが失速し、内側の2頭が抜け出した。本馬も必死に追うが、結局前2頭には及ばず、グレートコミュニケーターの1馬身1/4差3着に終わった。道中の折り合いと位置取りで敗れたようなレースだった。4歳時の成績は7戦4勝だった。

競走生活(5歳時)

5歳時も現役を続行し、4月のゴードンリチャーズS(英GⅢ・T10F)から始動した。前走ジョンポーターSで2着してきたパークワド、シェイディハイツ、この年の凱旋門賞馬キャロルハウスなどを抑えて、単勝オッズ1.53倍の1番人気に支持された。鞍上には怪我が癒えたコーゼン騎手が戻ってきていた。本馬の得意な重馬場で行われたレースでは、珍しく馬群の後方2番手を追走した。直線入り口でもまだ後方だったが、徐々に位置取りを押し上げていき、ゴール前の激しい叩き合いを制して、2着パークワドに頭差、3着キャロルハウスにさらに頭差で勝利を収めた。

次走のイスパーン賞(仏GⅠ・T1850m)では、ガネー賞を2連覇してきたセントアンドリュース、エドモンブラン賞勝ち馬フレンチストレス、ロンポワン賞勝ち馬インイクストリーミス、アスタルテ賞・ミュゲ賞勝ち馬ガビナ、ガネー賞3着馬マンソンニエンなどが対戦相手となった。2番手を追走した本馬は、直線に入ると後方のままもがいているセントアンドリュースを尻目に残り200m地点で先頭に立ち、2着ガビナに半馬身差で勝利してGⅠ競走5勝目を挙げた。

続くエクリプスS(英GⅠ・T10F)では、サセックスS・クイーンエリザベスⅡ世S・クイーンアンSの勝ち馬ウォーニングと共に古馬の大将格として、英2000ギニー・英ダービーを連勝してきた3歳馬ナシュワンを迎え撃った。ナシュワンが単勝オッズ1.4倍という断然の1番人気に支持され、ウォーニングが単勝オッズ4.5倍の2番人気、本馬が単勝オッズ6.5倍の3番人気となった。前走とは異なり今回は徹底した最後方待機策を採り、直線の末脚に全てを賭けた。しかしナシュワンに5馬身ちぎられ、同厩の3歳馬オープニングヴァースとの2着争いにも短頭差屈して3着に終わった(4着ウォーニングには15馬身差をつけた)。このレースを最後に5歳時3戦2勝の成績で現役を引退した。

馬名はインドや東南アジアに生息する鳥で、カモメ科の絶滅危惧種シロエリハサミアジサシの西洋名である。

血統

Storm Bird Northern Dancer Nearctic Nearco Pharos
Nogara
Lady Angela Hyperion
Sister Sarah
Natalma Native Dancer Polynesian
Geisha
Almahmoud Mahmoud
Arbitrator
South Ocean New Providence Bull Page Bull Lea
Our Page
Fair Colleen Preciptic
Fairvale
Shining Sun Chop Chop Flares
Sceptical
Solar Display Sun Again
Dark Display
Nobiliare Vaguely Noble ヴィエナ Aureole Hyperion
Angelola
Turkish Blood Turkhan
Rusk
Noble Lassie Nearco Pharos
Nogara
Belle Sauvage Big Game
Tropical Sun
Gray Mirage Bold Bidder Bold Ruler Nasrullah
Miss Disco
High Bid To Market
Stepping Stone
Home by Dark Hill Prince Princequillo
Hildene
Sunday Evening Eight Thirty
Drowsy

ストームバードは当馬の項を参照。

母ノビリアルは不出走馬。本馬の半妹シラブテニ(父ヌレイエフ)の子に、タッチオブザブルース【アットマイル(加GⅠ)・クリテリウムドメゾンラフィット(仏GⅡ)・メイカーズマークマイルS(米GⅡ)】がいる。ノビリアルの全姉マウンテンサンシャインの子にカントリーパイン【ウィザーズS(米GⅡ)・ディスカヴァリーH(米GⅢ)・クイーンズカウンティH(米GⅢ)】が、ノビリアルの半妹ファーストミラージュ(父リヴァリッジ)の子にミッシーズミラージュ【シュヴィーH(米GⅠ)・ヘンプステッドH(米GⅠ)・ファーストフライトH(米GⅡ)・コロンビアS(米GⅢ)】とクラッシーミラージュ【バレリーナH(米GⅠ)・プライオレスS(米GⅡ)・ディスタフH(米GⅡ)・ベッドオローゼズH(米GⅡ)・ジェニュインリスクH(米GⅡ)】の姉妹、孫にダブリン【ホープフルS(米GⅠ)】がいる。ノビリアルの母グレイミラージュは史上初のニューヨーク牝馬三冠馬ダークミラージュ【エイコーンS・マザーグースS・CCAオークス・ケンタッキーオークス・プライオレスS・モンマスオークス・デラウェアオークス・サンタマリアH】の半妹であり、近親には活躍馬が比較的多くいる。→牝系:F9号族③

母父ヴェイグリーノーブルは当馬の項を参照。

競走馬引退後

競走馬を引退した本馬はシェイク・モハメド殿下所有のもと、米国で繁殖入りした。産駒は6頭いるが、18歳時に産んだ最後の子である牡駒ウィッチリー(父グリーンデザート)が59戦6勝の成績を残した程度で、残りの5頭は全て不出走と、繁殖牝馬としては不成功に終わった。なお、没年は不明である。しかしミスタープロスペクターとの間に産まれた初子の牡駒マンシュードは不出走馬ながら血統が買われてアフリカのジンバブエで種牡馬入りし、ドバイデューティーフリーなどを制した名牝イピトンベを輩出している。

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