ジオポンティ

和名:ジオポンティ

英名:Gio Ponti

2005年生

鹿毛

父:テイルオブザキャット

母:チペタスプリングズ

母父:アリダー

世界最高峰の大競走では勝ち運に恵まれなかったが、長きに渡って米国芝路線の頂点に君臨し続けた21世紀初頭を代表する米国芝王者

競走成績:2~6歳時に米首で走り通算成績29戦12勝2着10回

文句無しにチャンピオン級の競走成績を残しながらも、何故か脇役的な印象が拭えない馬は存在する。日本でどの馬がそれに該当するかは明言を避けるが、21世紀米国競馬でそれに該当する馬の筆頭格は本馬であろう。

GⅠ競走で7勝を挙げ、エクリプス賞最優秀古馬牡馬を1回、エクリプス賞最優秀芝牡馬を2回受賞した本馬は間違いなく一流馬であり、「米国競馬においては全時代を通じて最良の芝馬の1頭」とまで評されている。しかしBCクラシックやBCマイルで歴史的名牝2頭の引き立て役になってしまい、日本中の競馬ファンが歓喜したドバイワールドCでもやはり引き立て役となってしまった。

もっとも本馬が一流馬であったからこそ、上記レースの勝ち馬達がより輝きを増した事も確かであり、本馬を語らずして上記レースを正しく語る事は出来ない。

誕生からデビュー前まで

米国ケンタッキー州キャッスルトンライオンズファームの馬産機関であるキルボーイ・エステートにより生産された。キャッスルトンライオンズファームは、かつて19世紀から20世紀初頭にかけての米国競馬をリードした大馬産家ジェームズ・R・キーン氏が所有していたキャッスルトンファームが前身である。キーン氏の死後は息子のフォックスホール・P・キーン氏に受け継がれたが、しばらくして人手に渡り、何人もの間を転々とした後、2001年に愛国の実業家トーマス・アンソニー・“トニー”・ライアン氏に購入されてキャッスルトンライオンズファームと改名されていた。本馬はキングストンドミノベンブラッシュサイソンビーピーターパンコリンマスケットなど数々の名馬が暮らしたキャッスルトンファームから約100年ぶりに登場した大物競走馬なのである。

キャッスルトンライオンズファーム名義で競走馬となった本馬を預かったのはクリストフ・クレメント調教師だった。最初は仏国で調教師をしていた父ミゲル・クレメント氏の調教助手として働いたクレメント師は、後に仏国のアレック・ヘッド調教師、英国のルカ・クマーニ調教師、米国のクロード・マゴーヒーⅢ世調教師といった各国を代表する名伯楽達の元で修行を積んだ後に米国で開業していた。

本馬を含めて彼の管理馬には芝の活躍馬が多く、芝馬を育成する事に長けている様子である(もっとも、2014年にはトゥーナリストでベルモントS・ジョッキークラブ金杯を勝利して、ようやくダートの大物競走馬を送り出した)。本馬も血統構成的にはダート向きなのだが、その走法から芝向きと判断されていた事もあり、現役時代を通じてダート競走を走る事は1度も無かった。

競走生活(2歳時)

2歳9月にベルモントパーク競馬場で行われた芝7ハロンの未勝利戦で、ギャレット・ゴメス騎手を鞍上にデビュー。単勝オッズ4.25倍で9頭立ての2番人気に推された本馬は、道中は馬群の中団後方につけると、直線入り口5番手から大外を豪快に伸び、2着モラルコンパスに2馬身半差をつけて差し切り勝ちを収めた。

次走は1か月後にキーンランド競馬場で行われたバーボンS(T8.5F)となった。ここではウィズアンティシペーションSを快勝してきたナウナウナウが単勝オッズ2.4倍の1番人気で、ラモン・ドミンゲス騎手が騎乗する本馬は単勝オッズ3.6倍の2番人気だった。レースでは馬群の中団を追走し、直線に入ってから馬群を割って抜け出した。そして後方から追いかけてきた2着ナウナウナウに1馬身半差をつけて勝利した。

なお、このバーボンSの4日前にキャッスルトンライオンズファームの所有者ライアン氏が膵臓癌のため71歳で死去していたが、本馬の馬主名義が変更される事は無かった。

前走から19日後にはモンマスパーク競馬場に姿を現し、この年に創設された第1回BCジュヴェナイルターフ(T8F)に参戦した。リッチモンドS勝ち馬でミルリーフS・ミドルパークS2着のストライクザディール、ロイヤルロッジSで2着してきたアクヒルアイランド、ベレスフォードSで2着してきたドメスティックファンドといった欧州馬勢や、サンデーサイレンスSを10馬身3/4差で圧勝してきたチェロキートライアングル、加国のGⅢ競走サマーSを勝ってきたプルシアン、ナウナウナウといった辺りが有力馬だった。ドミンゲス騎手が騎乗する本馬も有力馬の一角には名を連ねていたが、単勝オッズ9.6倍の5番人気だった。レースはプルシアンが先頭を引っ張り、本馬は馬群の中団後方を進んだ。しかし勝負どころで進路が塞がって進出する事が出来ず、そのまま8着でゴールインとなった。本馬から4馬身前方でゴールして第1回の優勝馬となったのは、道中で最後方を追走しながらも直線大外一気の追い込みを決めたナウナウナウ(単勝オッズ13.6倍の8番人気)だった。本馬の2歳戦の成績は3戦2勝となった。

競走生活(3歳時)

3歳前半は、米国三冠競走を目指す馬にとっては一番大切な時期だったが、元々ダート競走に向かう予定が無かった本馬はこの時期を完全に調整期間として充てた。

そして3歳6月にベルモントパーク競馬場で行われたヒルプリンスS(米GⅢ・T8F)で復帰した。ラファイエットSで2着してきたスーパーレイティヴS勝ち馬ハッタフォートと、しばらく主戦を務めるゴメス騎手騎乗の本馬が並んで単勝オッズ3.25倍の1番人気で、BCジュヴェナイルターフで10着に沈んでいたプルシアンが単勝オッズ4.35倍の3番人気となった。レースはプルシアンが逃げて、本馬は7頭立ての最後方を進んだ。そして直線入り口4番手から大外を通って一気に差し切り、2着プルシアンに2馬身差をつけて勝利した。

7月のヴァージニアダービー(米GⅡ・T10F)では、コロニアルターフカップSを勝ってきたセーラーズキャップ、イロコイS・レムセンSの勝ち馬だがケンタッキーダービーで惨敗したため芝路線に転向してきたコートヴィジョン、ブリーダーズフューチュリティ3着馬オールドマンバックが主な対戦相手だった。セーラーズキャップが単勝オッズ2.3倍の1番人気、本馬が単勝オッズ2.6倍の2番人気となった。レースは3~4番手を進んだ本馬とコートヴィジョンの2頭が直線に入って間もなく同時に先頭に立ち、そのまま2頭の叩き合いとなった。そして最後は斤量が2ポンド重かったにも関わらず、本馬が鼻差で競り勝って勝利した。

8月のデルマーダービー(米GⅡ・T9F)には、ラホヤHを勝ってきたスカイケープ、3歳初戦の愛2000ギニーで5着最下位に終わり、前走ラホヤHでもスカイケープの5着に終わっていたナウナウナウなどの姿があったが、本馬が単勝オッズ1.9倍の1番人気に支持された。レースでは4~5番手の好位を進み、直線に入ってから抜け出したが、本馬と一緒に好位を進んでいたマデオにかわされて、半馬身差の2着に敗れた。

次走は10月のジャマイカH(米GⅡ・T9F)となった。このレースだけ騎乗したアラン・ガルシア騎手鞍上の本馬が単勝オッズ1.9倍の1番人気で、ヴァージニアダービー2着後にトラヴァーズSに出て大敗したため完全に芝路線に専念する事になったコートヴィジョンが単勝オッズ3.5倍の2番人気となった。ヴァージニアダービーと同じく斤量は本馬が2ポンド重かった。本馬は例によって3~4番手の好位を追走し、コートヴィジョンは本馬を見るように馬群の中団後方につけた。そして本馬が四角で上がっていくとコートヴィジョンも進出を開始。直線に入って間もなく2頭が並んで叩き合いが開始された。しかし今回はコートヴィジョンが競り勝ち、本馬は3/4馬身差の2着に敗れた。

その後は3週間後にサンタアニタパーク競馬場で行われるブリーダーズカップに向かう予定だったはずだが、除外されたか何かの理由で結局出走せず、ブリーダーズカップから5週間後のハリウッドダービー(米GⅠ・T8F)に向かった。主な対戦相手は、やはりブリーダーズカップに出ずにここに直行してきたコートヴィジョン、ブリーダーズカップ当日のオークツリーダービーで2着してきたマデオ、トロピカルパークダービーなどの勝ち馬でブルーグラスS2着のカウボーイカル、ヴァージニアダービーで3着だったセーラーズキャップ、ノーフォークS勝ち馬ディキシーチャッターなどだった。本馬が単勝オッズ4倍の1番人気、コートヴィジョンが単勝オッズ4.8倍の2番人気、マデオが単勝オッズ5.4倍の3番人気となった。本馬は例によって馬群の好位4~5番手につけたが、直線に入っても全く進路が開かず、馬群の中で立ち往生状態となった。その隙に道中は最後方を走っていたコートヴィジョンが内側を突いて抜け出し、そのまま先頭でゴールイン。本馬はコートヴィジョンから2馬身3/4差の7着に敗れてしまった。

次走は年末のサーボーフォートS(米GⅢ・AW8F)となった。サンラファエルS・ローンスターダービーの勝ち馬エルガトマロ、デルマーダービー7着から直行してきたスカイケープ、フォーティナイナーSを勝ってきたダコタフォンなどが主な対戦相手だったが、本馬が単勝オッズ2.3倍の1番人気に支持された。前走で中途半端に好位を進んで馬群に閉じ込められた反省からか、ゴメス騎手は今回本馬に最後方を進ませた。そして四角で内側を駆け上がり、直線入り口3番手から差し切って、2着メジュールに1馬身半差で勝利した。3歳時は6戦3勝の成績だった。

競走生活(4歳時)

4歳時は2月のストラブS(米GⅡ・AW9F)から始動した。ハリウッドダービー2着後にサンパルカルHを勝ってきたカウボーイカル、前走サンフェルナンドSでBCジュヴェナイルターフ以来の勝利を挙げていたナウナウナウ、ブリーダーズフューチュリティ2着馬スルーズティズナウ、ハリウッドダービーで4着だったディキシーチャッターなどを抑えて、単勝オッズ4.1倍の1番人気に支持された。今回は馬群の中団後方を追走して、四角で外側を通って上がってきた。しかし道中で大外を走らされた影響なのか、直線でやや伸びを欠いてしまい、2番手から抜け出して勝ったカウボーイカルから1馬身半差の5着に敗れた。

その後は1か月後のフランクEキルローマイルH(米GⅠ・T8F)に向かった。BCフィリー&メアスプリント・ジャストアゲームS・サンタモニカH・マディソンSを勝っていたヴェンチュラ、クレメントLハーシュ記念ターフCSS・チャールズウィッティンガム記念H・サンマルコスSを勝ってきたアルティストロワイヤル、亜国から米国に移籍してきて堅実に走っていた後のエディリードH勝ち馬グローバルハンター、前走4着のディキシーチャッターが主な対戦相手だった。ヴェンチュラが単勝オッズ1.9倍の1番人気、ゴメス騎手がヴェンチュラに騎乗したためにドミンゲス騎手に乗り代わった本馬が単勝オッズ6.4倍の2番人気、アルティストロワイヤルが単勝オッズ7.2倍の3番人気となった。

レースはヴェンチュラが馬群の中団、本馬が中団後方、アルティストロワイヤルが最後方を進む展開となった。三角と四角を回ってきても本馬はまだ馬群の中団後方だった。しかし直線に入ると大外一気の追い込みを見せた。直線半ばではヴェンチュラがいったん先頭に立っていたが、それをゴール直前で際どくかわした本馬が鼻差で勝利し、GⅠ競走初勝利を挙げた。

その後は一間隔を空けて、6月にベルモントパーク競馬場で行われたマンハッタンH(米GⅠ・T10F)に向かった。ターフクラシックSで2着してきたカウボーイカル、同3着だったコートヴィジョン、アーリントンH2回などの勝ち馬でシャドウェルターフマイルS2着のコスモノート、欧州でパリ大賞・フォワ賞を勝った後に米国に移籍してきたザンベジサン、米国競馬名誉の殿堂博物館Sなどの勝ち馬ウェスレー、加国際Sの勝ち馬マーシュサイド、2004年のBCターフを筆頭にソードダンサー招待H・ユナイテッドネーションズS・マンノウォーS・マンハッタンHとGⅠ競走5勝を挙げていた10歳馬ベタートークナウなどが出走してきて、かなりレベルが高い1戦となった。その中で前評判が高かったのは本馬、カウボーイカル、コートヴィジョンの3頭で、揃って120ポンドのトップハンデ。カウボーイカルが単勝オッズ4.25倍の1番人気、ゴメス騎手騎乗の本馬が単勝オッズ4.6倍の2番人気、ドミンゲス騎手騎乗のコートヴィジョンが単勝オッズ4.7倍の3番人気となった。

スタートが切られるとコートヴィジョンと同馬主のオプティマーが先頭に立ち、カウボーイカルが2番手、コートヴィジョンが馬群の中団後方で、本馬は12頭立ての最後方を追走した。向こう正面でカウボーイカルが先頭に立ったが、三角に入るとカウボーイカルを目掛けて後続各馬が押し寄せてきた。そして直線に入るとカウボーイカルは失速し、中団から差してきたマーシュサイドがいったんは先頭に立った。しかしここで大外から本馬が豪快に伸びてきて、一気にマーシュサイドをかわすと1馬身半差をつけて勝利した。

次走は翌7月のマンノウォーS(米GⅠ・T11F)となった。今まではゴメス騎手とドミンゲス騎手の2人が主に本馬に騎乗してきたが、このレースからドミンゲス騎手が本馬の主戦として固定されることになった。実は好敵手のコートヴィジョンにもこの2人が主に騎乗してきたのだが、この時期にコートヴィジョンの主戦にはロビー・アルバラード騎手が固定されている。

このマンノウォーSにはマンハッタンHで4着だったコートヴィジョンは出走しておらず、主な対戦相手は、マーシュサイド、前年のハリウッドダービーで人気薄ながら3着に入り、さらにこの年はサンルイレイH・サンフアンカピストラーノ招待H・チャールズウィッティンガム記念Hを3連勝してきたミッドシップス、マンハッタンH・エルクホーンSの勝ち馬ダンシングフォーエヴァー、ソードダンサー招待S2回・ジョーハーシュターフクラシック招待SとGⅠ競走3勝のグランドクチュリエ、欧州から遠征してきたバーデン大賞・ミラノ大賞2回の勝ち馬キジャーノ、後にユナイテッドネーションズH・シンガポール航空国際Cなどに勝利するシャンティ大賞2着馬チンチョンなどだった。本馬が単勝オッズ3.15倍の1番人気、ミッドシップスが単勝オッズ4.7倍の2番人気、ダンシングフォーエヴァーが単勝オッズ4.75倍の3番人気となった。

スタートが切られるとまずはミッドシップスが先頭を伺ったが、シングスピールSを勝ってきた人気薄のムスケティールがかわして先頭に立ち、本馬はダンシングフォーエヴァーと共に馬群の中団につけた。そして三角に差し掛かると外側を駆け上がり、失速するミッドシップスと入れ代わるようにして直線入り口で5番手、直線半ばで2番手まで上がってきた。直線ではムスケティールが予想以上の粘りを見せていたが、本馬が残り半ハロン地点で抜き去り、2着ムスケティールに1馬身3/4差をつけて勝利した。

続いて翌月のアーリントンミリオン(米GⅠ・T10F)に向かった。サンタアニタH・ガルフストリームパークBCターフS2回・ターフクラシックS2回とGⅠ競走で5勝を挙げていたアインシュタイン、ユナイテッドネーションズSを2連覇してきたプレシャスパッション、メイカーズマークマイルS・ファイアークラッカーHを勝ってきたミスターシドニー、伊ダービー・ブリガディアジェラードSの勝ち馬チマデトリオンフ、シンガポール航空国際Cを勝ってきたドバイワールドC2着馬グロリアデカンペオン、アーリントンHを勝ってきたガルフストリームパークターフH2着のジャストアズウェル、セレクトS・ウインターヒルS・ラクープを勝ってきたストッツフォールドの計7頭が対戦相手となった。本馬が単勝オッズ2.5倍の1番人気、アインシュタインが単勝オッズ4倍の2番人気、プレシャスパッションが単勝オッズ5.9倍の3番人気だった。

スタートが切られると2走後のBCターフで大逃げを打ってあわやの2着に粘る事になるプレシャスパッションがここでも大逃げを打ち、後続に最大10馬身もの大差をつけた。プレシャスパッションが飛ばしたために馬群は非常に縦長となったが、その中で本馬はチマデトリオンフと共に5~6番手につけていた。三角手前でプレシャスパッションの脚色が衰え始めると後続馬が一気に迫っていき、本馬も進出を開始した。そして馬群の隙間を突いて伸び、四角では既に先頭に立っていた。直線で追ってきたのは本馬より後方でレースを進めたジャストアズウェルとストッツフォールドの人気薄2頭だけだった。いったんはストッツフォールドに迫られたが、ここから再び伸びて後ろの2頭を引き離し、2着ジャストアズウェルに1馬身1/4差で勝利した。

その後は一間隔を空けて、10月のターフクラシック招待S(米GⅠ・T12F)に向かった。マンノウォーS5着後にボーリンググリーンHを勝っていたグランドクチュリエ、ムスケティール、前走ソードダンサー招待Sでグランドクチュリエやムスケティールを破って勝ってきたテリング、サラナクSを勝ってきたアルカーリなど5頭が対戦相手となり、本馬が単勝オッズ1.85倍の1番人気に支持された。スタートが切られると単勝オッズ44.75倍の最低人気馬インターパティションが先頭に立ち、本馬は馬群のちょうど中間につけた。そして徐々に前との差を詰め、直線入り口で先頭のインターパティションに並びかけた。ここまでは予想どおりの展開だったが、ここから意外な事が起きた。最低人気馬インターパティションが並びかけてきた本馬に対して激しく抵抗し、本馬はなかなか前に出る事が出来なかった。そしてゴール前で本馬が先に根を上げてしまい、勝ったインターパティションから1馬身3/4差をつけられて2着に敗れてしまった。

その後はサンタアニタパーク競馬場に向かい、前年は不参加だったブリーダーズカップに2年ぶりに参戦した。BCターフやBCマイルという選択肢もあったはずだが、陣営が選んだのはBCクラシック(米GⅠ・AW10F)だった。BCクラシックは前年に引き続きダートではなくオールウェザーで実施されており、本馬はサーボーフォートSでオールウェザー競走を勝っていた実績があった事からの参戦だった。

対戦相手は、BCレディーズクラシック・アップルブロッサムH・ヴァニティH2回・レディーズシークレットS2回・クレメントLハーシュSなどデビュー13連勝中の牝馬ゼニヤッタ、この年にベルモントS・トラヴァーズS・ジョッキークラブ金杯とGⅠ競走3勝を挙げていたサマーバード、この年のケンタッキーダービー馬でプリークネスS2着のマインザットバード、アーリントンミリオン5着後のパシフィッククラシックSで2着してきたアインシュタイン、そのパシフィッククラシックSを勝ってきたリチャーズキッド、前年のサンタアニタダービー・トラヴァーズS勝ち馬で前走グッドウッドS2着のカーネルジョン、ジェロームHなど3連勝中のジローラモ、UAEダービー・スーパーダービーを勝ってきたリーガルランサム、サンフェルナンドS・ホーソーン金杯Hを勝ってきたオーサムジェム、それにサセックスS・クイーンエリザベスⅡ世Sを連勝してきた愛国調教馬リップヴァンウィンクル、英チャンピオンSを勝ってきた英国調教馬トゥワイスオーヴァーの11頭だった。

牡馬相手の競走は初となるゼニヤッタが単勝オッズ3.8倍の1番人気で、リップヴァンウィンクルが単勝オッズ4.4倍の2番人気、サマーバードが単勝オッズ7.8倍の3番人気と続く一方で、米国芝路線では頂点に立っていた本馬もオールウェザーにおける実績が乏しかった上に前走で最低人気馬に競り負けた印象が悪く、単勝オッズ13倍の8番人気まで評価を下げていた。

スタートが切られるとリーガルランサムが先頭に立ち、リップヴァンウィンクルなども先行。本馬は馬群の中団後方につけ、スタートで必ず出遅れるゼニヤッタはやはり最後方からの競馬となっていた。そのままの体勢で三角に差し掛かると、リップヴァンウィンクルは後退していき、カーネルジョン、サマーバード、トゥワイスオーヴァーなどが先頭のリーガルランサムに迫っていった。本馬も馬群の間を縫うようにして進出し、後方ではゼニヤッタもスパートを開始していた。そして直線に入ると残り1ハロン地点で馬群の中から本馬が抜け出してゴールを目指した。しかしここで大外から猛然と追い込んできたゼニヤッタに残り50ヤード地点でかわされてしまい、1馬身差の2着に敗退した。しかし本馬も3着トゥワイスオーヴァーには1馬身1/4差をつけており、ゼニヤッタという規格外の怪物を別にすれば本馬はオールウェザーでもトップクラスである事を証明する事は出来た。

4歳時の成績は7戦4勝で、この年のエクリプス賞最優秀芝牡馬は勿論、エクリプス賞最優秀古馬牡馬も受賞した。

競走生活(5歳時)

5歳時は2月にフロリダ州タンパベイダウンズ競馬場で行われるタンパベイS(T8.5F)から始動した。本馬が単勝オッズ1.2倍の1番人気で、リヴァーシティH勝ち馬でシャドウェルターフマイルS2着のカレリアンが単勝オッズ6.4倍の2番人気となった。スタートが切られるとカレリアンが即座に先頭に立って後続を引き離し、本馬は珍しく3番手の好位につけた。そして向こう正面で2番手に上がると、逃げるカレリアンを追撃。しかしカレリアンも負けずに加速したために2頭の差はなかなか縮まらなかった。そのまま直線に入るとようやく2頭の差が徐々に縮まってきたが、カレリアンが一瞬早くゴールラインを通過し、本馬は鼻差2着に敗れた。

勝ったカレリアンは次走のメイカーズマークマイルSでコートヴィジョン(その時点ではシャドウェルターフマイルS・ガルフストリームパークターフHとGⅠ競走2勝を上乗せしていた)を2着に破ってGⅠ競走勝ち馬となっており、結果的に恥ずかしい相手に負けたわけではなかったし、そもそもこのレースは次走に予定されていた大競走の前哨戦に過ぎなかった。

その大競走とはドバイワールドC(首GⅠ・AW2000m)だった。前年まではダート競走だったドバイワールドCも、開催場所がナドアルシバ競馬場からメイダン競馬場に移ったこの年からオールウェザー競走になっており、オールウェザーでも強い事を証明した本馬としては当然目標とするべきレースとなっていたのである。主な対戦相手は、英国リングフィールド競馬場のオールウェザー競走ウインターダービートライアルSを圧勝してきたグッドウッドS勝ち馬ジターノエルナンド、前年のBCクラシック3着から直行してきたトゥワイスオーヴァー、前哨戦のマクトゥームチャレンジR3を勝ってきた前年の秋華賞馬レッドディザイア、仏ダービー・ガネー賞・プリンスオブウェールズS・香港CとGⅠ競走4勝のヴィジョンデタ、レーシングポストトロフィーの勝ち馬クラウデッドハウス、前年のアーリントンミリオンでは7着だったが、マクトゥームチャレンジR1で1着・マクトゥームチャレンジR3で2着と調子を上げてきていたグロリアデカンペオン、マクトゥームチャレンジR2を勝ってきたアリバー、英セントレジャー・伊ダービー勝ち馬マスタリー、前年のBCクラシックでは6着だったが前走サンアントニオHを勝ってきたリチャーズキッド、南アフリカから参戦したイーストケープダービー勝ち馬リザーズディザイア、前年のBCダートマイル・ケンタッキーCクラシックSの勝ち馬ファーゼストランドなどだった。

英国ブックメーカーのオッズでは、ジターノエルナンドが単勝オッズ4.33倍の1番人気、本馬が単勝オッズ6倍の2番人気、トゥワイスオーヴァーが単勝オッズ6.5倍の3番人気、レッドディザイアが単勝オッズ7倍の4番人気、ヴィジョンデタが単勝オッズ7.5倍の5番人気となった。

スタートが切られるとすぐにグロリアデカンペオンが先頭に立ち、ジターノエルナンド、トゥワイスオーヴァー、レッドディザイアは中団、本馬は馬群の中団後方につけた。そのままの体勢で直線に入ると、グロリアデカンペオンが二の脚を使って伸び、先行したアリバーがそれを追撃。後方の有力馬勢はあまり伸びてこず、本馬の伸びも今ひとつだった。本馬と同位置から追い始めたリザーズディザイアの脚色だけは良く、ゴール直前ではグロリアデカンペオン、アリバー、リザーズディザイアの3頭の勝負となり、グロリアデカンペオンが2着リザーズディザイアに鼻差で優勝。さらに短頭差の3着にアリバーが入り、外側に持ち出してゴール前でようやく伸びてきた本馬はさらに1馬身1/4差の4着に敗れた。

帰国後は短い休養を経て、前年に勝利したマンハッタンH(米GⅠ・T10F)に向かった。対戦相手は、本馬とは前年の同競走以来の対戦となるコートヴィジョン、前年のアーリントンミリオン2着以降は勝ち星が無かったジャストアズウェル、セクレタリアトS・ジャマイカHの勝ち馬テイクザポインツ、レッドスミスH・ディキシーSの勝ち馬ストライクアディール、レッドスミスHの勝ち馬エクスパンション、前年のターフクラシック招待Sで本馬を破ったインターパティション、セクレタリアトS勝ち馬ウィンチェスターなどだった。本馬が122ポンドのトップハンデでも単勝オッズ2.05倍の1番人気に支持され、121ポンドのジャストアズウェルが単勝オッズ6.6倍の2番人気、120ポンドのコートヴィジョンが単勝オッズ6.9倍の3番人気となった。レースで本馬はやはり馬群の中団後方に待機し、三角に入ってから仕掛けて6番手で直線に入ってきた。そして前にいた馬達を次々に抜き去ったが、ゴール前で後方から来た単勝オッズ22.4倍の7番人気馬ウィンチェスターに差されて、半馬身差の2着に敗れた。

次走のマンノウォーS(米GⅠ・T11F)では、前走3着のエクスパンション、同5着のストライクアディール、同9着のインターパティション、前年のターフクラシック招待Sで3着だったグランドクチュリエといった辺りが主な対戦相手であり、マンハッタンHよりレベル的には下だった。そこで本馬が単勝オッズ1.4倍の圧倒的1番人気に支持され、エクスパンションが単勝オッズ7倍の2番人気、グランドクチュリエが単勝オッズ9.8倍の3番人気となった。

スタートが切られると単勝オッズ54.5倍の最低人気馬ミッションアプルーヴドが単騎逃げを打ち、本馬は単騎で最後方を進んだ。三角でもまだ最後方のままだったが、ここから馬群の間を突いて一気に上がってきた。直線入り口で一瞬だけ進路が塞がる場面もあったが、すぐに外側に持ち出して逃げ粘るミッションアプルーヴドを追撃。ゴール直前で首差かわして、2002年のウィズアンティシペーション以来8年ぶり史上4頭目の同競走2連覇を達成した。

次走も前年に勝利したアーリントンミリオン(米GⅠ・T10F)となった。前年に比べると対戦相手のレベルは大幅に落ちており、本馬が単勝オッズ1.9倍の1番人気、マンハッタンH5着後にアーリントンHで2着してきたジャストアズウェルが単勝オッズ7.3倍の2番人気、アールオブセフトンS勝ち馬でプリンスオブウェールズS3着のタジーズが単勝オッズ7.4倍の3番人気、アーリントンHを勝ってきたラーイストラダが単勝オッズ10.2倍の4番人気、ブルーグラスS・ターフクラシックSの勝ち馬ジェネラルクウォーターズが単勝オッズ11.4倍の5番人気だった。

スタートが切られると単勝オッズ46.2倍の最低人気馬クワイトアハンドフルが先頭に立ち、本馬は前走と同じく単独で最後方に陣取った。そして三角に入ってから仕掛けて大外を凄い勢いで駆け上がり、2番手で直線に入ってきた。そして残り半ハロン地点でいったんは完全に先頭に立ったのだが、道中は好位につけていた単勝オッズ12倍の6番人気馬ドビュッシー(ユジェーヌアダム賞などの勝ち馬)が内側を強襲してきて、ゴール直前で差された本馬は半馬身差の2着に敗れた。

その後は前年に負けたターフクラシック招待Sではなく、シャドウェルターフマイルS(米GⅠ・T8F)に向かった。フォースターデイヴH・バーナードバルークHなどを勝ってきたゲットストーミー、米国競馬名誉の殿堂博物館Sなどの勝ち馬で前年のBCマイル2着馬カレイジャスキャット、デルマーマイルHを勝ってきたエンリッチドなどが対戦相手となった。本馬が単勝オッズ1.8倍の1番人気、ゲットストーミーが単勝オッズ3.9倍の2番人気、カレイジャスキャットが単勝オッズ4.3倍の3番人気となった。

スタートが切られると単勝オッズ61.4倍の最低人気馬アクティングジッピーが先頭に立ち、本馬は6頭立ての5番手につけた。そして三角で仕掛けて前との差を詰めてから直線に突入。一瞬だけ進路が塞がる場面があったが、すぐに外側に進路変更して突き抜け、2着に追い込んできたソサイエティーズチェアマンに1馬身差をつけて勝利した。

その後はチャーチルダウンズ競馬場で行われるブリーダーズカップに向かった。前年と異なりこの年のBCクラシックはダート競走だったため本馬は出走せず、BCマイル(米GⅠ・T8F)に参戦した。対戦相手の筆頭格は、BCマイル2回・ロートシルト賞3回・ムーランドロンシャン賞・ファルマスS・ジャックルマロワ賞・イスパーン賞・クイーンアンS・フォレ賞とGⅠ競走11勝の牝馬ゴルディコヴァだった。他の主な出走馬は、サンタアニタダービー・サンヴィンセントS・サンフェリペS・ラホヤHの勝ち馬シドニーズキャンディ、フォレ賞・クイーンアンS・ロッキンジSと欧州GⅠ競走3勝のパコボーイ、フランクEキルローマイルH・ジャストアゲームS・ダイアナS・ファーストレディSとGⅠ競走4連勝中の牝馬プロヴァイゾ、マンハッタンH6着後に出走した前走ウッドバインマイルSでGⅠ競走4勝目を挙げていたコートヴィジョンなどだった。

史上初のBCマイル3連覇を目指すゴルディコヴァが単勝オッズ2.3倍の1番人気、本馬が単勝オッズ5倍の2番人気、シドニーズキャンディが単勝オッズ6.5倍の3番人気となった。

スタートが切られるとシドニーズキャンディが先頭に立ち、ゲットストーミーなどがそれを追って先行。ゴルディコヴァは馬群の中団後方につけ、本馬は11頭立ての10番手を追走した。そしてゴルディコヴァが上がっていくと本馬もそれを追って加速。9番手で直線に入ると、大外から他馬を抜き去っていくゴルディコヴァを必死に追いかけた。しかしゴール直前で伏兵ザユージャルキューティーを首差かわして2着に上がるのが精一杯で、3連覇を果たしたゴルディコヴァから1馬身3/4差をつけられて敗れた。前年のBCクラシックと同じく規格外の名牝によってブリーダーズカップ制覇を阻止される形となった。

5歳時の成績は7戦2勝だったが、それでも2年連続のエクリプス賞最優秀芝牡馬に選出された。

競走生活(6歳時)

6歳時も現役を続行。目標はやはりドバイワールドCとブリーダーズカップ制覇の2つだった。前年は1戦してからドバイに渡ったが、この年は前哨戦を使わずにいきなり初戦をドバイワールドC(首GⅠ・AW2000m)で迎えた。対戦相手は、前年のドバイワールドC10着後にエクリプスS・英チャンピオンS・マクトゥームチャレンジR3を勝っていたトゥワイスオーヴァー、愛ダービー・愛チャンピオンS・愛フューチュリティS・ダンテSの勝ち馬でキングジョージⅥ世&クイーンエリザベスS2着のケープブランコ、クイーンエリザベスⅡ世S・英シャンペンS・セレブレーションマイルの勝ち馬ポエッツヴォイス、南アフリカのGⅠ競走ゴールデンホースシューやUAE2000ギニー・UAEダービーの勝ち馬ムジール、チェスターヴァーズ勝ち馬で愛ダービー2着のゴールデンソード、前年のドバイワールドCで1番人気に応えられず6着に終わっていたジターノエルナンド、コンセイユドパリ賞・プランスドランジュ賞の勝ち馬プリンスビショップ、ドワイヤーS勝ち馬でベルモントS・トラヴァーズS2着のフライダウン、キングエドワードⅦ世S・ドバイシティオブゴールドの勝ち馬モンテロッソ、前年のドバイワールドC7着後にパシフィッククラシックS・グッドウッドSを勝っていたリチャーズキッド、そして、天皇賞秋を筆頭に阪神ジュベナイルフィリーズ・桜花賞・優駿牝馬・ヴィクトリアマイル・京都記念を勝っていたブエナビスタ、前年の皐月賞と有馬記念を勝ち、前哨戦の中山記念も勝ってきたヴィクトワールピサ、ジャパンCダート・フェブラリーSを連勝してきたトランセンドの日本調教馬3頭の合計13頭だった。

トゥワイスオーヴァーが単勝オッズ3倍の1番人気、ケープブランコが単勝オッズ5倍の2番人気、ブエナビスタが単勝オッズ8倍の3番人気、ポエッツヴォイスが単勝オッズ12倍の4番人気、本馬、ヴィクトワールピサ、ムジール、ゴールデンソードの4頭が単勝オッズ13倍の5番人気となった。

スタートが切られると単勝オッズ41倍の12番人気だったトランセンドが先頭に立ち、ケープブランコが先行、トゥワイスオーヴァーは馬群の中団、ブエナビスタが後方2番手、ヴィクトワールピサが最後方を進んだ。本馬は久々が影響したのか行きたがってしまい、ドミンゲス騎手が必死で宥めて何とか5番手の好位を進んでいた。向こう正面に差し掛かったところで最後方にいたヴィクトワールピサが大外をするすると上がり、先頭のトランセンドに並びかけていった。そして日本調教馬2頭が先頭に立った状態で直線へと突入。馬群の中団以降にいた馬は殆ど伸びてこず、レースは逃げ粘るヴィクトワールピサと、それを追うトランセンド、ケープブランコ、モンテロッソ、そして大外に持ち出した本馬といった先行馬勢の勝負に絞られた。しかし折り合いを欠いて先行した本馬は失速こそしなかったが前を差すほどの勢いも出せなかった。最後はヴィクトワールピサが日本調教馬として史上初のドバイワールドC制覇を果たし、半馬身差の2着に粘ったトランセンドとともに日本馬のワンツーフィニッシュを演出。本馬はヴィクトワールピサから1馬身3/4差の5着に敗れた。

帰国した本馬は前年と全く同じ日程でレースに出る事になった。まずはマンハッタンH(米GⅠ・T10F)に出走。愛2000ギニーとエクリプスSで3着のヴィスカウントネルソン、ジャマイカH・WLマックナイトH・マックディアーミダSの勝ち馬プリンスウィルアイアム、フォートマーシーSを勝ってきたジャマイカH2着馬ストレイトストーリー、ニジンスキーSの勝ち馬ウィンドワードアイランズ、本馬とは一昨年のターフクラシック招待S以来の対戦となるアルカーリ、前年のマンノウォーSで最低人気ながら本馬の2着に粘ったミッションアプルーヴドなどを抑えて、単勝オッズ2.4倍の1番人気に支持された。

スタートが切られるとミッションアプルーヴドが逃げを打ち、本馬は最後方を追走した。そして四角で順位を上げて4番手で直線に入ってきたのだが、ここからいつもの豪脚を繰り出すことが出来ずに、逃げたミッションアプルーヴドだけでなく最低人気馬ビムバムを捕まえる事にも失敗して、勝ったミッションアプルーヴドから1馬身1/4差の3着に敗れた。

次走は史上初の3連覇がかかるマンノウォーS(米GⅠ・T11F)となった。ミッションアプルーヴド、前走4着のアルカーリに加えて、ドバイワールドC4着後に欧州で2連敗したため米国芝路線で活路を見出そうとしていたケープブランコ、2年後のマンノウォーSを勝利するボイステロスなどが参戦してきた。本馬が単勝オッズ2.1倍の1番人気、ケープブランコが単勝オッズ4.05倍の2番人気、ミッションアプルーヴドが単勝オッズ5.7倍の3番人気となった。

スタートが切られるとやはりミッションアプルーヴドが先頭に立ち、ケープブランコが2番手、本馬は最後方につけた。本馬は直線入り口で4番手まで位置取りを上げると、失速するミッションアプルーヴドをかわして2番手に上がったが、前を行くケープブランコには届かずに2馬身1/4差の2着に敗れた。

次走のアーリントンミリオン(米GⅠ・T10F)では、ケープブランコ、前走4着のミッションアプルーヴド、エドヴィル賞2着馬ザックホール、前年の同競走4着馬ラーイストラダ、ジェベルハッタの勝ち馬ウィグモアホール、アーリントンHを勝ってきた前年の同競走6着馬タジャーウィードなどが対戦相手となった。ケープブランコが単勝オッズ3.1倍の1番人気、本馬が単勝オッズ3.3倍の2番人気、ミッションアプルーヴドが単勝オッズ8.4倍の3番人気であり、本馬とケープブランコの一騎打ちムードだった。

スタートが切られるとやはりミッションアプルーヴドが先頭に立ち、ケープブランコは慎重に4番手の好位、本馬は後方2番手からレースを進めた。四角でケープブランコが仕掛けて直線入り口で先頭に立ち、それを直線入り口で4番手まで押し上げていた本馬が追いかける展開となった。しかし本馬はゴール直前で何とか2番手に上がったが、ケープブランコには全く届かずに2馬身半差の2着に敗れた。

次走のシャドウェルターフマイルS(米GⅠ・T8F)では、3走前のセントジェームズパレスSでフランケルを3/4馬身差まで追い詰めた愛フェニックスS勝ち馬ゾファニー、ファイアークラッカーHの勝ち馬ワイズダン、前年のBCマイル6着後にサーボーフォートS・フォースターデイヴHを勝っていたシドニーズキャンディ、前年のBCマイルでは11着に終わっていたが、この年はメイカーズマークマイルS・ターフクラシックSとGⅠ競走2勝を挙げていたゲットストーミー、前年のBCマイルで9着だったソサイエティーズチェアマンなどが対戦相手となった。本馬が単勝オッズ2.9倍の1番人気で、ゾファニーが単勝オッズ3.6倍の2番人気、ワイズダンが単勝オッズ6.5倍の3番人気となった。

スタートが切られるとシドニーズキャンディが先頭に立ち、ゲットストーミー、ワイズダンと続いたが、その次の4番手にいたのは本馬だった。最近は後方一気の末脚が不発に終わることが多かったため、ここで作戦を変更したのである。そしてこの作戦変更は吉と出た。そのままの位置取りで直線に入った本馬は、後方待機策のときに引けを取らない末脚を披露して一気に前3頭を抜き去り、2着ゲットストーミーに半馬身差で勝利を収め、同競走2連覇を達成した(1995・96年に2連覇したドゥマーニに次いで史上2頭目だが、ドゥマーニのときは2度ともGⅢ競走だった)。

ここで本馬から1馬身半差の4着に敗れたワイズダンは、この年の暮れから本格化して押しも押されもしない米国最強芝馬として君臨する事になるのだが、それは本馬が競馬場を去った後の話である。

一方の本馬は、過去2年連続2着だったブリーダーズカップ制覇を目指してチャーチルダウンズ競馬場でBCマイル(米GⅠ・T8F)に参戦。対戦相手は、BCマイル4連覇を目指して現役を続行し、この年にイスパーン賞・ロートシルト賞とGⅠ競走2勝を上乗せしていたゴルディコヴァ、コヴェントリーS・ジャージーS・レノックスS・チャレンジSの勝ち馬ストロングスート、前年のシャドウェルターフマイルSで本馬の3着した後にシューメーカーマイルSを勝ちウッドバインマイルSで2着してきたカレイジャスキャット、プリンスオブウェールズS・ミュゲ賞・ドラール賞の勝ち馬でイスパーン賞2着のバイワード、ウッドバインマイル・バーナードバルークHを連勝してきたトゥラルア、ストラブS・サンガブリエルS・オークツリーマイルSの勝ち馬ジェラニモ、ゲットストーミー、前走3着のシドニーズキャンディ、同8着最下位のゾファニー、前年のBCマイル5着後は5戦連続着外と振るわなかったコートヴィジョンなど12頭だった。ゴルディコヴァが単勝オッズ2.3倍の1番人気、本馬が単勝オッズ6.6倍の2番人気、ストロングスートが単勝オッズ8.9倍の3番人気となった。

スタートが切られるとゲットストーミーが先頭に立ち、ゴルディコヴァが好位、本馬は中団後方につけた。ゴルディコヴァは直線入り口で他馬を跳ね飛ばして先頭に立ち、そのまま押し切りを図った。そして直線入り口ではゴルディコヴァの直後まで来ていた本馬も伸びてきた。しかし本馬を上回る勢いでゴルディコヴァに迫っていった馬が2頭いた。1頭は道中最後方で脚を溜めていた単勝オッズ12倍の6番人気馬トゥラルア。そしてもう1頭は道中で後方2番手だった単勝オッズ65.8倍の最低人気馬。その名前は本馬にとって最も古き好敵手コートヴィジョンだった。まずはコートヴィジョンが、続いてトゥラルアが瞬く間にゴルディコヴァをかわし、そしてコートヴィジョンが一瞬早くゴールに突き刺さった。鼻差の2着がトゥラルア、さらに1馬身差の3着がゴルディコヴァ、さらに1馬身半差の4着が本馬だった。

ブリーダーズカップ4度目の挑戦でも勝てなかった本馬だが、さすがにもうこれ以上の現役続行は無く、6歳時6戦1勝の成績で引退となった。ゴルディコヴァやコートヴィジョンも同時に引退となり(本馬とコートヴィジョンの最終的な対戦成績は本馬の4勝3敗となった)、米国の芝マイル路線はこの3週間後のクラークHでGⅠ競走初勝利を挙げたワイズダンの天下へと移っていくことになった。

馬名は伊国ミラノを拠点に、建築・デザイン・絵画・編集者など幅広い分野で活躍してイタリア近代デザインの父と呼ばれた20世紀の芸術家ジオ・ポンティ氏に由来する。

血統

Tale of the Cat Storm Cat Storm Bird Northern Dancer Nearctic
Natalma
South Ocean New Providence
Shining Sun
Terlingua Secretariat Bold Ruler
Somethingroyal
Crimson Saint Crimson Satan
Bolero Rose
Yarn Mr. Prospector Raise a Native Native Dancer
Raise You
Gold Digger Nashua
Sequence
Narrate Honest Pleasure What a Pleasure
Tularia
State Nijinsky
Monarchy
Chipeta Springs Alydar Raise a Native Native Dancer Polynesian
Geisha
Raise You Case Ace
Lady Glory
Sweet Tooth On-and-On Nasrullah
Two Lea
Plum Cake Ponder
Real Delight
Salt Spring Salt Marsh Tom Rolfe Ribot
Pocahontas
Saline Sailor
Queen Caroline
Jungle Mythologic Mount Athos Sunny Way
Rosie Wings
Jungle Queen Claro
Agrippine

父テイルオブザキャットはストームキャット直子で、現役成績は9戦5勝。キングズビショップS(米GⅡ)を勝ち、ホイットニーH(米GⅠ)で2着、ヴォスバーグS(米GⅠ)で2年連続3着した一流半の短距離馬だった。種牡馬としては2003年の北米2歳首位種牡馬に輝くなど競走馬時代以上の成功を収めており、ストームキャットの後継種牡馬の1頭として頑張っている。クールモア所有の種牡馬であり、南半球にもシャトルされている。

母チペタスプリングズも本馬と同じくキャッスルトンライオンズファームの所有馬として米国で走ったが21戦2勝に終わった。母としては本馬の半兄フィッシャーポンド(父エーピーインディ)【ローレンスリアライゼイションH(米GⅢ)】も産んでいる。チペタスプリングズの半妹ソルティギャル(父コックスリッジ)の子にはマングース【ドンH(米GⅠ)】とヒーズアンオールドソルト【フレッドWフーパーH(米GⅢ)】、半妹ソルティサル(父コックスリッジ)の子にはプーシャサコ【デザートストーマーH(米GⅢ)】がいる。チペタスプリングズの母ソルトスプリングは亜国産馬で、コパデプラタ大賞(亜GⅠ)を勝った後に米国に移籍してイエルバブエナH(米GⅢ)を勝っている。

牝系は亜国の名門で数々の南米の活躍馬が出ているが、この牝系の出身馬には米国で活躍した馬もおり、その筆頭格が本馬と、ソルトスプリングの従姉妹ソーラースルーの子であるシガー【BCクラシック(米GⅠ)・ドバイワールドC・NYRAマイルH(米GⅠ)・ドンH(米GⅠ)2回・ガルフストリームパークH(米GⅠ)・オークローンH(米GⅠ)・ピムリコスペシャルH(米GⅠ)・ハリウッド金杯(米GⅠ)・ウッドワードS(米GⅠ)2回・ジョッキークラブ金杯(米GⅠ)】の2頭である。芝では芽が出ずダート競走で開花したシガーと、芝とオールウェザーでしか走らなかった本馬が近親というのは意外と言えば意外である。→牝系:F2号族②

母父アリダーは当馬の項を参照。

競走馬引退後

競走馬を引退した本馬はキャッスルトンライオンズファームで種牡馬入りした。種牡馬人気は高く、初年度は148頭の繁殖牝馬を集めた。さらに初年度から豪州にもシャトルされている。

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