ブラックタイアフェアー

和名:ブラックタイアフェアー

英名:Black Tie Affair

1986年生

芦毛

父:ミスワキ

母:ハットタブガール

母父:アルハタブ

4歳時までは短距離戦を中心に地道に走り続けていたが、5歳時に目覚めて距離を伸ばして活躍し最後はBCクラシックを逃げ切って米国競馬の頂点に立つ

競走成績:2~5歳時に米で走り通算成績45戦18勝2着9回3着5回

本馬は、筆者が海外の競馬に興味を抱き始めた初期段階から知っていた馬である。何故かというと、その特徴的な毛色が印象に残ったからである。黒っぽい灰色の馬体のあちこちに白斑があるという、かなり独特な芦毛馬だった。オグリキャップやメジロマックイーンも灰色の馬体に斑点を有する馬であったが、本馬ほど顕著な斑点模様では無かったように記憶している。この斑点模様は本馬の母父アルハタブから受け継いだもので、アルハタブは芦毛の快速牝馬ムムタズマハルの4×4のインブリードを持っており、ムムタズマハルの父である“The Spotted Wonder”ことザテトラークの毛色が強く現出したものである事は、後になって知ったことであり、当時はザテトラークの名前すらも知らなかった筆者は、おそらくザテトラークの現役当時を見た人が抱いたのと同じ「ちょっと不気味かも・・・」という印象を持ったものだった。だから晩年の本馬が真っ白な美しい馬になっているのを写真で見て、芦毛馬って不思議だわという感想を改めて抱いたものだった。

一瞬でも不気味だと思ってしまった贖罪ではないが、本馬の競走成績についてはなるべく詳述してみたいと思う。それは、本馬がミスタープロスペクターの直系の孫とは思えないほどに晩成(本馬よりも父ミスワキが晩成型種牡馬だった面が強いのだが)だったためであり、血統の摩訶不思議さをも体現している馬だからである。しかし4歳時までの本馬は目立つ競走成績を残しておらず、参考資料も不足しているため、あまり詳しく記述できない。全盛期である5歳時に関して詳しく紹介する事とし、4歳時まではある程度流すことにする。

誕生からデビュー前まで

米国人実業家のステファン・D・ペスコフ氏により生産された馬であるが、生国は米国ではなく愛国である。1歳時のセリにおいてティンバークリークファームのウォルター・リース氏により購入されて米国に移動した。その後にハドソンリバーファームのエドワード・P・スワイヤー氏の所有馬となり、アーニー・T・プーロス調教師に預けられた。シカゴ出身のプーロス師は、主に米国のマイナー競馬場で30数年間に渡り地道に活動していた無名の調教師だった。

競走生活(2歳時)

2歳9月にペンシルヴァニア州フィラデルフィアパーク競馬場で行われたダート6ハロンの未勝利戦でデビューし、2着サンダーゴッドに1馬身差で勝ち上がった。1週間後に出走した同コースの一般競走では、2着エルトンズアピールに7馬身差で圧勝。しかし距離を伸ばして出走したヘリテージS(D8.5F)では、勝ったドックスリーダー(後にナシュアSやボルチモアバドワイザーBCHで2着している)から7馬身1/4差も離された4着に完敗。翌週には距離を縮めてマルスS(D6F)に出走。このレースを2着サンダーゴッドに1馬身差で勝利したため、しばらくは短距離路線を進むことになる。

次走はニュージャージー州メドウランズ競馬場で行われたダート6ハロンの一般競走となったが、勝ったチアフィから9馬身差の3着と完敗。距離を延ばして出走したスルーピーS(D8F)では、またもドックスリーダーにちぎられて、9馬身半差の6着に敗れた。フィラデルフィアパーク競馬場に戻って出走したアレギニーS(D6.5F)では、ディキシーランドブラスの頭差2着。ディキシーランドブラスはこの後にハッチソンS・ファウンテンオブユースSを連勝して将来を期待されたが、フロリダダービーで競走中止となって引退(生命は助かり種牡馬入りしている)となってしまった。大晦日の前日にメドウランズ競馬場で出走したデピュティミニスターS(D6F)は、オイディプスアピールの首差2着だった。2歳時は3か月間で8戦を消化して3勝を挙げた。

競走生活(3歳時)

3歳時は1月から休み無く走る。まずフィラデルフィアパーク競馬場でフィルモントS(D6F)に出走したが、勝った後のガーデンステートS3着馬エーエムスウィンガーから9馬身1/4差も離された4着。ニュージャージー州ガーデンステート競馬場で出走したデラウェアヴァレーS(D6F)でも、勝ったチアフィから6馬身半差の4着と振るわなかった。

本馬はこの後、マイル戦と短距離戦を交互に走る。フィラデルフィアパーク競馬場で出走したキューピッドS(D8F)では、キーワチンの頭差2着。ガーデンステート競馬場で出走したボールドリーズニングS(D6F)では、ディムライツの4馬身差4着。その後はイリノイ州スポーツマンズパーク競馬場に移動して、まずはボールドフェイヴァリットS(D8F)に出走。ここでは、2着ヌーオプロブレマに鼻差ながら勝利して初めてマイル戦で勝ち星を挙げた。しかし次走のスポーツマンズパークバドワイザーBCH(D6F)では、ダディレックスの1馬身3/4差4着。トーマスDナッシュ記念H(D8F)では、カリフォルニアダービーを勝ってきたエンドウ、レキシントンSを勝ってきたノテーションという2頭の前走グレード競走勝ち馬に敗れて、勝ったエンドウから5馬身半差の3着だった。

自身グレード競走初出走となったイリノイダービー(GⅡ・D9F)では、エンドウ、ノテーションに加えて、デルマーフューチュリティ・ホイストザフラッグS・サンラファエルSの勝ち馬でハリウッドフューチュリティ2着・サンタアニタダービー・サンフェリペH3着のミュージックメルシーという強敵が参戦してきた。レースはノテーションがミュージックメルシーを頭差抑えてトップゴールしたが進路妨害で2着に降着となり、ミュージックメルシーが繰り上がって勝ち馬となったが、本馬はそれらの上位争いに全く加わることが出来ず、ノテーションから12馬身差の6着と完敗。4戦連続で走ったスポーツマンズパーク競馬場を後にした。

そこで試みに芝レースに矛先を向け、同じイリノイ州にあるホーソーン競馬場でオイルキャピトルH(T7.5F)に出走。ダートで頭打ちになった馬が芝で開花するのは米国ではよくある事で、1番人気に支持されたが、結果はテクシズジングの5馬身3/4差5着に敗退。今まではマイナー競馬場ばかりで走ってきた本馬だが、次走はアーリントンパーク競馬場で行われたアーリントンハイツS(T8.5F)となった。しかし結果は勝ったエブロス(後のラウンドテーブルH勝ち馬で、日本に種牡馬として輸入されてポレールやビーマイナカヤマの父となる)から8馬身1/4差も離された8着最下位。結局このレースを最後に芝は断念した。

しかし本馬はこの芝2戦が好刺激にでもなったのか、ここから成績を伸ばし始める。まずは7月にアーリントンパーク競馬場で行われたダート8ハロンの一般競走に出走して、亜国のGⅢ競走を2勝した他に同国のGⅠ競走ラスアメリカス国際大賞で2着した後に米国に移籍してきたヨエルから半馬身差の2着と好走。次走のアーリントンパーク競馬場ダート6ハロンの一般競走では、2着ザレッドロールズに首差で勝利した。8月には前走と同コースのハンデ競走に出て、2着ユーコンジョーイに1馬身1/4差で勝利。9月にも同コースのハンデ競走に出て、次走のアイランドウェールHを勝つカーボランダムの鼻差2着。

この勢いで同月のシェリダンS(GⅢ・D8F)に出走すると、サプリングSの勝ち馬でサラトガスペシャルS・ベルモントフューチュリティS・アーリントンクラシック2着のビオを半馬身差の2着に、フェアマウントダービーを勝ってきたアンドーバーマンを3着に破って勝利を収めた。

その後はガルフストリームパーク競馬場に向かい、BCスプリント(GⅠ・D6F)に参戦した。しかし、サンフェルナンドS・カーターH・マリブS・サンパスカルH・ダービートライアルS・パロスヴェルデスH・ポトレログランデH・ビングクロスビーH・デルマーBCHの勝ち馬オンザライン、ロサンゼルスH・エインシェントタイトルHの勝ち馬サムフー、トムフールS・ヴォスバーグS・フォールハイウェイトHの勝ち馬でブージャムH・NYRAマイルH2着のスイークレイ、ルイジアナダービー・NYRAマイルHの勝ち馬でブルーグラスS・アメリカンダービー2着のディスパーサル、テストS・ジェニュインリスクS・プライオレスS・バドワイザーBCHなど8連勝中のセイフリーケプト、ウィザーズSの勝ち馬でヴォスバーグS2着のワンスワイルド、ブージャムHの勝ち馬でヴォスバーグS3着のミスターニッカーソン、サバーバンH・トゥルーノースHの勝ち馬でフォアゴーH2着・メトロポリタンH3着のダンシングスプリー、ロサンゼルスH・ビングクロスビーH・エインシェントタイトルHの勝ち馬オリンピックプロスペクトといった韋駄天達が大挙して出走しており、本馬は単勝オッズ26.5倍で10番人気の低評価。レースでも何の見せ場も無く、勝ったダンシングスプリーから13馬身差をつけられた8着と完敗した(正確には9位入線だったが、4位入線のサムフーがオンザラインの進路を妨害して落馬させて最下位に降着となったために繰り上がり。オンザラインはその後に蹄葉炎を発症して予後不良となった)。これがこの年最後の出走で、3歳時は16戦4勝だった。

2歳9月のデビューからBCスプリントまで2か月以上レース間隔が空いたことは1度も無かった本馬だが、ここでようやくしばしの休養が与えられた。なお、この3歳シーズン途中で、プーロス師の薦めを受けたジェフリー・S・サリヴァン氏により本馬は12万5千ドルで購入されてサリヴァン氏の所有馬となっている。

競走生活(4歳時)

4歳時は3月にスポーツマンズパーク競馬場で行われたジャックRジョンストン記念H(D6F)から始動して、ディーランスの6馬身差2着。キーンランド競馬場に移動して4月に出走したコモンウェルスBCS(GⅢ・D7F)では、2着シェイカーニットに頭差で勝利した。

5月にはカーターH(GⅠ・D7F)に参戦して、ダンシングスプリー、BCスプリント5着のスイークレイ、BCスプリント9着後にコールタウンBCS・ウエストチェスターHを勝っていたワンスワイルド、BCスプリント11着後にボールドルーラーSを勝っていたミスターニッカーソン達と対戦。しかし、勝ったダンシングスプリーから7馬身3/4差をつけられた4着と完敗した。

次走のメトロポリタンH(GⅠ・D8F)では、ベルモントS・カウディンS・シャンペンS・ウッドメモリアルS・ホイットニーH・トラヴァーズS・ウッドワードS・ジョッキークラブ金杯・ゴーサムSを勝ちBCジュヴェナイル・ケンタッキーダービー・プリークネスS・BCクラシックで2着していた同世代馬イージーゴア、ピムリコスペシャルH・サンパスカルH・サンアントニオHを勝ちサンタアニタHで2着していたクリミナルタイプ、ハッチソンS・スウェイルS・ラファイエットS・ダービートライアルS・ウィザーズSなど破竹の8連勝中だったハウスバスターといった、超一線級との対戦となった。さすがにこのメンバー構成の中では本馬が評価されるわけもなく、単勝オッズ133倍の超人気薄だった。レースでは逃げるハウスバスターを追いかけて2番手を進んだが、三角手前で既に失速してしまい、勝ったクリミナルタイプから10馬身差の6着に敗れた。

これでGⅠ競走路線はひとまず諦めてしばらくは地道に自分に合ったレベルのレースに出走を続ける。まずは6月にアーリントンパーク競馬場でアイザックマーフィーH(D7F)に出走。ここでは、後にフィリップHアイズリンH・ミシガンマイル&ワンエイスHを勝ちメドウランズCHで3着してBCクラシックにも駒を進めるボウジーニアスの4馬身1/4差2着だった。7月のルイジアナダウンズバドワイザーBCS(D6F)では、グリッターマンの1馬身3/4差の3着。

8月に出走したアーリントンパーク競馬場ダート8ハロンのハンデ競走では、前年のシェリダンSで本馬の半馬身差2着だったビオを今度は7馬身半差の2着に破って圧勝した。2週間後のエクワポイズマイルH(GⅢ・D8F)も、2着ビオに3馬身半差で完勝した。9月にルイジアナダウンズ競馬場で出走したアイランドウェールH(D7F)では、ポテンシャリティーの1馬身半差2着だった。

その後はベルモントパーク競馬場で行われたBCスプリント(GⅠ・D6F)に挑戦。ナンソープS・スプリントC・アベイドロンシャン賞・テンプルS・キングズスタンドSと5連勝で臨んできた英国歴代最強短距離王デイジュール、エインシェントタイトルBCHを勝ってきた上がり馬コーウィンベイ、カーターH勝利後にホイットニーHで2着していた前年の覇者ダンシングスプリー、カーターH5着後にトゥルーノースH・ローズベンHを勝っていたミスターニッカーソン、サプリングS・フォールハイウェイトH・ブージャムHの勝ち馬カーソンシティ、前年のBCスプリント首差2着後にジェニュインリスクS・サラブレッドクラブオブアメリカS・ガーデンステートパークバドワイザーBCH・メドウランズバドワイザーBCHを勝つなど活躍していた前年のエクリプス賞最優秀短距離馬セイフリーケプト、ルイジアナダウンズバドワイザーBCSで本馬を2着に破った後にフィラデルフィアパークBCHを勝ちヴォスバーグSで3着してきたグリッターマン、ベルエアH・トリプルベンドH・アフィナミナンHの勝ち馬プロスペクターズギャンブル、カウディンS・シャンペンS・リヴァリッジSの勝ち馬でベルモントフューチュリティS2着のアジュディケーティング、ポテンシャリティー、コモンウェルスBCSで本馬の2着だったシェイカーニットなど、前年と同等以上のレベルの韋駄天達が出走していた。そのためにラフィット・ピンカイ・ジュニア騎手騎乗の本馬は、前年と同じ10番人気ながらも、単勝オッズは前年の25.5倍よりさらに高い53.2倍という低評価だった。

スタートが切られると、単勝オッズ13.2倍の6番人気馬セイフリーケプトがスタートから猛然と先頭を飛ばし、それを単勝オッズ3.4倍の1番人気馬デイジュールが追いかける展開となった。本馬は馬群の中団後方を追走していたが、向こう正面で本馬の前を走っていたミスターニッカーソンが心臓麻痺を起こして競走を中止し、それに巻き込まれたシェイカーニットも転倒するという事故があった(痛ましいことに2頭とも命を落とした)。辛うじて事故に巻き込まれなかった本馬は、三角から四角にかけて外側を通って位置取りを上げて、直線では必死に追い上げた。前方で叩き合うセイフリーケプトとデイジュールの2頭には遠く及ばなかったが、それでも勝ったセイフリーケプトから4馬身差の3着に入るという大健闘を見せた。

翌11月にはバドワイザーホーソーン金杯H(GⅡ・D10F)に出走。本馬にとって過去最長距離となるレースだった上に、パンアメリカンH・メドウランズCH・ガルフストリームパークH・ロングブランチS・ランプライターH・ドミニオンデイHとGⅠ競走3勝を含むグレード競走6勝を挙げて、ブルックリンH2着・ワイドナーH・フィリップHアイズリンH・ホイットニーS3着の実績もあったミセレクトという強敵が出走してきた。しかし初コンビとなるフベナル・ディアス騎手を鞍上に迎えた本馬が、これが現役最後のレースだったミセレクトを1馬身半差の2着に抑えて快勝。4歳時を11戦4勝の成績で終えた。

競走生活(5歳前半)

5歳時は3月にアーカンソー州オークローンパーク競馬場で行われたレイザーバックH(GⅡ・D8.5F)から始動した。アファームドH・エセックスHの勝ち馬グレイダー、ジェロームH2着馬ディンズダンサー、アソールトH・パターソンH・ニューオーリンズHの勝ち馬シルヴァーサヴァイヴァー、欧州から移籍してきたコンコルドS・ガリニュールS2着馬ロータスプールなどが出走していた。119ポンドのグレイダーが単勝オッズ1.8倍の1番人気、117ポンドのディンズダンサーが単勝オッズ4.3倍の2番人気、120ポンドのシルヴァーサヴァイヴァーが単勝オッズ6.6倍の3番人気で、118ポンドの本馬は単勝オッズ9.8倍の4番人気だった。レースではディンズダンサーが先頭を引っ張り、本馬は2番手を追走。しかし3番手を走っていた単勝オッズ17.9倍の6番人気馬ビーデヴィルドに直線入り口でかわされると、そのまま順位を上げられずに、勝ったビーデヴィルドから2馬身3/4差の3着に敗れた。

その後はいったん短距離戦に戻し、徐々に距離を延ばして行く作戦に出た。次走のコモンウェルスBCS(GⅢ・D7F)では、前年のスーパーダービー・レキシントンSの勝ち馬ホームアットラストに加えて、前年のメトロポリタンH2着後にジェロームH・シェリダンS・キングズビショップSに勝利して、セイフリーケプトを抑えて前年のエクリプス賞最優秀短距離馬に選ばれていたハウスバスターと2度目の対戦となった。ハウスバスターが単勝オッズ1.3倍の1番人気に支持され、同斤量の本馬が単勝オッズ8.1倍の2番人気だった。スタートが切られると、ハウスバスターが快速を活かして先頭に立ち、本馬が少し離れた2番手を追走した。そして直線入り口でハウスバスターに並びかけて2頭の叩き合いとなった。最後は本馬がハウスバスターを競り落として1馬身差で勝利した。

次走のカーターH(GⅠ・D7F)でも、ハウスバスターとの顔合わせとなった。他にも、ガルフストリームパークスプリントCSHを勝ってきたジェルヴァジー、ボールドルーラーSを勝ってきたラウジングパスト、前年のヴォスバーグH2着馬サンシャインジミー、ウエストチェスターHを勝ってきたルビアノなども出走してきた。122ポンドのハウスバスターが単勝オッズ2.3倍の1番人気、116ポンドのジェルヴァジーが単勝オッズ3.8倍の2番人気、116ポンドのラウジングパストが単勝オッズ6.3倍の3番人気で、前走の結果を受けて123ポンドのトップハンデを課せられた本馬は単勝オッズ8.1倍の4番人気に留まった。今回もハウスバスターが先頭を引っ張り、本馬が2番手を追走する展開となった。しかし叩き合いを避けるように四角でハウスバスターが後続を引き離したため、本馬はハウスバスターに並びかけることが出来ず、そのまま2馬身1/4差の2着に敗れ、GⅠ競走初勝利はお預けとなった。

次走のメトロポリタンH(GⅠ・D8F)でも、ハウスバスターとの顔合わせとなった。他の出走馬は、サンフェルナンドS・ヴォランテH・サンガブリエルHの勝ち馬インエクセス、一昨年のジェロームHの勝ち馬でオークローンH・サバーバンH・ジョッキークラブ金杯2着のドローシュ、この年の2月にデビューして4戦全勝で挑んできた3歳馬レットザビッグホスロール、前走3着のジェルヴァジー、同4着のルビアノ、レイザーバックHで4着だったシルヴァーサヴァイヴァー、同5着だったグレイダーなどだった。124ポンドのハウスバスターが単勝オッズ1.9倍の1番人気に支持される一方で、斤量3位のインエクセスより5ポンド重い122ポンドだった本馬は単勝オッズ15.7倍の5番人気に留まった。スタートが切られると例によってハウスバスターが逃げて、本馬が2番手を追いかける展開となった。しかしハウスバスターが刻んだペースは最初の2ハロンが22秒14、半マイル通過は44秒26という非常に速いペースとなった。厳しい斤量に加えてこのペースでは、さすがの2頭も最後まで保たず、本馬は向こう正面から、ハウスバスターは四角から失速。レースは好位を走っていた単勝オッズ5.2倍の2番人気馬インエクセスが早め先頭から押し切って勝ち、ハウスバスターは10馬身1/4差の8着、本馬はハウスバスターから3/4馬身差の9着と共倒れとなった。

競走生活(5歳後半)

ハウスバスターはこの後も短距離路線を進み、フォアゴーHやヴォスバーグSを制して2年連続のエクリプス賞最優秀短距離馬に選ばれることになるのだが、本馬の距離延長策に変更は無く、ハウスバスターと別れて、翌6月のスティーヴンフォスターH(GⅡ・D9F)に向かった。エクワポイズマイルを勝ってきたブライトアゲイン、アーリントンワシントンフューチュリティー・セントポールダービー・クラークHの勝ち馬シークレットハロー、オハイオダービーの勝ち馬プライヴェートスクールなどが対戦相手となった。119ポンドのトップハンデだった本馬が単勝オッズ2.2倍の1番人気、115ポンドのブライトアゲインが単勝オッズ2.8倍の2番人気、117ポンドのシークレットハローが単勝オッズ4.4倍の3番人気となった。ハウスバスターが不在となったこのレースでは、本馬はスタートからマイペースで先頭を走ることが出来た。そして四角で後続を引き離して直線を押し切るという競馬で、追い込んで2着に入った単勝オッズ15.4倍の最低人気馬プライヴェートスクールに2馬身3/4差をつけて快勝した。

翌7月には同距離のミシガンマイル&ワンエイスH(GⅡ・D9F)に出走した。レムセンS・ジャージーダービーの勝ち馬ヨンダー、ペガサスH・アーカンソーダービー・エルカミノリアルダービーの勝ち馬シルヴァーエンディング、プライヴェートスクール、レイザーバックHで6着だったロータスプールなどが対戦相手となった。過去6戦で本馬に騎乗したディアス騎手に代わってパット・デイ騎手を鞍上に迎えた本馬が他馬勢より7~14ポンド重い122ポンドのトップハンデでも単勝オッズ1.6倍の1番人気に支持され、デビューから5戦4勝のリーガルアフェアーが112ポンドの軽量を買われて単勝オッズ7.5倍の2番人気、113ポンドのヨンダーが単勝オッズ8.4倍の3番人気、115ポンドのシルヴァーエンディングが単勝オッズ8.6倍の4番人気となった。ここでもスタートから先手を取った本馬は、単勝オッズ53.4倍の8番人気馬ウィズアロングや、プライヴェートスクール、ロータスプールに絡まれながらも先頭をしっかりと維持。直線に入ると二の脚を使って伸び、12ポンドのハンデを与えた2着ウィズアロングに2馬身半差をつけて完勝した。

翌8月には、やはり同距離のコーンハスカーH(GⅢ・D9F)に出走した。5か月前のレイザーバックHで敗れた相手であるビーデヴィルドが出走してきたが、レイザーバックH以降にろくな成績を残せていなかったビーデヴィルドは能力的に本馬の敵ではなかった。他に目立つ馬もいなかったために、124ポンドの本馬が単勝オッズ1.3倍の1番人気に支持され、117ポンドのビーデヴィルドが単勝オッズ4.5倍の2番人気となった。ここでもスタートから本馬が先頭をひた走り、2番手をビーデヴィルドが追いかけてきた。しかしビーデヴィルドが本馬を追いかけられたのは直線入り口までであり、ここから二の脚を使った本馬がビーデヴィルドを引き離し、最後は3馬身半差をつけて、1分48秒7のコースレコードを計時して完勝した。

翌9月には、これまた同距離のフィリップHアイズリンH(GⅠ・D9F)に出走した。対戦相手のレベルは過去3戦より1枚も2枚も上であり、この年のサンタアニタH・ピムリコスペシャルH・サンカルロスH・サンパスカルH・サンアントニオHの勝ち馬でハリウッドフューチュリティ・ハリウッド金杯2着のファーマウェイ、そのファーマウェイが敗れたハリウッド金杯を勝利していたカリフォルニアンS3着馬マーケトリー、ジムダンディS・エクセルシオールHの勝ち馬でサバーバンH・ホイットニーHと連続2着してきたチーフホンチョ、カリフォルニアンS・ヤングアメリカSの勝ち馬ロアノーク、欧州でキヴトンパークS・デュークオブヨークSを勝ちサセックスS2回2着・クイーンエリザベスⅡ世S3着の実績を挙げた後に米国に移籍してきたグリーンラインエクスプレスといった、明らかにGⅠ競走級の馬達が出走してきた。122ポンドのファーマウェイと119ポンドのマーケトリーが並んで単勝オッズ3.2倍の1番人気に支持され、119ポンドの本馬が単勝オッズ5.1倍の3番人気、115ポンドのチーフホンチョが単勝オッズ5.3倍の4番人気、116ポンドのロアノークが単勝オッズ8倍の5番人気となった。

対戦相手のレベルが上がっても本馬の戦法に変化は無く、スタートから先頭をひた走った。ダート競走の実績がほとんど無かったために単勝オッズ37倍の7番人気止まりだったグリーンラインエクスプレスが本馬に絡んできたために単騎で逃げる事は出来ず、最初の2ハロン通過は22秒56というハイペースとなった。向こう正面でグリーンラインエクスプレスが失速するとようやくペースが落ち着いたが、今度は3番手で機会を伺っていたファーマウェイが上がってきて本馬に圧力をかけてきた。そしてファーマウェイに並びかけられた状態で直線に突入した。斤量はファーマウェイのほうが3ポンド重いとは言え、スタート直後に無理をしていた本馬のほうが不利と思われたが、本馬は結局最後までファーマウェイに抜かさせることは無く、首差で逃げ切り、遂にGⅠ競走初勝利を挙げた。

同月に出走したワシントンパークH(GⅡ・D9F)では対戦相手は僅か3頭だったが、そのレベルは前走フィリップHアイズリンHにそう引けを取るものではなかった。前年のプリークネスSを筆頭にホープフルS・サラトガスペシャルS・ジムビームS・ブルーグラスS・ペンシルヴァニアダービー・ケンタッキーBCSを勝ちケンタッキーダービー・ピムリコスペシャルHで2着していたサマースコール、そのサマースコールが不在だったベルモントSを8馬身1/4差で圧勝していたローレルフューチュリティの勝ち馬ゴーアンドゴー、スティーヴンフォスターH4着後にカンタベリーカップHを勝っていたシークレットハローと、3頭とも難敵揃いだった。過去3戦で本馬に騎乗したデイ騎手はずっと主戦を務めてきたサマースコールを選択したため、本馬にはシェーン・セラーズ騎手が騎乗した。119ポンドのサマースコールが単勝オッズ1.9倍の1番人気、120ポンドの本馬が単勝オッズ2.5倍の2番人気、116ポンドのゴーアンドゴーが単勝オッズ5倍の3番人気、114ポンドのシークレットハローが単勝オッズ10.1倍の最低人気となった。

レースは不良馬場で行われたが、特に本馬の走りに目立った変化は無く、スタートから先頭に立った。そして他3頭の圧力を受けながら逃げ続けた。しかしあまりの極悪馬場状態で走るのが嫌になったのか、向こう正面でシークレットハローとゴーアンドゴーは後退していき、勝負は本馬とサマースコールの2頭に絞られた。しかしサマースコールも決して重馬場が不得手な馬では無かったのだが、三角から徐々に本馬に付いていけなくなってしまった。そして単騎で先頭に突入してきた本馬がそのまま独走して、2着サマースコールに7馬身半差、3着シークレットハローにはさらに18馬身半差もの大差をつけて圧勝した。

BCクラシック

その後はチャーチルダウンズ競馬場に向かい、ブリーダーズカップに参戦した。出走したのは当然BCスプリントではなくBCクラシック(GⅠ・D10F)だった。この年のBCクラシックは中心馬が不在の大混戦だった。出走していれば人気になったはずの今年のプリークネスS・ベルモントSの勝ち馬ハンセルと、フィリップHアイズリンH2着後にウッドワードSで2着していたファーマウェイは、いずれも既に故障でリタイアしており不参加。本馬が大敗したメトロポリタンHを勝った後にサバーバンH・ホイットニーH・ウッドワードSと連勝街道を邁進していたインエクセスはBCマイルのほうに向かっていた。

以下はBCクラシック参戦馬の状況になるが、この年のケンタッキーダービー・ブルーグラスSの勝ち馬ストライクザゴールドは、ベルモントS2着、ジョッキークラブ金杯3着があるとは言え、プリークネスS以降は6連敗中。前年のケンタッキーダービー・BCクラシック・フロリダダービーの勝ち馬でプリークネスS・セクレタリアトS・スーパーダービー2着のアンブライドルドは、この年にノングレード競走の勝ちしかなかった。BCジュヴェナイル・シャンペンS・フロリダダービー・ハッチソンS・ファウンテンオブユースS・ジムダンディS・リヴァリッジSを勝っていた前年のエクリプス賞最優秀2歳牡馬フライソーフリーは、前走モルソンエクスポートミリオンで牝馬ダンススマートリーに9馬身差をつけられて大敗していた。他にも、ワシントンパークH2着後に出走したファイエットHでアンブライドルドを2着に破って快勝していたサマースコール、この年のメドウランズCH・ベルエアH・サンディエゴH・デルマーBCHの勝ち馬トワイライトアジェンダ、フィリップHアイズリンHで本馬の5着に敗れた後にグッドウッドHで2着してきたマーケトリー、フィリップHアイズリンH3着後にジョッキークラブ金杯で2着してきたチーフホンチョ、仏国から遠征してきたリュパン賞の勝ち馬で仏ダービー3着のクダス、テトラークS・デズモンドSの勝ち馬で愛2000ギニー2着・英ダービーと愛ダービーでジェネラスの3着していたスターオブグダニスクなども出走していたが、どの馬も中心視されるほどのインパクトは無かった。

結局、この年のオークローンH・ジョッキークラブ金杯・ナッソーカウンティHの勝ち馬で、サンタアニタHで2着、ウッドワードSで3着していた亜国産馬フェスティンが単勝オッズ4.1倍の1番人気に押し上げられた。本馬とサマースコールの2頭が並んで単勝オッズ5倍の2番人気、アンブライドルドが単勝オッズ5.3倍の4番人気、ストライクザゴールドが単勝オッズ7.2倍の5番人気となった。本馬の鞍上は、これが最初で最後のコンビとなるジェリー・ベイリー騎手だった。

スタートが切られると、本馬はすぐに先頭を奪った。そして2番手のサマースコールやスターオブグダニスクに1~2馬身ほどの差をつけて単騎で逃げ続けた。本馬は2番人気とはいえ、過去の経歴(10ハロンのレースには1年前のバドワイザーホーソーン金杯Hの1度しか出走していない)からスタミナに不安があるのも事実であり、他の人気馬勢は下手に追いかける事は出来なかった。その結果、本馬は最初の2ハロンを24秒36、半マイルは48秒5、6ハロンを1分12秒69というマイペースで逃げる事に成功した。2番手にいたサマースコールやスターオブグダニスクにも十分な余力があったはずだが、2頭ともこのレースでは調子が悪かったようで、三角から後退。代わりに好位につけていたトワイライトアジェンダやフライソーフリーが上がってきて、さらに後方待機策を採っていたアンブライドルドやストライクザゴールドも進出を開始した。四角で本馬はいったんトワイライトアジェンダに並ばれたのだが、直線に入ると二の脚を使って引き離しにかかった。トワイライトアジェンダも必死に食らいつこうとしたが本馬に追いつくことは出来ず、そしてフライソーフリー、アンブライドルド、ストライクザゴールドにも本馬を捕らえるほどの勢いは無かった。最後は本馬が2着トワイライトアジェンダに1馬身1/4差をつけて逃げ切り優勝。6連勝で米国競馬の頂点に立った。40年間近く地道に調教師活動を続けていたプーロス師はこの勝利を殊のほか喜び、「彼は大きな体に相応しい大きなハートの持ち主です」と賞賛した。

本馬はこのレースを最後に、5歳時10戦7勝の成績で引退した。この年のエクリプス賞最優秀古馬牡馬のタイトルは、BCマイルで9着同着に惨敗していたインエクセスや、アーリントンミリオン・エディリードH・イングルウッドH・アメリカンHの勝ち馬だがBCマイルで9着同着と惨敗していたタイトスポット、BCスプリントで9着に惨敗していたハウスバスターなどを抑えて受賞。エクリプス賞年度代表馬争いでは、BCジュヴェナイルを圧勝した2歳馬アラジ(欧州のカルティエ賞では年度代表馬に選ばれていた)、この年8戦全勝でBCディスタフを制した3歳牝馬ダンススマートリーとの間で票が割れたが、本馬が他の2頭を抑えて受賞し、名実ともに米国競馬のトップホースであるとの評価を受けた。

血統

Miswaki Mr. Prospector Raise a Native Native Dancer Polynesian
Geisha
Raise You Case Ace
Lady Glory
Gold Digger Nashua Nasrullah
Segula
Sequence Count Fleet
Miss Dogwood
Hopespringseternal Buckpasser Tom Fool Menow
Gaga
Busanda War Admiral
Businesslike
Rose Bower Princequillo Prince Rose
Cosquilla
Lea Lane Nasrullah
Lea Lark
Hat Tab Girl Al Hattab The Axe Mahmoud Blenheim
Mah Mahal
Blackball Shut Out
Big Event
Abyssinia Abernant Owen Tudor
Rustom Mahal
Serengeti Big Game
Mercy
Desperate Action Bold Commander Bold Ruler Nasrullah
Miss Disco
High Voltage Ambiorix
Dynamo
Crafty Alice Crafty Admiral Fighting Fox
Admiral's Lady
Thelma Berger Brown King
Hianne

ミスワキは当馬の項を参照。ミスワキ自身の競走成績は完全な早熟の短距離馬であり、種牡馬入り当初の産駒もその傾向が強かった。本馬自身も現役当初は短距離戦でしか実績を残せなかったが、年を経るにつれてスタミナを付けていった。後にミスワキは、ミスタープロスペクター直系では異色の晩成中長距離型種牡馬という評価が定着したが、その先駆けは本馬のBCクラシック制覇である。

母ハットタブガールは現役時代に米国で走り23戦6勝、コーラルゲイブルズHを勝っている。産駒には本馬の半弟グレートパーム(父マニラ)【伊共和国大統領賞(伊GⅠ)・ギョームドルナノ賞(仏GⅡ)】もいる。本馬の半妹ブラックタイキス(父ダンチヒ)の子にはキスザキッド【クリフハンガーS(米GⅢ)・アップルトンS(米GⅢ)】、孫にはロクテ【ガルフストリームパークターフH(米GⅠ)・タンパベイS(米GⅢ)】がいる。ブラックタイキスは後に日本に繁殖牝馬として輸入されている。ハットタブガールの母デスパレートアクションの半弟にはレインヴェステッド【スーパーダービー(米GⅡ)】が、デスパレートアクションの母クラフティアリスの半姉スカーレットリリーの子にはバラストレイド【モンマス招待H】が、クラフティアリスの半姉プリンセスセルマの曾孫には日本で走ったブラックタキシード【セントライト記念(GⅡ)】、玄孫にはエアパスカル【チューリップ賞(GⅢ)】がいる。近親と言うにはやや遠いが、日本で走ったブロードマインド【中山大障害秋・中山大障害春】、アドマイヤマックス【高松宮記念(GⅠ)】、ラインクラフト【桜花賞(GⅠ)・NHKマイルC(GⅠ)】、ソングオブウインド【菊花賞(GⅠ)】、スーニ【全日本2歳優駿(GⅠ)・JBCスプリント(GⅠ)2回】なども同じ牝系である。→牝系:F9号族①

母父アルハタブは現役成績45戦16勝。ホーソーンジュヴェナイルS・モンマス招待H・ハッチソンS・ジャージーダービー・フォウンテンオブユースS・トロピカルパークH・オレンジボウルHなどを勝っている。種牡馬としての成績は並だったが、母父としては本馬の他にホーリーブルを出した。アルハタブの父ジアックスはリローンチの項を参照。

競走馬引退後

競走馬を引退した本馬はケンタッキー州ヴァイナリーファームで種牡馬入りした。初年度産駒のフォーマルゴールドが活躍し、また外国産馬として日本で走ったワシントンカラーの活躍もあり、1998年に日本に輸入され、同年からイーストスタッドで種牡馬供用された。日本における種牡馬入り初年度は149頭、2年目も127頭とかなり多くの繁殖牝馬を集めた。3年目の交配数は45頭まで減少したが、4年目は94頭まで回復した。しかし5年目は26頭、6年目の2003年は7頭まで交配数が減少した。

この2003年7月に、日本の競馬関係者や競馬ファンはまるで自覚していないようだが、米国の競馬関係者や競馬ファンからすれば日本競馬史上における最大の汚点間違い無しであるファーディナンド屠殺事件が発覚。日本で種牡馬として振るわなくなっていた多くの米国産の名馬が同じ運命を辿るのではないかと危惧した米国の競馬関係者達は、一斉に日本にいた廃用寸前の種牡馬達の捜索と回収を始めた。本馬に関しても、管理していたプーロス師(1997年に71歳で死去していた)の未亡人ディー・プーロス夫人がキャンペーン活動を始めたために義援金が集まり、それを元手にウェストバージニア州オサリヴァンファームが本馬を買い戻したため、2004年に本馬は日本を去って米国に戻り、オサリヴァンファームで種牡馬生活を続けた。その3年後の2007年に日本における4年目産駒のフジノウェーブがJBCスプリントを勝ってGⅠ競走勝ち馬となっている。全日本種牡馬ランキングでは2003年の42位が最高だった。日米通算のステークスウイナー数は35頭である。第1回ジャパンCダートに米国から参戦して猛ラップで飛ばしながら3着に粘ったロードスターリングも本馬の子である。

2009年7月に左後脚の関節炎のため種付けが困難になり種牡馬を引退。その後は功労馬保護団体オールドフレンズが所有するケンタッキー州のサラブレッド引退馬牧場で余生を送った。関節炎だけでなく芦毛馬特有の悪性黒色腫も患っていたが、オールドフレンズの専属獣医の適切な措置により症状は悪化せずに元気に振る舞っていた。しかし翌2010年に蹄葉炎を発症。関係者の協議の末に安楽死の措置が執られることになり、7月1日朝の食事を採った後に24歳で息を引き取った。

な産駒一覧

生年

産駒名

勝ち鞍

1993

Formal Gold

ドンH(米GⅠ)・ウッドワードS(米GⅠ)・ブルックリンH(米GⅡ)・フィリップHアイズリンH(米GⅡ)

1994

ワシントンカラー

クリスタルC(GⅢ)・根岸S(GⅢ)2回・ガーネットS(GⅢ)

1995

License Fee

ボールストンスパBCH(米GⅢ)・シックスティセイルズH(米GⅢ)・ギャロレットH(米GⅢ)・ジャストアゲームBCH(米GⅢ)

1998

Evening Attire

ジョッキークラブ金杯(米GⅠ)・サラトガBCH(米GⅡ)2回・ディスカヴァリーH(米GⅢ)・クイーンズカウンティH(米GⅢ)2回・アケダクトH(米GⅢ)・レッドスミスH(米GⅢ)・スタイヴァサントH(米GⅢ)

1999

グレイスアッパー

北日本新聞杯(金沢)・ほくてつニューイヤーC(金沢)

1999

サンキョウフェアー

オータムスプリントC(金沢)

2000

オリジナルステップ

黒潮菊花賞(高知)・珊瑚冠賞(高知)

2000

レイナワルツ

東海菊花賞(SPⅠ)・名古屋記念(SPⅠ)3回・東海桜花賞(SPⅠ)

2002

ジョインアゲン

黒潮マイルCS(高知)2回

2002

ナリタブラック

福山大賞典(福山)

2002

フジノウェーブ

JBCスプリント(GⅠ)・東京盃(GⅡ)・マイルグランプリ(SⅡ)・東京シティ盃(南関GⅢ)・東京シティ盃(SⅢ)・東京スプリング盃(SⅢ)4回

2004

アプローチアゲン

二十四万石賞(高知)

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